JP3634879B2 - 出力信号高速復号方法および装置 - Google Patents

出力信号高速復号方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は2進符号列の最尤復号方法、およびこれを実現するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信および情報記憶装置のチャネル出力からの信号は、ある特定の時間間隔(伝送ビット間隔)ごとの信号振幅値に、一定の規則により対応付けられる2進符号ビット情報を有している。このチャネル出力信号は復号装置によって、対応する元の2進符号列へと変換される。しかし、このチャネル出力信号は、チャネル伝送中に、種々の要因により雑音や歪みが重畳されるため、復号装置による符号変換では著しく信頼度が低下し、大容量/高速な通信や情報記憶再生において、大きな問題となる。
【0003】
これを解決する手段として最尤復号器が従来よりしばしば用いられる。最尤復号法は、与えられた受信信号列に対して、考えられうる元の符号列の全ての組み合わせの中から、最も受信される見込みが大きいものを復号結果として選択する。この場合、符号列は互いに独立に検出されるのではなく、信号の前後関係が考慮されて検出される。この最尤系列推定処理を有限の回路規模と計算量とで実施する手段として、ビタビアルゴリズムが広く用いられている。ビタビアルゴリズムは、動的プログラミング形式を用いて、最尤系列推定を効率的に実施し、その詳細は、G.D.Forney Jr.,”The Viterbi Akgorithm,” Proceedings of the IEEE 61(3),March 1973(”ザ ビタビ アルゴリズム”、プロシーディングス オブアイイーイーイー)やG.D.Forney Jr.,”Maximum−Likelihood sequence estimation of digital sequences in the presence of intersymbol interference,”IEEE Transaction on Information Theory ,vol.IT−18,No.3,pp363−378, May 1972(”マクシマム ライクリーフッド シーケンス エスティメーション オブディジタル シーケンスイズ イン ザ プレセンス オブ インターシンボル インターフェアランス”、アイイー イー イートランザクション オン インフォメーション セオリー)など、広範に開示されている。
【0004】
これら、従来文献に開示される最尤系列推定の方法は、復号信号が入力されるごとに再帰的演算処理を繰り返す。すなわち、直前到来信号までの複数の推定候補系列とその尤度を保持しこれを新しい入力信号の情報を用いて更新する形で進められる。そして、保持する候補系列を十分に長くとることにより、その複数候補系列間の初期の部分の一致収束を見ながら、あるいは、現時点において最も高い尤度を有する候補系列の初期の部分を選択する方法で、逐次復号結果を決定し、その結果を出力していく。上記の最尤系列推定器には、入力される一連の信号系列に対して、逐次、推定候補系列を選択し尤度の計算が必要となる。そのための構成として、例えば▲1▼入力信号に対する尤度計算と、この計算結果と過去の候補系列に対する尤度とを加算し、新たな候補系列を選択するための演算判定回路、▲2▼一入力毎に更新される複数の候補系列を逐次保持しておくためのシフトレジスタ群、が必要とされる。そして、その復号形態は、復号器に一つの信号が入力されると、一定の遅延をもって、過去何ビットか以前の入力信号に対する復号結果が出力される。
【0005】
換言すると最尤復号(最尤系列推定)では、各ビットタイミングでのサンプル信号値に対する判定を、その信号値の単独の値のみから判定するのではなく、判定すべき信号値の前後の関係を利用して推定する。この信号前後の関係は、送信や記録前の符号に対して畳込み符号などの誤り訂正符号化技術により一定の関係を付加する場合、符号から信号への変換(変調)時に付加される場合、あるいは、記録再生系や伝送系のもつ伝達特性によって信号出力の結果として与えられる場合、など様々な要因によって考慮される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のビタビアルゴリズムを用いた最尤復号では、その系列推定のために、各候補系列に対する尤度計算を行って、再帰的な演算処理を繰り返すことが要求される。このように従来技術では、一入力信号の到来ごとに、一つ以前の入力信号までに対する尤度結果を用いて、入力信号による新たな尤度の更新と新たな系列選択のための判定を行なうことが要求される。その結果、尤度の計算と判定に関する複雑な演算処理を一入力信号時間内に完了しなければならないことが本質的に要求される。同時に、逐次更新される候補系列を保持するために高速なシフトレジスタが必要とされる。したがって、従来の最尤復号処理の高速化には、回路技術の制約に起因する限界があった。加えて、最尤復号出力が高速化されることにより、これに接続する後段データ処理にも高い負荷がかかることになる。
【0007】
本発明の目的は、この最尤復号処理の高速化を達成するために従来生じていた制約を排除し、高速に伝送されるチャネル出力の一連の信号列に対し、最尤復号方法を用いた復号処理を高速化するための復号処理形態および装置を提供することである。
【0008】
更に、本発明の目的は、高速に伝送出力される一連の信号列に対する復号処理を、低速な回路を用いて実質的に高速に処理する復号方法及びその方法を実施するための装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、復号器に入力される一連の信号を、一定の長さのブロックに分割し、この分割信号ブロックを複数の最尤系列推定器に順次供給する。各最尤系列推定器には、この供給された信号ブロックを記憶する装置を設けて、ここに一旦、供給された信号ブロックを保持させる。そして、各復号器では、この内容を装置固有の速度で読みだして、最尤復号アルゴリズムを実施する。ブロックごとに最尤推定された結果として得られた復号ビット列は、その決定とともに逐次、これを記録するレジスタ装置に記録されていく。このレジスタ装置も最尤系列推定器ごとに設けられ、ここには、その復号器に供給された信号ブロックに対応する復号ビット列が最終的に保持される。この復号ビットが保持されるレジスタ装置は、全てのビットの内容を確定後、各ビットを並列に出力することができるものとし、この出力情報を、最初に最尤系列推定器に信号ブロックを供給した順序で選択することによって、復号器に入力される信号に対応する一連の復号結果を得る。
【0010】
【作用】
復号すべき信号を所定の長さのブロックに分割して、これを複数の最尤系列推定器に記憶したのち、最尤系列推定を実施することで、低速な最尤復号処理が許容される。また、各ブロックに対する復号結果が完全に確定した後、これを並列に復号回路から出力することで、これ以後の処理回路において、高速な信号復号処理に対処可能となる。
【0011】
つまり本発明によれば、一連の最尤復号処理を複数の最尤復号装置で分割して処理するため、単一の最尤復号装置で復号処理を行う時よりも数倍は高速の復号処理が可能となる。
【0012】
【実施例】
本発明は、入力された信号系列から対応する符号系列へ変換して、出力する信号復号処理を高速かつ高信頼に実現する手段を提供する。入力された信号は、ある特定の時間周期における振幅情報は、一定の規則で対応付けられるビット情報を保持する。この振幅情報が検出されてビット符号へと変換されてディジタル再生がなされる。このため、多くの場合、この時間周期で信号をサンプリングした離散的信号値を用いて、ディジタル信号処理および復号処理を行う。以下に示す本発明の実施例では、ディジタル処理により実現例を用いて説明するが、連続的な信号にアナログ信号処理の電子回路技術を用いても、本発明の実施は可能である。
【0013】
図1は、本発明の装置及びその動作を説明するための基本的構成を示す。
【0014】
入力端子100 から入力された信号は、信号処理装置101によって復号処理を行う前処理が施されてから、復号装置102に入力される。信号処理装置101 での具体的な前処理は、復号装置が適用される受信装置や記録再生装置などにより異なる。後に図9を用いて説明するが、一般には、信号の増幅やフィルタによる雑音除去、等化回路による再生信号の波形整形処理、信号間干渉除去などを行うための回路などが含まれる。信号処理装置101 により、復号処理が正常に行われるよう入力信号の信号状態が回復された後、信号処理装置101 からの出力信号が本発明の復号装置102 に供給される。本実施例では、この信号処理装置101 は復号装置102 の入力に設けられているが、この場所に限定されるものではない。例えば、後述する信号分配装置103 の各々の出力の後独立に設けられてもよい。復号装置102 内の最尤復号装置104 の各々の入力に対して前処理動作をするものであれば、信号処理装置101の配置位置は本発明の本質に係るものではない。本発明の実施例では、信号処理装置は、信号分配装置103 の入力側かつ、復号装置102 の外部に配置された構成を例にとるものとする(図1)。
【0015】
本発明の第一の特徴は、復号装置102において、複数の最尤復号装置104を並列に設けることにある。この構成によって、入力された信号を分割し、復号処理を行うことにより、復号処理の高速化を実現することができる。一般に最尤復号装置は、受信された雑音や歪みを含む入力信号系列から、最も可能性が高いと考えられる元の送信符号系列を推定(最尤系列推定)する手段であり、通常、ビタビアルゴリズムなどの動的プログラミング形式を用いて行われる。しかしながら、最尤復号処理では、各入力信号に対する演算処理の結果を直後の入力信号の処理に使用する再帰的処理を要求されるために、この点が隘路となって、1つの最尤復号装置で高速な最尤復号処理を行うには、回路技術的な限界が生ずる。この問題を解決するため、複数の最尤復号装置104より、入力信号系列を分割して並列に処理し、実効的に動作速度を上げることが原理的に有効な手段である。一方、必要とされる動作速度に対して、複数の最尤復号装置102 によって並列動作が可能となれば、個々の最尤復号装置102 は、低速なもので実現でき、回路実現上の低コスト化が可能となる。
【0016】
入力端子100から入力された信号は信号処理装置101で前処理を施されて復号装置102に出力される。復号装置102は時系列に入力される信号を所定の時間間隔で複数の出力端子に分配する信号分配装置103と、分配された信号に最尤復号処理を施す最尤復号装置群104と、最尤復号装置群104からの出力を所定の順序で出力する選択装置110とから構成される。
【0017】
信号処理装置101の出力は、信号分配装置103により一定の長さ(kビット)のブロックに分割され、各々の最尤復号装置へと巡回的に供給される。信号分配装置103では入力されたビット信号の入力タイミングが検出され、kビット目の入力信号のビットタイミングごとに出力先の最尤復号装置104を変更しながら、信号を連続kビットごとのブロックに分割する役割を果たす。n個の最尤復号装置104 の各々には、一定の周期でkビット長に分割された連続信号系列(ブロック)が供給され、信号分配装置103によって、次に信号ブロックが供給されるまでの時間内に、供給された信号ブロックに対する最尤復号処理を完了する。入力信号をn個の最尤復号装置(104−1〜104−n)にブロック分割して供給することによって、原理的に単体の最尤復号装置の動作速度のn倍の復号動作速度を実現することができる。
【0018】
各々の最尤復号装置(104−i,i=1…n)は、供給された信号ブロックを構成する個々の信号値を分配して並列に出力するブロック分配器105と、分配された個々の信号値を独立に保持し、独立に出力可能な入力ブロックバッファ記憶装置106 と、この入力ブロックバッファ記憶装置106 の個々の記憶セルに記憶された信号値を用いて、入力ブロック信号系列に対する最尤系列推定を実施する判定器107 とを有する。このように、各々の最尤復号装置104−iでは、入力ブロックバッファ記憶装置106の各記憶セルから、信号値を順次所定の速度で読みだすことで、入力端子100 での信号入力における復号ビットの伝送速度に対して、より低速な最尤復号処理が許容される。
【0019】
この入力ブロック信号に対応する最尤系列推定結果(復号結果)を保持するのが出力符号バッファ記憶装置108である。出力符号バッファ記憶装置108 には最尤系列推定により得られた復号全ビットの結果が記憶されている。選択装置110 は、個々の最尤復号装置104−i内の出力符号バッファ記憶装置108 の内容を得て、信号分配装置103において入力信号ブロックが各最尤復号装置104−iに分配されたときと同じ順番で順次選択して並列に出力する。出力符号バッファ記憶装置108 に蓄えられるブロックの最尤復号結果のビット列は、入力ブロックバッファ記憶装置106 の各記憶セルに蓄えられる入力信号ブロックの信号値列に対応している。そして、この出力符号バッファ記憶装置108からの並列読み出し線109からの復号ビットは、選択装置110で選択された順序で符号復調器112 へと入力され、所定の符号ビットの復調処理を行った後に出力端子113から、上位の処理装置へと出力される。
【0020】
以上説明したとおり、本発明では、時系列的に入力された入力信号は信号分配装置103により、所定のブロックに分割されて個々のブロックが対応する最尤復号装置104−iで最尤復号されてブロック単位に順次読み出される。ブロック単位で復号された復号ビット列は、並列に読みだされて復調処理が行われる。このため、最尤復号装置104 は、入力された信号を直並列変換するためのブロック分配器105と個々の信号値を保持する入力ブロックバッファ記憶装置106、および、これに対する復号結果を得る出力符号バッファ記憶装置108 を有し、この出力符号バッファ記憶装置108 から並列読み出し線109 によって、並列同時に復号結果が出力される点に構成上の特徴がある。
【0021】
図2は、本発明によるブロック最尤系列推定の原理の説明図である。ここでは、具体例として、+A,0,−Aの 3値振幅からなる入力信号を復号する例を示す。タイミングクロック202を用いて信号200はビットタイミングでのサンプル点201が識別される。信号振幅+Aまたは−Aはビット”1”に、また、サンプル点で得られた信号振幅0はビット”0”に対応付けられて、復号ビット系列220が得られる。この信号/符号変換形態は、磁気記録などの記録再生信号に対して、よく用いられるものであり、このときの+Aと−Aの振幅値は、振幅値0の合間に交互に出現する。
【0022】
さらに図2の実施例では、パルス状の+Aと−Aの振幅値が交互に出現するという、前後関係が成り立っている。このような前後関係は、パーシャルレスポンスクラス4系の伝達特性をもち、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、VTR装置などに用いられる記録再生系の出力信号が一般的に有する伝達特性の形態である。
【0023】
最尤系列推定のために、この信号が持つ前後関係を図式的に表現するものが、状態遷移図203である。状態遷移図203は、信号200の時間的推移とともに、各時刻における信号の2つの状態(サンプル点で識別されるパルスの極性が+Aの場合、−Aの場合の2つの状態)が時間的に推移することを示している。各時刻において信号200は状態P(204)と状態N(205)の2つの状態をとりうる。4種類の状態遷移を矢印206〜209により示すタイミングクロック202によって信号200のサンプル点201の値が1つ与えられる毎に、2つの状態の何れかから何れかに、1つずつ状態が推移する。状態P(204)はそれ以前のパルスの極性が+Aであることを、状態N(205)は極性が−Aであることを、それぞれ示す。状態遷移206の矢印は状態N(205)から状態P(204)への推移、すなわち、この時刻における極性+Aのパルス信号の出現を示している。同様に、状態遷移207の矢印は状態P(204)から状態N(205)への推移を表わし、この時刻における極性−Aのパルス信号の出現を示している。一方、状態遷移208、209とは同一状態間状態P(204);状態N(205)の推移を表わす。2状態間の移動を引き起こさない、ということで、信号200は、パルス極性が生じない信号値0のレベルが現われることが示される。この状態遷移図203の状態推移が定まると、極性+Aと極性−Aの間を交互に推移する信号のパターンを一意に確定できたことになる。この状態遷移の過程を推定して、遷移206と207の時刻に復号ビット”1”を、遷移208と209の時刻に復号ビット”0”を対応させれば、復号ビット系列220が得られる。この状態遷移図203と実際の信号200の間の対応をとりつつ、信号200に最も適合する状態遷移を推定して、これに対応する復号結果をえるのが、最尤復号(最尤系列推定)である。従来の最尤復号器では、信号200からの状態遷移図203の推定を、1つの復号器により行っていた。本発明では、判定する信号200 を、一定の長さのブロックに分割して、個々のブロック内での最尤推定を行う。具体的には、信号200及びこれに対する推定状態遷移図203を状態推定区間210a〜210dの様に6状態間5ビット分の一定区間に分割し、この分割されたブロック211a〜211dごとに状態遷移推定を行う。図1に示す複数個の最尤復号装置のそれぞれには、各区間(ブロック)211a〜211dの状態遷移推定が独立に割り当てられる。分割されたブロック211a〜211dごとの状態遷移推定から求められる復号結果を、ブロック分割を行った順番に最構成し、復号系列212が与えられる。通常はブロック毎の復号結果を逐次的に並べ変えることはなく、ブロック内の状態推定が確定した以後、ブロックに対する復号結果をまとめて並列に出力し、上位の処理に転送する。これによって、復号回路以後のすべての実現回路において高速動作が不要となる。図2の示した本発明の復号処理を具体的に実現する手段として、信号200を状態推定区間210a〜210dのブロック211a〜211dに分割する手段として信号分配装置103、ブロック211a〜211dにおいて、それぞれの状態推定に基づく最尤復号を実施する手段が最尤復号装置104 、復号されたそれぞれの結果をブロック分割したもとの順序に選択して、各々並列に読出して、上位の処理に転送する手段が選択装置110に対応する。
【0024】
また、通信や記録用符号の場合、符号伝送チャネル特性上の制約から、予め記録符号の直流成分あるいは特定周波数成分を抑圧したり、符号ビット”0”または”1”の連続出現回数を制御するランレングス制限を行う目的で、記録すべき符号を、符号変換規則により変換(変調)する操作がしばしば行われる。あるいは、さらに上位の処理として、誤り訂正符号化が施される場合もある。この場合、これを記録し、再生するには、復号された符号結果に記録時と逆の符号変換操作を施して元の符号へと再変換する(復調)処理、あるいは、誤り符号化規則を検査して誤りビットを検出/訂正する操作が必要となる。この場合、一定の符号長のブロック単位ごとに、変復調を行うブロック符号化変調/誤り検出訂正がしばしば適用される。本発明のブロック分割単位のビット数を、この符号に適用されるブロック符号化変調/誤り検出訂正の処理単位と同じ長さとして、同期させ、ブロック単位の転送で復調処理の入出力まで行うことにより、復号処理から復調/誤り訂正処理を経て、さらに上位の処理に至る全ての処理をブロック並列による低速処理で実現できる。また、個々の復号器に要求される状態遷移推定の処理速度を大きく低減できる。
【0025】
ところで、従来の最尤復号器は、復号を信号の前後関係により行うためであり、原理的に信号をブロック単位で分割して処理すると、ブロックの前端部と後端部において最尤系列推定が困難となる。よって従来の復号処理では、最尤復号器を使用すると、信号のブロック分割による並列化は困難である。本発明のブロック単位の最尤復号処理を従来技術を用いて行う場合には、分割された個々のブロック内の処理開始付近(前端部)において、それ以前の信号情報がないために、復号の信頼性が著しく低下したり、ブロック処理の終了付近(後端部)でそれ以後の信号情報が得られないために状態遷移の推定が未確定となってしまう等の問題が生じる。本発明では、以下の実施例に示す構成により問題を解決してブロック最尤系列推定処理を行う。
【0026】
まず、比較のために図8を用いて、従来の最尤推定器において行われる系列推定の手順を説明する。具体例としてあげる信号および復号の規則は、図2において述べたものと同様である。信号801 は、本来の正しい信号のパターンを示しており、実信号802 では、各サンプル点に雑音等の歪みが重畳して、正規の識別振幅レベルには信号レベル変動が生じている。この実信号802 から状態遷移図803 を最尤系列推定して、復号系列800を得るためには、一般的にビタビアルゴリズムが用いられ、各サンプル点ごとに以下のような手順を繰り返して、状態遷移の推定を進める。時刻kにおいてサンプル値y(k)が与えられたとして、状態遷移の推定は次の(1),(2)のように行われる。
【0027】
(1) 時刻kにおいて状態P(822a)に至る遷移(パス)を、時刻 k−1の状態P(821a)からによるものか(パス1、831a)、状態N(821b)からによるものか(パス2、831c)のいずれかに決定する。そのため直前の時刻 k−1の、状態P(821a)に至るための累積尤度 M_P(k−1)、状態N(821b)に至るための累積尤度 M_N(k−1)、パス1が示す信号振幅値0と信号値y(k)の二乗誤差E1(k)、およびパス2が示す信号振幅値+Aと信号値y(k)の二乗誤差E2(k)を得て
(数式1)
パス1に対する総合尤度:E1(k)+M_P(k−1) 但し E1(k)=(y(k)−0)^2
(数式2)
パス2に対する総合尤度:E2(k)+M_N(k−1) 但し E2(k)=(y(k)−A)^2
を評価し、小さい総合尤度をもつ方のパスを選択して、次の時刻の累積尤度M_P(k)を選択した総合尤度で置き換える。即ち、
(数式3)
M_P(k)=Min( E1(k)+M_P(k−1), E2(k)+M_N(k−1) )
但し、Min(A,B)はAとBのより小さいものを選択する演算を示す。
【0028】
(2) 状態N(822b)に至る遷移(パス)を時刻 k−1の状態P(821a)からによるものか(パス3、831d)、状態N(821b)からによるものか(パス4、831b)いずれかを決定する。(1)と同様に、累積尤度M_P(k−1), M_N(k−1)、パス3が示す信号振幅値−Aと信号値y(k)の二乗誤差E3(k)、およびパス4が示す信号振幅値0と信号値y(k)の二乗誤差E4(k)を得て
(数式4)
パス3に対する総合尤度:E3(k)+M_P(k−1) 但しE3(k)=(y(k)−(−A))^2
(数式5)
パス4に対する総合尤度:E4(k)+M_N(k−1) 但しE4(k)=(y(k)−0)^2
を評価し、小さい方のパスに対する総合尤度を選択して、次の累積尤度M_N(k)を選択した総合尤度で置き換える。即ち、
(数式6)
M_P(k)=Min( E3(k)+M_P(k−1), E4(k)+M_N(k−1))
上記(1)(2)の手順による処理を図8に示す例の実信号802 のブロックに適用した場合には、状態遷移の結果は、状態遷移図803 の太線で示すパスのようになる。
【0029】
しかし、上記(1)(2)の操作は、信号のサンプル値y(k)の入力ごとに繰り返され、前サンプル値の結果は、累積尤度M_P(k)とM_N(k)を介して、再帰的に処理される。次のサンプル値の入力までには累積尤度M_P(k)とM_N(k)とは、更新されていなければならないから、上記(1)(2)の一連の処理は次の入力までに完了されなければならない。ここに最尤系列推定の処理速度限界が生ずる。
【0030】
したがって、最尤復号の実効的処理速度をこの限界を超えて向上させるには、上述の実施例に述べるように、復号する信号をブロックごとに分割し、並列処理を実施する必要がある。
【0031】
図8に示すように、状態推定区間833bに対応する状態遷移図803 上に記された一連の太線パスは、最大尤度で確定された状態遷移の推定結果である。しかしながら、状態推定区間832aは、最初の累積尤度M_P(0),M_N(0)の設定に依存して推定結果が変わりうる区間であり、また状態推定区間833cは、未だパスの決定できない部分である。したがって、分割されたブロックに従来の最尤推定アルゴリズムをそのまま適用した場合には、ブロック内の全区間の復号において、最大尤度の信頼度で推定を下すことは、困難である。初期の累積尤度M_P(0),M_N(0)の設定によらず、最大尤度の系列推定結果を得るためには、推定開始から、最低1回のパス2またはパス3、すなわち状態Pと状態Nの間の遷移を経なければならない。図8においては、833a の状態推定区間において、この状態Pと状態Nの間の遷移を含んだ分岐状態推定834a が現れる。この経路選択によって、状態Pから開始されたパスは打ち切られ、それ以後のパスは、いずれも同じ側の状態(この場合は状態N)から開始されたものが比較されることになる。したがって、これ以後の相対尤度比較において、最初の累積尤度M_P(0),M_N(0)の初期設定と無関係に尤度判定を行うことができる。一方、833cの状態推定区間においても分岐状態推定834aが現れることによって、それ以前のパスは、状態Pに至るパス1本が生き残ることとなる。この2つの分岐状態推定834a, 834cが現れることによって、図8の状態推定区間833bに対応する太線パスは確定されている。このように最大尤度で確定するパスを得るためには、その前後に分岐状態推定834a, 834cが出現する必要があり、状態Pと状態Nの間の遷移が復号ブロックの前後の過程において含まれなければならない。
【0032】
状態推定区間の両端のパスの確定は、次の(1)(2)の方法を用いて実現される。
【0033】
(1) 各復号ブロックを符号系列を得ようとするブロック長833bに対して前後に長くとる、つまり、最尤推定系列を実施するブロック長を目的とする復号系列804の長さより大きめにとることによって、復号系列804における信頼度を高めることができる。復号系列804における復号の信頼度を最大とするには、前後に付加する推定の区間833aと区間833cのそれぞれに最低1つのパス2またはパス3を含むようにすればよい。即ち、この2つの区間内にビット”1”が必ず現われる符号列を用いる。例えば使用する符号として、ビット”1”の最大ビット間隔(最大0ラン長)がkビットの変調符号を用いて、対象となる区間(833b)の前後に付加する推定区間833aと833cをこのビット長kより大とすれば必要十分となる。
【0034】
この信号のブロック分割の方法を具体的に示す実施例を図3に示す。図3において信号200および状態遷移図203は、図2と同様の例である。最尤推定区間ブロック210a〜210dに対して、実際に各最尤復号器に供給されるブロック310〜312の長さは大きくとられる。例えばブロック311は、復号結果323により構成される本来の最尤推定区間長322bの前後の状態の変化を示すパス分岐321aと321bを含むよう余剰評価ビットが付加され、ブロック長322aが信号サンプルとして供給される。このブロック長322aにおいて、最尤推定区間322bの前後に付加された余剰ビットには、変調符号のゼロランレングス制限によって、ビット”1”が必ず最低1回出現するようにする。この前後に付加された余剰ビットの最尤推定では、パス分岐321aまたは321bが必ず起こる。前述したように最尤推定区間における区間の両端で原理的に生じうる復号の誤りは、この2つのパス分岐321aと321bでの誤り発生によって吸収される。したがって、本来の復号対象であるブロック322aの復号結果には、何らの影響も生じない。
【0035】
図3に示す実施例のブロック最尤推定は、時間的に隣接して供給され、信号ブロックの間に重複する部分が存在するため、復号処理としては必ずしも効率的なものではない。
【0036】
(2) 信号系列を重複のないブロックに分割して最尤復号を行う実施例を図4を用いて説明する。本実施例は、各ブロック内でのビット”1”の出現回数あるいは、出現回数の偶奇を制限した符号を使用する例である。これによって、各ブロックの状態遷移がどの状態から開始され、どの状態で終了するかを予め規定しておく。ブロックの開始の状態と終了の状態があらかじめ決められていれば、ブロック両端で生ずる上述の原理的な復号誤りは回避される。図4(a)の例では、ブロック408a〜408d内のビット”1”の数(信号ピーク+Aまたは−Aの出現回数、換言すれば状態遷移図402における状態Pと状態N間の遷移の回数)が、常に偶数個となるように、使用する符号に制限を与えた例を示す。ビット”1”の個数をブロック内で制限するために、それぞれのブロックを、本来の復号ビットに1ビットのパリティビットを付加したブロックで構成する。ブロック内のビット“1”の数に制限を設けることによって、各ブロック408a〜408dの各開始点406a〜406dにおいて通過する状態遷移図402上の状態を特定することができる。例えば、状態遷移図402においては、ブロックの各開始点406a〜406dでは、常に状態Nを通過している。従って、各ブロックの最尤推定の開始時点において、各状態に至る累積尤度を適切に設定することができる。
【0037】
図4(b) は、図4(a)の各ブロックに対する具体的な処理手順を説明する図である。図4(a)のように、各ブロックの開始状態が特定されれば、与えられたブロック内において最初に出現する非ゼロ信号パルスの極性は一意に特定される。この図4の例では、各ブロックに最初に生ずる状態PとNとの間の遷移は、N側からP側へと制限されるから、常に+Aの振幅パルスが最初に現れることになる。図4(b) は、各ブロックの信号推定を詳しく説明するためのものである。ここで、状態遷移図の推定を開始するにあたり、二つの状態P(403)と状態N(404)に対して、各状態に対する累積尤度M_P(0)とM_N(0)を0に初期化して、復号処理を開始すると、最初の+Aの信号パルス415に対して、適切な尤度で判定ができない。言い換えれば、最初の信号パルス415 は、復号誤りを起こしやすい結果となる。したがって、この累積尤度M_P(0)とM_N(0)の初期値に適切な尤度差を持たせるため、状態N(404) の通過条件である信号値−Aの付加信号点411 を、最尤推定区間を示す実信号410の直前に疑似的に加える。これは、復号するブロックの信号サンプル系列の前に、実際にこのような付加信号点411 を加えてもよいし、また、このような付加信号点411 が入力された場合に得られる累積尤度M_P(k)とM_N(k)の値を初期値として、通常の最尤推定処理を開始してもよい。以上の処理を施す結果、実信号417に対する状態遷移図413が推定される。この図において、最終分岐パス412以降の状態パスは未確定である。これは、それまでの状態P(403)と状態N(404)の間の遷移が一回しか確定されていないためであるが、偶数回の遷移がブロック内に存在するという最初の条件から、決定パス414 側が正しいパスと確定される。あるいは、ブロックの最後の状態(次のブロックの開始状態)が状態N(404)で終了しなければならないという制約から、決定パス414が正しいパスと確定することもできる。
【0038】
上記の実施例を多状態の状態遷移推定に一般化することは容易である。ブロック間の開始と終了時の通過状態遷移を一意に制限するため、使用する符号に一定の規則を設ける、あるいはブロック間に特定のビット列を挿入するなどして、上記図4の実施例は容易に実現することができる。
【0039】
図3および図4のブロック単位の最尤復号を実施する回路構成を図7に示す。具体的には、図1における最尤復号装置104 の構成例を示すものである。図1の信号分配装置103からブロック分配器105の入力端子700 に1ブロック分の連続信号値が供給される。ブロック分配器105 は供給された連続信号値をビットクロックタイミング699 に同期して、個々の信号値を入力ブロックバッファ記憶装置106 を構成する各記憶セルに順次記憶していく。本実施例の個々の最尤復号装置内では、この入力ブロックバッファ記憶装置106 の各記憶セルの内容を読みだして、最尤系列推定を行う。このための装置がバッファ選択装置701 である、この選択回路701を通じて、入力ブロックバッファ記憶装置106 の各記憶セルの内容に対して、最尤復号処理を行う。記憶セルから読みだされた信号値 y(k) は、各状態パス1〜4に対応する自乗誤差値 E1(k)〜E4(k) を4つの自乗誤差演算装置702a〜702dにより計算し、これと、状態Pおよび状態Nの累積尤度M_P(k−1)およびM_N(k−1)を加算する前出の式(1)(2)(4)(5)に相当する演算を加算器703a〜703dで行い、その結果を比較して最小値を得る式(3)および式(6)の比較演算を比較器704aおよび704bで行う。各比較器704aおよび704bで選択された累積尤度M_P(k)およびM_N(k)は、累積尤度レジスタ705aおよび705bに蓄えられる。また、各比較器704aおよび704bの2つの入力のどちらが選択されたか、すなわち、各状態PおよびNに至るパスとして、パス1とパス2およびパス3とパス4のそれぞれどちらが選択されたかを、復号レジスタ705aと705bのそれぞれに復号ビット結果”0”と”1”として記憶していく。このとき、処理される入力ブロックバッファ記憶装置106 の記憶セルの位置と複号レジスタの記録ビット位置は、カウンタ710 により対応づけられアドレスを指示される。また、パス2やパス3が選択された場合、一方の複号レジスタの記録ビット位置以前の値は、他方の複号レジスタの対応ビットの内容により置き換えられる。この一連の複号レジスタ更新処理を行うのが、レジスタ更新装置708a,708b である。最終的に入力ブロックバッファ記憶装置106 の全てについて処理を終えた後に復号レジスタ706aと706bの何れかを選択回路707 で選択し、選択された復号レジスタ706a又は706bの内容を並列に出力する。
【0040】
以上の構成の最尤復号装置104を用いて図3の最尤復号を実施するには、入力ブロックバッファ記憶装置106 を図3の322aに対応するブロック長にとり、選択した復号シフトレジスタ705aまたは705bの内容のうち、322bに相当する部分のみを選択回路707 を通じて並列に読みだす。選択回路707は図1の選択回路110に対応する。また、図4の最尤復号を実施するためには、付加信号411 に対応する信号値を入力ブロックバッファ記憶装置106 の最初の記憶セルの内容として記録しておき、処理終了後に最終の状態に相当する側の復号シフトレジスタ705aまたは705bの内容を並列に出力する。本実施例の構成上の特徴は、2ブロック分配器105 と入力ブロックバッファ記憶装置106とバッファ選択装置701を持ち、復号シフトレジスタ705aまたは705bの内容を並列に同時に読み出す点にある。
【0041】
図4では、ブロック内のビット“1”の数を制限することにより、ブロック端部の最尤系列推定が可能であった。よって、ブロック内のビット”1”の数を制限できない場合には、ブロック開始の状態遷移図の通過状態を一意に特定することはできない。ブロックごとに独立に推定を進めるには、各状態からの開始を仮定した状態遷移を複数進めておく必要がある。以下に示す実施例では各状態からの開始を仮定する状態遷移をそれぞれ行っておいて、別の復号器で行われる前ブロックの最尤推定処理が終了した時点で、その結果を参照して、どの状態から開始される状態遷移が正しかったかを選択する。
【0042】
図5に、使用する符号に制限ができない場合のブロック最尤推定の具体的な実施例を示す。
【0043】
図5(a)と図5(b)は同一の入力ブロック信号に対し、その開始状態を、状態Nと状態Pのそれぞれと仮定し、状態遷移を推定するものである。図4(b)の実施例と同様に、実信号推定範囲501と503の前に、振幅値−Aと+Aの付加信号点502と504をそれぞれ付加するものとして最尤推定を進め、状態遷移図505と506をそれぞれ得ている。この場合、それぞれの状態遷移図から得られる復号結果508と509には、1ビットの違いが見られる。正しい結果は、508か509のどちらか一方である。いずれかの復号結果を選択するため、前ブロックの状態推定結果(図5(c)と図5(d))の最終分岐パス515の状態を参照する。図5(c)のように最終分岐パス515が推定されているならば、決定パス516が成立する(状態Nで遷移終了)可能性があることから、次のブロックには、図5(a)が接続される。この接続するブロック間の尤度を判定するには、図5(c)の最終分岐パス515を生ずる信号値y(p) (517)と図5(a)の開始分岐パス516を生ずる信号値y(k)との間で
(数式7)
y(k)−y(p)>+A
の条件をチェックする。(数式7)の条件が、成立した場合、図5(c)の最終分岐パス516と図5(a)の開始分岐パスでは、決定パス516と517を通過する尤度の方が大となるから、この2つの分岐点に、それぞれビット”1”の復号結果を割り当てる。
【0044】
逆に図5(d)のように最終分岐パス519が推定されているならば、決定パス520が成立する(状態Pが遷移終了)可能性があるから、次のブロックとして、図5(b)が接続するものとして、上記と同様に、図5(d)の最終分岐パス515を生ずる信号値y(p) (517)と図5(b)の開始分岐パス516を生ずる信号値y(k)との間で
(数式8)
y(k)−y(p)<−A
の条件をチェックする。(数式8)の条件が、成立した場合、図5(d)の最終分岐パス516と図5(b)の開始分岐パスでは、決定パス520と521を通過する尤度の方が大となるから、この2つの分岐点に、それぞれビット”1”の復号結果を割り当てる。上記式(数式7)または(数式8)の条件が成り立つ以外の場合においては、未確定の分岐パスの部分には、ビット”0”を割りあてることで、全てのブロック間での最尤系列推定に関して整合のとれた復号が実施できる。また、状態遷移図505および506に示すように、遷移推定の開始を、それぞれ異なる状態からの開始としても、推定を進めるうちに、推定遷移図は、一致する。すなわち、図5(a)と図5(b)の二つの推定遷移図505と506において、互いに異なるのは、開始分岐パス516 の発生位置のみである。したがって、両者のパス推定において、分岐パスが初めて現われた後に、推定遷移の状態が一致した時点からは、どちらか一方の状態遷移推定処理のみを進めればよく、他方の状態遷移推定結果としては、一方の推定結果によるものと同じものを継続して出力すればよい。このようにして、二つの状態遷移の推定結果を照合して、両者が一致することを検知し、この検知以後の状態遷移の推定による最尤復号処理を一方の回路で行うことにより、実現回路の動作効率を上げ、消費電力等を抑えることが可能である。
【0045】
図6には、図5のブロック最尤推定を具体的に実現する回路構成を示す。図6に示す回路構成は図1の実施例における個々の最尤復号装置104 に相当する。本実施例において、入力端子500 から、入力された信号ブロックのサンプル値(図1の信号分配装置103の出力)は、それぞれ、入力ブロックバッファ記憶装置502の各記憶セルに、ブロック分配501(図1の105に対応)によって、順次記憶される。個々の記憶セルの信号値は、出力線503 を通じて個別に読みだすことができ、最尤系列推定器504aと504bにそれぞれ入力される。この2つの最尤系列推定器504aと504bは、判定部505aと505bによって、図5(a)と図5(b)に対応する2つの開始状態をそれぞれ仮定した最尤系列推定を、図7に示した技術と同種の原理構成により実現し、入力ブロックバッファ記憶装置502(図1の106に対応)の各記憶セルの内容に対して逐次処理を行って行く。そして、判定部505a、505bで、状態推移の確定した復号結果のビットの値を、復号レジスタ507aと507b内の対応するビット位置に書き込む。このため、判定部505aと505bの指示により、アドレス線511aおよび511bを通じてレジスタビット位置を指定し、レジスタ書き込み装置506aおよび506bを介して、復号レジスタ507aと507b内の指定されたビット位置にビット情報を書き込む。比較検出器516 は、この2つの最尤系列推定器504aと504bの推定状態遷移の結果を常に比較しており、同じ入力ブロックバッファ記憶装置502 の記憶セルからの入力値に対して、両者、推定状態遷移の結果が一致することを検出して、この一致検知後の最尤系列推定器504b の動作を停止することを指示する。同時にアドレス切り替え器517 によって、復号レジスタ507bの入力アドレス線511bを511aに切り替えて、以後の復号レジスタ507aと507bには、判定部504aの推定結果に基づき、同じ記録がなされる。判定部505aと505bには、図5(a)と図5(b)における開始分岐パスの位置をそれぞれ記録する分岐アドレスレジスタ508aと508bが設けられている。また、同様に図5(c)や図5(d)に見られる最終分岐パスの位置をそれぞれ記憶するポインタレジスタ509aと509bが設けられ、一連の状態遷移推定処理が判定部505aと505bにおいて終了した結果、これには、最終分岐パスのビット位置が記録される。同時にこのときの最終分岐パスの状態は、状態レジスタ510aと510bにそれぞれ記憶されており、これを参照して、このブロックでの最終分岐パスの状態が図5(c)と図5(d)の場合のいずれであるかを知ることができる。ブロックの開始分岐パスの復号結果を決定するには、前ブロック復号器の端子A1から、前ブロックの最終分岐パスの状態を参照して、これに接続される状態遷移推定が、最尤系列推定器504aと504bのどちらに基づくものかを判定し、これに対応する分岐アドレスレジスタ508aと508bの内容を選択器521により選択して、入力ブロックバッファ記憶装置502の記憶セルから、式(数式7)または(数式8)のy(k)に対応する値を選択器523により読みだす。判定回路523は式(数式7)または(数式8)の判定を、前ブロック復号器からの端子A2により参照されるy(p)の値により実行して、開始分岐パスに対する復号結果を523aと523bにより指示して、復号レジスタ507aと507bに書き込む。(書き込みビット位置は、アドレス線513aと513bに指示される)。また、この判定回路523の出力523cにより、前ブロックの最終分岐パスに対する復号結果も与える。一方、判定部504のアドレスポインタ509aの内容は、選択器519に参照され、入力ブロックバッファ記憶装置502の記憶セルから、本ブロックの最終分岐パスに対応する信号値を読みだして、端子A2を通じて、次ブロックの復号装置に送られる。同様に、状態レジスタ510aの示す本ブロックの最終分岐パスの状態は、端子A2を通じて、次ブロック復号装置に送られて、同様に処理される。以上の処理を完了することによって、復号レジスタ507aまたは507bには、入力ブロックバッファ記憶装置502に蓄えられた信号ブロックに対応する復号ビット列が設定される。この2つの復号レジスタ507aと507bのうち、前ブロック復号器の端子A1が示す分岐パスの状態に対応する側の復号レジスタの内容を選択器524により選択する。そして、各ビット並列読み出しによって、出力端子525に出力することができる。上記構成の復号器を並列に複数設けて、ブロック毎に完全な最尤系列推定による復号を実施することにより、復号性能を低下させることなく、復号処理の大幅な高速化が図ることが可能である。
【0046】
本発明の復号装置を磁気記録再生装置に適用した実施例を図9に示す。記録媒体901 上から再生ヘッド902 を通じて再生された信号は、増幅器903 を通じて所定の信号レベルに増幅されて、アナログフィルタ904 により雑音を除去した後にアナログ/ディジタル変換器905 を通して離散信号値にサンプルされる。離散信号値は、ディジタルフィルタ906 によって波形整形処理された後に本発明の復号装置102 に供給される。復号装置102 内では、信号分配装置103 により、連続離散信号値をブロック分割して、並列に設けた最尤復号装置104 に供給し、ぞれぞれ復号処理を行う。そして、並列読みだし線109 から個々に読みだした復号結果を選択装置110 で順次選択して、並列出力線111 から符号復調回路112 に送出し、復調処理の後に上位の記録系制御装置907 へデータ転送を行う。本発明の復号装置102 により、復号処理以降のデータ処理および転送が並列化されて、再生装置の高速化が図られる。
【0047】
【発明の効果】
単独で動作させる際にはその動作速度が動作クロックその他の制約により制限されてしまう回路を組み合わせることにより、単独動作速度よりも、高速で動作可能な最尤復号装置を提供することができる。また、復号結果が並列出力で得られるので、この復号装置以後に並列処理が可能となり、時系列な信号処理に較べて、全体としての回路動作が高速になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的構成を説明する図。
【図2】ブロック最尤系列推定の原理を説明する図。
【図3】本発明におけるブロック最尤復号の実施例。
【図4】本発明におけるブロック最尤復号の第2の実施例。
【図5】本発明におけるブロック最尤復号の第3の実施例。
【図6】復号装置104の具体的構成を示す実施例。
【図7】最尤復号装置の一実施例を説明する図。
【図8】従来最尤推定器による系列推定を説明する図。
【図9】本発明を用いた磁気記録再生装置構成を説明する図。
【符号の説明】
500…入力端子、501…ブロック分配器、502…入力ブロックバッファ記憶装置、503…出力線、504ab…最尤系列推定器、505ab…判定部、506ab…レジスタ書き込み装置、507ab…復号レジスタ、508ab…分岐アドレスレジスタ、509ab…ポインタレジスタ、510ab…状態レジスタ、511,512,513,518ab…アドレス線、514ab…書き込み線、515ab…出力線、516…比較検出器、523…判定回路、519,522…データ選択器、516a…選択指示信号、517,521,523,524…選択器、523ac…書き込み指示信号線、524a…選択信号線、525…出力端子。

Claims (6)

  1. 通信または記憶装置チャネルにおいて、2進符号列に基づく出力信号の離散的タイミング値から元の符号列を最尤列の推定により復号する方法であって、
    上記2進符号列の中のビット“0”の最大連続数がkビットのとき、順次入力される信号の離散的タイミング値列をk+1ビット以上の長さの信号ブロックに分割し、
    上記信号ブロックの前後に連続する余剰の信号値列をk+1個以上付加し、
    上記信号ブロックの各々に対して独立に最尤系列推定による復号処理を施して元の符号列を求め、
    上記信号ブロックに対する符号列を上記信号ブロックを分割した順序で出力して、上記元の符号列に相当する復号された信号値列を得ることを特徴とする復号方法。
  2. 上記信号ブロックには、この信号ブロックに相当する符号ブロック内の符号ビット“1”の数が所定数に制限されるように固定長符号ビットが付加された、上記復号処理が行われることを特徴とする請求項に記載の復号方法。
  3. 記録媒体と、該記録媒体から信号を再生するための再生ヘッドと、該再生ヘッドから読み出された再生信号を離散信号値に変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、該アナログ/ディジタル変換器によって離散信号値に変換された再生信号を波形整形処理するディジタルフィルタと、該ディジタルフィルタによって波形整形処理された再生信号を復号処理するための復号器とを備えた磁気記録再生装置において、
    前記復号器は、前記離散信号値に変換された再生信号のタイミング値から元の符号列を最尤列の推定により復号する装置であって、
    2進符号列の中のビット“0”の最大連続数はkビットであり、順次入力された前記2進符号信号列を、その前後に連続する余剰の信号値列がk+1個以上付加されたようなk+1ビット以上の所定のもった信号ブロックに分割する手段と、
    上記信号ブロックを単位として複数個設けられた最尤系列推定器の各々に順次供給する手段と、
    上記最尤系列推定器の各々から出力された復号符号列の符号ビットが並列に入力され、順次選択された上記復号符号列の並列出力結果を順次選択して、並列に出力する手段とを有することを特徴とする磁気記録再生装置。
  4. 上記信号ブロックに符号ビット“1”の数が所定数となるように固定長符号ビットを付加して符号ブロックを生成する手段を有し、上記符号ブロックを用いて復号処理を行うことを特徴とする請求項に記載の磁気記録再生装置。
  5. 上記最尤系列推定器は、供給された上記信号ブロックを構成する個々の離散的信号値を各々記憶する第1の記憶手段と、上記第1の記憶手段の内容を順次出力して最尤系列判定を行う手段と、得られた最尤系列判定結果から復号符号ビット列を記憶する第2の記憶手段と、上記第2の記憶手段に記憶された復号符号ビット列の各ビットを並列に出力する手段とを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気記録再生装置。
  6. 上記最尤系列推定器は、異なる初期状態を設定して入力された単位信号ブロックに対して複数の最尤系列判定結果を得る手段と、上記複数の最尤系列判定結果をそれぞれ記憶する複数の記憶手段と、上記複数の最尤系列判定結果の一致を検出する比較検出手段と、上記最尤系列が一致した場合には1の最尤系列判定結果を上記複数の記憶手段に記憶させ、1単位前の信号ブロックの最尤系列推定の結果に基づいて上記信号ブロックの初期状態を決定し、決定された初期状態と一致する初期状態を有する最尤系列判定結果を選択的に出力する選択手段を有することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
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