JP3633869B2 - 毛髪損失の予防および治療用の化粧製剤 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、血管動態性、抗菌性および抗アンドロゲン性の各活性を有する物質の併用に基づく、毛髪損失の予防および治療に有用な新規製剤を提供する。毛髪損失は、“頭部帽状器官（ｇａｌｅａ ｃａｐｉｔｉｓ）”中の周辺血管の微細循環の減少により、細菌叢との変化した関係により、さらには局所アンドロゲン代謝の変化により、悪化の影響を受けることが、文献からも化粧の実際からも知られている。アンドロゲン類、とりわけ毛球におけるジヒドロテストステロンの堆積増加が、アンドロゲン脱毛症の病因に深く関与していると考えられている。
【０００２】
日本特許 ＪＰ−８３１０９２３によると、ダイダイ（Ｃｉｔｒｕｓ ａｕｒａｎｔｉｕｍ）の果皮および、サルビア（Ｓａｌｖｉａ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）、セイヨウハッカ（Ｍｅｎｔｈａ ｐｉｐｅｒｉｔａ）、ユーカリプタスグロブラス（Ｅｕｃａｌｉｐｔｕｓ ｇｌｏｂｕｌｕｓ）、アルテミシアプリンセプス（Ａｒｔｅｍｉｓｉａ ｐｒｉｎｃｅｐｓ）およびローズマリー（ｒｏｓｍａｒｉｎｕｓ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）の葉および花の水蒸気蒸留で得られる精油は、テストステロン５−アルファ−レダクターゼのインヒビターと考えられ、それゆえ、脱毛症、多毛症および脂漏症の処置に有用であるとされている。欧州特許ＥＰ−４３３１３１Ａは、メチルニコチネートまたは他の合成化合物などの公知の血管拡張薬と併用して、脂質物質中に含ませた精油を、毛髪損失またはふけ形成および類似の寄生症状の予防に使用することについて特許請求している。これらの精油の化学組成は報告されておらず、その効果にはおそらく最終製剤中に存在する他の合成化合物が関与している。
【０００３】
今や、ある種の植物を単独でまたは組合わせてアルコール抽出し、次いで蒸留して得られるモノテルペン類の混合物が、驚くべきことに血管動態性、抗菌性および抗アンドロゲン性の各活性を示すことが分かった。精油について知られている抗菌活性は、レーザードップラー（Ｌａｓｅｒ Ｄｏｐｐｌｅｒ）技術やコンピュータービデオキャピラリ観察法を使用して、混合物適用処置前および適用後の皮膚領域内の血流制御によって示され、顕著な血管動態活性と関連づけられることは全くなかった。
【０００４】
シクロオキシゲナーゼＩおよびＩＩを強力に阻害することが知られているサリチル酸、および、炭素原子１０から１４のアシル鎖を有する飽和および不飽和脂肪酸（とりわけラウリン酸およびミリスチン酸のような炭素原子１２のもの）と、組合わせたモノテルペン混合物は、とりわけ通常状態およびアンドロゲン脱毛症における毛髪損失の処置に有用であることが示された。このモノテルペン混合物は、モノテルペン類の単一市販品を適切な割合で混合し、またより良くは、精油を含む６炭（ｈｅｘｏｔｉｃ）植物類の根、根茎、葉、樹皮および種子と混合し、［それらはこれまで毛髪損失の予防または治療用の化粧品に使用されたことがないものである。（但し、その化粧への使用が既知であり、本発明で報告されるメカニズムと異なるメカニズムによるローズマリーオイルを除く。）］、同品を７０％エタノールに浸し、最後に常圧蒸留して所望のモノテルペン類を含むアルコールを集めることにより得られる。
【０００５】
例示すれば、精油の混合物は下記方法により得られる。即ち、クルクマロンガ（Ｃｕｒｃｕｍａ ｌｏｎｇａ）、ニクズク（Ｍｙｒｉｓｔｉｃａ ｆｒａｇｒａｎｓ）、フェルラガルバニフルウラ（Ｆｅｒｕｌａ ｇａｌｂａｎｉｆｌｕａ）、リキタンバーオリエンタリス（Ｌｉｑｕｉｄａｍｂａｒ ｏｒｉｅｎｔａｌｉｓ）、アルピニアオフィシナルム（Ａｌｐｉｎｉａ ｏｆｆｉｃｉｎａｒｕｍ）、アコルスカラムス（Ａｃｏｒｕｓ ｃａｌａｍｕｓ）、アロエベラ（Ａｌｏｅ ｖｅｒａ）、カンナリウムコムネ（Ｃａｎｎａｒｉｕｍ ｃｏｍｕｎｅ）、コミフォラモルモル（Ｃｏｍｍｉｐｈｏｒａ ｍｏｌｍｏｌ）、オイゲニアアロマティカ（Ｅｕｇｅｎｉａ ａｒｏｍａｔｉｃａ）、シナニッケイ（Ｃｉｎｎａｍｏｎｕｍ ｃａｓｓｉａ）、ガジュツ（Ｃｕｒｃｕｍａ ｚｅｄｏａｒｉａ）、アルニカモンタナ（Ａｒｎｉｃａ ｍｏｎｔａｎａ）、ローズマリー（Ｒｏｓｍａｒｉｎｕｓ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ） の根茎を、同様に熟考した量および少量のテレペンチンオイルを７０％水性アルコール中に浸漬する。各植物１０ｇから５０ｇ、好ましくは２０ｇの範囲の量の植物性物質を、７０％エタノール １．２リットル中で室温で２日間撹拌する。次いで常圧でアルコールを蒸留し、０．７から０．９５リットル、好ましくは０．８５リットルの留出物を集める；この留出物を水で好ましくは５０％ｗ／ｗまで希釈し、不溶性油状残渣を取り除いた後、そのまま毛髪損失を抑制するために使用でき、また他の活性成分を加えるための基剤とすることができる。特に、蒸留で得られる混合物は、サリチル酸およびメントールと混合し、２５から７５％、好ましくは５０％ｗ／ｗの水性アルコール溶液で希釈した後、３ないし６０日間、好ましくは３０日間浸しておき、不溶性油状残渣を取り除いた後で使用する。
【０００６】
該水性アルコール混合物は、本発明の第一の目的であり、主成分としてβ−ピネン、カンフェン、 β−ミルセン、リモネン、シネオール（１，８−エポキシ−ｐ−メンタン）、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン−オール、イソボルネオールを、図示のガスクロマトグラフに対応する割合で含むものである。該クロマトグラフは、ＨＰ−Ｉｎｎｏｗａｘカラム（架橋ポリスチレングリコール、１９０９１ Ｎ−１３３部分のＮ、３０ｍ×０．２５ｍｍ Ｉ．Ｄ．， ０．２５μｍフィルム厚）を使用し、次の温度プログラムに従い：６０℃×５分間、３^ｏ／分で６０℃から２５０℃まで、２５０℃で３分間；１２０℃から２５０℃まででＰＴＶ（Ｐｒｏｇｒａｍｍｅｄ Ｔｅｍｐｅｒａｔｕｒｅ Ｖａｐｏｒｉｚｅｒ）で注入して得られる。この混合物にサリチル酸またはその塩と抗アンドロゲン活性を有する脂肪酸とを添加すると、毛髪成長および毛髪力を向上させて毛髪損失を減らすという、驚くほど相乗的な効果をもたらす。そのため、本発明の第二の目的は、サリチル酸またはその塩とＣ_１０−Ｃ_１４の飽和または不飽和脂肪酸と組合わせて、上述の混合物を含有する製剤により代表されるものである。
【０００７】
本発明の好ましい実施態様によると、この精油混合物は下記方法で得られる。即ち、ガジュツ（Ｃｕｒｃｕｍａ ｚｅｄｏａｒｉａ）の根茎 ２０ｇ、ニクズク（Ｍｙｒｉｓｔｉｃａ ｆｒａｇｒａｎｓ）の種子 ２０ｇ、シナニッケイ（Ｃｉｎｎａｍｏｎｕｍ ｃａｓｓｉａ）の枝樹皮 ２０ｇ、オイゲニアアロマティカ（Ｅｕｇｅｎｉａ ａｒｏｍａｔｉｃａ）の花 ２０ｇ、アコルスカラムス（Ａｃｏｒｕｓ ｃａｌａｍｕｓ）の根茎 ２０ｇ、ショウガ（Ｚｉｎｇｉｂｅｒ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）の根茎 ２０ｇおよびアルピニアオフィシナルム（Ａｌｐｉｎｉａ ｏｆｆｉｃｉｎａｒｕｍ） ２０ｇを、エタノール０．９リットルに浸漬する。１日後、フェルラガルバニフラ（Ｆｅｒｕｌａ ｇａｌｂａｎｉｆｌｕａ）、リキタンバーオリエンタリス（Ｌｉｑｕｉｄａｍｂａｒ ｏｒｉｅｎｔａｌｉｓ）、アロエベラ（Ａｌｏｅ ｖｅｒａ）、カンナリウムコムネ（Ｃａｎｎａｒｉｕｍ ｃｏｍｕｎｅ）、コミフォラモルモル（Ｃｏｍｍｉｐｈｏｒａ ｍｏｌｍｏｌ）、アルニカモンタナ（Ａｒｎｉｃａ ｍｏｎｔａｎａ）、ローズマリー（Ｒｏｓｍａｒｉｎｕｓ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）の樹脂油類、およびテレペンチンオイルを、浸漬生成物に５ｇから５０ｇの間で量を変えて加え、樹脂油類のアルコール懸濁液にする。
【０００８】
その後、水をアルコール度数が約７０％になるまで加え、混合物を４０℃で２時間撹拌した後、蒸留を開始してアルコール留出物 約０．８５リットルを収集する。この留出物は強い芳香臭のする無色透明液体である。
【０００９】
他の物質を加えていない留出物は、血管動態性、抗菌性および抗脂漏症性の各活性を有する。
モノテルペンを含む水性アルコール混合物は、毛細管レベルでの容積および流速を増加させるが、これは、上述のとおり、初期および第二期脱毛症で非常に重要なことである。実際、この混合物を皮膚に塗布すると、様々な器官部の血流が調整されるが、とりわけ、レーザードップラーを使用して流量増加を試験している表１で報告しているデータから分かるとおり、“頭部帽状器官（ｇａｌｅａ ｃａｐｉｔｉｓ）”での血流を増加させている。
【００１０】
表１ アルコール留出物を水で１：１希釈し、単独投与した後、レーザードップラーを使用して測定した皮膚の血流変化
【００１１】
【表１】

【００１２】
本発明の製剤を、１週間から３ヶ月まで期間を変えて投与すると、表２および表３で報告したデータから分かるとおり、ヒトにおいてアンドロゲン性脱毛症を著しく軽減させる。表２は、実施例１の製剤の適用によって生じた流量増加を示しており、これはレーザードップラー分析で実証されている。レーザードップラー流量測定法は、血管動態効果を試験するために、低能力Ｈｅ−Ｎｅレーザー光源によって生成させた波長６３２ｎｍの単色光の鋭敏な光束を照射する装置である、ＰｅｒｉＦｌｕｘ（Ｒ） ＰＦ３流量計を使用して実施した。この技術により、基準状態と試験物適用後とにおける（最初の塗布から１５分後（急性効果）、および３０、６０および９０日間処置後（長期効果））頭皮血流量を測定した。結果を表２に示す。
【００１３】
表２ 実施例１で調製したローションの局所適用（９０日間）による平均毛細血管流動効果
【００１４】
【表２】

＊＝分散分析法の分割プロットグラフ（Ｂｏｎｆｅｒｒｏｎｉ’ｓ ｔ）の結果が標準に対してｐ＜０．０１。Ｎ＝１０。
【００１５】
無作為に１０つのグループに分けた試験個体のトリコグラム（ｔｒｉｃｈｏｇｒａｍ）を行なって、処置開始時および処置終了時（９０日）における製剤の毛髪損失抑制効果を評価した。トリコグラムは、ゴム付ピンセットを使用して前頭頂部と側頭部から毛髪を適当数（約５０）抜き取ることから成る。
【００１６】
毛根のマイクロスコープ検査を行なえば、髪の質が、成長期（ｇｒｏｗｔｈ）、退行期（ｍａｔｕｒｅ）および休止期（ｒｅｓｔ）の何れにあるかを評価できる。通常値に対比して成長期の割合が減少し休止期の割合が増加（それぞれ約８５−９０％および約１０−１５％）することは、毛髪損失病状の臨床的証拠である。
【００１７】
表３ 実施例１で調製したローションを局所適用（９０日間）したときのトリコグラム効果
【００１８】
【表３】

＊＝計算結果が標準に対してｐ＜０．０１
【００１９】
上記報告のデータから明らかであるように、製剤の連日投与により長期間局所に適用したアルコール留出物は、皮膚に時間持続性の有利な微小脈管動態効果を与える。トリコロジカルなパラメーターである、休止期、成長期、退行期は、類似した態様を示す。留出物と低分子量の飽和および不飽和脂肪酸のような他の物質との組合せは、アンドロゲンレセプターについて干渉し合い、休止期−成長期−退行期の割合の明らかな改善を導き出す。この皮膚処置は、血流増加とその結果として起こる栄養物質増加により、数日後、潅流血細血管の増加がふけの終息などの明らかな皮膚改善をもたらす；毛根は、皮脂分泌量が正常な標準状態にあり開いている。
【００２０】
本発明の化粧製剤は、水性アルコールローション形態（頭皮処置用に好適）またはゲル形態であり、毛髪損失または脂漏症の処置に使用できる。
【００２１】
この処置に好適な組合せは以下のものを含む；水性アルコール混合物濃度が５ないし２０％、好ましくは１０％、脂肪酸濃度が０．１ないし０．５％、好ましくは０．２５％、そしてサリチル酸濃度が０．１ないし１％、好ましくは０．３％。
【００２２】
これらの物質による処置には数日から６ヶ月までの幅がある。本発明に基づく製剤の実施態様を以下に説明するが、何れにしても本発明を限定することを意図しない。
【００２３】
実施例Ｉ 頭皮処置用の化粧製剤の基剤として使用できる、高濃度に精油を含む留出物の調製
エタノール ０．９リットルを２リットルビーカーに注ぎ、精油混合物はガジュツ（Ｃｕｒｃｕｍａ ｚｅｄｏａｒｉａ）の根茎 ２０ｇ、ニクズク（Ｍｙｒｉｓｔｉｃａ ｆｒａｇｒａｎｓ）の種子 ２０ｇ、シナニッケイ（Ｃｉｎｎａｍｏｎｕｍ ｃａｓｓｉａ）の枝樹皮 ２０ｇ、オイゲニアアロマティカ（Ｅｕｇｅｎｉａ ａｒｏｍａｔｉｃａ）の花 ２０ｇ、アコルスカラムス（Ａｃｏｒｕｓ ｃａｌａｍｕｓ）の根茎 ２０ｇ、ショウガ（Ｚｉｎｇｉｂｅｒ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）の根茎 ２０ｇおよびアルピニアオフィシナルム（Ａｌｐｉｎｉａ ｏｆｆｉｃｉｎａｒｕｍ） ２０ｇ（細かく切り刻んだもの）を撹拌しながら加え、１日間浸漬する。フェルラガルバニフラ（Ｆｅｒｕｌａ ｇａｌｂａｎｉｆｌｕａ）、リキタンバーオリエンタリス（Ｌｉｑｕｉｄａｍｂａｒ ｏｒｉｅｎｔａｌｉｓ）、カンナリウムコムネ（Ｃａｎｎａｒｉｕｍ ｃｏｍｕｎｅ）、コミフォラモルモル（Ｃｏｍｍｉｐｈｏｒａ ｍｏｌｍｏｌ）、ローズマリー（Ｒｏｓｍａｒｉｎｕｓ ｏｆｆｉｃｉｎａｌｉｓ）の樹脂油 １０ｇを、植物原料を除かずに浸漬物に加える；さらに、テルペンチンオイル ２０ｇを加え、樹脂油のアルコール懸濁液を安定させる。２日間浸漬した後、アルコール度数が約７０％になるまで水を加え、混合物を４０℃で２時間撹拌した後、常圧で蒸留を開始し、アルコール留出物 ０．８５リットルを収集する。この留出物は、図のガスクロマトグラフによれば主成分としてβ−ピネン、カンフェン、 β−ミルセン、リモネン、シネオール（１，８−エポキシ−ｐ−メンタン）、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン−オール、イソボルネオールを図示の割合で含む。
【００２４】
実施例ＩＩ 精油、サリチル酸、ラウリン酸を含むローション
このローション １００ｇは以下を含む：
【００２５】
【表４】

脱塩水適量を加えて全量を１００ｇにする。
【００２６】
実施例ＩＩＩ 精油、ラウリン酸、四量体シクロシロキサンおよび５量体シクロシロキサンの８０：２０混合物を含むローション
このローション １００ｇは以下を含む：
【表５】

９５％エタノールおよび水でアルコール度数約５０％にしたもの適量を加えて全量を１００ｍｌにする。
【図面の簡単な説明】
【図１】水性アルコール混合物であり、主成分としてβ−ピネン、カンフェン、 β−ミルセン、リモネン、シネオール（１，８−エポキシ−ｐ−メンタン）、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン−オル、およびイソボルネオールを含む、ガスクロマトグラフ

Claims (10)

1. 各成分が図示のクロマトグラフに対応する割合で含まれる、β-ピネン、カンフェン、β-ミルセン、リモネン、シネオール(１,８-エポキシ-p-メンタン)、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン-オールおよびイソボルネオールの水性アルコール性モノテルペン混合物。
2. サリチル酸またはその塩、および炭素数１０ないし１４の飽和または不飽和脂肪酸と組合わせた、請求項１に記載の混合物。
3. 該混合物が５ないし２０％ w/wの濃度で、サリチル酸が０.１ないし１％の濃度で、脂肪酸が０.１ないし０.５％の濃度で存在する、請求項２に記載の混合物。
4. 該混合物が１０％の濃度で、サリチル酸が０.３％の濃度で、脂肪酸が０.２５％の濃度で存在する、請求項３に記載の混合物。
5. さらに医薬的に許容され得る担体および賦形剤を組合わせた、請求項２ないし請求項４の１つに記載の化粧用製剤としての混合物。
6. 水性アルコールローションおよびゲルの形態である、請求項５に記載の混合物。
7. ａ）ガジュツ(Curcuma zedoaria)、ニクズク(Myristica fragrans)、シナニッケイ(Cinnamonum cassia)、オイゲニアアロマティカ(Eugenia aromatica)、アコルスカラムス(Acorus calamus)、ショウガ(Zingiber officinalis)、アルピニアオフィシナルム(Alpinia officinarum) 、フェルラガルバニフラ(Ferula galbaniflua)、リキタンバーオリエンタリス(Liquidambar orientalis)、アロエベラ(Aloe vera)、カンナリウムコムネ(Cannarium comune)、コミフォラモルモル(Commiphora molmol)、アルニカモンタナ(Arnica montana)およびローズマリー(Rosmarinus officinalis)の根、根茎、葉、樹皮および種子から選択される１種またはそれ以上の部分を７０％エタノール中に浸漬し、テルペンチンオイルを加えて室温で２日間撹拌すること、
   ｂ）工程ａ)の生成物を４０℃、常圧で留出させること、
   ｃ）工程ｂ)の留出物を水で希釈し、不溶性油状残渣を取り除くこと、
   を含む、各成分が図示のクロマトグラフに対応する割合である、β-ピネン、カンフェン、β-ミルセン、リモネン、シネオール(１,８-エポキシ-p-メンタン)、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン-オールおよびイソボルネオールの水性アルコール性モノテルペン混合物の調製法。
8. 植物またはその一部を、７０％エタノール１ . ２リットルあたり、各植物につき１０ないし５０gの量で使用する、請求項７に記載の方法。
9. 該量が２０ｇである、請求項８に記載の方法。
10. 各成分が図示のクロマトグラフに対応する割合で含まれる、β - ピネン、カンフェン、β - ミルセン、リモネン、シネオール ( １ , ８ - エポキシ -p- メンタン ) 、樟脳、リナロール、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、メントール、テルピネン - オールおよびイソボルネオールの水性アルコール性モノテルペン混合物の、そのままでの、またはサリチル酸またはその塩および炭素数１０ないし１４のいずれかの飽和または不飽和脂肪酸と併用での、毛髪損失および脂漏症の処置に有用な化粧製剤の調製への使用。

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