JP3633219B2 - スプライン結合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸部材とパイプ部材とのスプライン結合に関する。
【0002】
【従来の技術】
軸部材とパイプ部材とのスプライン結合において、両者のガタを低減する構造が、例えば、実公昭63−17862号公報で提案されている。
【0003】
このものを図10に示す。軸部材1は、その基端側が第1の自在継手4に連結されており、先端側の外周には外スプライン1aが形成されている。一方パイプ部材2は、その基端側が第2の自在継手5に連結されていて、先端側の内周には内スプライン2aが形成されている。また、パイプ2の先端部には、軸方向に沿って4本のスリット2bが形成されており、さらに先端縁近傍の外周には環状溝2cが形成されている。この環状溝2cには弾性材からなる円環状の緊締部材3がはめられている。
【0004】
パイプ部材2の先端部は、上述の4本のスリット2bが形成されていることに基づいて内側への変形が可能となっており、緊締部材3によって先端部が締められることで、外スプライン1aや内スプライン2aが摩耗している場合でも、両者間のガタが少なくなる。
【0005】
なお、上述のようなスプライン結合は、例えば、自動車用にステアリングジョイントに使用されるものであり、上述の例では、軸部材1とパイプ部材2とは、第1の自在継手4と第2の自在継手5との位相が一致するように、スプライン結合がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術によると、軸部材1とパイプ部材2とは、それぞれの外スプライン1aと内スプライン2aとを介して軸方向移動可能に連結されているので、緊締部材3だけでは、例えば、輸送中や取扱時等に、パイプ部材2から軸部材1が脱落してしまうおそれがあった。
【0007】
なお、脱落が発生した場合、第1の自在継手4と第2の自在継手5との位相が不明になって位相を一致させるのに時間がかかったり、また、位相のずれた誤挿入によって実車上で大きなトルク変動が発生したりする等の問題が発生することになる。
【0008】
そこで、本発明は、軸部材とパイプ部材との脱落を防止するようにしたスプライン結合構造を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための、請求項1に係る本発明は、先端部に軸方向のスリットを有するとともに先端部内側に内スプラインを有するパイプ部材に対し、先端部外側に外スプラインを有する軸部材を挿入して前記パイプ部材と前記軸部材とをスプライン結合し、前記パイプ部材の先端外側を緊締部材で締めつけて前記内スプラインに前記外スプラインを密着させるスプライン結合構造において、
前記緊締部材に一体にまたは別体に前記スリットを介して径方向に延びる脱落防止部材が設けてあり、該脱落防止部材は前記緊締部材により前記軸部材または前記パイプ部材に向って径方向に付勢されており、前記パイプ部材に対する前記軸部材の、軸方向の相対的な抜け動作に対し、前記緊締部材と前記軸部材の一部とに同時に係合して抜け方向に対する抵抗となりそれ以上の抜け動作を阻止することを特徴とする。
【0010】
上述の請求項1の発明によると、軸部材とパイプ部材とはそれぞれの外スプラインと内スプラインを介して、回動不能かつ軸方向移動自在に連結される。さらに、パイプ部材の先端部は、スリットにより、内側に変形可能となっている。したがって、パイプ部材の先端部をその外側から緊締部材によって締めつけると、先端部は内側に変形し、先端部内側の内スプラインが、軸部材の先端部外側の外スプラインに密着される。このため、例えば、長期使用によって、内スプライン及び外スプラインに摩耗が発生している場合でも、両者は有効に密着され、軸部材とパイプ部材との間の相対的な軸方向の移動が円滑に行われる。加えて、軸部材に対するパイプ部材の、またパイプ部材に対する軸部材の軸方向の抜け動作に対しては、脱落防止部材が緊締部材及び軸部材の一部に同時に係合して抵抗として作用する。このため、軸部材とパイプ部材との脱落は防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
〈実施の形態1〉
図1、図2に、本発明に係るスプライン結合構造の実施の形態1を示す。なお、図1は、軸部材及びパイプ部材の軸を含む縦断面図を示し、また、図2は、図1のA−A線矢視図を示す。
【0013】
これらの図に示すスプライン結合構造は、軸部材10と、パイプ部材20と、緊締部材30と、脱落防止部材40とを備えている。
【0014】
軸部材10の基端側(図1の左方)には、第1の自在継手50が取り付けられており、また、パイプ部材20の基端側(図1の右方)には、第2の自在継手60が取り付けられている。
【0015】
まず、これら第1、第2の自在継手50、60について簡単に説明し、その後、軸部材10、パイプ部材20、緊締部材30、脱落防止部材40の順に詳述する。
【0016】
第1の自在継手50は、第1のヨーク51に固定された、C字形の第1のアーム52を備えている。アーム52は、その両端部においてベアリング53、53を介して、第1の十字継手54の一方の軸を回動自在に支持している。第1の十地継手54の他方の軸は、第2のヨーク55を回動自在に支持している。本発明を主要構成部材の1つである軸部材10は、その基端部が、この第2のヨーク55に固定されている。
【0017】
第2の自在継手60は、パイプ部材20の基端部に取り付けられた円筒状の弾性緩衝筒61を備えている。弾性緩衝筒61は、パイプ部材20の基端部を軸に直角な方向に貫通するトルク伝達部材62によって貫通されており、トルク伝達部材62は第3のヨーク63によって支持されている。つまり、この第3のヨーク63は、弾性緩衝筒61を介してパイプ部材20の基端部を保持するとともに、トルク伝達部材62を介してパイプ部材20にトルク伝達するものである。第3のヨーク63は、その両端部においてベアリング64、64を介して、第2の十字軸65の一方の軸を回動自在に支持しており、第2の十字軸65の他方の軸は、ベアリングを介して第4のヨーク66を回動自在に支持している。
【0018】
上述の第1、第2の自在継手50、60にあっては、第1のヨーク51の回転を、第1のアーム52、第1の十字軸54、第2のヨーク55を介して、軸部材10に伝える。そして、この軸部材10の回転は、パイプ部材20から、第2の自在継手60のトルク伝達部材62に伝達され、さらに、第3のヨーク63、第2の十字軸65を介して第4のヨーク66に伝達される。
【0019】
軸部材10は、基端側に上述の第1の自在継手50が連結されており、また、先端側の外周面(外側)には外スプライン11が形成されている。外スプライン11は、軸部材10の全長(軸方向の長さ)の半分よりも少し長く形成されている。外スプライン11の基端側の一部には、外スプライン11の有効長さのほぼ半分に当たる長さの切欠部12が形成されている。この切欠部12の最先端には、後述の脱落防止部材40に係合して軸部材10の脱落を防止する段状の抜け止め13が設けられている。また切欠部12の最後端には、同じく後述の脱落防止部材40に係合して、軸部材10の挿入限度を規制する段状のストッパ14が設けられている。
【0020】
パイプ部材20は、基端側に上述の第2の自在継手60が連結されており、また、先端側の内周面(内側)には内スプライン21が形成されている。内スプライン21は、パイプ部材20の全長(軸方向の長さ)のほぼ半分だけ形成されている。パイプ部材20の先端部には、軸方向に沿って4本のスリット22が形成されている。このスリット22の軸方向の長さは、内スプライン21のほぼ半分である。また、4本のスリーブ22は、図2に示すように、パイプ部材20を周方向に4等分する位置に設けられている。さらに、パイプ部材20の先端縁近傍には、他の部分よりも少し外径の小さい、環状の溝23が設けてある。この溝23には、次の緊締部材30が装着される。
【0021】
緊締部材30は、一部に切欠31を有する円環状の部材であり、軸方向の幅は、上述の溝23の軸方向の幅よりもわずかに小さく設定されている。したがって緊締部材30は、溝23に嵌着すると、軸方向には不動となる。なお、緊締部材30は、例えば金属によって形成すればよい。
【0022】
脱落防止部材40は、ほぼ直方体状に形成されている。脱落防止部材40の長さLは、図1に示すように、緊締部材30の幅よりも長く、また脱落防止部材40の幅Wは、図2に示すように、スリット22の幅よりも少し短く設定されている。脱落防止部材40は、図1に示すように、高さ方向の中央より少し上に、同図中の左方に開口部41を有し右方に向かう切欠42を有する。なお、切欠42は同図中の右方には開口していない。この切欠42を緊締部材30に嵌合させた状態において、脱落防止部材40の下面43は、軸部材10の切欠部12から少し浮いた状態となる。なお、この下面43を切欠部12に接触させるときは、これにより軸部材10を下方に押し下げる力が作用し、軸部材10とパイプ部材20とのガタを防止することができる。
【0023】
上述構成の、スプラインの結合構造は、次のようにして組み立てる。
【0024】
第1の自在継手50と第2の自在継手60の位相を合わせた状態で、パイプ部材20の先端から軸部材10を挿入して、外スプライン21に内スプライン11を係合させる。その後、パイプ部材20の先端縁近傍の溝23に緊締部材30を嵌める。これにより、スリット22を有するパイプ部材20の先端部は内側に向かって変形し、軸部材10の外スプライン11とパイプ部材20の内スプライン21との間のガタが低減される。そして、パイプ部材20の4本のスリット22の内の上方に位置するスリット22の、緊締部材30よりもパイプ部材20の基端側の位置に、脱落防止部材40を嵌め、図1中の左方にスライドさせるようにして、軸部材10の切欠部12に落とし込み、開口部41を介して緊締部材30に嵌め込む。この状態において、脱落防止部材40の下面43が、切欠部12に内部に入り込むようにする。
以上の組立作業により、図1、図2に示す状態となる。この状態において、緊締部材30は、パイプ部材20の溝23に嵌められているので、パイプ部材20の軸方向に移動することはできず、さらに、この緊締部材30に対して脱落防止部材40は同図中の左方(軸部材40の抜け方向)には移動することができない。すなわち、脱落防止部材40は、軸部材10の抜け方向に作用する力に対しては、パイプ部材20と一体となるように構成されている。
【0025】
ここで、軸部材10に抜け方向に移動すると、軸部材10の切欠部12の抜け止め13が脱落防止部材40の下端に突き当たる。このとき脱落防止部材40は、上述のように、パイプ部材20と一体になっているので、軸部材10は、パイプ部材20に対してこれ以上の抜け方向に移動は阻止される。すなわち、パイプ部材20からの軸部材10の脱落が防止される。
【0026】
なお、軸部材10が挿入方向に移動した場合は、脱落防止部材40に、切欠部12のストッパ14が突き当たり、これ以上の挿入動作が阻止される。
【0027】
〈実施の形態2〉
図3に実施の形態2を示す。本実施の形態2は、実施の形態1と脱落防止部材40のみが異なる。なお、他の同一な点については同じ符号を付して重複説明は省略するものとする(これは実施の形態3以降についても同様とする。)。
【0028】
すなわち、実施の形態2では、パイプ部材20に軸部材10を挿入して、緊締部材30を装着した後、緊締部材30の一部を、図3に示すように、ほぼ直角に下方に折り曲げて屈曲部32とする。この屈曲部32は、スリット22を介して軸部材10の切欠部12に入り込むようにする。この屈曲部32が、実施の形態1の脱落防止部材40と同様に作用する。
【0029】
〈実施の形態3〉
図4、図5(a)(b)に実施の形態3を示す。本実施の形態3は、実施の形態1と比べて、軸部材10に切欠部12を設けない点、及び脱落防止部材40に代えて図示の脱落防止部材70を使用する点が異なる。
【0030】
脱落防止部材70は、一部に切欠71aを有する環状部材71と、2本の脚部72によって構成されている。各脚部72は、基端部が環状部材71に連結されており、また先端部には爪部72aが形成されている。
【0031】
本実施の形態3の脱落防止部材70は、図4に示すように、軸部材10における、外スプライン11とそれ以外部分(以下「非スプライン部15」という)との境界16近傍における、非スプライン部15側に環状部材71を嵌め、パイプ部材20の上方と下方のスリット22に脚部72を嵌める。この状態において、脚部72の爪部72aの先端はスリット22の外側に突出するようにする。なお、上述の非スプライン部15の直径は、外スプライン11の各歯先を結ぶ円周の直径より小さいので、境界部16には段部が形成されることになる。
【0032】
ここで、軸部材10が抜け方向に移動すると、軸部材10の境界部16の段部が、環状部材71に突き当たり、また、脚部72の爪部72aが緊締部材30に突き当たる。これにより、軸部材10の抜け動作が禁止される。
【0033】
上述の脱落防止部材70は、例えば、鉄等の金属によって形成することができる。
【0034】
なお、鉄に代えて、例えば、合成樹脂で形成する場合には、図6(a)(b)の脱落防止部材73に示すように、環状部材74を切欠のないものとし、かつ爪部75aを有する脚部75を4本設けるようにしてもよい。
【0035】
〈実施の形態4〉
図7、図8に実施の形態4を示す。なお、図7は上半部のみ断面としており、また、図8は図7のB−B線矢視図である。
【0036】
本実施の形態4の、上述の実施の形態3と異なる点は、上述の脱落防止部材70に代えて、軸部材10に溝部17を形成し、さらにこの溝部17に脱落防止部材76を嵌合させる点にある。
【0037】
軸部材10の外スプライン11の一部に環状の溝部17を設ける。そしてこの溝部17に、半円状の脱落防止部材76を嵌着する。脱落防止部材76の中央には、パイプ部材20のスリット22から上方に突出する突出部77を設ける。
【0038】
軸部材10が抜け方向に移動すると、この突出部77が緊締部材30に突き当たって、それ以上の向け動作を阻止するものである。
【0039】
〈実施の形態5〉
図9に示す実施の形態9は、上述の実施の形態4の溝を細くして溝18とし、この溝18に脱落防止部材78としてワイヤを巻き付けてその一部がスリット22から突出するようにしたものである。
【0040】
軸部材10が抜け方向に移動すると、このワイヤが緊締部材30に突き当たって、それ以上の向け動作を阻止するものである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、パイプ部材のスリットを介して緊締部材と軸部材との間に脱落防止部材を介装し、パイプ部材に対する軸部材の、軸方向の相対的な抜け動作に対し、脱落防止部材が緊締部材と軸部材の一部とに同時に係合して抜け方向に対する抵抗となるようにすることにより、それ以上の抜け動作を阻止して脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スプライン係合構造の実施の形態1の、軸を含む縦断面図。
【図2】図1のA−A線矢視図。
【図3】スプライン係合構造の実施の形態2の、軸を含む縦断面図。
【図4】スプライン係合構造の実施の形態3の、軸を含む縦断面図。
【図5】実施の形態3における脱落防止部材の単品図。
【図6】実施の形態3における他の脱落防止部材の単品図。
【図7】スプライン係合構造の実施の形態4の、一部破断正面図。
【図8】図7のB−B線矢視図。
【図9】スプライン係合構造の実施の形態5の、一部破断正面図。
【図10】従来技術のスプライン係合構造の一例を示す縦断面図。
【符号の説明】
10 軸部材
11 外スプライン
20 パイプ部材
21 内スプライン
22 スリット
30 緊締部材
32 脱落防止部材(屈曲部)
40、70、73、76、78
脱落防止部材
Claims (7)
- 先端部に軸方向のスリットを有するとともに先端部内側に内スプラインを有するパイプ部材に対し、先端部外側に外スプラインを有する軸部材を挿入して前記パイプ部材と前記軸部材とをスプライン結合し、前記パイプ部材の先端外側を緊締部材で締めつけて前記内スプラインに前記外スプラインを密着させるスプライン結合構造において、
前記緊締部材に一体にまたは別体に前記スリットを介して径方向に延びる脱落防止部材が設けてあり、該脱落防止部材は前記緊締部材により前記軸部材または前記パイプ部材に向って径方向に付勢されており、前記パイプ部材に対する前記軸部材の、軸方向の相対的な抜け動作に対し、前記緊締部材と前記軸部材の一部とに同時に係合して抜け方向に対する抵抗となりそれ以上の抜け動作を阻止することを特徴とするスプライン結合構造。 - 前記脱落防止部材は前記軸部材または前記パイプ部材に接触していることを特徴とする請求項1に記載のスプライン結合構造。
- 前記脱落防止部材は前記緊締部材に固設されていることを特徴とする請求項1に記載のスプライン結合構造。
- 前記軸部材外周には長さ方向に延びる切欠きが形成してあり、前記脱落防止部材の内径側端部は該切欠き端部に係合可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のスプライン結合構造。
- 前記緊締部材の先端部が径方向内向きに折り曲げられて前記脱落防止部材が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスプライン結合構造。
- 前記脱落防止部材は前記軸部材に嵌着された概ね環状部材と該環状部材から前記スリットを介して径方向外向きに延び前記緊締部材に係接可能な爪部とから成ることを特徴とする請求項1に記載のスプライン結合構造。
- 前記脱落防止部材は金属または合成樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のスプライン結合構造。
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