JP3631526B2 - 車椅子 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、歩行の不自由な人が使用する車椅子に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車椅子としては、座席を支持するフレームに車軸を介して左右一対に設けられた車輪を、使用者自身が手回しリングで回転させるものが一般的であるが、モータ等の電動機で車輪を回転駆動する機構を備えたものも普及してきており、いずれの場合も、介助者用のハンドルならびに車輪を制動するためのブレーキを備えたものがある。このような車椅子に限らず、いわゆる車両には通常ブレーキ機構が設けられており、そのブレーキ機構としては、たとえば、実開昭62−105812号公報に示されるように、モータの駆動軸と一体にディスクプレートを固定し、このディスクプレートをブレーキパッドで挟んで制動するようなものが従来よりある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に示されるブレーキ機構は、ブレーキディスクがモータハウジングの中に収納されており、そのため、ブレーキ機構のメンテナンスに手間を要するとともに、車椅子に適用する際において、ブレーキ機構が有るタイプと無いタイプとに切り替えられるような要望が生じた場合、それが困難である。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、装備されるブレーキ機構のメンテナンスが簡単に行えるとともに、ブレーキ機構が有るタイプと無いタイプとに簡単に切り替えることができる車椅子を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであって、請求項1記載の車椅子は、座席が設けられるフレームと、該フレームに固定された左右一対の車軸と、これら車軸に、ハブを介して回転自在に装着される左右一対の車輪とを備え、前記ハブは、前記各車輪の中心に固定される椀状のハブ本体と、該ハブ本体の開口を覆って配設されるとともに前記車軸に一体的に固定され、かつ、ハブ本体に、ハブ本体と相対回転可能に連結された蓋体とを有し、該蓋体の外面には、前記ハブ本体の回転を制動するブレーキ機構が取り付けられる取付部が前記車軸に対しオフセットされた位置に形成され、該取付部に、前記ブレーキ機構が前記車軸方向に着脱自在に取り付けられることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の車椅子は、請求項1記載の車椅子において、前記取付部が前記蓋体に形成した取付孔で構成され、該取付孔から前記ハブ内に前記ブレーキ機構の少なくとも一部が挿入されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の車椅子は、請求項1記載の車椅子において、前記ブレーキ機構は、ブレーキ軸と、該ブレーキ軸に固定されてブレーキ軸と一体回転する回転体と、該回転体に摺接可能とされた摩擦部材と、これらブレーキ軸、回転体および摩擦部材を収納するブレーキケースとから構成され、前記ブレーキ軸は、ブレーキケースに軸支されるとともに、その一端がブレーキケースから突出し、その突出端に、前記ハブ本体に形成したギヤに噛合するブレーキギヤが設けられ、ブレーキケースごと前記蓋体の前記取付部に着脱自在に取り付けられることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の車椅子は、請求項2または3記載の車椅子において、前記ブレーキケースが前記蓋体の前記取付部に取り付けられた状態において、前記ブレーキギヤは前記ハブ内に、また、前記回転体はハブ外にレイアウトされていることを特徴としている。
【0009】
【作用】
本発明の請求項1に係る車椅子によれば、蓋体の取付部にブレーキ機構が着脱自在に取り付けられるので、ブレーキ機構のみ、後からハブに取り付けられ、またメンテナンスも簡単に行える。また、車椅子を、ブレーキ機構が有るタイプと無いタイプとに簡単に切り替えることができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る車椅子によれば、蓋体へのブレーキ機構の取付部を取付孔とし、この取付孔にブレーキ機構の少なくとも一部を挿入することにより、ブレーキ機構を備えたハブ全体のコンパクト化が図れる。
【0011】
本発明の請求項3に係る車椅子によれば、ブレーキ機構の回転体と摩擦部材とがブレーキケースに収納されて防塵性が高まっているので、両者の摺接部の耐摩耗性および防水性が向上し、良好な作動性が維持される。ブレーキ軸のブレーキギヤとハブのギヤとを噛合させ、ブレーキ軸の制動をハブに伝達させるので、ブレーキ軸の減速が可能となってその軸トルクを小さいものに設定でき、このためブレーキ機構をコンパクトなものにできる。
【0012】
本発明の請求項4に係る車椅子によれば、ハブ内にあるブレーキ軸のブレーキギヤをハブに対応させて小さくすれば、ハブ内の他のパーツへの影響を小さくでき、また、取付部が取付孔である場合には、その取付孔を小さくして蓋体の剛性低減を防ぐことができる。一方、回転体をハブ外にレイアウトすることにより、回転体の寸法をある程度任意にできるので、設計自由度が高まる。
【0013】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図1は本発明の一実施例の電動式車椅子1に使用者Mが乗っている状態の左側面図を示しており、図2はその車椅子の正面図、図3は背面図、図4は平面図を示している。本実施例の車椅子1は、パイプを組んで構成された折り畳み式のフレーム2と、フレーム2に設けられ使用者Mが着座する座席3と、フレーム2の前後に左右一対として設けられた補助輪4および駆動輪である車輪5と、フレーム2の前部に配された運転装置6と、一方の車輪5(この場合右側の車輪5)側に取り付けられた走行用電源であるバッテリパック7とから構成されている。
【0014】
まず、車椅子1の骨組となるフレーム2から説明していく。
フレーム2は、同一構成の左側フレーム10A、右側フレーム10Bと、これらフレーム10A、10Bを連結する連結フレーム11からなり、左右に閉じる方向に折り畳み可能に構成されている。左側および右側フレーム10A、10Bは、上パイプ12、中パイプ13、下パイプ14および後パイプ15が組まれてできている。
【0015】
上パイプ12は、前後に延びる手掛け枠12aと、その前端の前縦枠12bとを構成し、中パイプ13は、中間横枠13aと、その前端の足掛け枠13bとを構成してる。足掛け枠13bの先端には、この足掛け枠13bを軸として折り畳めるように足掛け板16が設けられている。また、下パイプ14は、下横枠14aと、その前端の足掛け枠支持部14bとを構成し、後パイプ15は、ブロック15aと、その上端のハンドル部15bとを構成している。両フレーム10A、10Bは、中パイプ13の中間横枠13aの部分と、下パイプ14の下横枠14aの部分との間にX字状にクロスして架け渡された前記連結フレーム11により連結されている。連結フレーム11の上部側と後パイプ15との間には、補強フレーム11aが架け渡されている。
【0016】
左右の中パイプ13の中間横枠13aの間には着座シート17が張られ、左右の後パイプ15の間には背もたれシート17bが張られており、これらシート17a、17bで前記座席3が構成されている。各シート17a、17bは、折り畳みに支障のないよういずれも可撓性を有している。連結フレーム11どうしは中央でピン結合されて相対回動自在であり、中パイプ13と下パイプ14とに回動自在にピン結合され、補強フレーム11aも、連結フレーム11と後パイプ15とにピン結合され、このようなピン結合状態により、左右のフレーム11A、11Bを互いに近付かせると連結フレーム11および補強フレーム11aが回動し、車椅子1全体が折り畳まれるようになっている。図5は折り畳まれた状態を示しており、このように車椅子1が折り畳まれたときに、左右の車軸34の内側の端面どうしが当接し、他のパーツが折り畳んだ勢いで損傷しないように配慮されている。
【0017】
次いで、前記補助輪4および車輪5について説明する。
補助輪4はいわゆるキャスタ式の車輪であって、前記左右の上パイプ12の前縦枠12bの下端にそれぞれ装着され、車椅子1の方向転換すなわち操舵を可能としている。車輪5は、図6および図7に示すように、リム20およびリム20に装着されたタイヤ21とからなり、放射状に配列された多数のスポーク22により、中心に配されたハブ30に連結されている。
【0018】
そのハブ30は、図8に示すように、底の浅い有底円筒状のハブ本体31と、ハブ本体31の開口を塞ぐ円盤状の蓋体35とから構成されている。ハブ本体31の内側中心にはボス32が形成されており、このボス32に、2つのベアリング33を介して車軸34が装着され、この車軸34は、フレーム2の後パイプ15に溶接固定されたブロック15aに形成された貫通孔に嵌合され、かつナット37で固定されており、これによって車輪5はフレーム2に回転自在に支持されている。蓋体35は、車軸34に嵌合固定されており、ハブ本体31との間にはわずかな隙間があいている。この隙間は水等の侵入を防ぐためにラビリンス状に形成されている。したがって、車軸34と蓋体35はフレーム2に対して一体に固定され、車輪5はハブ本体31とともに回転するようになっている。
【0019】
なお、ハブ本体31には、車輪5の外側に位置する手回しリング36が一体に固定されている。この手回しリング36は、使用者Mが手動で車輪5を回転させて走行するときに用いるものである。
【0020】
さて、車輪5は前述したように駆動輪であり、ハブ30に設けられた駆動機構40により回転駆動される。図9および図10に示すように、駆動機構40は、ハブ30の蓋体35における反ハブ本体31側の外面にボルト止めされた円筒状のモータ41と、このモータ41の駆動ギヤ42に連結された複数(この場合2つ)の減速ギヤ43、44とから構成されている。駆動ギヤ42の駆動軸42aおよび各減速ギヤ43、44のギヤ軸43a、44aは、蓋体35と蓋体35の内面にネジ止めされたギヤケース45とに、ベアリング46を介して回転自在に支持され、駆動ギヤ42、各減速ギヤ43、44はギヤケース45内に収納された状態となっている。下流側の減速ギヤ44のギヤ軸44aの先端はギヤケース45から突出し、その突出端に、ピニオンギヤ47が設けられており、このピニオンギヤ47が、前記ハブ30のハブ本体31の底部内周に装着された内歯である内歯ギヤ30aに噛合している。ギヤケース45は、蓋体35に固定された状態で車軸34を取り囲むように略円弧状に形成されており、さらに、モータ41は、ギヤケース45の端部であって、車軸34に対してオフセットされた位置に配設されている。
【0021】
モータ41の駆動軸42aが回転すると、その回転は減速ギヤ43、44を経てピニオンギヤ47から内歯ギヤ30aに伝わり、もって車輪5が回転するようになっている。なお、モータ41の駆動軸42aの回転数は、ハブ30内に設けられ、駆動軸42aにタイミングベルト48で連結されたエンコーダ49により検出されるようになっている。このエンコーダ49はモータ41に近接させてギヤケース45に並設され、蓋体35の内面にボルト止めされている。
【0022】
また、ハブ30には、車輪5の回転を制動するブレーキ機構50が設けられている。このブレーキ機構50は、いわゆるドラムブレーキ式であり、一端にブレーキドラム(回転体)51が、他端にブレーキギヤ52が設けられたブレーキ軸53と、このブレーキ軸53が装着されるブレーキケース54と、このブレーキケース54内に収納されたブレーキシュー(摩擦部材)55とから構成されている。ブレーキケース54は、ケース本体54aと、ケース本体54aにボルト止めされるケースカバー54bとからなり、ケース本体54aに形成された筒部56内に、ブレーキ軸53が、ベアリング57を介して軸回りに回転自在に挿入されている。
【0023】
ブレーキ機構50は、ブレーキケース54ごとハブ30の蓋体35の外面に着脱自在に取り付けられるようになっている。蓋体35への取り付けは、蓋体35にあけられた取付孔(取付部)35bにケース本体54aの筒部56を挿入し、ケース本体54aを蓋体35にボルト止めすることで行う。ハブ30の外面に取り付けられた状態で、ブレーキ軸53の先端のブレーキギヤ52はハブ30内にあって内歯ギヤ30aに噛合し、ブレーキドラム51はハブ30の外側にレイアウトされている。ブレーキシュー55は、ブレーキドラム51を囲む一対のシュー片55aの一端どうしがヒンジ結合され、それらの自由端にはブレーキワイヤ58が係合されている。ブレーキワイヤ58は、ハンドル部15bに装着されたブレーキレバー59に連結されており、このブレーキレバー59を握ると、ブレーキシュー55がブレーキドラム51を締め付けてブレーキ軸53の回転が制動され、その結果、ハブ本体31の回転すなわち車輪5の回転が制動されるようになっている。なお、ブレーキレバー59はハンドル部15bに着脱自在となっており、したがって、ブレーキレバー59、ブレーキワイヤ58およびブレーキ機構50で構成されるブレーキ系パーツは、車椅子1に対して取付け・取外しが容易にできるようになっている。
【0024】
前記減速ギヤ44には、モータ41の駆動力をハブ本体31へ伝達する経路をつないだり切ったりするクラッチ機構60が設けられている。図10および図11に示すように、減速ギヤ44のギヤ軸44aは、減速ギヤ44の中心に相対回転自在に挿入されて減速ギヤ44とは別体に構成されており、そのギヤ軸44aには、ピニオンギヤ47が設けられた側の端部を残して中空部61が形成され、さらに中央部には、長さ方向に延びて中空部61に連通するスリット62が形成されている。中空部61には、クラッチスプリング63を挟んでクラッチロッド64が摺動自在に挿入されている。クラッチロッド64の内部側の端部(挿入側の端部)にはピン65が直交して固定され十字状になっている。減速ギヤ44のハブ本体31側に向く面には、ギヤ軸44aと同軸的に円形の凹所66が形成され、さらにその凹所66の底部には、十字溝67が形成されている。クラッチロッド64は、クラッチスプリング63によって蓋体35側つまりギヤ軸44aから抜ける方向に常に付勢され、その状態が、ピン65が十字溝67に係合することにより規制されている。
【0025】
このようにピン65が十字溝67に係合していると、減速ギヤ44とギヤ軸44aがピン65を介して一体に連結し、クラッチ接続の状態になる。このクラッチ接続状態から、クラッチロッド64をクラッチスプリング63の力に抗してハブ30内に押し込むと、ピン65がスリット62内を移動して凹所66内に位置する。この状態では、ピン65は凹所66内にあって減速ギヤ44と非係合状態なので、減速ギヤ44がいくら回転してもその回転はギヤ軸44aに伝わらず、逆に言うと車輪5の回転がモータ41に伝わらないクラッチ非接続状態となる。上記クラッチスプリング63、クラッチロッド64、ピン65、凹所66、十字溝67でクラッチ機構60が構成されている。
【0026】
上記ギヤケース45の内部には、各ギヤ42、43、44およびクラッチ機構60の動作を潤滑するためのグリス等の潤滑剤が充填され、この潤滑剤がギヤケース45の外に漏れないように、ギヤケース45と蓋体35の内面の間には、漏出防止用の図示せぬシール材が挟まれている。
【0027】
左右のハブ30に設けられた上記クラッチ機構60の操作すなわちクラッチロッド64の押し込み操作は、右側の車輪5に設けられたクラッチレバー70で行われるようになっている。このクラッチレバー70は、図6に示すように、車椅子1の使用者Mが操作する前側レバー70Aと、介護者が操作する後側レバー70Bとが一体になったV字状のレバーで、基端部が、右側の車軸34に対して回動可能に装着されて車輪5に沿って回動する回動式に構成されており、車輪5と右側フレーム10Bとの間の隙間において前側レバー70Aは前方斜め上方に、また後側レバー70Bは後方斜め上方にそれぞれ延びている。前側レバー70Aの方は下に向かって若干湾曲している。クラッチレバー70の先端には内側に屈曲するレバー把持部71が形成されており、クラッチレバー70の長さは、横から見るとレバー把持部71が車輪5のタイヤ21よりも外側に位置するように設定されている。
【0028】
クラッチレバー70の基端部には、車軸34への装着部分から屈曲するレリーズプレート72が一体に形成され、その先端内側には、図11に示すように、クラッチロッド64を押圧する押圧片73が形成されている。この押圧片73の内面には、回動方向に沿って先端から徐々に厚くなるようにテーパ面73aが形成されている。レリーズプレート72は、ハブ30の蓋体35に装着されたサポートスプリング75によりクラッチレバー70が図11における実線の状態に保持されたとき、クラッチ機構60は接続状態であり、クラッチレバー70を図6における矢印(イ)方向に押して回動させると、押圧片73がクラッチロッド64をハブ30内に押し込み、クラッチ機構60が非接続状態になる。図12にも示すように、クラッチレバー70の基端部の側面にはピン76が突設されている一方、サポートスプリング75には2つの係合凹所75a、75bが離間して形成されており、ピン76は、クラッチ接続状態で手前側の係合凹所75aに、そしてクラッチ非接続状態では前方の係合凹所75bに弾性的にそれぞれ係合するようになっており、いずれの場合も、クラッチレバー70の移動が規制されてそれぞれの状態が保持されるようになっている。
【0029】
このように、クラッチレバー70が装着された右側の車輪5のクラッチ機構60は、クラッチレバー70により直接操作されるが、もう一方の左側の車輪5のクラッチ機構60は、クラッチレバー70に連結されたクラッチワイヤ80を介して操作されるようになっている。クラッチワイヤ80は、その一端がクラッチレバー70の基端部近傍に係止され、他端が、左側の車輪5の車軸34に回動可能に装着されたレリーズプレート81の先端に係止されている。クラッチレバー70を図6において矢印(イ)方向に押して回動させると、クラッチワイヤ80に引張力が発生し、リターンスプリング74に抗してレリーズプレート81を図7の二点鎖線の位置に回動させ、押圧片73がクラッチロッド64をハブ30内に押し込み、クラッチ非接続状態となる。逆にクラッチレバー70を戻すとクラッチワイヤ80の引張力が解除され、リターンスプリング74の引張力により図7の実線位置までレリーズプレート81が回動し、クラッチ接続状態となる。なお、図3および図4に示すように、上記クラッチワイヤ80は、ブレーキワイヤ58とともに座席3の背もたれシート17bの後方に取り回されている。
【0030】
上記のように、左右の車輪5を支持する左右のハブ30には、車輪5を回転させる駆動機構40、ブレーキ機構50、クラッチ機構60が設けられ、これらに加え、さらに補助アーム90が取り付けられている。この補助アーム90は、座席3が後方に過度に後傾することを防ぐものであり、図12に示すように、ハブ30の蓋体35の後部に形成されたフランジ部35aにブラケット91を介して取り付けられている。補助アーム90は、ブラケット91に固定された固定アーム92と、この固定アーム92に摺動可能に挿入されて先端に車輪93が装着された可動アーム94とから構成され、後方斜め下方に延びている。可動アーム94は、内部に組み込まれたスプリング95で付勢されるストッパ96が、固定アーム92に形成された図示せぬストッパ孔に嵌まることで固定アーム92に固定されている。ストッパ孔は、固定アーム92の長さ方向に複数形成されており、ストッパ96を押してストッパ孔への係合を外した状態で、可動アーム94は固定アーム92に沿って動かすことができ、つまりは補助アーム90は伸縮自在で長さを調節でき、ストッパ孔へのストッパ96の係合で、その長さを保持できるようになっている。
【0031】
上記補助アーム90は、座席3が後方に傾くと下方に回動し、それがある角度まで達すると、車輪93が接地することでそれ以上の座席3の後傾を防ぐ働きをする。
【0032】
さて、前述の駆動機構40のモータ41は、直方体状のバッテリパック7を電源としている。このバッテリパック7はいわゆる充電池であって、一方(この場合右側)のハブ30に取り付けられたバッテリホルダ110に着脱自在に装填されるようになっている。バッテリホルダ110は、図12ないし図14に示すように、ハブ30の蓋体35に対しモータ41とともにボルト止めされ、蓋体35への取付け部分から後方斜め上方に延びており、下部にはコントローラ収納部111、その上に上方に開口するバッテリ収納部112が形成されている。コントローラ収納部111には、左右のモータ41へ供給する電流を制御してそれらモータ41の作動状態を制御するメインコントローラ113が収納されている。バッテリパック7は、複数のバッテリ101が、相互の電極が接続された状態で収納されている。バッテリパック7には、バッテリホルダ110に対する着脱や持ち運びの際に便利なように把手102が設けられている。なお、前記ハブ30内には、メインコントローラ113からの出力信号を受けて同じ側にあるモータ41に必要なトルクを出力するように電力をPWM制御するサブコントローラ119が、ケース119aに覆われて収納されている。
【0033】
バッテリホルダ110の基端部には、モータ41に被せられてモータ41を軸に回動可能な円筒状のモータカバー107が一体成形されており、このモータカバー107とともにバッテリホルダ110全体が、前後方向に回動するようになっている。バッテリホルダ110のコントローラ収納部111を形成する内壁部には、バッテリホルダ110の回動軸を中心とした円弧状の長孔108aが複数(この場合3つ)形成されており、これら長孔108aに通したねじ108bにより、蓋体35に設けた取付板109にバッテリホルダ110が取り付けられるようになっている。すなわち、バッテリホルダ110は、モータ41を軸として長孔108aの長さ分だけ蓋体35への取付位置が調整可能となっている。
【0034】
バッテリホルダ110のバッテリ収納部112へのバッテリパック7の収納状態は、バッテリホルダ110に設けられたロック機構114により保持されるようになっている。このロック機構114は、図15および図16に示すように、バッテリホルダ110の側壁部110aの上端に設けられたロック片115およびロックスプリング116から構成されている。ロック片115は、側壁部110aに貫通形成された横孔117に摺動自在に収納されており、横孔117を塞ぐプラグ118との間に介装されたロックスプリング116により、バッテリホルダ110の内部側に常に突出するように付勢されている。ロック片115の先端側には、バッテリホルダ110の開口側に向く傾斜面115aが形成されている。一方、バッテリパック7の、バッテリホルダ110に収納された際のロック機構114に対向する側壁部100aの所定箇所には、係合凹所103が形成されている。また、この係合凹所103が形成された側壁部100aの上方部分には、ロック解除ピン104が挿入されている。このロック解除ピン104の上端には押しボタン105が取り付けられており、この押しボタン105は、スプリング106により常に上方に付勢された状態になっている。
【0035】
ロック解除ピン104をロック機構114に対向するようにしてバッテリパック7をバッテリホルダ110のバッテリ収納部112に収納していくと、ロック機構114のロック片115はバッテリパック7の側壁部100aに押されて横孔117に引っ込み、さらにバッテリパック7を収納していって係合凹所103がロック片115の先端に達すると、ロックスプリング116によりロック片115が係合凹所103に飛び出して係合する。バッテリパック7は、ロック片115に引っ掛かってバッテリホルダ110からの抜け止めがなされ、この状態(図15の状態)でロック解除ピン104はその先端がロック片115の傾斜面115aに当接する。バッテリパック7をバッテリホルダ110から取り出すには図16に示すように、把手102を握って押しボタン105を押すことによりロック片115の係合を解きバッテリパック7をバッテリホルダ110から抜く。押しボタン105を押すと、ロック解除ピン104がロック片115の傾斜面115aを摺動しながらロック片115を横孔117に押し込むので、係合凹所103からロック片115が抜け、係合が解かれるのである。
【0036】
図17および図18に示すように、バッテリパック7の裏面には複数の接続端子が露出して設けられている。この場合の接続端子は、電源供給用接続端子120、充電用接続端子121、放電用接続端子122の3種類あり、これらに対応する接続端子が、バッテリ収納部111に設けられている。図19はバッテリパック7、バッテリホルダ110の接続端子130、131、132およびこれらに接続されている前記メインコントローラ113の回路図を示している。
【0037】
バッテリパック7をバッテリホルダ110のバッテリ収納部112に収納することにより、両者の接続端子どうしが接続するようになっている。図17(a)に示すように、バッテリパック7をバッテリ収納部112に収納するために挿入し始めのとき、すなわち、バッテリパック挿入開始時のときには、接続端子120、121がバッテリホルダ110側の接続端子130、131に先に接触し、接続端子122はまだ接続端子132に接触しない。このときの接続状態の回路図を図18(a)に示す。そして、図17(b)に示すように、バッテリパック7をバッテリ収納部112に完全に収納したときに、残りの接続端子122、132どうしも接触してすべての接続端子が接続した状態となる。このときの回路図を図18(b)に示す。
【0038】
上記バッテリパック7からモータ41に電流が供給されてモータ41が作動してハブ30のハブ本体31が回転し、その結果として車輪5が回転するわけであるが、その車輪5を回転させる、つまり車椅子1の運転を行うには、前記運転装置6を用いる。この運転装置6は、左側フレーム10Aを構成する中パイプ13の足掛け枠13bに固定された上方に延びるステー140の上端に設けられており、図20ないし図25に示すように、操作ボックス141に運転レバー142が備えられた構成となっている。
【0039】
運転レバー142は軟鋼等の塑性変形可能な材質で作られており、運転レバー142は、操作ボックス141の内部に組み込まれた自在軸143に支持され、前後左右ないしその間の範囲全域すなわち360度の全方向に傾倒自在となっており、この運転レバー141を傾倒する方向に車椅子1は走行するとともに、その傾倒角度に応じて走行速度が調節されるようになっている。
【0040】
自在軸143は、操作ボックス141に回動自在に支持され、回動軸が互いに直交する前後回動軸144と左右回動軸145とからなるもので、運転レバー142は、前後回動軸144に貫通させられてこの前後回動軸144に対しピン146により一体結合されている。運転レバー142の操作ボックス141から上方に突出する部分が操作部142aとされ、その下側は、段部142bを経て操作部142aよりも径が細くなった下端部142cが形成されており、この下端部142cが、左右回動軸145に前後方向に沿って形成されたスリット145aに通され、さらに、操作ボックス141の下部開口141aを通るまで延びている。前記ピン146は、操作部142aに貫通されている。
【0041】
運転レバー142に、直立した状態から前後に傾倒させる力を加えると、前後回動軸144が回動し、かつ運転レバー142の下端部142aがスリット145a内を移動することにより、運転レバー142は前後に傾倒する。また、左右に傾倒させる力を加えると、スリット145aを形成するスリット面145bに運転レバー142が当接することによってその力が左右回動軸145に伝わり、運転レバー142は左右に傾倒する。そして、この前後および左右への傾倒動作を併せて行うことにより、前述の如く全方向にある角度まで傾倒可能となっている。その傾倒角度は、運転レバー142の下端部142cが、前記下部開口141aを形成する操作ボックス141の下板147の開口縁147aに当接することで規制される。
【0042】
上記各軸144、145の一端には、接点プレート150を介して通電用と抵抗用の2種類のブラシ接点151、152がそれぞれ取り付けられ、これらに対向する操作ボックス141の側面には、各ブラシ接点151、152に接触し、かつ前記メインコントローラ113に電気的に接続された扇状端子161、162がそれぞれ設けられ、これら接点プレート150、ブラシ接点151、152および端子161、162によりボリューム163が構成されている。各端子161、162は、運転レバー142の傾倒に伴うブラシ接点151、152の回動範囲が広くなるように一側に偏位して設けられている。また、ボリューム163は、図25に示すように、操作ボックス141の側面に設けられた凹所141aに収納された状態で配設されており、運転装置6全体のコンパクト化が図られている。なお、操作ボックス141には、電源スイッチ180、走行速度を高低の2段階に分ける速度モードスイッチ181が手前に向けて設けられている。さらに、右側のハンドル部15bには、介護者用として、電源スイッチ190、速度モードスイッチ191および運転ボタン192が、操作ボックス193により設けられている。運転ボタン192は、前後に傾動するシーソー式のボタンであり、前を押すと前進、後を押すと後退するようにモータ40を作動させ、触らないと常に中立の位置で非作動状態を保つ。操作ボックス193は、ホルダ194を介してハンドル部15bに装着されており、前記ブレーキレバー59はホルダ194に軸支されている。ホルダ194はハンドル部15bに着脱自在に装着されるもので、このため、操作ボックス193、ブレーキレバー59は、ホルダ194ごと取付け・取外しが行え、これらの装備されない車椅子に簡単に切り換えられるようになっている。
【0043】
メインコントローラ113には、運転レバー142の傾倒方向および傾倒角度に基づく抵抗値が入力され、その入力信号に応じてモータ41へ供給される電流値を変換させる。すなわち、運転レバー142の傾倒方向に応じて左右のモータ41の回転数が変わり、それによって車輪5の回転速度に差が生じ、その結果、車椅子1の進行方向の操舵が行え、また、その傾倒角度に応じて車椅子1の走行速度が調節される。具体的には、たとえば運転レバー142を左に倒すと右側の車輪5が左側の車輪5よりも多く回転し、その結果、車椅子1は左に進行していく。また、運転レバー142を倒せば倒すほどモータ41の回転数が増大して車輪5の回転数が増大し、もって車椅子1の走行速度が上昇する。
【0044】
なお、運転レバー142における操作ボックス141から上方に突出する操作部分には、操作ボックス141の上面に当接するリング状のバネ座170が摺動可能に嵌められるとともに、このバネ座170と間隔をおいて2つのナット171a、171bが嵌められている。運転レバー142の上端部にはねじ部172が形成され、2つのナット171a、171bは互いを締め付ける状態で嵌められている。ナット171bとバネ座170の間にはスプリング173が圧縮状態で介装されており、このコイルスプリング173の弾発力により、運転レバー142は自然状態で常に直立し、運転モードとしては中立になるよう配慮されている。なお、運転レバー142のねじ部172には、図1に示すように通常はノブ174が装着され、さらに、操作ボックス141の上面は、蛇腹式のカバー175で覆われている。また、図3に示すように、メインコントローラ113から左側のモータ41への電流供給用の電線176は、座席3の背もたれシート17bの後方において、前記ブレーキワイヤ58、クラッチワイヤ80とともに、クランプ177でまとめられて支持されている。
【0045】
以上が本実施例の車椅子1の構成であり、次いで、この車椅子1の使用方法ならびに作用を説明する。使用者Mは、座席3に着座し、運転レバー142を目的とする走行方向に傾倒させれば、左右の車輪5に回転速度の差が生じることにより操舵が行え、また、運転レバー142の傾倒角度で走行速度を調節できる。補助輪4は、走行方向に追従して補助的に回動しながら回転する。運転レバー142を離せば、運転レバー142に装着されたスプリング173により中立状態となって車輪5の回転は停止する。
【0046】
また、介護者が車椅子1を電動走行させたり人力で手押ししたりする場合において制動させる必要が生じたら、介護者はブレーキレバー59を握ることによりブレーキ機構50が作動して左右のハブ30の回転が制動され、もって車輪5が制動される。また、モータ41によって電動走行はせずに介護者が押したり、あるいは使用者Mが手回しリング36を使って手動で走行する場合には、クラッチレバー70を回動させてクラッチ機構60を作動させる。これによって車輪5の回転がモータ41に伝わらず、すなわちモータ41と車輪5との縁が切れ、走行抵抗が軽減する。また、走行中あるいは停止中に、使用者Mが後方に体重をかけすぎて座席3が後傾すると、補助アーム90の車輪93が接地し、それ以上の座席3の後傾が未然に防がれる。
【0047】
上記本実施例の車椅子1によれば、ブレーキ機構50は、蓋体35の取付孔35bにブレーキケース54の筒部56が挿入されて蓋体35に着脱自在に取り付けられるので、ブレーキ機構50のみ、後から蓋体35に取り付けられ、またメンテナンスも簡単に行える。また、車椅子1を、ブレーキ機構50が有るタイプと無いタイプとに簡単に切り替えることができる。また、蓋体35の取付孔35bにブレーキケース54の筒部56を挿入した分だけ、ブレーキ機構50を備えたハブ30全体のコンパクト化が図れる。
【0048】
また、ブレーキ機構50のブレーキドラム51とブレーキシュー55とがブレーキケース54に収納されて防塵性が高まっているので、両者の摺接部の耐摩耗性および防水性が向上し、良好な作動性が維持される。ブレーキ軸53のブレーキギヤ52とハブ本体31の内歯ギヤ30aとを噛合させ、ブレーキ軸53の制動をハブ本体31に伝達させるので、ブレーキ軸53の減速が可能となってその軸トルクを小さいものに設定でき、このため、ブレーキ機構50をコンパクトなものにできる。また、ハブ30内にあるブレーキ軸53のブレーキギヤ52をハブ30に対応させて小さくできるので、ハブ30内の他のパーツへの影響を小さくでき、また、取付孔35bをなるべく小さくして蓋体35の剛性低減を防ぐことができる。一方、ブレーキドラム51はハブ30外にレイアウトされているから、ブレーキドラム51の寸法をある程度任意にできて設計自由度が高まる。
【0049】
また、左右の車輪5の車軸34に固定されるハブ30の蓋体35に補助アーム90を取り付ける構成なので、車輪5の外径寸法さえ同じならば、フレーム2の構造あるいは種類に左右されることなく補助アーム90を的確に備えさせることができる。また、ハブ30の蓋体35の車軸34に対する取付位置を、車軸34を中心に回動させることにより任意に設定すれば、補助アーム90自体の長さを変えなくともそれにともなって補助アーム90の接地角度を変えることができ、したがって、補助アーム90の接地角度を調整する自由度が高まる。特に本実施例の補助アーム90は、固定アーム92に対する可動アーム94の挿入長さを変えることによって伸縮自在となっているので、さらに接地角度の調整範囲が広くなっている。
【0050】
また、ハブ30内のギヤケース45が蓋体35に固定されることにより蓋体35の剛性が向上し、モータ41からハブ本体31への動力伝達が確実かつ安定したものとなる。モータ41からハブ本体31への動力伝達手段である各減速ギヤ43、44はギヤケース45とハブ30とで二重に区画されるので防音効果が上がり、静かな作動音を実現できる。そのギヤケース45は、車軸34の周囲近傍において円弧状に形成され、これに加えて、モータ41は車軸34に対してオフセットされて配設されていることにより、ハブ30内にはギヤケース45以外の空所が空くことになり、したがって、この空所に他の機器(サブコントローラ119等)を配設してスペースの有効利用が図れる。また、ハブ30に対して駆動機構40をはじめ各減速ギヤ43、44、ブレーキ機構50、クラッチ機構60を設ける構成なので、フレームの異なる機種のいずれにも対応してその車椅子を電動式に改良することが可能である。
【0051】
クラッチ機構60に関して述べると、このクラッチ機構60をギヤケース45内に配設したので、ギヤケース45内にはごみやほこり等の汚染物となるものが入りにくく防塵性が高くなり、クラッチ機構60の作動性が常に良好に保たれるとともに、作動音の低減にもつながる。また、そのギヤケース45内に潤滑剤が充填されることにより、各減速ギヤ43、44やクラッチ機構60の作動性が良好になるのはもちろんのこと、充填された潤滑剤はギヤケース45より外、つまりハブ30内に出ず、したがって、ハブ30内に潤滑剤に影響されやすい電装品(サブコントローラ119等)を配設することができ、それに加えて使用者M等の服装を汚すなどの心配もなくなる。
【0052】
また、モータ41がハブ30に対し、ハブ本体31とは反対側の蓋体35の外面に固定されているので、モータ41の放熱性が良好になって作動不良の原因が低減することになり、しかもメンテナンス性に優れる。またそのモータ41にエンコーダ49を並設させることにより、モータ41の回転をエンコーダ49に伝達するタイミングベルト48を短くできる。また、エンコーダ49はモータ41の回転を減速せずに直接検出することができ、しかもその回転速度が高いことと相まって、検出精度が向上する。さらに、エンコーダ49を蓋体35に固定するので、それによって蓋体35の剛性がより向上する。また、ブレーキ機構50のブレーキ軸53はギヤケース45に近接して蓋体35に軸支されるので、ブレーキ軸53の支持力が向上し、ブレーキ機構50の作動不良の原因が低減する。
【0053】
バッテリパック7に関しては、バッテリパック7を収納するバッテリホルダ110を蓋体35に取り付ける際、バッテリホルダ110と一体のモータカバー107をモータ41を軸にして回動させ、かつ長孔108aによって取付位置を調整することにより、フレーム2や他の部分に干渉しない位置を選択してバッテリパック7を取り付けることができるとともに、比較的重量のあるバッテリパック7により車椅子1全体の重量バランスをある程度調整できる。また、バッテリパック7はフレーム2に取り付けるものではないことから、フレームの異なる様々な機種の車椅子にバッテリパック7を容易に取り付けることが可能になる。
【0054】
また、バッテリホルダ110のコントローラ収納部111の上にバッテリ収納部112があるので、メインコントローラ113はバッテリパック7に覆われて雨水の影響を受けにくく、このため、作動不良の原因が低減するとともに、両者を接続する配線が短くて済む。また、ハブ30の蓋体35に対するバッテリパック7とメインコントローラ113の位置調整を、バッテリホルダ110ごと動かすことにより一体的かつ同時に行えるので、重量バランスをより調整しやすくなるとともに、両者を接続する配線を伸ばしたり弛ませる必要がなく、取り扱いが容易になる。さらに、モータ41とモータカバー107との間の隙間を極力抑えることができてコンパクト化が図れ、しかもバッテリホルダ110を回動させても、モータ41は常にモータカバー107で覆われ、モータ41の損傷が防止される。
【0055】
クラッチ機構60を操作するクラッチレバー70に関しては、このクラッチレバー70はハブ30の蓋体35に支持されており、この蓋体35は車軸34に固定されているのでクラッチレバー70は常に一定の位置にあり、したがって操作に支障をきたさないとともに、フレーム構造の異なる機種の車椅子にも適用できる。クラッチレバー70はフレーム2と車輪5の間に配設されているのでこれら両者によって保護され、乗降時の使用者Mあるいは介護者等がクラッチレバー70に不用意に接触するおそれがない。フレーム2と車輪5の間のデッドスペースを有効利用している。また、クラッチレバー70のレバー把持部71は車輪5の外周に近接して大きく外に突出していないから、人やその他の物等にあたりにくい。
【0056】
また、1つのクラッチレバー70で左右の車輪5のクラッチ機構60を同時に作動させることができ、しかも、フレーム2を折り畳んでもクラッチワイヤ80およびブレーキワイヤ58は他の部品に接触することなく柔軟に湾曲し、使用時には元の状態に復帰するので、損傷を受けず機能に支障をきたさない。また、これらワイヤ58、80が柔軟性を有することにより、左右の車輪5の間隔、すなわち車幅が異なる機種にも対応できる。
【0057】
また、ブレーキワイヤ58とクラッチワイヤ80とは座席3の後方のデッドスペースに取り回されているのでスペースの有効利用がなされており、また、各ワイヤ58、80は使用者Mの乗降の邪魔にまったくならず、しかも、フレーム2を折り畳んだときに他のパーツと干渉しにくいので各ワイヤ58、80の耐久性が確保される。そして、フレーム2を折り畳むと各ワイヤ58、80は自身の剛性により緩やかに湾曲し、したがってここに支持されたメインコントローラ113から左側のモータ41に接続される電線176には無理な曲げが生じず、断線のおそれが回避される。
【0058】
運転装置6に関しては、運転レバー142を操作(傾倒)するにあたって、下端部142cが操作ボックス141の下板147の開口縁147aに当たった状態からさらに過大な力を与えてしまうと、運転レバー142は段部142bから塑性変形により屈曲する。このように運転レバー142が屈曲変形すると、屈曲した方向に傾倒させた場合、下端部142cが開口縁147aに対して正常なときよりも早く当たってしまい速度を上昇させることができなくなる。つまり操作感に変動が生じるとともに異常が察知され、これをもって運転レバー142に故障が発生したことが判断される。運転レバー142に、過大な力がかけられたときに塑性変形しやすいように小径に移行する段部142bを形成し、段部142bの下方の下端部14cが当接する開口縁147aを操作ボックス141に形成するといった簡単な構造で、運転レバー142に故障が発生したことを使用者Mに知らせる手段を設けることができるわけである。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車椅子によれば、次のような種々の効果を奏する。
まず、請求項1に係る車椅子によれば、蓋体の取付部にブレーキ機構が着脱自在に取り付けられるので、ブレーキ機構のみ、後からハブに取り付けられ、またメンテナンスも簡単に行える。また、車椅子を、ブレーキ機構が有るタイプと無いタイプとに簡単に切り替えることができる。
【0060】
本発明の請求項2に係る車椅子によれば、蓋体へのブレーキ機構の取付部を取付孔とし、この取付孔にブレーキ機構の少なくとも一部を挿入することにより、ブレーキ機構を備えたハブ全体のコンパクト化が図れる。
【0061】
本発明の請求項3に係る車椅子によれば、ブレーキ機構の回転体と摩擦部材とがブレーキケースに収納されて防塵性が高まっているので、両者の摺接部の耐摩耗性および防水性が向上し、良好な作動性が維持される。ブレーキ軸のブレーキギヤとハブのギヤとを噛合させ、ブレーキ軸の制動をハブに伝達させるので、ブレーキ軸の減速が可能となってその軸トルクを小さいものに設定でき、このためブレーキ機構をコンパクトなものにできる。
【0062】
本発明の請求項4に係る車椅子によれば、ハブ内にあるブレーキ軸のブレーキギヤをハブに対応させて小さくすれば、ハブ内の他のパーツへの影響を小さくでき、また、取付部が取付孔である場合には、その取付孔を小さくして蓋体の剛性低減を防ぐことができる。一方、回転体をハブ外にレイアウトすることにより、回転体の寸法をある程度任意にできるので、設計自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の車椅子の左側面図である。
【図2】同正面図である。
【図3】同背面図である。
【図4】同平面図である。
【図5】一実施例の車椅子が折り畳まれた状態の背面図である。
【図6】一実施例の車椅子の右車輪の内側視図である。
【図7】同左車輪の内側視図である。
【図8】図6のVI−VI線矢視断面図である。
【図9】ハブの内面(蓋体側)視図である。
【図10】図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】クラッチ機構の拡大断面図である。
【図12】右車輪の後部を主とした内側視図である。
【図13】バッテリの内側面図である。
【図14】同正面図である。
【図15】バッテリホルダへのバッテリパック収納状態の側面図である。
【図16】ロック機構を解除してバッテリホルダからバッテリパックを取り出せる状態を示す側面図である。
【図17】バッテリホルダへのバッテリパックの(a)半挿入状態、(b)完全挿入状態、のそれぞれ正断面図である。
【図18】バッテリホルダへのバッテリパックの(a)半挿入状態、(b)完全挿入状態、のそれぞれ回路図である。
【図19】バッテリパック、バッテリホルダの接続端子およびこれらに接続されているメインコントローラの回路図である。
【図20】運転装置の後断面図である。
【図21】運転装置の運転レバーを左に傾倒したときの後面断面図である。
【図22】運転装置の左側断面図である。
【図23】運転装置の運転レバーを後に傾倒したときの後面断面図である。
【図24】同後面図である。
【図25】運転装置の平面図である。
【符号の説明】
1…車椅子、2…フレーム、3…座席、5…車輪、30…ハブ、
30a…内歯ギヤ、31…ハブ本体、34…車軸、35…蓋体、35b…取付孔(取付部)、50…ブレーキ機構、51…ブレーキドラム(回転体)、52…ブレーキギヤ、53…ブレーキ軸、54…ブレーキケース、55…ブレーキシュー(摩擦部材)、M…使用者。
Claims (4)
- 座席が設けられるフレームと、該フレームに固定された左右一対の車軸と、これら車軸に、ハブを介して回転自在に装着される左右一対の車輪とを備え、
前記ハブは、前記各車輪の中心に固定される椀状のハブ本体と、該ハブ本体の開口を覆って配設されるとともに前記車軸に一体的に固定され、かつ、ハブ本体に、ハブ本体と相対回転可能に連結された蓋体とを有し、
該蓋体の外面には、前記ハブ本体の回転を制動するブレーキ機構が取り付けられる取付部が前記車軸に対しオフセットされた位置に形成され、
該取付部に、前記ブレーキ機構が前記車軸方向に着脱自在に取り付けられる
ことを特徴とする車椅子。 - 前記取付部は前記蓋体に形成した取付孔で構成され、該取付孔から前記ハブ内に前記ブレーキ機構の少なくとも一部が挿入されている
ことを特徴とする請求項1記載の車椅子。 - 前記ブレーキ機構は、ブレーキ軸と、該ブレーキ軸に固定されてブレーキ軸と一体回転する回転体と、該回転体に摺接可能とされた摩擦部材と、これらブレーキ軸、回転体および摩擦部材を収納するブレーキケースとから構成され、前記ブレーキ軸は、ブレーキケースに軸支されるとともに、その一端がブレーキケースから突出し、その突出端に、前記ハブ本体に形成したギヤに噛合するブレーキギヤが設けられ、
ブレーキケースごと前記蓋体の前記取付部に着脱自在に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載の車椅子。 - 前記ブレーキケースが前記蓋体の前記取付部に取り付けられた状態において、前記ブレーキギヤは前記ハブ内に、また、前記回転体はハブ外にレイアウトされていることを特徴とする請求項2または3記載の車椅子。
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