JP3631304B2 - 顕微鏡の自動焦点整合装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡ステージの標本に自動的にピント合わせを行なう顕微鏡の自動焦点整合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、顕微鏡で標本を観察する場合、対物レンズの焦点深度は浅く画像が見える光軸方向の範囲が狭いので、顕微鏡用自動焦点整合装置では、第1ステップとしてステージまたは対物レンズを光軸方向に移動させて、ある程度のコントラストが得られる位置を探し、その後第2ステップとして、コントラスト等の合焦度評価値を演算しながら合焦位置までステージまたは対物レンズを移動させるという制御が行なわれている。
【0003】
例えば、特開昭64−54408号公報によれば、載置台(ステージ)を所定回数を限定として予め定められた一定距離ずつ移動させるとともに、各位置でのコントラストを検出し、コントラストが予め定めたしきい値以上となる位置を探索する。
【0004】
そして、該探索結果を基に載置台を予め定めた一定距離ずつ移動して、コントラストが上記しきい値以上となる範囲で、その中間位置でのコントラストが最大となる連続した3位置を求め、それぞれの位置のコントラストの値を用い加重平均演算により得られる位置を焦点位置として位置合わせを行う自動焦点整合方法が開示されている。
【0005】
ところが、特開昭64−54408号公報に示された従来技術においては、標本が対物レンズの焦点深度範囲から大きくはずれて画像が見えていなくても常に一定間隔でコントラスト演算を行なうので、画像検出までに時間を要する結果、合焦時間が長くなってしまう。
【0006】
特に、画像が暗い場合には、像のコントラストを演算するためのイメージセンサの蓄積時間を長くしなければならないので、合焦時間がさらに長くなるという欠点を有する。
【0007】
このような欠点を解消するものとして、特願平6−111178号公報では、対物レンズにより形成される標本像をCCDイメージセンサ上に投影し、得られた電気信号を所定の評価関数に従って演算し、この演算結果に基づいて焦点状態を検出しつつ標本と対物レンズの相対距離を調節することにより焦点調整を行う顕微鏡自動焦点検出装置において、焦点状態を検出するための評価関数を、第1ステップとして像の明るさを示す関数とし、第2ステップで像のコントラスト等の合焦度を示す関数に切換えて、合焦度が所定の値になるように標本と対物レンズの相対距離を調節するようにした顕微鏡自動焦点検出方法が開示されている。
【0008】
前述の特開昭64−54408号公報では、画像が見えていなくても常に一定間隔でコントラスト演算を行っていたのに対し、特願平6−111178号公報では、画像の明るさと合焦度との対応に着目し、画像が見えないうちは画像の明るさを示す評価関数により焦点状態を検出し、画像の明るさが最大となる位置に調整を行ない、画像が検出されてから評価関数を像のコントラスト等の合焦度を示す関数に切換えて焦点状態を検出するため、画像を検出するまでの時間が短縮され、その結果、合焦時間を短かくすることが可能である。
【0009】
画像の明るさの演算は、画像のコントラスト等の合焦度の演算に比べれば単純であり演算時間も短かいが、対物レンズとステージの相対距離を調節しながら、画像の明るさが最大となるように制御が行なわれるので、対物レンズまたはステージの移動速度を極端に大きくすることはできず、画像検出までの時間の短縮化にも限度がある。
【0010】
上述の他に、標本をスライドガラス標本に限定したものとして、特公平5−16566号公報に示された自動焦点装置がある。特公平5−16566号公報によれば、対物レンズのピント位置よりスライドガラス厚、カバーガラス厚およびこれらを含むステージ等の精度のバラツキを含む量だけ下方にステージの基準位置を設定し、ステージが基準位置よりも下方にある場合には、まず、ステージを基準位置まで移動した後に、画像のコントラスト等の合焦度演算を開始するようにしたので、スライドガラス標本に対しては画像の見えない部分では合焦度演算を行なわないようになっており迅速なピント合わせが可能である。
【0011】
しかしながら、スライドガラス標本以外の標本、例えば、スライドガラスよりも厚みがある金属標本等には対応できないので汎用性に欠けるという欠点を有する。
【0012】
また、顕微鏡で標本を観察する場合は、目的とする観察部位の全領域を一度に観察できる場合は少なく、X−Yステージを走査しながら、標本の異なる小領域を順次観察していくのが通常である。
【0013】
前述の3つの従来例においては、標本のある一部分についての焦点調整を迅速、正確に行うことを主眼としているが、このようにX−Yステージを走査しながら標本の異なる小領域を順次観察する場合の自動焦点調整については、記述されていない。
【0014】
特開昭63−167313号公報では、X−Yステージの走査によって生じる対物レンズとステージ間の相対距離の変化によるピントずれに対する自動焦点制御方法について記載されている。
【0015】
同公報によると、顕微鏡の対物レンズを上下方向に駆動する対物レンズ駆動装置と、ステージを水平方向に駆動するステージ駆動装置と、顕微鏡画像を光電変換して得られた電気信号を用いて焦点信号を出力する自動焦点装置とを備えたものにおいて、顕微鏡を用いて観察、測定をする前にあらかじめステージの任意の格子点における合焦点位置を求めて記憶しておき、実際の測定時には記憶されている近傍の合焦点位置より測定点の合焦点位置を内挿し、対物レンズを、求めた近似合焦点位置に高速移動させた後に自動焦点を行なうようにしている。
【0016】
この例においては、標本の観察、測定を行なう前にステージの任意の格子点における合焦点位置が記憶されていることにより、実際の測定時には、測定点の近傍の格子点より測定点における近似合焦点位置が求められ、測定点の真の合焦点位置の近くから自動焦点処理を実行することが可能であるため、ステージを水平方向に走査しながら、標本の異なる領域を順次観察する場合に有効な方法である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭63−167313号公報に示された従来例では、観察、測定の前にあらかじめステージの任意の格子点における合焦点位置を求めて記憶するという初期動作を行なっている。
【0018】
この初期動作の際には、参照すべき合焦点位置データ等は存在しないため標本の一点における焦点調整に時間を要する上に、この動作を格子点の数だけ行なう必要があるので初期動作全体にかなりの時間がかかる。
【0019】
また、異なる標本を順次交換して観察、測定を行なう場合、標本の厚みに全くバラツキがなければ問題ないが、そのようなことは実際にはほとんどなく標本を交換する度に初期動作を行わなければならないという欠点を有する。
【0020】
さらに、標本の平面度が悪く、うねりがある場合には、近似合焦点位置まで対物レンズを移動した後に自動焦点動作を開始するのが必ずしも最適であるとは限らず、前回の合焦点位置から自動焦点動作を開始した方が処理が早い場合がある。
【0021】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、顕微鏡ステージを走査しながら標本の異なる部位を順次観察する場合に、ステージの機械的精度や、標本の厚み、平面度等にバラツキがあっても迅速かつ正確なピント合わせを行なうことができる顕微鏡の自動焦点整合装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
従って、まず、上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、コントラスト等の評価値により標本像の合焦度を演算し、対物レンズの光軸に対して略垂直な平面内で走査可能なX−Yステージ又は対物レンズを光軸方向に移動することにより、標本に対して合焦を行なう顕微鏡の自動焦点整合装置において、前記X−Yステージの光軸に対する位置を示すX−Y座標を検出するX−Y座標検出手段と、前記X−Yステージ又は前記対物レンズの光軸方向の移動可能範囲のうち、前記X−Yステージの複数の特定範囲に対する標本像の合焦度演算範囲を設定する合焦度演算範囲設定手段と、前記X−Y座標検出手段にて検出されたX−Y座標に対応する前記合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に基づいて、前記X−Yステージ又は対物レンズを光軸方向に移動させて前記標本に対して合焦を行なう合焦手段とを具備したことを特徴とする。
【0023】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の顕微鏡の自動焦点整合装置において、前記対物レンズの倍率を検出する倍率検出手段と、前記倍率検出手段により検出された対物レンズの倍率に基づいて、前記合焦度演算範囲設定手段にて設定された複数の合焦度演算範囲を前記対物レンズの倍率に適合する合焦度演算範囲に変換する合焦度演算範囲変換手段とを付加したことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1記載の顕微鏡の自動焦点整合装置において、前記合焦手段により合焦が行なわれた際のX−Yステージと対物レンズとの光軸方向の相対位置を示すz座標を検出するz座標検出手段と、前記z座標検出手段により検出されたz座標及びこのときのX−Y座標検出手段により検出されるX−Y座標を逐次記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶された特定範囲に対応するX−Y座標及びz座標に基づいて、合焦動作の都度、それぞれの特定範囲に対応する予測合焦位置を算出する予測合焦位置算出手段と、前記予測合焦位置算出手段により算出された予測合焦位置に基づいて、新たに合焦度演算範囲を算出し、合焦動作の都度、前記合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に代えて、新たに算出された合焦度演算範囲を設定する合焦度演算範囲再設定手段とを付加したことを特徴とする。
【0025】
請求項1に係る発明は、合焦度演算範囲設定手段によりX−Yステージ又は対物レンズの光軸方向の移動可能範囲のうち、X−Yステージの複数の特定範囲に対する標本像の合焦度演算範囲を設定し、合焦手段により、X−Y座標検出手段にて検出されたX−Y座標に対応する合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に基づいて、X−Yステージ又は対物レンズを光軸方向に移動させて標本に対して合焦を行なうので、標本の厚みに変化があったり、XYステージの精度が悪くても、合焦度演算範囲を小さくすることができ、合焦動作に要する時間を著しく短縮することができる。
【0026】
請求項2に係る発明は、合焦度演算範囲変換手段により、倍率検出手段により検出された対物レンズの倍率に基づいて、合焦度演算範囲設定手段にて設定された複数の合焦度演算範囲を対物レンズの倍率に適合する合焦度演算範囲に変換するので、対物レンズの倍率に合わせて合焦度演算範囲が縮小され、その結果、合焦動作に要する時間をさらに短縮することができる。
【0027】
請求項3に係る発明は、予測合焦位置算出手段により、記憶手段により記憶された特定範囲に対応するX−Y座標及びz座標に基づいて、合焦動作の都度、それぞれの特定範囲に対応する予測合焦位置を算出し、合焦度演算範囲再設定手段により、予測合焦位置算出手段により算出された予測合焦位置に基づいて、新たに合焦度演算範囲を算出し、合焦動作の都度、前記合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に代えて、新たに算出された合焦度演算範囲を設定するので、標本の厚みやステージの精度に合わせて、常に最適な合焦度演算範囲が自動的に設定され、常に迅速かつ正確な合焦動作を実現することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡の構成を示す図である。同図において、顕微鏡フレーム(以下単にフレームと略す)1の背面下方に取付けられた光源2からの光はミラー3によって上方に反射させられる。そして、このミラー3で反射した反射光は、コンデンサレンズ4を通過してXYステージ5上の標本Sに照射される。
【0029】
そして、標本Sを透過、回折した光が対物レンズ6により集光された後、フレーム1の前側上方に取付けられた鏡筒7内の図示しない分割プリズムによって2分される。この二分割された光のうち、一方は、接眼レンズ8へ導かれ、他方は鏡筒7をそのまま通過して、鏡筒7の上部に取付けられたセンサヘッド9へと導かれる。
【0030】
このセンサヘッド9内には、対物レンズ6からの光束を2分するハーフミラー10が設けられており、ミラー10で反射した光束は合焦度検出のためのイメージセンサ11へと導かれ、ミラー10を通過した光束は、センサヘッド9の上部に取付けられた撮像手段12へと導かれるようになっている。
【0031】
なお、鏡筒7内の図示しない分割プリズムおよびセンサヘッド9内のハーフミラー10は、光路に対してそれぞれ独立して退避、挿入が可能である。また、分割プリズムやハーフミラー10の代わりに光束全てを反射する全反射プリズムや全反射ミラーが光路に対して挿入退避できるような構成であってもよい。
【0032】
対物レンズ6は、電動レボルバ13に取付けられており、電動レボルバ駆動制御手段14により図示しない倍率の異なる複数の対物レンズへと電動切換が可能となっている。
【0033】
15は対物レンズ6の光軸に対するXYステージ5の位置を表すXY座標を検出するXY座標検出手段であり、ここで検出されたXY座標はCPU16へと入力される。一方、17はCPU16からの制御により適正なタイミングでイメージセンサ11へ駆動パルスを出力するイメージセンサ駆動回路である。
【0034】
イメージセンサ11は入力された駆動パルスに従ったタイミングで受光した画像を電気信号に変換する。18は、この電気信号に所定の処理を施すためのアナログ信号処理回路であり、処理後の信号を、コントラスト等の標本の合焦度を検出するための合焦度演算手段19に送る。
【0035】
合焦度演算手段19では、所定の演算式に従って合焦度が演算され、その結果がCPU16に送られるようになっている。また、20は、XYステージ5を対物レンズ6の光軸に沿ってZ方向に駆動し標本Sにピントを合わせるためのZ駆動制御手段であり、CPU16の指令により適切な速度で指定量の駆動を行うことによって標本Sにピントが合わされるようになっている。
【0036】
21はXYステージ5の光軸方向位置を検出するZ座標検出手段である。22は合焦動作開始の指示やその他の設定を入力するための外部コントローラである。
【0037】
この外部コントローラ22には、合焦度演算手段19の合焦度演算範囲を設定してCPU16に記憶させるための合焦度演算範囲設定手段や、マニュアルでピント合わせを行うためのパワーフォーカス指示手段も含まれている。
【0038】
23は、対物レンズ6の倍率を検知する倍率検知手段であり、検知される倍率データはCPU16に入力されるようになっている。
さらに、XYステージ5について図2を参照して説明する。図2は、XYステージ5を対物レンズ6の光軸上方よりみた図である。
【0039】
同図において、31は図示しない下ステージに対しY方向に移動自在の上ステージ、32はスライドガラス標本を保持し、上ステージ31上でX方向に移動自在のクレンメルであり、2枚のスライドガラス標本S1 およびS2 を保持できるようになっている。
【0040】
33は操作ハンドルで、X方向移動用ハンドル(以下単にXハンドルと称す)と、Y方向移動用ハンドル(以下単にYハンドルと称す)とが同軸に構成されており、Yハンドルを回転することにより上ステージ31が図示しない下ステージに対してY方向に移動し、Xハンドルを回転することによりクレンメル32が上ステージ31に対してX方向に移動するので、標本S1 およびS2 が光軸位置0に対してXY方向に移動し、標本S1 およびS2 が光軸位置0に対してXY方向に自在に位置合わせできるようになっている。
【0041】
そして、34は上ステージ31に対するクレンメル32のX方向位置を検出するべく上ステージ31に取付けられたX座標検出手段、35は、図示しない下ステージに対する上ステージ31のY方向位置を検出するべく下ステージに取付けられたY座標検出手段である。
【0042】
図示しない下ステージが光軸位置0に対して所定の位置に取付けられているので、その結果、これらX座標検出手段34およびY座標検出手段35の検出結果により光軸位置0に対する標本S1 およびS2 のXY方向位置が認識されることになる。なお、これらXおよびY座標検出手段は、それぞれ周知のリニアエンコーダ等で構成できる。
【0043】
次に上述の如く構成された顕微鏡の動作について図3に示すフローチャートを参照して説明する。
外部コントローラ22により、まず合焦動作を行うための初期設定を以下の手順で行なう。外部コントローラ22に含まれるパワーフォーカス指示手段からの指示により、XYステージ5をZ方向にマニュアル駆動させ、XYステージ5の操作ハンドル33を操作して標本S1 を光軸位置0に移動させることにより、標本S1 に該略のピント合わせを行なう(step1)。
【0044】
そして、標本S1 の範囲に対応したY座標の始点YS1および終点YE1、さらに、このY座標範囲における合焦度演算手段19の演算範囲ΔZαを外部コントローラ22の入力手段により入力する。
【0045】
同様に、操作ハンドル33を操作して標本S2 に該略のピント合わせを行ない、標本S2 の範囲に対応したY座標の始点YS2および終点TE2さらに合焦度演算手段19の演算範囲ΔZβを入力する。この操作により、標本S1 に対応するY座標範囲における合焦度演算範囲は、
下限位置 ZL1=Zc1−ΔZα … (1)
上限位置 ZH1=Zc1+ΔZα … (2)
(ただしZc1は標本S1 の該略ピント位置)
標本S2 に対応するY座標範囲における合焦度演算範囲は
下限位置 ZL2=Zc2−ΔZβ … (3)
上限位置 ZH2=Zc2+ΔZβ … (4)
(ただしZc2は標本S2 の該略ピント位置)
と設定できる(step2)。これら座標の関係を図4に示す。
【0046】
次に、実際の合焦動作について説明する。
まず、観察部位へステージを移動する(step3)。外部コントローラ22により、合焦動作開始の指令が発せられると(step4)、XY座標検出手段15で検出(step5)されたXYステージ5のXY座標を参照して、CPU16がそのXY座標に対する合焦度演算範囲を設定する(step6)。
【0047】
ここでは、Y座標に応じて合焦度演算範囲の下限位置をZL1あるいはZL2に設定する。そして、Z座標検出手段21で検出(step7)されたZ座標が、これら合焦度演算範囲の下限位置ZL1あるいはZL2よりも下側(対物レンズ6と離れる方向を下側という)にある場合は、CPU16がZ駆動制御手段20に指令を出し、前述の下限位置ZL1あるいはZL2までXYステージ5をZ方向に駆動する(step8、step9)。
【0048】
XYステージ5が前述の下限位置ZL1あるいはZL2に達すると、CPU16の制御により、合焦度演算(step10)と、所定量のZ駆動とを1サイクルとしてこれを繰返すモードに入る。
【0049】
このモードにおけるXYステージ5のZ方向駆動について図5を参照して説明する。このモードでは、イメージセンサ11の蓄積時間に応じた時間Δts の間XYステージ5を対物レンズ6の光軸方向に駆動せずに、イメージセンサ11からの電気信号をアナログ信号処理回路18を経由して合焦度演算手段19で合焦度評価値に変換するステップと、時間Δtz の間XYステージ5を対物レンズ6の光軸方向にΔZ1 だけ駆動するステップとが図5に示されるよう階段状に繰り返される。
【0050】
そして、合焦度演算手段19からCPU16に入力される合焦度評価値が所定の値になるとCPU16からの指令によりXYステージ5の駆動がこの合焦位置Zf で停止されるとともに(step11、step12)、外部コントローラ22に設けられた表示部に合焦完了の表示が行なわれる(step13)。
【0051】
また、所定時間tL の間上記のモードで合焦動作を行っても合焦度評価値が所定の値とならない場合には、CPU16からの指令によりXYステージ5の駆動が停止されるとともに(step15、step16)、外部コントローラ22の表示部に非合焦の表示が行なわれる(step17)。
【0052】
また、時間tL 以内であっても、合焦度評価値が所定の値とならないままXYステージ5のZ座標が最初に設定した合焦度演算範囲の上限ZH1あるいはZH2に達した場合(step18、step19)にも、CPU16からの指令によりXYステージ5の駆動が停止され(step16)、外部コントローラ22の表示部に非合焦の表示が行なわれる(step17)。
【0053】
以上のように本実施の形態においては、XYステージ5のXY座標により、合焦度演算手段19の演算範囲を可変できるようにしたので、XYステージ5上に異なる2枚のスライドガラス標本を載せて観察する場合等標本のピント位置にバラツキがあった場合でも、合焦点の演算範囲を適切に小さくできるので、ピント合わせが迅速かつ正確に行なうことができる。
【0054】
なお、上述の説明においては、図4に示されるように合焦度演算範囲をY座標によってのみ変えるようにしたが、もちろんX座標によっても変えることができる。
【0055】
また、本実施の形態の説明においては、XYステージを移動させる場合について説明したが、対物レンズを移動することにより、焦点を合わせるようにしてもよい。
【0056】
合焦度演算範囲の入力方法も座標の始点と終点を指示する方法を採用したが、この方法に限ったものではない。また、本実施の形態においては、XYステージ5のXY駆動操作は操作ハンドル33による手動操作としたが、アクチュエータを用いて電動駆動するタイプのものであってもよいのは当然のことである。
<第2の実施の形態>
次に本発明の第2の実施の形態に係る顕微鏡について説明する。
【0057】
本実施の形態においては、合焦度演算手段19の演算範囲を倍率検知手段23によって検知される対物レンズの倍率データに応じて可変とする。例えば、対物レンズ6が40倍〜100倍のような高倍率の場合を基準に観察者が合焦度演算範囲ΔZαを入力した場合、演算範囲は前述の第1の実施の形態において述べたように、
ZL1=Zc1−ΔZα ≦ Z ≦ ZH1=Zc1+ΔZα … (5)
となるが、対物レンズ6を低倍率のものに切換えた場合、CPU16により、低倍率の場合の合焦度演算範囲を、
ΔZα′=k・ΔZα … (6)
(kは対物レンズの焦点深度に比例した定数)
と定め、自動的に演算範囲を
ZL1′=Zc1−ΔZα′≦Z≦ ZH1′=Zc1+ΔZα′ … (7)
と設定する。
【0058】
図6は、変換前後の合焦度演算範囲の関係を示す図である。
したがって、観察者は、倍率の異なる対物レンズ毎に合焦度演算範囲を設定する必要がなく、特定の倍率における演算範囲のみを入力するだけで、各倍率の対物レンズに適した合焦度演算範囲を自動的に設定できるため、操作の簡略化が計れるという利点を有する。
【0059】
なお、本実施の形態においては、合焦度演算範囲を低倍率と高倍率とで分けるようにしたが、さらに細かく対物レンズの倍率毎に演算範囲を設定するように構成することで、さらに合焦動作の効率化が可能であることは言うまでもない。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる顕微鏡の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。上述の第1の実施の形態に係る顕微鏡と本実施の形態に係る顕微鏡と異なる点は、合焦度演算手段19の合焦度演算範囲の設定方法にある。
【0060】
まず、標本S1 の適切な部位で該略のピントを合わせるために、外部コントローラ22に設けられたパワーフォーカス指示手段の指示によりXYステージ5をZ方向にマニュアル駆動させる(step31)。
【0061】
次に、ほぼピントが合ったことを確認したら、初期の合焦度演算範囲として、演算範囲中心値Zc および演算範囲ΔZαを外部コントローラ22の操作により入力する。この操作により初期の合焦度演算範囲は、
ZL1= Zc −ΔZα ≦ Z ≦ ZH1=Zc +ΔZα … (8)
と設定される(step32)。
【0062】
そして、標本S1 の観察したい部位を光軸o上に合わせるべくXYステージ5をXY平面内で移動し(step33)、合焦動作開始の指令を外部コントローラ22によって与える(step34)。
【0063】
合焦動作開始の指令が発せられると、CPU16はまず、今回の合焦動作が何回目の動作かを判断する(step35)。1回目あるいは2回目の合焦動作であれば、Z座標検出手段21で検出されるZ座標(step39)と初期設定された合焦度演算範囲ZL ≧Z≧ZH とを比較し、現在のZ座標が合焦度演算範囲内にあることを確認して、合焦度の演算に移る(step40、step42)。
【0064】
現在のZ座標が合焦度演算範囲外であれば、XYステージ5を演算範囲下限ZL へ駆動(step41)してから合焦度の演算を開始する。そして、第1の実施の形態及び第2の実施形態において述べたように、合焦度演算と所定量のZ駆動とを1サイクルとしてこれを繰返し行なうことにより(step43、48、51、52)、最終的に所定時間tL 内かつ合焦度演算範囲内で合焦度評価値が所定の値となった場合にはXYステージ5がその位置が停止し合焦が得られる(step44、45)。
【0065】
1回目の合焦完了時の座標(x1 ,y1 ,z1 )、そして2回目の合焦動作であればさらに2回目の合焦完了時の座標(x2 ,y2 ,z2 )は順にCPU16内の合焦座標記憶手段に記憶される(step46)。
【0066】
一般に、顕微鏡で標本を観察する場合XあるいはY座標のうち、一方は固定のまま、X方向あるいはY方向にのみステージを移動しながら観察するケースも少なくない。
【0067】
今、Y座標を固定してX方向にXYステージ5を移動している場合、すなわち前述の合焦座標(x1 ,y1 ,z1 )、(x2 ,y2 ,z2 )において、y1 =y2 である場合を考える。
【0068】
3回目の合焦動作を行う場合、3回目の観察部位のXY座標(x3 ,y3 )においてもy1 =y2 =y3 であり、X方向に極端に大きな移動でなければ、この3回目の観察部位における合焦完了時のZ座標Z3 は、前回の1回目、2回目の合焦座標(x1 ,z1 )、(x2 ,z2 )を通る直線上に存在すると仮定し予測することができる。
【0069】
即ち、予測合焦位置Z3 ′は連立一次方程式を解くことにより
と求められる。
【0070】
同様にして、N回目の予測合焦位置ZN ′は、その直前2回の記憶された合焦座標(xN−1 ,zN−1 )、(xN−2 ,zN−2 )を用いて次のように求められる。
図8は、記憶された合焦位置と予測合焦位置との関係を示す図である。
【0071】
また、XYステージ5をX方向にもY方向にも移動させながら観察を行う場合には、直前3回の記憶された合焦座標(xN−1 ,yN−1 ,zN−1 )、(xN−2 ,yN−2 ,zN−2 )、(xN−3 ,yN−3 ,zN−3 )を3次元空間上の平面を表す一般式
ax+by+c=z … (11)
に代入して得られる連立一次方程式を周知の数値演算法で解くことにより予測合焦位置zN ′が求められる。以上のように予測合焦位置ZN ′が求められたら、CPU16に記憶されている合焦度演算範囲を消去し、新たに合焦度演算範囲を
ZLN=ZN ′−ΔZα ≦ Z ≦ ZHN=ZN ′+ΔZα … (12)
のように設定する。
【0072】
そして、現在のZ座標を検出し、更新設定された合焦度演算範囲ZLN≦Z≦ZHNと比較し、1回目、2回目と同様のステップでCPU16が制御を行い、合焦動作完了に到る。
【0073】
従って、本実施の形態においては、毎回の合焦動作によって得られる合焦座標データを用いて次の観察部位における予測合焦点位置を求め、この予測合焦点位置に基づいて合焦度を演算する範囲を設定しこれを合焦動作の都度更新するようにしたので、標本の厚みに変化があったり、ステージが傾いていたりしても合焦度演算範囲を小さくすることができ無駄な合焦度演算を行なわずに合焦までに要する時間を短縮できる。
【0074】
また、本実施の形態においては、予測合焦位置を、直前の2回もしくは3回の合焦座標データを用いて直線あるいは平面上の点として求めたが、3回以上の合焦座標データを用いて2次曲線あるいは曲面上の点として求めることも有効である。
【0075】
さらに、第1の実施の形態と同様に、XYステージをアクチュエータで駆動する電動ステージとして構成することも当然可能である。さらに、本実施の形態においては、観察部位を移動する度に合焦動作開始の指令を入力するようにしたが、CPUの制御により観察部位を移動しながら適切な時間間隔で合焦動作を繰り返すような連続型の焦点制御法に適用することも可能である。
【0076】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、XYステージの座標を検出するXY座標検出手段と、標本像の合焦度を演算する範囲を設定する合焦度演算範囲設定手段を設け、検出されるXY座標に応じて合焦度演算範囲を可変とするようにしたので、標本の厚みに変化があったり、XYステージの精度が悪くても、合焦度演算範囲を小さくすることができ、合焦動作に要する時間を著しく短縮することができる。
【0077】
また、対物レンズの倍率を検知する倍率検知手段を設け、合焦度演算範囲を対物レンズの倍率によって可変とするようにしたので、観察者の操作の簡略化できる上に、対物レンズの倍率に合わせて合焦度演算範囲がさらに縮小される結果合焦動作に要する時間をさらに短縮することができる。
【0078】
さらに、合焦動作完了時の座標を逐次記憶する合焦座標記憶手段を設け、直前の合焦座標を含む少くとも2個の合焦座標データを用いて次の観察部位における予測合焦位置を求め、この予測合焦点位置を基に合焦度演算範囲を設定し、これを合焦動作の都度更新するようにしたので、標本の厚みやステージの精度に合わせて常に最適な合焦度演算範囲が自動的に設定され、標本の広範囲な領域に渡り、常に迅速かつ正確な合焦動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る顕微鏡の構成を示す図である。
【図2】同第1の実施の形態における顕微鏡のXYステージの構成を示す図である。
【図3】同第1の実施の形態における顕微鏡の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】同第1の実施の形態における顕微鏡の合焦度演算範囲を示す図である。
【図5】同第1の実施の形態における顕微鏡のXYステージの駆動を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る顕微鏡の変換前後の合焦演算範囲の関係を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る顕微鏡の動作を説明するフローチャートである。
【図8】同第3の実施の形態に係る顕微鏡の合焦位置と予測合焦位置との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…顕微鏡フレーム、2…光源、3…ミラー、4…コンデンサレンズ、5…XYステージ、6…対物レンズ、7…鏡筒、8…接眼レンズ、9…センサヘッド、10…ハーフミラー、11…イメージセンサ、12…撮像手段、、13…電動レボルバ、14…電動レボルバ駆動制御手段、15…XY座標検出手段、16…CPU、17…イメージセンサ駆動回路、18…アナログ信号処理回路、19…合焦度演算手段、20…Z駆動制御手段、21…Z座標検出手段、22…外部コントローラ、23…倍率検知手段、31…上ステージ、32…クレンメル、33…操作ハンドル、34…X座標検出手段、35…Y座標検出手段。
Claims (3)
- コントラスト等の評価値により標本像の合焦度を演算し、対物レンズの光軸に対して略垂直な平面内で走査可能なX−Yステージ又は対物レンズを光軸方向に移動することにより、標本に対して合焦を行なう顕微鏡の自動焦点整合装置において、
前記X−Yステージの光軸に対する位置を示すX−Y座標を検出するX−Y座標検出手段と、
前記X−Yステージ又は前記対物レンズの光軸方向の移動可能範囲のうち、前記X−Yステージの複数の特定範囲に対する標本像の合焦度演算範囲を設定する合焦度演算範囲設定手段と、
前記X−Y座標検出手段にて検出されたX−Y座標に対応する前記合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に基づいて、前記X−Yステージ又は対物レンズを光軸方向に移動させて前記標本に対して合焦を行なう合焦手段と
を具備したことを特徴とする顕微鏡の自動焦点整合装置。 - 前記対物レンズの倍率を検出する倍率検出手段と、
前記倍率検出手段により検出された対物レンズの倍率に基づいて、前記合焦度演算範囲設定手段にて設定された複数の合焦度演算範囲を前記対物レンズの倍率に適合する合焦度演算範囲に変換する合焦度演算範囲変換手段と
を付加したことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡の自動焦点整合装置。 - 前記合焦手段により合焦が行なわれた際のX−Yステージと対物レンズとの光軸方向の相対位置を示すz座標を検出するz座標検出手段と、
前記z座標検出手段により検出されたz座標及びこのときのX−Y座標検出手段により検出されるX−Y座標を逐次記憶する記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された特定範囲に対応するX−Y座標及びz座標に基づいて、合焦動作の都度、それぞれの特定範囲に対応する予測合焦位置を算出する予測合焦位置算出手段と、
前記予測合焦位置算出手段により算出された予測合焦位置に基づいて、新たに合焦度演算範囲を算出し、合焦動作の都度、前記合焦度演算範囲設定手段により設定された合焦度演算範囲に代えて、新たに算出された合焦度演算範囲を設定する合焦度演算範囲再設定手段と
を付加したことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡の自動焦点整合装置。
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