JP3631196B2 - 水蒸気移動制御装置の性能試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通気性及び透湿性を有する膜体又はその膜体の配列で水蒸気の移動方向を制御することにより調湿装置等として利用される水蒸気移動制御装置を被検体とした性能試験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
水蒸気移動制御装置等に用いられる膜体の透湿度を測定する方法として、JIS透湿度試験法によるカップを用いたウォーター法が知られている。
このウォーター法に用いる装置は、カップ状構造になっており、被検体としての膜体の水蒸気透過特性を秤量法により測定する方法である。
尚、この従来のウォーター法の改良方法については、本出願人においてPCT出願(PCT/JP99/03998)により既に提案しているが、カップ内の水より上の膜体直下部分はほぼ飽和水蒸気となり、圧力の調整に対しては何らの手段も設けられていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、JIS透湿度試験法によるカップを用いたウォーター法にあっては、単純なカップによる秤量法であるため、膜体の圧力変化に応じた透湿量や透気性の評価を行うことができないものであった。
【0004】
本発明は、膜体を通過させる物質として空気を用い、温度及び湿度の測定を行いながら空気の圧力変化を微調整し、ある圧力条件又は圧力変化の条件下における膜体の透湿性又は透気性を評価することができ、又、その結果をもとに熱交換効率を精密に測定することができるようにした水蒸気移動制御装置の性能試験装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する為に、本発明の水蒸気移動制御装置の性能試験装置(請求項1)では、
通気性及び透湿性を有する膜体又はこの膜体によって区画された複数の小室が形成されている水蒸気移動制御装置を被検体とした性能試験装置であって、
上面の開口部に被検体を気密状態に取り付けるようにしたカップ容器と、
シリンダ内に微動可能なピストンを設けた変圧シリンダと、
この変圧シリンダのシリンダ内と前記カップ容器の底部を連通させる連通路と、
前記カップ容器内の空気温度及び湿度を測定する温湿度センサ及びカップ容器内の空気圧力を測定する圧力センサと、
カップ容器の上部に空気層が生じる状態にカップ容器の底部からシリンダ内に至る間に水を収容させたときに、その水の温度を測定する温度センサを備え、
カップ容器の上部から延長した送気管に送気開閉バルブを介して送風装置が接続されると共に、連通路における変圧シリンダ寄り近傍に排気開閉バルブが設けられている構成とした。
【0006】
この性能試験装置において、カップ容器の開口部に断熱体を介して被検体を気密状態に取り付けるようにした態様(請求項2)がある。
【0007】
この場合、圧力センサを送気管の途中に取り付けることができる(請求項3)。
【0008】
又、この性能試験装置において、変圧シリンダのピストン移動量を表示する移動量ゲージが設けられている態様(請求項4)がある。
【0009】
本発明の性能試験装置では、カップ容器の上部に空気層が生じる状態にカップ容器の底部からシリンダ内に至る間に水を収容させ、この水を変圧シリンダにより与圧又は減圧することで空気層の空気の圧力を変化させ、被検体の透湿性を評価することになる。
この場合、カップ容器の上部において水と被検体との間に生じさせた空気層の湿度はほぼ飽和状態になるもので、この飽和状態の空気に変圧シリンダにより微弱な圧力変化を加えて、被検体の透湿性を評価するものである。
又、カップ容器内の空気温度及び湿度、それに水を収容した場合の水温の三種類を測定することができるようにしている。
【0010】
この性能試験装置では、カップ容器の底部からシリンダ内に至る間に水を収容させて使用する評価方法と、又、水を収容することなく、温度や湿度が調整された空間の空気を取り入れることができる通風装置を備えている。
このように、水を収容することなく、通風装置によって水蒸気飽和状態でない空気を取り入れるようにすれば、低湿度の与圧条件の変化に伴なう被検体の温度変化を実測することができる。
この結果、水蒸気の飽和水蒸気圧曲線の気相から液相への変化による通気路の移動特性について、広範囲な水蒸気濃度の圧力変化による測定を可能とした。
【0011】
又、カップ容器の熱交換は、常時発生しているが、大きな質量を有し、熱伝導速度の高いカップ容器は、一定条件におかれた温度や湿度が調整された空間の温度条件は、カップ容器内では一定の数値を示しやすい。
送気するカップ容器内の空間の周辺を囲むカップ容器の温度変化または熱量変化を小さくして、送気する空気の熱容量の変化を被検体内部に設定した温湿度センサや圧力センサを用いて精密に測定することができる。
この検査装置を用いるに当り、膜体を通過する空気の熱容量は、カップ容器の質量が大きく、熱伝導速度が速い材質で形成すると、一定した変化量を得ることができ、通過によって変化する熱伝導条件や熱交換効率を得ることができる。
【0012】
たとえば、温度変化に幅が生じる場所に静置された箱体に水蒸気移動制御装置を設置した場合を考える。このとき同一の温度変化が箱体に均等に与えられるものと仮定すると、箱体の容積が異なった場合には、外気との間に発生する呼吸量に差が現れる。
また、箱体の内部圧力がほぼ外気と同一の圧力条件で変化するものと仮定した場合には、通過容積が異なり、一方、等しい水蒸気移動質量しか得られない場合を仮定した場合には、同容積の移動を伴うために必要な圧力条件が異なる。
すなわち、断熱的に考察して、水蒸気を理想気体と想定した場合には、水蒸気移動制御装置内では、箱体の呼吸現象に伴って熱交換が発生し、さらに設置する箱体の容積や環境の温度条件により水蒸気の移動量に変化が現れることが考えられる。
【0013】
従来の技術では、定圧定温環境下における測定結果をもとに、設置する環境の温度条件や設置した箱体の容積を考慮して調湿性能の評価を類推することはできた。
しかし、通気路を構成する熱伝導性の異なる物質や、設置環境の急激な変化による具体的な評価手段を得ることは難しいもので、本発明は、かかる問題を解決するために開発した性能試験装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は水蒸気移動制御装置を設定した箱体の略横断面図、図2は図1に示した箱体の8倍の箱体積を有する箱体の略横断面図である。
図1及び図2において、1は水蒸気移動制御装置で、通気性及び透湿性を有する膜体10,11,12によって区画された複数の小室13,14が形成されている。
この水蒸気移動制御装置1は密閉された箱体2に取り付けられるもので、この水蒸気移動制御装置1の内部を通気路15として箱体2の内部と外気3が連通している。この場合、図2で示す箱体2の容積は、図1で示す箱体2の容積の8倍になっている。
ここで、水蒸気を理想気体と考え、箱体2内から水蒸気移動制御装置1を経て外気3に至る水蒸気の移動経路を断熱的に考察した場合、図1における水蒸気の移動特性と、図2における水蒸気の移動特性とは異なる移動条件となる。
【0015】
すなわち、図3に示すように水蒸気移動制御装置1の内部の移動の境界を形成する各膜体10,11,12には強度と破断[破壊]限界が存在する。尚、図3は縦軸に付加力、横軸に時間経過を示した水蒸気移動制御装置の内部の移動の境界を形成する膜の破断限界と安全領域を示す略図である。
この破壊の限界点に必要な圧力は、水蒸気移動制御装置1の特性として一定と仮定できる。ところが、一定の温度変化の下では、箱体2の容積が大きくなればなるほど、呼吸される空気の体積は大きくなるので圧力変化量は高くなる。
【0016】
ところで、水蒸気移動制御装置1の内部では、水蒸気の移動速度を制御するために透湿可能な膜体を用いて、その表面積差や、撥水性の差、または吸水特性などを用いて、水蒸気の移動特性が偏向性を持ちやすいように配慮して設計が行われる。
実際に移動する水蒸気の移動特性は、圧力条件の変化や環境の温度変化などによって変化する。また、水蒸気の移動質量は、熱容量の変化として考察することができる。
移動量の差を人工的に形成するために設定した膜体や小室は、常に外界や周辺の接続物質との間で伝導、輻射、対流などの熱交換が行われる。たとえば、箱体を容積が異なる条件に設定した場合には、通過速度に変化が発生することになり、熱交換速度も変化する。
模擬的にこのような温度変化を、熱容量の変化としてシミュレーションすることはできるが、実際には、計算が複雑になり困難である。
そこで、特定の容積の箱体にある温度変化が得られる条件を与え、実際に水蒸気移動制御装置を通過させて、各小室の温度変化を実測し、特定の環境に置かれた水蒸気移動制御装置の性能の評価を、実測に基づいてあらかじめ評価することができるようにする装置の開発が必要になる。
【0017】
たとえば、図4に示すように、ある移動の境界を形成する膜体の水蒸気移動曲線は、通過前の圧力の条件によりXnの曲線のように変化する。また通過速度は小室の形状や通過空気の水蒸気濃度の変化による熱伝導率の変化などによっても変化を受ける。尚、図4は縦軸に透湿度、横軸に経過時間を示した1[atm]とn[atm]の圧力下でのある移動の境界を形成する膜体の水蒸気移動量曲線を示す略図である。
【0018】
そこで図3のように、あらかじめ破断[破壊]点が得られる圧力上昇速度を膜体の通過空気量をもとに求めて、安全な非破壊領域における水蒸気の移動特性を求める必要がある。
水蒸気移動制御装置の各移動の境界を形成する膜体の水蒸気移動量を示す曲線を示す図5は、各膜体においてそれぞれ3種類の曲線があり、これらは、移動の経過で等圧変化を受ける場合と、等温変化を受ける場合とでは、熱交換にとっての考察の仕方を変えなければならない。
尚、図5は縦軸に水蒸気移動質量、横軸に経過時間を示した水蒸気移動制御装置の各移動の境界を形成する膜の水蒸気移動量を示す曲線を示す略図、図6は縦軸に相対湿度、横軸に経過時間を示した水蒸気移動制御装置を設置した箱体の箱体内部の相対湿度を時間経過に伴い示した略図である。
【0019】
等圧変化は、温度の変化により各移動の境界面の経過に伴い、移動の前後の熱エネルギー関係は等しくなるように変化が発生し易い。
また、等温変化は、実際の空間では得られない条件と考えられるが、このとき、被検体の各通気路が等温変化をとげる状態は、通過速度が大きな場合には熱交換速度が大きい時に得られやすいと考えられる。
【0020】
緩やかな移動速度が得られる温度変化の環境におかれた水蒸気移動制御装置と箱体を考える場合には、水蒸気の移動量変化は微弱であり、温度変化も小さい。
しかし前述したように図1や図2に示したような容積差があれば、図1で得られる移動の境界面に与えられる圧力条件は異なる。
すなわち、これらの移動量は圧力変化に伴って変化するので、各移動境界の周辺部の温度変化を類推することは困難である。
【0021】
図7に示す水蒸気移動制御装置の性能試験装置は、通気性及び透湿性を有する膜体10,11,12によって区画された複数の小室13,14が形成されている水蒸気移動制御装置1を被検体としている。
【0022】
この性能試験装置には、上面が開口したカップ容器4が設けられている。このカップ容器4は、質量が大きく、熱伝導速度が速い材質で形成されるもので、この例では、ステンレスを材質として形成されている。
そして、このカップ容器4の上面に形成された開口部にスクイーズパッキング41を介してリング状の断熱体42が取り付けられると共に、この断熱体42の上面開口部が前記膜体10で塞がれる状態に、水蒸気移動制御装置1を気密状態に取り付けるようにしている。尚、図中43はクランプで、上側断熱体44を介して水蒸気移動制御装置1を押圧固定させている。
このように、被検体としての水蒸気移動制御装置1とカップ容器4との間には断熱体42が介在され、気密性を確保するためにスクイーズパッキング41を介在させている。この結果、カップ容器4自体の熱容量と被検体(水蒸気移動制御装置1)の熱容量とは個別に考察することができる。
【0023】
又、前記カップ容器4の上側部には、カップ容器4内の空気温度及び湿度を測定する温湿度センサ50が設けられると共に、カップ容器4内の空気圧力を測定する圧力センサ(デジタル圧力ゲージ51及びアナログ圧力ゲージ52)が設けられ、また、前記温湿度センサ50の下方でカップ容器4の底側に水温センサ53が取り付けられている。
【0024】
又、この性能試験装置には、シリンダ60内に微動可能なピストン61を設けた変圧シリンダ6が設けられている。この変圧シリンダ6のシリンダ60内と前記カップ容器4の底部は連通路7により連通されている。
【0025】
尚、前記変圧シリンダ6のピストン61は、手動ハンドル62によって手動操作できるし、又、シリンダ60に形成したネジ穴63にピストン61のネジ軸64を螺合させ、このネジ軸64をギヤ列65を介して微動可能なモータ66に接続させることで、遠隔操作を行うことができるようになっている。
このように、変圧シリンダ6を使用することにより、一定の圧力変化量を維持することができるし、移動速度を変化させることにより圧力の変化速度を微妙に調整することができる。
又、ピストン61のネジ軸64には、変圧シリンダ6のピストン移動量をネジ軸64の回転数(回転角度)で表示する移動量ゲージ(目盛板67及び読取装置68)が設けられている。
尚、図中15、16は小室用温湿度センサ、17、18は小室用圧力センサ、45は水位センサ、46は水位計、70は水供給口、71は水供給口バルブ、72は排水用バルブである。又、30は恒温恒湿室で、ここに性能試験装置を設置することになる。
【0026】
この図7で示した性能試験装置では、水供給口70から水(純水)を注水して、カップ容器4の上部に空気層49が生じる状態にカップ容器4の底部から連通路7及びシリンダ60内に水Wを収容させ、この状態で変圧シリンダ6のピストン61を微動させながら、各温湿度センサ50,15,16、水温センサ53、各圧力センサ51,52,17,18の値を測定していくことになる。
【0027】
又、本発明の性能試験装置では、図8のようにカップ容器4の内部に水を収容せずに、あらかじめ温度や湿度が調整された恒温恒湿室30の空気をカップ容器4の内部から連通路7及びシリンダ60内部に取り込んで、低湿度における加圧性能の評価を行うことができる。
その為の構造として、カップ容器4の上部から横方向に延長して送気管80が設けられ、この送気管80に送気開閉バルブ81を介して送風装置82が接続されると共に、前記連通路7における変圧シリンダ6寄り近傍に排気開閉バルブ83が設けられている。尚、前記圧力センサ(デジタル圧力ゲージ51及びアナログ圧力ゲージ52)は送気管80の途中に取り付けられている。
【0028】
従って、送気開閉バルブ81及び排気開閉バルブ83を開放した状態で送風装置82により恒温恒湿室30の空気を通風させ、カップ容器4、連通路7、シリンダ60の内部空間が均一雰囲気になった状態で送気開閉バルブ81及び排気開閉バルブ83を閉じれば、恒温恒湿室30の空気を取り込むことができる。
そして、この状態で変圧シリンダ6のピストン61を微動させながら、各温湿度センサ50,15,16及び各圧力センサ51,52,17,18の値を測定していくことになる。
この場合、送気開閉バルブ81や排気開閉バルブ83を遠隔操作するとともに、送風装置82を駆動して内部空間の試験前の条件を整えることができる。
このほか、図7のようにカップ容器4の内部に水Wを収容して使用する場合、送風装置82によりカップ容器4等の内部空間の温度や湿度の調整を行ったあとで、カップ容器4内に水供給口70から水Wを供給することができるし、水供給口バルブ71にモータバルブを用いることで、遠隔操作により給水するようにしてもよい。
【0029】
次に、図9は箱体内に収容物を入れない場合の、水蒸気移動制御装置を用いた圧力変化と、その圧力変化に伴うカップ容器内の温度変化を示した略図、図10は箱体内に発熱性、非発熱性の機器を収容した場合の、水蒸気移動制御装置を用いた圧力変化と、その圧力変化に伴うカップ容器内の温度変化を示した略図である。
【0030】
図9は水蒸気移動制御装置の性能試験装置を用いた圧力変化に伴うカップ容器4内の温度変化を示すもので、この図9の下側部に、変圧ピストン6を移動して大気圧から加圧した後、一定時間経過後に減圧して再び大気圧に戻した圧力曲線を太線で示した。また同様に、大気圧から減圧した後、一定時間経過後に加圧した圧力曲線を細線で示している。
【0031】
この性能試験装置のカップ容器4内の圧力変動に伴う温度は、カップ容器4の材質の密度が大きく、また熱伝達速度が速い金属製(ステンレス製)であるために、この性能試験装置を収容する空間(恒温恒湿室)の温度によって一定の温度を示し易い。
この性質を用いてカップ容器4内の温度を一定の温度に設定することができる。まず、この前準備として、カップ容器4内の温度が、収容される空間(恒温恒湿室30)の温度に一致するまで少なくとも2時間放置し、その後、図9に示したように圧力を変化させた場合に、カップ容器4の開口部に金属製プレートを配置して通気路を塞ぎ、完全に遮断すると、カップ容器4内の温度は一旦上昇するが、前述したようにカップ容器4の材質の密度が大きく、また熱伝達速度が速い金属製(ステンレス製)であるために、空間(恒温恒湿室30)の温度に速やかに一致するように変化する。
【0032】
この圧力変化に伴う温度変動は空間(恒温恒湿室30)の温度に接近する変化であるが、この温度変化は性能試験装置固有の変化速度を示す。そこで、この性能試験装置固有の変化速度をもとに、被検体となる膜体10,11,12や水蒸気移動制御装置1の通気路への通気量の容積を圧力変化から逆算して算出し、被検体の熱交換効率を、実測した、例えば水蒸気移動制御装置1の小室13,14の温度や湿度をもとに得られるカップ容器4からの熱移動量を精密に測定することができる。
【0033】
例として、膜体などの物体を挟んだ流体(水蒸気)の熱交換量は、挟んだ物体の全伝熱面積と熱通過率とその流体の温度により算出される。
Q=K・A・(Ta−Tb)
Q:温度の高い流体(水蒸気A)から温度の低い流体(水蒸気B)への熱交換量
K:熱通過率
A:流体により挟まれた物体の全伝熱面積
Ta:温度の高い流体(水蒸気A)の温度
Tb:温度の低い流体(水蒸気B)の温度
この熱通過率Kには、小室の軸部、壁部、スケルトン、メッシュ、軸受け部などの接触熱抵抗も含まれる。
(参考文献:コンパクト熱交換器,p13,ISBN4−526−03165−8)
【0034】
つまり、通気路を遮断しない場合には通気が行われる分、圧力変動が小さくなり、遮断した場合に比べ温度変動が小さくなる。このとき、カップ容器内の温度は一旦上昇するが、カップ容器の材質の密度が大きく、また熱伝達速度が速い金属製(ステンレス製)であるために、図9の破線に示すように、空間(恒温恒湿室)の温度に速やかに一致するように変化する。尚、図9の実線は、熱伝達速度が遅い場合を示す。
そこで、前述した通気路を完全に封鎖した場合のこの測定装置固有の温度変化速度をもとにして、実測により求めた被検体の温度変化速度と水蒸気濃度から、移動した熱容量の変化量を求める。このとき、被検体の熱交換効率は通気量に依存する。したがって、見かけ上、通気させる移動方向の熱容量が変化したように測定結果が得られることになる。
【0035】
また、通過させる水蒸気の濃度が被検体で断熱圧縮を受けることが考えられる移動経路の場合には、カップから通気する水蒸気の濃度は高濃度でも測定が行える。水蒸気を理想気体と見なしたとき、熱量の変化等は断熱的に考えることができる。このとき、断熱冷却を受けることが考えられる被検体の通気路の移動経路にあっては、温度下降が生ずることが考えられ、通気路は移動する水蒸気の相変化による膜体などの表面に水が凝縮し、このために移動速度は大きな変化を受ける。
そこで、断熱的に考えたとき、断熱冷却が予測される通気路の移動経路にあっては、温度下降を考慮して、移動する水蒸気の相変化による通気路の移動速度の大きな変化が生じにくい、低濃度の水蒸気を通気するように送風装置82を使用してカップ容器4内の水蒸気濃度を低濃度にすることができる。
【0036】
このとき、圧力変化の絶対量を確保するためにカップ容器4内に金属製固体を配置することができる。
また、前述した前準備の後に得られる、装置固有の通気による熱量変化量の調整用として、カップ容器4内に対してヒーターや冷却装置を配置し、装置固有の熱量変化速度を調整してもよい。
【0037】
また、図9に示した圧力変化はピストンの等速運動による圧力変化の一例を示したが、例えばピストンの運動速度を変化させ、圧力の上昇または、下降の変化速度を調整し、容積と調湿対象となる空間を構成する機器の総質量に影響される熱エネルギーの重積による、例えば、実線で示すような温度変化が生じるときの圧力変化を再現するようにしてもよい。
このとき、例えば箱体内に発熱性の機器が収容される場合には、図10の実線に示したように温度の上昇は促進されることになるので、この測定装置を使って再現するためには、温度が一定の環境下の空間に配置して、発熱量から得られる圧力上昇量を熱交換の変化速度量に対して、加減した圧力上昇速度量を調整すればよい。
【0038】
反対に、発熱がない場合には調湿する対象となる空間の質量や熱伝導速度が影響して、周囲環境の温度変化に伴うその空間の温度変化は影響を受ける。このような場合には、質量や熱伝導速度の影響を受けて、温度変化の速度量は小さくなるので、圧力の変化速度量も小さくなる。このとき、図10の温度の実線に示すように、熱エネルギー量の重積によって、一定の熱量変化量に至る時間量は長くかかる。
尚、図10の破線は、熱量の変化速度が前述の実線に比べて小さい場合を示す。又、このとき、温度の変化速度と熱エネルギーの重積に影響を受け、圧力の変化には圧力を示す曲線a1,a0、c1,c0のような場合がある。
t1で電源による熱変動が行われる場合をa1,a0とし、又、質量が大きく、温度変化がしにくい場合をc1,c0とする。発熱性の機器を収容する場合には、a1りように立ち上がりが速いが、a0のように下降も速い。発熱量や収容する空間の熱交換の状態、例えば周囲の風速や物理的に接続する構造物などに影響を受ける。
【0039】
また、後者の冷却性の機器を収容する場合にも同様に、質量が大きく温度変化が遅くなるので、c1のように下降は速いが上昇も速い。又、周囲の風速や物理的に接続する構造物などに影響を受ける。このような、変化速度の違いを考慮して、測定時に温度変化に相当する圧力変化速度量の調整を行い、精密な再現性を確保することができる。このためには、ピストンの駆動用モータの回転速度をプログラムし、調整すれば容易に再現することができる。
又、等速運動による圧力変化をもとにした、例えば図9による温度変化を用いて予測計算し、図10を求めるようにしてもよい。
【0040】
次に、図11は水蒸気移動制御装置を被検体とする性能試験装置で破断点を超える前と超えた後の水蒸気移動制御装置を示し、図11(イ)は与圧前の被検体(水蒸気移動制御装置)の断面模式図を示し、図11(ロ)は破断点を求めた場合の模式図を示している。
【0041】
本発明の性能試験装置を用いることにより、圧力を変化させ、この結果、水蒸気移動制御装置の内部を水蒸気及び空気が通過する速度が変化する。また、通過速度は各膜体の表面温度の変化に影響する。
さらに通気路を構成する多孔体や小室内部の構成要素としてフィンなども通過する水蒸気や空気の移動速度によって影響を受ける。
この影響は通過する空気または水蒸気を断熱的に考えた場合の断熱圧縮や断熱冷却による温度変化のほかに、 通過する水蒸気または空気が、水蒸気移動制御装置の内部の通気路を通過する時に熱交換を生じる。
【0042】
この熱交換は通過速度や水蒸気の濃度又は気圧の変動などによって影響を受けることが考えられるが、通過する空気または水蒸気の圧力変化は模擬的な装置各部の通気路の温度変化を起こすことができる。
その温度変化による水蒸気の移動変化量を厳密に測定し、熱交換によって影響を受けた水蒸気移動量の変化量の要因を調べることができる。そこで、箱体の容積が異なる場合の水蒸気移動の特性を調べたり、設定する環境に依存した箱体内部の温度変化による影響を模擬的に試行することができる。すなわち、異なる箱体の容積や環境に依存した箱体内部の温度変化による、水蒸気の移動特性があらかじめ得られる。
【0043】
例えば、図1に示すような箱体体積をもつ箱体に設置した水蒸気移動制御装置の内部膜の移動水蒸気質量をn[kg/m3]と仮定した場合には、状態方程式より箱体の圧力Pと温度Tと体積V1の関係は次式で表される。
P×V1=n1×R×T
また、図1の8倍の箱体体積を有する図2の箱体の圧力Pと温度Tと体積V2の関係は次式で表される。
P×V2=n2×R×T
V2=8×V1
V2=8V1
温度一定、 または圧力一定の条件下では
PV1=n1RT
P/RT=n1/V1
同様に
PV2=n2RT
P/RT=n2/V2
よって
n1/V1=n2/V2
n1/V1=n2/8V1
n2=8n1
【0044】
この状態方程式に基づいて、実際の測定結果を計算して求めた膜の水蒸気移動質量を図12に示す。
この図は縦軸に水蒸気移動質量を横軸に経過時間を示している。
上方の太い水蒸気移動質量曲線は図2の箱体を持つ場合、下方の細い水蒸気移動質量曲線は図1の箱体を持つ場合の水蒸気移動量である。
【0045】
図13では第1膜(Memb1)、第2膜(Memb2)、第3膜(Memb3)について同様の計算を行い求めた水蒸気移動質量曲線で、縦軸に水蒸気移動質量を横軸には経過時間を示している。
ここで、体積、圧力一定で、温度がΔT[℃]変化した時の水蒸気移動質量を
n3[kg/m3]とすると水蒸気移動質量n3とn1は次式で表される。
PV1=n1RT
PV1/R=n1T
同様に
PV1=n3R(T+ΔT)
PV1/R=n3(T+ΔT)
よって
n1T=n3(T+ΔT)
n3=T/(T+ΔT)n1
【0046】
上式により求めた温度が5℃上昇した時の水蒸気移動質量と20℃上昇した時の温度の水蒸気質量を相対湿度に変換し、縦軸に相対湿度、横軸に膜の種類を示したグラフを図14及び図15に示す。
図14は5分後の相対湿度、図15は30分後の各膜に対する相対湿度を示している。
移動の境界の前後が共に等圧条件下にあるときには、水蒸気は熱エネルギ-的に熱エネルギ-関係が等しいように動こうとするので、図14、図15において、温度上昇に伴い各膜体の相対湿度の差が大きくなっており、その分、水蒸気移動量も大きくなる。
また、図14の5分後の相対湿度の温度変動量と、図15の30分後の相対湿度の温度変動量を比べると、時間経過に伴い温度変動量が大きくなっており、時間経過に伴い、水蒸気の移動速度が上昇している。
つまり、温度上昇により水蒸気の移動量速度が促進され易くなる。
図13に見られるように、30分までは第3膜から第2膜、第2膜から第1膜への水蒸気移動速度が急激に上昇し、それ以降には比較的に穏やかな速度変動を行っている。
【0047】
このほかに、どれぐらいの温度変化による圧力変化に装置が絶えることができるか、あるいはどれぐらいの温度変化が水蒸気の移動特性に影響して、小さな実容積の場合にどのような水蒸気移動特性が得られるかということを考慮して、日々の温度変化に伴う箱体の内部の呼吸現象を再現し、水蒸気移動制御装置の破壊強度を求めることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の性能試験装置によれば、膜体を通過させる物質として空気を用い、温度及び湿度の測定を行いながら空気の圧力を微調整し、ある圧力条件下における膜体の透湿性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水蒸気移動制御装置を設定した箱体の略横断面図である。
【図2】図1に示した箱体の8倍の箱体積を有する箱体の略横断面図である。
【図3】縦軸に付加力、横軸に時間経過を示した水蒸気移動制御装置の内部の移動の境界を形成する膜の破断限界と安全領域を示す略図である。
【図4】縦軸に透湿度、横軸に経過時間を示した1[atm]とn[atm]の圧力下でのある移動の境界を形成する膜体の水蒸気移動量曲線を示す略図である。
【図5】縦軸に水蒸気移動質量、横軸に経過時間を示した水蒸気移動制御装置の各移動の境界を形成する膜の水蒸気移動量を示す曲線を示す略図である。
【図6】縦軸に相対湿度、横軸に経過時間を示した水蒸気移動制御装置を設置した箱体の箱体内部の相対湿度を時間経過に伴い示した略図である。
【図7】水蒸気移動制御装置の性能試験装置を示すもので、カップ容器内部に水を収容した場合の略断面図である。
【図8】本発明の実施の1形態にかかる水蒸気移動制御装置の性能試験装置を示すもので、カップ容器内部に空気を収容した場合の略断面図である。
【図9】箱体内に収容物を入れない場合の、水蒸気移動制御装置を用いた圧力変化と、その圧力変化に伴うカップ容器内の温度変化を示した略図である。
【図10】箱体内に発熱性、非発熱性の機器を収容した場合の、水蒸気移動制御装置を用いた圧力変化と、その圧力変化に伴うカップ容器内の温度変化を示した略図である。
【図11】水蒸気移動制御装置を被検体とする性能試験装置で破断点を超える前(イ)と、超えた後(ロ)の水蒸気移動制御装置を示す略断面図である。
【図12】縦軸に透湿度、横軸に経過時間を示した図1に示した箱体と図2に示した箱体に設置した水蒸気移動制御装置の各移動の境界を形成する膜体の水蒸気移動量を示す曲線の略図である。
【図13】縦軸に透湿度、横軸に経過時間を示した図1に示した箱体と図2に示した箱体に設置した水蒸気移動制御装置の各移動の境界を形成する主要3膜の水蒸気移動量を示す曲線の略図である。
【図14】縦軸に相対湿度、横軸に経過時間を示した図1に示した箱体と図2に示した箱体に設置した水蒸気移動制御装置の水蒸気通過5分後の各移動の境界を形成する膜体の温度変化による水蒸気移動量を示す略図である。
【図15】縦軸に相対湿度、横軸に経過時間を示した図1に示した箱体と図2に示した箱体に設置した水蒸気移動制御装置の水蒸気通過30分後の各移動の境界を形成する膜体の温度変化による水蒸気移動量を示す略図である。
【符号の説明】
1 水蒸気移動制御装置
10 膜体
11 膜体
12 膜体
13 小室
14 小室
2 箱体
30 恒温恒湿室
4 カップ容器
42 断熱体
49 空気層
50 温湿度センサ
51 デジタル圧力ゲージ(圧力センサ)
52 アナログ圧力ゲージ(圧力センサ)
53 温度センサ
6 変圧シリンダ
60 シリンダ
61 ピストン
67 目盛板(移動量ゲージ)
68 読取装置(移動量ゲージ)
7 連通路
80 送気管
81 送気開閉バルブ
82 送風装置
83 排気開閉バルブ
Claims (4)
- 通気性及び透湿性を有する膜体又はこの膜体によって区画された複数の小室が形成されている水蒸気移動制御装置を被検体とした性能試験装置であって、
上面の開口部に被検体を気密状態に取り付けるようにしたカップ容器と、
シリンダ内に微動可能なピストンを設けた変圧シリンダと、
この変圧シリンダのシリンダ内と前記カップ容器の底部を連通させる連通路と、
前記カップ容器内の空気温度及び湿度を測定する温湿度センサ及びカップ容器内の空気圧力を測定する圧力センサと、
カップ容器の上部に空気層が生じる状態にカップ容器の底部からシリンダ内に至る間に水を収容させたときに、その水の温度を測定する温度センサを備え、
カップ容器の上部から延長した送気管に送気開閉バルブを介して送風装置が接続されると共に、連通路における変圧シリンダ寄り近傍に排気開閉バルブが設けられていることを特徴とした水蒸気移動制御装置の性能試験装置。 - 請求項1記載の性能試験装置において、カップ容器の開口部に断熱体を介して被検体を気密状態に取り付けるようにした水蒸気移動制御装置の性能試験装置。
- 請求項1又は2記載の性能試験装置において、圧力センサが送気管の途中に取り付けられている水蒸気移動制御装置の性能試験装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載された性能試験装置において、変圧シリンダのピストン移動量を表示する移動量ゲージが設けられている水蒸気移動制御装置の性能試験装置。
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