JP3630374B2 - 透明導電膜付ガラス及び透明導電膜の成膜方法 - Google Patents

透明導電膜付ガラス及び透明導電膜の成膜方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は透明導電膜付ガラス、及び該透明導電膜の成膜方法に関するものであり、特にタッチパネルの透明電極として用いられる高抵抗で均一性に優れた高透過率の透明導電膜付ガラス及び該透明導電膜の成膜方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
スズをドープした酸化インジウム膜(ITOと称す)やフッ素をドープした酸化スズ膜(FTOと称す)、アンチモンをドープした酸化スズ膜(ATOと称す)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛膜、インジウムをドープした酸化亜鉛膜はその優れた透明性と導電性を利用して、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、面発熱体、タッチパネルの電極、太陽電池の電極等に広く使用されている。この様に広い分野で使用されると、使用目的によって抵抗値、透明度は種々のものが要求される。
【0003】
すなわち、フラットパネルディスプレイ用の透明導電膜では低抵抗、高透過率のものが要求されるが、タッチパネル用の透明導電膜では逆に高抵抗、高透過率の膜が要求される。特に最近開発されて市場の伸びが期待されるペン入力タッチパネル用の導電膜は、位置の認識精度が高くなくてはならないことから、シート抵抗が200〜3000Ω/□といった高抵抗でかつ抵抗値の均一性に優れた膜であり、また、液晶ディスプレイの上に置くことから高透過率の膜であることが要求される。特にタッチパネルの構造は、透明導電膜付ガラスと透明導電膜付フィルムをスペーサーを介して向かい合わせて周囲を張り合わせたもので、タッチパネルの透過率はガラスとフィルムの透過率を掛けた値となる。タッチパネルとしての透過率を例えば80%以上にしようとすると、ガラス、フィルムそれぞれ90%以上の透過率にする必要があり、1%でも透過率が高いものが要求される。通常、高透過率を達成する方法は膜厚を薄くすることであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ITO、FTO、ATO、酸化亜鉛膜等の透明導電膜材料は、いずれも屈折率が基板ガラスの屈折率(ソーダライムガラスでは1.52)より高く(1.7〜2.2)、透明導電膜表面と基板ガラスとの界面での反射が大きくなり、可視光透過率が低下する。
【0005】
高透過率の膜を得ようとする場合は膜厚を薄くする必要があるが、人間の目に感度良く感知される550nm波長で85%の透過率を得ようとすると膜厚は30nm以下の膜厚にする必要があり、89%の透過率の場合には膜厚を20nm以下の膜厚にする必要がある。更に90%の透過率の場合には膜厚を10nm程度まで薄くせねばならず、この場合は膜厚を均一にコントロールするのは難しく、面内の抵抗値の均一性は悪くなる傾向にある。また、膜厚を10nm程度まで薄くすると抵抗値の安定性が悪くなり、温度変化や湿度変化の影響を受けやすく面内の抵抗値の均一性のみならず抵抗値が変動するため導電膜の膜厚コントロールによる高透過率化は望ましくない方法である。
【0006】
ペン入力タッチパネル用導電膜の抵抗値は、液晶ディスプレー用のものと違って高抵抗値が要求され、また高透過率かつ高安定性が要求されることからその膜厚は10〜30nmになる。導電膜の膜厚を更に厚くしてゆくと、膜表面での反射光と基板界面での反射光との干渉によって550nmでの透過率が90%程度に増加するが、この場合の膜厚は約150〜200nmとなり、厚すぎるために200Ω/□以下の抵抗値となり、タッチパネル用には低すぎる抵抗となる。従ってタッチパネル用導電膜の膜厚は10〜30nmが実用的な範囲であるといえる。この場合の550nmの透過率は90%〜85%となる。
【0007】
導電膜の膜厚を変えないで透過率を増加する方法として多層膜化が知られており、それは導電膜とガラス基板の間に低屈折率の膜を新たに設けることで達成される。この方法は、基板と低屈折率膜の界面での反射光と、低屈折率膜と導電膜の界面での反射光と、導電膜表面での反射光の干渉作用によって反射率を低下させ、透過率を増加する方法であり、低屈折率の下地膜は、基板と導電膜の界面での反射を防止する働きをする。この場合、導電膜の屈折率と膜厚に応じて下地膜の屈折率と膜厚をコントロールすることで反射率を小さくすることが可能で、その結果高透過率化が達成出来る。
【0008】
例えば、裳華房 応用物理学選書3「薄膜」(金原、藤原著)P.197〜200には薄膜の反射と透過についての理論が述べられ、屈折率1.5の基板上の薄膜は屈折率=2.0の場合エネルギー反射率は4〜20%の値をとり膜厚が決まれば、ある波長での反射率は決められる。また、P.225〜229には二層膜を反射防止の観点から実例をあげて示してあり、この方法を応用することで透過率を増加させることが可能となる。しかし実際にこの理論を応用する場合は、導電膜の屈折率と膜厚に応じて、下地の低屈折率膜の屈折率と膜厚をどのようにするかを決定する必要があり、因子の変数が多いために非常に多数の組合せが考えられることから、最適な組合せを見出すのは困難なことであった。また、屈折率を決めても実際に成膜した膜がそのような値になるかどうかは材料の選択や組成、成膜条件とも関連するため、光学設計した通りの透過率にするのは非常に困難なことであった。
【0009】
また、従来の技術として、液晶ディスプレー用透明導電膜をソーダライムガラス基板に形成する場合、特にITO膜やATO膜、FTO膜を形成する場合には基板と導電膜の間にソーダライムガラス基板からのナトリウムイオンの拡散を抑制する目的で主に二酸化珪素(SiO)膜を設けることが行われており、この方法によって液晶ディスプレーの寿命が伸びることが知られている。タッチパネル用基板にも主に安価なソーダライムガラスが用いられ、導電膜をパターニングして使用する場合には導電膜をエッチングした部分からのNaイオンの拡散を防止する必要がある。
【0010】
Naイオンの拡散を抑制する目的でのSiO膜の膜厚は、厚いほど抑制効果が大きくなるので、70nm以上の膜厚にするのが一般的であった。SiO膜の最適膜厚は、液晶パネルを組み立てる際の配向膜の焼成温度に関連する。この工程で、Naイオンの表面への拡散が最も多くなるために、処理温度と時間に応じて必要膜厚が決められる。当然焼成温度が低く、かつ焼成時間が短ければSiO膜厚は薄くても構わない。
【0011】
しかしながら、液晶パネルの信頼性を得るために、安全をみてSiO膜の膜厚を70nm以上にすることが一般的な方法であった。しかし、SiO膜の膜厚が70nm以上あると透過率は膜厚が厚くなるにつれて低下する傾向を示し、透過率増加の観点からは望ましくないものだった。
【0012】
本発明は、前述の実情からみてなされたもので、タッチパネル用の導電膜付きガラスとして、550nmにおいて89%以上の高透過率の透明導電膜を成膜する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、550nmにおいて89%以上の高透過率の透明導電膜を成膜する方法について鋭意検討した結果、透明ガラス基板上に屈折率1.3〜1.5の透明膜を30〜60nm形成し、その上に屈折率1.7〜2.2の透明導電膜を10〜30nm形成した2層構造の膜とすることにより、高透過率の導電膜付きガラスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
前述したように、シート抵抗が200〜3000Ω/□の安定性の良い導電膜で実用的な膜厚は10〜30nmであり、この膜厚での透過率は85〜90%(550nm)となる。本発明は透明導電膜とガラス基板の間に低屈折率膜を設けることにより、光の干渉作用を利用して基板ガラス界面での反射を減少させ、透過率を増加する方法である。
【0015】
本発明の基板上に形成される第一層膜であるn=1.3〜1.5の透明膜としては、SiO、MgF、CaF、SiOとTiOの複合酸化物、SiOとZrOの複合酸化物等の膜が使用可能である。
【0016】
本発明の基板上に形成される第二層膜である透明導電膜としては、ITO、FTO、ATO、AlドープZnO、InドープZnO等が用いられるが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0017】
導電膜の膜厚が10〜30nmのとき、下地の低屈折率膜の膜厚と透過率の関係を検討したところ、550nmの透過率は低屈折率膜の膜厚と相関関係があり、例えばSiO膜の場合(屈折率=1.46)、通常100nmの膜厚を50nmの膜厚にすると約1.5%透過率が増加することを見出した。またMgF膜の場合(屈折率=1.35)膜厚が50nmのとき最高透過率を示し、下地膜が無い場合に比べ約5%増加する。
【0018】
すなわち、ガラス基板よりも低屈折率の膜を30〜60nmの膜厚で下地膜として用いることで透過率を増加することを見出したのである。導電膜が30nm以上の膜厚では透過率増加の効果はみられない。
【0019】
また、従来の技術として液晶ディスプレー用透明導電膜をソーダライムガラス基板に形成する場合、特にITO膜やATO膜、FTO膜を形成する場合には基板と導電膜の間にソーダライムガラス基板からのナトリウムイオンの拡散を抑制する目的で主にSiO膜を設けること行われていることを述べたが、タッチパネル用透明導電膜では、パターニングする必要のない場合は基板からのNaイオンが膜表面まで拡散してきても特に問題は起きないため、下地膜として屈折率が1.3〜1.5の透明膜ならば種類を問わないが、パターニングする必要がある場合は基板からのNaイオンの拡散を防止することが望ましく、その場合は導電膜下地の低屈折率膜としてSiOを用いることで目的を達することが出来る。タッチパネルの組立工程では、液晶ディスプレーの組立工程と異なり200℃以下の温度条件で処理するために、Naイオンの拡散量は少なく、これを抑制するためのSiO膜厚は30nmあれば充分であることを見出して本発明を完成した。
【0020】
低屈折率膜を成膜するには、一般に知られている方法を採用できる。すなわち、スパッター法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法(CVD法)、パイロゾル法、スプレー法、ディップ法等で所定の材料を所定の厚さで積層成膜することで達成される。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ1mmで10cm角のソーダライムガラス(n=1.52)を超音波霧化による常圧CVD法(パイロゾル成膜法)成膜装置にセットし、450℃に加熱した。Si(CO)のCOH溶液(濃度は0.5mol/l)を超音波により2.2ml/min霧化させ、基板に導入して3分間成膜した。得られた膜は、n=1.46、膜厚50nmのSiO膜であった。引き続き、InClのCHOH溶液(濃度は0.25mol/l)にSnClを、Inに対して10原子%添加した溶液を超音波により2.5ml/min霧化させ、基板に導入し2分間成膜した。その後成膜装置より取り出し、空気中で冷却した。得られた膜は、n=1.95、膜厚22nmのITO結晶膜であった。この膜のシート抵抗を9点測定したところ、平均550Ω/□、比抵抗1.2×10−3Ωcmであり、シート抵抗の均一性は±45Ω/□以内であった。また、透過率は550nmで91.5%を示した。この試料の分光特性(透過率)を図1−1に示した。
【0022】
(実施例2)
実施例1において、Si(CO)のCOH溶液での成膜時間を2分間に変えた以外は実施例1と同様の条件で成膜を行った。得られたSiO膜は、n=1.46、膜厚は38nmであった。ITO成膜後のシート抵抗、比抵抗、均一性は実施例1の膜と全く同じ値を示した。また、この膜の透過率は550nmで90.6%であった。この試料の分光特性(透過率)を図1−2に示した。
【0023】
(実施例3)
実施例1と同じソーダライムガラス基板をスパッター装置にセットした。ターゲットとしてMgFを用い、RF出力200W、基板温度250℃、Arガスを導入して5分間成膜を行った。得られた膜はn=1.36、膜厚=45nmであった。この膜の上にスパッター法で、ITO(Sn=0.5wt% vs In)をターゲットとして、RF出力200W、基板温度300℃、Ar:O=98:2の条件で4分間成膜を行った。得られた膜のシート抵抗は650Ω/□、膜厚は20nm、透過率は92.2%の良好な膜であった。この試料の分光特性(透過率)を図1−3に示した。
【0024】
(比較例1)
実施例1で用いたパイロゾル成膜装置を用いて、実施例1と同じ条件でITO成膜のみを行った。得られた膜のシート抵抗、比抵抗、均一性は実施例1の膜と全く同じ値を示した。この膜の透過率は550nmで87.4%であった。この試料の分光特性(透過率)を図2−4に示した。
【0025】
(比較例2)
実施例1において、Si(CO)のCOH溶液での成膜時間を6分間に変えた以外は実施例1と同様の条件で成膜を行った。得られたSiOは、n=1.47、膜厚は98nmであった。ITO成膜後のシート抵抗、比抵抗、均一性は実施例1の膜と全く同じ値を示した。また、この膜の透過率は550nmで88.8%であった。この試料の分光特性(透過率)を図2−5に示した。
【0026】
ガラス基板に直接ITO成膜したもの(比較例1)の試料の550nmでの透過率は87.4%であるが、低屈折率の下地膜を設けることによって(実施例1〜3)90%以上の透過率が得られ、高透過率化の効果が大きいことが明らかである。
【0027】
更に、液晶ディスプレー用ITOガラスに一般的に用いられるSiO膜の膜厚を100nmから50nmに薄くすることで550nmにおける透過率を2.7%増加出来た(実施例1と比較例2)。すなわち、通常の液晶ディスプレー用ITOガラスを成膜する際、SiO膜厚を30〜60nmにするだけで透過率を増加することが可能であり、実用的にも優れた方法である。
【0028】
【発明の効果】
透明ガラス基板上と透明導電膜の間に、屈折率1.3〜1.5の透明膜を30〜60nmガラス基板上に形成し、その上に屈折率1.7〜2.2の透明導電膜を10〜30nm形成することにより、所期の目的とする550nmでの透過率が、89%以上の透明性に優れた透明導電膜付きガラスを作製することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、2、3で得られたサンプルの分光特性(透過率)を示す。
【図2】比較例1、2で得られたサンプルの分光特性(透過率)を示す。
【符号の説明】
図中、1は実施例1、2は実施例2、3は実施例3、4は比較例1、5は比較例2の場合をそれぞれ示す。

Claims (6)

  1. 透明ガラス基板上に屈折率1.3〜1.5の透明膜を30〜60nm形成し、その上に屈折率1.7〜2.2の透明導電膜(ただし、フッ素を含有する酸化錫膜を除く)を10〜30nm形成したことを特徴とする透明導電膜付ガラス。
  2. 透明導電膜のシート抵抗値が、200〜3000Ω/□である請求項1記載の透明導電膜付ガラス。
  3. 透明導電膜付ガラスの550nmにおける透過率が89%以上である請求項1記載の透明導電膜付ガラス。
  4. タッチパネルに使用されることを特徴とする請求項1〜請求項3記載の透明導電膜付ガラス。
  5. 屈折率1.3〜1.5の透明膜が二酸化珪素である請求項1〜請求項3記載の透明導電膜付ガラス。
  6. 透明ガラス基板上に屈折率1.3〜1.5の透明膜を30〜60nm形成し、その上に屈折率1.7〜2.2の透明導電膜(ただし、フッ素を含有する酸化錫膜を除く)を10〜30nm形成することを特徴とする透明導電膜の成膜方法。
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