JP3630098B2 - 電子時計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC等の電子部品により時計としての機能を確保している電子時計に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、水晶振動子、トランジスタ、ICおよびLSI等の電気素子を備えた電子回路で計時する電子時計が利用さている。このような電子時計にも、機械式の時計と同様に、時刻合わせ等の操作を行うために、竜頭および押しボタン等の外部操作手段が設けられている。
また、今日では、電子時計の多機能化が推進され、ラジオ、デジタルカメラおよびコンピュータが電子時計に組み込まれたものが開発されている。このような多機能化された電子時計には、外部機器からのプラグが差し込み可能となった外部接続端子が設けられている。
【0003】
そして、消費電力を少なくするために、上述のような電子時計には、主要電気素子として、MOS構造の小型の電気素子が採用されている。
このため、電子時計は、静電気の影響をより受けやすく、外部接続端子にプラグを差し込む際、あるいは、外部操作手段を手動操作する際に、外部接続端子や外部操作手段を通じて内部に進入した静電気がICに到達すると、静電気によってICが誤動作するおそれがある。
【0004】
そこで、実願昭59−165560号(実開昭61−80489号)のマイクロフィルムには、プラグと接触する電極の一部分を、時計の金属製ケースに接触させ、当該電極を金属製ケースへ電荷を逃がす導通部材とし、プラグが外部接続端子に接触する際に、プラグに帯電した静電気を金属製ケースへ逃がすようにし、外部接続端子を通じて静電気が内部に進入しても、静電気がICに到達しないようにした電子時計が示されている。
【0005】
また、特開平9−178867号公報には、外部操作手段である竜頭を支持する巻真、および、時計の金属製ケースの両方に接触する導電板を設け、この導電板を、金属製ケースへ電荷を逃がす導通部材とし、竜頭を回転操作する際に、人体や衣服に帯電した静電気を金属製ケースへ逃がし、竜頭を通じて静電気が内部に進入しても、静電気がICに到達しないようにした電子時計が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような電子時計では、導通部材の固定手段として、ねじ止め、半田および接着剤が用いられているので、メンテナンスや修理の際に、電子時計を分解あるいは組立を行うにあたり、ねじ止めの場合には、ねじを緩める作業と締める作業が必要となり、半田の場合には、半田を溶かす作業および再度半田付けする作業が必要となり、接着剤の場合には、導通部材を強制的に引き剥がす等、大きな力を要する作業および時間のかかる再接着作業が必要となる。
このため、いずれの固定手段にしろ、導通部材の取り外しおよび取り付けが面倒となり、電子時計の分解・組立に時間がかかるという問題がある。
【0007】
特に、メンテナンスや修理の際に、取り外す頻度が高い竜頭および巻真が外部操作手段として設けられている場合には、導通部材の弾性により、当該導通部材が巻真に密着している場合には、導通部材を取り外さないと、巻真の取り外しが行えないので、メンテナンスや修理に時間がかかるという問題がある。
また、導通部材を、その初期たわみによる弾性力で、外部操作部材に弾着させる構造を採用すると、複雑な形状を有する外部操作部材の場合、特に、アナログ電子時計の時刻を修正する、複雑な形状の巻真が外部操作部材となる場合、外部操作部材が導通部材に係止されるため、外部操作部材の着脱が非常に困難となるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、静電気による誤動作を防止するようにしても、分解および組立が容易に行える電子時計を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、時計としての機能を有するムーブメントの部品を支持する支持基板と、前記ムーブメントを内部に収納するケースと、前記ケースの外部から前記ムーブメントの操作を行うための外部操作部材と、前記ケースおよび前記外部操作部材の間に介装されて防水性を確保するシール部材と、前記外部操作部材と係合し当該外部操作部材の操作により駆動されるクリックレバーと、このクリックレバーを前記外部操作部材に向かって押圧する押圧手段とを備えている電子時計であって、前記支持基板および前記シール部材が電気絶縁体からなるとともに、前記ケース、前記外部操作部材、前記クリックレバーおよび前記押圧手段が導電体からなり、前記ケースおよび前記押圧手段とを電気的に導通させる導通手段が設けられており、前記押圧手段からICまでの導通経路は、前記押圧手段から前記導通手段の前記ケースとの接点部までの導通経路よりも長いことを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、人体や衣服に帯電した静電気が外部操作部材を通じて内部に進入しても、当該静電気は、クリックレバー、押圧手段および導通手段を通って、導電性を有するケースに逃げるので、ムーブメントに設けられた電子回路には静電気が到達せず、静電気による誤動作が防止される。さらに、前記押圧手段からICまでの導通経路は、前記押圧手段から前記導通手段の前記ケースとの接点部までの導通経路よりも長く構成することによって、静電気のICへの到達が一層有効に回避され、静電気による誤動作の防止がより確実となる。
また、導通手段は、押圧手段と係合していればよく、分解・組立時に外部操作部材とは干渉しない位置に設置することができるので、導通部材を設けても、外部操作部材の取り外しおよび取り付けが容易に行え、電子時計の分解・組立に時間がかからず、ひいては、メンテナンスや修理に要する時間が短縮される。
さらに、ムーブメントには、電子回路の各部品の位置を保持するためにムーブメントに設けられている、導電体からなる回路押さえ板に導通手段を一体成形することが可能なので、回路押さえ板に一体成形すれば、導通手段を設けても、電子時計を構成する部品の数が増えない。このため、導通手段が設けられた電子時計は、それ自体の構造を変更する必要がないうえ、組立工数を何ら変更することなく、製造コストを増大させることなく製造が行える。
【0011】
以上のような電子時計において、前記導通手段は、少なくとも一部分が弾性変形可能となっていることが望ましい。
このように導通手段に弾性を設ければ、それ自身の弾性によるばね力で、導通手段がケースに密着し、導通手段とケースとの電気的な導通が確保されるようになり、導通手段をケースに半田等で固定する必要がなく、電子時計の分解・組立が迅速に行えるようになり、この点からも、メンテナンスや修理に要する時間が短縮される。
【0012】
また、前述のような電子時計において、前記導通手段は、ICよりも前記ケースの内壁に近い位置に配置されていることが好ましい。
このように導通手段およびICを配置すれば、静電気が外部操作部材からケースまで到達するまでに、静電気は、最短の導通経路を通るので、ICを経由する導通路が形成されることがなくなり、静電気のICへの到達が一層有効に回避され、静電気による誤動作の防止がより確実となる。
【0013】
また、導通手段を裏蓋とケースの内壁のどちらか一方あるいは両方に導通させることができ、確実に外装へ静電気を逃がすことができる。
【0015】
さらに、前述の電子時計において、前記導通手段が複数設けられていることが望ましい。
このように導通手段を複数設ければ、外部操作部材からケースに至る、静電気の導通経路の電気抵抗が低減されるので、高圧の静電気が外部操作部材に印加されても、ICに到達させることなく、静電気をケースに逃がすことが可能となり、この点からも、静電気のICへの到達が一層有効に回避され、静電気による誤動作の防止がより確実となる。
【0016】
また、前述のような電子時計において、前記ムーブメントに、電子回路の各部品の位置を保持するために、導電体からなる回路押さえ板が設けられている場合には、この回路押さえ板に、前記押圧手段および前記導通手段の両方を一体成形してもよく、あるいは、回路押さえ板に、前記押圧手段を一体成形するとともに、前記回路押さえ板と別体に形成された前記導通手段を、前記回路押さえ板にねじ止め等で取り付けてもよい。
前述のように、前記押圧手段および前記導通手段の両方を回路押さえ板に一体成形すれば、導通手段を設けても、電子時計を構成する部品の数が増えないので、導通手段が設けられた電子時計は、それ自体の構造を変更する必要がないうえ、組立工数を何ら変更することなく、製造コストを増大させることなく製造が行える。
一方、回路押さえ板と別体に形成された導通手段を、ねじ止め等で回路押さえ板に取り付けるようにすれば、導通手段が設けられていない回路押さえ板が多数製作済であっても、回路押さえ板の設計を大幅に変更することなく、回路押さえ板に導通手段を設けることが可能となるので、導通手段が設けられた電子時計は、その組立工程を大幅に変更する必要がなく、製造にあたり、製造コストを著しく増大させることがない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2には、本実施形態に係る電子時計である腕時計1が示されている。この腕時計1は、後述する電子部品が設けられたムーブメント2をケース28の内部に収納したものであり、ムーブメント2で時刻等を示す複数の指針21〜27を駆動するアナログ式のものである。
図1において、腕時計1は、通常の時刻表示を行う通常時刻表示用指針としての時針21、分針22、小秒針23を備えている。小秒針23は、腕時計1の中心軸に対し文字板20の9時方向にずれた位置に配置されている。
【0018】
そして、ムーブメント2を内部に収納するケース28は、文字板20の裏側の裏蓋と、文字板20の周縁の胴であり、導電性を有する材料から形成されている。ここで、ケース28の胴は、ムーブメント2の外周縁を囲む内壁となっている。
さらに、腕時計1には、外部操作部材である竜頭3、Aボタン3AおよびBボタン3Bが設けられている。
このうち、竜頭3は、当該竜頭3とともに外部操作部材を形成する巻真43に固定されている。竜頭3および巻真43は、導電性を有する材料から形成されたものである。このうち、巻真43は、ケース28の内部に挿通されている。
【0019】
巻真43およびケース2 8との間には、ケース28の防水性を確保するために、シール部材としてのパッキン29が介装されている。このパッキン29は、電気を導通させない電気絶縁体から形成されている。
ここで、ケース28、竜頭3および巻真43としては、ステンレス、金およびチタン材等の金属製のものが採用されている。また、パッキン29の材質としては、合成樹脂エラストマやプラスチック等の弾性を有する電気絶縁体が採用されている。
【0020】
この腕時計1には、付加機能として、経過時間を表示するクロノグラフ機能と、設定した時刻にアラームを鳴音させるアラーム機能とが設けられている。
すなわち、腕時計1には、付加機能表示用指針として、前記時針21、分針22と同軸上に配置され、1/5秒刻みのクロノグラフ秒表示を行う1/5秒クロノグラフ針(以下「1/5秒CG針」という)24と、時計1の中心軸に対し12時方向にずれた位置に配置され、1分刻みのクロノグラフ分表示を行う分クロノグラフ針(以下「分CG針」という)25とが設けられている。
【0021】
また、腕時計1には、付加機能表示用指針として、時計1の中心軸に対し6時方向にずれた位置に配置されたアラーム時針26およびアラーム分針27が設けられている。
【0022】
図2において、ムーブメント2は、真円から図中左右の部分を切り欠くことにより形成されたサイドカット部2Aを有する平面形状とされたものである。ムーブメント2には、各指針21〜27を駆動するために、4つのステップモータ5〜8が設けられている。
すなわち、前記時針21、分針22および小秒針23は、通常時刻駆動用ステップモータ5で駆動され、1/5秒CG針24は、1/5秒クロノグラフ用ステップモータ6で駆動され、分CG針25は、分クロノグラフ用ステップモータ7で駆動され、アラーム分針27およびこれに連動するアラーム時針26は、アラーム用ステップモータ8で駆動される。
従って、モータ5により通常時刻駆動用モータが構成され、モータ6〜8により付加機能駆動用モータが構成されている。
【0023】
各ステップモータ5〜8は、回転磁界により回転駆動されるロータ13と、このロータ13が配置されるステータ孔を有するステータ14と、このステータ14の端部が接続されるとともに、コイル15が巻回されるコア16とを備えている。
各ロータ13は、樹脂に磁石をインサート成形することで形成され、ロータかなおよび異方性磁石からなるロータ磁石を備えて構成されている。このロータ13は、その両端部に突出するほぞ部分で図示しない地板および輪列受に支持されている。なお、各ロータ13は、内蔵電池18で作動される駆動回路からの駆動パルスを、コイル15に流すことによって所定の回転周期で回転する。
【0024】
通常時刻駆動用ステップモータ5のロータ13には、輪列50を構成する五番車54が噛み合っており、これにより、ロータ13の回転が輪列50に伝達されるようになっている。
つまり、前述のロータ13の回転は、五番車54、四番車53、三番車52、二番車51、日の裏車56、筒車(図示略)からなる輪列50を介して減速されて伝達される。この伝達された回転によって、二番車51に嵌装されている分針22および筒車に嵌装されている時針21が駆動されるようになっている。
【0025】
一方、ロータ13の回転は、五番車54を介して小秒車55にも減速されて伝達され、これにより、当該小秒車55に取り付けられている秒針23が駆動されるようになっている。
【0026】
また、1/5秒クロノグラフ用ステップモータ6のロータ13には、輪列60を構成する1/5秒クロノグラフ第1中間車61が噛み合っており、これにより、ロータ13の回転が輪列60に伝達されるようになっている。
つまり、このロータ13の回転は、1/5秒クロノグラフ第1中間車61、1/5秒クロノグラフ第2中間車62、および、1/5秒クロノグラフ車63からなる輪列60に減速されて伝達される。この伝達された回転によって、1/5秒クロノグラフ車63に嵌装されている1/5秒CG針24が駆動するようになっている。この1/5秒CG針24は、60秒で一回転するように設定されている。
ここで、1/5秒クロノグラフ車63は、二番車51と同軸配置されている。そして、時針21、分針22および1/5秒CG針24は、同軸配置されている。
【0027】
さらに、分クロノグラフ用ステップモータ7のロータ13には、輪列70を構成する分クロノグラフ中間車71が噛み合っており、これにより、ロータ13の回転が輪列70に伝達されるようになっている。
つまり、このロータ13の回転は、分クロノグラフ中間車71および分クロノグラフ車72からなる輪列70に減速されて伝達される。この伝達された回転によって、分クロノグラフ車72に嵌装されている分CG針25が駆動するようになっている。ここで、分CG針25は、30分で一回転するように設定されている。
【0028】
アラーム用ステップモータ8のロータ13には、輪列80を構成するアラーム中間車81が噛み合っており、これにより、ロータ13の回転が輪列80に伝達されるようになっている。
つまり、このロータ13の回転は、アラーム中間車81およびアラーム分車82、アラーム日の裏車83、アラーム筒車(図示略)からなる輪列80に減速されて伝達される。この伝達された回転によって、アラーム時針26、アラーム分針27が駆動されるようになっている。
【0029】
ここで、各ステップモータ5〜8の各端部を近接する他のステップモータ5〜8の各端部と結び、さらに各ステップモータ5〜8のコア16を通る閉じた領域区分線100 を設定し、時計1の平面をその領域区分線100 の内側である内側領域101 と、外側である外側領域102 とに区分けした際に、前記各輪列50〜80は内側領域101 に配置され、時計の平面形状に応じた形状に形成された支持基板としての地板1Aに支持されている。この地板1Aは、電気を殆ど導通させない合成樹脂等から形成されている。
なお、ステップモータ5〜8の各端部とは、本実施形態では、平面位置において、コア16およびステータ14を連結する連結ピン部分である。
【0030】
また、外側領域102 には、電気素子であるC−MOS構造の小型IC91、水晶振動子92、電池保護用コンデンサ93、アラーム用昇圧コイル94、および、アラーム用トランジスタ95が配置されている。これらの各電気素子は、図示しないフレキシブルプリント基板に装着されている。
【0031】
さらに、外側領域102 には、前記Aボタン3A、Bボタン3Bによって作動されるスイッチレバー41,42、巻真43と係合するクリックレバーとしてのオシドリ45、および、カンヌキ46等が配置されている。なお、オシドリ45は、巻真43の摺動操作により回動されるものである。そして、巻真43を介して時刻修正する歯車として、つづみ車、小鉄車などが設けられている。
【0032】
また、電池18は、その平面における大部分が外側領域102 に位置するように配置されている。具体的には、電池18は、外側領域102 において巻真43およびステップモータ7で囲まれたスペース111 に配置されている。
さらに、巻真43を挟んで電池18の反対側であって、外側領域102 において巻真43およびステップモータ8で囲まれたスペース112 に、IC91、カンヌキ46、スイッチレバー42が配置されている。このため、IC91は、スイッチレバー42やカンヌキ46に平面位置が重なるように配置されている。
【0033】
各ステップモータ5〜8のうち、通常時刻駆動用ステップモータ5と、1/5秒クロノグラフ用ステップモータ6とは、地板1A上において、巻真43の反対側の端部側(文字板20における9時位置)に配置されている。
そして、これらの各モータ5,6は、その各コア16の延長線の交差角度が約60度程度となるような向きに配置されている。すなわち、各ステップモータ5,6は、一端側を地板1Aの外周端に近接して配置し、他端側を地板1Aの外周端から内側に離れて配置している。
【0034】
また、各ステップモータ5〜8のうち、分クロノグラフ用ステップモータ7およびアラーム用ステップモータ8は、駆動する指針25〜27が他の指針21〜24に比べて短く、ステップモータ5,6に比べて出力トルクが小さくてよいため、コイル15の巻数を少なくでき、コア16の長さも短くされている。
この長さ寸法の短い各ステップモータ7,8は、前記電池18やIC91にほぼ隣接して配置されており、文字板20において12時および6時位置に、かつ地板1Aの外周端に沿って配置されている。従って、各ステップモータ5〜8は、3時−9時を結ぶ線を挟んでほぼ上下対象に配置されている。
【0035】
各ステップモータ5〜8がこのように配置されているため、ステップモータ5の外周側およびステップモータ6の外周側にスペース113, 114が確保されている。このうち、一方のスペース113 に、水晶振動子92および電池保護用コンデンサ93が配置され、他方のスペース114 に、アラーム用昇圧コイル94およびアラーム用トランジスタ95が分散配置されている。
これにより、ムーブメント2には、モータ5〜8や各輪列50〜80以外の主な部品である電気素子、スイッチレバー41,42,カンヌキ46および電池18が、モータ5〜8の外周側に形成される外側領域102 に分散して設けられたスペース111 〜114 の各々に、分散されて配置されている。これにより、重量バランスやレイアウト的なバランスなどが向上されている。
【0036】
このようなムーブメント2には、電子回路の各部品の位置を保持するために、ステンレス等の導電体からなる回路押さえ板120 が設けられている。
回路押さえ板120 は、IC91の静電遮蔽材、IC91に紫外線および赤外線が照射されないようにする遮光材、モータ5〜8の耐磁シールド部材、および、電子回路の各部品の位置を保持する保持部材を兼用している。
【0037】
なお、回路押さえ板120 には、電池18の正極が接続され、ムーブメント2の電子回路に対して、電池18の正極が基準電圧となるグランドとなっている。
【0038】
また、回路押さえ板120 は、図3に示されるように、ムーブメント2に応じた平面形状を有する部材であり、モータ5〜8、電池18および水晶振動子92の各々に応じた孔125,126および切り欠き部127, 128, 118, 192を備え、これら一連の部品5〜8,18,92を逃がすことによって、ムーブメント2の薄型化を実現している。
また、回路押さえ板120 には、押圧手段としての押圧部130 と、導通手段としての導通部140 とが一体成形されている。
【0039】
ここで、回路押さえ板120 には、ムーブメント2のオシドリ45の位置に応じ
て孔131 が設けられている。押圧部130 は、孔131 の内側へ突き出るように形成されたものであり、図4および図5に示されるように、オシドリ45の係合部45A を巻真43の縮径部43A に向かって押圧し、オシドリ45と巻真43との係合を維持するものとなっている。
なお、オシドリ45と巻真43との係合を解除するために、回路押さえ板120に設けられた孔131から工具を挿入して、オシドリ45と巻真43との係合を解除すると、巻真43がムーブメント2から容易に取り外せるようになっている。
【0040】
導通部140 は、押圧部130 と一体に成形されるとともに、全体が弾性変形可能となっているものとなっている。導通部140 の先端部140Aは、その弾性力によりケース28に充分強く接触している。また、導通部140 は、図5(B)に示されるように、回路押さえ板120 から巻真43とは離れる方向に延びている。
これにより、押圧部130 とケース28とが電気的に導通し、竜頭3から巻真43を通して進入した静電気は、オシドリ45、押圧部130 、導通部140 およびケース28を経由する導通経路150 (図5参照)を通って、ケース28の内部から排除されるようになっている。
【0041】
ここで、導通部140 は、IC91よりも、ケース28の胴に近い位置に配置されている。換言すると、図4の如く、ムーブメント2には、巻真43を挿入させる開口141 が設けられている。この開口141 と導通部140との距離は、IC91と開口141との距離よりも短くなっている。
【0042】
このような本実施形態では、分解を行うにあたり、回路押さえ板120に設けられた孔131から工具を挿入して、オシドリ45と巻真43との係合を解除すれば、図5(B)の如く、巻真43に引っかかるものが何もないので、巻真43の抜き取りが容易に行える。
このため、ムーブメント2から竜頭3とともに巻真43を容易に取り外せる。
【0043】
前述のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、人体や衣服に帯電した静電気が巻真43を通じて内部に進入しても、当該静電気は、オシドリ45、押圧部130 および導通部140 を通って、導電性を有するケース28に逃げるので、ムーブメント2に設けられたIC91には静電気が到達せず、静電気による誤動作を防止することができる。
また、分解・組立時に巻真43と干渉しない位置に導通部140 を設置したので、導通部140 を設けても、巻真43の取り外しおよび取り付けが容易に行え、腕時計1の分解・組立に時間がかからず、ひいては、メンテナンスや修理に要する時間を短縮できる。
さらに、ムーブメント2に設けられた回路押さえ板120 に導通部140 を一体成形したので、導通部140 により、腕時計1を構成する部品の数が増えず、導通部140 を設けても、腕時計1の構造を変更する必要がないうえ、組立工数を何ら変更することなく、製造コストを増大させることなく、静電気に対する耐久性に優れた腕時計1を製造できる。
【0044】
さらに、導通部140 全体を弾性変形可能としたので、それ自身の弾性によるばね力で、導通部140 がケースに密着し、導通部140 とケース28との電気的な導通が確保されるようになり、導通部140 をケース28に半田等で固定する必要がなく、この点からも、腕時計1の分解・組立が迅速に行えるようになり、メンテナンスや修理に要する時間を短縮できる。
そのうえ、弾性変形可能となった導通部140 がムーブメント2とケース28との間に介装されているので、衝撃がケース28に加わっても、当該衝撃を導通部140 が吸収するようになるので、衝撃に対する耐久性に優れた腕時計1を得ることができる。
【0045】
また、巻真43を挿入するために、ムーブメント2に設けた開口141 と、導通部140 との距離を、開口141 とIC91との距離よりも短くし、導通部140 をIC91よりもケース28の胴に近い位置に配置したので、静電気が巻真43からケース28まで達する導通経路150 がIC91を通らず、静電気のIC91への到達が確実に回避され、静電気による誤動作の防止をより有効なものとできる。
【0046】
さらに、押圧部130 および導通部140 の両方を回路押さえ板120 に一体成形したので、腕時計1を構成する部品の数が増えないうえ、押圧部130 、導通部140 および回路押さえ板120 を導通する電流の電気抵抗が低減され、静電気に対する耐久性に優れた腕時計1を得ることができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、この実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
例えば、ケースとしては、裏蓋と胴とに分割されたツーピースのものに限らず、裏蓋と胴とが一体成形されたにワンピースのものや、三個以上に分割されたものでもよい。
【0048】
また、ムーブメントとしては、真円の一部を切り欠いた平面形状を有するものに限らず、楕円の一部を切り欠いた平面形状を有するものや、サイドカット部が複数形成されて多角形となったものでもよい。
【0049】
さらに、支持基板としては、合成樹脂等の電気絶縁体からなる地板に限らず、合成樹脂等の電気絶縁体からなる基枠や、回路押さえ板が輪列受を兼用しない場合には、合成樹脂等の電気絶縁体からなる輪列受でもよい。
【0050】
また、導通手段としては、回路押さえ板に一体成形されたものに限らず、図6に示されるように、回路押さえ板120とは別体に形成され、ねじ143 で回路押さえ板120に取り付けられる導通部142 でもよい。
【0051】
ここで、導通部142 は、電子回路よりもケースの内壁に近い位置であって、ケースの内壁とムーブメントの隙間となる位置に配置されている。
このように、回路押さえ板120 と別体に形成された導通部142 を採用すれば、導通部142 がムーブメントの他の部品と干渉することがなく、かつ、導通部を備えていない通常の回路押さえ板120 に対し、回路押さえ板120 の設計を大幅に変更することなく、回路押さえ板120 に導通部142 を設けることができるので、静電気に対する耐久性を改善するために、通常の腕時計に導通部142 を付加する改良を行っても、その組立工程を大幅に変更する必要がなく、製造にあたり、製造コストを著しく増大させることがない。
【0052】
さらに、回路押さえ板としては、導通手段として一個の導通部が設けられたものに限らず、図7に示されるように、複数の導通部140, 144, 145が導通手段として設けられた回路押さえ板120 でもよい。
このような回路押さえ板120 を採用すれば、巻真43からケース28まで到達する静電気の導通経路の電気抵抗が低減されるので、高圧の静電気が外部操作部材に印加されても、IC等の電子回路に静電気が到達することなく、静電気をケース28に逃がすことが可能となり、この点からも、静電気の電子回路への到達が一層有効に回避され、静電気による誤動作の防止をより確実なものとできる。
【0053】
また、導通手段の位置としては、電子回路よりもケースの内壁に近い位置に限らず、電子回路よりも押圧手段に近い位置でもよい。
例えば、図7において、導通手段としての導通部144 は、電子回路であるIC91よりもケースの内壁から遠い位置に配置されているが、IC91よりも押圧手段である押圧部130 に近い位置に配置されている。このような導通部144 でも、単独で導通部140 と同様の機能を達成できる。
また、導通手段としては、電子回路よりもケースの内壁に近く、かつ、電子回路よりも押圧手段に近い位置に配置されたものでもよい。
例えば、図7において、導通手段としての導通部145 は、IC91よりもケースの内壁に近く、かつ、IC91よりも押圧部130 に近い位置に配置されている。このような導通部145 でも、単独で導通部140, 144と同様の機能を達成できる。
【0054】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、電子時計の静電気による誤動作を防止できるうえ、電子時計の分解および組立も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る腕時計を示す平面図である。
【図2】前記実施形態の腕時計のムーブメントを示す底面図である。
【図3】前記実施形態の回路押さえ板を示す底面図である。
【図4】前記実施形態に係るムーブメントの要部を示す拡大底面図である。
【図5】図4のVA−VA線およびVB−VB線における断面図である。
【図6】本発明の変形例を示す図3に相当する図である。
【図7】本発明の異なる変形例を示す図3に相当する図である。
【符号の説明】
1 電子時計としての腕時計
1A 支持基板としての地板
2 ムーブメント
3 外部操作部材を形成する竜頭
28 ケース
29 シール部材としてのパッキン
43 外部操作部材を形成する巻真
45 クリックレバーとしてのオシドリ
91 電子回路としてのIC
120 回路押さえ板
130 押圧手段としての押圧部
140,142,144,145 導通手段として導通部
141 開口
Claims (6)
- 時計としての機能を有するムーブメントの部品を支持する支持基板と、前記ムーブメントを内部に収納するケースと、前記ケースの外部から前記ムーブメントの操作を行うための外部操作部材と、前記ケースおよび前記外部操作部材の間に介装されて防水性を確保するシール部材と、前記外部操作部材と係合し当該外部操作部材の操作により駆動されるクリックレバーと、このクリックレバーを前記外部操作部材に向かって押圧する押圧手段とを備えている電子時計であって、
前記支持基板および前記シール部材が電気絶縁体からなるとともに、前記ケース、前記外部操作部材、前記クリックレバーおよび前記押圧手段が導電体からなり、前記ケースおよび前記押圧手段とを電気的に導通させる導通手段が設けられており、
前記押圧手段からICまでの導通経路は、前記押圧手段から前記導通手段の前記ケースとの接点部までの導通経路よりも長いことを特徴とする電子時計。 - 請求項1に記載の電子時計において、前記導通手段は、少なくとも一部分が弾性変形可能となっていることを特徴とする電子時計。
- 請求項1または請求項2に記載の電子時計において、前記導通手段は、ICよりも前記ケースの内壁に近い位置に配置されていることを特徴とする電子時計。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子時計において、前記導通手段が複数設けられていることを特徴とする電子時計。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子時計において、前記ムーブメントには、電子回路の各部品の位置を保持するために、導電体からなる回路押さえ板が設けられ、この回路押さえ板には、前記押圧手段および前記導通手段が一体成形されていることを特徴とする電子時計。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子時計において、前記ムーブメントには、電子回路の各部品の位置を保持するために、導電体からなる回路押さえ板が設けられ、この回路押さえ板には、前記押圧手段が一体成形されているとともに、前記回路押さえ板と別体に形成された前記導通手段が取り付けられていることを特徴とする電子時計。
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