JP3629505B2 - 二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高密度情報記録技術に係わり、特に微細な磁区構造を有するL1形規則合金を情報記録層とする二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体は、膨大な情報量を記録する手段として盛んに研究開発が行われており、特にコンピュータ用ハードディスク装置に用いられる磁気記録媒体は、非常な勢いでその記録面密度の高密度化が進んでいる。
現在、この記録媒体においては「長手記録方式」と称す記録膜の面内方向に磁化ベクトルを向け信号を記録する記録方式が用いられているが、更なる高密度記録を実現する方法として、記録膜の垂直方向に磁化ベクトルを向け信号を記録する「垂直記録方式」(S. Iwasaki and Y. Nakamura; IEEE Trans. Magn., vol. MAG−13, pp. 1272−1277, 1977)が注目されている。
【0003】
記録膜を構成する磁性材料としては、いずれの記録方式においても、Co−Cr系合金が主に用いられている。この際、下地層材料の種類、結晶配向性あるいは格子定数により、この層の直上に設けられたCo−Cr系合金薄膜の結晶配向性を制御することができ、したがって、磁化ベクトルの方向を決める磁化容易軸の方向を制御することができる。現在、この様な手法を用い作製されたCo−Cr系合金薄膜を情報記録層とする、長手記録媒体または垂直記録媒体の研究開発が盛んに行われている。
一方、L1形規則合金は、結晶磁気異方性が高いことから情報の保存安定性に優れる高密度磁気記録材料として期待されている。
【0004】
ここで、FePt合金を例にして、L1形規則合金の結晶構造およびその薄膜作製法について図14(a)、(b)を参照しながら説明すると、FePt合金には、図14(a)の結晶構造のようにFe原子とPt原子がランダムに配置された不規則構造の合金と、図14(b)の結晶構造のようにFe原子とPt原子が規則正しく配列するL1形規則構造の合金の2種類存在する。一般には、図14(a)の不規則構造の合金をスパッタ製膜法で作製するには約200℃以下の基板温度で作製でき、図14(b)のL1形規則合金の場合は約200℃以上の基板温度が必要とされている(例えば、T. Suzuki and K. Ouchi; IEEE Trans. Magn., vol. 37, pp. 1283−1285, 2001)。
【0005】
記録媒体に必要となる高い結晶磁気異方性を有するのは、図14(b)の結晶構造のL1形規則合金であり、これまでに、このL1形規則合金を用いる情報記録媒体の作製法、もしくはL1形規則合金薄膜を用いた情報記録媒体に関する技術が開示されている。
すなわち、図11(a)〜図13に示すような従来技術が提案されている。例えば、L1形規則合金を用いる情報記録媒体として、特許第3010156号には、図11(a)の如くの構造の垂直磁気記録媒体と、図12(a)の如くの工程からなる媒体の製造方法が教示されている。この製造方法による垂直磁気記録媒体は、結晶格子面のミラー指数(100)の結晶面が基板と平行になるように制御されたCr、Pt、Pd、Au、Fe、Ni、MgO又はNiOの何れから選ばれた元素もしくは化合物を主成分とした下地層40を用い、L1形規則合金薄膜を、情報記録層10をP×D>3000(但し、P:Arガス圧(Pa)、D:ターゲット基板間距離(mm))を満たす範囲でスパッタ製膜により作製した情報記録媒体である。(以下、垂直磁気異方性を有する磁性薄膜を情報記録層とし、さらに磁性層が該情報記録層のみからなる構造の媒体を「単層膜垂直磁気記録媒体」と記す)。
【0006】
さらに記録特性の制御のためにFe、FeSi合金、パーマロイなどの軟磁性材料からなる層30を設けた、図11(b)の如くの構造と図12(b)の如くの工程に示される情報記録媒体とその製造方法が教示されている。(以下、垂直磁気異方性を有する磁性薄膜を情報記録層とし、さらに磁性層として軟磁性層を有する構造の媒体を「二層膜垂直磁気記録媒体」と記す)。
【0007】
また、特開2001−101645号公報には、高い再生出力と高い記録分解能を達成するL1形規則合金薄膜を用いた二層膜垂直磁気記録媒体として、図11(c)の如くの構造と、図13の如くの工程からなる記録媒体の製造方法が提案されている。この製造方法による二層膜垂直磁気記録媒体は、軟磁性材料からなる層30と、非磁性材料からなる層20と、L1形規則合金情報記録層10が順次形成された層構造を有する。
【0008】
上記2つの文献で開示されているL1形規則合金を用いた垂直磁気記録媒体においては、L1形規則合金からなる層を、他の元素もしくは化合物で構成される層上に直接製膜している。この際、L1形規則合金からなる層と直下の層との結晶学的な対称性および原子間隔等を考慮することにより、L1形規則合金の結晶配向性の制御することが可能である。
【0009】
しかしながら、これらの技術では、L1形規則合金薄膜の膜構造の制御なされておらず、磁区寸法を低減する工夫がなされていない。したがって、磁区寸法を低減することが困難である。このため、情報の記録再生時に発生する媒体雑音が大きく、得られる信号雑音比も充分な性能とはいえない。特に、二層膜垂直磁気記録媒体は、単層膜垂直磁気記録媒体に比べ磁区寸法が大きくなりやすく、高密度記録において媒体雑音が増大する原因と考えられている(例えば、T. Suzuki, T. Kiya, N. Honda and K. Ouchi (IEEE Trans. Magn., vol. 36, pp. 2417−2419 (2000)))。
したがって、二層膜垂直磁気記録媒体の情報記録層の磁区寸法を低減するための膜構造を制御する技術が要求されている。
【0010】
一方、K. R. Coffey, M. A. Parker and J. K. Howard (IEEE Trans. Mag., vol. 31, pp. 2737−2739 (1995))は、L1形規則合金にZrOを添加した混合物の薄膜を作製し、L1形規則合金薄膜の膜構造を制御する方法を教示している。ここでは、基板上に直接混合物薄膜をスパッタ製膜法で作製し、その後、アニール処理を行ない、大きな結晶磁気異方性を発現するL1形規則合金相を形成している。しかしながら、ここで提案されている技術は、ZrOを添加するためL1形規則合金混合物薄膜の飽和磁化は低くなり、高い再生出力は望めない。したがって、高い再生出力と、膜構造制御を両立することが困難である。また、L1形規則合金相の結晶配向性を制御していないため、得られる垂直磁化成分が小さく、高密度記録に適する垂直記録方式に用いることは困難である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
つまり、L1形規則合金薄膜を情報記録層とする二層膜垂直磁気記録媒体において、L1形規則合金の高い飽和磁化を損なうことなく膜構造を制御し、磁区寸法を低減できる記録媒体の製造方法はこれまでのところ明らかにされてはおらず、記録媒体として高い再生出力と低い媒体雑音の両立が実現できていない。したがって、微細な磁区構造を有し、さらに垂直磁気記録媒体を作製するための新しいL1形規則合金薄膜の製造方法の提案が切望されている。
そこで本発明の目的とする処は、L1形規則合金を用いた二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法を新たに提案し、情報記録層の磁区寸法を低減する技術を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決し目的を達成するために、磁場を用いる情報の記録再生が可能で、且つFePt規則合金、CoPt規則合金又はFePd規則合金、及びこれらの合金から選ばれるLlo形規則合金からなる層を情報記録層として有する二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記Llo形規則合金からなる層を作製する前に、該Llo形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層をスパッタ製膜により厚さ3nmより薄く作製しさらに前記Llo形規則合金からなる層をスパッタ製膜により作製する二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、L1形規則合金薄膜の膜構造を制御、特に磁区寸法を低減し、媒体雑音を低減する、さらに高い再生出力との両立を実現する、L1形規則合金からなる層を情報記録層とする二層膜垂直磁気記録媒体の新しい製造方法を教示するものである。以下に本発明に係わる好適な実施形態を挙げ、続いてその複数の実施例に基づき具体的に説明する。
【0015】
図1(a)、(b)には、本発明の情報記録媒体の製造方法を工程図で例示している。本発明は、下記A群から選ばれるL1形規則合金を主成分とする磁性材料を情報記録層として有し、磁場を用いて情報の記録再生が可能な情報記録媒体の製造方法において、図1(a)に示す如く、従来の二層膜垂直磁気記録媒体を構成する軟磁性材料からなる層を形成(S10)した後、A群から選ばれるL1形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層(S11)と、該L1形規則合金からなる層(S12)を、順次スパッタ製膜により形成することを1つの特徴とする。但し、ここでのA群とは、FePt規則合金、CoPt規則合金又はFePd規則合金、及びこれらの合金であるとする。さらに図1(b)のように、従来の二層膜垂直磁気記録媒体を構成する軟磁性材料からなる層(S20)と非磁性材料からなる層(S21)を順次形成した後、A群から選ばれるL1形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層(S22)と、該L1形規則合金からなる層(S23)を、順次スパッタ製膜により形成することを1つの特徴とする。
すなわち本発明においては、図12(a)〜図13で例示した従来技術の製造方法に対し、L1形規則合金からなる層を作製する前に該合金と同じ組成の不規則構造からなる層(S11、S22)を作製することを1つの特徴とする。
【0016】
本発明においては、合金の結晶構造が不規則構造である層、即ち前述の図14(a)の結晶構造からなる層を製膜する工程を新しく加えることにより、L1形規則合金薄膜の結晶欠陥の密度を高められることを新たに見出した。このことから、磁区寸法を低減し媒体雑音を低減することができる製造方法を完成した。
本発明の製造方法では、L1形規則合金薄膜の飽和磁化を低下することがないため、高い再生出力を確保することができる。さらに、不規則相からなる層の組成を規則相からなる層の組成と同一にすることにより、層間の原子の拡散による組成変動がなく、さらに、結晶の格子定数も類似していることから、従来技術に比べ遜色のないL1形規則合金薄膜の結晶配向性が得られる。また、L1形規則合金としてFePt規則合金を用いた場合、大きな飽和磁化を有していることから高い再生出力が達成され、この点で他の組成の規則合金より好ましい。
【0017】
また、結晶構造が不規則構造である層を作製する際の基板温度は、従来知られている温度範囲(参照文献、例えば、T. Suzuki and K. Ouchi; IEEE Trans. Magn., vol. 37, pp. 1283−1285, 2001)で制約はないが、より低温が好ましく、100℃以下、特には50℃以下が好ましい。ただし、もし基板を低温で冷却可能であればより一層の効果が期待できる。
一方、情報記録層を作製する際の基板温度についても、従来知られている温度範囲(例えば、上記文献)で制約はないが、例えば300℃以上400℃以下の基板温度においては、良好な抗磁力と特に微細な磁区寸法を両立でき得ることができるので好ましい。
【0018】
また、本発明においては、二層膜垂直磁気記録媒体の構造を有していることから、情報記録の際に用いる磁気ヘッドは、狭い磁界分布からなる垂直磁界を記録媒体に誘起することができる。したがって、用いる情報記録層である処のL1形規則合金薄膜の磁化ベクトルが膜面に対し垂直、即ち結晶格子面のミラー指数(001)が基板と平行になるように制御された場合、急峻な垂直磁界を有効に利用できることにより高密度記録特性が著しく向上し、これは高密度記録媒体として特に好ましい。
【0019】
この際、図2に示す手順の如く、二層膜垂直磁気記録媒体を構成する軟磁性層を作製する(S31)前に、少なくとも1層以上の下地層をあらかじめ作製する(S30)ことができる。下地層としては、結晶格子面のミラー指数(100)が他の隣接層および基板と平行になるように制御されたCr、Pt、Pd、Au、Fe、Ni、MgO又はNiOの何れから選ばれた元素もしくは化合物を主成分とした下地層を形成(S30)し、軟磁性材料からなる層を形成(S31)する。さらに、非磁性材料からなる層を必要に応じて形成(S32)した後、本発明のL1形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層(S33)と、該L1形規則合金からなる層(S34)を、順次スパッタ製膜により形成することにより、当該L1形規則合金情報記録層の結晶格子面のミラー指数(001)が他の隣接層および基板と平行になるよう制御することが可能になる。
【0020】
さらに、本発明は、前記L1形規則合金からなる層を、次のような式(1)を満たす条件範囲において、スパッタ製膜により作製することも特徴する。
P×D>3000 …(1)
但し、この条件式では、PはArガス圧(Pa)、Dはターゲット基板間距離(mm)である。
すなわち、本発明においては、Arガス圧とターゲット基板間距離の積が所定数(即ち3000)より大きくなるような条件下に設定して、スパッタ製膜によりL1形規則合金からなる層を作製するものである。この条件範囲においては、より低い基板温度の条件下で、良好な磁気特性、具体的には記録媒体に適した抗磁力が得られやすいことから特に好ましい。
【0021】
さらに、本発明においては、前記L1形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層を、厚さ3nmより薄く形成することも特徴とする。
すなわち、合金の結晶構造が不規則構造である層の厚さを厚くするにつれ、磁区寸法は低減できるものの、良好な磁気特性、具体的には抗磁力を得るためには、3nmより薄い不規則相からなる層の作製が好ましく、特に0.5nmから2nmの範囲が好ましい。
【0022】
また、規則相からなる層の膜厚は、記録再生に用いる再生ヘッドの感度により、3nmから20nm程度の範囲で設計することが可能である。例えば、巨大磁気抵抗効果を利用した高感度の再生ヘッドを用いる場合は、7.5nm程度の膜厚の規則相からなる層を有する媒体で、充分高い再生出力を得ることができる。
【0023】
ここで、本発明による磁気記録媒体を評価するための評価基準としては、次なる評価方法に従っていることを明記しておく。すなわち、
(1) 結晶構造の評価に関しては、Cu−Kα線を用いたX線回折により行なう。この際、結晶配向性の評価は、評価すべき結晶格子面に対するロッキングカーブを測定し、その半値幅を指標とする。
(2) 磁気特性の評価には、極カー効果を用いヒステリシスループを測定し、垂直抗磁力を求めた。またループの角形性は、残留磁化状態におけるカー回転角(θr)の最大印加磁界(13kOe)におけるカー回転角(θm)に対する比(θr/θm)とする。
【0024】
(3) 磁区の大きさの評価に関しては、試料に交流消磁を行ない、磁気力顕微鏡により試料の磁気像を観測し、そのスペクトル解析から評価する。
(4) 記録再生特性の評価は、線速度5.08m/sのもとで行なった。記録用磁気ヘッドとしては主磁極厚が0.4μm、トラック幅2μmから成る単磁極型ヘッドを用い、再生用ヘッドとしてはシールドギャップ長0.13μm、トラック幅0.62μmから成る巨大磁気抵抗ヘッドを用いた。
【0025】
続いて、本発明を適用した幾つかの詳しい実施例を挙げて、それぞれを上記の評価方法にて従来技術で得られたものと順次比較しながら、本発明がもたらす作用効果について説明する。
【0026】
【実施例1】
本発明における実施例1を図3〜図6(b)に基づき説明する。実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体は、図3に示す工程で次のようにして作製する。すなわち、ハードディスク基板上に、第1の層として膜厚5nmのMgO層を「RFマグネトロンスパッタ法」により(S40)、次に第2の層として膜厚70nmのCr層を「DCマグネトロンスパッタ法」により(S41)、次に第3の層として膜厚300nmのFeSi層を「DCマグネトロンスパッタ法」により(S42)、次に第4の層として膜厚1nmのMgO層を「RFマグネトロンスパッタ法」により(S43)、次に第5の層として本発明の膜厚1nmのFePt不規則合金層を「RFスパッタ法」により作製し(S44)、さらに第6の層として本発明の膜厚7.5nmのFePt規則合金層を「RFスパッタ法」により作製(S45)した。スパッタ製膜時の基板温度は、第1の層から第5の層までは50℃であり、第6の層は375℃である。スパッタ製膜時のArガス圧とターゲット基板間距離は、第1の層から第4の層まではガス圧0.2Paで、このときのターゲット基板間距離は50mmであり、第5の層と第6の層はガス圧50Paでターゲット基板間距離は95mmであった。つまり第6の層の製膜条件は、P×D=4750の条件である。
【0027】
(作用効果1)
図4(a)に、上記方法で作製された記録媒体のX線回折パターンを示す。図示の如く、FePt規則合金相の形成とその結晶配向性が結晶格子面のミラー指数(001)であることを示す回折パターンとなっている。このFePt規則合金相の結晶格子面のミラー指数(001)に対するロッキングカーブ半値幅は4.8度であり、優れた結晶配向性であることがわかる。
また図4(b)には、上述の記録媒体のヒステリシスループを示す。垂直抗磁力は5.6kOeであり、二層膜垂直磁気記録媒体として優れた磁気特性を示すことがわかる。
【0028】
さらに図5には、上述の記録媒体の磁区構造を、磁気力顕微鏡を用いて観測した結果で示す。この磁気力顕微鏡像のスペクトル解析から求まる磁区寸法は92nmであり、次に例示する従来技術にもとづく比較例1の二層膜垂直磁気記録媒体に比べ、小さな磁区寸法であることがわかる。
【0029】
一方、図6(a)、(b)には、上記方法で作製された記録媒体の記録再生特性の評価結果を示す。図示の如く、本発明の記録媒体は、次に例示する比較例1の記録媒体に比べ、高い再生出力と低い媒体雑音を示した。例えば、最も高い線記録密度500kFRPIにおける実施例1の記録媒体の再生出力は33.1mVppであるのに対し、比較例1の記録媒体の再生出力(図8(a)参照)は22.6mVppであり、実施例1の記録媒体のほうが1.46倍大きい。一方、同じ記録密度における実施例1の記録媒体の媒体雑音は、17.2mVrmsであるのに対し、比較例1の記録媒体の媒体雑音(図8(b)参照)は18.7mVrmsであり、実施例1の記録媒体の方が小さい。この結果、比較例1の記録媒体に比べ、同記録密度において、4dB高い信号雑音比が得られた。従って、本発明の二層膜垂直磁気記録媒体は、比較例1に示す従来技術の二層膜垂直磁気記録媒体に比べ、優れた記録再生特性を示すことがわかる。
【0030】
(比較例1)
本発明の記録媒体に対する1つの比較例として、実施例1記載の記録媒体を構成するFePt不規則合金層を作製しない点以外は同じ方法で、すなわち従来の二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法で記録媒体を作製した。図7にその作製工程を示す。この記録媒体の結晶格子面のミラー指数(001)に対するロッキングカーブ半値幅は4.8度であり、垂直抗磁力は4.6kOeであった。一方、この記録媒体の磁区構造を、磁気力顕微鏡を用いて観測し、その磁気力顕微鏡像のスペクトル解析から求まる磁区寸法は102nmであった。この値は、実施例1の記録媒体に比べ、薄膜の微細構造を制御していないことから大きな磁区寸法であることがわかる。さらに図8(a)、(b)には記録再生特性評価の結果を示す。実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体に比べすべての記録密度に対し得られる再生出力は低くまた媒体雑音は高い。従って、実施例1の記録媒体に比べ、信号雑音比は低い。
【0031】
(比較例2)
本発明の二層膜垂直磁気記録媒体に対するもう1つの比較例として、実施例1記載の記録媒体を構成するFePt規則合金層を、ガス圧5Pa、ターゲット基板間距離を95mm、すなわちP×D=475の条件のもと作製した以外は同じ方法で記録媒体を作製した。なお、この時の基板温度は、実施例1と同じ375℃である。この記録媒体の垂直抗磁力は 0.3kOeであり、記録媒体として用いるには困難な特性であることがわかる。
【0032】
(比較例3)
比較例2記載の記録媒体を構成するFePt規則合金層を、基板温度450℃のもとで作製した以外は比較例2と同じ方法で記録媒体を作製した。この記録媒体の垂直抗磁力は3.2kOeであり、実施例1に比べると低いものの、記録媒体として用いることできる範囲の値である。磁区寸法は90nmであり、比較例1に比べると小さい。従って、規則合金層を形成するために、高い基板温度とそれに伴うコストの問題が許せば、P×D=475、すなわち3000より小さい範囲であっても、本発明の特徴とする不規則合金からなる層を形成する効果は見られ、記録媒体として用いることができる。
【0033】
【実施例2】
つぎに示す実施例2としては、実施例1に記載の記録媒体を構成する本発明のFePt不規則合金層からなる層の厚さを、2nmと変えた以外は同じ方法で、記録媒体を作製する。この記録媒体の記録再生特性の評価結果を図9(a)、(b)に示すと、図示の如く、本発明のFePt不規則合金からなる層の厚さを2nmとすることにより、さらに再生出力が増加し、媒体雑音が低減していることがわかる。この結果、比較例1の記録媒体に比べ、線記録密度40kFRPIにおいて、6dB高い信号雑音比が得られた。従って、本発明の二層膜垂直磁気記録媒体は、比較例1に示す従来技術の二層膜垂直磁気記録媒体に比べ、特に優れた記録再生特性を示すことがわかる。
【0034】
一方、この記録媒体の抗磁力と磁区寸法を図10の表1に記す。同じ図10の表2に示す後述する比較例4、5の不規則相からなる層の厚さが3nm、5nmの記録媒体は、抗磁力の値が著しく低くなり記録媒体として用いることが困難であるのに対し、本発明の実施例2としての記録媒体の抗磁力は、記録媒体として用いるに充分な値であることがわかる。また、本発明の実施例2の磁区寸法は、比較例1に比べ微細な磁区寸法が得られていることがわかる。従って、本発明に係わるFePt不規則合金層の膜厚の範囲が優れた磁気特性を発現する範囲であることがわかる。
【0035】
(比較例4、5)
本発明に対する比較例として、実施例1における記録媒体を構成するFePt不規則合金層の厚さを3nm、5nmと変えて媒体を作製した。この記録媒体の磁区寸法と抗磁力は図10の表2に記されており、これらの媒体が示す特に抗磁力の値は、記録媒体として用いるには困難な特性であることがわかる。
【0036】
(比較例6)
本発明に対する比較例として、実施例1における記録媒体を構成するFePt不規則合金層を作製せず、その代わりに厚さ1nmのFePt規則相を基板温度500℃の条件で作製(第一回目の規則合金の製膜)し、引き続き基板温度375℃の条件で厚さ7.5nmのFePt規則相を作製(第二回目の規則合金の製膜)し、記録媒体を作製した。なお、いずれにおいても、ガス圧50Pa、ターゲット基板間距離95mmの条件を用いた。また、その他は実施例1と同じ方法で二層膜垂直磁気記録媒体を作製した。
この記録媒体の磁区寸法と抗磁力を図10の表2に示すとおり、この比較例6の記録媒体は、実施例1に比べ磁区寸法が大きいことがわかる。したがって、本発明の特徴である不規則合金からなる層をあらかじめ形成することにより磁区寸法を低減できることがわかる。
【0037】
(その他の変形例)
以上、実施形態と具体的な複数の実施例に従って本発明を説明したが、本発明は必ずしもこれらにより限定されるものではない。例えば、二層膜垂直磁気記録媒体を構成する他の層の膜厚および材料などは、二層膜垂直磁気記録媒体として機能する範囲で適宜に変更や、組み合わせができる。
また、本発明では、二元系のL1形規則合金を例にしたが、第三元素で置換したL1形規則合金、またL1形規則合金と例えば酸化物との複合材料にも応用することが可能である。
そのほかにも本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0038】
【発明の効果】
このように、本発明の二層膜垂直磁気記録媒体を用いれば、高い飽和磁化を損なうことなく磁気特性の制御、特に磁区寸法を低減することができ、記録媒体として、高い再生出力と低い媒体雑音の両立が実現できる。
さらに、本発明の垂直磁気記録媒体は結晶磁気異方性の大きいL1形規則合金薄膜を用いていることから、情報の保存安定性に優れた効果を有し、将来の高密度記録に有望な情報記録媒体となり得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b)は、本発明の二層膜垂直磁気記録媒体の基本的な製造工程を示すブロックフローチャート。
【図2】本発明の二層膜垂直磁気記録媒体のもう1つの基本的な製造工程を示すブロックフローチャート。
【図3】実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体の製造工程を示すブロックフローチャート。
【図4】図4(a)、(b)は本発明の実施例1を示し、
(a)は、実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体におけるX線回折パターンを示すグラフ、
(b)は、実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体における磁気特性を示すヒステリシスループ。
【図5】実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体における磁区像を磁気力顕微鏡によって観察した拡大図。
【図6】図6(a)、(b)は本発明の実施例1の結果を示し、
(a)は、実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体における記録再生出力の記録密度特性を示すグラフ、
(b)は、実施例1の二層膜垂直磁気記録媒体における媒体雑音の記録密度特性を示すグラフ。
【図7】比較例1の二層膜垂直磁気記録媒体の製造工程を示すブロックフローチャート。
【図8】図8(a)、(b)は比較例1の結果を示し、
(a)は、比較例1の二層膜垂直磁気記録媒体における記録再生出力の記録密度特性を示すグラフ、
(b)は、比較例1の二層膜垂直磁気記録媒体における媒体雑音の記録密度特性を示すグラフ。
【図9】図9(a)、(b)は本発明の実施例2を示し、
(a)は、実施例2の二層膜垂直磁気記録媒体における記録再生出力の記録密度特性を示すグラフ、
(b)は、実施例2の二層膜垂直磁気記録媒体における媒体雑音の記録密度特性を示すグラフ。
【図10】図10は本発明の効果を比較して示し、
表1は、実施例1、2の評価結果を示す表、
表2は、比較例1〜6の評価結果を示す表。
【図11】図11(a)〜(c)は従来の層構造技術を示し、
(a)は、従来のL1形規則合金からなる単層膜垂直磁気記録媒体の基本的な層構造図、
(b)は、従来のL1形規則合金からなる二層膜垂直磁気記録媒体の基本的な層構造図、
(c)は、従来のL1形規則合金からなる二層膜垂直磁気記録媒体の基本的な層構造図。
【図12】図12(a)、(b)は従来の層製造技術を示し、
(a)は、従来のL1形規則合金からなる単層膜垂直磁気記録媒体の基本的な製造工程を示すブロックフローチャート、
(b)は、従来のL1形規則合金からなる二層膜垂直磁気記録媒体の基本的な製造工程を示すブロックフローチャート。
【図13】従来のL1形規則合金からなる二層膜垂直磁気記録媒体の基本的なもう1つの製造工程を示すブロックフローチャート。
【図14】図14(a)、(b)はFePt合金の結晶構造を示し、
(a)は、FePt不規則構造合金の結晶構造を表わす模式図、
(b)は、FePtL1形規則合金の結晶構造を表わす模式図。

Claims (2)

  1. 磁場を用いる情報の記録再生が可能で、且つFePt規則合金、CoPt規則合金又はFePd規則合金、及びこれらの合金から選ばれるLlo形規則合金からなる層を情報記録層として有する二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記Llo形規則合金からなる層を作製する前に、該Llo形規則合金と同じ組成を有し且つ合金の結晶構造が不規則構造である層をスパッタ製膜により厚さ3nmより薄く作製し
    さらに前記Llo形規則合金からなる層をスパッタ製膜により作製することを特徴とする二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法。
  2. 前記Llo形規則合金からなる層を、P×D>3000 但し、PはArガス圧(Pa)、Dはターゲット基板間距離(mm)、を満たす条件範囲においてスパッタ製膜により形成することを特徴とする、請求項1記載の二層膜垂直磁気記録媒体の製造方法。
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