JP3628917B2 - 基礎杭の製造方法および基礎 - Google Patents

基礎杭の製造方法および基礎 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の荷重を地耐力の大きい深層地盤に伝達させるために、地中に埋設される筒状の基礎杭を製造する基礎杭の製造方法およびその製造された基礎杭を用いた基礎に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、水田等を埋め立てた軟弱地盤に建物を建築する際、当該建物の荷重を地耐力の大きい深層地盤に伝達させるために、地中に埋設される基礎杭が利用されている。特開平10−292370号公報には、基礎杭の一例が示されている。この基礎杭は、筒状に形成された杭本体を有し、この杭本体の先端面には、当該先端面の開口を塞ぐ底板が設けられている。また、杭本体の先端側の外周面には、略半円形状に形成された一対の羽根が、傾斜配置されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述の基礎杭では、当該基礎杭の先端面の開口が底板で塞がれているため、基礎杭を打ち込む際に抵抗が大きくなり、基礎杭の地中への進行速度が遅く、基礎杭の地中への打込作業に時間がかかってしまうという問題がある。
特に、建築現場での作業が軽減されるようにユニット化された部品からなるプレハブ式建物の基礎に、前述の基礎杭を採用すると、基礎杭の地中への打込作業に時間がかかってしまうため、プレハブ式建物のメリットである工期の短縮が損なわれるおそれがある。
【0004】
また、特開平10−331156号公報の図1ないし図4に示されるように、筒状の先端面を塞ぐ底板の中央部に孔を形成しても、この孔が本体の内径よりも小さいので、当該基礎杭の地中への打込作業に時間がかかってしまうという問題は解決できない。
【0005】
本発明の目的は、地中への打込作業が迅速に行えるとともに、建物の荷重が確実に深層地盤に支持されるようになる基礎杭の量産性を向上できる基礎杭の製造方法、および、その製造された基礎杭を用いた基礎を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図面をも参照して説明すると、建物の荷重を地耐力の大きい深層地盤に伝達させるために、地中に埋設される筒状の基礎杭10であって、先端部12が開口され、当該先端部の側壁が鋸歯状に切欠かれ、前記先端部近傍の外周面には、螺旋状翼13が設けられていることを特徴とする。
このような本発明では、基礎杭の先端部が開口され、基礎杭の地中の土砂に対する抵抗が小さくなり、鋸歯状に切欠かれた先端部が切削刃となるので、より小さなトルクで基礎杭が地中に打ち込められるようになり、基礎杭の地中への進行速度が速くなり、基礎杭の地中への打込作業が迅速に行える。
また、基礎杭の先端部を開口しても、基礎杭に加わる建物の荷重が螺旋状翼全体に伝達されるとともに、当該荷重が螺旋状翼の全面で、深層地盤に伝達されるので、基礎杭で建物の荷重が確実に地盤に支持されるようになる。
【0007】
以上において、前記螺旋状翼の外径D2は、当該基礎杭の外径D1の二倍以上、三倍以下の範囲に設定されていることが望ましい。
このようにすれば、螺旋状翼の平面積が基礎杭の平面積の三倍から八倍の大きさとなり、深層地盤への荷重伝達面が充分に確保され、建物の荷重が螺旋状翼の全面で、深層地盤に伝達されるようになり、基礎杭で建物の荷重が確実に地盤に支持されるようになる。
また、螺旋状翼の大きさを上述のようにしても、平面積ほどには断面積が大きくならないので、基礎杭の進行速度を阻害する程、基礎杭の地中の土砂に対する抵抗が大きくならず、基礎杭の打込作業の迅速化が損なわれない。
【0008】
また、前記先端部は、鋸歯状部分の形状が前記側壁から切欠かれた部分と同じ形状をしていることが望ましい。
このようにすれば、一本の筒状部材15の中間部分を鋸歯状に切欠くことで、同じ形状の鋸歯状部分を有する先端部が二つ形成されるようになるうえ、鋸歯状に切欠いても、切れ端が生じない。このため、先端部が容易に形成可能となり、基礎杭の製造効率が損なわれないうえ、材料の無駄がない。
【0009】
さらに、前記先端部は、当該基礎杭の本体11とは別の筒状部材から形成され、前記先端部を形成する筒状部材16と前記本体となる筒状部材17とが互いに同軸に組合わされた状態で接合されていることが望ましい。
このようにすれば、一本の筒状部材15を切欠くことで先端部を形成しても、先端部を形成する筒状部材が短くなり、先端部の取扱いが容易となるうえ、当該先端部を形成する短い筒状部材を、本体となる別の長い筒状部材に接合するので、基礎杭の長さが充分に確保される。
また、取扱いが容易な短い筒状部材から先端部を形成するので、この短い筒状部材に螺旋状翼を固定すれば、螺旋状翼の固定が容易となり、基礎杭全体の量産性が向上される。
【0010】
また、前記建物は、工場で製造されるとともに、ユニット化された部品を建築現場で組合わせることにより建築されるプレハブ式建物1であることが望ましい。
このようにすれば、前述の基礎杭の地中への打込作業が迅速化されるので、建築現場での杭打ち作業の効率が向上されるようになり、地盤が軟弱でも、プレハブ式建物のメリットである工期の短縮が損なわれない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るプレハブ式建物であるユニット式建物1が示されている。このユニット式建物1は、箱状に形成された複数の建物ユニット3を基礎2の上に載置することにより建築されるものである。また、ユニット式建物1は、水田等を埋め立てた軟弱地盤の上に建築されている。なお、建物ユニット3は、工場で製造されるとともに、建築現場での組付作業が容易に行えるようにユニット化された部品である。
【0012】
基礎2としては、図2に示されるように、ユニット式建物1の底面に応じた平面積を有する平板状部と、この平板状部から地上へ突出するとともに、ユニット式建物1を支持する立上り部とを有するべた基礎が採用されている。
基礎2は、平面視で全体の輪郭が異なる長さの短辺および長辺を有する長方形状とされている。基礎2には、平面視で、ユニット式建物1の外周に沿って配置された直線立上り部20A,20Bと、当該基礎2の長辺部分に対向配置された一対の直線立上り部20Aのほぼ中間部分を連結する中間立上り部21とが設けられている。直線立上り部20A,20Bおよび中間立上り部21は、その上端面でユニット式建物1の荷重を受けるようになっている。
また、基礎2は、地中に埋設される筒状の基礎杭10により支持されている。基礎杭10は、円筒状のものであり、図示しない回転式杭打機により回転駆動されて地中に打ち込まれるようになっている。基礎杭10は、平面視で、各建物ユニット3の四隅に対応した位置に複数配置され、それらの上端部分が基礎2の内部に埋設されている。基礎杭10の全長は、地中の深い部分に位置する堅固な深層地盤に到達する長さ寸法となっている。この深層地盤は、ユニット式建物1の荷重を支持するのに充分な地耐力を有するものとなっている。
【0013】
基礎杭10には、図3に示されるように、長さの異なる二つの筒状に形成された筒状部材を相互に接合したものである。これらの筒状部材のうち、長さ寸法の大きい方が基礎杭10の本体11となっており、長さ寸法の小さい方が打込み先端部12となっている。
本体11の上端側の外周面には、キー11Aが設けられている。このキー11Aは、回転式杭打機の回転駆動軸の先端に設けられるとともに、基礎杭10の上端部分と嵌合する筒状のホルダにキー溝や切欠きに係合するものとなっている。この本体11の下端に打込み先端部12が設けられている。
打込み先端部12は、下端が開口され、その側壁の下端縁が鋸歯状に切欠かれ、これにより、一対の切削刃12Aが形成されたものである。この切削刃12Aは、回転方向に向かって傾斜するとともに、その形状が当該切欠かれた部分と同じ形状となっている。
【0014】
先端部12の近傍の外周面には、一条の螺旋状翼13が設けられている。
この螺旋状翼13の平面形状は、円形状となっており、本体11の平面形状よりも大きく形成されている。すなわち、螺旋状翼13の外径D2は、2×D1≦D2≦3×D1の範囲内、好ましくは、2.3×D1≦D2≦2.5×D1の範囲内に設定されている。これにより、螺旋状翼13の面積は、ユニット式建物1の荷重を支持するのに充分であるとともに、基礎杭10の進行速度を阻害しない程度の大きさとなっている。
【0015】
次に、基礎杭10の製作手順を説明する。
まず、図4に示されるように、一本の長い筒状部材14の所定位置を軸方向と直交する方向に切断するとともに、切断されて分割される筒状部材15の中央部分を鋸歯状に切欠く。すると、切削刃12Aを有する中間部材12Bが複数形成される。ここで、中間部材12Bは、その長さが短くなり、その取扱いが容易となる。
この後、中間部材12Bを形成する短い筒状部材16の外周面に一条の螺旋状翼13を溶接で接合することにより、打込み先端部12が形成される。
一方、本体11となる別の長い筒状部材17にキー11Aを溶接しておき、この筒状部材17に打込み先端部12を溶接して接合し、これにより、基礎杭10の製作が完了する。
ここで、基礎杭10は、先端部12となる短い筒状部材16に本体11となる別の長い筒状部材17を接合しているので、その長さが充分に確保されるようになっている。
【0016】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、基礎杭10の先端部12が開口され、基礎杭10の地中の土砂に対する抵抗が小さくなり、先端部12に切削刃12Aを形成しているので、より小さなトルクで基礎杭10が地中に打ち込められるようになり、基礎杭10の地中への進行速度が速くなり、基礎杭10の地中への打込作業を迅速に行うことができる。
【0017】
また、螺旋状翼13の外径D2を基礎杭10の外径D1の二倍以上、三倍以下の範囲にしているので、螺旋状翼13の平面積が基礎杭10の平面積の三倍から八倍の大きさとなり、深層地盤への荷重伝達面が充分に確保され、ユニット式建物1の荷重が螺旋状翼13の全面で、深層地盤に伝達されるようになり、基礎杭10でユニット式建物1の荷重を確実に深層地盤に支持できる。
さらに、螺旋状翼13の大きさを上述のようにしても、平面積ほどには断面積が大きくならないので、基礎杭10の進行速度を阻害する程、基礎杭10の地中への抵抗が大きくならず、基礎杭10の打込作業の迅速化が損なわれない。
【0018】
また、先端部12の切削刃12Aが側壁から切欠かれた部分と同じ形状をしているので、一本の筒状部材15の中間部分を鋸歯状に切欠くことで、同じ形状の切削刃12Aを有する先端部12が二つ形成されるようになるうえ、鋸歯状に切欠いても、切れ端が生じない。このため、先端部12が容易に形成可能となり、基礎杭10の製造効率が損なわれないうえ、材料の無駄がない。
【0019】
さらに、先端部12を、本体11とは別の筒状部材から形成しているので、一本の筒状部材を切欠いて先端部12を形成しても、先端部12を形成する筒状部材16が短くなり、先端部12の取扱いを容易に行うことができるうえ、当該先端部12を形成する短い筒状部材16を本体11となる別の長い筒状部材17に接合するので、基礎杭10の長さを充分に確保できる。
また、取扱いが容易な短い筒状部材16から先端部12に螺旋状翼13を固定しているので、螺旋状翼13の固定作業が容易となり、基礎杭10全体の量産性を向上できる。
【0020】
さらに、ユニット式建物1の基礎2に基礎杭を採用すると、前述のように、基礎杭10の地中への打込作業が迅速化されるので、建築現場での杭打ち作業の効率が向上されるようになり、地盤が軟弱でも、ユニット式建物1のメリットである工期の短縮が損なわれない。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれる。
すなわち、プレハブ式建物としては、ユニット式建物に限らず、工場で製造した床および壁等の面倒部材であるパネルを建築現場で組み合わせるパネル式建物でもよい。
【0022】
【発明の効果】
本発明の基礎杭の製造方法によれば、以下のような効果が得られる。
すなわち、円筒状の筒状部材の中央部分を、前記鋸歯状に切り欠いて軸方向の一端側に切削刃を有する中間部材を2つ形成し、これら中間部材の外周面に一条の螺旋状翼をそれぞれ接合して形成した打ち込み先端部の軸方向の他端側に同軸上に円筒状の本体を接合し、先端部が開口され、先端部の側壁が鋸歯状に切り欠かれ、先端部近傍の外周面に螺旋翼が設けられた2本の基礎杭を形成している。
このため、先端部が開口され、基礎杭の地中の土砂に対する抵抗が小さくなり、鋸歯状に切欠かれた先端部が切削刃となるので、より小さなトルクで地中に打ち込められるようになり、地中への進行速度が速くなり、地中への打込作業を迅速に行うことができ先端部を開口しても、基礎杭に加わる建物の荷重が螺旋状翼全体に伝達させるとともに、当該荷重が螺旋状翼の全面で深層地盤に伝達されるので建物の荷重を確実に地盤に支持できる基礎杭の量産性を向上できる。
【0024】
さらに、一本の筒状部材の中間部分を鋸歯状に切欠くことで、同じ形状の鋸状部分を有する先端部を構成する中間部材が2つ形成されるうえ、鋸歯状に切欠いても、切れ端が生じない。このため先端部を容易に形成可能となり、基礎杭の製造効率が損なわれないうえ、材料の無駄がない。
【0025】
また、一本の筒状部材を切欠くことで先端部を構成する中間部材を形成しても、中間部材が短くなり、先端部の取扱が容易となるうえ、当該先端部を形成する短い中間部材を、本体となる別の長い筒状部材に接合するので、基礎杭の長さを十分に確保できる。
また、取扱が容易な短い中間部材から先端部を形成するので、この短い中間部材に螺旋状翼を固定することで、螺旋状翼の固定が容易となり、基礎杭全体の量産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレハブ式建物を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態に係る基礎を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態に係る基礎杭を示す斜視図である。
【図4】前記実施形態に係る基礎杭の製造手順を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 プレハブ式建物であるユニット式建物
10 基礎杭
11 本体
12 先端部
12A 鋸歯状部分である切削刃
13 螺旋状翼
16,17 筒状部材
D1 基礎杭の外径
D2 螺旋状翼の外径

Claims (3)

  1. 建物の荷重を地耐力の大きい深層地盤に伝達させるために、回転式杭打機にて地中に埋設される円筒状の基礎杭を製造する基礎杭の製造方法であって、
    円筒状の筒状部材の中央部分を、前記回転抗打機による回転方向に向かって傾斜するとともに切り欠かれた部分と同じ形状で鋸歯状に切り欠いて軸方向の一端側に2つの切削刃を有する中間部材を2つ形成し、
    これら形成した中間部材の外周面に一条の螺旋状翼をそれぞれ接合して打ち込み先端部を形成し、
    これら形成した打ち込み先端部の軸方向の他端側に同軸上に円筒状の本体を接合し、
    先端部が開口され、当該先端部の側壁が鋸歯状に切り欠かれ、前記先端部近傍の外周面に前記螺旋翼が設けられた2本の基礎杭を形成する
    ことを特徴とする基礎杭の製造方法。
  2. 請求項1に記載の基礎杭の製造方法において、
    前記螺旋状翼の外径は、前記中間部材の外径の2倍以上3倍以下の範囲に設定する
    ことを特徴とする基礎杭の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の基礎杭の製造方法により製造され回転式抗打機にて地中に埋設された前記基礎杭の上端部分を内部に埋設し、プレハブ式建物を支持する立上り部を有した
    ことを特徴とする基礎。
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