JP3628354B2 - バリウムフェライト微粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、磁気記録材料として有用なバリウムフェライト微粒子の連続製造方法に関する。さらに詳しくは、水の亜臨界ないしは臨界状態で、鉄化合物、バリウム化合物及びアルカリ性物質の水溶液を流通型反応管を用いて反応させるバリウムフェライト微粒子の連続製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録の高密度化の要求にともない、六方晶のバリウムフェライト(BaO・6Fe2O3)微粒子による垂直磁気記録媒体の開発が進められている。製造方法としては、主にガラス結晶化法と水熱合成法が知られている。
例えば、特開昭56−60002号には、第2鉄塩とバリウム塩を含む水溶液にアルカリ及びアルカリ炭酸塩を撹拌しながら混合して、水酸化第2鉄と炭酸バリウムの共沈物を得た後、濾過、水洗、乾燥した後、熱処理してバリウムフェライト粒子を得る方法が開示されている。特開昭56−160328 号には、第2鉄塩とバリウム塩とを溶解したアルカリ性溶液を、オートクレーブ中で150 〜250 ℃で処理してバリウムフェライト前駆体の沈澱物を生成させた後、800 ℃以上の温度で焼成してバリウムフェライト粉末を得る方法が開示されている。特開昭56−67904号には、酸化バリウムと酸化鉄などのバリウムフェライトを構成する成分と酸化硼素などのガラスを形成する成分とを混合し、溶融したものを急冷固化した後、熱処理してガラス中にバリウムフェライトを析出させた後、得られた微粉末を希酸で処理して、ガラス成分を溶解除去することによってバリウムフェライト粒子を抽出し、水洗、乾燥する方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭56−60002号の方法は簡単な工程であるが、単分散の微粒子を得ることが困難で、また共沈物の濾過性が悪いという問題がある。特開昭56−160328 号の方法は共沈物の濾過の問題を解決することができるが、反応時間が長く、またオートクレーブを用いる回分型水熱処理であるために生産性が悪く、経済性に欠けるという問題がある。特開昭56−67904号の方法は、粒度分布がシャープな微粉末を得ることができるが、原料を溶融するために高温が必要であり、また再度熱処理が必要となるため、複雑な製造工程となり生産性が極めて低い。
【0004】
本発明者らは、先に流通型反応管を用い金属塩水溶液を水の亜臨界ないしは超臨界状態で金属酸化物微粒子を連続的に製造する方法を特開平4−50105 号にて提案した。この方法をバリウムフェライトの製造に応用した。すなわち、鉄化合物、バリウム化合物及びアルカリ性物質からなる混合水溶液を流通型反応管に通液することにより、上記の諸問題点を克服でき、しかもバリウムフェライト微粒子が選択的かつ効率的に製造できることを見出し特願平5−115425号として出願した。しかし、得られたバリウムフェライト微粒子の磁気特性は、必ずしも満足できるものではなかった。そこで、流通型反応装置の昇温方式の変更も含めてバリウムフェライトの結晶生成条件を詳細に検討した。その結果、原料水溶液の混合した時の温度は、室温付近であること、そこから二段階で急速昇温することがバリウムフェライト微粒子の磁気特性の向上に顕著に有効であることを発見し本発明を完成した。
【0005】
【発明を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記の連続する(イ)工程、(ロ)工程および(ハ)工程、
(イ)鉄化合物、バリウム化合物およびアルカリ性物質の各水溶液を10〜60℃にて均一に混合して反応液を調製する工程、次いで、
(ロ)流通型反応管内にて20〜50MPa の一定圧力で該反応液を5 秒以内で250 〜300 ℃に急速昇温させる工程、次いで、および、
(ハ)5秒以内で350 〜450 ℃に急速昇温させ該温度にて10〜1000秒の滞留時間で該反応液を流通させる工程、
からなることを特徴とするバリウムフェライト微粒子の製造方法である。
【0006】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。( イ) 工程にて、原料の各水溶液を均一に混合した時の温度は、10〜60℃であること、特に、10〜30℃の低温が好ましい。また、鉄化合物、バリウム化合物およびアルカリ性物質を水に直接溶解させて反応液として使用することもできることはいうまでもないが、その時の温度も60℃を越さないことが重要である。次いで( ロ) 工程では、熱水を流通型反応管の該反応液に供給して、および/または外部から該反応液を加熱して、5 秒以下、望ましくは 1秒以下で瞬時に250 〜300 ℃、望ましくは260 〜290 ℃へ該反応液を急速昇温させてることによって、均一なバリウムフェライトの結晶核を発生させ、( ハ) 工程へと導く。( ハ) 工程では、バリウムフェライトの結晶核を生成した250 〜300 ℃の該反応液に超臨界水を供給して、および/または外部から該反応液を加熱して、5秒以下、望ましくは1秒以下で瞬時に350 〜450 ℃、望ましくは380 〜420 ℃へ該反応液を急速昇温させ、該温度にて10〜1000秒の滞留時間となるように流通させてバリウムフェライトの結晶成長を行わせる。( ハ) 工程を経た後は、該反応液を冷却・濾過し、フィルター上にバリウムフェライト微粒子を捕集する。本発明の本質は、( イ) 工程から( ロ) 工程と( ハ )工程へと二段階で瞬時に急速昇温させることにある。
【0007】
本発明で使用する原料を説明すると、鉄化合物は、塩化物、臭化物、沃化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、有機酸塩および錯塩が挙げられ、例えば、塩化第1鉄、塩化第2鉄、臭化第1鉄、臭化第2鉄、沃化第1鉄、硝酸第1鉄、硝酸第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄および炭酸第1鉄がある。さらに、しゅう酸、酢酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、くえん酸、マンデル酸およびサリチル酸の鉄塩や鉄キレート錯体が挙げられる。これら鉄化合物は1種または2種類以上用いることができる。これら鉄化合物の中で、水への溶解性や装置の腐食性や経済性の観点から、硝酸第2鉄が最も好ましい。これら鉄化合物の濃度は、0.0001〜1.0mol/リットル、好ましくは0.001 〜0.2mol/リットルである。
【0008】
本発明に使用するバリウム化合物は、ハロゲン化物、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩および錯塩が挙げられ、例えば、塩化バリウム、臭化バリウム、沃化バリウム、硝酸バリウムおよび炭酸バリウムがある。さらに、しゅう酸バリウム等の有機酸塩や分子内に水酸基やカルボキシル基を持った有機物とのキレート錯体が挙げられる。これらバリウム化合物は1種または2種以上用いることができる。これらバリウム化合物の中で、硝酸バリウムと沃化バリウムが、水への溶解性や装置の腐食性や経済性の観点からより好ましい。これらバリウム化合物の濃度は、0.0001〜1.0mol/リットル、好ましくは0.001 〜0.2mol/リットルである。
【0009】
本発明に使用するアルカリ性物質は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類水酸化物および第4級アンモニウム水酸化物が挙げられ、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、アンモニアおよび水酸化テトラメチルアンモニウムがある。これらアルカリ性物質は1種または2種以上用いることができる。前記のアルカリ性物質の中で水酸化カリウムと水酸化ナトリウムが好ましい。これらアルカリ性物質の濃度は、0.0001〜1.0mol/リットル、好ましくは0.01〜2.0 mol/リットルである。
【0010】
本発明に使用する水溶液中の鉄化合物とバリウム化合物の比率としては、Fe/Ba の mol比表示にて5/1 〜1/2 の範囲でバリウムフェライトが生成可能であるが、選択的にバリウムフェライト微粒子を生成させ、生成したバリウムフェライトの磁気特性のパラメータである飽和磁化σs と保磁力Hc の値を大きくするためにはFe/Ba のモル比を2/1 〜1/2 とすることがが好ましい。
【0011】
本発明に使用する水溶液としては、鉄化合物とバリウム化合物の合計の陰イオンの mol数に対するアルカリ性物質の水酸化物イオンのmol 数の比すなわちアルカリmol 比(R)は、1以上で好ましくは1〜4である。
さらに、本発明に使用する代表的な反応装置を図1に従って説明する。ステンレス製の円管を流通型反応管とし、該反応管への送液は脈流のない高圧ポンプによる。系内の圧力は背圧弁18により制御することができる。また、送液ライン及び反応管は、シースヒーターで加熱し、それらの温度はPIDにて制御する。
( イ) 工程にて、タンク1に入っている鉄化合物とバリウム化合物の混合水溶液をポンプ4により送液する。タンク2に入っているアルカリ性物質の水溶液はポンプ5により送液し、上記の混合水溶液と混合し反応液とする。この時の温度は温度計10にて測定し10〜60℃にする。一方、( ロ) 工程にて、タンク3からの純水は、ポンプ6により送液しシースヒータ8にて加熱して熱水とし( イ) 工程の反応液に供給・混合する。この時の温度は温度計11にて測定して250 〜300 ℃にする。この温度がバリウムフェライトの結晶核発生温度である。その後直ちに( ハ) 工程にて、タンク3の純水をポンプ7により送液しシースヒータ9にて加熱し熱水とし( ロ) 工程の反応液に供給・混合する。この時の温度は温度計12にて測定し350 〜450 ℃にする。反応管出口の温度は温度計15にて測定し、その温度は、通常、温度計12での温度になるように設定する。( イ) 、( ロ) および( ハ) の工程を経て生成したバリウムフェライトを含有する水溶液は冷却器16にて常温まで冷却後、フィルター17で捕集する。バリウムフェライトを捕集後の水溶液は、背圧弁18で常圧に戻し、容器19に入る。
【0012】
【作用】
( イ) 工程にて10〜30℃の常温付近で充分混合することで不純物の生成を抑え、後続の( ロ) 工程にて250 〜300 ℃に急速に昇温させてバリウムフェライトの均質な結晶核を生成させ、さらに後続の( ハ) 工程にて350 〜450 ℃に急速に昇温させた後、該温度でバリウムフェライトを結晶成長させるが、これら( イ) 、( ロ) および(ハ)工程を連続して行うことにより粒度分布が小さく磁気特性の優れたバリウムフェライト粒子が得られる。
【0013】
(イ) 工程にて、混合溶液の温度が60℃を越えるとヘマタイトなどの不純物が生成し、バリウムフェライト以外の非晶質微粒子が生成する副反応が進行し、生成したバリウムフェライトの飽和磁化が低下する。10℃未満へ混合溶液を冷却することも可能であるが、生成したバリウムフェライトの飽和磁化がさらに上昇することはない。 (ロ) 工程にて、5 秒を越す長い時間で250 〜300 ℃へ昇温すると、バリウムフェライトの結晶核が不均質となりやすい。5 秒以下で急速に昇温しても250 ℃以下では、バリウムフェライトの結晶核の生成が充分でない。また300 ℃を越すと、一部結晶化が進みバリウムフェライトの微細な結晶粒子が析出してくる。( ハ) 工程にて、5 秒を越す長い時間で350 〜450 ℃へ昇温すると、バリウムフェライトの粒子径が不揃いとなる。5 秒以下で急速に昇温しても250 ℃以下では結晶成長が充分に進行しない。450 ℃を越すことも可能ではあるが加熱装置と反応装置の負担が大きくなり実用性に乏しくなる。滞留時間が10秒未満では結晶成長が充分に進行せず、1000秒を越す滞留時間を採用すると反応管が必要以上に長くなり効率的でない。
【0014】
原料の反応水溶液のFe/Ba の mol比が5を越えるとヘマタイトが生成しやすくく、生成するバリウムフェライトの平均粒子径は約1μ以上にも達し好ましくない。Fe/Ba の mol比が1/2 未満であるとBaO ・6Fe2O3からBaO ・2Fe2O3への相変化が進行しやすくなるので好ましくない。
原料の反応水溶液のアルカリのmol 比Rが1未満の場合、バリウムフェライトはほとんど生成しない。また、Rが大きくなる程、生成する粒子数は増大し、生成するバリウムフェライトの平均粒径は小さくなる。Rは4を越えることも可能であるが、それ以上アルカリ性物質を増加してもバリウムフェライトの平均粒径は小さくはならない。
【0015】
なお、水熱合成法は、加水分解などによって生成した金属水酸化物の沈澱を水あるいは水溶液と共に高温高圧処理することにより酸化物微粒子を生成する手法であるが、高温高圧の溶液を用いているので、常温常圧より反応が速く、生成物の結晶性および均一性が優れている。本発明の方法は、水熱合成法の一般的な特徴に加えて、▲1▼連続プロセスであり滞留時間が非常に短く生産効率が高い、▲2▼管型反応器であり外熱式加熱が可能であり装置がコンパクトになる、▲3▼反応温度、圧力、金属塩濃度、滞留時間、アニオン種などにより生成粒子の粒径や形状を変えることができる、▲4▼超臨界水は他のガスと均一な混合ができるので、原料水溶液と共に反応性のガスを反応管に導入して反応雰囲気の制御ができるなどの利点を持っている。
【0016】
【実施例】
実施例1
図1に従って説明する。濃度0.01mol/リットルの硝酸第2鉄水溶液と濃度0.005mol/ リットルの硝酸バリウム水溶液からなる混合液(タンク1)を3.0 ml/ 分の流量でポンプ4より30MPa に加圧・送液した。一方、ポンプ5 より0.16mol/リットルの水酸化カリウム水溶液( タンク2)を3.0ml/分の流量でポンプ5 より30MPa に加圧・送液し、両者の水溶液を混合した。混合直後の水溶液の温度を温度計10で測定したところ25℃であった。なお、混合水溶液のFe/Ba の mol比は2であり、硝酸第2鉄と硝酸バリウムに含まれる硝酸イオンの合計量に対する水酸化カリウム中の水酸化物の mol比(R) は4であった。
【0017】
ポンプ6 より30MPa に加圧した純水を6.0ml / 分の流量で送液し、送液ラインのヒーター8 にて加熱調節して、温度計11が 280℃( バリウムフェライトの結晶核発生温度に対応)を示すようにした。一方、ポンプ 7より30MPa に加圧した純水を水6.0ml / 分の流量で送液し、送液ラインのシースヒーター9 にて加熱調節して、温度計12が 380℃を示すようにし、反応液と混合される。これら混合された反応液は、SUS316製の円管(外形 3/8インチ、厚さ1.65mm) に連続供給される。純水の送液ラインおよび流通型反応器はシースヒーター(外形1.6mm)により加熱し、その温度は PID制御した。流通型反応管内では、圧力30MPa 、温度380 ℃および滞留時間53秒の条件にて反応させた。流通型反応管からの流出液は、2 重管型の冷却管16を通して常温まで冷却し、背圧弁18の前に設置してあるインラインフィルター17( 孔径0.1 μm)にて生成粒子を捕集した。これらの実験条件は、後述の実施例2および比較例 1〜3 も含めて一括して第1表に示した。なお、第1表にて、核発生温度は、バリウムフェライトの結晶核発生温度の略称である。
【0018】
実施例2
図 1の温度計11が300 ℃(バリウムフェライトの結晶核発生温度に対応)を示すように昇温させた以外は実施例1と同様な方法で行った。
比較例1
実施例と同様に図1に従って説明する。濃度0.01mol/リットルの硝酸第2鉄水溶液と濃度0.005mol/ リットルの硝酸バリウム水溶液からなる混合液(タンク1)を3.0 ml/ 分の流量でポンプ4 より30MPa に加圧・送液した。一方、ポンプ5 より0.16mol/リットルの水酸化カリウム水溶液( タンク2)を3.0ml/分の流量でポンプ5 より30MPa に加圧・送液し、両者の水溶液を混合した。混合直後の水溶液の温度を温度計10で測定したところ25℃であった。なお、混合水溶液のFe/Ba の mol比および硝酸第2鉄と硝酸バリウムに含まれる硝酸イオンの合計量に対する水酸化カリウム中の水酸化物の mol比は実施例1 と同一である。ポンプ 6は停止したままで、ポンプ7 より30MPa に加圧した純水を水6.0ml / 分の流量で送液し、送液ラインのシースヒーター9 にて加熱調節して、温度計12が 380℃を示すようにして反応液と混合し、流通型反応管に送液した。流通型反応管内では、実施例1 と同一条件で反応させ、実施例1と同様に生成粒子を捕集した。
【0019】
比較例2
図1に従って説明する。濃度0.01mol/リットルの硝酸第2鉄水溶液と濃度0.005mol/ リットルの硝酸バリウム水溶液からなる混合液(タンク1)を3.0 ml/ 分の流量でポンプ4 より30MPa に加圧・送液した。一方、ポンプ5 より0.16mol/リットルの水酸化カリウム水溶液( タンク2)を3.0ml/分の流量でポンプ5 より30MPa に加圧・送液し、両者の水溶液を混合した。ただし、水酸化カリウム水溶液の送液ラインをシースヒーター( 図1 には図示せず)にて加熱し、混合直後の水溶液の温度を温度計10で測定して200 ℃とした。なお、混合水溶液のFe/Ba の mol比および硝酸第2鉄と硝酸バリウムに含まれる硝酸イオンの合計量に対する水酸化カリウム中の水酸化物の mol比は実施例1と同一である。
【0020】
続いてポンプ 6は停止したままで、ポンプ 7より30MPa に加圧した純水を6.0ml / 分の流量で送液し、送液ラインのシースヒーター9 にて加熱調節して、温度計12が380 ℃を示すようにして反応液と混合し、流通型反応管に送液した。流通型反応管内では、実施例1と同一条件で反応させ、実施例1と同様に生成粒子を捕集した。
【0021】
比較例3
濃度0.01mol/リットルの硝酸第2鉄水溶液と濃度0.005mol/ リットルの硝酸バリウム水溶液からなる混合液 20ml と0.16mol/リットルの水酸化カリウム水溶液 20 mlを25℃にて混合した。この混合水溶液 9mlを実効内容積9ml のSUS304製反応器に充填・密栓した後、380 ℃に加熱した金属塩浴に浸漬した。145 秒で380 ℃に到達したが、そのまま60秒間金属塩浴に浸漬した後、その反応器を取り出し、水冷して生成粒子を捕集した。
【0022】
評価方法
実施例と比較例で得られた粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡の写真撮影により測定した。同時に粒度分布も観察した。また、粉末の磁気特性は、磁気天秤により、保磁力Hcと飽和磁化σsを測定した。なお、粉末X線回折法では、いずれの粒子もバリウムフェライト(BaO・6Fe2O3) の結晶のピークしか検出されなかった。以上の測定結果とまとめて第2表に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
第2表から次のことがわかる。すなわち、実施例1及び実施例2では、粒子の粒度分布が小さく、しかも高い保磁力と高い飽和磁化を持ち、優れたバリウムフェライト粒子であることがわかる。一方、25℃から一段階で急速昇温した比較例1( 核発生温度 380 ℃)では、飽和磁化は高いが、大きい粒子と小さい粒子が混在し粒度分布が大きい。また、比較例2及び比較例3では、ヘマタイトと推定される50nmの球状粒子が混在しており、粒度分布が大きい。混合温度が200 ℃である比較例2では、飽和磁化が低くしかも粒度分布が大きくなることがわかる。混合温度が25℃であっても、380 ℃に到達する時間が145 秒と長い比較例3では、飽和磁化が低くしかも粒度分布が大きくなり、急速昇温により均質な結晶核を生成させることが重要であることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、流通型反応管を用いて、反応水溶液を室温付近から水の亜臨界温度ないしは超臨界温度に二段階で瞬間的に急速昇温することにより、六方晶のバリウムフェライト(BaO ・6Fe2O3)微粒子を連続的に製造する方法である。本発明の方法によれば、非平衡状態から短時間に加水分解と晶析が同時に起こり、均質な微粒子が得られるので、磁性特性の優れたバリウムフェライト微粒子が製造できる。六方晶のバリウムフェライト微粒子は、その形状が六角板状で板面に対し垂直な方向に磁化容易軸を持つので、この粒子の板面を基体面と平行に並べると、垂直磁気記録媒体を作ることができる。また、塗布媒体であるため量産に適するほか、耐久性など信頼性確保の面でも従来の技術が応用できる。従って、本発明の工業的意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】流通型反応管を用いた本発明の装置概略図である。
【図2】実施例1で得られたバリウムフェライト(BaO・6Fe2 O3 )の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。倍率は8万倍。
【図3】実施例2で得られたバリウムフェライト(BaO・6Fe2 O3 )の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。倍率は8万倍。
【図4】比較例1で得られたバリウムフェライト(BaO・6Fe2 O3 )の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。倍率は8万倍。
【図5】比較例2で得られたバリウムフェライト(BaO・6Fe2 O3 )の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。倍率は8万倍。
【図6】比較例3で得られたバリウムフェライト(BaO・6Fe2 O3 )の粒子構造を示す電子顕微鏡写真。倍率は8万倍。
【符号の説明】
1 鉄化合物とバリウム化合物の混合水溶液が入っているタンク
2 アルカリ性物質の水溶液が入っているタンク
3 純水タンク
4 高圧無脈流ポンプ
5 高圧無脈流ポンプ
6 高圧無脈流ポンプ
7 高圧無脈流ポンプ
8 送液ラインのシースヒーター
9 送液ラインのシースヒーター
10 反応液混合部の温度計
11 第1段目急速昇温部の温度計
12 第2段目急速昇温部の温度計
13 反応管のシースヒーター
14 反応管
15 反応管出口部の温度計
16 外部水冷型冷却器
17 フィルター(2個を切り換える)
18 背圧弁
19 生成物を捕集した後の水溶液をうける容器
Claims (5)
- 下記の連続する(イ)工程、(ロ)工程および(ハ)工程、
(イ)鉄化合物、バリウム化合物およびアルカリ性物質の各水溶液を10〜60℃にて均一に混合して反応液を調製する工程、次いで、
(ロ)流通型反応管内にて20〜50MPa の一定圧力で該反応液を5 秒以内で250 〜300 ℃に急速昇温させる工程、次いで、および、
(ハ)5秒以内で350 〜450 ℃に急速昇温させ該温度にて10〜1000秒の滞留時間で該反応液を流通させる工程、
からなることを特徴とするバリウムフェライト微粒子の製造方法。 - 鉄化合物が硝酸鉄である請求項1記載のバリウムフェライト微粒子の製造方法。
- バリウム化合物が硝酸バリウムである請求項1または請求項2記載のバリウムフェライト微粒子の製造方法。
- アルカリ性物質が水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリウムフェライト微粒子の製造方法。
- 鉄化合物とバリウム化合物の合計の陰イオンに対するアルカリ性物質の水酸化物イオンのモル比が1〜4となる水溶液を用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のバリウムフェライト微粒子の製造方法。
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