JP3627551B2 - 電磁駆動吸排気弁装置 - Google Patents

電磁駆動吸排気弁装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸気弁又は排気弁に用いて好適な電磁駆動吸排気弁装置に係り、特に可動部の動作速度を改善した電磁駆動吸排気弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関の吸排気バルブを現在主流であるカム駆動に変えて電動で駆動する構成が提案されている。吸排気バルブを電動駆動する構成によれば、カムシャフト等の回転機構を省略することができると共に、バルブタイミングの変更が容易であることから、内燃機関の運転状態に応じた理想的な開閉弁タイミングを任意に設定可能となり、出力特性、及び燃費特性を改善することが可能となる。
【0003】
そして、吸排気バルブの電動駆動装置としては電磁石を用いた電磁アクチュエータによる構成が提案されている。この構成は例えば特開昭57−44716号公報で知られている。この構成のアクチュエータにおいては、可動部をバルブの開弁方向に付勢するスプリングと可動部を閉弁方向に付勢するスプリングの2つのスプリングを有し、さらに可動部をそれぞれバルブの開弁方向と閉弁方向とに吸引する2つの電磁石を有している。
【0004】
図5は、このような従来の電磁駆動吸排気弁装置1の構成を示す縦断面図である。図5において、電磁駆動吸排気弁装置1は、エンジンのシリンダヘッド2、バルブ3、バルブリテーナ4、付勢手段としての閉弁側のコイルスプリングであるバルブスプリング5、装置の筐体6、7、8、開弁側の電磁石9、閉弁側の電磁石10、シャフト11、可動板12、スプリングシート13、付勢手段としての開弁側コイルスプリングである上側スプリング14、スプリングカバー15を備えている。
【0005】
バルブ3の弁軸3aは、シリンダヘッド2に埋め込まれた円筒形のバルブガイド2aの内部を上下に摺動可能になっている。また弁軸3aにはバルブリテーナ4が固定されている。バルブリテーナ4とシリンダヘッド2の間にはバルブスプリングが圧縮されて装着されており、このためバルブ3はシリンダヘッド2のポート2bを閉じる方向(閉弁方向)に付勢されることになる。
【0006】
シリンダヘッド2には装置の筐体である6、7および8が固定されている。筐体内には電磁石9および10が設けられている。電磁石9および10は直接筐体6および8に固定されて設置されている。
【0007】
電磁石9、10にはそれぞれ電磁コイル9a、10aが設けられており、各電磁コイル9a、10aには図外の制御装置より駆動電流が供給される。その場合には、電磁石の吸引面9b、10bが吸引力を発生することになる。
【0008】
電磁石9および10の中心部には、弁軸3aに連接されたシャフト11が弁軸方向に摺動可能なように設置されている。シャフト11の中間部分には軟磁性体からなる可動板12が固定されている。
【0009】
また、シャフト11のシリンダヘッド2と反対側の端部にはスプリングシート13が固定されており、筐体に固定されたスプリングカバー15との間に圧縮されて設置されたバネである上側スプリング14の作用により、シャフト11は開弁方向に付勢されている。
【0010】
シャフト11はバルブ3の弁軸3bと同軸上に設けられており、シャフト11のシリンダヘッド2側の端部は、弁軸3aの頂面3cと対向している。そのためシャフト11に開弁方向(図の下向き)の力が作用した場合には、シャフト11がバルブ3を押してバルブ3を開弁し、逆にシャフト11が閉弁方向(図の上向き)に移動した場合には、バルブ3はバルブシート2cに当接してポート2bを塞ぐまで閉弁方向に変位することになる。
【0011】
可動板12とバルブ3とを含む可動系は、電磁石9、10に電流が流れていない場合には2つのスプリング5、14のバネ力により、2つの電磁石9、10の吸引面からそれぞれ所定の位置だけ離間した中立位置に保持されている。
【0012】
ここで、コイルスプリング5、14と、バルブ3及び可動板12を含む可動部とで構成されるバネ・マス系の固有振動数foは、合成バネ定数をK、合計慣性質量をmとすると、fo=2π√(K/m)であることが知られている。
【0013】
さてエンジン始動前の初期動作において、上記固有振動数foに対応する周期で電磁石9と電磁石10とに交互に通電する。そして、可動部を共振させることにより徐々に可動部の振幅を増大させ、初期動作の最終段階で、例えば閉弁側の電磁石10に可動板12が吸着され、この吸着状態が保持される。
【0014】
次に、エンジンの始動時または通常の稼働時には、例えばバルブを開く場合は、まず閉弁側の電磁石10の電流が切られ、可動部はコイルスプリングのバネ力により下方に移動を開始する。摩擦力などによるエネルギー損失のため、バネ力だけで弁全開位置まで可動板12を移動させることはできない。そこで、可動板12が開弁側の電磁石9に十分近づき、電磁力が有効となる位置で電磁石9が通電され、可動板12が電磁石9に吸引され、バルブ3が全開状態となる。
【0015】
バルブ3を閉じる場合は、開弁側の電磁石9の電流を遮断すると、今度はスプリングのばね力により可動系は中立位置を一旦通過して閉弁側の電磁石10に接近する。次いで電磁石10に通電すると可動系は電磁石10に吸引されバルブ3は、バルブシート2cに接する全閉状態となる。
【0016】
このように2つの電磁石9、10の電流の通電、遮断を交互に切り替えることにより、可動部を所定の変位幅だけ変位させることを可能にしており、この変位を利用してバルブ3の開弁と閉弁状態とを切り替えていた。
【0017】
図6は、図5の電磁駆動吸排気装置の開弁側電磁石9および閉弁側電磁石10にそれぞれ電流を供給する制御装置40の構成を示すブロック図である。
同図において、制御装置40は、タイミング生成部21と、捕捉電流指示部22、32と、保持電流指示部23、33と、スイッチ25、35と、閉弁側電磁石電流制御部26と、開弁側電磁石電流制御部36とを備えていて、開弁側電磁石9の電磁コイル9aおよび閉弁側電磁石10の電磁コイル10aに通電する電流のタイミングと大きさを制御するものである。
【0018】
制御装置40の外部に設けられたエンジン制御ECU41は、エンジンの運転状況判断に基づいて最適なタイミング信号をタイミング生成部21に対して出力する。タイミング生成部21は、スイッチ25、26の切換信号を生成する。スイッチ25、26は、それぞれ捕捉電流指示部22、32、保持電流指示部23、33、及び電流値0を指示する”0”信号をタイミング生成部21からの切換信号に従って電子的に切り換えて、それぞれ閉弁側電磁石電流制御部26、開弁側電磁石電流制御部36へ出力する。
【0019】
閉弁側電磁石電流制御部26は、スイッチ25から指示された電流値を閉弁側電磁石10の電磁コイル10aへ通電するように、例えばPWM制御技術を利用して制御する。開弁側電磁石電流制御部36は、スイッチ35から指示された電流値を開弁側電磁石9の電磁コイル9aへ通電するように、例えばPWM制御技術を利用して制御する。
【0020】
捕捉電流指示部22、32は、それぞれ一方の電磁石から吸引状態が解かれた可動板が他方の電磁石に接近したとき、この可動板を他方の電磁石に吸引するために通電される捕捉電流値を指示し、保持電流値指示部23、33は一旦可動板が電磁石に吸引された後、この吸引状態を保持するために電磁石に通電する保持電流値を指示するものであり、消費電流節約のために保持電流値は捕捉電流値より小さく設定されている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の電磁駆動吸排気弁装置においては、可動部を吸引している一方の電磁石の電流を遮断しても、電磁石及び可動子の残留磁束の低下が緩やかであるので、開弁または閉弁の動作の開始が遅れるという問題点があった。
【0022】
この問題点を図7を参照して説明する。図7(a)は閉弁側電磁石10の電流i1 、(b)は開弁側電磁石9の電流i2 、(c)は可動板内の磁束B、(d)はバルブ3の動作をそれぞれ示すものである。
【0023】
いま、閉弁開始のタイミングで開弁側電磁石9の保持電流i2hが遮断されたとする。この保持電流の遮断は、急激に行うと電磁コイルのインダクタンスと電流の時間微分との積に比例する高電圧が発生するため、コンデンサなどの吸収手段を用いても遮断速度に限界がある。さらには可動板内の磁界変化による渦電流の影響及び電磁石、可動板の残留磁束により、電磁石の吸引力の低下は電流遮断時より更に遅れることとなる。
【0024】
このため、図7(c)に示すように可動板内の磁束Bは、緩やかな低下となり、図7(d)に示すようにバルブ3の開弁状態(フルリフト)から閉弁動作の開始は、td1だけ、保持電流遮断時より遅延し、バルブの高速動作の妨げとなるという問題点があった。
【0025】
このtd1は、弱い残留磁束による可動板の吸引によるため、エンジン及び外来の振動が加わる車載状態では、不特定の期間となり、予めtd1の遅延を見込んで早めに保持電流遮断を開始するという対処法も不可能であった。同様のことが閉弁状態から開弁状態への遷移に対しても言える。
【0026】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電磁石の通電を停止した後の残留磁束の減少を早めて、可動子が電磁石から離れ始める時間を短縮した電磁駆動吸排気弁装置を提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、上記課題を解決するため、吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された軟磁性の可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの通電方向が設定され、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に電流を通電することを要旨とする。
【0029】
請求項2記載の本発明は、上記課題を解決するため、吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された軟磁性の可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの巻方向が設定され、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に電流を通電することを要旨とする。
【0030】
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の電磁駆動吸排気弁装置において、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に通電する電流は、パルス状であることを要旨とする。
【0031】
請求項4記載の本発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の電磁駆動吸排気弁装置において、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に通電を開始するタイミングは、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流の遮断開始タイミングを中心として前後に前記可動板を他方向側に駆動する電磁石の電流立ち上がり時間の幅を有するタイミングであることを要旨とする。
【0033】
【発明の効果】
請求項記載の本発明によれば、吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、一方の電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、他方の電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの通電方向が設定され、一方の電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、他方の電磁石に電流を通電することにより、一方の電磁石の電流を遮断して他方の電磁石に電流を通電する際に、可動板及び一方の電磁石を貫く残留磁束と逆方向の磁束が他方の電磁石により発生されるので、2つの電磁石の部品としての同一性を保持し部品の種類増加を抑制しつつ、残留磁束の低下速度が更に高まり、可動板が一方の電磁石から離れ始める時間を短縮し、電磁駆動吸排気弁装置の動作速度を更に高めることができる。
【0034】
請求項記載の本発明によれば、吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、一方の電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、他方の電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの巻方向が設定され、一方の電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、他方の電磁石に電流を通電することにより、一方の電磁石の電流を遮断して他方の電磁石に電流を通電する際に、可動板及び一方の電磁石を貫く残留磁束と逆方向の磁束が他方の電磁石により発生されるので、残留磁束の低下速度が更に高まり、可動板が一方の電磁石から離れ始める時間を短縮し、電磁駆動吸排気弁装置の動作速度を更に高めることができる。
【0035】
請求項記載の本発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加えて、一方の電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、他方の電磁石に通電する電流はパルス状とすることにより、無効な励磁期間を短縮できるので消費電力の増加を抑制することができるという効果がある。
【0036】
請求項記載の本発明によれば、請求項1ないし請求項記載の発明の効果に加えて、前記他方の電磁石に通電を開始するタイミングは、前記一方の電磁石の電流の遮断開始タイミングを中心として前後に前記他方の電磁石の電流立ち上がり時間の幅を有するタイミングとすることにより、さらに無効な励磁期間を短縮し一層消費電力を削減することができるという効果がある。
【0037】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
尚、本発明が適用される電磁駆動吸排気弁装置の機械的な構成は、図5に示した従来の電磁駆動吸排気弁装置とほぼ同様であるが、第1実施形態においては、開弁側電磁石9が可動板12に生成する磁束の方向と、閉弁側電磁石10が可動板12に生成する磁束の方向とが逆向きになるように、各電磁石9、10の電磁コイル9a,10aの巻方向または通電方向が設定されている点が異なる。
【0038】
図1は、本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の第1実施形態における開弁側電磁石9および閉弁側電磁石10にそれぞれ電流を供給する制御装置20の構成を示すブロック図である。
【0039】
同図において、制御装置20は、タイミング生成部21と、捕捉電流指示部22、32と、保持電流指示部23、33と、残留磁束打消電流指示部24、34と、スイッチ25、35と、閉弁側電磁石電流制御部26と、開弁側電磁石電流制御部36とを備えていて、開弁側電磁石9の電磁コイル9aおよび閉弁側電磁石10の電磁コイル10aに通電する電流のタイミングと大きさを制御するものである。
【0040】
制御装置20の外部に設けられたエンジン制御ECU41は、エンジンの運転状況判断に基づいて最適なタイミング信号をタイミング生成部21に対して出力する。タイミング生成部21は、スイッチ25、26の切換信号を生成する。スイッチ25、26は、それぞれ捕捉電流指示部22、32、保持電流指示部23、33、残留磁束打消電流指示部24、34、及び電流値0を指示する”0”信号タイミング生成部21からの切換信号に従って電子的にを切り換えて、それぞれ閉弁側電磁石電流制御部26、開弁側電磁石電流制御部36へ出力する。
【0041】
閉弁側電磁石電流制御部26は、スイッチ25から指示された電流値を閉弁側電磁石10の電磁コイル10aへ通電するように、例えばPWM制御技術を利用して制御する。開弁側電磁石電流制御部36は、スイッチ35から指示された電流値を開弁側電磁石9の電磁コイル9aへ通電するように、例えばPWM制御技術を利用して制御する。
【0042】
捕捉電流指示部22、32は、それぞれ一方の電磁石から吸引状態が解かれた可動板が他方の電磁石に接近したとき、この可動板を他方の電磁石に吸引するために通電される捕捉電流値を指示し、保持電流値指示部23、33は一旦可動板が電磁石に吸引された後、この吸引状態を保持するために電磁石に通電する保持電流値を指示するものであり、消費電流節約のために保持電流値は捕捉電流値より小さく設定されている。
【0043】
残留磁束打消電流指示部24、34はそれぞれ一方の電磁石の保持電流が遮断され、一方の電磁石から可動板が離脱する際に、可動板を貫く残留磁束を打ち消すために他方の電磁石に通電する残留磁束打消電流値を指示するものであり、この残留磁束打消電流は、後に説明するようにパルス波形とするのが好ましい。
【0044】
図2は、本第1実施形態における開弁側電磁石9、閉弁側電磁石10及び可動板12の断面図中に磁束を模式的に表現したものであり、図2(a)は開弁側コイル通電中の状態、(b)は開弁側コイル通電offの状態、(c)は閉弁側コイルに残留磁束打消電流onの状態、をそれぞれ示す。
【0045】
図2(a)に示すように、開弁側電磁石9の電磁コイル9aに通電中は、太い矢印で示す磁束101が生じ、可動板12は開弁側電磁石9に吸引されている。次いで開弁側電磁石9の電磁コイル9aの通電がoffされると、図2(b)の細い矢印に示すように残留磁束102により可動板12がまだ開弁側電磁石9に吸引されている。
【0046】
ここで、図2(c)に示すように、閉弁側電磁石10の電磁コイル10aに通電すると、閉弁側電磁石10による磁束103が残留磁束102を打ち消すように生成されるので、可動板12と開弁側電磁石9とを貫く磁束が急減し、可動板12が速やかに開弁側電磁石9を離れることができる。
【0047】
この逆に、閉弁側電磁石10に可動板12が吸引された後、閉弁側電磁石10による残留磁束を打ち消すために開弁側電磁石9に通電するときにも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0048】
図3は、本第1実施形態における動作を説明するタイミングチャートであり、フルリフトの開弁状態から閉弁動作に移行する場合を説明しているが、閉弁状態から開弁動作へ移行する場合も同様である。図3(a)は閉弁側電磁石10の電流i1 、(b)は開弁側電磁石9の電流i2 、(c)は可動板内の磁束B、(d)はバルブ3の動作をそれぞれ示すものである。
【0049】
いま、図3(b)に示すように、閉弁開始のタイミングで開弁側電磁石9の保持電流i2hが遮断されたとする。この保持電流の遮断開始に合わせて図3(a)に示すように、閉弁側電磁石10の電磁コイル10aにパルス電流の残留磁束打消電流i1pを通電すると、図2で説明したように開弁側電磁石9による残留磁束が閉弁側電磁石10の電流で生じる磁束により打ち消され、図3(c)に示すように可動板12内の磁束が急激に低下し、図3(d)に示すように比較的短時間の遅延時間td2の後にフルリフトの開弁状態から閉弁動作に移行することができる。この遅延時間td2は、従来例の図7に示したtd1に比べて十分短い時間であるので、バルブ開閉の高速動作が可能となる。
【0050】
この閉弁側電磁石10の電磁コイル10aにパルス電流の残留磁束打消電流i1pを通電開始するタイミングは、閉弁側電磁石10の電磁コイル10aの電流の立ち上がり時間をtr とすると、閉弁開始のタイミングの前後それぞれtr の幅の時間帯とすることが好ましい。これ以前のタイミングで閉弁側電磁石10に残留磁束打消電流i1pの通電を開始しても電磁コイル10aは無駄に電力を消費する。逆に、これ以後のタイミングで残留磁束打消電流の通電を開始してもバルブ動作を早める効果は小さくなる。
【0051】
次に、本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の第2実施形態の動作を説明する。本実施形態が適用される電磁駆動吸排気弁装置の機械的な構成は、図5に示した従来の電磁駆動吸排気弁装置とほぼ同様であるが、第2実施形態においては、開弁側電磁石9が可動板12に生成する磁束の方向と、閉弁側電磁石10が可動板12に生成する磁束の方向とが逆向きになるように、各電磁石9、10の電磁コイル9a,10aの巻方向または通電方向が設定されている点が異なる。
【0052】
また本実施形態における開弁側電磁石9および閉弁側電磁石10にそれぞれ電流を供給する制御装置の構成は、図6に示した従来の制御装置40とほぼ同様であるが、タイミング制御部21によるスイッチ25、35の切り換えタイミングが異なる。
【0053】
図4は、本第2実施形態の動作を説明するタイミングチャート図であり、フルリフトの開弁状態から閉弁動作に移行する場合を説明しているが、閉弁状態から開弁動作へ移行する場合も同様である。
【0054】
図4(a)は閉弁側電磁石10の電流i1 、(b)は開弁側電磁石9の電流i2 、(c)は可動板内の磁束B、(d)はバルブ3の動作をそれぞれ示すものである。
【0055】
いま、図4(b)に示すように、閉弁開始のタイミングで開弁側電磁石9の保持電流i2hが遮断されたとする。この保持電流の遮断開始に合わせて図4(a)に示すように、閉弁側電磁石10の電磁コイル10aに捕捉電流i1cの通電を開始すると、図2で説明したように開弁側電磁石9による残留磁束が閉弁側電磁石10の電流で生じる磁束により打ち消され、図4(c)に示すように可動板12内の磁束が急激に低下し、図4(d)に示すように比較的短時間の遅延時間td3の後にフルリフトの開弁状態から閉弁動作に移行することができる。この遅延時間td3は、従来例の図7に示したtd1に比べて十分短い時間であるので、バルブ開閉の高速動作が可能となる。
【0056】
この閉弁側電磁石10の電磁コイル10aに捕捉電流i1cを通電開始するタイミングは、閉弁側電磁石10の電磁コイル10aの電流の立ち上がり時間をtr とすると、閉弁開始のタイミングよりtr 前の時刻から閉弁開始の時刻とすることが好ましい。これ以前のタイミングで閉弁側電磁石10に捕捉電流i1cの通電を開始しても電磁コイル10aは無駄に電力を消費する。
【0057】
以上好ましい実施の形態について説明したが、これらは本発明を限定するものではない。例えば、実施形態においては、閉弁側電磁石が可動板に生じる磁束の向きと、開弁側電磁石が可動板に生じる磁束の向きとを互いに逆向きとしたが、これら磁束の向きが同じ方向であっても、一方の電磁石による残留磁束が可動板を貫通しているときに他方の電磁石に通電することにより、この残留磁束による可動板の電磁石への吸引力を低減させることができ、可動板の開弁動作または閉弁動作の開始を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の動作を説明する要部縦断面図である。
【図3】本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の第1実施形態の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図4】本発明に係る電磁駆動吸排気弁装置の第2実施形態の動作を説明するタイミングチャート図である。
【図5】本発明が適用される電磁駆動吸排気弁装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】従来の電磁駆動吸排気弁装置の構成を示す構成図である。
【図7】従来の電磁駆動吸排気弁装置の駆動方法を説明するタイミングチャート図である。
【符号の説明】
1 電磁駆動吸排気弁装置
3 バルブ
9 開弁側電磁石
9a 電磁コイル
10 閉弁側電磁石
10a 電磁コイル
11 シャフト
12 可動板
20 制御装置
21 タイミング生成部
22、32 捕捉電流指示部
23、33 保持電流指示部
24、34 残留磁束打消電流指示部
25、35 スイッチ
26 閉弁側電磁石電流制御部
36 開弁側電磁石電流制御部
41 エンジン制御ECU

Claims (4)

  1. 吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された軟磁性の可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、
    前記可動板を一方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの通電方向が設定され、
    前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に電流を通電することを特徴とする電磁駆動吸排気弁装置。
  2. 吸気弁又は排気弁の各弁軸に連接された軟磁性の可動板と、該可動板の両作用面に対向して配設された2つの電磁石と、前記弁軸又は前記可動板である可動部を開弁側に付勢する第1の付勢手段と、前記可動部を閉弁側に付勢する第2の付勢手段とを備え、前記吸気弁又は排気弁をこれら電磁石と付勢手段との協働により電磁的に開閉するようにした電磁駆動吸排気弁装置において、
    前記可動板を一方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きと、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石により前記可動板内に形成される磁束の向きとが互いに逆向きとなるように、前記電磁石のコイルの巻方向が設定され、
    前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に電流を通電することを特徴とする電磁駆動吸排気弁装置。
  3. 前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流を遮断し前記可動板を該電磁石から離間させる際に、前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に通電する電流は、パルス状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁駆動吸排気弁装置。
  4. 前記可動板を他方向側に駆動する電磁石に通電を開始するタイミングは、前記可動板を一方向側に駆動する電磁石の電流の遮断開始タイミングを中心として前後に前記可動板を他方向側に駆動する電磁石の電流立ち上がり時間の幅を有するタイミングであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の電磁駆動吸排気弁装置。
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