JP3626861B2 - ガスタービン燃焼器の冷却構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスタービン燃焼器の冷却構造に関し、燃焼器の壁を二重構造として内部に冷却用の空気や蒸気を流通させて冷却する構造において冷却効率を高めるような構造としたものである。
【0002】
【従来の技術】
図14はガスタービン燃焼器の一般的な構造とその冷却方式を示す図であり、(a),(b)は空気冷却方式を、(c)は蒸気冷却方式を採用した例である。これらの概要を要約して説明すると、図14(a)において100はパイロットノズルでパイロット燃料を噴射し、燃焼させるもの、101はメインノズルであり、アニユラーノズル方式と呼ばれ、パイロット内筒102の周囲に複数本配置され、メイン燃料を噴射し、パイロット内筒102でのパイロット燃料の燃焼によってメイン燃料が点火され、燃焼する。103はメイン内筒、104は接続筒、105は尾筒であり、これらはメイン燃料が燃焼して高温となった燃焼ガスをガスタービンの燃焼ガス通路に導くものである。106は空気バイパス弁であり、低負荷時において余分な圧縮機からの空気をバイパスダクトより尾筒105を通り、ガスタービン燃焼ガス通路に逃すためのものである。このような形式の燃焼器においては尾筒105の壁内部は図15により後述するように空気により冷却するための冷却構造が採用されている。
【0003】
図14(b)の燃焼器はマルチノズル方式と呼ばれ、107はパイロットノズルであり、その周囲には複数のメインノズル108が配置され、内筒109内へメインノズル108からメイン燃料が噴射され、パイロットノズル107からのパイロット燃料の燃焼によってメイン燃料が点火され、燃焼する。110は尾筒であり、106は空気バイパス弁である。このような構造の燃焼器においても尾筒110の壁内部が図15において後述するように空気により冷却される。
【0004】
図14(c)の燃焼器はマルチノズル方式の燃焼器に蒸気冷却方式を採用した例である。図において、111はパイロットノズル、112はその周囲に配列された複数のメインノズルであり、113はスワラーホルダである。114は内筒一体型の尾筒であり、スワラーホルダ113に接続され、高温の燃焼ガスをガスタービンの燃焼ガス通路へ導く。尾筒114には壁内部に冷却用の蒸気通路が多数設けられており、115は蒸気供給通路、116,117は蒸気回収通路である。冷却用の蒸気200は蒸気供給通路115より尾筒114の壁内の通路に供給され、壁内を流れて壁面を冷却し、それぞれ両端側に設けられた蒸気回収通路116,117より蒸気201,202として回収され、蒸気発生源に戻されて有効利用される。
【0005】
図15は前述の図14(a),(b)の燃焼器尾筒105,110の壁の一部を示す斜視図である。図において壁は二重構造となっており、外側板120と内側板123とが接合されて構成されている。外側板120は尾筒の外表面を構成し、多数の断面形状が一定の溝121がほぼ燃焼ガス流れ方向に向かって配列して穿設されており、溝121の開口側が内側板123の接合面で閉じられている。又、外側板120には各溝121に連通する空気吸込穴122がそれぞれ設けられ、この空気吸込穴122は1本の溝121に沿って所定の間隔をおいて設けられている。
【0006】
又、内側板123には空気吐出穴124が開けられている。この空気吐出穴124は、互いに接合する外側板120に穿設された溝121の開口部に連通するように配置され、溝121に沿って2個の空気吸込穴122の中間位置に配置されている。外側板120と内側板123とはハステロイX、トミロイ、SUS材等の耐熱材が用いられ、接合されている。この接合は加熱と加圧によって熱間圧接させる拡散溶接によってなされる。
【0007】
このような壁構造において尾筒の周囲から冷却用の空気300が多数の空気吸込穴122を通り、それぞれ溝121内へ流入し、溝121内を流れて壁面を冷却し、各溝121の空気吐出穴124より空気301として尾筒内に流出する。このような溝121、この溝121に連通する空気吸込穴122及び空気吐出穴124が尾筒の壁全周囲に多数配列して設けられ、外側周囲より空気を吸い込み、壁内部を流れて尾筒全周を冷却し、その空気はそれぞれ空気吐出穴124より尾筒内に流出し、燃焼ガスに混入される。
【0008】
図16は図14(c)に示す蒸気冷却方式の燃焼器の拡大図である。図示のように車室130に取付けられた燃焼器のスワラホルダ113には内筒一体型の尾筒114が連結されており、尾筒114の壁内部には多数の蒸気通路118,119がほぼガス流れ方向に向かって全周に設けられている。各蒸気通路118,119は断面形状一定の通路であり、それぞれ蒸気供給通路115に連通し、蒸気200の一部は供給通路115から多数の蒸気通路118を通ってノズル側に供給され、それぞれ壁を冷却して蒸気回収通路116から回収蒸気201として回収され、又、供給通路115からの残りの蒸気は多数の蒸気通路119を通って後流側に供給され、それぞれ壁を冷却して蒸気回収通路117から回収蒸気202として回収される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように従来のガスタービン燃焼器の冷却構造においては、空気冷却方式、蒸気冷却方式のいずれかにおいても壁内部の溝形状が一定で、かつ直線状に配置されている。そのために短区間の尾筒壁においては均一な冷却が必要な部位で必要冷却範囲をカバーするために相当数の直線状の冷却用溝を必要としている。しかも、冷却区間が短区間であるために冷却媒体の冷却能力を使い切らぬまま排出され、その結果、必要以上の冷却媒体の使用を余儀なくされていた。又、冷却用溝断面が一定形状であるため、冷却媒体の流速、圧力損失、熱伝達率は断面形状に支配されるので、冷却通路の冷却媒体の吸込穴から吐出穴までの冷却条件が断面形状により一義的に決まり、調整ができず最適化を計ることもできなかった。
【0010】
そこで本発明は、燃焼器の壁内部の冷却通路の断面積を変化させ、又その流路長を直線状でなく変化させ、冷却空気や冷却蒸気の供給に合わせた冷却媒体の流速、圧力損失、熱伝達率の調整を可能とし、更に冷却流路長や幅を変化させることにより冷却効果を高めるようにした最適な冷却設計ができるようになり、燃焼器壁の温度分布を改善し、熱応力を軽減して割れ等の不具合が発生しない信頼性を向上するようにしたガスタービン燃焼器の冷却構造を提供することを課題としてなされたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の課題を解決するために次の(1)乃至(5)の手段を提供する。
【0012】
(1)ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は、通路断面の幅が空気の流れ方向に向かってなめらかに変化し、且つ通路断面は前記空気吐出穴に近づくに従って断面形状が拡大すると共にその幅は上記空気吸込穴の位置で最小、上記空気吐出穴の位置で最大となっていることを特徴とするガスタービン燃焼器の冷却構造。
【0013】
(2)上記(1)において、前記通路の所定区間には複数のタービュレータを設けた冷却構造。
【0014】
(3)上記(1)において、前記通路の所定空間の壁面には空気の流れ方向に直交するように複数の凹形状の溝を設けた冷却構造。
【0015】
(4)ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は断面形状が不変の区間と同区間より幅を狭くし断面積を小さくしたオリフィスとを交互に連通させて、前記空気吸込穴の両側部分はオリフィスとし、前記不変の区間に前記空気吐出穴を設けたことを特徴とするガスタービン燃焼器の冷却構造。
【0016】
(5)上記(1),(4)のいずれかにおいて、前記各通路の空気吸込穴及び吐出穴の配列は、通路を流れる空気の流れ方向が隣接する通路の流れ方向と互いに逆方向となるように構成し、上記壁全体において均一な冷却を可能とし、温度分布を均一化し、熱応力発生のアンバランスを解消する冷却構造。
【0017】
本発明は上記(1),(4)を基本的な発明としており、空気冷却方式に適用されるものである。従来の冷却構造においてはその通路形状が均一な断面であり、冷却用空気の流速、圧力損失、熱伝達率は断面形状により一義的に決まっており、温度分布の異る壁面の場所によってこれらの条件を調整することができなかった。本発明の(1)においては、ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は、通路断面の幅が空気の流れ方向に向かってなめらかに変化し、且つ通路断面は前記空気吐出穴に近づくに従って断面形状が拡大すると共にその幅は上記空気吸込穴の位置で最小、上記空気吐出穴の位置で最大となっているので、多数の空気吸込穴より流入した冷却空気は、両側に分かれて流れて壁を冷却し、温度分布の異なる壁面の場所により流速を変化させ、且つ、空気吐出穴に近づくに従って速度を抑え、これにより圧力損失も低下させることができ、冷却条件に合わせて流速、圧力損失、熱伝達率が調整可能となり、これにより最適条件での冷却通路の設計が可能となり温度分布を改善して熱応力を軽減させ、割れ、等の発生を防止することができ、燃焼器の信頼性が向上する。
【0018】
又、(2)や(3)においてはタービュレータや凹みの作用により、冷却空気の流れを攪拌して熱伝達率を一層向上させることができ、(4)ではガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は断面形状が不変の区間と同区間より幅を狭くし断面積を小さくしたオリフィスとを交互に連通させて、前記空気吸込穴の両側部分はオリフィスとし、前記不変の区間に前記空気吐出穴を設けることにより、通路の流路をオリフィス効果により絞ったり、流路を拡大して流速を調整することができる。
即ち、冷却用空気は尾筒の外周囲より空気吸込穴を通り、オリフィスへ流入し、両側に分かれて通路へ入り、それぞれ空気吐出穴に向かって流れ、壁を冷却しながら加熱されて膨張するが、通路の幅は空気吐出穴の近くで拡大し、断面積が増すのでその流速の増大が抑えられ、圧損の上昇が防止され、実施の第1形態と同様の効果が得られる。
【0019】
(5)では隣接する通路では空気の流れが互いに逆方向となっているので、冷却のアンバランスが解消される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明の実施の第1形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図、図2は図1におけるA−A断面図であり、(a)は内部溝の断面形状が一定のもの、(b),(c)はその変形例で内部溝の断面形状を変化させたものをそれぞれ示す。図1に示す壁構造は従来例で説明した図14(a),(b)のガスタービン燃焼器の尾筒105,110の壁として適用され、燃焼器尾筒が空気冷却されるものである。
【0021】
図1において、1は外側板であり、尾筒の外表面を構成している。2は外側板1内部に設けられた溝であり、その断面形状は幅がテーパ状に変化している。このテーパ形状は直線状、あるいはなめらかな曲線で構成される。外側板1には空気吸込穴3が開けられており、内部に設けられた溝2に連通している。4は内側板であり、空気吐出穴5が貫通して開けられており、外側板1下面に接してこれと接合している。これら外側板1、内側板4の材料は従来と同様にハステロイX、トミロイ、SUS材等の耐熱材料からなる。
【0022】
内側板4の空気吐出穴5は外側板1の溝2の開口上に沿って、かつ外側板1の空気吸込穴3の両側に所定のピッチで配置され、溝2に連通するように配置される。溝2の幅は空気吸込穴3から空気吐出穴5へ向かって直線状に拡大しており、空気吸込穴3の位置で最小の幅、空気吐出穴5の位置で最大の幅となっており、この溝2はそれぞれ両穴3,5に連通している。これらの溝2はそれぞれ尾筒の前流側から尾筒のガス出口側端部まで伸び、かつ尾筒の周囲壁内部に所定のピッチで、例えば3.4mmピッチで配置される。
【0023】
図2(a)は図1のA−A断面図であり、外側板1と内側板4との接合部には溝2が一定の高さhで形成されており、深さは一定であるが図1に示すように幅方向には直線状に拡大している。空気吸込穴3は外側板1に開けられ、空気吐出穴5は内側板4に開けられ、これら両穴3,5は溝2に連通して設けられている。又、空気吐出穴5の径は空気吸込穴3の径よりも大きくなっており、溝2の拡大する体積分の流出量を確保するようになっている。具体的寸法の一例としては外側板1の厚さが3.2mm、内側板4の厚さが0.6mm、hが1.6mm程度である。
【0024】
図2(b)は(a)の変形例であり、溝2aの高さを空気吸込穴3から空気吐出穴5へ向かって直線状に狭め、かつ、幅方向には図1に示すようにテーパ状に拡大した例である。又、(c)は(b)の形状とは逆に溝2bの高さを空気吸込穴3で狭くテーパ状に変化させて拡大させ、空気吐出穴5において広くし、かつ図1に示すように幅方向にもテーパ状に拡大した例である。なお、このテーパ状の深さ方向の変化も直線状でも、又なめらかな曲線でも良いものである。
【0025】
このような(b),(c)の例では溝2の形状を3次元的に変化させた例であり、テーパの形状を適切に設定し、溝2内を流れる冷却空気の流速、圧力損失を場所によって調整可能とし、尾筒の温度分布や熱応力の分布状況により、流速や圧力損失を適切な値となるように設定し、設計することができる。これらの溝2,2a,2bの加工はミーリング加工ではむずかしいので放電加工や電解加工で行なわれる。
【0026】
図1,図2に示すように冷却空気300は尾筒周囲の多数の空気吸込穴3より溝2,2a又は2b内に流入し、両側に分かれて流れて壁を冷却し、それぞれ等しい間隔で配置された空気吐出穴5より尾筒内に301のように流出する。空気吸込穴3に流入する空気の温度は350°C〜400°Cであり、壁面を冷却する過程で加熱され、約600°C程度に上昇して尾筒内に流出する。
【0027】
空気吸込穴3より吸い込まれた空気は溝2,2a,2b内を流れる過程において加熱されて膨張し、体積が増加し、従来のような溝形状一定の断面では空気吐出穴で流速が増し、空気の圧損が増加してしまうが、本実施の第1形態のように空気吐出穴5に近づくに従って溝2の断面形状が2次元的又は3次元的に拡大しているので速度を抑え、圧損を少くすることができる。
【0028】
又、本実施の第1形態では空気吸込穴3と空気吐出穴5とを多数設けた構造において溝2,2a,2bの断面形状を2次元的又は3次元的に変化させる例で説明したが、図1,図2に示す断面形状は図14(c)又は図16に示すような空気吸込穴や空気吐出穴がなく、蒸気供給通路115と蒸気回収通路116,117のある蒸気冷却方式の蒸気冷却用溝の断面形状にも同様に適用されるものであり、空気冷却方式と同様の効果が得られるものである。
【0029】
図3は本発明の実施の第2形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造を示し、(a)は溝内にタービュレータを設けた例、(b)は凹みを設けた例である。両図において、符号1乃至5は図1,図2に示す実施の第1形態のものと同じであり、本実施の第2形態においては図3(a)では溝2の内周面に凸形状のタービュレータ6を設け、流れ方向に直交するように多数配列し、冷却空気の流れを攪拌することにより熱伝達率を向上させるものである。又、図3(b)はタービュレータ6の代わりに凹形状の凹み7を多数設けたものであり、(a)は同様に冷却空気の流れを攪拌し、熱伝達率を向上させる効果を有する。なお、これらタービュレータ6や凹み7は溝2の全長でも良く、又部分的に所定区間必要に応じて設けても良い。
【0030】
図4は図3における溝の断面形状を示し、図4(a)は図3(a)におけるB−B断面図、図4(b)は図3(b)におけるC−C断面図である。図4(a)のように溝2の周囲には凸形状のタービュレータ6が形成されており、又図4(b)においては溝2の全周の壁面に凹み7を設けており、このようなタービュレータ6や凹み7を流れ方向と直交するように設けることにより冷却空気の流れが乱流となって熱伝達率が向上する。
【0031】
図1,図2に示す実施の第1形態では空気吸込穴3から空気吐出穴5へ向かって溝2の断面形状が徐々に拡大し、冷却空気の熱膨張による流速の増大を抑え、圧損を小さくするようにしているが、その反面、冷却性能は空気吐出穴5近辺では低下することになる。本実施の第2形態においてはタービュレータ6や凹み7を設けることにより熱伝達率を向上させ、この分の冷却性能の低下分を補うことができる。なお、実施の第2形態の構造はもちろん図16に示す蒸気冷却方式の溝に適用することができるものである。
【0032】
図5は本発明の実施の第3形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図である。図において外側板1には従来と同じ空気吸込穴3が開けられている。内部には溝12が加工されているが、この溝12は断面形状が一定の溝であり、空気吸込穴3の前後両側部分には所定の長さだけ幅を狭くしたオリフィス12aとしている。内側板4には従来と同様に空気吐出穴5が開けられている。
【0033】
このような構造の実施の第3形態においては、冷却用空気は尾筒の外周囲より空気吸込穴3を通り、オリフィス12aへ流入し、両側に分かれて溝12へ入り、それぞれ空気吐出穴5に向かって流れ、壁を冷却しながら加熱されて膨張するが、溝12の幅は空気吐出穴5の近くで拡大し、断面積が増すのでその流速の増大が抑えられ、圧損の上昇が防止され、実施の第1形態と同様の効果が得られる。
【0034】
なお、図5における実施の第3形態においては溝12の断面形状が一定として説明したが溝12の深さ方向を空気吐出穴5に向かって徐々に拡大させるようにして2次元的に変化させても良く、又、溝12の部分にタービュレータや凹みを設けるようにすればより熱伝達率が向上し、冷却性能を良くすることができる。又、もちろん図16に示す蒸気冷却方式の溝形状に適用され、同様の効果を奏するものである。
【0035】
図6は本発明の実施の第4形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の断面図であり、(a)は空気吐出穴を斜めに設けた例、(b)は空気吐出穴出口部にカバーを設けた例である。図6(a)では図1,図2に示す実施の第1,第2形態、図5に示す実施の第3形態と異なる部分は空気吐出穴を燃焼ガス流れ方向Gの方向に傾斜させた空気吐出穴15とした構造であり、その他の部分は図1,図2,図5と同じである。
【0036】
このような構造により、冷却空気300は尾筒の周囲より空気吸込穴3から溝2又は12内に流入し壁を冷却して空気吐出穴15より斜め方向に尾筒内に流出するが、内側板4に沿って燃焼ガス流れ方向Gに流出するので空気吐出穴15近辺の壁面を冷却しながら流出し、冷却効果を増大させる。
【0037】
図6(b)は空気吐出穴15のような傾斜した穴の代わりに、空気吐出穴は図1,図2,図5のように空気吐出穴5のままとし、出口部にカバー8を設けたものである。その他の構造は図1,図2,図5に示すものと同じである。このような構造においても空気吐出穴5から尾筒内に流出する空気は内側板4に沿って燃焼ガス流れ方向Gに流出するので図6(a)と同様の効果が得られ、冷却効果が増す。
【0038】
図7は本発明の実施の参考としての第1の検討例に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図、図8はその斜視図である。両図において、外側板1には空気吸込穴3が明けられ、その内部に溝9が加工されている。又、内側板4には空気吐出穴5又は15が明けられている。溝9は図示のようにS字状に蛇行して波形に設けられており、空気吸込穴3と空気吐出穴5又は15とがそれぞれ連通し、空気吸込穴3の両側にそれぞれ空気吐出穴5又は15が等間隔に配置されている。
【0039】
上記構成の実施の第1の検討例においては、尾筒の外周囲より冷却用空気が空気吸込穴を通って溝9内に流入し、S字状に蛇行して流れて壁を冷却し、空気吐出穴5又は15より尾筒内に流出するが、溝9が波形であるので、特に短い区間等ではその流路長が直線形状の溝よりも長くなり、冷却流路長を長くすることができる。これにより最小限の冷却空気で必要な冷却効果を得るような設計が可能となり、温度分布、冷却流路長に合わせて冷却空気の流速、圧力損失、熱伝達率の調整を行い、熱応力を軽減して割れ等を防ぎ、信頼性を向上することができる。
【0040】
なお、図7,図8に示す溝9には図3に示すタービュレータ6や凹み7を設けることもでき、又、図5に示すオリフィスを空気吸込口の両側の所定区間に設けたり、あるいは必要に応じて図1に示すような2次元的、又は3次元的な断面形状の変化を設けることも可能である。又、この溝9の形状はもちろん図16に示す蒸気冷却方式の蒸気通路に用いることもでき、同様の効果が得られるものである。
【0041】
図9は本発明の実施の第5形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図で、(a)は直線状の溝の例、(b)は波形の溝の例をそれぞれ示す。図9(a)は図1に示す構造において、空気吸込穴3と空気吐出穴5とを互いに隣接する溝2間で配置を互いに前後逆にして溝2内を流れる冷却空気300の流れ方向が互いに隣接する溝2において逆になるようにしたものである。
【0042】
又、図9(b)においても空気吸込穴3と空気吐出穴5とを隣接する溝9間で互いに前後逆に配置して隣接する溝9において冷却空気の流れ方向が互いに逆となるようにしている。なお、図示省略しているが、図5に示す構造においても同様に冷却空気を流すことができる。又、図2に示すタービュレータ6や凹み7を設けても良く、又空気吐出穴は図6に示すような空気吐出穴15やカバー8を適用することができる。
【0043】
上記構成の実施の第5形態においては、冷却空気300が壁内部で互いに隣接する溝において互いに逆方向に流れるので壁全体において均一な冷却が可能となり、尾筒の冷却による温度分布を均一化し、熱応力の発生のアンバランスが解消される。なお、このような図9に示す冷却構造は当然図16に示す蒸気冷却方式における蒸気通路に適用でき、互いに隣接する蒸気通路において冷却用蒸気を互いに逆方向に流し、冷却のアンバランスを解消することができるものである。
【0044】
図10は本発明の実施の第6形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図で、(a)は壁の接続部に空気吐出穴を構成した例、(b)は壁の接続部に空気吸込穴を構成した例である。これらの接続部の冷却構造は前述の実施の第1〜第5形態及び第1の検討例の冷却構造における壁の溶接接続部のすべてに適用できるものである。
【0045】
図10(a)において、20は接続部であり、尾筒を構成する壁の接続部となり、溶接接続されて尾筒を形成する。外側板1は溝2が形成され、溝2に沿って空気吸込穴3が所定のピッチで設けられ、又外側板1に接する内側板4には空気吐出穴5が空気吸込穴3の両側に所定の間隔で配置されている。従って接続部20においては必ずしもこれら穴3,5の配置が端部に所定の寸法で配置されるとは限らない。
【0046】
上記状況より、図10(a)に示すように壁の接続部20の端部で溝2に連通し、かつ外側板1と内側板4とを貫通する貫通穴10を穿設する。貫通穴10には空気吸込穴3より冷却用空気300が流入するので、この空気を尾筒内に流出させるために外側板1の外側より貫通穴10へ蓋11を挿入し、外側を閉じて空気は反対側の内側板4側へ流出させ、端部において空気を尾筒内へ流出させる。
【0047】
図11(a)は図10(a)におけるD−D断面図の一部を示し、外側板1及び内側板4には貫通穴10が穿設されており、この貫通穴10の外側板1には蓋11が挿入され、溝2内を流れてきた冷却用空気は内側板4側、即ち、尾筒内部へ301として流出するようにしている。
【0048】
図10(b)においては接続部20端部には同様に貫通穴10が設けられている。これら貫通穴10は溝2に連通しており、貫通穴10の上流側は空気吐出穴5となっており、空気をこの上流側の空気吐出穴5から尾筒内に流出するように流す必要がある。従って貫通穴10には内側板4側から蓋11が挿入され、端部においては貫通穴10を通り、外側板1の尾筒外周より空気が溝2内へ流入し、上流側の空気吐出穴5から尾筒内に流出させることができる。
【0049】
図11(b)は図10(b)におけるE−E断面図であり、外側板1と内側板4とには貫通穴10が穿設され、貫通穴10には内側板4側から蓋11が挿入され、貫通穴10へは尾筒外周より空気300が流入し、溝2内へ流れるようにしている。
【0050】
上記に説明の実施の第6形態の接続部の構造をガスタービン燃焼器の空気冷却構造に採用することにより、尾筒の壁の接続部において端部の溝内すべてに冷却空気を流し、接続部20の壁を均一に冷却することができる。
【0051】
図12は本発明の実施の参考としての第2の検討例に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁接続部の平面図であり、蒸気冷却方式の尾筒に適用される例である。図において、20は外側板1の接続部であり、溶接により接続され、尾筒が構成される。外側板1内部には蒸気通路118,119が多数加工されており、これら蒸気通路118,119は図16で説明したように蒸気供給通路115から蒸気200が供給されている。蒸気通路118,119を通って壁を冷却し、加熱された蒸気は蒸気回収通路201,202に集まり、回収されるようになっている。従って、これら蒸気通路118,119は接続部20においても後流側の通路(図示省略)と連通する必要があり、このために接続部20においては接続部溝21が形成されており、各蒸気通路118,119はこの接続部溝21に接続されている。
【0052】
図13は図12における溝の断面図で、(a)はF−F断面図、(b)はG−G断面図である。これら図において、外側板1の接続部には所定の間隔をおいて接続部溝21が形成され、これに接合される内側板4は接続部20で溶接されている。外側板1側からは接続部溝21に蓋16が挿入され溝内を閉じて蒸気溜まりが形成される。又、接続溝21には多数の蒸気通路118,119が連通し、流れてきた蒸気が接続溝21内に流入し、ここから隣接する壁内の蒸気通路(図示省略)に蒸気を供給し、又は回収されるようになっている。
【0053】
上記構造の実施の参考としての第2の検討例における接続部は、実施の第1〜第3,第5の形態及び第1の検討例の溝断面形状、溝配置を用いた蒸気冷却方式のガスタービン燃焼器の冷却構造の壁接続部に適用できるものであり、蒸気通路の接続部での構造を簡単な構成で実現できるものである。
【0054】
【発明の効果】
本発明のガスタービン燃焼器の冷却構造は、(1)ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は、通路断面の幅が空気の流れ方向に向かってなめらかに変化し、且つ通路断面は前記空気吐出穴に近づくに従って断面形状が拡大すると共にその幅は上記空気吸込穴の位置で最小、上記空気吐出穴の位置で最大となっていることを基本的な構成としている。
このような構成により冷却用空気の通路内での流速、圧力損失、熱伝達率を変化させて調整することができ、これにより最適条件での冷却通路の設計が可能となり壁面の場所により異なる温度分布を改善して熱応力を軽減させ、壁の割れ等の損傷を防止し、信頼性を著しく向上することができる。
又、(2)や(3)においてはタービュレータや凹みの作用により、冷却空気の流れを攪拌して熱伝達率を一層向上させることができる。
【0055】
本発明の(4)は、ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は断面形状が不変の区間と同区間より幅を狭くし断面積を小さくしたオリフィスとを交互に連通させて、前記空気吸込穴の両側部分はオリフィスとし、前記不変の区間に前記空気吐出穴を設けたことを基本的な構成としている。
このような構成により、通路の流路をオリフィス効果により絞ったり、流路を拡大して流速を調整することができる。
【0056】
(5)では隣接する通路では空気の流れが互いに逆方向となっているので、冷却のアンバランスが解消される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図であり、(a)は溝断面の深さ一定、(b)は深さが空気吐出穴へ向かって減少、(c)は深さが空気吐出穴に向かって拡大した例をそれぞれ示す。
【図3】本発明の実施の第2形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図で、(a)は溝内にタービュレータを設けた例、(b)は凹みを設けた例である。
【図4】図3における溝の断面形状を示し、(a)は図4(a)におけるB−B断面図、(b)は図4(b)におけるC−C断面図である。
【図5】本発明の実施の第3形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の第4形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の溝断面図を示し、(a)は空気吐出穴を斜めに設けた例、(b)は空気吐出穴出口にカバーを設けた例である。
【図7】本発明の実施の参考としての第1の検討例に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図である。
【図8】図7に示す冷却構造の斜視図である。
【図9】本発明の実施の第5形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁の一部を示す平面図で、(a)は直線状の溝、(b)は波形状の溝をそれぞれ示す。
【図10】本発明の実施の第6形態に係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁接続部の一部を示す平面図で、(a)は空気吐出穴を設けた例、(b)は空気吸込穴を設けた例をそれぞれ示す。
【図11】図10における断面図であり、(a)は図10(a)におけるD−D断面図、(b)は図10(b)におけるE−E断面図である。
【図12】本発明の実施の参考としての第2の検討例係るガスタービン燃焼器の冷却構造の壁接続部の一部を示す平面図である。
【図13】図12における断面を示し、(a)はF−F断面図、(b)はG−G断面図である。
【図14】ガスタービン燃焼器の一般的な構成図であり、(a),(b)は空気冷却方式を、(c)は蒸気冷却方式を採用した例をそれぞれ示す。
【図15】従来の空気冷却方式のガスタービン燃焼器の壁構造の斜視図である。
【図16】従来の蒸気冷却方式を採用したガスタービン燃焼器の側面図である。
【符号の説明】
1 外側板
2,2a,2b,9,12 溝
3 空気吸込穴
4 内側板
5,15 空気吐出穴
6 タービュレータ
7 凹み
8 カバー
10 貫通穴
11,16 蓋
12a オリフィス
20 接続部
21 接続部溝
Claims (5)
- ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は、通路断面の幅が空気の流れ方向に向かってなめらかに変化し、且つ通路断面は前記空気吐出穴に近づくに従って断面形状が拡大すると共にその幅は上記空気吸込穴の位置で最小、上記空気吐出穴の位置で最大となっていることを特徴とするガスタービン燃焼器の冷却構造。
- 前記通路の所定区間には複数のタービュレータを設けたことを特徴とする請求項1記載のガスタービン燃焼器の冷却構造。
- 前記通路の所定空間の壁面には空気の流れ方向に直交するように複数の凹形状の溝を設けたことを特徴とする請求項1記載のガスタービン燃焼器の冷却構造。
- ガスタービン燃焼器の壁内部に冷却用空気の通路を燃焼ガス流れ方向に複数列設け、同各通路には多数の空気吸込穴と同空気吸込穴より径の大きい多数の空気吐出穴とを順次所定の間隔で配列して連通させ、同空気吸込穴より同通路内に冷却用空気を流して同空気吐出穴より燃焼器内部へ流出させる空気冷却構造において、前記通路の空気吸込穴と空気吐出穴との区間は断面形状が不変の区間と同区間より幅を狭くし断面積を小さくしたオリフィスとを交互に連通させて、前記空気吸込穴の両側部分はオリフィスとし、前記不変の区間に前記空気吐出穴を設けたことを特徴とするガスタービン燃焼器の冷却構造。
- 前記各通路の空気吸込穴及び吐出穴の配列は、通路を流れる空気の流れ方向が隣接する通路の流れ方向と互いに逆方向となるように構成し、上記壁全体において均一な冷却を可能とし、温度分布を均一化し、熱応力発生のアンバランスを解消することを特徴とする請求項1,4のいずれかに記載のガスタービン燃焼器の冷却構造。
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