JP3626713B2 - アタッチメントスイング装置およびそれを備えた建設機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、上部旋回体に装備される作業アタッチメントを左右方向に回動させることができるアタッチメントスイング装置及びそれを備えた建設機械に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のアタッチメントスイング機能を備えた油圧ショベルの構成を図7に示す。
【0003】
同図において、上部旋回体50の前部に上下方向及び左右方向に揺動する作業アタッチメント51が備えられている。この作業アタッチメント51は、ブーム52,アーム53及びバケット54から構成され、ブーム52の基部52aは、旋回フレームに固定されているフロントブラケット55に対し垂直軸まわりに回動できるように連結されたスイングブラケット56に支持されている。
【0004】
このスイングブラケット56の側方にはアーム部56aが突設されており、このアーム部56aに、スイングシリンダのロッド57の先端部が連結されている。従って、スイングシリンダを伸縮させると、作業アタッチメント51が矢印A方向またはB方向にスイングし、例えば壁際での側溝掘削をスムーズに行うことができる。
【0005】
このアタッチメントスイング機能は側溝掘削に限らず、建物を解体する場合にも使用されている。例えば、側壁に沿ってその壁面をはつるような場合、ブームを側壁側にスイングさせた状態で作業アタッチメント51を操作し、側壁のはつりが行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような解体作業にはパワーが要求されるが、比較的大型の油圧ショベルにはアタッチメントスイング機能を搭載していないことが多い。そこで既存の油圧ショベルにアタッチメントスイング機能を搭載することが検討されているが、上部旋回体を大幅に改造しなければならず、多大な時間とコストが費やされるという問題がある。
【0007】
具体的には、アタッチメントスイング機能を付加しようとすると、旋回フレーム右側に配置されている機器類を取り外し、旋回フレームの一部を切断して旋回フレームをかさ上げし、かさ上げによって形成された空間にスイングブラケットを回動させるスイングシリンダを収納することになる。
【0008】
本発明は以上のような既存の油圧ショベルにアタッチメントスイング機能を付加する場合における課題を考慮してなされたものであり、旋回フレームを改造することなく、簡便にアタッチメントスイング機能を付加することができるアタッチメントスイング装置及びそれを備えた建設機械を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るアタッチメントスイング装置は、下部走行体上に上部旋回体を旋回自在に搭載し、その上部旋回体にブーム及びブームシリンダを含む作業アタッチメントを備えた建設機械に取り付けられるアタッチメントスイング装置であって、このアタッチメントスイング装置が、上記上部旋回体の旋回フレーム前端部に設けられ、上記作業アタッチメントを取り外した後の上記旋回フレームに残されているブーム取付部及びブームシリンダ取付部に接続し得る接続部を有する接続用ブラケットと、この接続用ブラケットの前端部に対し垂直軸まわりに回動可能に連結されるスイングブラケットと、上記スイングブラケットと上記接続用ブラケットとに架設されるシリンダと、を備えてなることを要旨とする。
【0010】
本発明のアタッチメントスイング装置に従えば、旋回フレームから作業アタッチメントを取り外し、旋回フレームに残されたブーム取付部及びブームシリンダ取付部に、垂直軸まわりに回動可能なスイングブラケット及びそのスイングブラケットを回動させるシリンダを一体に備えた接続用ブラケットを取り付け、上記スイングブラケットに作業アタッチメントを取り付けることができるように構成したため、上部旋回体を何ら改造することなく既存の建設機械に対しアタッチメントスイング機能を簡便に付加することができる。
【0011】
上記アタッチメントスイング装置は、建設機械に対して着脱自在に構成することが好ましい。また、上記シリンダは、垂直軸の左右両側に配置される2本のシリンダから構成することが好ましい。
【0012】
このようにスイングブラケットの回動動作を二本のシリンダで分担すると、シリンダの押し力と引き力を同じにすることができ、一本のシリンダでスイングブラケットを回動する場合のようにトルク差(ロッドを伸長させるときの最大トルクとロッドを縮小させるときの最小トルクとの差)が大きくなることを解消することができる。
【0013】
それにより、作業アタッチメントを例えば側壁に押し付けながらはつり作業を行う場合に、作業アタッチメントを左右どちらにスイングさせても同じ押し付け力を得ることができるようになる。また、1本シリンダ構成のように最大トルクに合わせて機体の剛性を高める必要もなくなる。
【0014】
また、上記シリンダの少なくとも上面にカバーを付設すれば、上部旋回体のカバー外である接続用ブラケット上にシリンダを配置してもシリンダに土砂等が付着せず、安定したアタッチメントスイング動作を得ることができる。
【0015】
本発明に係る建設機械は、上記アタッチメントスイング装置を備える建設機械であって、上記アタッチメントスイング装置のスイングブラケットに上記作業アタッチメントが取り付けられ、上記接続用ブラケットが上記ブーム取付部及びブームシリンダ取付部に接続されていることを要旨とする。
【0016】
本発明の建設機械に従えば、既存の建設機械に対しアタッチメントスイング機能を簡便に付加することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る建設機械としての油圧ショベルの一実施形態を示したものである。
【0019】
同図において、油圧ショベル1は、クローラ2aを装着した下部走行体2上に上部旋回体3を旋回自在に搭載している。
【0020】
この上部旋回体3の前部左側にはキャビン4、後部にはエンジンルーム5がそれぞれ配置され、前部中央から前方に向けて旋回フレーム(図示しない)から接続用ブラケット6が突出している。
【0021】
この接続用ブラケット6に対し、垂直軸まわりに回転できるようにスイングブラケット7が連結されており、このスイングブラケット7に作業アタッチメント8が取り付けられている。
【0022】
作業アタッチメント8は、ブーム9と、そのブーム9の先端部に接続されるアーム10と、そのアーム10の先端部に接続されるバケット11とから構成される。
【0023】
ブーム9の先端側下部9aとスイングブラケット7のブームシリンダ取付部7aにブームシリンダ12が架設されており、その伸縮動作によってブーム9が起伏するようになっている。
【0024】
また、アーム10の後端部10aとブーム後端側上部9aにアームシリンダ13が架設されており、その伸縮動作によってアーム10を前後方向に揺動させるようになっている。
【0025】
また、バケット11とアーム後端側上部10bとにバケットシリンダ14が架設されており、その伸縮動作によってバケット11を前後方向に揺動させるようになっている。
【0026】
図2は、上記接続用ブラケット6に連結されたスイングブラケット7を揺動させるアタッチメントスイング装置の構成を拡大して示したものである。
【0027】
同図において、接続用ブラケット6は、旋回フレームの前端部に設けられているブーム取付部(図示しない)に連結し得る第1ボス(連結部)6aと、同じく旋回フレームの前端部に設けられているブームシリンダ取付部に連結し得る第2ボス(連結部)6bとを備えている。
【0028】
6cは接続用ブラケット6を構成している三角形状の縦板であり、その後端部に上記第1ボス6aが配置され、その下部にリブ板6dを介して上記第2ボス6bが配置されている。
【0029】
縦板6cの周縁部には板状のフレーム6e及び6fが周設されており、このフレーム6e,6fと縦板6cとはH字状に組み立てられている。
【0030】
フレーム6eの縦板部6e′にはコ字状の連結部6gが溶接されている。この連結部6gにおける上板6h先端部には上側ボス6h′、下板6i先端部には下側ボス6i′がそれぞれ形成され、両ボス6h′及び6i′は同軸上(回転軸R.A上)に配置されている。
【0031】
また、上板6hと下板6iとを挟み込むようにしてスイングブラケット7の連結部7bが係合される。
【0032】
この連結部7bは、底板7cと、その底板7cから立ち上げられ接続用ブラケット6側に向けて鉤状に折り曲げられた縦板7dと、その縦板7dから接続用ブラケット6側に向けて平行して延設され、上板6hと下板6iの間に挿入される中板7e及び中板7fとを有している。
【0033】
縦板7dにおける折曲部7d′と上板6hと中板7eとは、第1の連結ピン15を介して連結され、また、中板7fと下板6iと底板7cとは、第2の連結ピン16を介して連結されている。なお、17及び18は、連結ピン15,16の抜けを防止するためのボルトであり、連結ピン15,16を貫通して中板7f及び7fにそれぞれ固定されるようになっている。
【0034】
上記連結ピン15及び16によって連結されたスイングブラケット7は、回転軸R.Aまわりに左右(車体幅方向)に回動することができる。
【0035】
また、縦板7d前面の左右両側にはブーム9の基端部を連結するためのボス部7gを有する縦板7h,7h(手前側のみ図示)がそれぞれ形成され、また、底板7c上面の中央にはブームシリンダ12のボトム側ブッシュを連結するためのボス部7iを備えた一対のブームシリンダ取付部7aが形成されている。
【0036】
さらに、各縦板7hの上部には当て板7jを介して一対の取付板7k,7lが取り付けられている。この取付板7k,7lの間に、スイングブラケット7を揺動させるスイングシリンダ19のロッド側ブッシュ19aが挿入され、ピン20を用いて連結される。
【0037】
一方、スイングシリンダ19のヘッド側ブッシュ19bは、接続用ブラケット6におけるフレーム6e後部の上面に設けられた一対の取付板6j及び6kの間に挿入され、ピン21を用いて連結される。
【0038】
図3は図2の平面図を示したものである。
【0039】
図3に示すように、接続用ブラケット6のフレーム6e上にはスイングシリンダ19と左右略対称の位置に別のスイングシリンダ22が配置されている。
【0040】
このスイングシリンダ22もまた接続用ブラケット6及びスイングブラケット7間に架設されており、その連結構造は上記したスイングシリンダ19と同様である。
【0041】
ただし、取付板7k´は上記した取付板7kよりも後方に長く延設されている。
【0042】
これは、図4に示すように、スイングシリンダ22の伸縮量をスイングシリンダ19のそれよりも大きくし、作業アタッチメント8を左方向よりも右方向に大きくスイングさせるためである。なお、本実施形態では左方向回転角を50°、右方向回転角を80°に設定している。
【0043】
また、図3において、スイングシリンダ19及び22は、カバー23及び24によってそれぞれ保護されており、その断面構成を図3のD−D断面図である図5に示す。
【0044】
図3及び図5の両図において、カバー23及び24は基本的に同じ構成からなり、左右対称に配置されている。
【0045】
カバー23を代表して説明すると、スイングシリンダのチューブ外周面に二つ割りの止め金具25が巻き付けられボルトナット26で固定される。この止め金具25の一部に雌ねじ部を備えた軸体27が突設されており、この軸体27を通してカバー23が装着され、スプリングワッシャ28及びナット29でカバー23を押えている。
【0046】
カバー23にはシリンダ伸縮方向に長孔23aが形成されており、スイングシリンダ19が伸長するときは上記軸体27を摺動しながら移動することができるようになっている。なお、カバー23の前側端部は連結ピン15の鍔部に固定されている。
【0047】
ここで、1本のスイングシリンダでスイングブラケットを揺動させる図6に示す従来構成と2本のスイングシリンダを用いた本実施形態についてトルクを比較する。
【0048】
同図において、40はスイングブラケット、41は旋回フレームから延設されたブラケット、42はスイングシリンダである。
【0049】
スイングブラケットの回転中心をR,スイングシリンダ42のロッドピン中心をP1,スイングシリンダ42のボトムピン中心をCとする。
【0050】
スイングシリンダ42のヘッド側に圧油を導入すると、スイングブラケット40は回転中心Rを軸として左方向に回転し、ロッドピン中心P1はP2位置まで半径rの円弧で50°回転する。
【0051】
これとは逆に、スイングシリンダ42のロッド側に圧油を導入すると、スイングブラケット40は回転中心Rを軸として右方向に回転し、ロッドピン中心はP3位置まで80°回転する。
【0052】
スイングブラケット40の揺動においてスイングブラケット40を回転させるアームの長さは最大で半径rとなり、アームの最小長さはP2とP3とを結ぶ線分と回転中心Rとの垂直距離r´となる。この距離r´は、
r×sin25°=0.423rとなる。
【0053】
仮にスイングシリンダ42のヘッド側面積とロッド側面積が2:1であるとすると、最大トルクは2rとなり、最小トルクは0.423rとなる。
【0054】
従って、1本のスイングシリンダでは最大トルクを基準としてそれに耐えるように上部旋回体の剛性を高めなければならず、その結果、必要以上の補強部材が使用されることになり重量の増加に加えてコストアップが避けられなかった。
【0055】
これに対し、本実施形態のように、接続用ブラケット6上に2本のスイングシリンダ19,22を配置したものでは、作業アタッチメント8を右側に振る場合には、左側のスイングシリンダ19のヘッド側に圧油を導入しつつ右側のスイングシリンダ22のロッド側に圧油を導入すればよく、また、作業アタッチメント8を左側に振る場合には、右側のスイングシリンダ22のヘッド側に圧油を導入しつつ左側のスイングシリンダ19のロッド側に圧油を導入すればよい。
【0056】
このようにスイング動作を2本のシリンダで分担することにより、最大トルクと最小トルクの差を小さくすることができる。トルク差が小さければ最大トルクに合わせて剛性を高める必要がなく、既存の油圧ショベルを改造する必要がないという利点がある。
【0057】
しかしながら、スイング動作を2本のスイングシリンダで分担するにあたり、キャビン4と右側カバー3aに挟まれた接続用ブラケット6上の狭い空間にスイングシリンダ19,22を配置する(図4参照)本実施形態の構成では、従来構成のようにアーム長さ(半径r)を大きく取れない不利がある(図6参照)。
【0058】
アーム長さが例えば0.5rしか取れなければ、シリンダの面積を2倍にしなければならない。そこで、スイングシリンダ19,22のロッド側面積を例えばシリンダに要求される圧力等に基づいて0.667、ヘッド側の面積を1.333に設定すると、最大トルクは、0.5r×(0.667+1.333)=1.0rとなり、アーム長さを大きく取れない点を解消することができる。また、作業アタッチメントを左右いずれの方向にスイングさせても略同じ押し力が得られる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1及び2の本発明によれば、上部旋回体を一切、改造することなく既存の建設機械に対し作業アタッチメントを左右方向に回動させるスイング機能を付加することができる。
【0060】
請求項3の本発明によれば、アタッチメントスイング動作を2本のシリンダで分担するように構成したため、作業アタッチメントを備えたスイングブラケットを左右にスイングさせるときのシリンダの押し力と引き力が同じとなり、一本のシリンダで押し引きする場合と比較して最大トルクと最小トルクの差を小さくすることができる。それにより、作業アタッチメントを左右どちらにスイングさせても略同じパワーで作業を行うことができるようになり、且つ剛性を高めるための改造が不要になる。
【0061】
請求項4の本発明によれば、上記シリンダの少なくとも上面にカバーを付設したため、シリンダを上部旋回体のカバー外に配置してもシリンダの摺動部分に土砂等が付着せず、作業アタッチメントを安定してスイングさせることができる。
【0062】
請求項5の本発明によれば、既存の建設機械に対し作業アタッチメントを左右方向に回動させるスイング機能を簡便に付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスイング機能付き油圧ショベルの全体図である。
【図2】図1のスイングブラケット部分の拡大図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】作業アタッチメントのスイング動作を説明する平面図である。
【図5】スイングシリンダのカバー断面を示す図3のC−C矢視図である。
【図6】従来の1本スイングシリンダによる動作を説明する説明図である。
【図7】従来のスイング機能付き油圧ショベルの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 キャビン
5 エンジンルーム
6 接続用ブラケット
6g 連結部
7 スイングブラケット
7a ブームシリンダ取付部
7b 連結部
8 作業アタッチメント
9 ブーム
10 アーム
11 バケット
12 ブームシリンダ
13 アームシリンダ
14 バケットシリンダ
15,16 連結ピン
19,22 スイングシリンダ
23,24 カバー
Claims (5)
- 下部走行体上に上部旋回体を旋回自在に搭載し、その上部旋回体にブーム及びブームシリンダを含む作業アタッチメントを備えた建設機械に取り付けられるアタッチメントスイング装置であって、
上記上部旋回体の旋回フレーム前端部に設けられ、上記作業アタッチメントを取り外した後の上記旋回フレームに残されているブーム取付部及びブームシリンダ取付部に接続し得る接続部を有する接続用ブラケットと、
この接続用ブラケットの前端部に対し垂直軸まわりに回動可能に連結されるスイングブラケットと、
上記スイングブラケットと上記接続用ブラケットとに架設されるシリンダと、を備えてなることを特徴とするアタッチメントスイング装置。 - 上記アタッチメントスイング装置が、上記建設機械に対して着脱自在に構成されている請求項1記載のアタッチメントスイング装置。
- 上記シリンダが、上記垂直軸の左右両側に配置される2本のシリンダからなる請求項1または2記載のアタッチメントスイング装置。
- 上記シリンダの少なくとも上面にカバーが付設されている請求項1〜3のいずれかに記載のアタッチメントスイング装置。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアタッチメントスイング装置を備える建設機械であって、上記アタッチメントスイング装置のスイングブラケットに上記作業アタッチメントが取り付けられ、上記接続用ブラケットが上記ブーム取付部及びブームシリンダ取付部に接続されていることを特徴とする建設機械。
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