JP3626431B2 - マグネットスクリュー式濾過機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、螺旋状に配置された磁石の作用で、工作機械等で使用された切削油や研削油等のクーラントを濾過してクーラントに含まれる切屑を除去し、クーラントを再使用可能に再生するマグネットスクリュー式濾過機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工作機械等で使用された切削油は、切屑や異物(スラッジ)を含んでダーティ液となっており、このダーティ液を再使用するため、通常、濾過装置にてスラッジを取り除くことが行われている。ダーティ液を濾過装置で処理することによってスラッジが取り除かれたダーティ液は、再使用可能なクリーン液に再生され、工作機械に戻されて使用される。
【0003】
このようなダーティ液の濾過装置の一つとして、従来、フェライトマグネットを使用し切屑を磁力で濾過するマグネットスクリュー式濾過機がある。マグネットスクリュー式濾過機の一例が、図3〜図5に示されている。図3はマグネットスクリュー式濾過機の一例を示す側面断面図、図4は図3に示すマグネットスクリュー式濾過機のB−B断面図、図5は図3に示すマグネットスクリュー式濾過機による切屑の搬送状態を示す説明図である。
【0004】
図3及び図4に示すマグネットスクリュー式濾過機は、先端側の端部を端板2でまた基端側の端部を端板3で閉鎖したステンレス材から成る長尺な筒体1を有している。マグネットスクリュー式濾過機は、筒体1の基端部を上方の固定台12に取り付けることによって非回転状態に据え付け、筒体1の下方に位置した先端部をクーラントタンク10内に貯留されたダーティ液11に浸漬した傾斜状態で用いられる。筒体1の外面は、滑らかな円筒面に形成されており、内部に配置された後述するマグネット部によって切屑13を磁気的に吸引し筒体1の外面に付着しながら運び上げる搬送面となっている。
【0005】
筒体1の内部は中空となっており、当該内部には、磁気的に吸引した切屑13を筒体1の外面に付着しながら運び上げるためのマグネット部が配設されている。即ち、マグネット部は、外周面4上に磁石5,6を螺旋状に配置した磁石支持体7と、磁石支持体7を取り付け且つ筒体1に回転自在に支持されている回転軸8とで構成されている。磁石5,6は、それぞれ、外側面をN極、S極とした磁石であり、螺旋状の列方向に極性を交互にした状態で並べられており、磁石5,6の磁極の端面の高さは筒体1の内面に近接してその内面との間に僅かの隙間を形成する高さとなっている。磁石の極性を螺旋に沿って交互に変えているので、隣り合う磁石5,6間で筒体1を貫いて延びる磁力線が切屑13を効率良く吸引し、且つ吸引した切屑13を筒体1の外面上に確実に捕らえることが可能である。列方向に隣り合う磁石5,6の間には、N極からS極に至る磁力線の一部が筒体1を貫通して筒体1の外側に広がって延びており、この磁力線によって、クーラントタンク10内の切屑13を吸引して筒体1の外面に付着させることが可能である。
【0006】
磁石5,6から成る螺旋状の磁石列は、基端部では、外側面が同じ極性(実施例ではS極)となった2つの磁石が並べて配置され、更にそれに続く最端部では外側面が同じ極性(実施例ではN極)となって磁石支持体7の外周面4を囲む環状磁石帯となっており、筒体1の外面に付着された状態で搬送されてくる切屑13を集積させる働きをする。集積された切屑13は、適宜の手段によって筒体1から取り除かれて、マグネットスクリュー式濾過機の外部に搬出される。
【0007】
磁石支持体7は、筒体1の内部の軸方向長さの殆どに渡って延びており、筒体1のその中心軸線に沿って設けられている回転軸8に一体的に取り付けられている断面円形の軸体である。回転軸8は、その先端側の端部8Aにおいて端板2に回転自在に支持され、基端側の端部8Bにおいて端板3に回転自在に支持されている。端部8Bは、端板3を貫通して電動モータ9と接続されて動力が伝達される。回転軸8が回転されると、磁石支持体7の外表面4に取り付けられた磁石5,6も回転し、磁石支持体7の回転方向を図4に示す方向とすることにより、磁石5,6に遅れ気味に追従する切屑13は、図5に模式的に示すように、傾斜上方の磁石6,5側に引き寄せられることで、次第に、筒体1の外面上を基端部側に向かって搬送される。磁石支持体7が筒体1の内部の軸方向長さの殆どに渡って延びており、螺旋状の磁石列も磁石支持体7の全長に渡って設けられているので、筒体1の長手方向の先端から基端までの殆どの範囲に渡って切屑13を搬送可能である。螺旋状の磁石列が、その磁気作用によって切屑13を長手方向に搬送しているので、あたかも、磁石列がコンベヤスクリューの働きをしているように捉えることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のマグネットスクリュー式濾過機に設けられる磁石は、すべて同じ素材の磁石、例えば、フェライト系磁石とされている。しかしながら、この磁石は、搬送用の磁石としては適しているが、磁力が強力でないので、切屑を吸引し損ねて取り逃がすものが多いという問題がある。そのため、クーラントタンクから浄化液を工作機械等へ戻すためのポンプに詰まりを生じたり、濾過された切削液に存在する取り損ねた切屑がワークの加工不良の原因となることがある。そのため、定期的なタンクの清掃が必要であった。
【0009】
そこで、クーラントタンク内のダーティ液にマグネットスクリュー式濾過機を浸漬させたときに、その浸漬された濾過部での切屑の吸引力を高めて、濾過機に付着し損ねることによる切屑の取り逃がしを少なくするように工夫する点で解決すべき課題がある。
【0010】
この発明の目的は、クーラントタンク内のダーティ液に浮遊又は沈殿する切屑を磁力によって高い吸引力で吸引して濾過することで、クーラントタンク内の清浄度を高め、ポンプ詰まりによるワークの加工不良をなくし、クーラントタンクの清掃やクーラントの更液の頻度を少なくし、更に作業環境も改善することができるマグネットスクリュー式濾過機を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明によるマグネットスクリュー式濾過機は、クーラントタンク内に貯留された切屑を含むダーティ液に浸漬可能な先端側の濾過部とそれに続く搬送部とを有する筒体及び筒体の中空内部に回転可能に配置された螺旋状の磁石列を有するマグネット部を備え、マグネット部の回転に伴って磁石列の磁気作用に基づいて筒体の濾過部に付着された切屑を搬送部にて搬送するマグネットスクリュー式濾過機において、筒体の外面には、濾過部と搬送部との境界を横切るように切屑誘導板を設けるとともに、濾過部に対応した磁石列を構成する磁石には希土類磁石を用い、搬送部に対応した磁石列を構成する磁石にはフェライト磁石を用いることにより、濾過部に対応した磁石列の磁力を搬送部に対応した磁石列の磁力よりも高めたことを特徴とするものである
【0012】
このマグネットスクリュー式濾過機によれば、筒体の先端側の濾過部をクーラントタンク内に貯留された切屑を含むダーティ液に浸漬させると、クーラントタンク内に存在する切屑は、磁石列の磁気作用によって吸引されて筒体の外面である濾過部に付着される。マグネット部において、濾過部に対応して設けられている磁石列の磁力を搬送部に対応して設けられている磁石列の磁力よりも高めているので、クーラントタンク内には広範囲に磁力線が広がって、クーラントタンク内に浮遊又は沈殿する切屑は効率よく筒体の表面に向かって吸引される。マグネット部を回転することにより、濾過部に付着された切屑は回転する螺旋状の磁石列の磁気作用に基づいて筒体の長手方向に沿って移動し、搬送部において搬送される。搬送部は既に付着された切屑を搬送するのみであるので、搬送部に対応して位置する磁石列には、濾過部に対応して設けられている磁石列ほどの強力な磁石を設ける必要はない。
【0013】
このマグネットスクリュー式濾過機において、濾過部に対応して設けられる磁石列を構成する磁石は希土類磁石であり、搬送部に対応して設けられる磁石列を構成する磁石はフェライト磁石であることが好ましい。希土類磁石は、強力な磁力を有するので、濾過部に対応した磁石として好適である。搬送部に対応して設けられる磁石は、マグネットスクリュー式濾過機において希土類磁石よりも大量に使用されており、且つ搬送目的のためには強力な磁石である必要もないので、一般的に使用され且つ安価に入手容易なフェライト磁石が好適である。
【0014】
また、このマグネットスクリュー式濾過機において、外筒の外面には、濾過部と搬送部との境界を横切る状態に切屑誘導板を設けることが好ましい。濾過部に対応して設けられる磁石列の磁石を強力なものとすると、強力な磁石の影響が原因で、切屑の濾過部から搬送部へ移行しない。従って、濾過部から搬送部との境界近くにまで移行された切屑を、境界を横切る状態に濾過部と搬送部とに跨がって配設されている切屑誘導板によって案内し、強力な磁石の影響の範囲を素早く脱し、搬送部に対応して設けられている磁石の影響下に速やかに移行させるのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるマグネットスクリュー式濾過機の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明によるマグネットスクリュー式濾過機の一実施例の一部を示す断面図、図2は図1に示すマグネットスクリュー式濾過機のA−A断面図である。図1において、図3〜5に示されているものと同一の機能を奏する構成要素については、図3〜5に付された符号と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
図1には、この発明によるマグネットスクリュー式濾過機の濾過部とそれに続く搬送部の一部が示されている。搬送部の基端側の構造は、図3に示す構造と同様であってよいので、ここでは省略されている。筒体1は、肉厚0.5〜1.0mmのステンレス製のチューブから形成されており、先端部は端板2で封じられている。筒体1は、クーラントタンク10内に貯留された切屑を含むダーティ液11に浸漬可能な先端側の濾過部15とそれに続く搬送部16とを有している。筒体1の中空内部に回転可能に配置されるマグネット部は、従来と同様に、磁石支持体7の外表面4に極性を交互に変えた螺旋状の磁石列を有しているが、この磁石列には、濾過部15に対応して設けられた希土類磁石17a,17b,17c…(以下、「17a等」と略す)から成る磁石列17と、搬送部16に対応して設けられたフェライト磁石18a,18b,18c…(以下、「18a等」と略す)から成る磁石列18とが分けて設けられている。
【0017】
希土類磁石17a等はフェライト磁石18a等よりも磁力が強力であるので、筒体1の先端側の濾過部15をクーラントタンク10内に貯留されたダーティ液11に浸漬させると、磁石列17からの磁力線は、筒体1の濾過部15を貫通してクーラントタンク10内に広範囲に広がって、ダーティ液11に浮遊又は沈殿している切屑は、希土類磁石から成る磁石列17の強力な磁気作用によって吸引されて、効率よく濾過部15に付着される。クーラントタンク10内でマグネットスクリュー式濾過機を移動せさることで、ダーティ液11をくまなく浄化させることができる。クーラントタンク10内のダーティ液11の濾過精度が格段に上昇し、クーラントタンク10内の清浄度が高い状態に保たれる。その結果、ポンプPによってクーラントタンク10内の浄化されたクリーン液を工作機械Mに供給しても、取り損ねた切屑によってポンプPが詰まりを生じたり、工作機械Mにおけるワークの加工不良も生じることがない。搬送部16に対応して設けられる磁石列18は、既に付着された切屑13を搬送するのみであって強力な磁石を設ける必要がなく、且つ希土類磁石17a等よりも大量に使用されるので、一般的に使用され且つ安価に入手容易なフェライト磁石18a等が使用される。
【0018】
螺旋状の磁石列17,18では、それぞれにおいて、隣接する磁石と極性が交互に変えられているので、切屑13は隣り合う磁石との間で生じる磁力線に沿って拘束された状態となり、マグネット部の回転に伴って、従来と同様の原理に従って筒体1の長手方向に移動される。即ち、マグネット部を回転することにより、濾過部15に付着された切屑13は、磁石列17,18の螺旋状の配置とマグネット部の回転方向とに基づいて、筒体1の長手方向に沿って濾過部15から搬送部16へと搬送される。
【0019】
希土類磁石17a等の磁力がフェライト磁石18a等の磁力よりも格段に大きいため、希土類磁石17a等から成る磁石列17とフェライト磁石18a等から成る磁石列18との双方を配設しただけでは、切屑13が濾過部15から搬送部16へ移動しない。この実施例においては、筒体1の外面には、磁力の大きさの変わり目である濾過部15と搬送部16との境界19を横切って、切屑誘導板20が設けられている。即ち、切屑誘導板20は、濾過部15と搬送部16との境界19を挟んだ領域に、境界19と交差する状態に連続して延びている。濾過部15に付着された切屑13は、切屑誘導板20によっスムーズに案内されて、強力な磁石列17の影響下を速やかに脱して搬送部16に移動し、搬送部16にて更に搬送される。
【0020】
詳細には、図1に示すように、切屑誘導板20は、磁石列17,18の螺旋に沿った方向と交差する方向に且つ筒体1の長手方向に対しても交差した状態に傾斜されている。濾過部15に付着された切屑13は、磁石列17の回転に従って次第に外筒1の外面を矢印C方向に搬送され、境界19に接近すると切屑誘導板20に衝突し、その後は、磁石列17又は磁石列18の磁気作用によって切屑誘導板20の案内面21に沿ってガイドされてD方向に移行する。このように、切屑13は、切屑誘導板20によって、濾過部15に対応して設けられている強力な磁石列17の影響を速やかに脱し、濾過部15から搬送部16へスムーズに移行し、磁石列18によって搬送部16を搬送される。
【0021】
【発明の効果】
この発明は、上記のように構成されているので、次のような効果を奏する。即ち、この発明によるマグネットスクリュー式濾過機は、濾過部に対応して設けられた磁力の強力な磁石でクーラントタンク内のダーティ液に存在する切屑を吸引濾過するので、ダーティ液の濾過精度が格段に上昇し、クーラントタンク内の清浄度が高い状態に保たれる。従って、濾過し切れなくてクーラントに含まれる切屑がクーラントを工作機械等に戻すためのポンプに詰まるという事態や、工作機械でのワークの加工不良という事態が回避できる。また、切屑の取り逃がしが少ないので、クーラントタンクを清掃したり、クーラント液を取り替える更液回数が激減する。更に、汚れたクーラントタンクが放置されることがないので、作業環境が良くなる。また、切屑はマグネットスクリュー式で回転しない筒体の表面に沿って搬送されるので、コンパクトで省スペースであり、回転部材が外部に露出しない安全な濾過機を提供することができる。更に、濾過部に対応して設けられた磁石列と通常の搬送目的の磁石列との磁力の差に基づいて切屑の移動がスムーズでない場合も、筒体の外面に濾過部と搬送部との境界を横切る切屑誘導板を設けることによって、濾過部から搬送部への切屑の移動がスムーズとなる。以上に加えて、このマグネットスクリュー濾過機において、濾過部に対応して設けられる磁石列を構成する磁石には希土類磁石を用い、搬送部に対応して設けられる磁石列を構成する磁石にはフェライト磁石を用いており、希土類磁石は、フェライト磁石に比べて強力な磁石を有するので、濾過部に対応した磁石として好適である。また、フェライト磁石は、希土類磁石に比べてマグネットスクリュー式濾過機において大量に使用されており、且つ搬送目的のためには強力な磁石である必要もないので、一般的に使用され且つ安価に入手できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるマグネットスクリュー式濾過機の一実施例を示す側面図。
【図2】図1に示すマグネットスクリュー式濾過機のA−A断面図。
【図3】従来のマグネットスクリュー式濾過機の一例を示す側面断面図。
【図4】図3に示すマグネットスクリュー式濾過機のB−B断面図。
【図5】図3に示すマグネットスクリュー式濾過機による切屑の搬送状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 筒体
10 クーラントタンク
11 ダーティ液
13 切屑
15 濾過部
16 搬送部
17 濾過部に対応した磁石列(希土類磁石列)
17a,17b,17c… 希土類磁石
18 搬送部に対応した磁石列(フェライト磁石)
18a,18b,18c… フェライト磁石
19 境界
20 切屑誘導板

Claims (1)

  1. クーラントタンク内に貯留された切屑を含むダーティ液に浸漬可能な先端側の濾過部とそれに続く搬送部とを有する筒体及び筒体の中空内部に回転可能に配置された螺旋状の磁石列を有するマグネット部を備え、マグネット部の回転に伴って磁石列の磁気作用に基づいて筒体の濾過部に付着された切屑を搬送部にて搬送するマグネットスクリュー式濾過機において、
    筒体の外面には、濾過部と搬送部との境界を横切るように切屑誘導板を設けるとともに、濾過部に対応した磁石列を構成する磁石には希土類磁石を用い、搬送部に対応した磁石列を構成する磁石にはフェライト磁石を用いることにより、濾過部に対応した磁石列の磁力を搬送部に対応した磁石列の磁力よりも高めたことを特徴とするマグネットスクリュー式濾過機。
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