JP3626231B2 - 動物の自動車道路への侵入防止構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、最近の自動車道路における動物の横断時の事故の多発を回避する、動物の自動車道路への侵入防止構造と侵入防止壁ブロック及び横断暗渠ブロックとその設置構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動物、特に哺乳類動物の道路上での車両との衝突事故が多発し、動物と人との共生が重要視されるようになっている。統計的には野生哺乳類の衝突事例は、日本道路公団の調査ではタヌキ(約20%)が最も多く、次いで、ノウサギ(約10%)、イタチ、キツネ、シカ、イノシシ、サル、クマの順となっている。
【0003】
自動車道路がもたらす動物の生息環境を保全するための工法上の配慮としては、従来(a)動物の生息域分断を軽減する、(b)動物と車両の衝突を回避・軽減する、(c)動物の転落死を回避・軽減する、(d)道路照明・ヘッドライト等の光の影響を回避・軽減する、(e)代替生息地の整備、(f)法面植生に対する配慮、(g)運転者へのアピールを通じた配慮、(h)衝突死体の早期回収、(i)工作物等の応急的な設置、(j)特定の時間、期間、区間の利用制限、等が提案されている。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこれらの工法上の配慮の内には、効果が上がらない例もみられ、最近ではより積極的な対策が要望されている。本発明は、(b)に示した動物と車両の衝突を回避・軽減することを目的とするものであるが、(i)の工作物等の応急的な設置によるものでなく、より効果的な設備を配置して動物と人との共生を可能にしようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、道路に沿う法面等の沿線に設けた動物侵入防止誘導壁と、その誘導壁の一部に設けた暗渠出入口と、暗渠出入口から道路の幅員方向かつ路面下方に設けた道路横断暗渠とからなる動物の自動車道路への侵入防止構造である。暗渠出入口の好ましい構造は路面下方に設けた道路横断暗渠の出入口上方を透し窓のある閉鎖版で覆い、その左右側面に侵入誘導路を設けた構造である。
【0006】
動物侵入防止誘導壁に使用される侵入防止壁ブロックは、土中に埋設される張り出し基礎部と、その張り出し基礎部からほぼ垂直に起立しかつスリットを有した誘導壁部と、動物の侵入方向と反対方向に反った動物返し部とからなる構造が好ましい。張り出し基礎部に排水溝を一体で設けるとよい。
【0007】
路面下方の道路横断暗渠として用いるブロックは、自動車道路の幅員方向へ複数個を連設して用いる横断暗渠ブロックであって、矩形又はアーチ型本体の周壁にスリット又は孔を設けたカルバート構造が好適である。また、この動物横断暗渠ブロックを使用し、出入口が少なくとも2個以上あり、その内部は出入口の数以上の数の通路を設けた構造にするとより好ましいものとなる。例えば道路を横断する暗渠内に1又は複数のバイパス通路を設けるなどである。
【0008】
【作用】
自動車道路に沿う法面等の沿線に設けた動物侵入防止誘導壁によって道路を横断しようとする動物が、誘導壁の一部に設けた暗渠出入口の方向へと導かれる。特にタヌキは物陰に沿って移動する習性がある。そして、動物はこの暗渠出入口から路面下方に設けた道路横断暗渠中を通って道路他方側へ移動することができる。これによって動物の自動車道路への侵入防止が可能となる。
【0009】
動物侵入防止誘導壁に使用される侵入防止壁ブロックは、土中に埋設される張り出し基礎部があるので土中に安定に埋設されて起立状態をとることができる。その張り出し基礎部からほぼ垂直に起立した誘導壁部はスリットを設けたことにより、動物の這い上がりが不可能な構造でありながら、通水能による排水を可能とすると共に、強い風圧にも耐えることができる。また、動物返し部が上部にあるので、動物の自動車道路方向への侵入を妨げる。
【0010】
横断暗渠ブロックは本体の周壁にスリット又は孔を設けたことにより、周囲からの草木の根張りを許すし、底面方向への排水を可能にして暗渠内の動物の快適な通過を可能とする。また、横断暗渠ブロックは直列で直線的な暗渠通路を形成するばかりでなく、並列に隣接して設置して出入口が少なくとも2個以上あり、その内部は出入口の数以上の数の通路を設けた構造とすることによって、複雑な暗渠通路を形成して通過する動物の干渉を避けることができる。
【0011】
【実施例】
図1は自動車道路の沿線に本発明を施工した様子を示す斜視図、図2は平面図である。この動物の自動車道路への侵入防止構造は、動物を道路の下面で道路の幅員方向に設けた道路横断暗渠1を通って横断することができるように、動物を暗渠出入口2へ誘導するようになっている。そこで、自動車道路に沿う法面に対して動物侵入防止誘導壁3を設けた。その誘導壁3を道路の路肩に接近させた部分には暗渠出入口2がある。動物が道路を横断しようとしても、誘導壁3に沿って進み、暗渠出入口2から道路横断暗渠1を通らない限り横断できない構造である。暗渠出入口2は明かり採りの透し窓のある閉鎖板14で上部を覆い、その下方の左右側面に侵入誘導路坂を設けている。
【0012】
動物侵入防止壁ブロックの例及びその設置の様子を図3〜8に示す。図3の例は土中に埋設される張り出し基礎部4と、その張り出し基礎部4からほぼ垂直に起立した誘導壁部5と、その上部で動物の侵入方向aと反対方向に反って設けられた動物返し部6とからなる。垂直に起立した誘導壁部5には垂直方向にスリット7が設けられている。図において、誘導壁部5の左方が自動車道路側、右方が動物の行動が可能な側である。この例では通常自動車道路側又はその反対側に排水溝が設けられることとなる。タヌキは高速道路のフェンスを越えた例が報告されてされており、この例では動物侵入防止壁ブロックの全高を2m、路面からの高さを1.5mになるように製作している。
【0013】
図4,5は側溝一体型の本発明の動物侵入防止壁ブロックの例である。土中に埋設される張り出し基礎部4の道路側に側溝8が一体に設けられている。側溝8にはカエル、ヘビ等の小動物が落ちても這いだすことのできる傾斜路を設けるとか、あるいは、図5のように溝の底面を斜面16に形成するとよい。斜面16を登ってスリットの間から逃げることができる。
【0014】
本発明の動物侵入防止壁ブロックの配置は、例えば図6のように自動車道路13の両路肩へ側溝8を外向きにして設けることもできる。その場合でも動物返し部6は路肩方向に向けて設置する。法面に対しても同様である。図7,8はこのような配置を可能にする本発明の動物侵入防止壁ブロックの例である。張り出し基礎部4に一体で設けられた側溝8が路肩側にある。特に図8の例では小動物が落ちても這いだすことのできる傾斜路9を側溝8に設けている。
【0015】
図9〜図11は本発明の自動車道路の幅員方向へ複数個を連設して道路横断暗渠1を構成する動物横断暗渠ブロック10の例である。図12にその様子を示す。図9及び図11の例は矩形断面を有し、図10はアーチ型断面を有する。これらの例ではブロック本体の周壁にスリット11を設けている。スリットに代えて丸孔や矩形孔を設けてもよい。図11に示す例では底部に排水のための丸孔17のみ設けている。この動物横断暗渠ブロック10のサイズは幅が2.32m,高さ1.36m,奥行1.56mとしている。設置は雨水等の浸入をできるだけ防ぐように設置する。浸入した雨水については底部のスリット11又は丸孔17より地下へ排出できるように図12のように基礎工を砕石15のみとするとよい。これによって動物横断暗渠ブロック10の底部に一段高い犬走りを設ける等の手段を省略できる。但し、本発明において動物横断暗渠ブロック10の底部に犬走りを付加して設けることを排除するものではない。
【0016】
自動車道路の幅員方向へ複数個を連設して用いる動物横断暗渠ブロックは、図13のように動物横断暗渠ブロック10を2又は3個横に並列に用い、この状態を道路の幅員全域又は部分的に配置することによって、動物同志の干渉を防ぐようにすることができる。隣接する動物横断暗渠ブロック10間は側壁に設けた貫通穴12によって連通構造となっており、動物の強弱による危険を回避できるようになっている。暗渠出入口2もこの例のように2個、あるいはそれ以上設けることによって、更に動物同志の干渉を防ぐことができる。また、暗渠出入口2を森林の近くに開口することも動物の誘導に効果がある。
【0017】
【発明の効果】
本発明によって動物、特に哺乳類動物の道路上での車両との衝突事故が皆無となり、動物と人との共生を重んじた環境保全が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車道路の沿線に本発明を施工した様子を示す斜視図である。
【図2】自動車道路の沿線に本発明を施工した様子を示す平面図である。
【図3】本発明の動物侵入防止壁ブロックの斜視図である。
【図4】本発明の動物侵入防止壁ブロックの斜視図である。
【図5】本発明の動物侵入防止壁ブロックの斜視図である。
【図6】本発明の動物侵入防止壁ブロックの配置状態を示す図である。
【図7】本発明の動物侵入防止壁ブロックの斜視図である。
【図8】本発明の動物侵入防止壁ブロックの斜視図である。
【図9】本発明の動物横断暗渠ブロックの斜視図である。
【図10】本発明の動物横断暗渠ブロックの斜視図である。
【図11】本発明の動物横断暗渠ブロックの(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図12】本発明の動物横断暗渠ブロックの配置状態を示す側面図である。
【図13】本発明の動物横断暗渠ブロックの配置状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 道路横断暗渠
2 暗渠出入口
3 動物侵入防止誘導壁
4 張り出し基礎部
5 誘導壁部
6 動物返し部
7 スリット
8 側溝
9 傾斜路
10 動物横断暗渠ブロック
11 スリット
12 貫通穴
13 自動車道路
14 透し窓のある閉鎖板
15 砕石
16 斜面
17 丸孔

Claims (4)

  1. 道路に沿う法面等の沿線に設けた動物侵入防止誘導壁と、該誘導壁の一部に設けた暗渠出入口と、該暗渠出入口から道路の幅員方向かつ路面下方に設けた道路横断暗渠とからなる動物の自動車道路への侵入防止構造。
  2. 前記動物侵入防止誘導壁に、土中に埋設される張り出し基礎部と、該張り出し基礎部からほぼ垂直に起立しかつスリットを有した誘導壁部と、動物の侵入方向と反対方向に反った動物返し部とからなる動物侵入防止壁ブロックを使用してなる請求項1記載の動物の自動車道路への侵入防止構造
  3. 前記道路横断暗渠に、矩形又はアーチ型本体の周壁にスリット又は孔を設けてなる動物横断暗渠ブロックを使用し、複数個の前記動物横断暗渠ブロックを、自動車道路の幅員方向へ連設してなる請求項1記載の動物の自動車道路への侵入防止構造
  4. 前記動物横断暗渠ブロックを使用して前記道路横断暗渠に出入口少なくとも2個設け前記道路横断暗渠の内部に前記出入口の数以上の数の通路を設けてなる請求項3記載の動物の自動車道路への侵入防止構造
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