JP3626211B2 - 光記録媒体の信号再生方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光記録媒体に対して光ビームを照射しながら信号を読み取るような光記録媒体の信号再生方法に関し、特に、高密度情報の再生が行える光記録媒体の信号再生方法に関する。
【0002】
【産業上の利用分野】
光記録媒体は、いわゆるコンパクトディスク等のような再生専用媒体と、光磁気ディスク等のような信号の記録が可能な媒体とに大別できるが、これらいずれの光記録媒体においても、記録密度をさらに高めることが望まれている。これは、記録される信号としてディジタル・ビデオ信号を考慮する場合にディジタル・オーディオ信号の数倍から十数倍ものデータ量を必要とすることや、ディジタル・オーディオ信号を記録する場合でもディスク等の媒体の寸法をより小さくしてプレーヤ等の製品をさらに小型化したい等の要求があるからである。また、一般のデータディスクとしても、より大きな記録容量が望まれている。
【0003】
ところで、光記録媒体への情報の記録密度は、再生信号のS/Nによって決められている。従来の一般的な光学的な記録再生においては、図14に示すように、光記録媒体に対するレーザ光等の読み出し光ビームの光照射領域であるビームスポットSPの領域の全てを再生信号領域としている。このため、再生可能な記録密度は、読み出し光のビーム・スポットの径DSPにより定まる。
【0004】
例えば、図14のAに示すように、読み出しレーザ光のビーム・スポットSPの径DSPが記録ピットRPのピッチqよりも小さければ、スポットSP内に2個の記録ピットが入ることはなく、再生出力波形は図14のBに示すようになり、再生信号は読み取り可能である。ところが、図14のCに示すように、高密度で記録ピットSPが形成されており、ビーム・スポットSP内の径DSPが記録ピットRPのピッチqよりも大きくなると、スポットSP内に2個以上のピットが同時に入り込むようになり、再生出力波形は図14のDに示すように略々一定となり、その2個の記録ピットを分離して再生することができず再生不能となってしまうことになる。
【0005】
スポット径DSPは、レーザ光の波長λと、対物レンズの開口数NAに依存しており、このスポット径DSPによって、読み出し光ビームの走査方向(記録トラック方向)に沿ったピットの密度(いわゆる線密度)や、読み出し光ビームの走査方向に直交する方向の隣接トラック間隔(いわゆるトラックピッチ)に応じたトラック密度が定められる。すなわち、これらの線密度やトラック密度の物理光学的限界は、いずれも読み出し光の光源の波長λ及び対物レンズの開口数NAによって決まり、例えば信号再生時の空間周波数については、一般に2NA/λが読み取り限界とされている。このことから、光記録媒体において高密度化を実現するためには、先ず再生光学系の光源(例えば半導体レーザ)の波長λを短くし、対物レンズの開口数NAを大きくすることが必要とされている。
【0006】
ところで、本件出願人は、読み取り光ビームのスポット径を変更しなくても、読み取り可能な線記録密度及びトラック密度を高くできるようにした光記録媒体及びその再生方法を先に提案している。このような高密度情報の再生が可能な光記録媒体としては、信号の記録が可能な光磁気記録媒体と、少なくとも再生が可能な反射率変化型光記録媒体とが挙げられる。
【0007】
上記光磁気記録媒体は、例えばポリカーボネート等から成る透明基板あるいは光透過性基体の一主面に、膜面と垂直方向に磁化容易軸を有し優れた磁気光学効果を有する磁性層(例えば希土類−遷移金属合金薄膜)を、誘電体層や表面保護層等と共に積層して構成されたものであり、上記透明基板側からレーザ光等を照射して信号の記録、再生が行われる。この光磁気記録媒体に対する信号記録は、レーザ光照射等によって上記磁性層を局部的に例えばキュリー点近傍の温度にまで加熱し、この部分の保磁力を消滅させて外部から印加される記録磁界の向きに磁化することにより行う、いわゆる熱磁気記録である。また光磁気記録媒体からの信号再生は、上記磁性層の磁化の向きによりレーザ光等の直線偏光の偏光面が回転する磁気光学効果(いわゆる磁気カー効果、ファラディ効果)を利用して行われる。
【0008】
上記反射率変化型光記録媒体は、位相ピットが形成された透明基板上に、温度によって反射率が変化する材料が形成されて成り、信号再生時には、該記録媒体に読み出し光を照射し、読み出し光の走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取るものである。
【0009】
以下、上記記録可能な光磁気記録媒体における高密度再生、あるいはいわゆる超高解像度再生について、さらに説明する。
本件出願人は、先に例えば特開平1−143041号公報、特開平1−143042号公報等において、情報ビット(磁区)を再生時に拡大、縮小あるいは消滅させることにより再生分解能を向上させるような光磁気記録媒体の信号再生方法を提案している。この技術は、記録磁性層を再生層、中間層、記録層から成る交換結合多層膜とし、再生時において再生光ビームで加熱された再生層の磁区を温度の高い部分で拡大、縮小あるいは消去することにより、再生時の情報ビット間の干渉を減少させ、光の回折限界以下の周期の信号を再生可能とするものである。また、特願平1−229395号の明細書及び図面においては、光磁気記録媒体の記録層を磁気的に結合される再生層と記録保持層とを含む多層膜で構成し、予め再生層の磁化の向きを揃えて消去状態としておくとともに、再生時にはレーザ光の照射によって再生層を所定の温度以上に昇温し、この昇温された状態でのみ記録保持層に書き込まれた磁気信号を再生層に転写しながら読み取るようにすることにより、クロストークを解消して線記録密度、トラック密度の向上を図る技術を提案している。これらの高密度再生技術をまとめると、消去型と浮き出し型とに大別でき、それぞれの概要を図15及び図16に示す。
【0010】
先ず図15のA、B、Cを参照しながら消去型の高密度再生技術について説明する。この消去型の場合には、図15のBに示すように、常温にて情報記録ピットRPが表れている状態の記録媒体にレーザ光LBを照射して加熱することで、照射レーザ光LBのビーム・スポットSP内に記録消去領域ERを形成し、ビーム・スポットSP内の残りの領域RD内の記録ピットRPを読み取ることにより、線密度を高めた再生を行っている。これは、ビーム・スポットSP内の記録ピットRPを読み取る際に、記録消去領域ERをマスクとすることで読み取り領域(再生領域)RDの幅dを狭くし、レーザ光の走査方向(トラック方向)に沿った密度(いわゆる線記録密度)を高めた再生を可能とするものである。
【0011】
この消去型高密度再生のための記録媒体は、光磁気記録用アモルファス希土類(Gd,Tb)−鉄属(Fe,Co)フェリ磁性膜から成る交換結合磁性多層膜構造を有し、図15のAに示す例では、ポリカーボネイト等の透明基板60の一主面(図中下面)に、第1の磁性膜である再生層61、第2の磁性膜である切断層(中間層)62、及び第3の磁性膜である記録保持層63を順次積層した構造を有している。第1の磁性膜(再生層)61は、例えばGdFeCoでキュリー温度TC1>400℃のものが用いられ、第2の磁性膜(切断層、中間層)62は、例えばTbFeCoAlでキュリー温度TC2=120℃のものが用いられ、第3の磁性膜(記録保持層)63は例えばTbFeCoでキュリー温度TC3=300℃のものが用いられる。なお、図15のC中の各磁性膜61、62、63内の矢印は各磁区の磁化の向きを示している。また、Hreadは再生磁界の向きを示している。
【0012】
再生時の動作を簡単に説明すると、所定温度TOPより下の常温では記録媒体の各層63、62、61が静磁結合あるいは交換結合の状態で磁気的に結合しており、記録保持層63の記録磁区が切断層62を介して再生層61に転写されている。この記録媒体に対してレーザ光LBを照射して媒体温度を高めると、レーザ光の走査に伴って媒体の温度変化は遅延されて表れ、上記所定温度TOP以上となる領域(記録消去領域ER)はビーム・スポットSPよりもレーザ走査方向の後方側にややずれて表れる。この所定温度TOP以上では記録保持層63と再生層61との磁気的結合が消滅し、再生層61の磁区が再生磁界Hreadの向きに揃えられることにより、媒体表面上では記録ピットが消去された状態となる。そして、走査スポットSPの領域の内、上記所定温度TOP以上となる領域ERとの重なり領域を除く領域RDが実質的な再生領域となる。すなわち、レーザ光のビーム・スポットSPは上記所定温度TOP以上となる領域ERにより一部がマスクされ、マスクされない小さい領域が再生領域(読み取り領域)RDとなって、高密度再生を実現している。
【0013】
こうして、レーザ光ビームの走査スポットSPがマスク領域(記録消去領域ER)によりマスクされない小さい再生領域(読み取り領域RD)からの反射光の例えばカー回転角を検出することによりピットの再生が行われるので、ビーム・スポットSPの径を小さくしたことに等しくなり、線記録密度及びトラック密度を上げることができる。
【0014】
次に、図16のBに示す浮き出し型の高密度再生技術では、常温で情報記録ピットRPが消えている状態(初期化状態)の記録媒体にレーザ光を照射して加熱することにより、照射レーザ光のビーム・スポットSP内に記録浮き出し領域である信号検出領域DTを形成し、この信号検出領域DT内の記録ピットRPのみを読み取るようにすることで再生線密度を高めている。
【0015】
この浮き出し高密度再生のための記録媒体は、静磁結合あるいは磁気的交換結合の磁性多層膜構造を有するものであり、図16のAの例では、ポリカーボネート等の透明基板70の一主面(図中下面)に、第1の磁性膜である再生層71、第2の磁性膜である再生補助層72、第3の磁性膜である中間層73、第4の磁性膜である記録保持層74を順次積層した構造を有している。第1の磁性膜(再生層71は、例えばGdFeCoでキュリー温度TC1>300°Cのもの、第2の磁性膜(再生補助層)72は、例えばTbFeCoAlでキュリー温度TC2≒120°Cのもの、第3の磁性膜(中間層)73は、例えばGdFeCoでキュリー温度TC3≒250°Cのもの、第4の磁性膜(記録保持層)74は、例えばTbFeCoでキュリー温度TC4≒250°Cのものがそれぞれ用いられる。ここで初期化磁界Hinの大きさは、再生層の磁化を反転させる磁界Hcpより大きく(Hin>Hcp)、また、記録保持層の磁化を反転させる磁界Hcrより充分小さく(Hin≪Hcp)選定されている。なお、図16のC中の各磁性膜71、72、73、74内の矢印は各磁区の磁化の向きを示し、Hinは初期化磁界の向きを、またHreadは再生磁界の向きをそれぞれ示している。
【0016】
記録保持層74は、初期化磁界Hin、再生磁界Hread、また再生温度等に影響されずに記録ピットを保持している層であって、室温、再生温度において充分な保磁力がある。
【0017】
中間層73の垂直異方性は再生補助層72、記録保持層74に比べ小さい。このため、再生層71と、記録層74との間に磁壁を作る際、磁壁が安定にこの中間層73に存在する。そのため、再生層71、再生補助層72は、安定に消去状態(初期化状態)を維持する。
【0018】
再生補助層72は、室温での再生層71の保持力を大きくする働きをしており、このため、初期化磁界によって揃えられた再生層71、再生補助層72の磁化は、磁壁が存在しても安定に存在する。また、再生補助層72は、再生時には、再生温度TS近傍で保磁力が急激に小さくなり、このため、中間層73に閉じこめられていた磁壁が再生補助層72にまで拡がって最終的に再生層71を反転させ、磁壁を消滅させる。この過程により、再生層71にピットが現れるようになる。
【0019】
再生層71は室温でも磁化反転磁界Hcpが小さく、その磁化は容易に反転する。このため、再生層71は、初期化磁界Hinにより、その全面の磁化が同方向に揃う。揃った磁化は、再生補助層72に支えられて記録保持層74との間に磁壁がある場合でも安定な状態が保たれる。そして、上述のように、再生時には、記録保持層74との間の磁壁が消滅することにより、記録ピットが現れる。
【0020】
再生時の動作を簡単に説明すると、先ず再生前に初期化磁界Hinにより再生層71及び再生補助層72の磁化の向きを一方向(図16では上方向)に揃える。このとき、中間層73に磁壁(図16では横向きの矢印で示す)が安定に存在し、再生層71、再生補助層72は、安定に初期化状態を維持する。
【0021】
次に、逆方向の再生磁界Hreadを印加しながらレーザ光LBを照射する。この再生磁界Hreadとしては、レーザ光照射による昇温後の再生温度TRPにおいて、再生層71、再生補助層72を反転させ、中間層73の磁壁を消滅させる磁界以上の磁界が必要である。また、再生層71、再生補助層72が、その磁界方向を反転してしまわない程度の大きさとされる。
【0022】
レーザ光LBの走査に伴って媒体の温度変化は遅延されて表れるから、所定の再生温度TRP以上となる領域(記録浮き出し領域)はビーム・スポットSPよりも走査方向の後方側にややずれて表れる。この所定再生温度TRP以上では、再生補助層72の保磁力が低下し、再生磁界Hreadが印加されることによって磁壁がなくなり、記録保持層74の情報が再生層71に転写される。これによって、レーザ光LBのビーム・スポットSP内で上記再生温度TRPに達する前の領域がマスクされ、このスポットSP内の残部が記録浮き出し領域である信号検出領域(再生領域)DTとなる。この信号検出領域DTからの反射光の偏向面の例えばカー回転角を検出することにより、高密度再生が可能となる。
【0023】
すなわち、レーザ光LBのビーム・スポットSPの内部領域において、上記再生温度TRPに達する前の領域は、記録ピットが現れないマスク領域であり、残りの信号検出領域(再生領域)DTは、スポット径より小さいので、前述と同様に線記録密度及びトラック密度を高くすることができる。
【0024】
さらに、これらの消去型と浮き出し型とを混合した技術として、図17に示すような高密度再生技術も考えられている。この図17においては、常温で情報記録ピットRPが消えている状態(初期化状態)の記録媒体にレーザ光を照射して加熱することで、照射レーザ光のビーム・スポットSPに対してレーザ光走査方向の後方側にややずれた位置に記録浮き出し領域FLを形成すると共に、この記録浮き出し領域FL内にさらに高温の記録消去領域ERを形成している。そしてビーム・スポットSP内で、記録浮き出し領域FL内の記録消去領域ERでマスクされた以外の部分(信号検出領域)DT内の記録ピットRPのみを読み取るようにする。この信号検出領域DTのレーザ光走査方向に沿った幅dが狭くなることから、高い線密度で再生できる。これは、例えば、レーザ照射によって生ずる媒体温度分布により、ビーム・スポットSP内で初期化状態を維持する部分と、記録保持層の磁化が表面の再生層に転写される記録浮き出し領域FLと、外部印加磁界の向きに磁化が揃えられて消去される記録消去領域ERとを生じさせることにより実現できる。
【0025】
また、本件出願人は、特願平3−418110号の明細書及び図面において、少なくとも再生層、中間層、記録保持層を有する光磁気記録媒体を用い、再生層にレーザ光を照射すると共に再生磁界を印加し、このレーザ照射により生ずる温度分布を利用して、初期化状態を維持する部分、記録保持層の情報が転写される部分、再生磁界方向に磁化の向きが揃えられる部分をレンズ視野内に生ぜしめることにより、レンズ視野内を光学的にマスクしたのと等価な状態とし、線記録密度及びトラック密度を高め、また、再生パワーが変動しても記録保持層の情報が転写される領域が縮小あるいは拡大することがなく、再生時の周波数特性も良好なものとした光磁気記録媒体における信号再生方法を提案している。
【0026】
また、高密度再生が可能な他の種類の光記録媒体として、位相ピットが形成された透明基板上に温度によって反射率が変化する材料が形成され、信号再生時には、読み出し光の走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取るような反射率変化型光記録媒体も知られている。
この反射率変化型の光記録媒体に関する技術としては、本件出願人が先に特願平2−94452号の明細書及び図面において光ディスクの信号再生方法を提案しており、また、特願平2−291773号の明細書及び図面において光ディスクを提案している。すなわち、前者においては、信号に応じて位相ピットが形成されるとともに温度によって反射率が変化する光ディスクに対して読み出し光を照射し、読み出し光の走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取ることを特徴とする光ディスクの信号再生方法を提案しており、後者においては、位相ピットが形成された透明基板上に、相変化によって反射率が変化する材料層が形成されてなり、読み出し光が照射されたときに、上記材料層が、読み出し光の走査スポット内で部分的に相変化するとともに、読み出し後には初期状態に戻ることを特徴とする、いわゆる相変化型の光ディスクを提案している。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、これらの高密度再生技術において、トラック方向すなわちレーザ光走査方向に沿った密度、いわゆる線記録密度を高めることができることは明らかであるが、レーザ走査方向に直交する方向の密度、いわゆるトラック密度については、さらなる改良が望まれている。
【0028】
例えば、上述した浮き出しタイプと消去タイプとを混合した光磁気記録媒体の例を示す上記図17においては、信号検出領域DT(いわゆるウィンドウ部)の寸法がトラック幅方向に拡がる傾向があり、隣接トラックの記録ピットRPaをも検出してしまうことから、クロストークが生じ、このクロストークを抑えるためにトラックピッチpに制限が生じている。すなわち、クロストークによる制限のため、トラックピッチpをある程度広げてトラック密度を下げることが必要とされている。これは、上述した各種タイプの光磁気記録媒体のみならず、上記反射率変化型の光記録媒体にも同様にいえることである。
【0029】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で上記クロストークを軽減でき、いわゆるトラック密度(レーザ光走査方向に直交する方向の記録密度)をさらに高め得るような光記録媒体の信号再生方法の提供を目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光記録媒体の信号再生方法によれば、少なくとも磁気的に結合されている再生層と記録保持層とを有して成る多層膜を記録層とし、上記記録保持層に信号が磁気記録され、上記再生層の磁化の向きが揃えられた状態の光磁気媒体に対して、上記再生層に光ビームを照射することにより当該再生層を加熱して上記記録保持層に磁気的に記録されている信号を上記再生層に転写しながら磁気光学効果により光信号に変換して読みとるような光記録媒体の信号再生方法において、上記読み出し光ビームの光源として半導体レーザを用い、当該半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向を上記読み出しビームの操作方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列間隔より大きい楕円形状とし、上記光記録媒体に形成される高温領域の上記短軸方向の幅を隣接トラックの記録ピット間の幅よりも小さくすることにより上述の課題を解決する。
【0031】
また、本発明に係る光記録媒体の信号再生方法によれば、信号に応じて位相ピットが形成されるとともに温度によって反射率が変化する記録媒体に対して読み出し光ビームを照射し、読み出し光ビームの走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取るような光記録媒体の信号再生方法において、上記読み出し光ビームの光源として半導体レーザを用い、当該半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向を上記読み出し光ビームの走査方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列間隔より大きい楕円形状とし、上記光記録媒体に形成される高温領域の上記短軸方向の幅を隣接トラックの記録ピット間の幅よりも小さくすることにより、上述の課題を解決する。
【0032】
【作用】
半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向がレーザ走査方向に直交する方向となり、この方向のスポット径が短くなるため、上記再生層に転写されて信号読み取り可能となる信号検出領域におけるレーザ走査方向に直交する方向の幅が狭まり、隣接トラックからのクロストークを低減できる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明に係る光記録媒体の信号再生方法のいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
使用される光記録媒体が、上記光磁気記録媒体の場合も、上記反射率変化型の光記録媒体の場合も、読み出し光ビーム光源としては、半導体レーザを用いており、光記録媒体上で、図1に示すように、半導体レーザからの出射光のスポットSPの形状の短軸方向bがレーザ操作方向に対して直交する方向となるようにしている。また、スポットのSPの短軸方向bの径は、隣接するトラックの情報記録ピットRPを含まない大きさとなっている。
【0035】
この半導体レーザは、例えば図2に示す半導体レーザ21のように、光を出射するGa1−x Alx As活性層22を挟むようにp型Ga1−y Aly Asクラッド層23とn型Ga1−y Aly Asクラッド層24とが設けられた多層構造を有し、最外部両面に正電極25と負電極26とが被着形成されている。
【0036】
このような半導体レーザ21の活性層22から出射されるレーザ光のスポット形状としては、層に平行な方向を短軸とし、層の厚み方向を長軸とするような楕円形状となることが知られている。この出射されたレーザ光が所定の光学系(後述する図4参照)のレンズを介すことにより、光磁気ディスク等の光記録媒体上に照射されて形成される楕円形状スポットSPの形状としては、層に平行な方向に長軸aが、また層の厚み方向に短軸bがそれぞれ表れることになる。この光記録媒体上での長軸a、短軸bの各方向の光強度分布は、それぞれ例えば図3のようになる。この図3では、レーザ光の波長λが780nmで、対物レンズの焦点距離が4.5mmで開口数NAが0.5の場合における、スポット中心からの距離(横軸)に対するスポット中心での光強度で規格化した光強度(縦軸)を示している。
【0037】
この半導体レーザ21からの出射光の光記録媒体上でのスポットSPの楕円形状の短軸b方向をレーザ走査方向に直交する方向(いわゆる記録トラックの幅方向、トラックピッチ方向、ディスク状記録媒体ではディスク径方向)とするものである。これによって、隣接トラックの記録ピットへのレーザ照射光強度が低下するため、例えば前述した消去タイプあるいは消去及び浮き出しの混合タイプの光磁気記録媒体においては、この隣接トラック位置で上記記録保持層に磁気記録されている信号が上記再生層に転写されることが低減されて隣接トラックからのクロストークの低減が図れ、トラックピッチを狭くしてトラック密度を高めることができる。これは、反射率変化型の光記録媒体の場合も同様である。
【0038】
以下に、先ず、記録可能な媒体としての光磁気記録媒体に本発明を適用した実施例を説明し、次に、少なくとも再生が可能な媒体としての反射率変化型光記録媒体に本発明を適用した実施例を説明する。
【0039】
先ず、本発明に係る光記録媒体の信号再生方法の最初の実施例においては、光記録媒体として、前述した消去型、あるいは消去型と浮き出し型との混合タイプの光磁気記録媒体、特に光磁気ディスクを用いている。この光磁気ディスクは、少なくとも磁気的に結合される再生層と記録保持層とを有して成る多層膜を記録層としている。上記記録保持層に信号が磁気記録され、上記再生層の磁化の向きが揃えられた状態の光磁気ディスクを再生する際には、上記再生層にレーザ光を照射することにより当該再生層を加熱して上記記録保持層に磁気記録されている信号を上記再生層に転写しながら磁気光学効果により光学信号に変換して読み取っている。
【0040】
図4は、例えば上記消去型と浮き出し型との混合タイプの光磁気ディスク15を用いるときの再生装置の概略構成を示すものである。
【0041】
この図4において、上述した図2に示す半導体レーザ21と同様な半導体レーザ11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12で平行ビームとされ、ビームスプリッタ13を介して対物レンズ14に送られる。この対物レンズ14を介して光磁気ディスク15に照射されたレーザビームは、前述した光磁気記録用磁性多層膜にて反射され、対物レンズ14を介してビームスプリッタ13に入射されて反射され、集光レンズ16で集光されて、フォトダイオード等の光検出器17に入射される。光磁気ディスク15のレーザ光照射位置の裏面(図中上面)側には、再生磁界Hreadを印加するための磁気ヘッド18が配設されている。
【0042】
このような再生装置の半導体レーザ11は、上記図1と共に説明したように、記録媒体である光磁気ディスク15上での楕円形状のレーザ光スポットSPの短軸bがレーザ光走査方向に直交する方向であるディスク径方向となるように配設されている。
【0043】
このように、ディスク径方向(レーザ光走査方向に直交する方向)がレーザ光スポットの楕円の短軸方向とされたとき、上記光磁気ディスク15上では、例えば図5に示すように、照射レーザ光のビーム・スポットSPの走査方向の後方側にややずれて形成される高温領域の幅(レーザ光走査方向に直交する方向の幅)D1 を、前述した図17の同領域の幅D2 よりも狭くでき、隣接トラックの記録ピットRPからのクロストークを大幅に低減できる。
【0044】
ここで図5に示す高密度再生技術は、前記図17と共に説明した技術と同様なもので、前述した消去型と浮き出し型の混合タイプであり、例えば、レーザ照射によって生ずる媒体温度分布により、ビーム・スポットSP内で初期化状態を維持する低温部分と、記録保持層の磁化が表面の再生層に転写される高温の記録浮き出し領域FLと、さらに高温となって外部印加磁界の向きに磁化が揃えられて消去される記録消去領域ERとが形成されるような光磁気記録媒体が用いられる。そして、常温で情報記録ピットRPが消えている状態(初期化状態)の記録媒体にレーザ光を照射して加熱することで、照射レーザ光のビーム・スポットSPからレーザ光走査方向後方側にややずれた位置に楕円形状の記録浮き出し領域FLを形成すると共に、この記録浮き出し領域FL内にさらに高温の記録消去領域ERを形成し、ビーム・スポットSP内で、記録浮き出し領域FL内の記録消去領域ERでマスクされた以外の部分(信号検出領域)DT内の記録ピットRPのみを読み取るようにしている。
【0045】
このとき、上記高温の記録浮き出し領域FLは、上述したようにディスク径方向の幅D1 が狭くなっていることから、隣接トラック位置での温度が低く、前述したような記録保持層から再生層に転写されることが殆どなくなり、隣接トラックからのクロストークを低減できる。これは、隣接トラック間のピッチ(いわゆるトラックピッチ)pをより狭く(高密度に)してトラック密度を高めることにもなり、記録密度の向上が図れる。
【0046】
この図5の具体例では、記録ピットRPに関する各部寸法として、レーザ光走査方向に直交する方向(ディスク径方向)のピット配置間隔、いわゆるトラックピッチをpとし、レーザ光走査方向(トラック方向)に沿ったピット配列間隔の最短間隔、いわゆるピット記録最短周期(線記録密度の逆数)をqとし、レーザ光走査方向に直交する方向(ディスク径方向)のピット幅をhとしている。図5では、各記録ピットRPが上記最短記録周期qで配列されている状態を図示しているが、記録データに応じてこの配列間隔(及びレーザ走査方向に沿ったピットの長さ)が変化することは勿論である。
【0047】
以上のことは、上記消去型の光磁気ディスクや、前述した浮き出し型の光磁気ディスクの場合も同様である。例えば、消去タイプの再生方法が適用される光磁気ディスクとしては、前記図2と共に説明したように、光磁気記録用アモルファス稀土類(Gd,Tb)−鉄属(Fe,Co)フェリ磁性膜から成る交換結合磁性多層膜構造を有し、記録保持層は例えばTbFeCoで構成され、キュリー温度が300°C、切断層(中間層)は例えばTbFeCoAlでキュリー温度Tが120°C、再生層は例えばGdFeCoでキュリー温度が400°C以上の材料がそれぞれ用いられるものが使用される。また、浮き出しタイプの再生方法が適用される光磁気ディスクとしては、記録保持層は例えばTbFeCoでキュリー温度が250°C、中間層は例えばGdFeCoでキュリー温度が250°C、再生補助層は例えばTbFeCoAlでキュリー温度が120°C、再生層は例えばGdFeCoでキュリー温度が300°C以上の材料がそれぞれ用いられるものが使用される。
【0048】
以上説明した本発明の実施例は、信号の記録が可能な光磁気記録媒体を用いる例であったが、次に、本発明を反射率変化型の光記録媒体に適用した実施例について、以下に説明する。
【0049】
この反射率変化型の光記録媒体に関する技術としては、本件出願人が先に特願平2−94452号の明細書及び図面において光ディスクの信号再生方法を提案しており、また、特願平2−291773号の明細書及び図面において光ディスクを提案している。すなわち、前者においては、信号に応じて位相ピットが形成されるとともに温度によって反射率が変化する光ディスクに対して読み出し光を照射し、読み出し光の走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取ることを特徴とする光ディスクの信号再生方法を提案しており、後者においては、位相ピットが形成された透明基板上に、相変化によって反射率が変化する材料層が形成されてなり、読み出し光が照射されたときに、上記材料層が、読み出し光の走査スポット内で部分的に相変化するとともに、読み出し後には初期状態に戻ることを特徴とする、いわゆる相変化型の光ディスクを提案している。
【0050】
ここで、上記材料層として、溶融後結晶化し得る相変化材料層を用い、読み出し光が照射されたときに、この相変化材料層が読み出し光の走査スポット内で部分的に溶融結晶化領域で液相化して反射率が変化すると共に、読み出し後には結晶状態に戻るようにすることが好ましい。
【0051】
このような反射率変化型の光記録媒体、特に相変化型の光ディスクを用いた本発明による再生方法の他の実施例について説明する。この実施例に用いられる相変化型の光ディスクは、図6に要部の概略断面図を示すように、位相ピット101が形成された透明基板102上(図中では下面側)に、第1の誘電体層103を介して相変化材料層104が形成され、この材料層104の上(図中の下面側、以下同様)に第2の誘電体層105が形成され、その上に反射膜106が形成されてなっている。これら第1の誘電体層103及び第2の誘電体層105によって光学特性、例えば反射率等の設定がなされる。さらに必要に応じて、反射膜106の上に保護膜(図示せず)が被着形成されることも多い。
【0052】
この他、この相変化型の光ディスクの構造としては、例えば図7に示すように、ピット101が形成された透明基板102上に直接的に相変化材料層104のみを密着形成したものを用いてもよく、また、図8に示すように、位相ピット101が形成された透明基板102上に、第1の誘電体層103、相変化材料層104、及び第2の誘電体層105を順次形成したものを用いてもよい。
【0053】
ここで、上記透明基板102としては、ガラス基板、ポリカーボネートやメタクリレート等の合成樹脂基板等を用いることができ、また、基板上にフォトポリマを被着形成してスタンパによって位相ピット101を形成する等の種々の構成を採ることができる。
【0054】
上記相変化材料層104に使用可能な材料としては、読み出し光の走査スポット内で部分的に相変化し、読み出し後には初期状態に戻り、相変化によって反射率が変化するものが挙げられる。具体的には、Sb2 Se3 、Sb2 Te3 等のカルコゲナイト、すなわちカルコゲン化合物が用いられ、また、他のカルコゲナイトあるいは単体のカルコゲンとして、Se、Teの各単体、さらにこれらのカルコゲナイト、すなわちBiTe、BiSe、In−Se、In−Sb−Te、In−SbSe、In−Se−Tl、Ge−Te−Sb、Ge−Te等のカルコゲナイト系材料等が用いられる。このようなカルコゲン、カルコゲナイトによって相変化材料相104を構成するときは、その熱伝動率、比熱等の特性を、半導体レーザ光による読み出し光によって良好な温度分布を形成する上で望ましい特性とすることができ、後述するような溶融結晶化領域での溶融状態の形成を良好に行うことができ、S/NあるいはC/Nの高い超高解像度の再生を行うことができる。
【0055】
また上記第1の誘電体層103及び第2の誘電体層105としては、例えばSi3 N4 、SiO、SiO2 、AlN、Al2 O3 、ZnS、MgF2 等を用いることができる。さらに、上記反射膜106としては、Al、Cu、Ag、Au等を用いることができ、これらの元素に少量の添加物が添加されたものであってもよい。
【0056】
以下、相変化型の光ディスクの具体例として、位相ピットが形成された透明基板上に、溶融後結晶化し得る相変化材料層が形成されてなり、読み出し光が照射されたときに、上記相変化材料層が読み出し光の走査スポット内で部分的に溶融結晶化領域で液相化して反射率が変化すると共に、読み出し後には結晶状態に戻るようなものであって、上記図6の構成を有する光ディスクに本発明を適用した例について説明する。
【0057】
図6の透明基板102としては、いわゆるガラス2P基板を使用し、この基板102の一主面に形成される位相ピット101は、トラックピッチ1.6μm、ピット深さ約1200Å、ピット幅0.5μmの設定条件で形成した。そして、このピット101を有する透明基板102の一主面にAlNよりなる第1の誘電体層103を被着形成し、これの上(図では下面側、以下同様)に相変化材料層104としてSb2 Se3 を被着形成した。さらに、これの上にAlNによる第2の誘電体層105を被着形成し、さらにこれの上にAl反射膜106を被着形成した。
【0058】
このような構成の光ディスクにおいて、信号が記録されていない部分すなわち位相ピット101が存在しない鏡面部分を用いて、先ず以下の操作を行った。
【0059】
すなわち、最初に上記光ディスクの1点にフォーカスさせるように例えば780nmのレーザ光を照射して、徐冷して初期化(結晶化)する。次に、同一点にレーザパワーPを、0<P≦10mWの範囲で固定してレーザパルス光を照射した。この場合、パルス幅tは、260nsec ≦t≦2.6μsec とした。その結果、パルス光照射前と、照射後の冷却(常温)後とで、両固相状態での反射率が変化すれば、材料層が結晶から非晶質に変化したことになる。そして、この操作で、最初と最後で反射率変化がなかった場合でも、パルス光の照射中に、戻り光量が一旦変化したとすれば、それは結晶状態の膜が一旦液相化されて再び結晶化されたことを意味する。このように一旦液相状態になって後、温度低下によって再び結晶化状態になり得る溶融化状態の領域を、溶融結晶化領域と称する。
【0060】
図9は、上述のように相変化材料層104としてSb2 Se3 を用いた場合において、横軸に照射レーザ光パルス幅を、縦軸にレーザ光パワーをそれぞれとり、これらの各値と相変化材料層104の相状態を示したものである。同図中、曲線aより下方の斜線を付して示した領域R1 は、相変化材料層104が溶融化しない初期状態を保持したままである場合の領域である。同図において曲線aより上方においてはレーザ光スポット照射によって液相すなわち溶融状態になるが、特に曲線aとbとの間の領域R2 は、レーザ光スポットが排除されて(常温程度にまで)冷却されることによって固相化されたときに結晶化状態に戻る溶融結晶化領域であり、これに対して曲線bより上方の交差斜線で示す領域R3 は、レーザ光スポットを排除して冷却されて固相化されたときに非晶質すなわちアモルファス状態になる溶融非晶質化領域である。
【0061】
本実施例の上記具体例においては、図9における溶融結晶化領域R2 での液相状態が再生時に生じ得るように、その再生時の読み出し光の照射による加熱状態から常温までの冷却過程において、その融点MPから固相化に至るに要する時間Δtが結晶化に要する時間t1 より大となるように、再生光パワー、光ディスクの構成、材料、各膜厚等の選定がなされる。
【0062】
上記具体例において、初期化状態の反射率すなわち結晶化状態の反射率よりも、溶融状態での反射率が高くなるように各層の厚さ等を設定している。
次に、上述のような相変化型光ディスクの他の具体例として、相変化材料層104にSb2 Te3 を用いた場合において、上記図9と同様にその相変化状態を測定した結果を図10に示す。この図10において、上記図9と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。この場合も、結晶化状態すなわち初期化状態における反射率よりも溶融状態の反射率を高めるように、各層の厚み等を選定している。
【0063】
なお、Sb2 Se3 、Sb2 Te3 等のカルコゲナイトあるいはカルコゲンにおいて、非晶質状態の反射率と、溶融状態の反射率は殆ど同程度の値を示す。そして、本発明の実施例に用いられる光ディスクは、その再生に当たって該光ディスクに対する走査スポット内における温度分布を利用して超高解像度をもって再生する。
【0064】
ここで、本発明の実施例による上記相変化型光ディスクにレーザ光ビームを照射した場合を、図11を参照しながら説明する。
【0065】
図11において、横軸はスポットの走査方法Xに関する位置を示したもので、今光ディスクにレーザが照射されて形成されたビーム・スポットSPの光強度分布は、同図中破線aのようになる。これに対して相変化型材料層104における温度分布は、ビーム・スポットSPの走査速度に対応してビーム走査方向Xの後方側にやや遅れて表れ、同図中実線bのようになる。
【0066】
ここで、レーザ光ビームが図中の矢印X方向に走査されているとき、媒体の光ディスクは、ビーム・スポットSPに対して、走査方向の先端側から次第に温度が上昇し、遂には相変化型材料層104の融点MP以上の温度となる。この段階で、相変化型材料層104は初期の結晶状態から溶融状態になり、この溶融状態への移行によって、例えば反射率が上昇する。この場合、ビーム・スポットSP内で図中斜線を付して示した領域PX の反射率が高くなる。すなわち、ビーム・スポットSP内で、位相ピット101の読み出しが可能な領域PX と、結晶化状態を保持して読み出しが殆ど不可能な領域PZ とが存在する。従って、図示のように同一スポットSP内に例えば2つの位相ピット101が存在している場合においても、反射率が大なる領域PX に存在する1つの位相ピット101に関してのみその読み出しを行うことができ、他の位相ピットに関しては、これが反射率が極めて低い領域PZ にあってこれの読み出しがなされない。このように、同一スポットSP内に複数の位相ピット101が存在しても、単一の位相ピット101に関してのみその読み出しを行うことができる。
【0067】
従って、上記読み出し光ビームの波長をλ、対物レンズの開口数をNAとするとき、上記読み出し光ビームの走査方向に直交する方向の記録信号の最短の位相ピット間隔(いわゆるトラックピッチ)をスポット径の1/2以下としても良好な読み出しが行えることが明らかであり、超高解像度をもって信号の読み出しを行うことができ、記録密度、特にトラック密度の向上が図れ、媒体記録容量を増大させることができる。
【0068】
さらに、本発明のように、光源として用いられる半導体レーザからの光ビームが光ディスクに照射されたとき、図11のCに示すように、楕円形状のビーム・スポットSPC の短軸bを、ビーム走査方向Xに対して直交する方向としているため、上記図11のAの反射率が大なる領域PX の同方向の幅をより狭くでき、隣接トラックからのクロストークを大幅に低減できる。
【0069】
ところで、上述した例においては、相変化材料層104が溶融状態のときに反射率が高く結晶状態で低い膜厚等の諸条件を設定した場合であるが、各層の構成、厚さ、相変化材料の構成、厚さ等の諸条件の選定によって溶融状態においての反射率を低くし結晶状態における反射率を高める構成とすることもでき、この場合は、図11で示したレーザ光スポットSP内の高温領域PX 内に1つの位相ピット101が存在するようにし、この領域PX にある1つの位相ピット101からのみその読み出しを行う構成とすることができる。また、レーザ光照射により温度が上昇して、例えば上記溶融非晶質化領域R3 に達すること等により、常温にまで冷却された状態では上記結晶化状態等の初期状態に戻らないような不可逆的な相変化を生ずる場合であっても、何らかの手段で初期化する操作を行えばよく、本発明の要旨から逸脱するものではない。例えば、再生のためのレーザスポットの後に長円系のスポットを照射し、相変化材料層104を上記溶融結晶化領域R2 にまで加熱したり、融点MP以下で結晶化温度以上の温度に加熱してやれば、相変化材料層104は非晶質(アモルファス)状態から結晶状態に復帰し、いわゆる初期化される。
【0070】
なお、上述した実施例においては、媒体の相変化により反射率を変化させているが、反射率変化はいかなる現象を利用したものであってもよく、例えば、図12に示す本発明のさらに他の実施例のように、干渉フィルタにおける水分吸着による分光特性の変化を利用して、温度によって反射率を変化させてもよい。
【0071】
すなわち、この図12において、位相ピット131が形成された透明基板132上に、屈折率の大きく異なる材料を、それぞれ厚さが再生光の波長λの1/4となるように繰り返し成膜することにより干渉フィルタが形成されてなるものである。本例では、屈折率の大きく異なる材料として、MgF層133(屈折率1.38)と、ZnS層134(屈折率2.35)を採用した。勿論、これに限らず屈折率の差が大きくなる材料の組合せであれば如何なるものであってもよく、例えば、屈折率の小さなSiO(屈折率1.5)等が挙げられ、また屈折率の大きな材料としてはTiO2 (屈折率2.73)やCeO2 (屈折率2.35)等が挙げられる。
【0072】
上述のMgF層133やZnS層134は蒸着形成されるが、これらを蒸着形成する際に、到達真空度を例えば10−4 Torr 程度と通常よりも低く設定すると、膜構造がいわゆるポーラスなものとなり、そこに水分が残留する。そして、この水分が残留した膜からなる干渉フィルタにおいては、室温と水の沸点近くまで温度を上げた時とで、例えば図13に示すように、反射率分光特性が大きく異なる。すなわち、室温では図中曲線iで示すように波長λR を変曲点とする特性を示すのに対して、沸点近くにまで温度を上げると、図中曲線iiで示すように波長λH を変曲点とする特性になり、温度が下がると再び曲線iで示す特性に戻るというように、急峻な波長シフトが観察される。この現象は、水分が気化することにより屈折率が大きく変わり、この影響で分光特性が変化することによるものと考えられている。
【0073】
従って、再生光の光源の波長をこれら変曲点λR 、λH の中間の波長λ0 に選べば、室温時と加熱時でダイナミックに反射率が変化することになる。
【0074】
本実施例では、この反射率変化を利用して高密度再生を行う。高密度再生が可能となる原理は、前述した図11とともに説明した通りで、この場合には水分が気化して波長シフトが起こった領域が高反射率領域に相当し、温度が上昇していない部分がマスクされた形となる。本例では温度が下がると反射率特性が元の状態に戻るので、特別な消去操作は必要ない。
【0075】
なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、例えば、上記光記録媒体としては、ディスク状のみならず、カード状、シート状等の媒体にも本発明を適用することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る光記録媒体の信号再生方法によれば、再生層と記録保持層とを有する光磁気記録媒体に対してレーザ光を照射して、記録保持層の記録信号を再生層に転写して磁気光学的に信号を読み取る際に、レーザ光源として半導体レーザを用い、この半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向をレーザ走査方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列間隔より大きい楕円形状とし、上記光記録媒体に形成される高温領域の上記短軸方向の幅を隣接トラックの記録ピット間の幅よりも小さくすることにより、この方向のスポット形状が短くなって、上記再生層に転写されて信号読み取り可能となる領域におけるレーザ走査方向に直交する方向の幅が狭まり、隣接トラックからのクロストークを低減でき、また、トラックピッチを狭くしてトラック密度を高め、記録容量を高めることができる。
【0077】
また、信号に応じて位相ピットが形成されるとともに温度によって反射率が変化する記録媒体に対して読み出し光ビームを照射し、読み出し光ビームの走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取る場合にも同様に、読み出し光ビームの光源として半導体レーザを用い、当該半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向を上記読み出し光ビームの走査方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列間隔より大きい楕円形状とし、上記光記録媒体に形成される高温領域の上記短軸方向の幅を隣接トラックの記録ピット間の幅よりも小さくすることにより、この方向のスポット径が短くなるため、上記再生層に転写されて信号読み取り可能となる信号検出領域におけるレーザ走査方向に直交する方向の幅が狭まり、隣接トラックからのクロストークを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となる光磁気記録媒体の信号再生方法を説明するための図である。
【図2】半導体レーザの構造を説明するための図である。
【図3】媒体上のレーザ光のスポットの長軸と短軸の各方向の光強度分布を示す図である。
【図4】再生装置の光学系の概略構成を示す模式図である。
【図5】光磁気記録媒体上のレーザ光のスポットを概略的に示す平面図である。
【図6】本発明に係る光記録媒体の信号再生方法の他の実施例に用いられる相変化型光ディスクの一例の要部を示す概略断面図である。
【図7】上記他の実施例に用いられる相変化型光ディスクの他の例の要部を示す概略断面図である。
【図8】上記相変化型光ディスクのさらに他の例の要部を示す概略断面図である。
【図9】上記相変化型光ディスクの説明に供する相変化状態を示す図である。
【図10】上記相変化型光ディスクの説明に供する他の相変化状態を示す図である。
【図11】上記相変化型光ディスクの説明に供する読み出し光スポットと温度分布との関係を示す図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例として干渉フィルタを用いた反射率変化型の光ディスクの要部を示す概略断面図である。
【図13】干渉フィルタにおける温度による反射率分光特性の変化の様子を示す特性図である。
【図14】レーザビームのスポット径と、再生可能な記録ピットの記録密度との関係を示す図である。
【図15】消去タイプの光磁気記録媒体、その再生方法及び媒体の実質的な再生領域を説明するための図である。
【図16】浮き出しタイプの光磁気記録媒体、その再生方法及び媒体の実質的な再生領域を説明するための図である。
【図17】光磁気記録媒体上のレーザ光のスポットを概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
21・・・・・半導体レーザ
22・・・・・活性層
23,24・・クラッド層
25・・・・・正電極
26・・・・・負電極
SP・・・・・ビーム・スポット
RP・・・・・情報記録ピット
Claims (2)
- 少なくとも磁気的に結合されている再生層と記録保持層とを有して成る多層膜を記録層とし、上記記録保持層に信号が磁気記録され、上記再生層の磁化の向きが揃えられた状態の光磁気媒体に対して、上記再生層に光ビームを照射することにより当該再生層を加熱して高温領域を形成し、上記記録保持層に磁気的に記録されている信号を上記再生層に転写するとともに、読み出し光ビームの走査スポット内で部分的に温度を変化させながら磁気光学効果により光信号に変換して読み取る光記録媒体の信号再生方法において、
上記読み出し光ビームの光源として半導体レーザを用い、当該半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向を上記読み出しビームの走査方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列方向より大きい楕円形状とすることを特徴とする光記録媒体の信号再生方法。 - 信号に応じて位相ピットが形成されるとともに温度によって反射率が変化する記録媒体に対して読み出し光ビームを照射して高温領域を形成し、読み出し光ビームの走査スポット内で反射率を部分的に変化させながら位相ピットを読み取るような光記録媒体の信号再生方法において、
上記読み出し光ビームの光源として半導体レーザを用い、当該半導体レーザからの出射光のスポット形状の短軸方向を上記読み出し光ビームの走査方向に直交する方向とし、長軸方向の径をレーザ走査方向の記録ピットの最短配列間隔より大きい楕円形状とすることを特徴とする光記録媒体の信号再生方法。
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