JP3624882B2 - プロジェクション用ガラスファンネル - Google Patents

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  • Vessels, Lead-In Wires, Accessory Apparatuses For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Manufacture Of Electron Tubes, Discharge Lamp Vessels, Lead-In Wires, And The Like (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、冷却手段の固定に利用されるパッド部が側壁部の外壁面に一体に突設されてなるプロジェクション用ガラスファンネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、テレビ受像機等の構成要素である陰極線管としては、いわゆる直視型陰極線管と、プロジェクション用陰極線管とが公知となっている。これらの陰極線管は、画像が映し出される略矩形のフェース部を有するパネルと、略矩形の大開口部から略円形の小開口部に至る略漏斗状の側壁部を有するファンネルとを備え、該ファンネルの小開口部に、電子銃が挿入されるネック部を連設して構成される。そして、このパネルとファンネルとは、雌型と雄型とからなる金型を用いて溶融ガラスをプレス成型することにより製造されるものである。
【0003】
前記直視型陰極線管は、表示画面にRGBの光の三原色を配列させることにより画像を映し出す構成であるのに対して、前記プロジェクション用陰極線管は、3つの陰極線管によりそれぞれRGBの光を照射させ、それらの光を集光してスクリーンに拡大投影することにより画像を映し出す構成である。このようにプロジェクション用陰極線管においては、その表示画面の光をスクリーンに拡大投影する必要があることから、直視型陰極線管よりも高輝度及び高精細な表示特性が要求される。これに起因して、プロジェクション用陰極線管のパネルは、極めて高温となるため、その表面側に冷却手段を付設するのが通例である。
【0004】
この冷却手段は、パネルのフェース部に形成される蛍光面に対して所定距離を隔てた位置に正確に配設する必要があるため、例えば特公平5−27209号公報に開示されているように、パネルに溶着されるファンネルの側壁部に、冷却手段を固定する治具の位置決め部となるパッド部が一体形成される。このパッド部は、ファンネル中心軸線と略直角な端面を有しており、この端面が冷却手段を位置決めするための基準端面とされる。更に、パッド部は、この基準端面から大開口部側に向かって側壁部の外壁面に至る側面を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来においては、上述のパッド部に要求される条件として、基準端面により冷却手段を適正に位置決めすることのみが重要視されていたことから、基準端面の平面性のみが注目され、基準端面の形状や、ファンネルの側壁部外壁面とパッド部との連接部の形状等については、特に関心が示されていなかった。
【0006】
したがって、近年において製作或いは設計が試みられているパッド部は、例えば図4に示すような形状を呈していた。すなわち、図4(a)に示すように、パッド部6’の基準端面7’の突出稜線部は、頂部に直線部分8’を有すると共に、この直線部分8’の両側に、側壁部4’の外壁面4a’からの立ち上がり部9’、9’が屈曲状に繋がる形状とされている。また、側壁部4’の外壁面4a’と立ち上がり部9’、9’との連接部9a’、9a’は、例えば曲率半径が10mm未満の小さな円弧で構成されている。
【0007】
更に、図4(b)に示すように、ファンネル中心軸線Z’を含み且つ前記頂部8’を通過する仮想平面と直交する方向視においては、基準端面7’の頂部8’から大開口部側(矢印A側)に向かって側壁部4’の外壁面4a’に至る第1側面部10’ の抜け勾配、つまりファンネル中心軸線Z’に対する第1側面部10’の傾斜角度α’が10°未満に設定されている。また、この第1側面部10’と側壁部4’の外壁面4a’との連接部12’の曲率半径は例えば3mm未満とされている。更に、基準端面7’のファンネル中心軸線Z’側の端縁と側壁部4’の外壁面4a’との連接部11’の曲率半径は例えば3mm未満とされている。
【0008】
しかも、図4(c)の断面図、つまり図4(a)のx−x線に沿い且つ図4(b)のy−y線にしたがって切断した縦断面図に示すように、ファンネル中心軸線Z’と直角に該中心軸線Z’から、基準端面7’の頂部8’と立ち上がり部9’との隣接部位に向かう仮想直線に沿う方向視においては、基準端面7’の前記隣接部位から大開口部側に向かって側壁部4’の外壁面4a’に至る第2側面部13’の勾配、つまりファンネル中心軸線Z’に対する第2側面部13’の大開口部側に向かう拡開角度(傾斜角度)β’,β’が10°未満とされている。また、この第2側面部13’と側壁部4’の外壁面4a’との連接部14’の曲率半径は3mm未満とされている。そして、第1側面部10’及び第2側面部13’を含む側面全域と基準端面7’との連接部15’の曲率半径は2mm未満とされている。
【0009】
以上のようなパッド部6’についての提案がなされた後においては、この種のプロジェクション用ガラスファンネルのプレス成型に関して、その効率の改善が追求されるに至り、これに伴って、金型(雌型)からファンネルを取り出す際の抜け性或いは成型性の問題が表面化されるに至った。
【0010】
具体的には、上述のように、パッド部の頂部が直線部分を有し且つその両側に屈曲部を有している点、パッド部の各部と側壁部の外壁面との連接部の曲率半径が小さい点、パッド部の側面部の抜け勾配が小さい点等が原因となって、次に示すような問題が生じるに至った。すなわち、ファンネルのプレス成型時においては、ガラスを金型のパッド部に対応する成型面部に充分に充填させることが困難になり、充填不足による欠陥が生じると共に、ファンネルを金型から取り出す際の抜け性が悪化し、パッド部に擦り傷や微小クラックが発生するという問題が生じる。
【0011】
このような問題を解消すべく、金型のパッド部に対応する成型面部に潤滑油を供給することを試みられているが、このような手法では、潤滑油が原因となる油汚れやシワの発生等の新たな問題が生じる。また、金型温度を低下させることにより抜け性を良好にすることは理論上可能であるが、これを最適温度に維持することが困難であるため、温度低下の度合いが僅かでも過度になった場合には、クラックが発生する等の不具合を招く。
【0012】
しかも、このように成型手法や成型条件を変更して問題解決を企図するには、多大な手間や労苦を要するばかりでなく、微妙な温度調整等が必要になることから熟練を要することになるが、それにも拘わらず、近年における品質高水準化の要請に応じようとすれば、製品歩留まりの大幅な悪化を招くことになる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プロジェクション用ガラスファンネルのパッド部の形状に効果的な改良を加えて成型性や抜け性等を改善することにより、パッド部における擦り傷及び微小クラックの発生やガラスの充填不足等の問題を回避し、効率良く製品歩留まりを向上させることを技術的課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するため、本発明者らが鋭意努力した結果、以下に示すような発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、略矩形の大開口部と略円形の小開口部とを有する略漏斗状の側壁部の外壁面に、冷却手段の固定に利用されるパッド部を一体に突設してなるプロジェクション用ガラスファンネルにおいて、前記パッド部の小開口部側端部に形成された基準端面の突出稜線部が、頂部を構成する第1湾曲部と、立ち上がり部を構成する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部と第2湾曲部とが屈曲部を介在させることなく滑らかに繋がると共に、前記第2湾曲部が前記側壁部の外壁面に屈曲部を介在させることなく滑らかに連なることを特徴とするものである。ここで、「基準端面の突出稜線部」とは、側壁部の外壁面に対する基準端面の突出側の稜線部を意味する。
【0016】
このような構成によれば、パッド部の基準端面の頂部が第1湾曲部で構成されると共に、側壁部の外壁面からの立ち上がり部が第2湾曲部で構成され、しかも頂部と立ち上がり部との相互間、及び立ち上がり部と側壁部の外壁面との相互間には、屈曲部が存在していないことから、ファンネルのプレス成型時における金型内でのガラスの流れが極めて円滑になる。これにより、パッド部の立ち上がり部から頂部に至るまでガラスが適正且つ充分に充填されることになり、シワの発生やガラスの充填不足等の問題が効率良く回避される。しかも、ファンネルの金型からの取り出し時における抜け性或いは離型性が改善され、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生する事態を効果的に抑止できる。
【0017】
そして、前記基準端面の突出稜線部は、複数の湾曲部のみで構成されていることが好ましい。このようにすれば、基準端面の頂部に直線部分が存在している場合等に生じ得るプレス成型時のガラスの流れ阻害が回避され、ガラスの流動性がより一層良好なものとなるため、上述のシワの発生やガラスの充填不足等をより確実に回避することができる。
【0018】
この場合、前記第1湾曲部が円弧(単一の円弧)で構成され、該円弧の曲率半径が2mm以上で且つ20mm以下であることが好ましい。すなわち、基準端面の頂部が円弧で構成されていれば、これを他の湾曲形状とする場合に比して、金型の設計製作やその後のメンテナンスが容易になる。そして、その円弧の曲率半径が2mm未満であると、プレス成型時における頂部周辺へのガラスの充填不足を回避できなくなると共に、頂部が屈曲形状に近い形状となることから、ガラスの流れ阻害をも回避できなくなる。これに対して、その円弧の曲率半径が20mmを超えると、基準端面の側壁部外壁面に沿う長さが過度に長尺となって、パッド部の存在により側壁部が厚肉となる範囲が広くなるため、プレス成型後におけるパッド部の冷却が他の部分と比較して不充分になり、変形やスリ傷等が発生する要因となる。したがって、頂部の円弧の曲率半径を上記の設定範囲としておけば、これらの不具合を有効に回避できる。
【0019】
また、前記第2湾曲部が円弧で構成され、該円弧の曲率半径が10mm以上で且つ500mm以下であることが好ましい。すなわち、立ち上がり部の円弧の曲率半径が10mm未満であると、パッド部が側壁部の外壁面から急激に立ち上がる形状となり、ガラスの流れ阻害や充填不足等を招く虞れが生じる。これに対して、その円弧の曲率半径が500mmを超えると、パッド部の立ち上がりが過度に緩やかな状態で側壁部の外壁面に沿って広がるため、パッド部と側壁部との見かけ上の差がなくなると共に、パッド部に多量の無駄部分が形成されることになり、材料の節減を図る上で不利となる。したがって、立ち上がり部の円弧の曲率半径を上記の設定範囲としておけば、これらの不具合を有効に回避できる。
【0020】
更に、前記パッド部の基準端面の頂部から大開口部側に向かって前記側壁部の外壁面に至る第1側面部が、ファンネル中心軸線を含み且つ前記頂部を通過する仮想平面と直交する方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜しており、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度が10°以上で且つ45°以下であることが好ましい。すなわち、パッド部の第1側面部の傾斜角度つまり抜け勾配が10°未満であると、プレス成型後にファンネルを金型から取り出す際の抜け性が悪化して、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生し、品質低下を余儀なくされる。これに対して、その傾斜角度が45°を超えると、パッド部と側壁部との見かけ上の差がなくなり、パッド部に多量の無駄部分が形成されるため、材料コスト面で不利となる。したがって、第1側面部の傾斜角度を上記の設定範囲としておけば、これらの不具合を有効に回避できる。
【0021】
また、前記基準端面のファンネル中心軸線側の端縁が第3湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なると共に、前記第1側面部の大開口部側の端縁が第4湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なり、前記第3湾曲部及び第4湾曲部が、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成されていることが好ましい。すなわち、これらの曲率半径が5mm未満であると、側壁部からパッド部に移行する過程での形状変化が急激となり、プレス成型時におけるガラスの流れ阻害や充填不足を回避できず、シワや欠けの発生要因となる。これに対して、これらの曲率半径が500mmを超えると、パッド部の存在により側壁部が厚肉となる範囲が広くなり、プレス成型後におけるパッド部に対する冷却不足の問題が生じる。したがって、第3湾曲部及び第4湾曲部の曲率半径を上記の設定範囲としておけば、これらの不具合を有効に回避できる。
【0022】
更に、前記パッド部の基準端面における頂部と立ち上がり部との隣接部位から大開口部側に向かって側壁部の外壁面に至る第2側面部が、ファンネル中心軸線と直角に該中心軸線から前記隣接部位に向かう仮想直線に沿う方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜しており、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度が15°以上で且つ45°以下であると共に、前記第2側面部の大開口部側の端縁が第5湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なり、該第5湾曲部が、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成されていることが好ましい。この場合、第5湾曲部を構成する円弧の曲率半径を5mm以上で500mm以下としたのは、上述の第3,第4湾曲部と同様の理由によるものである。一方、第2側面部の傾斜角度が15°未満であると、プレス成型後にファンネルを金型から取り出す際の抜け性が悪化して、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生するため、品質の低下を招く。これに対して、その傾斜角度が45°を超えると、パッド部に多量の無駄部分が形成され、材料コスト面で不利となる。したがって、第2側面部の傾斜角度を上記の設定範囲としておけば、これらの不具合を有効に回避できる。
【0023】
そして、前記側壁部の外壁面に対する前記パッド部の連接部の全領域が湾曲部で構成されていることが好適である。すなわち、この両者の連接部の一部だけでなく全領域を湾曲部で構成すれば、成型性の大幅な改善が実現し、熟練等を要することなく品位に優れたファンネルを提供でき、製品歩留まりの向上が図られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプロジェクション用ガラスファンネル(以下、単にファンネルという)を示す斜視図、図2(a)は、ファンネルの要部を示す底面図、図2(b)は、ファンネルを対角軸Lと直交する方向より見た正面図、図2(c)は、ファンネルの要部であるパッド部を示す縦断側面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係るファンネル1は、中心軸線Zの一端に形成された略矩形の大開口部2と、その他端に形成された略円形の小開口部3と、大開口部2から小開口部3に至る略漏斗状の側壁部4とを備える。そして、この側壁部4における各対角部5の外壁面には、冷却手段の固定に利用される計4つのパッド部6が一体に突設されている。これらのパッド部6は、小開口部3側の端部に、冷却手段の位置決め基準となる基準端面7を有している。
【0026】
図2(a)に示すように、パッド部6の基準端面7の突出稜線部は、頂部を構成する第1湾曲部8と、側壁部4の外壁面4aからの立ち上がり部を構成する第2湾曲部9、9とを有する。そして、第1湾曲部8と第2湾曲部9、9とは、屈曲部を介在させることなく滑らかに繋がっており、また第2湾曲部9、9は側壁部4の外壁面4aに屈曲部を介在させることなく滑らかに連なっている。
【0027】
この場合、第1湾曲部8は、曲率半径が2mm以上で20mm以下、好ましくは5mmまたは6mm程度の円弧で構成されると共に、第2湾曲部9、9は、曲率半径が10mm以上で500mm以下、好ましくは15〜30mm程度の円弧で構成されている。そして、本実施形態では、第1湾曲部8を構成する円弧と、第2湾曲部9、9を構成する円弧とが直接繋がっており、したがって基準端面7の突出稜線部は、計3つの円弧のみで形成されている。
【0028】
図2(b)に示すように、ファンネル中心軸線Zを含み且つ前記頂部8を通過する仮想平面と直交する方向視においては、パッド部6の基準端面7の頂部8から大開口部2側に向かって側壁部4の外壁面4aに至る第1側面部10が、小開口部3側に移行するに連れてファンネル中心軸線Zに近づくように傾斜している。そして、ファンネル中心軸線Zに対する第1側面部10の傾斜角度αは、10°以上で45°以下、好ましくは20°程度に設定されている。また、基準端面7のファンネル中心軸線Z側の端縁は、第3湾曲部11を介して側壁部4の外壁面4aに連なると共に、第1側面部10の大開口部2側の端縁は、第4湾曲部12を介して側壁部4の外壁面4aに連なっている。そして、第3湾曲部11及び第4湾曲部12は、曲率半径が5mm以上で500mm以下、好ましくは10mm程度の円弧で構成されている。
【0029】
図2(c)は、同図(a)のa−a線に沿い且つ同図(b)のb−b線にしたがって切断した縦断側面図である。図2(c)に示すように、ファンネル中心軸線Zと直角に該中心軸線Zから、基準端面7の頂部8と立ち上がり部9との隣接部位に向かう仮想直線に沿う方向視においては、基準端面7の前記隣接部位から大開口部2側に向かって側壁部4の外壁面4aに至る第2側面部13が、小開口部3側に移行するにしたがってファンネル中心軸線Zに近づくように傾斜している。そして、ファンネル中心軸線Zに対する第2側面部13の傾斜角度βは、15°以上で45°以下、好ましくは20°程度に設定されている。また、第2側面部13の大開口部2側の端縁は、第5湾曲部14、14を介して側壁部4の外壁面4aに連なっており、この第5湾曲部14は、曲率半径が5mm以上で500mm以下、好ましくは10mm程度の円弧で構成されている。
【0030】
更に、第1側面部10と第2側面部13とを有する側面の全域と、基準端面7の全域とは、第6湾曲部15を介して連なっており、この第6湾曲部15は、曲率半径が2mm以上で5mm以下、好ましくは3mm程度の円弧で構成されている。また、この側面の全域は、底面視が円弧状の湾曲面のみから構成されており、この側面全域の大開口部2側の端縁は、第4湾曲部12及び第5湾曲部14を含めて全周に亘って湾曲部を介して側壁部4の外壁面4aに連なっている。したがって、この側面全域と基準端面7とからなるパッド部6の側壁部4外壁面4aへの連接部は、全域に亘って湾曲部で構成されている。
【0031】
図3は、本発明の実施形態に係るファンネル1の製造に用いる金型装置20を例示するものである。金型装置20の雌型21は、溶融ガラス塊が供給される底型(ボトム金型)22と、該ボトム金型22の上方に上下昇降可能に配備された胴型(シェル金型)23とから構成され、この雌型21の上方に、雄型としての押型(プランジャ金型)24が上下昇降可能に配備される。そして、ボトム金型22は、ファンネル1における側壁部4の外壁面4aの形状を規定する成型面を有し、この成型面にはパッド部6に対応する凹状の成型面部25が形成されている。
【0032】
この金型装置20を使用してファンネル1をプレス成型するには、ボトム金型22に溶融ガラス塊を供給した後、プランジャ金型24を下降させ、同図に示すように、ボトム金型22、シェル金型23及びプランジャ金型24により溶融ガラス塊をファンネル1の形状に押延して成型する。そして、その成型後にプランジャ金型24を上昇させ、更にシェル金型23を上昇させた後にファンネル1を冷却してボトム金型22から取り出し、この時点でプレス成型工程が終了する。この結果、上述のパッド部6を有するファンネル1が得られる。
【0033】
この場合において、ファンネル1のパッド部6は、基準端面7の突出稜線部が第1湾曲部8及び第2湾曲部9で構成されている点、基準端面7と側壁部4の外壁面4aとの連接部が第3湾曲部11で構成されている点、第1側面部10及び第2側面部13を含む側面全域と側壁部4の外壁面4aとの連接部が第4湾曲部12及び第5湾曲部14を含む湾曲部で全て構成されている点、側面全域と基準端面7との連接部が第6湾曲部15で構成されている点、第1側面部10及び第2側面部13がファンネル中心軸線Zに対して充分な角度α,βで傾斜している点等を勘案すれば、プレス成型時におけるファンネル1の成型性が大幅に改善されると共に、ファンネル1のボトム金型22からの取り出し時における抜け性も大幅に改善される。
【0034】
すなわち、プレス成型時におけるパッド部6でのガラスの流れ阻害やパッド部6に対するガラスの充填不足が効率良く回避されると共に、ファンネル1の取り出し時におけるパッド部6の側面や基準端面7への擦り傷及び微小クラックの発生要因も効果的に消失する。これにより、ファンネル1の品質が改善され、製品歩留まりが大幅に向上する。
【0035】
【発明の効果】
以上のように本発明に係るプロジェクション用ガラスファンネルによれば、パッド部に形成された基準端面の突出稜線部が、頂部を構成する第1湾曲部と、立ち上がり部を構成する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部と第2湾曲部とが屈曲部を介在させることなく滑らかに繋がり、前記第2湾曲部が前記側壁部の外壁面に屈曲部を介在させることなく滑らかに連なるものであるから、ファンネルのプレス成型時における金型内でのガラスの流れが極めて円滑になると共に、ファンネルの金型からの取り出し時における抜け性或いは離型性が改善される。これにより、パッド部の立ち上がり部から頂部に至るまでガラスが適正且つ充分に充填され、シワの発生やガラスの充填不足等の問題が効率良く回避されると共に、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生する事態を効果的に抑止できる。
【0036】
そして、前記基準端面の突出稜線部を、複数の湾曲部のみで構成すれば、基準端面の頂部に直線部分が存在している場合等に生じ得るプレス成型時のガラスの流れ阻害が回避され、ガラスの流動性がより一層良好なものとなるため、上述のシワの発生やガラスの充填不足等をより確実に回避することができる。
【0037】
この場合、前記第1湾曲部を、曲率半径が2mm以上で且つ20mm以下の円弧で構成すれば、これを他の湾曲形状とする場合に比して、金型の設計製作やその後のメンテナンスが容易になる。そして、その円弧の曲率半径を2mm未満とした場合の不具合、すなわち、プレス成型時における頂部周辺へのガラスの充填不足や、頂部が屈曲形状に近い形状となる場合のガラスの流れ阻害等、並びにその円弧の曲率半径を20mm超とした場合の不具合、すなわち、基準端面の側壁部外壁面に沿う長さが過度に長尺となって、パッド部の存在により側壁部が厚肉となる範囲が広くなり、プレス成型後におけるパッド部の冷却が他の部分と比較して不充分になることによる変形やスリ傷等の発生が回避される。
【0038】
また、前記第2湾曲部を曲率半径が10mm以上で且つ500mm以下の円弧で構成すれば、その円弧の曲率半径を10mm未満とした場合の不具合、すなわち、パッド部が側壁部の外壁面から急激に立ち上がる形状となることによるガラスの流れ阻害や充填不足等、並びにその円弧の曲率半径を500mm超とした場合の不具合、すなわち、パッド部の立ち上がりが過度に緩やかな状態で側壁部の外壁面に沿って広がり、パッド部に多量の無駄部分が形成されることによる材料費の高騰等が回避される。
【0039】
更に、前記パッド部の基準端面の頂部から大開口部側に向かって側壁部の外壁面に至る第1側面部を、ファンネル中心軸線を含み且つ前記頂部を通過する仮想平面と直交する方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜させ、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度を10°以上で且つ45°以下とすれば、その傾斜角度を10°未満とした場合の不具合、すなわち、プレス成型後にファンネルを金型から取り出す際の抜け性が悪化して、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生し、品質が低下すること、並びにその傾斜角度を45°超とした場合の不具合、すなわち、パッド部と側壁部との見かけ上の差がなくなり、パッド部に多量の無駄部分が形成され、材料コスト面で不利となる事態が回避される。
【0040】
また、前記基準端面のファンネル中心軸線側の端縁を第3湾曲部を介して側壁部の外壁面に連ならせ、前記第1側面部の大開口部側の端縁を第4湾曲部を介して側壁部の外壁面に連ならせ、前記第3湾曲部及び第4湾曲部を、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成すれば、これらの曲率半径を5mm未満とした場合の不具合、すなわち、側壁部からパッド部に移行する過程での形状変化が急激となり、プレス成型時におけるガラスの流れ阻害や充填不足が生じることによるシワや欠けの発生、並びにこれらの曲率半径を500mm超とした場合の不具合、すなわち、パッド部の存在により側壁部が厚肉となる範囲が広くなり、プレス成型後のパッド部に対して適切な冷却が不能になる事態が回避される。
【0041】
更に、前記パッド部の基準端面における頂部と立ち上がり部との隣接部位から大開口部側に向かって側壁部の外壁面に至る第2側面部を、ファンネル中心軸線と直角に該中心軸線から前記隣接部位に向かう仮想直線に沿う方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜させ、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度を15°以上で且つ45°以下とすれば、その傾斜角度を15°未満とした場合の不具合、すなわち、プレス成型後にファンネルを金型から取り出す際の抜け性が悪化して、パッド部に擦り傷や微小クラック等が発生し、品質の低下を招くこと、並びにその傾斜角度を45°超とした場合の不具合、すなわち、パッド部に多量の無駄部分が形成され、材料コスト面で不利となる事態が回避される。
【0042】
しかも、前記第2側面部の大開口部側の端縁を第5湾曲部を介して側壁部の外壁面に連ならせ、該第5湾曲部を、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成すれば、上述の第3,第4湾曲部の場合と同様の利点を享受できる。
【0043】
そして、前記側壁部の外壁面に対する前記パッド部の連接部の全領域を湾曲部で構成すれば、成型性の大幅な改善が実現し、熟練等を要することなく品位に優れたファンネルを提供でき、製品歩留まりの向上が有効に図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るプロジェクション用ガラスファンネルの斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施形態に係るプロジェクション用ガラスファンネルの要部を示す拡大底面図、図2(b)は、そのファンネルを対角軸と直交する方向より見た正面図、図2(c)は、図2(a)のa−a線に沿い且つ図2(b)のb−b線にしたがって切断した縦断側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプロジェクション用ガラスファンネル及びその製造に用いられる金型装置を示す縦断正面図である。
【図4】図4(a)は、本発明者らが既に提案したプロジェクション用ガラスファンネルの要部を示す底面図、図4(b)は、そのファンネルを対角軸と直交する方向より見た正面図、図4(c)は、図4(a)のx−x線に沿い且つ図4(b)のy−y線にしたがって切断した縦断側面図である。
【符号の説明】
1 ファンネル(プロジェクション用ガラスファンネル)
2 大開口部
3 小開口部
4 側壁部
4a 外壁面
5 対角部
6 パッド部
7 基準端面
8 第1湾曲部(頂部)
9 第2湾曲部(立ち上がり部)
10 第1側面部
11 第3湾曲部
12 第4湾曲部
13 第2側面部
14 第5湾曲部

Claims (8)

  1. 略矩形の大開口部と略円形の小開口部とを有する略漏斗状の側壁部の外壁面に、冷却手段の固定に利用されるパッド部を一体に突設してなるプロジェクション用ガラスファンネルにおいて、
    前記パッド部の小開口部側端部に形成された基準端面の突出稜線部が、頂部を構成する第1湾曲部と、立ち上がり部を構成する第2湾曲部とを有し、前記第1湾曲部と第2湾曲部とが屈曲部を介在させることなく滑らかに繋がると共に、前記第2湾曲部が前記側壁部の外壁面に屈曲部を介在させることなく滑らかに連なることを特徴とするプロジェクション用ガラスファンネル。
  2. 前記基準端面の突出稜線部が、複数の湾曲部のみで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  3. 前記第1湾曲部が円弧で構成され、該円弧の曲率半径が2mm以上で且つ20mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  4. 前記第2湾曲部が円弧で構成され、該円弧の曲率半径が10mm以上で且つ500mm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  5. 前記パッド部の基準端面の頂部から大開口部側に向かって前記側壁部の外壁面に至る第1側面部が、ファンネル中心軸線を含み且つ前記頂部を通過する仮想平面と直交する方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜しており、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度が10°以上で且つ45°以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  6. 前記基準端面のファンネル中心軸線側の端縁が第3湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なると共に、前記第1側面部の大開口部側の端縁が第4湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なり、前記第3湾曲部及び第4湾曲部が、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  7. 前記パッド部の基準端面における頂部と立ち上がり部との隣接部位から大開口部側に向かって側壁部の外壁面に至る第2側面部が、ファンネル中心軸線と直角に該中心軸線から前記隣接部位に向かう仮想直線に沿う方向視において、小開口部側に移行するにしたがってファンネル中心軸線に近づくように傾斜しており、該ファンネル中心軸線に対するその傾斜角度が15°以上で且つ45°以下であると共に、前記第2側面部の大開口部側の端縁が第5湾曲部を介して前記側壁部の外壁面に連なり、該第5湾曲部が、5mm以上で且つ500mm以下の曲率半径を有する円弧で構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
  8. 前記側壁部の外壁面に対する前記パッド部の連接部の全領域が湾曲部で構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のプロジェクション用ガラスファンネル。
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