JP3624593B2 - 2サイクルエンジンの排気時期制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2サイクルエンジンの排気時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高速回転型の2サイクルエンジンにおいては、エンジン回転速度が低い時には排気時期を遅く設定し、エンジン回転速度が高まるに連れて排気時期を早めてゆくように制御すれば、全ての回転速度域に亘って高出力、高トルク特性が得られることが知られている。
【0003】
そこで、自動二輪車等に搭載されている2サイクルエンジンの多くには、このようにエンジン回転速度が高まるに連れて排気時期を早める排気時期制御装置が設けられている。このような排気時期制御装置は、シリンダーボアに開設された排気ポートに排気バルブが設けられており、この排気バルブがエンジン回転速度の上昇に伴い排気時期を早める方向に動作(スライド等)するように構成されている。なお、排気バルブを動作させる駆動源としてはガバナー装置等が用いられている。
【0004】
また、排気効率をより向上させるために、シリンダーボアに主および副の複数の排気ポートを備えた2サイクルエンジンがある。このような2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、主排気ポートにメインバルブを設ける一方、副排気ポートにサブバルブを設け、エンジン回転速度が高まるに連れてメインバルブを排気時期を早める方向に動作させるとともにサブバルブを開いて行くように構成されている(例えば特開平5−141250号公報および特開平5−256139号公報に記載されている2サイクルエンジンの排気時期制御装置)。
【0005】
このように、主排気ポートにメインバルブ、副排気ポートにサブバルブが設けられた従来の排気時期制御装置では、メインバルブとサブバルブの動作開始タイミングが同時であった。即ち、例えばエンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際、その途中でメインバルブとサブバルブが同時に動作を開始し、主排気ポートにおける排気時期が早められると同時に副排気ポートの通路面積が拡大して行くようになっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにメインバルブとサブバルブを同時に動作させる排気時期制御装置であると、それぞれのバルブが徐々に動作するにも拘らず、特定のエンジン回転速度になった途端に2サイクルエンジンの排気時期が唐突に変化する傾向があるため、排気時期を高精度に制御することができず、場合によってはエンジン性能(低速回転域におけるトルク特性等)が犠牲になることがある。
【0007】
本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、このような問題点を解決するために発明されたもので、その第一の目的は、主排気ポートにおけるメインバルブの動作開始タイミングと、副排気ポートにおけるサブバルブの動作開始タイミングを最適に設定できるようにして排気時期を高精度に制御可能にすることにある。
【0008】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置の第二の目的は、特に低速回転域におけるトルク特性を大幅に向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、請求項1に記載したように、主排気ポートにメインバルブが設けられる一方、副排気ポートにサブバルブが設けられ、エンジン回転速度が高まるに連れてメインバルブの動作開始タイミングとサブバルブの動作開始タイミングをそれぞれ排気時期を早める方向に動作するように構成された2サイクルエンジンの排気時期制御装置において、エンジンの回転数に応じて駆動ピンを進退駆動するアクチュエーターと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するメインバルブと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するサブバルブと、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、メインバルブの動作開始タイミングをサブバルブの動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段を設け、その動作開始遅延手段を、メインバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にサブバルブの孔と係合してサブバルブを作動させるとともにサブバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にメインバルブの孔と係合してメインバルブを作動させることにより構成した上で、サブバルブを回動可能に設けてサブバルブの孔の駆動ピンと係合する位置と摺動する位置とを長孔の長手方向に一致させて、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定した。
【0010】
この発明によれば、主排気ポートのメインバルブの動作開始タイミングが副排気ポートのサブバルブの動作開始タイミングよりも遅められるため、メインバルブの動作開始タイミングを最適に設定することができ、これによって排気時期を高精度に制御することができる。
【0011】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、請求項1に記載したように、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定した。
【0012】
このように構成した場合、先に副排気ポートが全開になってから主排気ポートにおける排気時期が早められて行くので、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性が大幅に向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る排気時期制御装置が適用された2サイクルエンジンのシリンダーアッセンブリーを示す左側面図であり、図2は図1および図3の II−II線に沿って展開した断面図である。また、図3は2サイクルエンジンの右側面図である。さらに、図4(A) は図2の IVA−IVA線に沿う縦断面図であり、図4(B) は図2の IVB−IVB線に沿う縦断面図である。
【0014】
この2サイクルエンジン1は、例えば自動二輪車に搭載される水冷単気筒エンジンであり、図1に向かって左側が前方となっている。図3に示すようにクランクケース2の上面にはシリンダーブロック3およびシリンダーヘッド4からなるシリンダーアッセンブリー5が直立して設けられている。
【0015】
シリンダーブロック3は4本のスタッドボルト6および4個のナット7でクランクケース2に固定され、シリンダーヘッド4は6本の図示しないスタッドボルトおよび6個のナット8でシリンダーブロック3に固定される。なお、シリンダーブロック3の後部にはキャブレターを接続するためのインテーク部9が形成されている。
【0016】
シリンダーブロック3の内部には円筒状のシリンダーボア10が形成されており、図示しないピストンが挿入される。このシリンダーボア10には複数の掃気ポート11(図4参照)と排気ポート12,13が開設されている。排気ポート12,13のうち、シリンダーボア10の前面側に大きく開口する排気ポート12は主排気ポートであり、その左右両側に位置する一対の小さな排気ポート13は副排気ポートである。2つの副排気ポート13の終焉部は主排気ポート12に連通しており、主排気ポート12の外端部には排気マフラー14が接続される。
【0017】
シリンダーボア10内で燃焼した混合気の排気ガスは、ピストンの下降とともに開口する主排気ポート12および副排気ポート13を通り、排気マフラー14を経て外部に排出される。なお、主排気ポート12および副排気ポート13の周囲には冷却用のウォータージャケット15が形成されている。
【0018】
そして、この2サイクルエンジン1には本発明に係る排気時期制御装置16が設けられている。この排気時期制御装置16は、エンジン回転速度が高まるに連れて主排気ポート12における排気時期を早めるとともに、副排気ポート13の通路面積を拡張させ、これによってエンジン回転速度に見合う最適な排気時期を設定する装置であり、次のように構成されている。
【0019】
まず、シリンダーブロック3の上部前方には、リッド17によって密閉されるハウジング18が設けられている。このハウジング18の奥部には、主排気ポート12に向かって斜めに延びるメインバルブ通路19が形成されており(図2および図4(B) 参照)、このメインバルブ通路19にメインバルブ20が摺動自在に、かつ上下左右方向に遊びを持たぬよう密に挿入され、ストッパー21で抜脱を防止されている。このメインバルブ20の先端形状はシリンダーボア10の内周輪郭に沿う円弧状とされている。
【0020】
また、メインバルブ20の内部には長手方向に沿って2本の駆動ロッド23が設けられている。これらの駆動ロッド23はメインバルブ20に対して相対摺動自在であり、その先端部と後端部には、それぞれ車幅方向に延びる第1駆動ピン24と第2駆動ピン25が密に保持されている。
【0021】
一方、メインバルブ20の先端部と後部付近には車幅方向に延びる第1貫通孔26および第2貫通孔27が形成されており、第1貫通孔26に第1駆動ピン24が挿通され、第2貫通孔27に第2駆動ピン25が挿通されている。これら第1貫通孔26および第2貫通孔27の縦断面形状は、図4(B) に示すようにメインバルブ20の長手方向に延びる長孔状であり、その内部を第1駆動ピン24および第2駆動ピン25がメインバルブ20の長手方向にスムーズに摺動することができる。
【0022】
さらに、ハウジング18の内部には車幅方向に延びる駆動シャフト29が軸支されており、その中間部に駆動アーム30が固定されている。この駆動アーム30の自由端は左右に分岐していて第2駆動ピン25を把持している。そして、駆動シャフト29の左端部に設けられたトルクスプリング31によって駆動シャフト29は図4(B) 中で時計回りの方向に付勢されている。
【0023】
また、リッド17には押圧シャフト32が軸支されており、その中間部に固定された押圧アーム33の先端がメインバルブ20の最後部に当接している。押圧シャフト32は、その左端部に設けられたトルクスプリング34によって図4(B) 中で時計回りの方向に付勢されているため、押圧アーム33がメインバルブ20を常に押圧するようになっている。
【0024】
一方、副排気ポート13の途中には、それぞれサブバルブ36が設けられている。これらのサブバルブ36は、図2に示すようにベアリング37で回転自在に軸支されており、その回転軸心が駆動シャフト29や押圧シャフト32に平行している。各サブバルブ36の外側にはそれぞれトルクスプリング38が設けられており、各サブバルブ36は図4(A) 中で時計回りの方向に付勢されている。
【0025】
図2中でサブバルブ36が副排気ポート13に重なる部分は半月状の弁体39になっており、サブバルブ36の回転により弁体39が回動し、その回動量に応じて副排気ポート13の通路面積が変化する。この弁体39の内側の面には挿入孔40が形成されており、この挿入孔40に第1駆動ピン24の両端部が係入される。挿入孔40は、図4(A) に示すように弁体39の平面部に対して所定の角度を持った長孔状に形成されており、その内部を第1駆動ピン24がスムーズに摺動することができる。
【0026】
一方、図2に示すように、クランクケース2内には排気時期制御装置16の駆動源となるガバナー装置42が設けられている。このガバナー装置42は、軸受43,44によって軸支されたガバナーシャフト45を備えており、このガバナーシャフト45の右端寄りにドライブプレート46が回転一体に設けられている。
【0027】
また、ドライブプレート46に対向するドリブンプレート47がガバナーシャフト45の軸方向に移動自在に軸支されている。このドリブンプレート47はスプリング48によってドライブプレート46側に押圧されている。ドライブプレート46とドリブンプレート47の対向する面は略椀状に形成されており、両者46,47の間には球形をした数個のウェイトボール49が保持されている。
【0028】
また、ドライブプレート46の周囲には2列のギヤ歯51,52が刻設されており、一方のギヤ歯51にはクランクケース2内に軸支された図示しないクランクシャフトのドライブギヤが噛み合う。このため、2サイクルエンジン1が作動するとクランクシャフトの回転がドライブプレート46に伝えられ、ガバナーシャフト45、ドリブンプレート47、ウェイトボール49が回転する。なお、ドライブプレート46の他方のギヤ歯52にはウォーターポンプやオイルポンプ、或いはバランサーシャフトといった補機類のギヤが噛み合わされる。
【0029】
クランクシャフトの回転速度が高まり、それとともにドライブプレート46とドリブンプレート47の回転速度が高まると、各ウェイトボール49に加わる遠心力が増大し、各ウェイトボール49が遠心方向に移動する。このため、ドライブプレート46とドリブンプレート47との間に形成されている楔状の空間が押し拡げられ、ドリブンプレート47がスプリング48の付勢力に抗してガバナーシャフト45上を移動し、ドライブプレート46から離反する。
【0030】
ガバナー装置42の内側(左側)には、アクチュエーター54が設けられている。このアクチュエーター54は、ガバナー装置42の作動によるドリブンプレート47の移動(反ドライブプレート46側への移動)を回転運動に変化させて排気時期制御装置16を連動させる機構である。
【0031】
アクチュエーター54は、互いに対面する略円盤状の固定プレート55および回動プレート56と、これら両プレート55,56間に介装される数個の回動ボール57とを備えて構成されている。固定プレート55はビス58によりクランクケース2に固定されており、回動プレート56は軸受59によってガバナーシャフト45に対し回転自在かつ軸方向に移動自在に軸支され、この回動プレート56にはガバナー装置42のドリブンプレート47がスラスト軸受60を介して当接している。
【0032】
固定プレート55と回動プレート56の対向面には、それぞれ連続的に深くなる傾斜底面を持った円弧状のボール溝が形成されており、これらのボール溝の間に前記回動ボール57が介装される。したがって、前述の如くガバナー装置42の作動によりドリブンプレート47が反ドライブプレート46側へ移動すると、ドリブンプレート47によって回動プレート56が押圧され、その圧力によって回動ボール57が上記ボール溝の深い位置に移動しようとするため、回動プレート56が固定プレート55に対して相対回転する。
【0033】
回動プレート56の周部には径方向に延びるアーム62が形成されており、このアーム62の先端が連結ロッドを63介して前記駆動シャフト29に回動一体に設けられたレバー64の先端に連結されている。従って、ガバナー装置42とアクチュエーター54が作動すると、アーム62がレバー64を押し上げて駆動シャフト29を回動させ、これによってメインバルブ20およびサブバルブ36が所定のタイミングで駆動される。
【0034】
駆動シャフト29の回動量は、2サイクルエンジン1の回転速度(クランクシャフトの回転速度)が高まるに連れて大きくなる。即ち、低速回転域ではガバナー装置42のウェイトボール49に加わる遠心力が小さいことからガバナー装置42は作動しない。このため、アクチュエーター54の回動プレート56も回動せず、回動プレート56のアーム62は図3中に示すa1位置に置かれて、レバー64はb1位置に保たれる。
【0035】
しかし、エンジン回転速度が高くなるに連れてウェイトボール49に加わる遠心力が増大するのでガバナー装置42が作動し、アクチュエーター54の回動プレート56が最大a2の位置まで回動してレバー64もb2の位置まで押し上げられる。
【0036】
図4(A),(B) は2サイクルエンジン1の低速回転域における排気時期制御装置16の状態を示している。低速回転域ではガバナー装置42が作動しないため、サブバルブ36が閉じられており、メインバルブ20は押圧アーム33に押圧されて主排気ポート12内に最も突き出た位置に保たれる。これによって主排気ポート12の上縁の事実上の高さはメインバルブ20先端部の高さLとなり、排気時期が遅められて低速回転向きの排気特性が付与される。
【0037】
また、2サイクルエンジン1の低速〜中速回転域では、ガバナー装置42が作動し始め、これに連動して駆動シャフト29が回動するため、駆動アーム30が第2駆動ピン25を介して駆動ロッド23を引き、駆動ロッド23は第1駆動ピン24を介してサブバルブ36をトルクスプリング38の付勢力に抗して図4(A) の位置から図5(A) の位置に回動させる。これにより、副排気ポート13の通路面積が徐々に拡張され、中速回転域では図5(A) のように副排気ポート13が全開になる。
【0038】
図5(A),(B) に示す中速回転域の状態では、メインバルブ20先端部の高さLよりも副排気ポート13の上縁の高さMの方が高い(上死点寄り)ため、その分排気時期が早められて中速回転向きの排気特性が付与される。
【0039】
サブバルブ36が図4(A) の位置から図5(A) の位置まで回動する間、第1駆動ピン24および第2駆動ピン25はメインバルブ20の第1貫通孔26および第2貫通孔27の内部を移動するため、メインバルブ20自体が動くことはない。このように、第1貫通孔26および第2貫通孔27は、メインバルブ20の動作開始タイミングをサブバルブ36の動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段として機能する。そしてその遅延タイミングは、第1貫通孔26および第2貫通孔27の長手軸の長さA(図7参照)によって決定される。この長さAは、サブバルブ36が全開になった後にメインバルブ20が動作を開始する長さに設定されている。
【0040】
さらに、2サイクルエンジン1の中速〜高速回転域では、ガバナー装置42の力がより大きくなるので駆動シャフト29の回動角が増し、駆動ロッド23の移動量が大きくなる。このため、図6(B) に示すように第1駆動ピン24および第2駆動ピン25がメインバルブ20を引き、メインバルブ20は主排気ポート12内に突き出ない位置まで後退する。
【0041】
中速〜高速回転域においてサブバルブ36は全開状態に保たれており、その挿入孔40の長軸方向が第1駆動ピン24の移動方向に沿うように設定されているため、第1駆動ピン24が移動してもサブバルブ36はそれ以上回動せず、副排気ポート13の通路面積は最大に保たれる。
【0042】
高速回転域では、主排気ポート12の上縁の高さがHとなり、この高さHは副排気ポート13の上縁の高さMよりも高いため、中速回転域の時よりもさらに排気時期が早められて高速回転向きの排気特性が付与される。
【0043】
なお、2サイクルエンジン1の回転速度が高速回転域から低速回転域に移行する時は、上記と逆の順序でメインバルブ20とサブバルブ36が駆動される。
【0044】
このように構成された排気時期制御装置16は、メインバルブ20に設けられた第1貫通孔26および第2貫通孔27が動作開始遅延手段として機能し、これにより低速回転域から高速回転域への移行時におけるメインバルブ20の動作開始タイミングがサブバルブ36の動作開始タイミングよりも遅められるため、メインバルブ20の動作開始タイミングを最適に設定して排気時期を高精度に制御することができる。
【0045】
なお、排気時期制御装置16に含まれている3種類のトルクスプリング31,34,38は、その蓋部材66,67,68の捩じ込み角度によって付勢力を自在に調整することができるため、エンジン回転数とメインバルブ20およびサブバルブ36の動作開始タイミングを最適なものに調整することができる。
【0046】
本実施形態において、動作開始遅延手段の遅延タイミング、即ち第1貫通孔26および第2貫通孔27の長手軸の長さAは、低速回転域から高速回転域に移行する際にサブバルブ36が全開になった後にメインバルブ20が動作を開始するように設定されているため、低速回転域ではメインバルブ20が動作することがない。このため、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性が大幅に向上する。
【0047】
さらに、この排気時期制御装置16はメインバルブ20およびサブバルブ36が同じ駆動部材(23,24,25,29,30等)で時間差駆動されるように構成されているため、その駆動源も1つのガバナー装置42だけで間に合う。このため、2サイクルエンジン1の構成を簡素化することができ、製造コストの低減、軽量化、故障発生率の低下といった数々のメリットがもたらされる。
【0048】
なお、本実施形態では、エンジン回転速度の上昇時にはサブバルブ36が完全に開いてからメインバルブ20が動作を開始するように排気時期制御装置16が構成されているが、例えば主および副排気ポート13の位置関係、形状、大きさ等によっては、サブバルブ36とメインバルブ20の動作を多少オーバーラップさせてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、エンジンの回転数に応じて駆動ピンを進退駆動するアクチュエーターと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するメインバルブと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するサブバルブと、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、メインバルブの動作開始タイミングをサブバルブの動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段を設け、その動作開始遅延手段を、メインバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にサブバルブの孔と係合してサブバルブを作動させるとともにサブバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にメインバルブの孔と係合してメインバルブを作動させることにより構成した上で、サブバルブを回動可能に設けてサブバルブの孔の駆動ピンと係合する位置と摺動する位置とを長孔の長手方向に一致させて、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定したため、メインバルブおよびサブバルブの動作開始タイミングを最適に設定することができ、これによって主排気ポートおよび副排気ポートにおける排気時期を高精度に制御することができる。
【0050】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定したため、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気時期制御装置が適用された2サイクルエンジンのシリンダーアッセンブリー5を示す左側面図。
【図2】図1および図3の II−II線に沿う展開断面により本発明の一実施形態を示す図。
【図3】2サイクルエンジンの右側面図。
【図4】(A) は図2の IVA−IVA線に沿う縦断面図、(B) は図2の IVB−IVB線に沿う縦断面図で、共に2サイクルエンジンの低速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図5】(A),(B) 共に2サイクルエンジンの中速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図6】(A),(B) 共に2サイクルエンジンの高速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図7】メインバルブに設けられた第1貫通孔および第2貫通孔の長手軸の長さを示す図。
【符号の説明】
1 2サイクルエンジン
2 クランクケース
3 シリンダーブロック
4 シリンダーヘッド
5 シリンダーアッセンブリー
10 シリンダーボア
12 主排気ポート
13 副排気ポート
16 排気時期制御装置
20 メインバルブ
36 サブバルブ
26,27 動作開始遅延手段としての第1および第2貫通孔
42 ガバナー装置
54 アクチュエーター
A 動作開始遅延手段の遅延タイミングを決定する第1および第2貫通孔の長手軸の長さ
【発明の属する技術分野】
本発明は、2サイクルエンジンの排気時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高速回転型の2サイクルエンジンにおいては、エンジン回転速度が低い時には排気時期を遅く設定し、エンジン回転速度が高まるに連れて排気時期を早めてゆくように制御すれば、全ての回転速度域に亘って高出力、高トルク特性が得られることが知られている。
【0003】
そこで、自動二輪車等に搭載されている2サイクルエンジンの多くには、このようにエンジン回転速度が高まるに連れて排気時期を早める排気時期制御装置が設けられている。このような排気時期制御装置は、シリンダーボアに開設された排気ポートに排気バルブが設けられており、この排気バルブがエンジン回転速度の上昇に伴い排気時期を早める方向に動作(スライド等)するように構成されている。なお、排気バルブを動作させる駆動源としてはガバナー装置等が用いられている。
【0004】
また、排気効率をより向上させるために、シリンダーボアに主および副の複数の排気ポートを備えた2サイクルエンジンがある。このような2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、主排気ポートにメインバルブを設ける一方、副排気ポートにサブバルブを設け、エンジン回転速度が高まるに連れてメインバルブを排気時期を早める方向に動作させるとともにサブバルブを開いて行くように構成されている(例えば特開平5−141250号公報および特開平5−256139号公報に記載されている2サイクルエンジンの排気時期制御装置)。
【0005】
このように、主排気ポートにメインバルブ、副排気ポートにサブバルブが設けられた従来の排気時期制御装置では、メインバルブとサブバルブの動作開始タイミングが同時であった。即ち、例えばエンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際、その途中でメインバルブとサブバルブが同時に動作を開始し、主排気ポートにおける排気時期が早められると同時に副排気ポートの通路面積が拡大して行くようになっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにメインバルブとサブバルブを同時に動作させる排気時期制御装置であると、それぞれのバルブが徐々に動作するにも拘らず、特定のエンジン回転速度になった途端に2サイクルエンジンの排気時期が唐突に変化する傾向があるため、排気時期を高精度に制御することができず、場合によってはエンジン性能(低速回転域におけるトルク特性等)が犠牲になることがある。
【0007】
本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、このような問題点を解決するために発明されたもので、その第一の目的は、主排気ポートにおけるメインバルブの動作開始タイミングと、副排気ポートにおけるサブバルブの動作開始タイミングを最適に設定できるようにして排気時期を高精度に制御可能にすることにある。
【0008】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置の第二の目的は、特に低速回転域におけるトルク特性を大幅に向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、請求項1に記載したように、主排気ポートにメインバルブが設けられる一方、副排気ポートにサブバルブが設けられ、エンジン回転速度が高まるに連れてメインバルブの動作開始タイミングとサブバルブの動作開始タイミングをそれぞれ排気時期を早める方向に動作するように構成された2サイクルエンジンの排気時期制御装置において、エンジンの回転数に応じて駆動ピンを進退駆動するアクチュエーターと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するメインバルブと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するサブバルブと、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、メインバルブの動作開始タイミングをサブバルブの動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段を設け、その動作開始遅延手段を、メインバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にサブバルブの孔と係合してサブバルブを作動させるとともにサブバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にメインバルブの孔と係合してメインバルブを作動させることにより構成した上で、サブバルブを回動可能に設けてサブバルブの孔の駆動ピンと係合する位置と摺動する位置とを長孔の長手方向に一致させて、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定した。
【0010】
この発明によれば、主排気ポートのメインバルブの動作開始タイミングが副排気ポートのサブバルブの動作開始タイミングよりも遅められるため、メインバルブの動作開始タイミングを最適に設定することができ、これによって排気時期を高精度に制御することができる。
【0011】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、請求項1に記載したように、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定した。
【0012】
このように構成した場合、先に副排気ポートが全開になってから主排気ポートにおける排気時期が早められて行くので、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性が大幅に向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る排気時期制御装置が適用された2サイクルエンジンのシリンダーアッセンブリーを示す左側面図であり、図2は図1および図3の II−II線に沿って展開した断面図である。また、図3は2サイクルエンジンの右側面図である。さらに、図4(A) は図2の IVA−IVA線に沿う縦断面図であり、図4(B) は図2の IVB−IVB線に沿う縦断面図である。
【0014】
この2サイクルエンジン1は、例えば自動二輪車に搭載される水冷単気筒エンジンであり、図1に向かって左側が前方となっている。図3に示すようにクランクケース2の上面にはシリンダーブロック3およびシリンダーヘッド4からなるシリンダーアッセンブリー5が直立して設けられている。
【0015】
シリンダーブロック3は4本のスタッドボルト6および4個のナット7でクランクケース2に固定され、シリンダーヘッド4は6本の図示しないスタッドボルトおよび6個のナット8でシリンダーブロック3に固定される。なお、シリンダーブロック3の後部にはキャブレターを接続するためのインテーク部9が形成されている。
【0016】
シリンダーブロック3の内部には円筒状のシリンダーボア10が形成されており、図示しないピストンが挿入される。このシリンダーボア10には複数の掃気ポート11(図4参照)と排気ポート12,13が開設されている。排気ポート12,13のうち、シリンダーボア10の前面側に大きく開口する排気ポート12は主排気ポートであり、その左右両側に位置する一対の小さな排気ポート13は副排気ポートである。2つの副排気ポート13の終焉部は主排気ポート12に連通しており、主排気ポート12の外端部には排気マフラー14が接続される。
【0017】
シリンダーボア10内で燃焼した混合気の排気ガスは、ピストンの下降とともに開口する主排気ポート12および副排気ポート13を通り、排気マフラー14を経て外部に排出される。なお、主排気ポート12および副排気ポート13の周囲には冷却用のウォータージャケット15が形成されている。
【0018】
そして、この2サイクルエンジン1には本発明に係る排気時期制御装置16が設けられている。この排気時期制御装置16は、エンジン回転速度が高まるに連れて主排気ポート12における排気時期を早めるとともに、副排気ポート13の通路面積を拡張させ、これによってエンジン回転速度に見合う最適な排気時期を設定する装置であり、次のように構成されている。
【0019】
まず、シリンダーブロック3の上部前方には、リッド17によって密閉されるハウジング18が設けられている。このハウジング18の奥部には、主排気ポート12に向かって斜めに延びるメインバルブ通路19が形成されており(図2および図4(B) 参照)、このメインバルブ通路19にメインバルブ20が摺動自在に、かつ上下左右方向に遊びを持たぬよう密に挿入され、ストッパー21で抜脱を防止されている。このメインバルブ20の先端形状はシリンダーボア10の内周輪郭に沿う円弧状とされている。
【0020】
また、メインバルブ20の内部には長手方向に沿って2本の駆動ロッド23が設けられている。これらの駆動ロッド23はメインバルブ20に対して相対摺動自在であり、その先端部と後端部には、それぞれ車幅方向に延びる第1駆動ピン24と第2駆動ピン25が密に保持されている。
【0021】
一方、メインバルブ20の先端部と後部付近には車幅方向に延びる第1貫通孔26および第2貫通孔27が形成されており、第1貫通孔26に第1駆動ピン24が挿通され、第2貫通孔27に第2駆動ピン25が挿通されている。これら第1貫通孔26および第2貫通孔27の縦断面形状は、図4(B) に示すようにメインバルブ20の長手方向に延びる長孔状であり、その内部を第1駆動ピン24および第2駆動ピン25がメインバルブ20の長手方向にスムーズに摺動することができる。
【0022】
さらに、ハウジング18の内部には車幅方向に延びる駆動シャフト29が軸支されており、その中間部に駆動アーム30が固定されている。この駆動アーム30の自由端は左右に分岐していて第2駆動ピン25を把持している。そして、駆動シャフト29の左端部に設けられたトルクスプリング31によって駆動シャフト29は図4(B) 中で時計回りの方向に付勢されている。
【0023】
また、リッド17には押圧シャフト32が軸支されており、その中間部に固定された押圧アーム33の先端がメインバルブ20の最後部に当接している。押圧シャフト32は、その左端部に設けられたトルクスプリング34によって図4(B) 中で時計回りの方向に付勢されているため、押圧アーム33がメインバルブ20を常に押圧するようになっている。
【0024】
一方、副排気ポート13の途中には、それぞれサブバルブ36が設けられている。これらのサブバルブ36は、図2に示すようにベアリング37で回転自在に軸支されており、その回転軸心が駆動シャフト29や押圧シャフト32に平行している。各サブバルブ36の外側にはそれぞれトルクスプリング38が設けられており、各サブバルブ36は図4(A) 中で時計回りの方向に付勢されている。
【0025】
図2中でサブバルブ36が副排気ポート13に重なる部分は半月状の弁体39になっており、サブバルブ36の回転により弁体39が回動し、その回動量に応じて副排気ポート13の通路面積が変化する。この弁体39の内側の面には挿入孔40が形成されており、この挿入孔40に第1駆動ピン24の両端部が係入される。挿入孔40は、図4(A) に示すように弁体39の平面部に対して所定の角度を持った長孔状に形成されており、その内部を第1駆動ピン24がスムーズに摺動することができる。
【0026】
一方、図2に示すように、クランクケース2内には排気時期制御装置16の駆動源となるガバナー装置42が設けられている。このガバナー装置42は、軸受43,44によって軸支されたガバナーシャフト45を備えており、このガバナーシャフト45の右端寄りにドライブプレート46が回転一体に設けられている。
【0027】
また、ドライブプレート46に対向するドリブンプレート47がガバナーシャフト45の軸方向に移動自在に軸支されている。このドリブンプレート47はスプリング48によってドライブプレート46側に押圧されている。ドライブプレート46とドリブンプレート47の対向する面は略椀状に形成されており、両者46,47の間には球形をした数個のウェイトボール49が保持されている。
【0028】
また、ドライブプレート46の周囲には2列のギヤ歯51,52が刻設されており、一方のギヤ歯51にはクランクケース2内に軸支された図示しないクランクシャフトのドライブギヤが噛み合う。このため、2サイクルエンジン1が作動するとクランクシャフトの回転がドライブプレート46に伝えられ、ガバナーシャフト45、ドリブンプレート47、ウェイトボール49が回転する。なお、ドライブプレート46の他方のギヤ歯52にはウォーターポンプやオイルポンプ、或いはバランサーシャフトといった補機類のギヤが噛み合わされる。
【0029】
クランクシャフトの回転速度が高まり、それとともにドライブプレート46とドリブンプレート47の回転速度が高まると、各ウェイトボール49に加わる遠心力が増大し、各ウェイトボール49が遠心方向に移動する。このため、ドライブプレート46とドリブンプレート47との間に形成されている楔状の空間が押し拡げられ、ドリブンプレート47がスプリング48の付勢力に抗してガバナーシャフト45上を移動し、ドライブプレート46から離反する。
【0030】
ガバナー装置42の内側(左側)には、アクチュエーター54が設けられている。このアクチュエーター54は、ガバナー装置42の作動によるドリブンプレート47の移動(反ドライブプレート46側への移動)を回転運動に変化させて排気時期制御装置16を連動させる機構である。
【0031】
アクチュエーター54は、互いに対面する略円盤状の固定プレート55および回動プレート56と、これら両プレート55,56間に介装される数個の回動ボール57とを備えて構成されている。固定プレート55はビス58によりクランクケース2に固定されており、回動プレート56は軸受59によってガバナーシャフト45に対し回転自在かつ軸方向に移動自在に軸支され、この回動プレート56にはガバナー装置42のドリブンプレート47がスラスト軸受60を介して当接している。
【0032】
固定プレート55と回動プレート56の対向面には、それぞれ連続的に深くなる傾斜底面を持った円弧状のボール溝が形成されており、これらのボール溝の間に前記回動ボール57が介装される。したがって、前述の如くガバナー装置42の作動によりドリブンプレート47が反ドライブプレート46側へ移動すると、ドリブンプレート47によって回動プレート56が押圧され、その圧力によって回動ボール57が上記ボール溝の深い位置に移動しようとするため、回動プレート56が固定プレート55に対して相対回転する。
【0033】
回動プレート56の周部には径方向に延びるアーム62が形成されており、このアーム62の先端が連結ロッドを63介して前記駆動シャフト29に回動一体に設けられたレバー64の先端に連結されている。従って、ガバナー装置42とアクチュエーター54が作動すると、アーム62がレバー64を押し上げて駆動シャフト29を回動させ、これによってメインバルブ20およびサブバルブ36が所定のタイミングで駆動される。
【0034】
駆動シャフト29の回動量は、2サイクルエンジン1の回転速度(クランクシャフトの回転速度)が高まるに連れて大きくなる。即ち、低速回転域ではガバナー装置42のウェイトボール49に加わる遠心力が小さいことからガバナー装置42は作動しない。このため、アクチュエーター54の回動プレート56も回動せず、回動プレート56のアーム62は図3中に示すa1位置に置かれて、レバー64はb1位置に保たれる。
【0035】
しかし、エンジン回転速度が高くなるに連れてウェイトボール49に加わる遠心力が増大するのでガバナー装置42が作動し、アクチュエーター54の回動プレート56が最大a2の位置まで回動してレバー64もb2の位置まで押し上げられる。
【0036】
図4(A),(B) は2サイクルエンジン1の低速回転域における排気時期制御装置16の状態を示している。低速回転域ではガバナー装置42が作動しないため、サブバルブ36が閉じられており、メインバルブ20は押圧アーム33に押圧されて主排気ポート12内に最も突き出た位置に保たれる。これによって主排気ポート12の上縁の事実上の高さはメインバルブ20先端部の高さLとなり、排気時期が遅められて低速回転向きの排気特性が付与される。
【0037】
また、2サイクルエンジン1の低速〜中速回転域では、ガバナー装置42が作動し始め、これに連動して駆動シャフト29が回動するため、駆動アーム30が第2駆動ピン25を介して駆動ロッド23を引き、駆動ロッド23は第1駆動ピン24を介してサブバルブ36をトルクスプリング38の付勢力に抗して図4(A) の位置から図5(A) の位置に回動させる。これにより、副排気ポート13の通路面積が徐々に拡張され、中速回転域では図5(A) のように副排気ポート13が全開になる。
【0038】
図5(A),(B) に示す中速回転域の状態では、メインバルブ20先端部の高さLよりも副排気ポート13の上縁の高さMの方が高い(上死点寄り)ため、その分排気時期が早められて中速回転向きの排気特性が付与される。
【0039】
サブバルブ36が図4(A) の位置から図5(A) の位置まで回動する間、第1駆動ピン24および第2駆動ピン25はメインバルブ20の第1貫通孔26および第2貫通孔27の内部を移動するため、メインバルブ20自体が動くことはない。このように、第1貫通孔26および第2貫通孔27は、メインバルブ20の動作開始タイミングをサブバルブ36の動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段として機能する。そしてその遅延タイミングは、第1貫通孔26および第2貫通孔27の長手軸の長さA(図7参照)によって決定される。この長さAは、サブバルブ36が全開になった後にメインバルブ20が動作を開始する長さに設定されている。
【0040】
さらに、2サイクルエンジン1の中速〜高速回転域では、ガバナー装置42の力がより大きくなるので駆動シャフト29の回動角が増し、駆動ロッド23の移動量が大きくなる。このため、図6(B) に示すように第1駆動ピン24および第2駆動ピン25がメインバルブ20を引き、メインバルブ20は主排気ポート12内に突き出ない位置まで後退する。
【0041】
中速〜高速回転域においてサブバルブ36は全開状態に保たれており、その挿入孔40の長軸方向が第1駆動ピン24の移動方向に沿うように設定されているため、第1駆動ピン24が移動してもサブバルブ36はそれ以上回動せず、副排気ポート13の通路面積は最大に保たれる。
【0042】
高速回転域では、主排気ポート12の上縁の高さがHとなり、この高さHは副排気ポート13の上縁の高さMよりも高いため、中速回転域の時よりもさらに排気時期が早められて高速回転向きの排気特性が付与される。
【0043】
なお、2サイクルエンジン1の回転速度が高速回転域から低速回転域に移行する時は、上記と逆の順序でメインバルブ20とサブバルブ36が駆動される。
【0044】
このように構成された排気時期制御装置16は、メインバルブ20に設けられた第1貫通孔26および第2貫通孔27が動作開始遅延手段として機能し、これにより低速回転域から高速回転域への移行時におけるメインバルブ20の動作開始タイミングがサブバルブ36の動作開始タイミングよりも遅められるため、メインバルブ20の動作開始タイミングを最適に設定して排気時期を高精度に制御することができる。
【0045】
なお、排気時期制御装置16に含まれている3種類のトルクスプリング31,34,38は、その蓋部材66,67,68の捩じ込み角度によって付勢力を自在に調整することができるため、エンジン回転数とメインバルブ20およびサブバルブ36の動作開始タイミングを最適なものに調整することができる。
【0046】
本実施形態において、動作開始遅延手段の遅延タイミング、即ち第1貫通孔26および第2貫通孔27の長手軸の長さAは、低速回転域から高速回転域に移行する際にサブバルブ36が全開になった後にメインバルブ20が動作を開始するように設定されているため、低速回転域ではメインバルブ20が動作することがない。このため、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性が大幅に向上する。
【0047】
さらに、この排気時期制御装置16はメインバルブ20およびサブバルブ36が同じ駆動部材(23,24,25,29,30等)で時間差駆動されるように構成されているため、その駆動源も1つのガバナー装置42だけで間に合う。このため、2サイクルエンジン1の構成を簡素化することができ、製造コストの低減、軽量化、故障発生率の低下といった数々のメリットがもたらされる。
【0048】
なお、本実施形態では、エンジン回転速度の上昇時にはサブバルブ36が完全に開いてからメインバルブ20が動作を開始するように排気時期制御装置16が構成されているが、例えば主および副排気ポート13の位置関係、形状、大きさ等によっては、サブバルブ36とメインバルブ20の動作を多少オーバーラップさせてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、エンジンの回転数に応じて駆動ピンを進退駆動するアクチュエーターと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するメインバルブと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するサブバルブと、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、メインバルブの動作開始タイミングをサブバルブの動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段を設け、その動作開始遅延手段を、メインバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にサブバルブの孔と係合してサブバルブを作動させるとともにサブバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にメインバルブの孔と係合してメインバルブを作動させることにより構成した上で、サブバルブを回動可能に設けてサブバルブの孔の駆動ピンと係合する位置と摺動する位置とを長孔の長手方向に一致させて、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定したため、メインバルブおよびサブバルブの動作開始タイミングを最適に設定することができ、これによって主排気ポートおよび副排気ポートにおける排気時期を高精度に制御することができる。
【0050】
また、本発明に係る2サイクルエンジンの排気時期制御装置は、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定したため、特に低速回転域において排気時期が過度に早まることがなくなり、トルク特性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気時期制御装置が適用された2サイクルエンジンのシリンダーアッセンブリー5を示す左側面図。
【図2】図1および図3の II−II線に沿う展開断面により本発明の一実施形態を示す図。
【図3】2サイクルエンジンの右側面図。
【図4】(A) は図2の IVA−IVA線に沿う縦断面図、(B) は図2の IVB−IVB線に沿う縦断面図で、共に2サイクルエンジンの低速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図5】(A),(B) 共に2サイクルエンジンの中速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図6】(A),(B) 共に2サイクルエンジンの高速回転域における排気時期制御装置の状態を示す図。
【図7】メインバルブに設けられた第1貫通孔および第2貫通孔の長手軸の長さを示す図。
【符号の説明】
1 2サイクルエンジン
2 クランクケース
3 シリンダーブロック
4 シリンダーヘッド
5 シリンダーアッセンブリー
10 シリンダーボア
12 主排気ポート
13 副排気ポート
16 排気時期制御装置
20 メインバルブ
36 サブバルブ
26,27 動作開始遅延手段としての第1および第2貫通孔
42 ガバナー装置
54 アクチュエーター
A 動作開始遅延手段の遅延タイミングを決定する第1および第2貫通孔の長手軸の長さ
Claims (1)
- 主排気ポートにメインバルブが設けられる一方、副排気ポートにサブバルブが設けられ、エンジン回転速度が高まるに連れてメインバルブの動作開始タイミングとサブバルブの動作開始タイミングをそれぞれ排気時期を早める方向に動作するように構成された2サイクルエンジンの排気時期制御装置において、エンジンの回転数に応じて駆動ピンを進退駆動するアクチュエーターと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するメインバルブと、駆動ピンに摺動および係合可能な長孔状の孔を有するサブバルブと、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、メインバルブの動作開始タイミングをサブバルブの動作開始タイミングよりも遅める動作開始遅延手段を設け、その動作開始遅延手段を、メインバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にサブバルブの孔と係合してサブバルブを作動させるとともにサブバルブの孔が駆動ピンと摺動する際にメインバルブの孔と係合してメインバルブを作動させることにより構成した上で、サブバルブを回動可能に設けてサブバルブの孔の駆動ピンと係合する位置と摺動する位置とを長孔の長手方向に一致させて、エンジン回転速度が低速回転域から高速回転域に移行する際に、サブバルブが全開になった後にメインバルブが動作を開始するように動作開始遅延手段の遅延タイミングを設定したことを特徴とする2サイクルエンジンの排気時期制御装置。
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