JP3624388B2 - 傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法 - Google Patents

傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板厚の中心部から外表面に、ポア率を傾斜的に増やした傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機のガスタービンブレード、宇宙機の外板などには、高比強度で耐熱性のある複合材料が必要とされる。このような耐熱複合材料は、高硬度素材の複合構造のため、切削などの加工が容易でなく、成形段階に於いて、所定の形状,寸法の材料を製造すること(形状付与性)が要求されている。
従来、このような形状付与性を有する高性能耐熱複合材料としては、CVI法により製造されるセラミックスマトリックスコンポジット(CMC:繊維強化セラミックス)が知られている。
前記CVI法は、所定の形状・寸法、任意の温度に保持した炭素繊維等を予備成形したもの(プリフォーム)に原料ガスを流し、プリフォームのポアにマトリックス(基質)を析出充填させることにより複合材料を得るものである。
【0003】
ところで、通常のC/Cプリフォームは、パルスCVI法を実施すると、大きさ,形状等によってはセラミックスが板厚の中心部まで析出充填されないことがある。これは原料ガスがC/Cプリフォームの表面部のポアから浸透し、セラミックスが析出充填されてくると、ポアの途中が目詰まりし、それ以上原料ガスが浸透しなくなるからである。このような場合、得られたC/C複合材料は、板厚の中心部がポーラスである為、高い強度は望めない。
一方、緻密化したC/Cプリフォームは、緻密化によって表面ポアが目詰まりを起しており、CVI法によるセラミックスの内部充填は極めて困難である。従って、マトリックスの多元化によるC/C複合材料の高性能化やCVD法によるコーティング膜のより高い密着性は望めない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、板厚中心部が緻密で、表面層がポーラスで、CVI法によるセラミックスの内部析出充填が容易で、またCVD法によるコーティング膜の高い密着性が得られる傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の1つは、マトリックスプリカーサ中にポア率を減らすフィラーを添加したプリプレグを板厚の中心部に配し、その上下両面にフィラー無添加のプリプレグを積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の他の1つは、マトリックスプリカーサ中にポア率を減らすフィラーを添加したプリプレグを板厚の中心部に配し、その上下両面にフィラー無添加のプリプレグを積層し、さらにその上下両面に順次マトリックスプリカーサ中にポア率を増やすフィラーを添加したプリプレグを少くとも一層積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とするものである。
【0007】
上記の2つの傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法に於いて、フィラーを添加するマトリックスプリカーサは、フェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂、またはセラミックス前駆体であることが好ましい。
また、上記の2つの製造方法に於いて、ポア率を減らすフィラーは、焼成しても揮散しないC粉末、SiC,TiC,B C等の炭化物、ZrN,TiN等の窒化物、Al ,Y 等の酸化物などのセラミックス粉末であることが好ましい。
さらに、上記の後者の製造方法に於いて、ポア率を増やすフィラーは、焼成時にAl 等として揮散するAl粉末等の金属粉末、焼成時にガス化して揮散するポリエチレン,ナイロン,ポリプロピレン,ビニロン等のポリマー粉末、焼成後に炭素として残る量が少ない、所謂炭化収率の低い樹脂、例えばエポキシ樹脂等であることが好ましい。
【0008】
本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の別の1つは、板厚の中心部に、織りの密な炭素繊維あるいはセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させて焼成によりポア率が低くなるようにしたプリプレグを配し、その上下両面に織りの粗い炭素繊維あるいはセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させて焼成によりポア率が高くなるようにしたプリプレグを配して積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法のさらに別の1つは、板厚の中心部に、炭素繊維あるいはセラミックス繊維100%の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂またはセラミックス前駆体等を含浸させてなるプリプレグを配し、その上下両面に順次ポリマー繊維混紡率を増やした炭素繊維又はセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体を含浸させて焼成によりポリマー繊維がガス化して揮散しポア率が高くなるようにしたプリプレグを配して積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記の本発明の夫々の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法によれば、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームが容易に得られ、この傾斜ポア複合材プリフォームは板厚の中心部が緻密であるので、高強度となり、表面層はポーラスであるので、CVI法によるセラミックスの内部析出充填が容易で、マトリックスの多元化による無機系複合材料の高性能化が可能となり、またCVD法によるコーティング膜は表面層がポーラスなので、アンカー効果により高い密着性が得られる。
【0011】
【実施例】
本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の1つの一実施例を説明すると、フェノール樹脂中に炭素繊維の開繊維物18plyを含浸させたプリプレグにポア率を減らすフィラーとして平均粒径2μmのC粉末を30wt%添加してなるプリプレグ1を、図1のaに示すように板厚の中心部に配し、その上下両面にフェノール樹脂中に炭素繊維の開繊維物3plyを含浸させたフィラー無添加のプリプレグ2を積層し、硬化して、図1のbに示すようにFRP3を作り、次にこのFRP3を焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やした図1のCに示す傾斜ポアC/Cプリフォーム4を作った。
【0012】
次に本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の他の1つの一実施例を説明すると、フェノール樹脂中に炭素繊維の開繊織物12plyを含浸させたプリプレグにポア率を減らすフィラーとして平均粒径2μmのC粉末を30wt%添加してなるプリプレグ1を、図2のaに示すように板厚の中心部に配し、その上下両面にフェノール樹脂中に炭素繊維の開繊織物3plyを含浸させたフィラー無添加のプリプレグ2を積層し、さらにその上下両面にフェノール樹脂中に炭素繊維の平織物1plyを含浸させたプリプレグにポア率を増やすフィラーとして平均粒径5μmのAl粉末を30wt%添加してなるプリプレグ5を積層し、硬化して、図2のbに示すFRP6を作り、次にこのFRP6を焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やした図2のCに示す傾斜ポアC/Cプリフォーム7を作った。
【0013】
次に本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法の別の1つの一実施例を説明すると、板厚の中心部に、図3のaに示すように織りの密な炭素繊維の開繊織物18plyをフェノール樹脂に含浸させてなるプリプレグ8を配し、その上下両面に織りの粗い炭素繊維の平織物1plyをフェノール樹脂に含浸させてなるプリプレグ9を積層し、硬化して、図3のbに示すようにFRP10を作り、次にこのFRP10を焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やした図3のCに示す傾斜ポアC/Cプリフォーム11を作った。
【0014】
次に本発明の傾斜ポアC/Cプリフォームの製造方法のさらに別の1つの一実施例を説明すると、板厚の中心部に図4のaに示すように炭素繊維100%の開繊織物12plyをフェノール樹脂に含浸させてなるプリプレグ12を配し、その上下両面にポリマー繊維,本例の場合ナイロン繊維(ポリエチレン繊維の場合もある)の混紡率40%にした炭素繊維の開繊織物3plyをフェノール樹脂に含浸させてなるプリプレグ13を配し、さらにその上下両面にナイロン繊維(ポリエチレン繊維の場合もある)の混紡率を80%にした炭素繊維の平織物1plyをフェノール樹脂に含浸させてなるプリプレグ14を積層し、硬化して、図4のbに示すようにFRP15を作り、次にこのFRP15を焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やした図4のCに示す傾斜ポアC/Cプリフォーム16を作った。
【0015】
こうして作った実施例1〜4の傾斜ポアC/Cプリフォーム4,7,11,16と、従来の通常のC/Cプリフォーム、即ちフェノール樹脂中に炭素繊維の開繊織物24plyを含浸させたプリプレグを硬化してFRPとし、これを焼成して得たポア率が均一なC/Cプリフォームとを、プリフォーム特性について測定した処、下記の表1に示すような結果を得た。
【0016】
【表1】
Figure 0003624388
【0017】
上記の表1で判るようにマトリックスプリカーサ中に、各種フィラーを添加したり、織物の織り密度を変えたり、ポリマー繊維との混紡の織物を使用したりすることによって、焼成後のポアの体積含有率Vpを変化させることができる。また実施例1〜4の傾斜ポアC/Cプリフォームと従来例のC/Cプリフォームとは表面の平均ポア径に大差はない。
【0018】
実際に実施例1〜4の傾斜ポアC/Cプリフォームと従来例のC/Cプリフォームに、40000パルスのCVIを実施してSiCを内部に析出充填させ、その前後のポア率と引張強度を測定したところ、下記の表2に示すような結果を得た。
【0019】
【表2】
Figure 0003624388
【0020】
上記表2で判るように、実施例1〜4の傾斜ポアC/Cプリフォームは、CVI後ポア率が低下し、引張強度が向上しているのに対し、従来例のC/Cプリフォームはポア率の低下が少なく、引張強度の向上率が低い。これは実施例1〜4の傾斜ポアC/Cプリフォームが、CVI実施により原料ガスが内部に奥深く浸透し、SiCが析出充填されて内部が緻密となるのに対し、従来例のC/Cプリフォームが、CVI実施により表層部で早期にポアがSiCの析出充填により目詰りを起こし、その部分から原料ガスが浸透しなくなって内部がポーラスのままであるからに他ならない。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法によれば、板厚中心部が緻密で高強度な、表面に向かうにしたがってポーラスでCVI法によるセラミックスの内部析出充填が容易な、マトリックスの多元化による無機系複合材料の高性能化が可能な、またCVD法によるコーティング膜を表面層のポアでのアンカー効果により高い密着性を得ることの可能な、優れた傾斜ポア複合材プリフォームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の傾斜ポアC/Cプリフォームの製造方法1つの一実施例を示すもので、a〜cはその工程図である。
【図2】本発明の傾斜ポアC/Cプリフォームの製造方法の他の1つの一実施例を示すもので、a〜cはその工程図である。
【図3】本発明の傾斜ポアC/Cプリフォームの製造方法の別の1つの一実施例を示すもので、a〜cはその工程図である。
【図4】本発明の傾斜ポアC/Cプリフォームの製造方法のさらに別の1つの一実施例を示すもので、a〜cはその工程図である。
【符号の説明】
1 C粉末添加のプリプレグ
2 フィラー無添加のプリプレグ
3 FRP
4 傾斜ポアC/Cプリフォーム
5 Al粉末添加のプリプレグ
6 FRP
7 傾斜ポアC/Cプリフォーム
8 織りの密な炭素繊維の開繊織物が配されているプリプレグ
9 織りの粗い炭素繊維の平織物が配されているプリプレグ
10 FRP
11 傾斜ポアC/Cプリフォーム
12 炭素繊維100%の開繊織物が配されているプリプレグ
13 混紡率40%の炭素繊維の開繊織物が配されているプリプレグ
14 混紡率80%の炭素繊維の平織物が配されているプリプレグ
15 FRP
16 傾斜ポアC/Cプリフォーム

Claims (7)

  1. マトリックスプリカーサ中にポア率を減らすフィラーを添加したプリプレグを板厚の中心部に配し、その上下両面にフィラー無添加のプリプレグを積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とする傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  2. マトリックスプリカーサ中にポア率を減らすフィラーを添加したプリプレグを板厚の中心部に配し、その上下両面にフィラー無添加のプリプレグを積層し、さらにその上下両面に順次マトリックスプリカーサ中にポア率を増やすフィラーを添加したプリプレグを少なくとも一層積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚の中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とする傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  3. フィラーを添加するマトリックスプリカーサが、フェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂、またはセラミックス前駆体であることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  4. ポア率を減らすフィラーが、焼成しても揮散しないC粉末、SiC,TiC,B C等の炭化物、ZrN,TiN等の窒化物、Al O,Y 等の酸化物などのセラミックスであることを特徴とする請求項1又は2記載の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  5. ポア率を増やすフィラーが、焼成時にAl 等として揮散するAl粉末等の金属粉末、焼成時にガス化して揮散するポリマー粉末、焼成時に炭素またはセラミックスとして残る量が少ない樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  6. 板厚の中心部に、織りの密な炭素繊維あるいはセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させて焼成によりポア率が低くなるようにしたプリプレグを配し、その上下両面に織りの粗い炭素繊維あるいはセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させて焼成によりポア率が高くなるようにしたプリプレグを配して積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とする傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
  7. 板厚の中心部に、炭素繊維あるいはセラミックス繊維100%の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させてなるプリプレグを配し、その上下両面に順次ポリマー繊維混紡率を増やした炭素繊維あるいはセラミックス繊維の織物にフェノール樹脂等の残炭率の高い樹脂又はセラミックス前駆体等を含浸させて焼成によりポリマー繊維がガス化して揮散しポア率が高くなるようにしたプリプレグを配して積層し、硬化させた後、これを焼成して、板厚中心部から外表面にポア率を傾斜的に増やしたプリフォームを作ることを特徴とする傾斜ポア複合材プリフォームの製造方法。
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