JP3623812B2 - 自動車のシートバック用クッション体およびその製造方法 - Google Patents

自動車のシートバック用クッション体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、成形性が良好で背もたれ部用インサートの取り付けも簡単な自動車のシートバック用クッション体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用のシートバックには、背もたれ部とヘッドレスト部が一体に形成された、いわゆるハイバックタイプと呼ばれるものがある。このハイバックタイプのシートバックは、シートバック用クッション体と前記クッション体の内部または裏面に配設されるインサートとからなり、所望により合成または天然の皮革類や布などからなる表皮材によって表面が覆われている。なお、前記インサートは、通常パイプフレームにばねが張設されたものが用いられる。
【0003】
前記シートバックは、その発泡成形時に成形型内にあらかじめインサートを配しておき、前記成形型内に合成樹脂発泡原料を注入しクッション体の成形と同時にインサートを前記クッション体に一体に形成することにより得られる。
しかるに、かかるシートバックは、インサートがクッション体と一体となっているので、身体の動きにクッション体がなじみにくく着座時に違和感を生じ乗り心地が良くないという問題があった。そのため、近年では、図10に示すような、シートバックが多用されている。このシートバック50は、クッション体51とインサート52とからなり、クッション体51の成形後にインサート52を前記クッション体51内に挿入して用いる。このクッション体51は背もたれ部53と前記背もたれ部53の上部に一体に形成されたヘッドレスト部54とからなり、背もたれ部53の背面に袋部55およびひれ部56を有している。
【0004】
袋部55は、インサート52を挿入保持するためのもので、図の鎖線のように、前記背もたれ部53の上部にヘッドレスト部54内に到る深さを有し、かつ下方に開口して設けられている。また、ひれ部56は、前記袋部55の下部両側から内向きに延びている。このひれ部56は、前記袋部55内に挿入されたインサート52の本体部57を側方から包んで保持するためのものである。
【0005】
しかしながら、前記構造のクッション体51にあっては、前記袋部55内が深く形成されるため、前記袋部55内にインサート52を確実に挿入するのが困難であるばかりか、挿入の際にインサート52が袋部55の開口58に引っ掛かって袋部55が破れたりするおそれがある。
【0006】
また、前記ハイバックタイプのクッション体51に用いられるインサート52は、背もたれ部用インサート52aの上部にヘッドレスト部用のインサート52bが一体になったものであるのに対し、ヘッドレスト部が別個となった、いわゆるローバックタイプのクッション体にあっては、背もたれ部用インサートのみが用いられる。しかも、自動車の車種、クラス等に応じて両タイプが使い分けられるため、シートバックの製造メーカーとしては、両タイプ用のインサートを用意しなければならず、部品コスト上、および部品管理上の問題があった。
【0007】
さらに、前記ハイバックタイプのクッション体51は成形の際に以下に示すような問題を有している。図11および図12は、前記ハイバックタイプのクッション体を製造するための発泡成形型の一例である。図中の符号60は発泡成形型である。図示したように、この発泡成形型60は、下型61と上型62と、その上型62の開口部に取り付けられた中型63とからなり、背もたれ部成形キャビティ64とヘッドレスト部成形キャビティ65とを連設して有するものである。中型63はクッション体に前記袋部55とひれ部56を形成するためのもので、図のように、背もたれ部成形キャビティ64からヘッドレスト部成形キャビティ65内に入り込む袋部用コア66、および前記背もたれ部成形キャビティ64内に突出するひれ部用コア67を有している。そして、合成樹脂発泡原料が前記発泡成形型60のキャビティ64,65に注入され、上型62,62および中型63を締めた後、型内で発泡硬化させて成形品が成形される。
【0008】
しかしながら、図11から理解されるように、前記ヘッドレスト部成形キャビティ65側では該キャビティ65内奥深くに袋部用コア66が入り込んでいるため、該袋部用コア66によって狭くなったヘッドレスト部成形キャビティ65内を、発泡により粘度を上昇させながら合成樹脂発泡原料が通ることになり、その際の抵抗によって合成樹脂発泡樹脂原料のスムーズな流れが妨げられるおそれがある。そのため、クッション体に欠肉やセル荒れなどを生じ、後加工などで修正する必要があった。また、脱型する際には、中型が奥深い袋部55内に挿入されているため、クッション体の袋部55から中型を抜き取る時に無理な力が加わって、袋部の開口58に破れなどを生じやすいという問題もある。なお、前記破れや欠肉などを防止するため、成形品の肉厚を大とすることも考えられるが、その場合にはデザイン上の見栄えが悪くなる問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明はこのような問題を解決するために提案されたものであって、背もたれ部用インサートの挿入および取り付けが簡単で、クッション体の製造の際に破れなどを生じることがなく、かつ背もたれ部用インサートの共用化が可能で、しかも乗り心地が良好な自動車のシートバック用クッション体およびその製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ここで提案される発明には二つある。一つは前記した問題点を解決する自動車のシートバック用クッション体であり、二つにはその製造方法である。
すなわち、第一の発明は背もたれ部とその上部にヘッドレスト部が一体に発泡成形された自動車のシートバック用クッション体において、前記背もたれ部は下方が開口した袋部を裏側の上部に有するとともに、該袋部の下部から伸びるひれ部を前記裏側の両側部に内向きに有し、一方、前記ヘッドレスト部はヘッドレストインサートの本体部が埋設されるとともに、該ヘッドレストインサートのスティがヘッドレスト部から前記背もたれ部の袋部内へ突出していることを特徴とする自動車のシートバック用クッション体に係る。
【0011】
そして、第二の発明は、下型、上型および中型により背もたれ部成形キャビティとヘッドレスト部成形キャビティとが連設して内部に形成された成形型内に、発泡原料を注入して、背もたれ部とその上部にヘッドレスト部が一体となった自動車のシートバック用クッション体を発泡成形するに際し、前記中型の一端側をヘッドレスト部成形キャビティに近い背もたれ部成形キャビティ内に、一方、前記中型の両側部を背もたれ部成形キャビティの両側部内に、各々前記下型および上型のキャビティ面から離して装置するとともに、前記中型の一端側内にヘッドレストインサートのスティを保持しておいて、該スティに設けられたヘッドレストインサートの本体を前記ヘッドレスト部成形キャビティ内に配置した後、前記成形型内で合成樹脂発泡原料を発泡させることにより、裏側上部に下方が開口した袋部を有し、かつ該袋部の下部から伸びるひれ部を前記裏側の両側部に有する背もたれ部と、前記ヘッドレストインサートの本体が埋設されて前記ヘッドレストインサートのスティが前記背もたれ部の袋部内へ突出するヘッドレスト部とを、一体成形することを特徴とする自動車のシートバック用クッション体の製造方法に係る。
【0012】
【実施例】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1はこの発明のクッション体の一例をその背面側から見た斜視図、図2はその要部を拡大して示す断面図である。また、図3ないし図8は前記クッション体の製造方法を示す図であって、図3はこの発明の製造方法が好適に実施される発泡成形型の断面を端面で示した図、図4はその型開き状態を示す端面図、図5はヘッドレストインサートの取り付け時の断面を示す発泡成形型の端面図、図6はそのキャビティ内に発泡樹脂原料を注入した状態を示す端面図、図7は型締め状態を示す端面図、図8は発泡後の型開き状態を示す端面図、図9は前記成形型から脱型された製品の断面図である。
【0013】
図1および図2に示されるように、この発明の自動車のシートバック用クッション体10は、背もたれ部11とヘッドレスト部12とが一体に発泡成形されたものである。背もたれ部11の裏側上部には袋部14が形成されている。この袋部14は、背もたれ部11内に背もたれ部用インサート20を挿入するためのもので、前記背もたれ部11の下方に開口13を有する。この背もたれ部用インサート20の上部には、ヘッドレストインサート21のスティ23を取り付けるためのスティガイド24,24が設けられている。
前記袋部14の下部には、背もたれ部11の左右両側に沿ってひれ部15がそれぞれ内向きに形成されている。
【0014】
一方、ヘッドレスト部12は、前記背もたれ部11の上部に一体に設けられており、内部にヘッドレストインサート21の本体部22が、そのスティ23を前記袋部14内に突出させた状態で埋設されている。
【0015】
このクッション体10は、前記袋部の開口13を介して背もたれ部用インサート20を袋部14内およびひれ部15裏側に挿入し、ヘッドレスト部12から袋部14内に突出しているスティ23をスティガイド24に取り付けることによって、自動車のシートバックとされる。なお、後から取り付けられる背もたれ部用インサート20は、背もたれ部のみであるため、ヘッドレスト部と背もたれ部とが別個になったローバックタイプのインサートを流用することもできる。
【0016】
このクッション体10によれば、ヘッドレストインサート21の本体部22がクッション体10のヘッドレスト部12内に埋設されていて、後にインサートをヘッドレスト部内に挿入するための中空部を袋部14の奥に形成しておく必要がないので、袋部14内の深さを浅くすることができ、背もたれ部用インサート20の挿入時に袋部の開口13が裂けたり破れたりすることもない。なお、図10で示した従来のハイバックタイプのクッション体は、袋部内の深さが約40cm程度であるのに対し、本例では約15cmであった。
【0017】
図3および図4はこの発明の製造方法を好適に実施する発泡成形型の一例を示したものである。図において符号30は発泡成形型、31は下型、32は上型、33は中型である。前記下型31と上型32と中型33とによって背もたれ部成形キャビティ34とヘッドレスト部成形キャビティ35とが連設して形成される。
【0018】
下型31の内底面には複数の突条40が立設されている。この突条40は後で詳述する中型33を所定高さに保持するためのもので、製品成形後に表皮吊り込みのための孔部形成用として利用される。上型32は型後方のヒンジ41を介して開閉自在に構成されている。実施例では、前記上型32にはフレーム43が連結され、また、前側の上型32の一端は持ち上げ用ハンドル46として構成されている。
フレーム43は、前記上型32中型33とを連動して開閉するためのもので、前方には中型33の係合部44と係合する棒状部材45が、後方にはアーム49を介して吊り棒49aがそれぞれ設けられている。
係合部44は、前記中型33の前方に、先端が鉤状に屈曲して形成されており、図4に示すように前記上型32が一旦上昇した際、前記フレーム43の棒状部材45と係合し、中型33を前記上型32とともに上昇させる。
また、前記中型33の後方には、長穴47を有する遊動部材48が設けられており、前記吊り棒49aが遊嵌されている。それによって、型開き時に中型33を前方へ一定距離遊動させて、成形品の脱型を容易に行うことができるようになっている。
【0019】
次に、図5ないし図9に前記発泡成形型を用いたクッション体10の製法例を示す。なお、図を簡略化するために、フレーム43や係合部44など前記した発泡成形型の付属部品についての図示は省略している。
まず、図5に示されるように、上型32と中型33を開き、前記中型33にヘッドレストインサート21が取り付けられる。前記中型33の一端側(ヘッドレスト部成形キャビティ側)にはクッション体10の袋部14を形成する袋部用コア36が、一方、前記中型33の両側には、図12で示したひれ部用コア67と同様のひれ部用コアがひれ部15形成用として設けられており、それぞれ前記下型31と上型32のキャビティ面から離して装置されている。
前記袋部用コア36は、先端に孔からなるスティ保持部38を有し前記ヘッドレスト部用キャビティ35近くの背もたれ部成形キャビティ34に突出している。ヘッドレストインサート21は、前記スティ23が前記スティ保持部38に取り付けられ、本体部22がヘッドレスト部成形キャビティ35内に配置された状態で保持される。
【0020】
そして、図6および図7に示すように、前記成形型30内に合成樹脂発泡原料Pを注入し、上型32および中型33を下型31に被せて型締めし、前記ヘッドレストインサート21と一体に発泡成形する。それによって、ヘッドレスト部12にヘッドレストインサート21の本体部22が一体に埋設される。その発泡時、ヘッドレスト部成形キャビティ35は、その内部にヘッドレストインサート21の本体部が突出しているだけで、中型33がほとんど突出していないため、キャビティ空間が広く、合成樹脂発泡原料Pが容易に充満でき、セルが潰れるおそれもほとんどない。
【0021】
発泡硬化後、図8に示されるように型開きし、中型33からクッション体10を脱型する。このクッション体10は袋部内が浅く形成されているので、脱型の際に、袋部用コア36が引っ掛かって開口が破れたりするおそれがない。図9から理解されるように、得られたクッション体10のヘッドレスト部12には、前記ヘッドレストインサート21の本体部22が一体に埋設され、背もたれ部11裏面に形成された袋部14内には前記ヘッドレストインサート21のスティ23が突出している。
【0022】
【発明の効果】
以上図示し説明したように、この発明の自動車のシートバック用クッション体およびその製造方法によれば、クッション体のヘッドレスト部内にヘッドレストインサートが埋設されているので、背もたれ部用インサートのための袋部の深さを浅く形成することができる。そのため、背もたれ部用インサートの挿入および取り付けが簡単になり袋部の開口の破れも防ぐことができる。しかも、袋部内が浅いため、従来のハイバックタイプのシートバックにありがちであった袋部のバタツキ感がなく、インサートとの一体感を得ることができる。一方、背もたれ部は背もたれ部用インサートとクッション体とが一体に発泡成形されていないため、身体の重みに応じてクッション体が自在に変形し、着座感や乗り心地も良好である。
また、ヘッドレスト部と背もたれ部とが別個になったいわゆるローバックタイプのクッション体に用いられる背もたれ部用インサートを、この発明のクッション体およびその製造方法に使用することもでき、部品の共通利用が可能で極めて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のクッション体の一例をその背面側から見た斜視図である。
【図2】その要部を拡大して示す断面図である。
【図3】この発明の製造方法が好適に実施される発泡成形型の断面を端面で示した図である。
【図4】その型開き状態を示す端面図である。
【図5】クッション体の製造方法を示す図であって、ヘッドレストインサートの取り付け時の断面を示す発泡成形型の端面図である。
【図6】そのキャビティ内に発泡樹脂原料を注入した状態を示す端面図である。
【図7】型締め状態を示す端面図である。
【図8】発泡後の型開き状態を示す端面図である。
【図9】前記成形型から脱型された製品の断面図である。
【図10】自動車のシートバック用クッション体の従来品を背面側から見た斜視図である。
【図11】その発泡成形型の一例を示す端面図である。
【図12】その12−12線における端面図である。
【符号の説明】
10 クッション体
11 背もたれ部
12 ヘッドレスト部
13 開口
14 袋部
15 ひれ部
20 背もたれ部用インサート
21 ヘッドレストインサート
22 ヘッドレストインサートの本体部
23 ヘッドレストインサートのスティ
30 発泡成形型
31 下型
32 上型
33 中型

Claims (2)

  1. 背もたれ部とその上部にヘッドレスト部が一体に発泡成形された自動車のシートバック用クッション体において、
    前記背もたれ部は下方が開口した袋部を裏側の上部に有するとともに、該袋部の下部から伸びるひれ部を前記裏側の両側部に内向きに有し、
    一方、前記ヘッドレスト部はヘッドレストインサートの本体部が埋設されるとともに、該ヘッドレストインサートのスティがヘッドレスト部から前記背もたれ部の袋部内へ突出していることを特徴とする自動車のシートバック用クッション体。
  2. 下型、上型および中型により背もたれ部成形キャビティとヘッドレスト部成形キャビティとが連設して内部に形成された成形型内に、発泡原料を注入して、背もたれ部とその上部にヘッドレスト部が一体となった自動車のシートバック用クッション体を発泡成形するに際し、
    前記中型の一端側をヘッドレスト部成形キャビティに近い背もたれ部成形キャビティ内に、一方、前記中型の両側部を背もたれ部成形キャビティの両側部内に、各々前記下型および上型のキャビティ面から離して装置するとともに、前記中型の一端側内にヘッドレストインサートのスティを保持しておいて、該スティに設けられたヘッドレストインサートの本体を前記ヘッドレスト部成形キャビティ内に配置した後、
    前記成形型内で合成樹脂発泡原料を発泡させることにより、
    裏側上部に下方が開口した袋部を有し、かつ該袋部の下部から伸びるひれ部を前記裏側の両側部に有する背もたれ部と、前記ヘッドレストインサートの本体が埋設されて前記ヘッドレストインサートのスティが前記背もたれ部の袋部内へ突出するヘッドレスト部とを、一体成形することを特徴とする自動車のシートバック用クッション体の製造方法。
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