JP3621857B2 - 円筒型燃料電池用製膜材、セルチューブ及びその製膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型燃料電池の製膜が容易な円筒型燃料電池用製膜材、セルチューブ及びその製膜方法に関する。
【0002】
【背景技術】
次世代エネルギーとして近年固体電解質燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cells:以下「燃料電池」という。)が種々提案されている。
【0003】
図5は円筒型の燃料電池の構成図の概略である。
図5に示すように、円筒型の燃料電池セルチューブ10は、例えばカルシア安定化ジルコニア(CSZ)多孔質円筒管の基体管11に、燃料極12と固体電解質(以下「電解質」という)13と空気極14とを順に焼結法により製膜して燃料電池を構成しており、導電性接続材であるインタコネクタ15で上記燃料極12と空気側電極14とを直列に接続して燃料電池を構成している。
【0004】
この円筒型の燃料電池には、基体管11の内側を軸方向に燃料ガス(H2 )を流すと共に、基体管11の外側を軸方向に空気(酸素:O2 )を流すようにしている。
【0005】
従来では、円筒型燃料電池のセルチューブを製造するのは、各材料を溶射法により順次溶射して、燃料極12、電解質13、インタコネクタ15及び空気極14の順に順次製膜することが提案されている。しかしながら、該提案の溶射法では材料の歩留りが悪く、製造費用が嵩み問題であった。
【0006】
そこで、図6(A)に示すように、印刷したい部分をメッシュ状としたスクリーン101とへら102とからなるスクリーン印刷法により、燃料極12、電解質13、インタコネクタ14及び空気極14とを順次製膜してセルチューブを製造することが提案されている。このスクリーン印刷法は、図6(B)に示すように、スクリーン印刷工程16の後に、乾燥工程17をなすことで製膜しており、所望の膜厚となるまで、これを繰返すことで各々の製膜を順次行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スクリーン印刷法では一度に印刷できる膜厚が薄く(80〜100μm)、例えば燃料極や空気極等のようなある程度の厚み(燃料極では例えば100〜300μm、空気極では300〜1000μm)を有する膜の製造を行うには、何回もの印刷・乾燥を繰り返して施す必要があり、工数が増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、円筒型燃料電池の製膜が容易な円筒型燃料電池用製膜材、セルチューブ及びその製膜方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の[請求項1]の円筒型燃料電池用製膜材の発明は、基体管の表面に製膜される製膜材であって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の各々の材料からなるリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装した後、焼成して膜を形成することを特徴とする。
【0010】
[請求項2]の円筒型燃料電池のセルチューブの発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜してなる円筒型燃料電池のセルチューブであって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装し、一体に焼成してなることを特徴とする。
上記セルチューブにおいて、特に燃料極,空気極をリボン状の製膜材からなるようにするとよい。
【0011】
[請求項3]のセルチューブ製膜方法の発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜して円筒型燃料電池のセルチューブを製膜する方法であって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に貼着・巻装し、焼成することを特徴とする。
また、上記方法において、基体管の表面に燃料極、電解質及びインタコネクタをスクリーン印刷法により製膜した後、空気極のリボン状製膜材を貼着・巻装し、焼成するようにしてもよい。
また、上記方法において、基体管の表面に燃料極、電解質及びインタコネクタを製膜した後、一度焼結し、その後空気極のリボン状製膜材を貼着・巻装し、焼成するようにしてもよい。
【0012】
[請求項4]のセルチューブ製膜方法の発明は、[請求項3]に記載のセルチューブ製膜方法であって、燃料極、電解質、インタコネクタを順次製膜し焼成後、レーザ測定により製膜位置のズレを検知し、該ズレに応じ空気極用のリボン状製膜材の位置を調整して基体管側に貼着・巻装し、再度焼成作業を行うことを特徴とする。
[請求項5]の製膜装置の発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜する円筒型燃料電池の製膜装置であって、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールを具備し、所定間隔を有して配してなる請求項1に記載のリボン状製膜材を押圧して基体管外面へ巻装することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
本実施の形態にかかるセルチューブは、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜してなる円筒型燃料電池のセルチューブであって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層をリボン状の製膜材を所定間隔を有して貼着・巻装し、一体に焼成してなるものである。
よって、本発明では、リボン状製膜材を用いてなるので、従来のようなスクリーン印刷の場合と較べて工程が簡略され、円筒型燃料電池のセルチューブの製造が簡易となり、製造費用の低廉化を図ることができる。
【0015】
このセルチューブの製膜方法は、基体管の表面に製膜する燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の全てをリボン状製膜材を用いて製膜してもよいが、比較的膜厚の薄い電解質及びインタコネクタを従来と同様のスクリーン印刷とし、燃料極及び空気極をリボン状製膜材を用いて貼着・巻装し、焼成するようにしてもよい。
【0016】
以下、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1に第1の実施の形態にかかる円筒型燃料電池セルチューブ(以下「セルチューブ」という)の製膜方法の概略図を示す。
図2に第1の実施の形態にかかるセルチューブの製膜工程の概略図を示す。
図1及び図2に示すように、本実施の形態では、基体管11の表面に燃料極12、電解質13、インタコネクタ15を、予めスクリーン印刷法により順次製膜してセルチューブ20を形成したものであり、このセルチューブ20に空気極14用のリボン状製膜材21を貼着・巻装している。
そして、このリボン状製膜材21が巻装されたものに焼成作業22を施して空気極14を一体に形成したセルチューブを形成してなるものである。
【0018】
上記リボン状製膜材21は、例えば押出し法やドクタブレード法により細紐状としており、焼成した後に、所望する厚みとなるように調整している。
例えば空気極14では一般に300〜1000μmの厚さが好適であるので、所望する厚みとなるように、材料の組成比等による収縮率を勘案して厚みが決定される。
同様に燃料極12では一般に100〜300μmの厚さが好適であるので、所望する厚みとなるように、材料の組成比等による収縮率を勘案して厚みが決定される。
【0019】
図3は円筒型燃料電池の製膜装置の概略図である。
図3に示すように、この製膜装置31は、基体管11の表面に燃料極12、電解質13、インタコネクタ15及び空気極14を順次製膜する円筒型燃料電池の製膜装置であって、装置枠体32から垂下され、基体管11を押圧(P)しつつ回動させる押圧ロール33aを有する回動手段33を具備し、図示しない移動手段により所定間隔を有して配してなるリボン状製膜材21を基体管11側へ巻装するものである。
この移動の際に所定圧力で押圧しているので、リボン状製膜材21が基体管側に効果的に貼り付くことになる。
この貼り付きがなされた後、焼結することで、空気極14が一体に形成されることになる。
【0020】
本実施の形態では、燃料極12はスクリーン印刷方法によったが、図2に示すように、空気極14と同様に燃料極をリボン状製膜材を用いて貼付・巻装法により製膜するようにしてもよい。
これにより、燃料極の製膜工程の作業が軽減され、作業効率の向上を図ることができる。
【0021】
本実施の形態では、スクリーン印刷法と貼付け法とを併用して空気極材料まで一体とした後、焼結するので、焼結温度は1200〜1500℃程度とするのが好ましい。
【0022】
[第2の実施の形態]
図4に第2の実施の形態にかかるセルチューブの製膜工程の概略図を示す。
図4に示すように、本実施の形態では、基体管11の表面に燃料極12、電解質13、インタコネクタ15を順次予め製膜し、その後、第1回の焼成作業23によりセルチューブを形成しており、この焼成してなるセルチューブに、空気極14用のリボン状製膜材21を別途貼付けて巻装している。
その後、リボン状製膜材21が巻装されたものを第2回の焼成作業24により焼成して空気極14を一体に形成したセルチューブを形成してなるものである。
【0023】
本実施の形態では、燃料極12はスクリーン印刷方法によったが、図2に示すように、空気極14と同様に燃料極をリボン状製膜材を用いて貼付・巻装法により製膜するようにしてもよい。
これにより、燃料極の製膜工程の作業が軽減され、作業効率の向上を図ることができる。
【0024】
本実施の形態では、スクリーン印刷法により基体管11の表面に燃料極12、電解質13、インタコネクタ15を順次予め製膜してなるセルチューブを先ず焼成するので、焼成温度を高くすることができ、第1回の焼成作業23の焼成温度は1300〜1600℃とすることができる。次に、空気極としてリボン状製膜材を貼り付けた後の第2回の焼成作業24の焼結温度は1200〜1400℃程度と少し低い温度とすることも可能である。
【0025】
また、本実施の形態では、空気極14のリボン状製膜材21を所定間隔で並べて巻装するので、第1回の焼成において、電解質13やインタコネクタ15等の製膜ピッチが熱収縮により多少ずれた場合であっても、レーザ測定等の測定手段により製膜位置のズレを検知し、該ズレに応じて空気極14のリボン状製膜材21を並べることで、ズレに応じた空気極の製膜が可能となる。
【0026】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の[請求項1]の円筒型燃料電池用製膜材の発明は、基体管の表面に製膜される製膜材であって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の各々の材料からなるリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装した後、焼成して膜を形成するので、簡易なセルチューブ用の製膜材を提供することができる。
【0027】
[請求項2]の円筒型燃料電池のセルチューブの発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜してなる円筒型燃料電池のセルチューブであって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装し、一体に焼成してなるので、製膜が容易なセルチューブを提供できる。
【0028】
上記セルチューブにおいて、特に燃料極,空気極をリボン状の製膜材とすれば、作業効率の向上が図れる。
【0029】
[請求項3]のセルチューブ製膜方法の発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜して円筒型燃料電池のセルチューブを製膜する方法であって、燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に貼着・巻装し、焼成するので、作業効率が向上する。
【0030】
また、上記方法において、基体管の表面に燃料極、電解質及びインタコネクタをスクリーン印刷法により製膜した後、空気極のリボン状製膜材を貼着・巻装し、焼成することにより、空気極の製膜の作業効率が向上する。
【0031】
また、上記方法において、基体管の表面に燃料極、電解質及びインタコネクタを製膜した後、一度焼結し、その後空気極のリボン状製膜材を貼着・巻装し、焼成することにより、各製膜材の焼結温度を異なるようにして良好な製膜が可能となる。
【0032】
[請求項4]のセルチューブ製膜方法の発明は、[請求項3]に記載のセルチューブ製膜方法であって、燃料極、電解質、インタコネクタを順次製膜し焼成後、レーザ測定により製膜位置のズレを検知し、該ズレに応じ空気極用のリボン状製膜材の位置を調整して基体管側に貼着・巻装し、再度焼成作業を行うので、ズレに応じた空気極の製膜が可能となる。
[請求項5]の製膜装置の発明は、基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜する円筒型燃料電池の製膜装置であって、基体管を押圧しつつ回動させる回動手段を具備し、所定間隔を有して配してなる請求項1に記載のリボン状製膜材を押圧して基体管外面へ巻装するので、製膜が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態にかかるセルチューブの製膜方法の概略図である。
【図2】第1の実施の形態にかかるセルチューブの製膜工程の概略図である。
【図3】円筒型燃料電池の製膜装置の概略図である。
【図4】第2の実施の形態にかかるセルチューブの製膜工程の概略図である。
【図5】円筒型燃料電池セルチューブの概略図である。
【図6】スクリーン印刷方法の概略図を示す。
【符号の説明】
11 基体管
12 燃料極
13 電解質
15 インタコネクタ
20 セルチューブ
14 空気極
21 リボン状製膜材
22 焼成作業
23 第1回の焼成作業
24 第2回の焼成作業
Claims (5)
- 基体管の表面に製膜される製膜材であって、
燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の各々の材料からなるリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装した後、焼成して膜を形成することを特徴とする円筒型燃料電池用製膜材。 - 基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜してなる円筒型燃料電池のセルチューブであって、
燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を所定間隔で配し、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に該リボン状製膜材を貼着・巻装し、一体に焼成してなることを特徴とする円筒型燃料電池のセルチューブ。 - 基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜して円筒型燃料電池のセルチューブを製膜する方法であって、
燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極の少なくとも1層のリボン状製膜材を、基体管内面を押圧しつつ回動させるロールにより基体管外面に貼着・巻装し、焼成することを特徴とする円筒型燃料電池のセルチューブ製膜方法。 - 燃料極、電解質、インタコネクタを順次製膜し焼成後、レーザ測定により製膜位置のズレを検知し、該ズレに応じ空気極用のリボン状製膜材の位置を調整して基体管側に貼着・巻装し、再度焼成作業を行うことを特徴とする請求項3に記載の円筒型燃料電池のセルチューブ製膜方法。
- 基体管の表面に燃料極、電解質、インタコネクタ及び空気極を順次製膜する円筒型燃料電池の製膜装置であって、
基体管内面を押圧しつつ回動させるロールを具備し、
所定間隔を有して配してなる請求項1に記載のリボン状製膜材を押圧して基体管外面へ巻装することを特徴とする円筒型燃料電池の製膜装置。
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