JP3621753B2 - 水中レーザ溶接装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水中レーザ溶接装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水中に没しているワーク(被溶接材)をレーザ溶接する技術としては、例えば特願平3−189752号(特開平5−31591号公報)等が既に提案されており、ここに開示されている水中レーザ溶接装置では、下部を開口したチャンバ状のドライ化装置により水中に没しているワークの溶接部全域を包囲し、前記ドライ化装置内の水をアルゴンガス等の注入により排除して空洞を形成し、前記ドライ化装置内に位置調整可能に装備されているレーザ照射光学系に光ファイバを介して導いたレーザ光を前記ワークに向け照射して溶接作業を行うようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した如き従来の水中レーザ溶接装置では、複雑且つ大型のドライ化装置が必要となる為に構造が肥大化し、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性が悪いという不具合があった。
【0004】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、複雑且つ大型のドライ化装置を必要とすることなく溶接部の局所的な排水を行い得る水中レーザ溶接装置を提供することによって、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性を向上することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、YAGレーザ発振器から発振されるレーザ光を光ファイバを介して水中の加工ヘッドに導き、該加工ヘッド内の光学レンズ系を介して集光したレーザ光を前記加工ヘッド先端から水中のワークに向け照射して溶接作業を行う水中レーザ溶接装置であって、前記加工ヘッドのケーシング先端を、レーザスポット付近まで延びる先細り形状のノズル部として形成し、前記加工ヘッドのケーシングに、ワイヤ送給装置から送給される溶接用ワイヤをレーザ光の軸心に対し適切な挿入角度で且つレーザスポットとの芯合わせの微調整が不要となるように案内する為のワイヤ送給ノズルと、ガス供給源から供給されるシールドガスを前記ノズル部内に供給する為のガス流路とを夫々穿設したことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記加工ヘッドの長手方向に対しノズル部を略直角に屈曲形成し、該ノズル部の屈曲した向きに対応するようレーザ光を反射する反射鏡を前記ノズル部内に配置することも可能である。
【0007】
更に、加工ヘッドのケーシングにおける周方向複数箇所にワイヤ送給ノズルを穿設するようにしても良い。
【0008】
【作用】
従って本発明では、YAGレーザ発振器から発振されるレーザ光を光ファイバを介して水中の加工ヘッドに導き、該加工ヘッド内の光学レンズ系を介して集光したレーザ光を前記加工ヘッド先端から水中のワークに向け照射して溶接作業を行う際に、ワイヤ送給装置から送給される溶接用ワイヤが、前記加工ヘッドのケーシングに穿設したワイヤ送給ノズルを通してレーザスポットに案内され、また、ガス供給源から供給されるシールドガスが、前記加工ヘッドのケーシングに穿設したガス流路を通してノズル部内に供給されて該ノズル部の先端からレーザスポットに向け噴射され、ワークの溶接部周囲が前記シールドガスにより局所的に強制排水されて溶接可能な状態となる。
【0009】
また、前記加工ヘッドの長手方向に対しノズル部を略直角に屈曲形成し、該ノズル部の屈曲した向きに対応するようレーザ光を反射する反射鏡を前記ノズル部内に配置した場合には、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性が向上される。
【0010】
更に、加工ヘッドのケーシングにおける周方向複数箇所にワイヤ送給ノズルを穿設した場合には、各ワイヤ送給ノズルの配置を所定の溶接方向に対応させておくことにより、加工ヘッドの進行方向が変更される際における加工ヘッドの向きの転換操作が不要となり、使用するワイヤ送給ノズルを変更するだけで異なる進行方向に向けた溶接に直ちに対応することが可能となる。
【0011】
【実施例】
以下本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1及び図2は本発明の一実施例を示すものであり、水1を貯留した金属製の大型容器2の底部に貫通配置した配管3をワークとして前記大型容器2の底部に隅肉溶接する場合を例示しており、前記配管3の実質的な溶接作業を行う為の加工ヘッド4が、支持ロッド5により水中に吊り降ろされた多関節マニピュレータ6により支持され、前記支持ロッド5は、大型容器2の上部に架設した門型クレーン7により三軸方向(上下、前後、左右の互いに直角な三方向)に移動可能に支持されており、この門型クレーン7による支持ロッド5の移動と前記多関節マニピュレータ6による操作とによって、前記加工ヘッド4が所定の溶接方向(配管3の円周方向)に移動されるようになっている。
【0013】
前記加工ヘッド4の基端には、水1の外に配置されたYAGレーザ発振器8から導いた光ファイバ9が接続されており、前記YAGレーザ発振器8から発振されるレーザ光10が光ファイバ9を介して伝送されるようになっている。
【0014】
前記加工ヘッド4内には、複数枚の集光レンズ11からなる光学レンズ系12が保持されており、前記光ファイバ9により加工ヘッド4まで伝送されたレーザ光10が、前記光学レンズ系12を介し集光されて加工ヘッド4の先端から前記配管3の溶接部に向け照射されるようになっている。
【0015】
また、前記加工ヘッド4のケーシング13の先端は、レーザスポット14付近まで延びる先細り形状のノズル部15として形成されており、該ノズル部15を含む加工ヘッド4のケーシング13には、加工ヘッド4の基端から前記ノズル部15の先端まで貫通するワイヤ送給ノズル16が穿設され、該ワイヤ送給ノズル16の基端には、水1の外に配置されたワイヤ送給装置19から導いたワイヤコンジット18が接続されており、前記ワイヤ送給装置19から送給される溶接用ワイヤ20が、前記ワイヤコンジット18内に挿通されてワイヤ送給ノズル16の先端から前記レーザ光10のレーザスポット14に向け案内されるようにしてある。
【0016】
ここで、前記加工ヘッド4のノズル部15は、ワイヤ送給ノズル16を通してレーザスポット14に案内される溶接用ワイヤ20が、レーザ光10の軸心に対し適切な挿入角度θで案内されるような適切な先細り形状を付しておくと良い。
【0017】
更に、前記加工ヘッド4のケーシング13におけるワイヤ送給ノズル16とは円周方向に異なる位相に、加工ヘッド4の基端からノズル部15付近まで延びて該ノズル部15内に貫通するガス流路21が穿設されており、該ガス流路21の基端には、水1の外に配置されたシールドガスボンベ22(ガス供給源)から導いたガス供給管23が接続されており、前記シールドガスボンベ22から供給されるシールドガス24(アルゴンガス等の不活性ガス)が、前記ガス供給管23内を流れてガス流路21からノズル部15内に流入し該ノズル部15の先端から配管3の溶接部に向け噴射されるようになっている。
【0018】
尚、図中25は前記ガス供給管のシールドガスボンベ22側に備えた電磁弁である。
【0019】
而して、YAGレーザ発振器8から発振されるレーザ光10を光ファイバ9を介して水中の加工ヘッド4に導き、該加工ヘッド4内の光学レンズ系12を介して集光したレーザ光10を前記加工ヘッド4先端から水中の配管3の溶接部に向け照射して溶接作業を行う際に、ワイヤ送給装置19から送給される溶接用ワイヤ20が、前記加工ヘッド4のケーシング13に穿設したワイヤ送給ノズル16を通してレーザスポット14に案内され、また、シールドガスボンベ22から供給されるシールドガス24が、前記加工ヘッド4のケーシング13に穿設したガス流路21を通してノズル部15内に供給されて該ノズル部15の先端からレーザスポット14に向け噴射され、配管3の溶接部周囲が前記シールドガス24により局所的に強制排水されて溶接可能な状態となり、また、溶接用ワイヤ20は前記ワイヤ送給ノズル16の先端からシールドガス24によりドライ状態に保持されてレーザスポット14に送給される。
【0020】
従って上記実施例によれば、複雑且つ大型のドライ化装置を必要とすることなく、加工ヘッド4のノズル部15の先端からシールドガス24を噴射して前記溶接部の局所的な排水を行うことができ、しかも、溶接用ワイヤ20をレーザスポット14に案内する為のワイヤ送給ノズル16や、シールドガス24をノズル部15内に供給する為のガス流路21を、加工ヘッド4のケーシング13に穿設して加工ヘッド4側部に付属物が生じないようにしたので、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性を著しく向上することができる。
【0021】
また、ワイヤ送給ノズル16を加工ヘッド4のケーシング13に穿設したことにより、ワイヤ送給ノズル16の先端から繰り出される溶接用ワイヤ20をシールドガス24によりドライ状態に保持することが極めて容易となるので、溶接欠陥の少ない高品質の溶接を行うことができる。
【0022】
更に、ワイヤ送給ノズル16を加工ヘッド4のケーシング13に穿設したことにより、溶接用ワイヤ20とレーザスポット14との相対関係が作業中の外的な力によって変化するといった不具合がなくなるので、溶接用ワイヤ20とレーザスポット14との芯合わせの微調整が不要となる。
【0023】
図3は本発明の別の実施例を示すもので、加工ヘッド4の長手方向に対しノズル部15を略直角に屈曲形成し、該ノズル部15の屈曲した向きに対応するようレーザ光10を反射する反射鏡26を前記ノズル部15内に配置した例であり、このようにした場合には、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性を一層向上することができる。
【0024】
図4は本発明の更に別の実施例を示すもので、加工ヘッド4のケーシング13における周方向複数箇所にワイヤ送給ノズル16を穿設したものであり、このようにした場合には、各ワイヤ送給ノズル16の配置を所定の溶接方向に対応させておくことにより、加工ヘッド4の進行方向が変更される際における加工ヘッド4の向きの転換操作が不要となり、使用するワイヤ送給ノズル16を変更するだけで異なる進行方向に向けた溶接に直ちに対応することができ、作業能率を大幅に向上することができる。
【0025】
例えば、同じ溶接箇所を往復溶接するような場合、その往復方向に対応し得るよう一対のワイヤ送給ノズル16を夫々配置しておけば、加工ヘッド4の向きを転換することなく、使用すべきワイヤ送給ノズル16を変更するだけで折り返し後も直ちに溶接を行うことができる。
【0026】
更に付言すれば、特に水中溶接の場合では、溶接箇所が水1によって直ちに冷却されるが故に同じ溶接箇所の再溶接を冷却時間を待たずにできるのであり、前記の如く加工ヘッド4の向きを転換する必要がなくなることは、水中溶接作業における作業能率の面からして極めて有効な利点となるのである。
【0027】
尚、本発明の水中レーザ溶接装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0028】
【発明の効果】
上記した本発明の水中レーザ溶接装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0029】
(I)複雑且つ大型のドライ化装置を必要とすることなく、加工ヘッドのノズル部の先端からシールドガスを噴射して前記溶接部の局所的な排水を行うことができ、しかも、ワイヤをレーザスポットに案内する為のワイヤ送給ノズルや、シールドガスをノズル部内に供給する為のガス流路を加工ヘッドのケーシングに穿設して加工ヘッド側部に付属物が生じないようにしたので、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性を著しく向上することができる。
【0030】
(II)ワイヤ送給ノズルを加工ヘッドのケーシングに穿設したことにより、ワイヤ送給ノズルの先端から繰り出されるワイヤをシールドガスによりドライ状態に保持することが極めて容易となるので、溶接欠陥の少ない高品質の溶接を行うことができる。
【0031】
(III)ワイヤ送給ノズルを加工ヘッドのケーシングに穿設したことにより、ワイヤとレーザスポットとの相対関係が作業中の外的な力によって変化するといった不具合がなくなるので、ワイヤとレーザスポットとの芯合わせの微調整が不要となる。
【0032】
(IV)加工ヘッドの長手方向に対しノズル部を略直角に屈曲形成し、該ノズル部の屈曲した向きに対応するようレーザ光を反射する反射鏡を前記ノズル部内に配置した場合には、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性及び操作性を一層向上することができる。
【0033】
(V)加工ヘッドのケーシングにおける周方向複数箇所にワイヤ送給ノズルを穿設した場合には、各ワイヤ送給ノズルの配置を所定の溶接方向に対応させておくことにより、加工ヘッドの進行方向が変更される際における加工ヘッドの向きの転換操作が不要となり、使用するワイヤ送給ノズルを変更するだけで異なる進行方向に向けた溶接に直ちに対応することができ、作業能率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の加工ヘッドの断面図である。
【図3】本発明の別の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明の更に別の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 水
3 配管(ワーク)
4 加工ヘッド
8 YAGレーザ発振器
9 光ファイバ
10 レーザ光
12 光学レンズ系
13 ケーシング
14 レーザスポット
15 ノズル部
16 ワイヤ送給ノズル
19 ワイヤ送給装置
20 溶接用ワイヤ
21 ガス流路
22 シールドガスボンベ(ガス供給源)
24 シールドガス
26 反射鏡
Claims (3)
- YAGレーザ発振器から発振されるレーザ光を光ファイバを介して水中の加工ヘッドに導き、該加工ヘッド内の光学レンズ系を介して集光したレーザ光を前記加工ヘッド先端から水中のワークに向け照射して溶接作業を行う水中レーザ溶接装置であって、前記加工ヘッドのケーシング先端を、レーザスポット付近まで延びる先細り形状のノズル部として形成し、前記加工ヘッドのケーシングに、ワイヤ送給装置から送給される溶接用ワイヤをレーザ光の軸心に対し適切な挿入角度で且つレーザスポットとの芯合わせの微調整が不要となるように案内する為のワイヤ送給ノズルと、ガス供給源から供給されるシールドガスを前記ノズル部内に供給する為のガス流路とを夫々穿設したことを特徴とする水中レーザ溶接装置。
- 加工ヘッドの長手方向に対しノズル部を略直角に屈曲形成し、該ノズル部の屈曲した向きに対応するようレーザ光を反射する反射鏡を前記ノズル部内に配置したことを特徴とする請求項1に記載の水中レーザ溶接装置。
- 加工ヘッドのケーシングにおける周方向複数箇所にワイヤ送給ノズルを穿設したことを特徴とする請求項1又は2に記載の水中レーザ溶接装置。
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JP16118995A Expired - Lifetime JP3621753B2 (ja) | 1995-06-27 | 1995-06-27 | 水中レーザ溶接装置 |
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- 1995-06-27 JP JP16118995A patent/JP3621753B2/ja not_active Expired - Lifetime
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