JP3621613B2 - 基板処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は半導体基板や液晶ガラス基板、レチクルなどの薄板状基板(単に基板という。)の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の基板処理装置には特開平9−5691号公報に開示のものがある。
【0003】
この公報の基板処理装置では薬液槽、多機能槽の2つの処理槽を有している。薬液槽は槽内の薬液をポンプで外部に取出してフィルタで浄化し、浄化した薬液を再び槽内に供給している。
また、多機能槽では槽内に薬液と純水とを交互に供給し、それぞれ槽上部の開口からオーバーフローさせることによって、槽内の薬液を純水で置換し、または槽内の純水を薬液で置換する。これによって基板を大気にさらすことなく、基板に対して薬液処理および、水洗処理を行う。
前記薬液槽では100度より高い温度(高温という。)に維持されるべき薬液を用いる処理が行われる。また、多機能槽では高温に維持する必要の無い薬液を用いる処理が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の基板処理装置では高温の薬液を使用する処理は多機能槽ではなく薬液槽で専属的に行う。これは仮に高温の薬液が多機能槽に貯留されている状態において該多機能槽に常温の純水を供給すると純水が突沸を起こして円滑に置換が行えないからである。
【0005】
このように、上記従来の基板処理装置では使用する薬液の温度によっては、薬液槽と多機能槽との2つが必要となり、結果的に基板処理装置の占有面積が大きくなる。
【0006】
本発明の目的は基板処理装置の占有面積を小さくすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の基板処理装置は基板を処理する処理液を貯留し、貯留した処理液に基板が浸漬される処理槽と、処理槽を収容するチャンバと、チャンバ内を常圧より高い高圧に設定する調圧手段と、処理液として薬液と純水とを混合させた薬液水溶液を100度を越える温度に加熱して前記処理槽に対して供給した後に、100度を越える温度の純水を処理槽に対して供給する処理液供給手段とを備え、前記処理液供給手段から100度を越える温度の薬液水溶液を前記処理槽に対して供給して基板の処理を行い、かつ、前記処理液供給手段から100度を越える温度の純水を前記処理槽に対して供給して基板の処理を行う際に、前記調圧手段は前記チャンバ内の圧力を、純水の沸点が薬液水溶液の温度よりも高くなる圧力に設定することを特徴とする基板処理装置である。
【0008】
本基板処理装置では処理槽に対して100度を越える温度の薬液水溶液を供給した後に、100度を越える温度の純水を処理槽に対して供給するが、調圧手段は、前記チャンバ内の圧力を純水の沸点が薬液水溶液の温度よりも高くなる圧力に設定していることから、薬液水溶液が貯留されている処理槽に対して純水を供給しても純水は沸騰しない。このため、処理槽内で薬液水溶液と純水とを置換するとき円滑に置換を行うことができる。従って、高温の薬液水溶液専用の薬液槽が不要になり、基板処理装置の占有面積を小さくすることができる。
【0009】
請求項2に記載の基板処理装置は請求項1に記載の基板処理装置において、前記100度を越える温度の薬液水溶液と100度を越える温度の純水とは同じ温度である基板処理装置である。
【0010】
このため、処理槽内で薬液水溶液と純水とを置換するとき、薬液水溶液または純水の温度低下が無いので処理品質が低下することを防止できる。
【0011】
請求項3に記載の基板処理装置は請求項2に記載の基板処理装置において、前記薬液は燐酸、硫酸、硝酸の何れかを含む基板処理装置である。
【0012】
燐酸、硫酸、硝酸の何れかを含む薬液は常圧で100度以下になると粘度が高く、置換が困難になるが、100度より高い温度の純水が前記薬液を置換するので薬液の粘度が高くならない。このため、円滑に置換を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の基板処理装置は請求項3に記載の基板処理装置において、前記薬液は水分を含み、該薬液に薬液と同温の純水を混入する純水補充手段をさらに有する基板処理装置である。
【0014】
本基板処理装置では薬液と同温の純水を薬液に混入するため、薬液の温度低下や純水の突沸が生じずに純水を混入できる。よって、基板の処理品質の低下を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
<I、第1実施形態>
【0016】
<1、基板処理装置の全体構成および主要動作>
【0017】
図1は、本発明に係る基板処理装置1の全体を示す斜視図である。なお、図1にはそれらの方向関係を表すため、XYZ直交座標系を付している。
【0018】
基板処理装置1は、複数の基板Wを1つの基板群として一括して処理を行う装置であり、大きく分けてキャリアCに収容された基板Wの搬出入が行われるキャリア載置ユニット2U、基板Wに処理を施す処理ユニット4U、および、キャリア載置ユニット2Uと処理ユニット4Uとの間でX方向に基板Wの搬送を行う水平移動ロボット3を有している。
【0019】
キャリア載置ユニット2Uは、装置外部からキャリアCが搬入されて載置されるキャリア載置部21、Y方向に移動し、Z方向に昇降し、Z軸を中心に回動してキャリアCの移載を行うキャリア移載ロボット22、キャリア移載ロボット22によりキャリアCが載置される突上部23、および、キャリアCを洗浄するキャリア洗浄部24を有している。
【0020】
処理ユニット4Uは、複数の処理部4を有し、各処理部4は後述の処理液を貯留した処理槽を有する。また、各処理部4には水平移動ロボット3と基板を受渡しし、また、昇降することで受け取った基板Wを処理槽内の処理液に浸漬させる浸漬ロボットIRが設けられている。
【0021】
以上が基板処理装置1の構成の概要であるが、次に、基板処理装置1の動作の概要を説明する。
【0022】
基板処理装置1への基板Wの搬入はキャリアCを介して行われる。キャリアCは複数の基板Wを起立姿勢に平行配置して収納可能とされている。キャリアCは搬送車(図示省略)などにより基板処理装置1まで搬送され、キャリア載置部21上において図1中に示すY方向に配置される。キャリアCがキャリア載置部21に載置されると、当該キャリアCはキャリア移載ロボット22により突上部23に載置される。
【0023】
突上部23は、Y方向にスライドする移動台231を有し、移動台231は90度回転可能な回転台232をY軸方向に2つ有する。
【0024】
また移動台231の下方には図示せぬ突上げ機構が設けられている。
【0025】
2つのキャリアCが2つの回転台232に載置されると、移動台231がY軸負方向に移動する。そして、その移動により2つのキャリアCの内の一方が水平移動ロボット3の下方に移動し、回転台232が90度回転することによりキャリアCに収容された所定数の基板Wの主面の法線がX方向からY方向へと向きを変える。
【0026】
次に、突上げ機構が上昇して前記水平移動ロボット3の下方に位置するキャリアC内の基板を突き上げることにより、キャリアC内の基板Wを水平移動ロボット3に渡す。
【0027】
その後、移動台231がさらにY軸負方向に移動し、まだ基板Wが収容されている他方のキャリアCを水平移動ロボット3の下方に位置させる。このとき、該他方のキャリアCを先に基板Wが突上げられたキャリアCの位置とはY軸方向に半ピッチずらした位置に配置する。ここでピッチとはキャリアCに収容されている基板同士の配列間隔である。
【0028】
そして、前記他方のキャリアCを水平移動ロボット3の下方に配置した後、突上げ機構により該キャリアC内の基板Wを突き上げて水平移動ロボット3に基板Wを渡す。このとき、水平移動ロボット3に既に保持されている基板Wの間に基板Wが突き上げられてくるので結果的に水平移動ロボット3には半ピッチでY軸方向に並んだ基板Wが保持されることになる。
【0029】
水平移動ロボット3は水平方向に移動して何れかの処理部4が有する浸漬ロボットIRに基板Wを渡す。
【0030】
基板Wを受け取った浸漬ロボットIRは降下して処理槽内の処理液に基板Wを浸漬する。
【0031】
これにより、処理が開始する。
【0032】
各処理部4では薬液処理、水洗処理、乾燥処理を含む所定の処理を施した後、浸漬ロボットIRを上昇させるとともに、水平移動ロボット3に基板Wを渡す。
【0033】
なお、各処理部4での処理中に突上部23上のキャリアCをキャリア移載ロボット22でキャリア洗浄部24に搬送し、キャリアCを洗浄して乾燥させ、その後、再びキャリア移載ロボット22で前記キャリアCを突上部23に戻しておく。
【0034】
水平移動ロボット3に処理済みの基板Wが渡った後は、上述とは逆の順序で突上部23上のキャリアCに基板が収納され、該キャリアCはキャリア移載ロボット22でキャリア載置部21に載置される。
【0035】
キャリア載置部21に載置されたキャリアCは図示せぬ搬送車などで基板処理装置1外に搬送される。
【0036】
<2、処理部の構成>
【0037】
次に処理部4の構成を説明する。
【0038】
図2は処理部4の構成を示す図である。
【0039】
処理部4はチャンバ40とカバー41とを有し、該チャンバ40とカバー41とで密閉空間を形成する。
【0040】
チャンバ40内には基板Wを収容する処理槽50を有する。
【0041】
処理槽50は平面視矩形状で上部に矩形状の開口を有し、底部が凸状の略直方体形状をなす内槽52と内槽52の上部において内槽52の矩形状の開口を取り囲んでいる外槽54とを有する。
【0042】
これにより、内槽52の矩形状の開口の4つの辺から溢れ出した処理液を外槽54が受けることができる。
【0043】
内槽52の底部には内槽52の長手方向である紙面垂直方向にその長手方向を配した一対の液供給管56が設けられている。液供給管56は、該液供給管56の長手方向に長く延び、かつ、内槽52内に連通したスリット状の吐出口58を有する。
【0044】
液供給管56には液供給部60が接続されている。液供給部60は混合器62を有し、混合器62には純水を供給する純水源64、燐酸原液を供給する燐酸源66、フッ酸原液を供給するフッ酸源68がそれぞれ純水供給弁Vw、燐酸供給弁Vr、フッ酸供給弁Vfを介して接続されている。
【0045】
混合器62では純水に燐酸原液またはフッ酸原液を混入することによって所定濃度の薬液を調製する。
【0046】
なお、ここでは燐酸またはフッ酸などの薬液の原液を薬液原液といい、薬液原液を所定濃度で純水と混合したものを単に薬液といい、薬液と純水とを包括して処理液という。
【0047】
混合器62にはヒータH1が取り付けられており、薬液原液および純水の加熱、混合後の処理液の加熱が可能である。
【0048】
特に本実施形態で使用している燐酸をはじめ、硫酸、硝酸等の原液は25度程度の室温では粘度が極めて高いので純水との混合を良好に行うことができないが、ヒータH1によって加熱すると粘度が低くなり純水との混合を良好に行うことができる。
【0049】
混合器62からは管路61が伸びて途中に液供給弁Va、送液ポンプPs、ヒータH2、フィルタF1を介して液供給管56に接続されている。
【0050】
混合器62からヒータH2に至る管路61には加熱ジャケット63が設けられており、管路61を流れる処理液を加熱し、処理液の温度が低下することを防止している。
【0051】
ヒータH2は処理槽50での処理に必要な所定の温度に処理液を加熱する。
【0052】
さらにヒータH2で加熱された処理液はフィルタF1で濾過されて汚染物質が除去された状態で液供給管56を通じて処理槽50に供給される。ここでは加熱された処理液をフィルタF1に通している。よって、常温では粘度の高い処理液であっても加熱されることにより粘度が低下するので該処理液はフィルタF1を容易に通過することができる。
【0053】
また、内槽52には内槽排液管51が接続され内槽排液弁Vnを介してドレインDrに接続されている。
【0054】
外槽54には高圧排液管53が接続され外槽排液弁Vgを介して圧力分離室55に至っている。圧力分離室55にはドレインDrに至る常圧排液管57が接続されている。
【0055】
圧力分離室55は高圧排液管53から流れてきた高圧の処理液を常圧に戻し、高圧排液管53側を高圧に、常圧排液管57側を常圧に分離している。
【0056】
以上のような構成により、処理槽50では液供給管56から供給される処理液を内槽52に貯留し、内槽52から溢れた処理液は内槽52の開口を越えて外槽54に流れ込む。
【0057】
そして、外槽54に流れ込んだ処理液は圧力分離室55を通してドレインDrに排出される。
【0058】
なお、外槽54には外槽54に流れ込んだ処理液の比抵抗を計測する比抵抗計RMが設けられている。この比抵抗計RMは後述の、水洗処理時に外槽54に流れ込んだ処理液の比抵抗を計測することによって純水へのフッ酸や燐酸等の薬液の混入度を検知し、所定の比抵抗値になることをもって薬液が洗い流されたどうかを検知するためのものである。
【0059】
また、処理部4には蒸気供給部70が設けられている。
【0060】
蒸気供給部70は窒素ガス源71に接続されている管路72を有する。そして、管路72はガス供給弁Vgsを介してチャンバ40内に設けられた蒸気発生器75に接続され、さらに、IPA供給弁Viを介してガス供給管73に接続されている。
【0061】
蒸気発生器75は純水の表面張力を低下させる表面張力低下液を貯留している。ここではIPA(イソプロピルアルコール)などの有機溶剤を貯留している。また、蒸気発生器75の底部にはヒータH3が設けられ、該ヒータH3でIPAの液体に熱を加えて蒸気を発生させる。
【0062】
ここで、蒸気発生器75はチャンバ40内に配されているので、後述のようにチャンバ40内を高圧にしたときIPA供給弁Viを開けると蒸気発生器75内も高圧になる。すると、IPAの沸点は常圧下に比べて上昇する。このため、ヒータH3でIPAを沸騰させてIPAの蒸気を発生させた場合は単位体積あたりのIPAの量は常圧下で発生させたIPAの蒸気よりも多くなる。
【0063】
なお、表面張力低下液は処理槽50内の処理液の表面張力を低下させる液体ならば何でもよい。処理液が純水の場合ならば、IPAやエチルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、メチルエーテル等の多価アルコールなどを使用できる。
【0064】
ガス供給管73は処理槽50の上部において、紙面垂直方向にその長手方向を配した管状部材であって、該ガス供給管73の長手方向において、処理槽方向に向かうガス噴射口74が複数開けられている。
【0065】
このような蒸気供給部70では蒸気発生器75でIPAの蒸気を発生させた状態でガス供給弁Vgs、IPA供給弁Viを開ければ窒素ガス源71から蒸気発生器75へ窒素ガスが送出され、ガス供給管73からIPAの蒸気をチャンバ40内に供給することができる。
【0066】
また、処理部4はチャンバ40内の圧力を調整する調圧部80を有する。
【0067】
調圧部80は調圧弁81、圧力計PM、調圧ポンプPpを有する。
【0068】
調圧部80では圧力計PMの値に従い、図示せぬ制御手段によって調圧弁81および調圧ポンプPpを制御し、チャンバ40内の圧力を所定値に調節する。
【0069】
<3、処理の一実施形態>
【0070】
次に図3を参照して処理の一実施形態を説明する。
【0071】
なお、図3では左方向から右方向に時間が経過していく。図中、上方の表の横方向の第1行では時間の経過とともに行われる工程を、縦方向の第1列では基板処理装置1の動作を示している。そして、表中、斜線が施してある部分は当該時間帯について、基板処理装置1が第1列に示す動作を行っていることを示す。
【0072】
また、図中、下方の折れ線グラフでは時間の経過とともにチャンバ40内の圧力をどのように制御しているかを示している。
【0073】
本実施形態では基板に対して、▲1▼水洗処理→▲2▼フッ酸処理→▲3▼水洗処理(高温高圧)→▲4▼燐酸処理(高温高圧)→▲5▼水洗処理(高温高圧)→▲6▼乾燥処理の各処理を施す。
【0074】
以下、上記▲1▼〜▲6▼の各処理について説明する。
【0075】
▲1▼水洗処理
【0076】
チャンバ40内に搬入される基板を水洗し、汚染物質を除去する処理である。
【0077】
時刻t0において、フッ酸供給弁Vf、燐酸供給弁Vrを閉じた状態で純水供給弁Vw、液供給弁Vaを開けて送液ポンプPsを介して空の状態の内槽52に対して純水を供給し、内槽52から純水を溢れ出させる。これによって、内槽52内において純水の上昇水流を発生させる。
【0078】
このとき内槽排液弁Vnは閉じられ、外槽排液弁Vgは開いている。このため、内槽52から外槽54に溢れ出た純水は外槽排液弁Vg、圧力分離室55を通じてドレインDrに排出される。
【0079】
また、このとき、ヒータH1、H2、加熱ジャケット63はOFF状態であるので内槽52に供給される純水の温度は25度程度の室温である。
【0080】
また、チャンバ40内は常圧(大気圧=約0.1013MPa)であって、調圧弁81は開状態ではあるが、調圧ポンプPpは動作していない。
【0081】
時刻t1になると上記状態において浸漬ロボットIRに基板Wを載置した状態で浸漬ロボットIRを降下させ、図2の実線で示すように基板Wを純水中に浸漬する。
【0082】
浸漬ロボットIRは基板Wを浸漬した状態で静止し、これによって、基板Wに付着した汚染物質は純水の上昇水流によって除去され内槽52から溢れ出る純水とともに排出される。
【0083】
所定時間水洗処理を行った後、次はフッ酸処理に移る。
【0084】
▲2▼フッ酸処理
【0085】
時刻t2にてフッ酸供給弁Vfを開いて、混合器62において所定の割合でフッ酸原液と純水とを混合しフッ酸水溶液を調製する。そして調製したフッ酸水溶液を内槽52に供給することで内槽52内の純水をフッ酸水溶液で追い出し、内槽52内の純水をフッ酸水溶液で置換する。
【0086】
このときもフッ酸水溶液の温度は室温であり、チャンバ40内は常圧である。
【0087】
そして、所定時間フッ酸水溶液を供給した後、フッ酸供給弁Vfを閉じる。
【0088】
▲3▼水洗処理(高温高圧)
【0089】
時刻t3にてフッ酸供給弁Vfを閉じ、管路61に純水のみが通っている状態でヒータH1、H2、加熱ジャケット63をONにし、純水を加熱する。
【0090】
ここでは、次に供給される燐酸水溶液の温度が150度なので純水も150度まで加熱する。なお、純水の温度を純水の後に供給される燐酸水溶液の温度と等しくする理由は後述する。
【0091】
そして、調圧弁81を閉じるとともに、調圧ポンプPpを動作させチャンバ40内を加圧し、所定高圧にする。
【0092】
ここでは、純水が150度になっても沸騰しないよう、チャンバ40内を加圧して純水の沸点を150度よりも高くする。
【0093】
具体的には約0.57MPa以上にされる。そうすると純水の沸点は約157度となる。
【0094】
以上により、チャンバ40内の圧力は上昇するとともに、内槽52に供給される純水の温度は常圧の沸点である100度を越えて上昇可能となる。
【0095】
そして、比抵抗計RMの値が所定値になるまで、150度の純水を供給することによって、水洗処理を行う。
【0096】
ここでは純水の温度が常圧での沸点以上の温度である150度にまで高められているので純水に溶存している酸素の量が常圧時の純水よりも少なくなっている。このため、純水中の溶存酸素によって基板Wに不要な酸化膜が生じることを抑制する効果もある。特に、フッ酸水溶液などによってエッチング処理された後の基板Wの表面は活性状態であるので酸素と結びつきやすく、不要な酸化膜が生じ易いが、純水中の溶存酸素が減じられていることから該不要な酸化膜が生じることを抑制できる。
【0097】
▲4▼燐酸処理(高温高圧)
【0098】
比抵抗計RMの値が所定値より高くなると時刻t4にて燐酸供給弁Vrを開けて混合器62において所定の割合で燐酸原液と純水とを混合し燐酸水溶液を調製する。このとき、ヒータH1が燐酸原液を加熱した状態で純水と混合する。このため、燐酸原液の粘度は低くなるので純水との混合が容易に行われる。
【0099】
調製された燐酸水溶液は最終的に内槽52に至る時点で150度の温度になるようヒータH1、H2、加熱ジャケット63で加熱され、該内槽52内に供給される。
【0100】
そして燐酸水溶液を内槽52に連続的に供給することで内槽52内の純水を燐酸水溶液で追い出し、内槽52内の純水を燐酸水溶液に置換する。
【0101】
ここでは、燐酸水溶液が供給されるのに先行して内槽52内に純水が貯留されている。このときチャンバ40内を加圧し、内槽52内の純水の沸点を、純水の後に供給される燐酸水溶液の温度よりも高くしている。
具体的にはチャンバ40内を0.57MPa以上に加圧し、純水の沸点を157度としている。すなわち、純水の沸点を燐酸水溶液の温度150度よりも高くしている。
このため、純水が貯留されている内槽52に燐酸水溶液を供給して、純水が高温の燐酸水溶液に接触しても、突沸することがなく、突沸によって処理液が飛散することを防止することができる。
【0102】
また、燐酸水溶液を内槽52へ供給する際には内槽52内には燐酸水溶液と同じ温度の純水が貯留されているので供給された燐酸水溶液の温度低下が無い。
【0103】
従って、ひとつの処理槽50内で水洗処理の後、基板を空気にさらさずに100度を越える温度の燐酸水溶液による処理を連続的に行うことができる。
【0104】
また、常圧で燐酸水溶液を150度に熱すると燐酸水溶液からは水分が激しく蒸発し、燐酸水溶液の濃度が所定値に安定しない。
【0105】
しかし、ここでは燐酸水溶液は常圧より高い高圧下に置かれているので燐酸水溶液からの水分の蒸発は抑制され、燐酸水溶液の濃度が所定値に安定する。
【0106】
しかもチャンバ40内を約0.57MPa以上に加圧して純水の沸点を約157度とし、燐酸水溶液の温度、150度よりも高くしている。
【0107】
このため、燐酸水溶液が含む水分の蒸発は、より抑制され、燐酸水溶液の濃度が所定値に安定する。
【0108】
▲5▼水洗処理(高温高圧)
【0109】
所定時間、燐酸水溶液を供給して基板に燐酸水溶液による処理を行った後、時刻t5にて燐酸供給弁Vrを閉じ、管路61に純水のみを通す。
【0110】
また、ヒータH1、H2、加熱ジャケット63はONのままにして、ひき続いて純水を150度に加熱する。
【0111】
そして、比抵抗計RMの値が所定値になるまで高温の純水で基板Wを水洗する。
【0112】
ここでは、高温の純水で燐酸水溶液を洗い流している。
【0113】
燐酸水溶液は常温では粘度が高く基板から洗い流しにくいが、上記のように本実施形態では燐酸水溶液と同じ150度の温度の純水で燐酸水溶液を洗い流しているので燐酸水溶液の温度は下がらず、粘度は高くならない。
【0114】
このため、基板から燐酸水溶液を容易に洗い流すことができる。
【0115】
また燐酸水溶液と同じ150度の純水で内槽52内の燐酸水溶液を置換しているので燐酸水溶液の粘度が高くならず、円滑に置換を行うことができる。
【0116】
また、純水が100度を越える温度(高温という。)であるため、常圧下にて100度で沸騰している純水よりも分子の運動エネルギーが大きい。したがって、該高温の純水は汚染物質の除去能力が常温の純水より高い。よって、基板Wに付着している汚染物質が良好に除去される。
【0117】
なお、常圧下の常温で粘度の高い液体としては前記のような燐酸水溶液の他に硫酸水溶液、硝酸水溶液などが挙げらる。これらは、常圧下の100度以下の温度(常温という。)の純水に比べて粘度が高いので常温の純水で洗い流そうとすると時間が掛かる。しかし、本実施形態のように100度を越える高温の純水を使用する水洗処理ならば効率よく洗い流すことができる。
【0118】
▲6▼乾燥処理
【0119】
比抵抗計RMが所定値を示すと、時刻t6にてヒータH1、H2、加熱ジャケット63をoffにする。
【0120】
これにより、内槽52内に供給される純水は室温程度の温度になり、基板Wも室温程度の温度になる。
【0121】
次に、時刻t7にてIPA供給弁Viを開けて蒸気発生器75を高圧にした状態でIPAを沸騰させ、さらにガス供給弁Vgsを開けることで、IPAの蒸気をチャンバ40内に供給する。
【0122】
そして、所定時間、チャンバ40内にIPAの蒸気を供給することで、内槽52の上部開口付近はIPAの蒸気が充満する。
【0123】
この状態で、時刻t8にて浸漬ロボットIRを所定の速度で上昇させると基板Wはほぼ純水が付かない状態で純水から露出していく。
【0124】
そして、基板Wが完全に純水から露出し終わると、ガス供給弁Vgs,IPA供給弁Viを閉じて、チャンバ40内へのIPA蒸気の供給を停止する。また、純水供給弁Vwも閉じる。
【0125】
ここでは基板Wの温度は室温程度であるのに対してIPAは加熱されて室温より高い温度になっていることから、IPAの蒸気が基板W表面に凝縮し、わずかに基板Wの表面に付着した純水と混ざり合い、純水の表面張力が低下し、純水は流下する。
【0126】
また、蒸気発生器75内は高圧状態なので、蒸気発生器75内で発生したIPA蒸気は常圧の場合よりも単位体積内に含まれるIPAの蒸気量が多くなっている。
このため、単位体積当たりのIPAの蒸気に含まれるIPAの量は常圧の場合よりも多いので、多くのIPAが基板W表面に凝縮する。また、IPAの分子の運動エネルギーも常圧の場合よりも高い。このため、純水と混ざり合うIPAの量は常圧の場合よりも多いので純水の流下は常圧の場合よりも促進され、より、乾燥が完全なものとなる。
【0127】
このようにして、基板Wが浸漬ロボットIRにより純水から露出させられ、図2の2点鎖線の位置に到達した状態になると、時刻t9にて調圧弁81を徐々に開いて、チャンバ40内を常圧に戻す。
【0128】
このとき、チャンバ40内の気圧が下がるので仮に基板WにIPAと純水との混合物が付着していても蒸発し、より乾燥が完全なものとなる。
【0129】
また、調圧弁81を徐々に全開にしていくとともに内槽排液弁Vnを開けて内槽52内にある純水も排出する。
【0130】
このとき、チャンバ40内が高圧なので内槽52の純水にも圧力がかかっている。このため内槽52からの純水の排出が迅速に行われる。
【0131】
チャンバ40内が常圧になると、時刻t10にて調圧弁81、IPA供給弁Vi、液供給弁Va、内槽排液弁Vn、外槽排液弁Vg、を閉じ、調圧ポンプPpを駆動して、今度はチャンバ40内を常圧より低い所定低圧に減圧する。
【0132】
すると、さらにチャンバ40内の気圧が下がるので、仮に基板WにIPAと純水との混合物が付着していても蒸発し、より乾燥が完全なものとなる。
【0133】
所定時間が経過すると時刻t11にて調圧弁81を徐々に開放しチャンバ40内を常圧に戻す。
【0134】
そして、カバー41を開けて浸漬ロボットIRをさらに上昇させて基板Wを水平移動ロボット3に渡し、処理を終了する。
【0135】
また、次の処理に備えて外槽排液弁Vgを開放しておく。
【0136】
なお、フッ酸水溶液や燐酸水溶液の濃度はフッ酸供給弁Vf、燐酸供給弁Vrの開度を調節する。この場合、管路61から内槽52に至る管路、内槽52、外槽54、外槽54からドレインDrに至る管路、の何れかに濃度モニタを設け、その値にしたがって、前記開度の調節を行えばよい。
【0137】
<II、第2実施形態>
【0138】
第2実施形態に係る基板処理装置の処理部4Aを図4に示す。構成上、この処理部4Aが上述の第1実施形態における処理部4と異なる点は、外槽54から伸び、循環弁Vcを介して、液供給弁Vaと送液ポンプPsとの間の管路61に接続する環路79が設けられていることと、純水補充機構90が設けられていることである。
【0139】
なお、第2実施形態に係る処理部4Aも第1実施形態における処理部4と同様、蒸気供給部70を備えているが、図示の便宜上、図4においては該蒸気供給部70は図示していない。
【0140】
環路79は外槽54の処理液を管路61に戻す。
【0141】
これによって、戻された処理液は送液ポンプPs、ヒータH2、フィルタF1、液供給管56を経て再び内槽52に供給される。
【0142】
こうして処理液が循環される。
【0143】
また、純水補充機構90は管路61のフィルタF1と液供給管56との間から純水供給弁Vs1を介して純水を供給される純水貯留部91と、純水貯留部91に貯留されている純水を加熱するヒータH4と、純水補充弁Vs2を介して純水貯留部に接続された純水吐出管92とを有する。
【0144】
純水補充管92は外槽54上方に配された紙面垂直方向に長い管状部材で、外槽54に向かって純水を滴下させる純水滴下口93をその長手方向に複数有する。
【0145】
次に、この処理部4Aでの処理の一例を説明する。
【0146】
この処理部4Aでの処理は第1実施形態で説明した▲1▼水洗処理→▲2▼フッ酸処理→▲3▼水洗処理(高温高圧)→▲4▼燐酸処理(高温高圧)→▲5▼水洗処理(高温高圧)→▲6▼乾燥処理という処理と略同じなので、異なる部分につき説明する。
【0147】
この処理部4Aにつき特に異なる部分は▲4▼燐酸処理(高温高圧)の部分である。
【0148】
本実施形態では処理が開始してから▲4▼燐酸処理(高温高圧)が始まるまで、すなわち、▲3▼水洗処理(高温高圧)で内槽52内に貯留した高温の純水を燐酸水溶液で置換するまで、循環弁Vcを閉じておく。そして、置換が完了したら、外槽排液弁Vgを閉じるとともに循環弁Vcを開け、外槽54の燐酸水溶液を管路61に還流する。また、液供給弁Va、純水供給弁Vwおよび、燐酸供給弁Vrを閉じ、新たに処理液を内槽52に供給することを停止する。
【0149】
なお、高温の純水を燐酸水溶液で置換することが完了したか否かは比抵抗計RMの指示値または後述の濃度モニタで検出する。
【0150】
一方、この燐酸処理が始まるまでに純水供給弁Vs1を開いて純水貯留部91に純水を貯留する。
【0151】
純水貯留部91ではヒータH4により、純水を高温状態に維持する。ここでは燐酸水溶液と同じ温度に維持している。
【0152】
以上により、燐酸水溶液は管路61→処理槽50→環路79→管路61というように循環する。
【0153】
こうすることによって、新たに処理槽50に燐酸水溶液を供給せずにすむので、燐酸水溶液の消費量を抑制することができる。
【0154】
また、このとき、チャンバ40内は燐酸水溶液の温度において純水が沸騰しない圧力にまで加圧されているので燐酸水溶液から蒸発する水分は少ない。
【0155】
しかしながら、まったく蒸発しないわけではなく、わずかに蒸発しているので、燐酸水溶液の濃度が濃くなってしまう。
【0156】
このようなときには液供給弁補充弁Vs2を開け、高温の純水を外槽54に滴下する。
【0157】
ここで、例えば常圧下で高温の燐酸水溶液に純水を補充すると突沸を起して、燐酸水溶液と純水とを良好に混合することができない。また、常圧下では純水は100度より高い高温にならないので、このような100度以下の純水を燐酸水溶液に補充すると燐酸水溶液の温度が低下してしまう。しかし、ここでは、高圧下でしかも、燐酸水溶液と同じ温度の高温の純水を補充しているので、純水が突沸を起したり、高温の燐酸水溶液が温度低下を起したりすることが防止できる。
【0158】
よって、所定の処理品質を容易に得ることができる。
【0159】
なお、純水の補充量と補充時期は、管路61→処理槽50→環路79→管路61という循環路のどこかに濃度モニタを配置して燐酸水溶液の濃度の変化を読取り、読み取った値にしたがって設定すればよい。
【0160】
以上のようにして所定時間、燐酸水溶液を循環使用した後は燐酸供給弁Vrは閉じたまま、純水補充弁Vs2、および循環弁Vcを閉じ、外槽排液弁Vg、液供給弁Va、純水供給弁Vwを開け▲5▼水洗処理(高温高圧)に戻る。
【0161】
上記第1、第2の実施形態では外槽54から排出される処理液を圧力分離室55を介してドレインDrに流しているが、外槽54をなくし、内槽52から溢れる処理液をチャンバ40内に溜めてもよい。
【0162】
この場合は、高圧排液管53の液の流入口をチャンバ40下部に接続する。
【0163】
そして、処理の間中、内槽52から溢れる処理液をチャンバ40下部に溜めておき、全ての処理が終了した後、外槽排液弁Vgを開放して溜めている処理液を排出してもよい。
【0164】
上記の実施形態では100度を越える温度で使用される処理液として燐酸水溶液が使用される場合で説明しているが、燐酸水溶液の代わりに硫酸水溶液、硝酸水溶液を使用する処理においても同様の効果を得ることができる。
【0165】
本実施形態の処理部4、4Aでは内槽52内にヒータを設けていないが、内槽52内にヒータを設けて処理液の温度を調節してもよい。
【0166】
また、本実施形態の2本の液供給管56は略上方に向かって処理液を吐出しているが、それぞれ内槽52の底面の谷状の最深部に向かって処理液を吐出させてもよい。この場合は、底面の最深部で2本の液供給管56から吐出された処理液がぶつかり合いうことで上昇流を形成するので処理液の置換が確実に行われる。
【0167】
請求項1に記載の基板処理装置では処理槽に対して100度を越える温度の薬液水溶液を供給した後に、100度を越える温度の純水を処理槽に対して供給するが、調圧手段は、前記チャンバ内の圧力を純水の沸点が薬液水溶液の温度よりも高くなる圧力に設定していることから、薬液水溶液が貯留されている処理槽に対して純水を供給しても純水は沸騰しない。このため、処理槽内で薬液水溶液と純水とを置換するとき円滑に置換を行うことができる。従って、高温の薬液水溶液専用の薬液槽が不要になり、基板処理装置の占有面積を小さくすることができる。
【0168】
請求項2に記載の基板処理装置では100度を越える温度の薬液水溶液と100度を越える純水とは同じ温度であるため、処理槽内で薬液水溶液と純水とを置換するとき、薬液水溶液または純水の温度低下が無いので処理品質が低下することを防止できる。
【0169】
請求項3に記載の基板処理装置では薬液は燐酸、硫酸、硝酸の何れかを含む。燐酸、硫酸、硝酸の何れかを含む薬液は常圧で100度以下になると粘度が高く、置換が困難になるが、100度より高い温度の純水が前記薬液を置換するので薬液の粘度が高くならない。このため、円滑に置換を行うことができる。
【0170】
請求項4に記載の基板処理装置では薬液と同温の純水を薬液に混入するため、薬液の温度低下や純水の突沸が生じずに純水を混入できる。よって、基板の処理品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態における基板処理装置の処理部を示す図である。
【図3】第1実施形態における処理部での処理の一例を示す図である。
【図4】第2実施形態における基板処理装置の処理部を示す図である。
【符号の説明】
40 チャンバ
50 処理槽
60 液供給部
62 混合器
63 加熱ジャケット
64 純水源
66 燐酸源
68 フッ酸源
70 蒸気供給部
80 調圧部
81 調圧弁
90 純水補充機構
H1,H2 ヒータ
PM 圧力計
Pp 調圧ポンプ

Claims (4)

  1. 基板を処理する処理液を貯留し、貯留した処理液に基板が浸漬される処理槽と、
    処理槽を収容するチャンバと、
    チャンバ内を常圧より高い高圧に設定する調圧手段と、
    処理液として薬液と純水とを混合させた薬液水溶液を100度を越える温度に加熱して前記処理槽に対して供給した後に、100度を越える温度の純水を処理槽に対して供給する処理液供給手段とを備え、
    前記処理液供給手段から100度を越える温度の薬液水溶液を前記処理槽に対して供給して基板の処理を行い、かつ、前記処理液供給手段から100度を越える温度の純水を前記処理槽に対して供給して基板の処理を行う際に、前記調圧手段は前記チャンバ内の圧力を、純水の沸点が薬液水溶液の温度よりも高くなる圧力に設定することを特徴とする基板処理装置。
  2. 請求項1に記載の基板処理装置において、
    前記100度を越える温度の薬液水溶液と100度を越える温度の純水とは同じ温度である基板処理装置。
  3. 請求項2に記載の基板処理装置において、
    前記薬液は燐酸、硫酸、硝酸の何れかを含む基板処理装置。
  4. 請求項3に記載の基板処理装置において、
    前記薬液は水分を含み、該薬液に薬液と同温の純水を混入する純水補充手段をさらに有する基板処理装置。
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