JP3620865B2 - 窒化珪素系複合焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は窒化珪素系複合焼結体の製造方法に関し、特に焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体を製造することのできる方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
窒化珪素を主体とする焼結体は、高強度、高耐熱性、高耐熱衝撃性、高耐摩耗性、耐酸化性等の優れた性質を有するので、各種の構造用セラミックスとしての利用が期待されている。
【0003】
この窒化珪素系の焼結体の強度、靭性等の機械的特性をさらに高めるために、特開平1−275470等に開示されているように、Si3 N4 粒子内にSiCを複合させることが提案された。しかしながら、この方法においてはSiCの複合はCVD法によって行っているため生産性が悪く、さらに得られる粉末は非常に細かく、取扱い性が悪かった。また、Si3 N4 粒子内にSiCのみを複合させる場合、焼結性が悪いという欠点があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体及びそのような窒化珪素系複合焼結体を製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を含有する窒化珪素系複合焼結体は、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れていることを見出した。また、そのような窒化珪素系複合焼結体は、特定のポリシラザンから得られたSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結すれば得られることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
窒化珪素系複合焼結体を製造する本発明の方法は、シクロシラザン及びハロシランを原料としてSi−C結合を有する数平均分子量が400 〜 2000 のポリシラザンを作製し、前記ポリシラザンから得られたSiNC粉末及び/又はSiNCO粉末を焼結することを特徴とする。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔1〕窒化珪素系複合焼結体の構造
本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、全体としてSi3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子及びSiCからなる微細粒子を含有する。各Si3 N4 粒子は通常1個又は2個以上のSiCO微細粒子を含有するが、SiC微細粒子については含有するものと含有しないものがある。Si3 N4 粒子内のSiCO微細粒子及びSiC微細粒子は、焼結の際に成長して粒径が大きくなるとSi3 N4 の粒界に出るという性質を有するので、窒化珪素系複合焼結体はこのようなSiCO粒子及び/又はSiC粒子をSi3 N4 の粒界に有することがある。
【0009】
上記窒化珪素系複合焼結体の組織の一例を図1に模式的に示す。
この焼結体においては、Si3 N4 粒子1の中にSiCOからなる微細粒子2と、SiCからなる微細粒子3とがほぼ均一に分散している。このような構造を有する窒化珪素系複合焼結体においては、Si3 N4 粒子1内に分散したSiCO粒子及びSiC粒子に沿って、いわゆる亜粒界が生成し、その亜粒界に沿ってクラックが伝播しやすくなる。これは、Si3 N4 粒子1内に疑似的な微細組織が形成されているのに等しく、そのため強度が高くなる。また、亜粒界が複雑な形状であれば、クラックの伝播距離は著しく長くなる。このため、破壊靭性が向上すると考えられる。
【0010】
なお、図1の窒化珪素系複合焼結体は、Si3 N4 粒子1内にSiC粒子3及びSiCO粒子2を含有しているが、SiCO粒子2のみを含有していても同様の効果を有する。
【0011】
図2は、本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の他の例を模式的に表した図である。
この焼結体においては、Si3 N4 の粒子1の中のみならず、Si3 N4 の粒界にSiCOからなる微細粒子2と、SiCからなる微細粒子3とが分散しているとともに、SiYO成分粒界相4及びSiNYO成分粒界相5が分散している。SiYO成分粒界相4及びSiNYO成分粒界相5は、焼結の際に使用したイットリウム含有助剤から生成されたものである。
【0012】
このような構造を有する窒化珪素系複合焼結体においても、SiCO粒子2及びSiC粒子3に沿ってクラックが伝播するため、破壊靭性に優れたものとなっている。
【0013】
〔2〕窒化珪素系複合焼結体の製造方法
以上説明した本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、特定のポリシラザンから生成されるSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結することによって得られる。以下、窒化珪素系複合焼結体を製造する方法を説明する。
【0014】
(1) ポリシラザンの製造
本発明の方法において使用するポリシラザンは、Si−C結合を有する。この結合を有するものでないと、Si3 N4 粒子中にSiCO微細粒子やSiC微細粒子を分散させることができない。このポリシラザンの分子量は400〜2000である。分子量が400 未満では架橋が進行していないために、熱処理の際に殆どの成分が揮発して収率が低い。
【0015】
上記ポリシラザンの製造方法の好ましい一例を以下説明する。
ポリシラザンの原料として、シクロシラザンとハロシランとを使用する。シクロシラザンは、一般に(R2 SiNR)n (ここでRはH又はアルキル基であり、nは2〜4の整数である。)で表され、(Me2 SiNH)2 、(MeHSiNH)2 、(H2 SiNH)2 、(Me2 SiNH)3 、(MeHSiNH)3 、(H2 SiNH)3 、(Me2 SiNH)4 、(MeHSiNH)4 、(H2 SiNH)4 等が好ましいが、なかでもヘキサメチルシクロトリシラザン(Me2 SiNH)3 が特に好ましい。
【0016】
また、ハロシランとしては、クロロシラン(Rn SiCl4−n 、ただしn=0〜3の整数であり、RはH又はアルキル基である。)を用いるのが好ましい。中でもトリクロロメチルシランを用いるのが好ましい。また、混合物はトリクロロメチルシランとジクロロジメチルシランが好ましい。
【0017】
以下、シクロシラザンとしてヘキサメチルシクロトリシラザン、ハロシランとしてトリクロロメチルシランを用いた場合を例にとって説明する。
まず、ヘキサメチルシクロトリシラザンとトリクロロメチルシランとを、好ましくは1:1〜1:5のモル比、より好ましくは1:3程度のモル比で混合する。
【0018】
次に、ヘキサメチルシクロトリシラザンとトリクロロメチルシランとの混合物を約 190〜200 ℃で加熱還流する。これによってヘキサメチルシクロトリシラザンが開環し、クロロシラザンオリゴマーが生成される。このとき、加熱還流時間を調節することによって、得られるクロロシラザンオリゴマーの分子量分布を調節することができる。具体的な加熱還流時間は、出発物質の種類及び量等に依存するが、3〜24時間程度である。
【0019】
続いて、クロロシラザンオリゴマーの溶液に30〜90リットル/時間のアンモニアガスを吹き込み、アンモノリシスを行って、シラザンオリゴマーを生成させる。なお、アンモノリシスにより副生した塩化アンモニウムは除去する。
【0020】
得られたシラザンオリゴマーを加熱することによりポリマー化することができるが、この際に減圧・撹拌状態で、二段階に分けて加熱することにより、低分子量成分を除去するのが好ましい。二段階に分けた場合、いずれの段階においても反応容器内の圧力は0.1 〜200 mmHgとするのが好ましく、特に70〜100 mmHgとするのが好ましい。また、撹拌速度(反応物の流動速度で表す)は0.1 〜1000m/分とするのが好ましく、特に100 〜300 m/分とするのが好ましい。
【0021】
圧力が200 mmHgより高いと低分子量成分の除去が不十分であり、0.1 mmHg未満であってもそれに応じた効果が得られない。一方、撹拌速度が0.1 m/分未満であると低分子量成分の除去速度が遅く、また1000m/分より速くするのは困難である。
【0022】
一段階目の加熱温度は100 〜300 ℃、好ましくは200 〜250 ℃とする。熱処理温度が100 ℃未満であると、低分子量成分の除去が不十分であり、また300 ℃を超えると、シラザンオリゴマーの加熱重合反応(縮合反応)が進んでしまい、二段階の加熱による効果が失われてしまう。なお、加熱はソルトバス等に反応容器を入れることにより行うことができる。
【0023】
熱処理時間は所望の軟化点(ポリシラザンの用途に依る)に応じて適宜調節できるが、一般的には0.1 〜20時間とするのが好ましく、より好ましくは0.2 〜10時間である。
【0024】
減圧・撹拌下での一段階目の加熱によって、縮合反応に関与することのない低分子量成分の多くは除去され、シラザンオリゴマーの分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した値をポリスチレン換算)の分布は非常に均一になる。除去される低分子量成分の分子量は、700 以下であり、好ましくは400 以下である。シラザンオリゴマー中に残留する低分子量成分の量は、20重量%以下となるようにする。一段階目の加熱工程でも、シラザンオリゴマーは幾分縮合するが、その数平均分子量は約1000以下である。
【0025】
一段階目の加熱後、同様の条件で減圧下で撹拌しながら、昇温して二段階目の加熱を行う。二段階目の加熱温度は200 〜400 ℃、好ましくは250 〜350 ℃で、かつ一段階目の加熱より高い温度とし、重合時間は1〜10時間とするのが好ましい。二段階目の加熱工程でシラザンオリゴマーは十分に縮合し、数平均分子量が1000以上のポリシラザンとなる。
【0026】
(2) Si NC及び/又は Si NCO系セラミック粉末の製造
得られたポリシラザンを熱処理すると、塊状のSiNC及び/又はSiNCOが得られる。加熱温度は、600 〜1600℃が好ましく、特に1000〜1400℃が好ましい。加熱雰囲気としては、いかなるものでもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス、又は真空(減圧下)が好ましい。また、不活性ガス雰囲気の圧力は特に制限されないが、0〜10kg/cm2 程度が好ましい。得られた塊状のSiNC及び/又はSiNCOは、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。
【0027】
塊状SiNCにおいては、窒素の含有量が10〜40重量%であるのが好ましく、特に20〜30重量%であるのが好ましい。また、炭素の含有量は5〜30重量%であるのが好ましく、特に10〜20重量%であるのが好ましい。なお、塊状SiNC中の金属不純物量は200 ppm 以下であるのが好ましい。
【0028】
一方、塊状SiNCOにおいては、窒素の含有量が10〜40重量%であるのが好ましく、特に20〜30重量%であるのが好ましい。炭素の含有量は5〜30重量%であるのが好ましく、特に10〜20重量%であるのが好ましい。酸素の含有量は0.5 〜20重量%であるのが好ましく、特に1〜10重量%であるのが好ましい。なお、塊状SiNCO中の金属不純物量は200 ppm 以下であるのが好ましい。
【0029】
得られた塊状のSiNC及び/又はSiNCOを粉砕して粉末状にするが、上述した通り、目的とする窒化珪素系複合焼結体中のSi3 N4 粒子は粗大であっても、実質的に微細粒子として働くため、この粉砕工程によって粒径を特定する必要がない。ただし、成形性等を考慮した場合、平均粒径を0.1 〜5μm程度とするのが好ましい。
【0030】
(3) 焼結助剤の添加
SiNC粉末及び/又はSiNCO粉末を成形、焼結する前に、焼結助剤を添加するのが好ましい。焼結助剤としては、Al化合物とIIIa族元素化合物との混合物またはIII a 族元素化合物を用いることができる。ここでIIIa族元素とは、スカンジウム、イットリウム、及びランタン系列の元素をいう。Al及びIIIa族元素は、通常酸化物、有機酸塩等の形態で使用し、主として粉末の状態でSiNC粉末及び/又はSiNCO粉末に添加する。なお、成形体の強度(グリーン強度)を向上する目的で、上述の成分からなるウィスカー状の焼結助剤を用いることもできる。
【0031】
Al化合物としては、Al2 O3 、Al2 TiO5 等が好適である。またIIIa族元素化合物としては、Y2 O3 、シュウ酸イットリウム、Nd2 O3 、Yb2 O3 等が挙げられる。また、上記したようなAl化合物とIIIa族元素化合物とを混合したものを用いてもよい。さらに、3Y2 O3 ・5Al2 O3 のような固溶体を用いてもよい。
【0032】
上記SiNC粉末及び/又はSiNCO粉末と焼結助剤との配合比は、用いる焼結助剤により多少異なるが、Al2 O3 とY2 O3 とを焼結助剤として用いる場合、Al2 O3 が0.5 〜3重量%、Y2 O3 が2.0 〜8重量%、残部実質的にSiNC及び/又はSiNCOとするのがよい。Al2 O3 量が上記範囲を上回ると耐酸化性及び高温での強度が低下し、また範囲を下回ると焼結体の緻密化が進行せず、それにより耐酸化性及び高強度が得られない。また、Y2 O3 量が上記範囲を上回ると高温での耐酸化性が低下し、一方範囲を下回ると、Al2 O3 の場合と同様に、焼結体の緻密化が進行せず、耐酸化性及び高強度が得られない。より好ましいAl2 O3 の配合量は0.5 〜1.0 重量%であり、またY2 O3 の配合量は2.0 〜2.5 重量%である。
【0033】
なお、Al2 O3 粉末の平均粒径は0.4 〜0.5 μm程度、Y2 O3 粉末の平均粒径は0.4 〜2μm程度であるのが好ましい。また、Y2 O3 のみを添加する場合、その添加量は3〜12重量%が好ましく、特に6〜9重量%が好ましい。その粒径は0.4 〜2μm程度が好ましい。
【0034】
以上説明したような焼結助剤の混合は、公知の方法、例えばボールミル、分散機等により行うことができる。なおボールミルによる混合では、混合粉末にエタノール等を加えて行うのがよい。
【0035】
得られた混合粉は、金型プレス、スリップキャスト、または冷間静水圧プレス(CIP)等を用いた公知の方法により所望の形状の成形体とする。なお、成形に際して、必要に応じてポリビニルアルコール溶液等の成形助剤を添加してもよい。
【0036】
(4) 焼結
SiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結する。焼結には常圧焼結、ガス圧焼結、ホットプレス等が適宜用いられるが、高強度の焼結体を得るためには、ホットプレスがより好ましい。ホットプレスの場合、焼結温度は1600〜1900℃が好ましく、特に1700〜1800℃が好ましい。また、焼結圧力は200 〜400 kg/cm2 が好ましい。このとき、焼結時間は6時間以下が好ましい。
【0037】
上記焼結を行うと、Si3 N4 粒子中にSiCO微細粒子やSiC微細粒子が生成するが、SiCO微細粒子やSiC微細粒子のうち大きく成長したものはSi3 N4 の粒界へ出ていき、成長せずに微細なままのものがSi3 N4 粒子内に残留し、図1又は図2に示すような構造を有する窒化珪素系複合焼結体が得られる。
【0038】
【実施例】
以下の具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
冷却塔及びコンデンサを備えた 500mlのナス型フラスコに、ヘキサメチルシクロトリシラザン47.8gとトリクロロメチルシラン107.3 gとを入れ、 190〜200 ℃に保った状態で6時間加熱還流した。室温に冷却した後、副生された塩化アンモニウムを濾過し、クロロシラザンオリゴマー147.2 gを得た。
【0039】
クロロシラザンオリゴマーを攪拌機を備えた2リットルの三口フラスコに入れ、約1リットルのシクロヘキサン133.1 gを加え、氷冷し、攪拌しながらアンモニアガスを約70リットル/時間の割合で3時間吹き込んでアンモノリシスを行った。その後、副生された塩化アンモニウムを濾過し、無色の液体(シラザンオリゴマー)92.4gを得た。
【0040】
上記操作を繰り返し、得られたシラザンオリゴマー100.0 gを反応容器に入れ、100 rpm で撹拌しながら、容器内を100 mmHgに減圧し、この反応容器を250 ℃に加熱したソルトバスに入れて、0.5 時間熱処理を行った。次に、ソルトバスを300 ℃に昇温して、シラザンオリゴマーの加熱重合反応を減圧下で撹拌しながら2時間行い、ポリシラザン64.9gを生成した。
【0041】
上記操作を繰り返し、得られたポリシラザン100.0 gを1200℃、0.5 kg/cm2 の窒素雰囲気中で0.5 時間熱処理したところ、黒色塊状の物質73gが得られた。この物質の元素分析結果を表1に示す。また、X線回折によってこの物質の結晶構造を調べたところ、非晶質であることがわかった。
【0042】
上記黒色物質(Si−N−C−O)をボールミルによって粉砕したもの(平均粒径:0.62μm)92重量%と、Y2 O3 (微粉末、日本イットリウム株式会社製)8重量%とを混合した。この粉末混合物100 gに、エタノール200 gを加え、窒化珪素製ボールを用いて60時間のボールミル混合を行った。
【0043】
得られた混合物をロータリーエバポレータにより乾燥し、この粉末を窒素ガス雰囲気中、1750℃の温度、350 kg/cm2 の圧力下で4時間ホットプレスした。
【0044】
得られた窒化珪素系複合焼結体の密度を測定し、相対密度を算出した。結果を表2に示す。また、JIS R1601に準拠して、室温及び1400℃下における曲げ強度と、破壊靭性値とを測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0045】
比較例1
イミド法で製造された窒化珪素粉末(平均粒径:0.5 μm、宇部興産(株)製、E−10)92重量%と、Y2 O3 (微粉末、日本イットリウム株式会社製)8重量%とを混合した。この粉末混合物100 gに、エタノール200 gを加え、窒化珪素製ボールを用いて60時間のボールミル混合を行った。
【0046】
得られた混合物をロータリーエバポレータにより乾燥し、この粉末を窒素ガス雰囲気中、1750℃の温度、350 kg/cm2 の圧力下で4時間ホットプレスした。
【0047】
得られた窒化珪素系複合焼結体の密度を測定し、相対密度を算出した。結果を表2に示す。また、JIS R1601に準拠して、室温及び1400℃下における曲げ強度と、破壊靭性値とを測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0048】
【0049】
【0050】
表2から明らかなように、本発明の窒化珪素系複合焼結体は理論密度に近く、かつ室温下でも高温下でも曲げ強度に優れている。
【0051】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を含有しており、Si3 N4 粒子が疑似的な微細組織を形成するため、破壊靭性に優れている。また、本発明の方法は、特定のポリシラザンから得られたSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結し、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を分散させるため、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体を得ることができる。
【0052】
本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、上述の通り高い機械的特性を有しているので、自動車部品を始めとする各種機械部品、構造用材、高温強度が必要な部材等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・Si3 N4 粒子
2・・・SiCO微細粒子
3・・・SiC微細粒子
4・・・SiYO成分粒界相
5・・・SiNYO成分粒界相
本発明は窒化珪素系複合焼結体の製造方法に関し、特に焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体を製造することのできる方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
窒化珪素を主体とする焼結体は、高強度、高耐熱性、高耐熱衝撃性、高耐摩耗性、耐酸化性等の優れた性質を有するので、各種の構造用セラミックスとしての利用が期待されている。
【0003】
この窒化珪素系の焼結体の強度、靭性等の機械的特性をさらに高めるために、特開平1−275470等に開示されているように、Si3 N4 粒子内にSiCを複合させることが提案された。しかしながら、この方法においてはSiCの複合はCVD法によって行っているため生産性が悪く、さらに得られる粉末は非常に細かく、取扱い性が悪かった。また、Si3 N4 粒子内にSiCのみを複合させる場合、焼結性が悪いという欠点があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体及びそのような窒化珪素系複合焼結体を製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を含有する窒化珪素系複合焼結体は、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れていることを見出した。また、そのような窒化珪素系複合焼結体は、特定のポリシラザンから得られたSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結すれば得られることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
窒化珪素系複合焼結体を製造する本発明の方法は、シクロシラザン及びハロシランを原料としてSi−C結合を有する数平均分子量が400 〜 2000 のポリシラザンを作製し、前記ポリシラザンから得られたSiNC粉末及び/又はSiNCO粉末を焼結することを特徴とする。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔1〕窒化珪素系複合焼結体の構造
本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、全体としてSi3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子及びSiCからなる微細粒子を含有する。各Si3 N4 粒子は通常1個又は2個以上のSiCO微細粒子を含有するが、SiC微細粒子については含有するものと含有しないものがある。Si3 N4 粒子内のSiCO微細粒子及びSiC微細粒子は、焼結の際に成長して粒径が大きくなるとSi3 N4 の粒界に出るという性質を有するので、窒化珪素系複合焼結体はこのようなSiCO粒子及び/又はSiC粒子をSi3 N4 の粒界に有することがある。
【0009】
上記窒化珪素系複合焼結体の組織の一例を図1に模式的に示す。
この焼結体においては、Si3 N4 粒子1の中にSiCOからなる微細粒子2と、SiCからなる微細粒子3とがほぼ均一に分散している。このような構造を有する窒化珪素系複合焼結体においては、Si3 N4 粒子1内に分散したSiCO粒子及びSiC粒子に沿って、いわゆる亜粒界が生成し、その亜粒界に沿ってクラックが伝播しやすくなる。これは、Si3 N4 粒子1内に疑似的な微細組織が形成されているのに等しく、そのため強度が高くなる。また、亜粒界が複雑な形状であれば、クラックの伝播距離は著しく長くなる。このため、破壊靭性が向上すると考えられる。
【0010】
なお、図1の窒化珪素系複合焼結体は、Si3 N4 粒子1内にSiC粒子3及びSiCO粒子2を含有しているが、SiCO粒子2のみを含有していても同様の効果を有する。
【0011】
図2は、本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の他の例を模式的に表した図である。
この焼結体においては、Si3 N4 の粒子1の中のみならず、Si3 N4 の粒界にSiCOからなる微細粒子2と、SiCからなる微細粒子3とが分散しているとともに、SiYO成分粒界相4及びSiNYO成分粒界相5が分散している。SiYO成分粒界相4及びSiNYO成分粒界相5は、焼結の際に使用したイットリウム含有助剤から生成されたものである。
【0012】
このような構造を有する窒化珪素系複合焼結体においても、SiCO粒子2及びSiC粒子3に沿ってクラックが伝播するため、破壊靭性に優れたものとなっている。
【0013】
〔2〕窒化珪素系複合焼結体の製造方法
以上説明した本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、特定のポリシラザンから生成されるSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結することによって得られる。以下、窒化珪素系複合焼結体を製造する方法を説明する。
【0014】
(1) ポリシラザンの製造
本発明の方法において使用するポリシラザンは、Si−C結合を有する。この結合を有するものでないと、Si3 N4 粒子中にSiCO微細粒子やSiC微細粒子を分散させることができない。このポリシラザンの分子量は400〜2000である。分子量が400 未満では架橋が進行していないために、熱処理の際に殆どの成分が揮発して収率が低い。
【0015】
上記ポリシラザンの製造方法の好ましい一例を以下説明する。
ポリシラザンの原料として、シクロシラザンとハロシランとを使用する。シクロシラザンは、一般に(R2 SiNR)n (ここでRはH又はアルキル基であり、nは2〜4の整数である。)で表され、(Me2 SiNH)2 、(MeHSiNH)2 、(H2 SiNH)2 、(Me2 SiNH)3 、(MeHSiNH)3 、(H2 SiNH)3 、(Me2 SiNH)4 、(MeHSiNH)4 、(H2 SiNH)4 等が好ましいが、なかでもヘキサメチルシクロトリシラザン(Me2 SiNH)3 が特に好ましい。
【0016】
また、ハロシランとしては、クロロシラン(Rn SiCl4−n 、ただしn=0〜3の整数であり、RはH又はアルキル基である。)を用いるのが好ましい。中でもトリクロロメチルシランを用いるのが好ましい。また、混合物はトリクロロメチルシランとジクロロジメチルシランが好ましい。
【0017】
以下、シクロシラザンとしてヘキサメチルシクロトリシラザン、ハロシランとしてトリクロロメチルシランを用いた場合を例にとって説明する。
まず、ヘキサメチルシクロトリシラザンとトリクロロメチルシランとを、好ましくは1:1〜1:5のモル比、より好ましくは1:3程度のモル比で混合する。
【0018】
次に、ヘキサメチルシクロトリシラザンとトリクロロメチルシランとの混合物を約 190〜200 ℃で加熱還流する。これによってヘキサメチルシクロトリシラザンが開環し、クロロシラザンオリゴマーが生成される。このとき、加熱還流時間を調節することによって、得られるクロロシラザンオリゴマーの分子量分布を調節することができる。具体的な加熱還流時間は、出発物質の種類及び量等に依存するが、3〜24時間程度である。
【0019】
続いて、クロロシラザンオリゴマーの溶液に30〜90リットル/時間のアンモニアガスを吹き込み、アンモノリシスを行って、シラザンオリゴマーを生成させる。なお、アンモノリシスにより副生した塩化アンモニウムは除去する。
【0020】
得られたシラザンオリゴマーを加熱することによりポリマー化することができるが、この際に減圧・撹拌状態で、二段階に分けて加熱することにより、低分子量成分を除去するのが好ましい。二段階に分けた場合、いずれの段階においても反応容器内の圧力は0.1 〜200 mmHgとするのが好ましく、特に70〜100 mmHgとするのが好ましい。また、撹拌速度(反応物の流動速度で表す)は0.1 〜1000m/分とするのが好ましく、特に100 〜300 m/分とするのが好ましい。
【0021】
圧力が200 mmHgより高いと低分子量成分の除去が不十分であり、0.1 mmHg未満であってもそれに応じた効果が得られない。一方、撹拌速度が0.1 m/分未満であると低分子量成分の除去速度が遅く、また1000m/分より速くするのは困難である。
【0022】
一段階目の加熱温度は100 〜300 ℃、好ましくは200 〜250 ℃とする。熱処理温度が100 ℃未満であると、低分子量成分の除去が不十分であり、また300 ℃を超えると、シラザンオリゴマーの加熱重合反応(縮合反応)が進んでしまい、二段階の加熱による効果が失われてしまう。なお、加熱はソルトバス等に反応容器を入れることにより行うことができる。
【0023】
熱処理時間は所望の軟化点(ポリシラザンの用途に依る)に応じて適宜調節できるが、一般的には0.1 〜20時間とするのが好ましく、より好ましくは0.2 〜10時間である。
【0024】
減圧・撹拌下での一段階目の加熱によって、縮合反応に関与することのない低分子量成分の多くは除去され、シラザンオリゴマーの分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した値をポリスチレン換算)の分布は非常に均一になる。除去される低分子量成分の分子量は、700 以下であり、好ましくは400 以下である。シラザンオリゴマー中に残留する低分子量成分の量は、20重量%以下となるようにする。一段階目の加熱工程でも、シラザンオリゴマーは幾分縮合するが、その数平均分子量は約1000以下である。
【0025】
一段階目の加熱後、同様の条件で減圧下で撹拌しながら、昇温して二段階目の加熱を行う。二段階目の加熱温度は200 〜400 ℃、好ましくは250 〜350 ℃で、かつ一段階目の加熱より高い温度とし、重合時間は1〜10時間とするのが好ましい。二段階目の加熱工程でシラザンオリゴマーは十分に縮合し、数平均分子量が1000以上のポリシラザンとなる。
【0026】
(2) Si NC及び/又は Si NCO系セラミック粉末の製造
得られたポリシラザンを熱処理すると、塊状のSiNC及び/又はSiNCOが得られる。加熱温度は、600 〜1600℃が好ましく、特に1000〜1400℃が好ましい。加熱雰囲気としては、いかなるものでもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス、又は真空(減圧下)が好ましい。また、不活性ガス雰囲気の圧力は特に制限されないが、0〜10kg/cm2 程度が好ましい。得られた塊状のSiNC及び/又はSiNCOは、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。
【0027】
塊状SiNCにおいては、窒素の含有量が10〜40重量%であるのが好ましく、特に20〜30重量%であるのが好ましい。また、炭素の含有量は5〜30重量%であるのが好ましく、特に10〜20重量%であるのが好ましい。なお、塊状SiNC中の金属不純物量は200 ppm 以下であるのが好ましい。
【0028】
一方、塊状SiNCOにおいては、窒素の含有量が10〜40重量%であるのが好ましく、特に20〜30重量%であるのが好ましい。炭素の含有量は5〜30重量%であるのが好ましく、特に10〜20重量%であるのが好ましい。酸素の含有量は0.5 〜20重量%であるのが好ましく、特に1〜10重量%であるのが好ましい。なお、塊状SiNCO中の金属不純物量は200 ppm 以下であるのが好ましい。
【0029】
得られた塊状のSiNC及び/又はSiNCOを粉砕して粉末状にするが、上述した通り、目的とする窒化珪素系複合焼結体中のSi3 N4 粒子は粗大であっても、実質的に微細粒子として働くため、この粉砕工程によって粒径を特定する必要がない。ただし、成形性等を考慮した場合、平均粒径を0.1 〜5μm程度とするのが好ましい。
【0030】
(3) 焼結助剤の添加
SiNC粉末及び/又はSiNCO粉末を成形、焼結する前に、焼結助剤を添加するのが好ましい。焼結助剤としては、Al化合物とIIIa族元素化合物との混合物またはIII a 族元素化合物を用いることができる。ここでIIIa族元素とは、スカンジウム、イットリウム、及びランタン系列の元素をいう。Al及びIIIa族元素は、通常酸化物、有機酸塩等の形態で使用し、主として粉末の状態でSiNC粉末及び/又はSiNCO粉末に添加する。なお、成形体の強度(グリーン強度)を向上する目的で、上述の成分からなるウィスカー状の焼結助剤を用いることもできる。
【0031】
Al化合物としては、Al2 O3 、Al2 TiO5 等が好適である。またIIIa族元素化合物としては、Y2 O3 、シュウ酸イットリウム、Nd2 O3 、Yb2 O3 等が挙げられる。また、上記したようなAl化合物とIIIa族元素化合物とを混合したものを用いてもよい。さらに、3Y2 O3 ・5Al2 O3 のような固溶体を用いてもよい。
【0032】
上記SiNC粉末及び/又はSiNCO粉末と焼結助剤との配合比は、用いる焼結助剤により多少異なるが、Al2 O3 とY2 O3 とを焼結助剤として用いる場合、Al2 O3 が0.5 〜3重量%、Y2 O3 が2.0 〜8重量%、残部実質的にSiNC及び/又はSiNCOとするのがよい。Al2 O3 量が上記範囲を上回ると耐酸化性及び高温での強度が低下し、また範囲を下回ると焼結体の緻密化が進行せず、それにより耐酸化性及び高強度が得られない。また、Y2 O3 量が上記範囲を上回ると高温での耐酸化性が低下し、一方範囲を下回ると、Al2 O3 の場合と同様に、焼結体の緻密化が進行せず、耐酸化性及び高強度が得られない。より好ましいAl2 O3 の配合量は0.5 〜1.0 重量%であり、またY2 O3 の配合量は2.0 〜2.5 重量%である。
【0033】
なお、Al2 O3 粉末の平均粒径は0.4 〜0.5 μm程度、Y2 O3 粉末の平均粒径は0.4 〜2μm程度であるのが好ましい。また、Y2 O3 のみを添加する場合、その添加量は3〜12重量%が好ましく、特に6〜9重量%が好ましい。その粒径は0.4 〜2μm程度が好ましい。
【0034】
以上説明したような焼結助剤の混合は、公知の方法、例えばボールミル、分散機等により行うことができる。なおボールミルによる混合では、混合粉末にエタノール等を加えて行うのがよい。
【0035】
得られた混合粉は、金型プレス、スリップキャスト、または冷間静水圧プレス(CIP)等を用いた公知の方法により所望の形状の成形体とする。なお、成形に際して、必要に応じてポリビニルアルコール溶液等の成形助剤を添加してもよい。
【0036】
(4) 焼結
SiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結する。焼結には常圧焼結、ガス圧焼結、ホットプレス等が適宜用いられるが、高強度の焼結体を得るためには、ホットプレスがより好ましい。ホットプレスの場合、焼結温度は1600〜1900℃が好ましく、特に1700〜1800℃が好ましい。また、焼結圧力は200 〜400 kg/cm2 が好ましい。このとき、焼結時間は6時間以下が好ましい。
【0037】
上記焼結を行うと、Si3 N4 粒子中にSiCO微細粒子やSiC微細粒子が生成するが、SiCO微細粒子やSiC微細粒子のうち大きく成長したものはSi3 N4 の粒界へ出ていき、成長せずに微細なままのものがSi3 N4 粒子内に残留し、図1又は図2に示すような構造を有する窒化珪素系複合焼結体が得られる。
【0038】
【実施例】
以下の具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
冷却塔及びコンデンサを備えた 500mlのナス型フラスコに、ヘキサメチルシクロトリシラザン47.8gとトリクロロメチルシラン107.3 gとを入れ、 190〜200 ℃に保った状態で6時間加熱還流した。室温に冷却した後、副生された塩化アンモニウムを濾過し、クロロシラザンオリゴマー147.2 gを得た。
【0039】
クロロシラザンオリゴマーを攪拌機を備えた2リットルの三口フラスコに入れ、約1リットルのシクロヘキサン133.1 gを加え、氷冷し、攪拌しながらアンモニアガスを約70リットル/時間の割合で3時間吹き込んでアンモノリシスを行った。その後、副生された塩化アンモニウムを濾過し、無色の液体(シラザンオリゴマー)92.4gを得た。
【0040】
上記操作を繰り返し、得られたシラザンオリゴマー100.0 gを反応容器に入れ、100 rpm で撹拌しながら、容器内を100 mmHgに減圧し、この反応容器を250 ℃に加熱したソルトバスに入れて、0.5 時間熱処理を行った。次に、ソルトバスを300 ℃に昇温して、シラザンオリゴマーの加熱重合反応を減圧下で撹拌しながら2時間行い、ポリシラザン64.9gを生成した。
【0041】
上記操作を繰り返し、得られたポリシラザン100.0 gを1200℃、0.5 kg/cm2 の窒素雰囲気中で0.5 時間熱処理したところ、黒色塊状の物質73gが得られた。この物質の元素分析結果を表1に示す。また、X線回折によってこの物質の結晶構造を調べたところ、非晶質であることがわかった。
【0042】
上記黒色物質(Si−N−C−O)をボールミルによって粉砕したもの(平均粒径:0.62μm)92重量%と、Y2 O3 (微粉末、日本イットリウム株式会社製)8重量%とを混合した。この粉末混合物100 gに、エタノール200 gを加え、窒化珪素製ボールを用いて60時間のボールミル混合を行った。
【0043】
得られた混合物をロータリーエバポレータにより乾燥し、この粉末を窒素ガス雰囲気中、1750℃の温度、350 kg/cm2 の圧力下で4時間ホットプレスした。
【0044】
得られた窒化珪素系複合焼結体の密度を測定し、相対密度を算出した。結果を表2に示す。また、JIS R1601に準拠して、室温及び1400℃下における曲げ強度と、破壊靭性値とを測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0045】
比較例1
イミド法で製造された窒化珪素粉末(平均粒径:0.5 μm、宇部興産(株)製、E−10)92重量%と、Y2 O3 (微粉末、日本イットリウム株式会社製)8重量%とを混合した。この粉末混合物100 gに、エタノール200 gを加え、窒化珪素製ボールを用いて60時間のボールミル混合を行った。
【0046】
得られた混合物をロータリーエバポレータにより乾燥し、この粉末を窒素ガス雰囲気中、1750℃の温度、350 kg/cm2 の圧力下で4時間ホットプレスした。
【0047】
得られた窒化珪素系複合焼結体の密度を測定し、相対密度を算出した。結果を表2に示す。また、JIS R1601に準拠して、室温及び1400℃下における曲げ強度と、破壊靭性値とを測定した。その結果を表2に合わせて示す。
【0048】
【0049】
【0050】
表2から明らかなように、本発明の窒化珪素系複合焼結体は理論密度に近く、かつ室温下でも高温下でも曲げ強度に優れている。
【0051】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を含有しており、Si3 N4 粒子が疑似的な微細組織を形成するため、破壊靭性に優れている。また、本発明の方法は、特定のポリシラザンから得られたSiNC及び/又はSiNCO粉末を焼結し、Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子を分散させるため、焼結性に優れるとともに、強度、靭性等の機械的特性に優れた窒化珪素系複合焼結体を得ることができる。
【0052】
本発明の製造方法により得られる窒化珪素系複合焼結体は、上述の通り高い機械的特性を有しているので、自動車部品を始めとする各種機械部品、構造用材、高温強度が必要な部材等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の窒化珪素系複合焼結体における組織の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・・Si3 N4 粒子
2・・・SiCO微細粒子
3・・・SiC微細粒子
4・・・SiYO成分粒界相
5・・・SiNYO成分粒界相
Claims (4)
- Si3 N4 粒子内にSiCOからなる微細粒子及びSiCからなる微細粒子を含有する窒化珪素系複合焼結体の製造方法であって、シクロシラザン及びハロシランを原料とし、 Si −C結合を有する数平均分子量が 400 〜 2000 のポリシラザンを作製し、前記ポリシラザンから得られた Si NC粉末及び/又は Si NCO粉末を焼結することを特徴とする方法。
- 請求項1に記載の窒化珪素系複合焼結体の製造方法において、前記シクロシラザンと前記ハロシランとのモル比を1:1〜1:5とすることを特徴とする方法。
- 請求項1又は2に記載の窒化珪素系複合焼結体の製造方法において、前記 Si NC粉末及び/又は前記 Si NCO粉末の炭素の含有量を 10 〜 20 重量%とすることを特徴とする方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の窒化珪素系複合焼結体を製造する方法において、前記ポリシラザンが、(a) 前記シクロシラザンと前記ハロシランの生成物にアンモノリシスを行ってシラザンオリゴマーを生成し、(b) 前記シラザンオリゴマーを減圧下で撹拌しながら、100 〜300 ℃の温度に保持し、次いで(c) 減圧下で撹拌しながら、前記工程(b) の温度より高い温度で、かつ400 ℃以下の温度で加熱保持し、前記シラザンオリゴマー中の低分子量成分を除去するとともに前記シラザンオリゴマーの加熱重合を行って得られたことを特徴とする方法。
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