JP3620648B2 - 有機elパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極により挟持され所定の発光をなす有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を備えた有機ELパネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機ELパネルの構造を図4及び図5を用いて説明する。有機ELパネル1は、透光性基板であるガラス基板2上にITO(indium tin oxide)等によって透明電極(陽極)3を形成し、透明電極3上に正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層を順次積層形成してなる有機層4を形成し、この有機層4上にアルミ(Al)等の背面電極(陰極)5を形成し有機EL素子6を得て、有機EL素子6を覆うようにガラス材料からなる凹部形状の封止部材である封止キャップ7をガラス基板2上に紫外線硬化型の接着剤8を介し気密的に配設することで構成されるもので、有機ELパネル1は、透明電極3と背面電極5との間に、直流電圧を印加することによって前記発光層が所定の発光をなすものである。また、有機ELパネル1は、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、または透明電極3と背面電極5との絶縁を確保するために、ポリイミド系等の絶縁層9が透明電極3の周縁部に若干重なるようにガラス基板2上に形成されている。
【0003】
また有機ELパネル1は、透明電極3及び背面電極5から延長形成された電極部群10が、長方形形状からなるガラス基板2の一辺に集中配設されるとともに、このガラス基板2における電極部群10の形成領域11が封止キャップ7から露出するように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような構造の有機ELパネル1は、ガラス基板2と封止キャップ7とを接着剤8を介して気密的に封止しないと、外気の侵入により表示部である有機EL素子6におけるダークスポットが発生し、有機ELパネル1における耐久性を低下させてしまうことから、ガラス基板2と封止キャップ7とを気密的に接合するための有機ELパネル1の製造方法が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、有機EL素子を配設する透光性基板と封止部材とを気密的に接合することが可能となる有機ELパネルの製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明は、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に列状に複数形成する有機EL素子形成工程と、前記各有機EL素子を収納する複数の収納部を備えるとともに、前記支持基板と封止用接着剤を介し接合する接合部が各収納部を取り巻くように設けられた封止基板を用意し、前記各収納部の周縁に対応する前記各接合部毎に、少なくとも一つの間隙部を形成するように前記封止用接着剤を配設する、もしくは前記各接合部に当接する前記支持基板の各当接部において、各当接部毎に少なくとも一つの間隙部を形成するように前記封止用接着剤を配設するとともに、前記各収納部間を連ならせるための前記接合部である広域部、もしくは前記広域部に対応する前記当接部において、前記封止用接着剤の配設パターンを略X字状とする接着剤配設工程と、前記封止用接着剤を前記接合部もしくは前記当接部に配設した後、所定圧力を付与した状態にて前記支持基板と前記封止基板とを重ね合わせることで、前記支持基板と前記封止基板との間に介在する気体を前記各間隙部から外部に排出させながら前記支持基板と前記封止基板とを接合する接着工程と、を含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法である。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、前記各接合部もしくは前記各当接部にそれぞれ形成される各間隙部は、前記収納部に対する形成位置が統一された状態で形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の有機ELパネルの製造方法である。
【0008】
また、請求項3に記載の本発明は、前記封止用接着剤は、ディスペンスもしくは印刷によって配設されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の有機ELパネルの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき説明するが、従来例と同一もしくは相当箇所には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0012】
図1を用いて有機ELパネルの構造について説明する。有機ELパネル1は、ガラス基板2,透明電極3,絶縁層9,有機層4,背面電極5及び封止キャップ7とから構成されている。
【0013】
ガラス基板2は、長方形形状からなる透光性の平板部材である。
【0014】
透明電極3は、ガラス基板2上にITO等の導電性材料によって構成され、日の字型の表示セグメント部12と、個々のセグメントからそれぞれ引き出し形成されたリード部13と、リード部13の終端部に設けられる電極部14とを備えている。電極部14群は、ガラス基板2の一辺に集中的に配設される。
【0015】
絶縁層8は、ポリイミド系等の絶縁材料からなり、表示セグメント部12に対応した窓部15と、背面電極5の後述する電極部に対応する切り欠き部16とを有し、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、透明電極3の表示セグメント部12の周縁部と若干重なるように窓部15が形成され、また、透明電極3と背面電極5との絶縁を確保するためにリード部13上を覆うように配設される。
【0016】
有機層4は、少なくとも発光層を有するものであれば良いが、本発明の実施の形態においては正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層を順次積層形成してなるものである。有機層4は、絶縁層8における窓部15の形成箇所に対応するように所定の大きさをもって配設される。
【0017】
背面電極5は、アルミ等の非透光性の導電性材料から構成され、有機層4上に配設される。背面電極5は、透明電極3における各電極部14が形成されるガラス基板2の一辺に設けられるリード部17と電気的に接続される。尚、リード部17の終端部には、電極部18が設けられ、リード部17及び電極部18は透明電極3と同材料により形成される。
【0018】
封止キャップ7は、透明電極3,絶縁層8,有機層4及び背面電極5からなる有機EL素子19を収納するための凹部形状の収納部19を有し、透明電極3の電極部14及び背面電極5の電極部18が露出するようにガラス基板2よりも若干小さ目に構成されるとともに、ガラス基板と接着剤8を介して接合するため収納部19の全周を取り巻くように形成される接合部20が設けられている。
【0019】
以上の各部によって有機ELパネル1が構成される。
【0020】
次に、図2及び図3を用いて有機ELパネル1の製造方法を説明する。
【0021】
先ず、透明電極3,絶縁層8,有機層4及び背面電極5からなる有機EL素子7と、透明電極3及び背面電極5に対応するリード部13,17及び電極部14,18とを、蒸着もしくはスパッタリング法等の手段によりガラス基板2となる支持基板21上に列状に複数形成する「有機EL素子形成工程,図2(a)」。
【0022】
そして、各有機EL素子7に対応し、各有機EL素子7を収納する収納部19となる各凹部22と、各凹部22の周縁を取り巻くとともに、支持基板21と接合するための接合部23とを備えた封止キャップ7となる封止基板24を用意する「図2(b)」。尚、封止基板24は、成形,エッチング法,サンドブラスト法及び切削の何れかの手段により得られる。
【0023】
次に、封止基板24の各凹部22の周縁を取り巻く接合部23に後述する方法によって接着剤8を配設する「接着剤配設工程(図2(b)」。
【0024】
ここで図3を用いて、接着剤8の配設方法について詳述する。図3は封止基板24を示す平面図であり、凹部22が縦,横方向に列状に形成されている。各凹部22の周縁には、ガラス基板2となる支持基板21と接着剤8を介して接合するための各接合部23が形成されており、各凹部22間における接合部23は、後述する切断工程により個々の有機ELパネル1とするための切断位置として広域部26を形成している。
【0025】
接着剤8は、図3に示す配設パターン27に沿って封止基板24の接合部23及び広域部26に配設されるものである。接着剤8は、各凹部22を取り巻く各接合部23の略全周に渡って配設されることになるが、各凹部22毎の各接合部23の所定箇所には、接着剤8が配設されない、例えば2mm程度の間隔を有する間隙部25が形成される。また、配設パターン27に形成される各間隙部25は、長方形形状をなす各凹部22の予め定められた一辺に、形成箇所が統一された状態(位置及び方向が統一された状態)にて形成される。
【0026】
また、接着剤8の配設パターン27は、平坦状に形成される各凹部22間の広域部26において略X字状としている。即ち、支持基板21と封止基板24との接着工程において、所定の圧力が付与される状態となるが、接着剤8は広域部26における接着剤8の交差領域から外方に向かって広がることになり、両部材の良好な接合が得られることから、収納部19内への外気の侵入を阻止することができる。
【0027】
尚、接着剤8の配設においては、ディスペンス方式もしくは印刷方式が用いられる。他機種に対応させる製造ラインの場合ではディスペンス方式が望ましく、また大量生産に対応させる製造ラインでは印刷方式が望ましいものとなる。ディスペンス方式を用いて接着剤8を配設する場合、配設パターン27の広域部26において略X字状とすることで、各凹部22を取り巻く各接合部23を一筆書きの要領で接着剤8を配設することが可能となることから生産性に優れるものとなる。
【0028】
次に、窒素雰囲気中において、接着剤8が配設された封止基板24と支持基板21とが平行状態を保ちながら、かつ各凹部22が各有機EL素子19に対応するように重ね合わされるとともに「図2(c)」、例えば封止基板24側から所定の圧力が付与されることで、配設された接着剤8が接合部23及び広域部26の接着領域に広がり、そして紫外線が照射されることで、封止基板24と支持基板21とが接着固定され、有機ELパネル1を複数有するマルチ基板28が得られる「接着工程,図2(d)」。
【0029】
前述した接着工程において、支持基板21と封止基板24とが所定圧力が付与された状態で接着されるが、接着剤8の配設工程において形成された各間隙部25から支持基板21と封止基板24との間に介在する気体(窒素)、即ち収納部19内の気体を外部に排出させながら支持基板21と封止基板24とを接合させることが可能となることから、収納部19の周縁の両基板21,24の接合領域において、収納部19内の内圧の影響により生ずる接着不良を防止することができる。尚、図3に示すような封止基板24において、二段目に位置する収納部19群の前記気体は、各間隙部25から横方向に直線上に設けられる溝部29を介して外部に排出されることになる。
【0030】
また収納部19の内圧を外部に排出させる各間隙部25は、接着工程によって所定圧力が付与された状態で支持基板21と封止基板24とが接着されるため、各間隙部25が形成される周辺の接着剤8が押しつぶされて各間隙部25を塞ぐことになることから、有機EL素子6が収納される収納部19内の気密性を損なうことはない。
【0031】
次に、接着工程後に得られたマルチ基板28において、広域部26の略中央と、封止基板24の縦方向を繋ぐ箇所に形成されている溝部29の形成位置をスクライブ法やダイシング等の手段によって切断することで個々の有機EL素子1が得られる「切断工程,図2(e)」。
【0032】
かかる有機EL素子1の製造方法は、各有機EL素子6にそれぞれ対応し、各有機EL素子6を収納する収納部19となる複数の凹部22を備え、各凹部22を取り巻くとともに支持基板21に接着剤8を介し接合するため接合部23を備えた封止基板24を用意し、前記各凹部22の周縁に対応する各接合部23毎に少なくとも一つの間隙部を形成するように接着剤8を配設する接着剤配設工程を設け、接着剤8を接合部23に配設した後、所定圧力を付与した状態にて支持基板21と封止基板24とを重ね合わせることで、支持基板21と封止基板24との間に介在する気体を各間隙部25から外部に排出させながら支持基板21と封止基板24とを接合することで有機ELパネル1を複数有するマルチ基板28を得ることから、支持基板21と封止基板24とを所定圧力を付与した状態で重ね合わせる際に発生する凹部22(収納部19)内の内圧の変化により生じる各凹部22の形成領域周辺の接着不良を防止することができるため、ガラス基板2と封止キャップ7とを気密的に接合することが可能となる。これは、各凹部22内の気体を積極的に各間隙部25から逃がすことによって、支持基板21と封止基板24との重ね合わせ時に発生する前記気体が、接着剤8が配設された各凹部22の周縁の各接合部23から排出されることを防止できるため、各接合部23における接着剤8のシール切れ(接着不良)の発生を無くすことができる。
【0033】
また、各間隙部25は、封止基板24において、各凹部22に対して形成箇所が統一された状態にて形成されることから、接着剤8をディスペンサーを備えた配設装置を用いて配設する場合において、配設パターン27に沿わせて前記ディスペンサを移動させるための動作プログラムを配設パターン27の所定領域分作成し、この動作プラグラムを全ての配設パターン27領域において繰り返す使用することが可能となるため、前記配設装置の動作プログラム設計を容易にすることが可能となる。
【0034】
また、各凹部22間の接合部23である広域部26において、接着剤8の配設パターン27を略X字状とすることで、接着剤8をディスペンサにより配設する場合、各凹部22を取り巻く各接合部23に、一筆書きの要領で接着剤8を配設することが可能となることから生産性を向上させることが可能となる。また、広域部26において略X字状の配設パターン27とし、所定圧力が付与された状態で支持基板21と封止基板24とを重ね合わせることで広域部26全体に接着剤8が行き渡り、両部材の密着性を良好な状態とする。よって、収納部19への外気に侵入を防ぐことができることから、有機EL素子6のダークスポットの発生を抑制できるため耐久性に優れる有機ELパネル1を得ることが可能となる。
【0035】
また、接着剤8は、ディスペンスもしくは印刷によって広域部26及び接合部23に配設されてなるものであり、量産性に優れた接着剤配設工程を得ることが可能となる。
【0036】
尚、本発明の実施の形態では、接着剤8を封止基板24の接合部23に配設するようにしたが、本発明にあっては、各凹部22を取り巻く各接合部23に当接する支持基板21の当接部の少なくとも一カ所に間隙部を形成するようにしても良い。
【0037】
また、本発明の実施の形態では、マルチ基板1から個々の有機ELパネル1を得る有機ELパネルの製造方法について説明したが、本発明にあっては、一個単位で有機ELパネルを得る製造方法にも有効である。この場合の製造方法にあっては、有機EL素子6をガラス基板(透光性基板)2上に形成する有機EL素子形成工程と、ガラス基板2と接着剤8を介し接合する接合部20を設けた封止キャップ7を用意し、有機EL素子6を取り巻く接合部20に少なくとも一つの間隙部25を形成するように接着剤8を配設するか、もしくは接合部20に当接するガラス基板2の当接部に少なくとも一つの間隙部を形成するように接着剤8を配設する接着剤配設工程と、接着剤8を接合部20もしくは前記当接部に配設した後、所定圧力を付与した状態にてガラス基板2と封止キャップ7とを重ね合わせることで、ガラス基板2と封止キャップ7との間に介在する気体を、封止キャップ7の接合部20に形成される間隙部25、もしくはガラス基板2の接合部20に当接する前記当接部に形成される前記間隙部から外部に排出させながらガラス基板2と封止キャップ7とを接合する接着工程とによって有機ELパネルを得るもので、前述した実施の形態と同様にガラス基板2と封止キャップ7との接合において接着不良を生じさせないため、両部材を気密性良く接合させることが可能となる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極により挟持され所定の発光をなす有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を備えた有機ELパネルの製造方法に関し、前記有機EL素子を配設する透光性基板と前記有機EL素子を包囲する前記封止部材とを気密的に接合することが可能となる有機ELパネルの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における有機ELパネルを示す斜視図。
【図2】同上実施の形態の有機ELパネルの製造方法を示す図。
【図3】同上実施の形態の有機ELパネルの接着剤の配設方法を説明する図。
【図4】従来の有機ELパネルを示す要部部分断面図。
【図5】従来の有機ELパネルを示す平面図。
【符号の説明】
1 有機ELパネル
2 ガラス基板(透光性基板)
3 透明電極
4 有機層
5 背面電極
6 有機EL素子
7 封止キャップ(封止部材)
8 接着剤
19 収納部
20,23 接合部
21 支持基板
24 封止基板
25 間隙部
26 広域部
27 配設パターン
28 マルチ基板
Claims (3)
- 少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により狭持してなる有機EL素子を透光性の支持基板上に列状に複数形成する有機EL素子形成工程と、
前記各有機EL素子を収納する複数の収納部を備えるとともに、前記支持基板と封止用接着剤を介し接合する接合部が各収納部を取り巻くように設けられた封止基板を用意し、前記各収納部の周縁に対応する前記各接合部毎に、少なくとも一つの間隙部を形成するように前記封止用接着剤を配設する、もしくは前記各接合部に当接する前記支持基板の各当接部において、各当接部毎に少なくとも一つの間隙部を形成するように前記封止用接着剤を配設するとともに、前記各収納部間を連ならせるための前記接合部である広域部、もしくは前記広域部に対応する前記当接部において、前記封止用接着剤の配設パターンを略X字状とする接着剤配設工程と、
前記封止用接着剤を前記接合部もしくは前記当接部に配設した後、所定圧力を付与した状態にて前記支持基板と前記封止基板とを重ね合わせることで、前記支持基板と前記封止基板との間に介在する気体を前記各間隙部から外部に排出させながら前記支持基板と前記封止基板とを接合する接着工程と、
を含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。 - 前記各接合部もしくは前記各当接部にそれぞれ形成される各間隙部は、前記収納部に対する形成位置が統一された状態で形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネルの製造方法。
- 前記封止用接着剤は、ディスペンスもしくは印刷によって配設されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の有機ELパネルの製造方法。
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