JP3618166B2 - 高純度水素酸素発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高純度水素酸素発生装置に関する。さらに詳しくは、水電解セルを収容したタンクを有する高純度水素酸素発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
図6に示すように、高圧型の高純度水素酸素発生装置(以下、単にHHOGという)51は、純水電解セル(以下、単に電解セルという)52が収容された水素酸素発生タンク(以下、単に純水タンクという)53と、この純水タンク53に純水Wを供給するための純水供給タンク54と、水素ガスH2 から水分を除去するための水素ガス用気液分離タンク55とを主要構成機器としている。図中56は純水供給ポンプである。純水タンク53内の電解セル52では、その周囲の純水が電気分解され、水素ガスH2 と酸素ガスO2 とが発生している。発生した酸素ガスO2 は直接純水タンク53内の純水内を通過し、酸素ガス取り出し管57を通して収集される。一方、発生した水素ガスH2 は純水タンク53内の純水を通さず、電解セル52から水素ガス取り出し管58を通して水素ガス用気液分離タンク55に導かれ、そこで水分を除去して収集される。
【0003】
通常、前記純水タンク53内の純水は電気分解時の発熱によって温度が上昇するが、これは電解セル52を構成する部品等の熱劣化防止の観点から好ましいものではない。さらに、純水温度が上昇すると、純水タンク53内の水蒸気量が増加し、発生した酸素ガス中の水分量も増加するので、除湿負荷が大きくなる。また、装置の作業員にとっても、タンク53の温度が高いことは作業上好ましくはない。
【0004】
そこで、従来は図6に示すように高圧型HHOGの純水タンク53は、その中に純水の温度上昇を抑制するための熱交換器59を設置して純水を冷却するように構成されている。したがって、この熱交換器59には純水タンク53の外部から冷媒を循環させる必要があるため、冷媒流通用のパイプ60a、60bが純水タンク53の容器壁を貫通するかたちで冷媒供給源(図示せず)から熱交換器59まで配管されている。そして、熱交換器59の入口までの配管60aには冷媒供給用のポンプ61が介装されている。
【0005】
ところが前記純水タンク53は、電解セル52を収容し且つ必要な量の純水を注入しておくだけの容積を有しているのが一般的である。水素・酸素を得るため以上に大型にするのは経済効率が低下するからである。したがって、熱交換器59はどうしても小型にせざるを得ない。さらに、熱交換器59を電解セル52の上方に設置すれば電解セル52から発生する酸素ガスの気泡が熱交換器59の表面に付着して熱交換効率が低下するので、どうしても電解セル52の側方、すなわち電解セル52と純水タンク53の内壁との間隙に設置せざるを得ない。
【0006】
そのため、そのサイズがさらに制限されることから、従来では専らチューブ型熱交換器、とくにコイル状にされたチューブ型の熱交換器が用いられている。しかしながら、蛇管式の熱交換器は他の形式の熱交換器に比べるとそのサイズが大きい割りには伝熱面積が小さいので熱交換効率が低いという問題がある。
【0007】
なお、純水タンクの外周面に冷媒ジャケットを形成した二重容器式の純水タンクも考えられるが、タンク内圧が10kg/cm2 近くになるため、二重高圧タンクとして製造する場合の製造コストが大幅に上昇する。さらに、高圧タンク故にタンク肉厚を厚くしなければならないため、熱交換効率が低いものとなる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、熱交換器を純水タンクの外部に設置するとともに配管によって純水タンクと連結することによって特別にポンプを必要とせず、いわば発熱源を内包した純水タンクといわば冷熱源を内包した熱交換器とからなるループ内を、純水が自然対流によって循環しつつ冷却されるシステムを構築した。さらに、熱交換器を純水タンクの外部に設置したため、純水タンクを軽量且つコンパクトに形成することが可能となり、さらに、熱交換器の形式を使用条件や設置条件に応じて選択することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の高純度水素酸素発生装置は、
純水を貯留するためのタンクと、該純水タンク内に収容された水電解セルと、前記タンクの外部に配設された、タンク内の純水を冷却するための熱交換器とを備えており、
該熱交換器の入口がタンク内の純水の水面より下方の第一部位に接続され、該熱交換器の出口がタンクにおける前記第一部位より下方の第二部位に接続されている。
【0010】
したがって、熱交換器とタンクとこれら両者の接続手段(配管等)とから構成されるループ内を純水が自然対流に起因して自然循環することとなる。すなわち、タンク内の純水は昇温されて上方へ移動し、熱交換器内の純水は冷却されて下方に移動するため、タンク内の純水はタンクの第一部位から熱交換器へ流入し、熱交換器内の純水はタンクの第二部位からタンク内へ流入する。
【0011】
このように、かかる純水循環のためにはポンプはとくに必要とされない。また、循環液体がきわめて低粘度の純水であるため、良好に自然循環することとなる。もちろん、純水を強制循環させるのであれば、ポンプを装備してもよい。
【0012】
また、熱交換器はタンクの外部に設置されるため、純水タンクを従来のものより一層軽量かつコンパクトに形成することができる。したがって、製造コストの低減が可能となるばかりではなく、輸送や据え付けにおける取扱が容易となる。さらに、従来技術のように、熱交換器のサイズ、形状および形式等に対するタンク容積による制限はない。したがって、HHOGの使用条件、設置する工場の設備、設置面積等に応じて、種々の形式の熱交換器を選択することができる。熱交換器の形式は限定されず、たとえば、プレート型熱交換器または種々の管形状を有するシェル・アンド・チューブ形が主に用いられる。
【0013】
また、
前記熱交換器がタンクに着脱自在に取り付けられてなる冷却機構にあっては、予め熱交換器をタンクに配管して一体装着しておくこともできる。したがって、熱交換器とタンクとを一体にして輸送することができるため、コスト低減に資することとなる。また、この冷却機構を設置する場合にも、一体の状態で据えつけることができ、しかも、設置現場においてタンクと熱交換器との配管を行う必要がないため、コスト低減に資することとなる。さらに、通常はメーカーの工場で組み立てられるため、従来は設置現場で行われていた漏洩検査、耐圧検査または気密検査等の各種検査がメーカーの工場で効率よく行われうるので好ましい。
【0014】
【実施例】
つぎに、添付図面に示された実施例を参照しつつ本発明の高純度水素酸素発生装置(HHOG)を説明する。
【0015】
図1は本発明のHHOGの一実施例を示す断面図、図2は本発明のHHOGの他の実施例を示す一部断面正面図、図3〜5はそれぞれ本発明のHHOGのさらに他の実施例を示す断面図である。
【0016】
図1において、1が純水タンク(以下、単にタンクという)であり、その中の支持台3上に電解セル2が据えつけられている。電解セル2からは発生水素ガスH2 を取り出すための水素ガス取り出し管4がタンク1の壁を貫通して水素ガス用気液分離タンク(図示しない)まで延設されている。5は酸素ガスO2 を取り出すための酸素ガス取り出し管である。6は純水供給管である。
【0017】
7は公知のプレート型の熱交換器である。8は冷媒供給ポンプであり、冷媒供給源(図示しない)から熱交換器7に冷媒を供給する。冷媒としては冷水やフロンガス等が用いられる。
【0018】
熱交換器7における被冷却流体たる純水の入口7aは配管9aによってタンク1の純水流出口(特許請求の範囲でいう第一部位)10に接続されている。熱交換器7における純水の出口7bは配管9bによってタンク1の純水流入口(特許請求の範囲でいう第二部位)11に接続されている。なお、配管9a、9bはフランジ(図示しない)を介して分離可能に接続されている。
【0019】
前記純水流出口10はタンク1における純水流入口11より上方に形成されており、HHOGの運転中はタンク1内の純水の水面は純水流出口10より上方となるようにされている。後述のごとく、自然循環によって純水を冷却するためにそうする必要があるからである。
【0020】
叙上の構成により、熱源たる電解セル2によって加熱されたタンク内の純水はタンク内を上昇し、一方、熱交換器内で冷却された純水は熱交換器内を下降する。かかる自然対流によって、タンク1、熱交換器7および配管9a、9bから構成されるループ内を純水が自然循環することになる。
【0021】
熱源たる電解セル2の位置に対する、冷却された純水流入口11の上下相対位置関係は、タンク内の純水の温度上昇を効率良く抑制するために、上下方向にほぼ同一位置とするか、図1〜5に示すように電解セル2より下方に純水流入口11を形成するのが好ましい。冷却された純水を直接的に電解セル2に供給しうるからである。
【0022】
なお、万一の場合に備えて、気泡となって上昇する発生酸素ガスが純水流出口10に流入して熱交換器7に至らないように、図示のごとく、純水流出口10のタンク内側部分を下側および横周囲を覆うような酸素ガス流入防止用のカバー12を純水流出口10の下側から取り付けておいてもよい。このカバー12の形状は、ほぼ半球形の容器を縦方向に二分割したものである。かかる形状のカバー12により、純水はカバー12の内側を純水流出口10に向かって下方に流れ、酸素ガス気泡は浮力によって上方に移動するため、純水の流れに酸素ガス気泡が同伴することがない。したがって、熱交換器7には酸素ガス気泡が流入することもない。本カバー12の形状にはとくに限定はなく、下方から上昇してくる酸素ガス気泡が純水流出口10近傍を通過することを妨げうる形状であればよい。
【0023】
つぎに、図2に示す冷却機構は、その純水冷却原理が図1の冷却機構と同じであるが、前記熱交換器7をタンク1に直接取り付けて一体化したものである。
【0024】
本実施例では、熱交換器7をタンク1の架台13にボルト(図示しない)によって着脱自在に取り付けている。もちろん、配管9a、9bもフランジ(図示しない)を介して分離可能に接続されている。
【0025】
このような構成としたので架台13にタンク1の架台を用いることができ、熱交換器7用の架台を別途設置する必要がない。また、配管9a、9bの長さを短くすることができる。これによって装置をコンパクトにすることができる。
【0026】
なお、タンクと熱交換器の一体化については、本発明ではとくに架台によることに限定されることはなく、たとえば熱交換器7が軽量であれば、前記配管9a、9bのみによっても支持することが可能である。
【0027】
タンク1は高圧で用いられており、タンク1から純水の漏れを防ぐために、タンク1の配管口は少ない方がよい。かかる観点から、図3に示す冷却機構は、熱交換器7からタンク1へ純水を流入させる配管9bと純水供給管6とが接続されてタンク1へ流入する純水が合流するようにされたものである。また、熱交換器7からこの接続点14までのあいだに逆止弁15が介装されているので、図1において2つあった配管口を1つにすることができた。かかる構成により、配管口の数を減らすことができるのでタンク1のシール性および安全性が向上する。さらに、純水供給管6を通して図示しない供給ポンプによって純水を供給する際に熱交換器7からの冷水をも強制的にタンク1へ流入させることができる。また、逆止弁15の介装によって冷水が熱交換器7へ逆流することを防止している。
【0028】
図4に示す冷却機構では、図3のものと同様に、熱交換器7からタンク1へ純水を流入させる配管9bと純水供給管6とが接続されている。ただし、前記配管9bにおける熱交換器7からこの接続点14までのあいだの部分にポンプ16が介装されている点で図3の冷却機構と異なっている。かかる構成により、配管が簡略化されることはもとより、熱交換器7によって冷却された純水を強制的にタンク1内に注入することができる。その結果、タンク1内の純水が攪拌され、タンク1内での冷却効果が向上する。
【0029】
図5に示す冷却機構も、図4のものと同様に、熱交換器7からタンク1へ純水を流入させる配管9bと純水供給管6とが接続されており、前記配管9bの接続点14までの部分ににポンプ16が介装されている。ただし、前記配管9bはタンク1に単に接続されているだけではなく、さらにタンク1内に延びて直接電解セル2に接続されている。すなわち、電解セル2中の純水供給マニホールド(図示しない)に冷却された純水を直接供給しうるように構成されている。
【0030】
かかる構成により、配管が簡略化されることはもとより、熱源たる電解セル2を直接冷却することが可能となる。その結果、図示しない固体電解質膜やガスケット等、電解セル2の部品の熱劣化を効率的に防止することができる。
【0031】
なお、前記配管9bを直接電解セル2に接続する構成は図5に示す冷却機構だけに限定されず、他にも図1、図2、図3および図4に示す冷却機構等にも適用可能である。
【0032】
つぎに、叙上のごとく構成された冷却機構と従来の冷却機構とについて、その冷却効率を比較することによって、本発明のHHOGの冷却機構をその機能面から説明する。
【0033】
一般に、前記実施例で採用されているプレート型熱交換器の伝熱係数αaは1000〜3000kcal/m2 /hr(平均を2000kcal/m2 /hrとする)であり、従来技術で採用されているコイルチューブ型熱交換器の伝熱係数αbは200〜1000kcal/m2 /hr(平均を500kcal/m2 /hrとする)である。
【0034】
一方、従来技術や実施例における一般的な電解セルの発熱量Qは、電流値600A、電圧50Vから、25800kcalとなる。
【0035】
そして、冷却条件として、被冷却体たる純水の冷却温度、つまり温度降下ΔTを80℃から50℃までの30℃とし、冷媒の熱交換器内温度上昇Δtを32℃から37℃までの5℃とする。
【0036】
そうすると、本実施例(プレート型熱交換器採用)の熱交換器の必要伝熱面積Aaは、
Aa=Q/αa=25800kcal÷2000kcal/m2 /hr=12.9m2 となる。
【0037】
一方、従来技術(コイルチューブ型熱交換器採用)の熱交換器の必要伝熱面積Abは、
Ab=Q/αb=25800kcal÷500kcal/m2 /hr=51.6m2 となる。
【0038】
このように、従来技術に比べると約1/4という少ない伝熱面積の熱交換器、換言すれば小型(薄型)の熱交換器を採用することができる。このような小型、薄型の熱交換器としうるので、タンク1との一体化も容易となる。このように、自在に熱交換器の形式やサイズを選択しうるのは、従来のようにタンク内壁と電解セルとのあいだという、形状が限定された空間に設置する必要がないからである。また、言い換えれば、熱交換器をプレート型にするとともに、サイズを従来と同程度にすれば冷却効率を大幅に向上することが可能となる。
【0039】
もし、前記熱交換器の伝熱面積を従来技術と本実施例とを同一にすれば、従来技術における冷媒流量および被冷却体たる純水の流量を本実施例のそれの約4倍にする必要があり、非現実的である。
【0040】
叙上のごとく本冷却機構では、軽量且つコンパクトで冷却効率の向上が可能となる。
【0041】
本実施例では、タンクを縦置き(タンクの中心軸をほぼ鉛直方向にした設置)にしたものを例示したが、本発明ではとくに縦置きに限定されることはなく、横置き(タンクの中心軸をほぼ水平方向にした設置)にしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、純水を自然対流によって循環しつつ冷却しうるため、特別な装置を必要とすることなくシンプルな構成となる。もちろん、強制循環のための装置(ポンプ等)を装備することも可能である。しかも、熱交換器をタンクの外部に設置したため、タンクを軽量且つコンパクトに形成して製造コスト、輸送コストおよび設置工事コストを低減することができる。また、熱交換器の形式を、使用条件や設置条件に応じて自在に選択することができ、冷却効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のHHOGの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明のHHOGの他の実施例を示す一部断面正面図である。
【図3】本発明のHHOGのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明のHHOGのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図5】本発明のHHOGのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図6】従来の冷却機構を備えたHHOGの一例を示す説明図である。
Claims (5)
- 純水を貯留するためのタンクと、
該純水タンク内に収容された水電解セルと、
前記タンクの外部に配設された、タンク内の純水を冷却するための熱交換器とを備えており、
該熱交換器の入口がタンク内の純水の水面より下方の第一部位に接続され、該熱交換器の出口がタンクにおける前記第一部位より下方の第二部位に接続されてなる高純度水素酸素発生装置。 - 熱交換器の前記出口からタンクの前記第二部位に配管が接続されており、該配管がタンク内に延びて電解セルに接続されており、熱交換器によって冷却された純水が直接電解セルに供給されるように構成されてなる請求項1記載の高純度水素酸素発生装置。
- 前記熱交換器がタンクに直接着脱自在に取り付けられ、タンクと一体化されてなる請求項1または2記載の高純度水素酸素発生装置。
- 前記タンクに純水を供給するための純水供給管が前記第二部位に接続されており、該純水供給管に前記熱交換器の出口が接続されており、純水供給管と熱交換器の出口とを接続する配管に熱交換器への純水逆流防止用の逆止弁が配設されてなる請求項1〜3のうちのいずれか一の項に記載の高純度水素酸素発生装置。
- 前記タンクの第一部位に純水が熱交換器に向けて流れ出る純水流出口が形成されており、該純水流出口のタンク内側部分の下側及び横周囲を覆う酸素ガス流入防止用のカバーが取り付けられてなる請求項1〜4のうちのいずれか一の項に記載の高純度水素酸素発生装置。
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