JP3617285B2 - 音声信号または楽音信号の処理装置および音声信号または楽音信号の処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音声信号または第1の楽音信号のピッチに基づいてピッチが制御される第2の楽音信号を生成する音声信号または楽音信号処理装置、および、音声信号または楽音信号の処理機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、使用者の音声のピッチを検出してキーデータを形成して順次記憶し、記憶されたキーデータを順次読み出して演奏する楽音信号処理装置が、特公平4−51838号公報等で知られている。使用者は鍵盤を弾くことなく単に歌うだけでよい。しかし、検出された入力音声信号のピッチは、音楽の音名に対応するピッチに丸めて楽音を出力する。そのため、ピッチに段差が発生し、鍵盤楽器のようにピッチを区切って楽音を演奏するのに適している。しかし、人が歌を歌うときは、音声のピッチを連続的に変化させる場合もある。この場合は、連続的に変化する音声のピッチに応じてピッチが連続して変化する楽音を発生させる必要がある。取り込んたキーデータを編集して修正すれば、ピッチが区切られた楽音に対し、部分的に楽音のピッチに連続的な変化をつけることも不可能ではない。しかし、処理としては面倒である。
【0003】
一方、入力音のピッチを演奏情報化する際に、ノート情報とピッチベンド情報を発生させる方法が、特開平4−242290号公報等に記載されている。しかし、ピッチベンドレンジを超えてピッチが連続的に変化する際の処理について何も検討されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、連続的に変化する音声信号または楽音信号のピッチに追従してピッチが連続して変化する楽音を再発音によって発生させるもので、その際の再発音が目立たないようにする音声信号または楽音信号の処理装置、および、音声信号または楽音信号の処理機能を実現させるためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明においては、音声信号または楽音信号の処理装置において、音声信号または第1の楽音信号である信号のピッチを検出するピッチ検出手段、第2の楽音信号を生成する楽音信号生成手段、音名同定手段、および、ピッチベンド処理手段を有し、前記音名同定手段は、前記ピッチ検出手段が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記信号のピッチを音名に同定するとともに、前記信号のピッチが連続的に変化しかつ同定された音名のピッチとの差がピッチベンドレンジを超えたときに、前記信号のピッチを音名に新たに同定し直すとともに再発音制御信号を出力するものであり、前記ピッチベンド処理手段は、前記信号のピッチと前記音名同定手段により同定された音名のピッチとの差に応じて、前記楽音信号生成手段が生成する第2の楽音信号のピッチを、前記音名同定手段により同定された音名のピッチを中心音高として、前記信号のピッチに追従させるものであり、前記楽音信号生成手段は、前記ピッチ検出手段が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記音名同定手段により同定された音名で、かつ、該ピッチベンド処理手段により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して発音させるとともに、前記音名同定手段から再発音制御信号を入力したとき、前記第2の楽音信号を消音させるとともに、前記音名同定手段により新たに同定し直された音名で、かつ、前記ピッチベンド処理手段により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して再発音させ、かつ、再発音の前後で前記第2の楽音信号の振幅エンベロープの大きさを略一致させるものである。
したがって、連続的に変化する音声信号または楽音信号のピッチに追従してピッチが連続して変化する楽音を再発音によって発生させることができ、かつ、再発音を目立たないようにすることができる。
【0006】
請求項2に記載の発明においては、音声信号または楽音信号の処理機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体において、該音声信号または楽音信号の処理機能は、音声信号または第1の楽音信号である信号のピッチを検出するピッチ検出機能、第2の楽音信号を生成する楽音信号生成機能、音名同定機能、および、ピッチベンド処理機能を有し、前記音名同定機能は、前記ピッチ検出機能が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記信号のピッチを音名に同定するとともに、前記信号のピッチが連続的に変化しかつ同定された音名のピッチとの差がピッチベンドレンジを超えたときに、前記信号のピッチを音名に新たに同定し直すとともに再発音制御信号を出力するものであり、前記ピッチベンド処理機能は、前記信号のピッチと前記音名同定機能により同定された音名のピッチとの差に応じて、前記楽音信号生成機能が生成する第2の楽音信号のピッチを、前記音名同定機能により同定された音名のピッチを中心音高として、前記信号のピッチに追従させるものであり、前記楽音信号生成機能は、前記ピッチ検出機能が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記音名同定機能により同定された音名で、かつ、該ピッチベンド処理機能により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して発音させるとともに、前記音名同定機能から再発音制御信号を入力したとき、前記第2の楽音信号を消音させるとともに、前記音名同定機能により新たに同定し直された音名で、かつ、前記ピッチベンド処理機能により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して再発音させ、かつ、再発音の前後で前記第2の楽音信号の振幅エンベロープの大きさを略一致させるものである。
したがって、請求項1に記載の発明と同様な作用をコンピュータ読み取り可能なプログラムをコンピュータに実行させることによって実現することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の音声信号または楽音信号の処理装置の実施の一形態の機能ブロック図である。図中、1はマイクロフォン、2は効果付与部、3a,3bはピッチ変換部、4はピッチ検出部、5は鍵盤、6はピッチ制御部、7a,7bは効果付与部、8は音源、9は効果付与部、10は信号出力制御部、11は操作パネル、12は機能制御部、13はパン制御部、14はアンプ、15,16はスピーカである。
【0008】
最初に全体の構成を説明する。音声入力部であるマイクロフォン1の出力は、効果付与部2、ピッチ変換部3a、3b、および、音声入力のピッチ(以下、「ボーカルピッチ」という)を検出するピッチ検出部4に入力される。ピッチ検出部4および鍵盤5の出力は、ピッチ制御部6に入力される。ピッチ制御部6の第1の出力はピッチ変換部3a,3bに入力される。ピッチ変換部3a,3bの出力およびピッチ制御部6の第2の出力は、効果付与部7a,7bに入力される。ピッチ制御部6の第3の出力は、音源8に入力され楽音のピッチを制御し、音源8の出力は効果付与部9に入力される。
【0009】
効果付与部2の出力はリード音信号となり、効果付与部7a,7bの出力は第1,第2のハーモニー音信号となり、効果付与部9の出力は楽音信号となる。これらの各信号は、信号出力制御部10に入力される。操作パネル11の出力は機能制御部12を介して、ピッチ制御部6、音源8,効果付与部2,7a,7b,9、信号出力制御部10、パン制御部13の各機能を制御する。信号出力制御部10は、リード音やハーモニー音、楽音の各々のチャンネルの出力バランスの制御を行う。例えば、混合割合を代えたり、特定の1または複数のチャンネルだけを出力したりする。また、パン制御部13によって、複数のチャンネル、例えば第1,第2のハーモニー音の定位を決定する。信号出力制御部10の出力信号は、ステレオ用のアンプ14を介しスピーカ15,16に出力される。
【0010】
上述した構成により、マイクロフォン1から入力された音声信号であるリード音、入力音声のピッチに基づいて生成された第1,第2のハーモニー音、および、楽音は、所望に応じて少なくとも1つが選択されミキシングされて放音されることになる。なお、音声のピッチ検出は、ゼロクロス法等、音声分析の分野で周知の技術を用いることができる。付与する効果としては、ジェンダー(男性声,女性声といった声質のタイプおよび深さ)、ビブラート(深さと周期の変化率、ビブラート開始までの遅延時間)、トレモロ、音量、パン(定位)、デチューン(後述するデチューンハーモニーモード以外のモードにおけるハーモニー音のデチューン)、リバーブ(残響)などがある。
【0011】
図1においては、機能的にわかりやすくするために、効果付与部2,7a,7b,9において効果の付与を行うものとしているが、ビブラート、デチューンなどのピッチの変化に関するものは、ピッチ変換部3a,3bにおけるピッチ変換と同時に行うことができる。また、音量およびパンについては信号出力制御部10において行うことになる。ジェンダーの効果制御は、フォルマントシフトによって行う。
【0012】
図4は、ピッチ・トゥ・ノートの説明図である。図4(a)は、第1の処理モード、図4(b)は第2の処理モードの説明図である。なお、説明用の図であるため、実際のボーカルピッチの特性とは必ずしも一致しない。このピッチ・トゥ・ノートにおいては、入力音声信号のピッチを用いて任意の音色の楽音を出力する。
【0013】
図4を参照しながら、図1の機能ブロック図に基づいて、ピッチ・トゥ・ノートの信号処理を説明する。本発明の実施の一形態においては、ボーカルピッチに基づいてノートオン、ノートオフ、ピッチベンド、ポルタメントコントロールの情報を生成し、指定した音色の楽音信号を生成している。ピッチ制御部6は、ピッチ検出部4の出力に基づいて、図4(a),(b)に示すボーカルピッチを音名に同定する音名同定部、ボーカルピッチと同定された音名のピッチとの差に応じてピッチベンド処理を行うピッチベンド処理部等を有し、音源部8が出力する楽音信号のピッチを制御する。
【0014】
図4(a)に示す第1の処理モードにおいては、ボーカルピッチと音楽上予め定められた複数の音名のピッチとのピッチ差を検出し、楽音信号のピッチを特定の音名のピッチに同定する。具体的には、ボーカルピッチを丸め処理等の方法で、半音(100セント)単位で定められた音楽の複数の音名のうち、最も近いピッチの音名に同定し、この音名のピッチを楽音信号のピッチとする。なお、この処理は、後述する図15のフローチャートにおいても説明している。このピッチは、ノートナンバに対応づけられる。このピッチは、図2に示したボーカルノートのピッチと一致する。
【0015】
図4(b)に示す第2の処理モードにおいては、ボーカルピッチに基づいてこれに追従して変化するピッチを楽音信号のピッチとする。この楽音信号のピッチは、図示のようなピッチが確定しないボーカルピッチをそのまま、あるいは、ボーカルピッチのわずかなピッチの揺れが消える程度の短期間の平均化を行ったボーカルピッチを使用する。いずれにしても、音名に定められたピッチのような100セント単位の離散的な音高を取るのではなく、連続的に楽音信号のピッチが変化可能となるようにする。
【0016】
上述した第1,第2の処理モードは、ピッチ・トゥ・ノートの処理開始前に、使用者の好みに応じて切り替える。あるいは、ピッチ制御部6がピッチ・トゥ・ノートの処理動作中に、操作スイッチ1つで切り替えるようにするとさらに好適である。このようにすれば、歌っている曲の中で選択が容易にできる。このような切り替えスイッチをマイクロフォン1の把持部に設ければ、使用者にとってさらに操作性が良好となる。
【0017】
生成する楽音のノートオンのタイミングは、ピッチ検出部4で音声信号のピッチが検出できた時点とし、ノートオフのタイミングは、ピッチ検出部4で音声信号のピッチが検出できなくなった時点とする。ピッチ検出部4では、音声入力のレベルが所定レベル以上にならないと検出できないので、ノートオン,ノートオフのタイミングは実質的に入力音声の強度にも依存している。
【0018】
なお、入力された音声信号の強度を検出するブロックをピッチ検出部4と独立して設け、音声入力の強度が第1の所定レベル以上となったときにノートオンとなり、音声入力の強度が第2の所定レベル以下となったときにノートオフとなるようにすることができる。第1,第2の所定レベルは同一レベルでもよい。
【0019】
また、別にスイッチ手段を用いてこのオンオフのタイミングによってノートオン,ノートオフの時点を決めることも可能である。また、鍵盤5の鍵あるいは押しボタンスイッチを操作者が押圧し続けている場合に限り、ピッチ・トゥ・ノートの信号処理が可能となるようにすれば、音声を入力していないときの雑音によって楽音が発生するというような誤動作を防止することができる。
【0020】
音源部8で生成された楽音信号は、効果付与部9を経て、信号出力制御部10に入力されるが、ピッチ・トゥ・ノートによる楽音信号のみが信号出力制御部10から出力されるようにしてもよい。また、本装置に備え付けられたMIDI OUT端子を介して、MIDIデータで外部のMIDI機器に出力することもできる。
【0021】
図4(b),図1を参照して、ピッチ・トゥ・ノートの第2の処理モードを説明する。音名同定部は、ボーカルピッチが連続的に変化して同定された音名のピッチとの差が所定の範囲を超えたときには、ボーカルピッチの音名を新たな音名に同定し直すとともに、アタック部のない振幅エンベロープを持つ楽音信号を発生するように音源8を制御する。
【0022】
図4(b)のt1の時点で、ピッチ検出部4は、ボーカルピッチを出力開始し、このボーカルピッチの値に最も近いピッチの音名をE4と判断し、基準の音名を決め、ノートオンを出力する。あるいは、上述した入力音声信号の強度を検出するブロックが発音開始を認知したときのノートオン、あるいは上述したスイッチからのノートオンの時点t1でのボーカルピッチの値に最も近いピッチの音名をE4と判断し、基準の音名を決める。なお、上述した時点t1の直後にボーカルピッチが音名E4のピッチになったときに、ピッチ検出部4が音名E4のノートオンを出力するようにしてもよい。
【0023】
ピッチ制御部6は、このボーカルピッチに対応する音名E4のノートナンバを音源8に出力するとともに、音源8にノートオン処理を実行させる。その後、ボーカルピッチが変動すると、ボーカルピッチと同定された音名のピッチとの差に応じてピッチベンド処理を行う。すなわち、楽音信号のピッチを音名E4のピッチを中心音高としたピッチベンド処理によって追従させて楽音が連続的に変化するようにしている。しかし、ピッチベンドレンジ(範囲)を、図示の例では、各音名の音高の±100セントの範囲に設定している。そのため、ピッチベンド処理だけでは、ピッチが途切れることなく連続的に変化してピッチベンドレンジを超えてしまうような楽音を発生することはできない。
【0024】
そこで、ボーカルピッチの検出が途切れることなく連続的に変化して、ピッチベンドレンジを超える音高の発音が必要になったとき、図4(b)のt2の時点で、同定された音名E4のピッチとの差がこのピッチベンドレンジを超えた際には、再発音制御信号を音源8に出力して、元の音名の前記第2の楽音信号を消音させるとともに新たに同定し直された音名で楽音信号を再発音させる。すなわち、t1でノートオンとなった音名E4のノートは、t2の時点でノートオフとし、ボーカルピッチを新たな音名F4に同定し直して、音源8が音名F4の楽音を新たに発生するように制御する。ボーカルピッチが音名F4のピッチになった後も、同様に±100セントの変動範囲においては、音名F4のピッチを中心音高とするピッチベンド処理によって楽音信号のピッチをボーカルピッチに追従させる。つまり、ピッチベンドの基点とする中心音高のノートを変更して行き、そのつなぎをピッチベンドで処理して行く。このようにして、楽音信号のピッチをボーカルピッチに追従させてほぼ同様に連続的に変化させることができる。
【0025】
検出されたボーカルピッチが連続的に変化して、ピッチベンドレンジを超える音高の発音が必要になったときの上述した処理に、XGフォーマットで規定されているポルタメントコントロールを用いれば、新たな音名F4の楽音をアタック部のない振幅エンベロープを持つものとして音源8から出力させることができる。なお、振幅エンベロープは、通常、アタック、ディケイ、サステイン、リリースの部分に区分されるが、アタック部は、振幅エンベロープの立ち上がりを遅らせたり、オーバーシュートを発生させたりする。
【0026】
したがって、楽音をつないで行く際にはアタック部をなくすことが望ましい。その結果、振幅エンベロープに関しては、再発音の前後で楽音信号の振幅エンベロープの大きさが一致するため、音名E4のノートから音名F4のノートにそのままつながりやすくなり、再発音を目立たなくすることができる。なお、前の音名E4の楽音のディケイ部は目立たないが、目立つ場合にはこれもなくすることが望ましい。また、アタック部が存在する振幅エンベロープであっても、前の音名E4の楽音のディケイ部とクロスフェードすることにより、再発音の前後で楽音信号の振幅エンベロープの大きさを略一致させることができるため、再発音時の前後における振幅エンベロープをつなぐことができる。
【0027】
なお、ピッチベンドレンジを0に設定した場合は、実質的にピッチベンド動作が行われず、半音単位に矯正された出力結果、つまり、新たなキーオンデータだけの出力となる。したがって、ピッチベンドレンジを0に設定すれば、第1の処理モードが行われることになる。したがって、ピッチ制御部6が動作中であっても、ピッチベンドレンジの設定を変えるだけで、簡単に第1,第2の処理モードを切り替えることができる。その際、ボーカルピッチが連続的に変化して音名を同定しなおして再発音する際の振幅エンベロープについても、第1,第2の処理モードの切り替えに連動して切り替えるようにすることができる。
【0028】
上述したように、ピッチ・トゥ・ノートの処理では、入力音声のピッチに基づいてピッチが制御される楽音を生成する際に、音名のピッチに同定されて階段状にピッチが変化する演奏と、入力音声のピッチに追従して段差がなく滑らかにピッチが変化する演奏とを使用者が任意に選択することができる。歌を歌っている最中に、楽音のピッチの変え方をリアルタイムに切り替えることができる。歌声を記録再生装置に取り込んでからでなくても、思うような楽音信号の音高が得られるまで自分の声を変えて歌い直してみることができる。
【0029】
なお、楽音信号の強度は、操作パネル11で設定していたため、演奏中は一定であった。そのため、力が抜けたような単調な音になってしまう場合がある。すなわち、キーオン毎に予め設定されたエンベロープを付与していたが、生成する楽音が単調になってしまう。そこで、入力音声信号の強度を検出する手段と、検出された入力音声信号の強度に基づいて、例えば、これに比例した強度で楽音信号の強度を制御する手段を加える。入力音声信号のボーカルピッチおよび強度に基づいて楽音信号のピッチおよび強度を制御することができる。このようにすれば、キーオン毎に変化を付けた力強い演奏ができるようになるとともに、使用者が歌っているときの感情を楽音信号の強度によって反映させることができるようになる。楽音信号は所定形状の振幅エンベロープを付けて出力されるが、この振幅エンベロープの強度(振幅エンベロープに掛け合わせる係数)を入力音声信号の発音強度に基づいて決定する。また、外部の機器にMIDIデータで出力する場合には、ノートオンのベロシティデータとして出力することができる。
【0030】
次に、ボーカルハーモニーモードにおいて図1に示した各構成要素の機能的動作を説明することとする。上述した構成の楽音信号処理装置は、入力音声に基づいてボーカルハーモニー音信号を生成し、これを入力音声であるリード音に付加して出力する。同時に、リード音信号,ハーモニー音声信号に対してジェンダーコントロールを行うことができる。ボーカルハーモニーモードは、操作パネル11により設定される。男性、女性、混成コーラス、カントリー、ジャズ、アカペラコーラス、低音コーラス等の特色あるボーカルハーモニーをそれぞれハーモーニーキットとしてまとめ、操作パネル11によってこのハーモーニーキットを選択することにより、機能制御部12で多数のパラメータを一括して設定することができる。
【0031】
マイクロフォン1から入力された使用者の声のボーカルピッチは、ピッチ検出手段4で検出される。ピッチ制御部6は、ピッチ検出手段4の出力と鍵盤5による音高指定を制御入力とし、ピッチ変換部3a,3bを制御する。ピッチ変換部3a,3bは、使用者の声の信号を入力して、上述した使用者の声の信号のピッチを所望のピッチに変換する。引き続き、効果付与部7a,7bにおいて効果を付与し、第1,第2のハーモニー音信号を生成する。なお、ハーモニー音信号は2声に限らず、1声でも、3声以上であってもよい。
【0032】
操作パネル11および機能制御部12は、使用者の音声信号に付与する効果と、第1,第2のハーモニー音信号に付与する効果とを独立して設定できるようにしている。そのため、使用者は、効果付与部7a,7bでは効果付与部2で付与する効果とは異なる効果、例えば、効果の種類を変えたり、およびまたは効果の程度を変えて効果を付与することができる。例えば、リード音信号に対してハーモニー音信号の効果の深さを大きくしたり、リード音信号に対しては音像の定位位置を変えずに、ハーモニー音信号に対してはランダムパンを行う。
また、機能制御部12により、デフォルトの設定状態では、効果付与部7a,7bでは、効果付与部2とは常に効果が異なるようにしておく。このようにして、元の使用者の声に対し、くっきりとしたハーモニー音を生成することが可能となる。
【0033】
ピッチ制御部6は、また、効果付与部7a,7bを制御し、ピッチ変換前後のピッチ差、すなわち、ボーカルピッチとピッチ変換されたハーモニー音信号とのピッチ差に応じてハーモニー音信号に付与する効果の種類を変更したり、およびまたは、効果の程度を変更する機能を有している。その結果、使用者の音声信号に対し、ハーモニー音声信号に変化に富んだ効果を付与したり、ハーモニー音信号に対して使用者の音声からのピッチ差に応じた適切な効果の付与を自動的に行うことができる。
【0034】
なお、この機能ブロック図においては、アナログ信号処理とディジタル信号処理の区別をしていないので、A/D変換器、D/A変換器の記載を省略している。一例として、マイクロフォン1のアナログ信号は、A/D変換器を通してディジタル信号に変換してから効果付与部2等に出力する。信号出力制御部10においては、効果付与部2,7a,7b、9の各出力を重み付けした後にディジタル加算し、D/A変換器を通してアンプ14に出力する。
【0035】
図2は、ボーカルハーモニーモードの具体例の説明図である。
図2(a)にボコーダーハーモニーモードにおける各音声信号の関係を示す。マイクロフォン1から使用者が音声を入力すると同時に鍵盤5を弾くと、弾かれた鍵に対応する音高と一致する音高(キーオンノート)のハーモニーノートを元の音声であるリード音に付加して発音させる。このハーモニー音信号の音色は、操作者の「自分の声」ということになり、この音色の楽器を鍵盤5を弾いているようなものとなる。このハーモニー音の発音期間は、鍵盤5の押鍵により制御される。操作パネル11で発音形態を設定することにより、例えば、サステイン期間のあるオルガンと同様にキーオンからキーオフまで持続音を発生させたり、ピアノのようにキーオンから所定期間減衰音を発生させることができる。
【0036】
操作パネル11でボコーダのタイプを選ぶことにより、発音するハーモニーノートを鍵盤5で指定されたノート(キーオンノート)のピッチからトランスポーズさせることができる。自動設定では、ボーカルノートを中心とする±6半音内に入る音高となるようにシフト量を設定することもできる。なお、ピッチ制御部6では、ボーカルピッチが前回計算したノートの上または下に半音を超えた場合に、波長比較で最も近い音高のノートをボーカルノートとしている。
【0037】
図2(b)にコーダルハーモニーモードにおける各音声信号の関係を示す。マイクロフォン1から使用者が音声を入力し、同時に鍵盤5でコード(和音)を指定する。ピッチ制御部6では、コードの種類を認識して、このコードを構成する音名に合ったハーモニー音をリード音に付加して発音させる。すなわち、使用者が音声を入力するだけで鍵盤5で指定されたコードに合うハーモニー音が付くことになる。例えば、コードがCメジャーであるとき、ハーモニー音は、その構成音であるC,E,Gのいずれかの音高とする。操作パネル11の設定によりすぐ上の音を鳴らす設定(デュエット・アバブ)になっていた場合、入力音声の音高がCであるときに、ハーモニー音はEのハーモニーノートで鳴ることになる。
コーダルハーモニモードでは、一度コードが確定すると鍵盤5を押さえなくても音声を入力するだけでその構成音のハーモニーがいつでも付くことになる。曲の進行に合わせて鍵盤5でコードを指定換えすることもできる。
【0038】
図2(c)にデチューンハーモニーモードおよびクロマチックハーモニーモードにおける各音声信号の関係を示す。デチューンハーモニーモードでは、ボーカルピッチまたはボーカルノートをわずかにずらせた音を鳴らす(いわゆるコーラス効果)。デチューン量は、デチューンタイプを切り替えることにより±数セントないし±20セント程度まで変えるようにしている。
クロマチックハーモニーモードでは、ボーカルピッチまたはボーカルノートから固定ピッチ分シフトした音を鳴らす。ピッチシフト量は、同音程(ユニゾン)から±1オクターブ程度まで変えるようにしている。
【0039】
図3は、ピッチ制御部による効果付与部の制御態様の説明図である。使用者の声のボーカルピッチとピッチ変換後のハーモニー音のピッチ(ハーモニーノート)とのピッチ差に応じてハーモニー音信号に付与する効果のパラメータ値を変化させる。ボーカルピッチは、丸め処理されたボーカルノートのピッチでもよい。図3(a)は、ピッチ差の絶対値が一定の閾値d1を超えたときにパラメータ値Psで表される一定量の効果を付与する例を示す。d1およびPsの値は、操作パネル11および操作制御部12によって可変設定することができる。図3(b)は、ピッチ差が一定の閾値d1を超えると効果が掛かり始め(本例はピッチ差d1に設定)、その後はピッチ差の絶対値に対して比例的にパラメータ値が上昇し、パラメータ値がPsとなって飽和する例を示す。図3(c)は、効果がかかり始めてから、その後はピッチ差の絶対値に対して増加率が上昇して、パラメータ値がPsとなって飽和する例を示す。図3(d)は、閾値d1を負側に設定した場合を示すものである。この場合、ピッチ差の絶対値が負となる領域のパラメータ値は使用されない。
【0040】
図3(e)は、ピッチ差が正負の場合に効果の種類を異ならせたものである。男性が歌っている低いオクターブの音高に対して、鍵盤5の1オクターブ上のキーによりハーモニー音の音高が1オクターブ上に指定されたとき、ハーモニー音の声質を男性のままにしておくと違和感があるために、ジェンダー制御を行い女性声にする。逆に、女性が歌っている高いオクターブの音高に対して、鍵盤5の1オクターブ下のキーによりハーモニー音の音高が1オクターブ下に指定されたときもジェンダー制御を行い男性声にする。
【0041】
図3(e)においては、ボーカルピッチあるいはボーカルノートのピッチを基準にして、例えば、ハーモニーノートがこれよりも高く、閾値d1を超えるときには、パラメータAとして女性声になるようにジェンダー制御を行い、ハーモニーノートがこれよりも低く、閾値d2未満になるときには、パラメータBとして男性声になるようにジェンダー制御を行う。同時に、ピッチ差に応じてパラメータ値を増加させジェンダー制御を深くする。
【0042】
図示の例では、ピッチ差に応じてパラメータ値が増加するものだけを示したが、逆にパラメータ値が減少したり、増減する場合もある。ハーモニー音には同時に複数の効果が付与することができ、それぞれの効果に応じて、上述したピッチ差と効果パラメータの対応を表すルックアップテーブルおよびまたは、閾値d1,d2や飽和値Psの値を適宜選択すればよい。その結果、操作者の音声信号のボーカルピッチあるいはボーカルノートのピッチとハーモニー音信号のピッチとの差に応じて付与すべき効果の種類およびまたは効果の程度を変更することができる。なお、ルックアップテーブルに代えて、ピッチ差に対するパラメータ値の関数を記憶しておき、演算により効果のパラメータ値を算出してもよい。
【0043】
ピッチ差によりハーモニー音信号に対する効果の制御を行うことにより、リード音信号に対する効果の付与とは効果の種類および効果の程度を異ならせることができる。さらに、曲の進行とともに鍵盤5の操作によりハーモニー音信号のピッチだけでなく、これに伴ってハーモニー音信号に対する効果を時々刻々変化させることができる。
【0044】
図4(b)に示す第2の処理モードにおいては、楽音信号のピッチが連続的に変化するピッチとするために、ポルタメントコントロールを実行してノートナンバーを変更して複数の楽音を連続して再発音させている。すなわち、ノートオンとなった最初の音高がノートオフとなる同時に、次の音高がノートオンとなるようにして、新しいノートを連続的に発生させながら同時に連続的にピッチを変化させている。一方、楽音信号に対し、楽音信号の発生開始より予め設定された遅延時間経過後に効果の付与を開始する、いわゆるディレイ効果があり、例えば、ディレイビブラート、ディレイトレモロ等がある。
【0045】
図5は、連続的に発音させる楽音信号にディレイ効果を付与する場合の説明図である。図5(a)は本発明の実施の一形態の動作説明図、図5(b)は比較例としての従来のディレイ効果付与の動作説明図である。ディレイビブラートを付与する例を示すが、説明用の図であるため、ビブラートの周期や深さは実際のものとは異なる。
【0046】
図5(b)において、ピッチを連続させて変化させるために、複数の楽音信号▲1▼〜▲4▼を連続的に発音する場合で説明する。楽音信号▲1▼がノートオフとなると同時に、楽音信号▲2▼がノートオンとなる。楽音信号▲2▼〜▲4▼についても同様である。このような連続する楽音信号▲1▼〜▲4▼にディレイビブラートを付与しようとすると、最初の楽音▲1▼に対してノートオンから所定時間経過後に効果が付与開始された後、この楽音の終了とともに効果の付与も終了する。そして、連続する▲2▼以降の楽音に対しても、同様に楽音の終了の度に効果の付与が終了した。その結果、演奏上実質的に連続した1つの音となるべき連続楽音▲1▼〜▲4▼に対する効果が途切れ途切れになり違和感があった。
【0047】
図5(a)を参照して、楽音を連続的に発音させる場合に、ディレイビブラートを付与する場合を説明する。最初の楽音▲1▼に対し、ワンテンポおいてから所定時間経過後に効果が付与開始された後は、この楽音が終了しても効果の付与がそのまま持続する。そして、連続する▲2▼以降の楽音の発生によって効果の付与が新たに開始されないようにする。その結果、演奏上実質的に連続した1つの音となるべき連続楽音▲1▼〜▲4▼に対する効果は、途中で楽音信号が入れ替わっていても、一連の1つの音と見なすことにより、ディレイビブラートが途中で切れることなく連続して付与されることになるので、連続音に対して自然なディレイビブラートが違和感なく付与された楽音を発生させることができる。
【0048】
図1において、上述した作用効果を達成するために、効果付与手段9は、ピッチ制御部6が第1番目の楽音信号から楽音信号を連続発生させている間においては、第1番目の楽音信号の発生により起動した効果をそのまま持続させるとともに、連続して発生する第2番目以後の楽音信号の発生による起動を阻止するようにしている。
【0049】
上述した説明では、効果付与手段9は、楽音信号の発生開始から所定時間遅れて効果の付与を開始するディレイ効果を付与するものであった。しかし、所定の時間経過に従って、効果の種類が変更されたり、同じ種類の効果であっても効果の程度が変化して行くような、所定の時間経過に従って変化する効果であれば、同様に、効果が途中で切れることなく連続して付与されることになるので、自然な効果を付与することができる。
上述した説明では複数の楽音が重なることなく連続して発音される場合について説明したが、一連の連続音と認識されるようなものに対してディレイ効果を付与する場合にも同様の作用効果がある。連続する楽音は発音期間が一部重なっていても、あるいは、わずかに離れて発音されるような場合でもよい。
【0050】
また、上述した説明では、ピッチ・トゥ・ノートのモードについて説明した。しかし、電子楽器の通常の演奏モードであってもよい。通常の演奏モードにおけるポルタメント効果は、新規に鍵盤5を押したときのノートオンによりに発生する楽音のピッチが、以前のノートオンにより発音された楽音のピッチからこの新規に押された鍵盤の指定ピッチまで連続的に移行させる効果である。ポルタメント効果の設定を演奏前に行うものでは、演奏中に常にポルタメント効果がかかる。演奏中において鍵をキーオフする前に次の鍵をキーオンする、いわゆるレガート奏法を行なうことによりポルタメント効果をかける場合もある。上述したポルタメント効果の一種として、ピッチを連続的に移行させる代わりに半音または全音単位で楽音のピッチを移行させる場合はグリサンド効果という場合もある。上述したポルタメント効果の演奏制御を行っている場合に「ディレイ効果」をかける場合にも、同様な動作で同様な作用効果を奏する。
【0051】
図6は、本発明の音声信号または楽音信号の処理装置の実施の一形態の外観図である。図中、図1と同様な部分には同じ符号を付し説明を省略する。21は電子楽器本体、22は操作子群、23は表示部、24は接続コードである。
電子楽器本体21は、鍵盤5と左右のスピーカ15,16を有し、これ自体で演奏ができるようになっている。操作パネル11には複数の操作子からなる操作子群22、表示部23が設けられている。表示部23は、各種の操作子によるパラメータ設定状態の表示やハーモニーキットの表示などを行う。接続コード24は、電子楽器本体21とマイクロフォン1とを接続するコードである。図示を省略したが、電子楽器本体21には、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)端子を備え、外部のシーケンサ等のMIDI機器に接続することができるようにしている。また、ピッチベンドホイールやモジュレーションホイールを備えていてもよい。
【0052】
図6を参照し、図1に示したパン制御部13が実行するランダムパンの動作を説明する。パン制御は、音像の定位を決めるものであり、左右の2つのスピーカ15,16を駆動するアンプ14のLチャンネル,Rチャンネルの音量比を制御することによって音像の定位位置を制御する。パン制御は個別の効果付与部2,7a,7b,9とは別に示したが、パン制御も一種の効果付与である。図中、▲1▼〜▲3▼の右側に示した数字は、LチャンネルとRチャンネルの信号の音量比率、すなわち、Lチャンネルの音量/(Lチャンネルの音量+Rチャンネルの音量)に比例した値の数字であり、左右の幅方向における音像の定位位置を示す。図示の例では、▲1▼に示す0〜127の範囲の数字で設定し、0が最も左の定位位置を表し、127が最も右の定位位置を表す。0の時はLチャンネル側一杯に定位し、R側は音が鳴らない。また、127のときはRチャンネル側一杯に定位し、L側は音が鳴らない。
【0053】
従来、一種の音響効果として、楽音信号をランダムに定位させるというランダムパンを行うことがあった。例えば、自分が弾いた楽音信号が押鍵毎に右から次に左からと、あちらこちらから聞こえるようにすることがあった。しかし、複数の楽音信号に対してそれらの音像をランダムに定位させようとすると、時々複数の楽音信号の音像が同じ位置に定位してしまうことがある。このときは一点に楽音信号がかたまって急に音幅域が狭く感られるという問題があった。複数の音像が中央に定位したときには、更に狭く感じられた。
【0054】
図1に示した楽音信号処理装置において、パン制御部13は、第1,第2のハーモニー音信号の音像定位を時間とともにランダムに制御する。第1,第2のハーモニー音信号の音像を定位させる領域である▲1▼に示す0〜127の領域が、例えば、▲2▼に示す0〜57,71〜127、あるいは、▲3▼に示す0〜35,46〜81,92〜127のように、複数の分割区域に分割されている。パン制御部13は、所定の期間ごとに複数の楽音信号の定位位置を所定の領域内でランダムに決定する定位位置決定部、および、この定位位置決定部により既に決定された複数の楽音信号の定位位置の情報、例えば、上述した定位位置を表す数字、あるいは、定位位置の属する分割区域を特定する番号などを記憶する記憶部を有し、定位位置決定部は、記憶手段が記憶する定位位置の情報に基づいて、既に決定された定位位置を含まない全ての分割区域を上述した所定の領域とする。このようにして、第1,第2のハーモニー音信号の定位位置が集中しないように第1,第2のハーモニー音信号の定位位置を決定することにより、常に安定したランダムパンの効果を与えることができる。
【0055】
例えば、第1,第2のハーモニー音信号の音像を定位させる領域を、図中、▲2▼に示す0〜57,71〜127の領域とする。ある時点において、第1のハーモニー音信号の定位位置を0〜57、71〜127の範囲で数値をランダムに選択し、例えば40の位置とする。第2のハーモニー音信号の定位位置は、40の位置を含む0〜57の分割区域を除いた71〜127の分割区域の範囲で数値をランダムに選択して、例えば100の位置とする。
【0056】
すなわち、所定の期間ごとに、第1,第2のハーモニー音信号の内の1つのハーモニー音信号の定位位置をランダムに決定し、他の1つのハーモニー音信号が定位する位置を、前者のハーモニー音信号が定位した分割区域を除く全ての領域においてランダムに決定する。楽音信号の数が増えた場合でも、複数の楽音信号が定位する位置を、既に定位する位置が決定された他の楽音信号が定位する分割区域を除く他の全ての分割区域においてランダムに決定することを、複数の楽音信号について順次繰り返すことにより、複数の楽音信号が同じ分割区域内に重複して定位しないこととなり、前記複数の楽音の定位する位置が集中しないようになる。より具体的なプログラムの処理ステップは図16を参照して説明する。なお、上述した所定の期間は、一定時間に設定してもよいし、1つのノートのキーオンからキーオフまでの期間としてもよい。
【0057】
その際、第1,第2のハーモニー音信号の音像を定位させる領域は、▲2▼,▲3▼に示したように2つの分割区域が所定距離だけ離れて隣接するように設定することにより、隣り合った分割区域に定位した2つの楽音が、たまたま近寄った位置に定位しても、所定距離だけは離れるようにすることができ、パン効果を引き立たせることができる。なお、▲2▼に示したように中央の部分をあけて左右2つの方向に定位させ、リード音信号の定位位置を中央に固定し、第1,第2のハーモニー音信号にパン効果を付与すれば、リード音信号に対して第1,第2のハーモニー音信号が引き立つことになる。
【0058】
また、第1のハーモニー音信号の定位位置がランダムに設定され、次に、第2のハーモニー音信号の定位位置がランダムに設定されるときには、第1のハーモニー音信号の定位位置からある一定距離以上離れた位置に定位することを条件として第2のハーモニー音信号をランダムに設定するようにしてもよい。そのような場合には、必ずしも予め分割区域の間をあけておかずに、第1の定位位置を決めてから第2の分割区域の範囲を決めてもよい。例えば、第1,第2のハーモニー音信号の定位位置の範囲を0〜63,64〜127の2つの分割区域として、もし第1のハーモニー音信号の定位位置が60に決まった場合には、第2のハーモニー音信号を定位させる位置の範囲を60から14だけ離した74から127とし、この範囲で定位位置をランダムに選択する。
【0059】
上述した説明では、第1,第2のハーモニー音信号に対してランダムパンの効果付与を行ったが、リード音信号、楽音信号を含め、音像定位させる音の数、音の種類は限定されない。分割区域はランダム定位させる音の数以上あればよい。
【0060】
図7は、本発明の音声信号または楽音信号の処理装置の実施の一形態のハードウエア構成を示す図である。図中、図1,図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。31はCPUバス、32はROM、33はRAM、34はCPU、35は外部記憶装置、36はMIDIインターフェース、37はADC、38は音源部、39はDSP、40はDACである。
【0061】
CPUバス31にはCPU34などの複数のハードウエアが接続されている。操作子群22は、ピッチベンドホイールやモジュレーションホイール等の演奏操作子や音色等の楽音パラメータを設定する設定操作子である。表示部23は、各種の操作子の操作状態等を表示する。ROM32には、CPU34を用いて実行される本発明の音声信号または楽音信号の処理プログラムのほか、プリセットデータやプリセット音色データ、変換テーブルなどが記憶されている。RAM33には、CPU34のワーキングエリア、音色編集バッファ等が設けられている。
【0062】
外部記憶装置35は、フレキシブル磁気ディスクドライブ(FDD),ハードディスクドライブ(HDD)等である。外部記憶装置35には、音色データや曲データを保存したり、本発明の音声信号または楽音信号の処理プログラムをインストールしておきRAM33にロードして実行させることもできる。MIDIインターフェース36は、シーケンサやパーソナルコンピュータとの間で、MIDIデータの転送を行う。
【0063】
ADC37は、マイクロフォン1からの入力音声信号をディジタル信号に変換しCPUバス31に出力するA/D変換器である。音源部38は、図1に示した音源部8の機能ブロックとは必ずしも一致しないが、CPUバス31から楽音パラメータを入力して楽音信号を生成しDSP39に出力する。音源38の機能もCPU34のコンピュータプログラムで実現させる場合もある。DSP39は、CPU34によって制御されて信号処理を行い、入力音声信号のピッチ検出およびピッチ変換を行うとともに、入力音声信号、ピッチ変換信号、音源部8の出力信号に効果を付与する。なお、上述したDSP39を機能分割することもできる。入力音声信号のピッチ検出およびピッチ変換関係の第1のDSPと効果付与の第2のDSPの2個を使用し、ADC37の出力を第1のDSPに入力させ、第2のDSPは音源部8の出力と第1のDSPの出力を入力すればよい。DAC40は、DSP39の出力信号をアナログ信号に変換するA/D変換器であり、ステレオアンプ14を経てスピーカ15,16に出力する。
【0064】
CPU34は、マイクロフォン1からの入力音声信号、鍵盤5,操作子群22からの操作情報、MIDIインターフェース36を介して入力された演奏情報に対し、RAM33を用いて処理を行い、各種設定パラメータの値を表示部23に表示したり、処理された演奏情報を基に音源部38をコントロールしたり、MIDIデータをMIDIインターフェース36を介して外部に出力する。DAC41もCPUバス31に接続されて、CPU34に制御されてミキシング処理などを行う場合もある。なお、リード音信号、ハーモニー音信号、楽音信号、これらの合成出力信号を外部記憶装置35に保存できるようにしてもよい。
【0065】
図8〜図16は、本発明の音声信号または楽音信号の処理装置の実施の一形態の動作を説明する処理ステップのフローチャートである。
図8は、メインフローチャートおよび割り込み処理のフローチャートである。S51においては装置が初期化され、S52においては操作パネル11上の複数の操作子群22により楽音パラメータ等の各種の設定を行う。S53においては、入力音声に対する効果付与などの制御を行う。入力音声自体の制御についてはフローチャートを用いた説明は省略する。S54においては、各種の設定に基づきハーモニー音や楽音の演奏を行う。S54の処理が終了すると再びS52に戻り、S52〜S54が繰り返し実行される。この繰り返しループの途中において、S55に示すピッチ検出の割り込み処理、および、S56に示す音声,楽音出力とパン効果付与に関する割り込み処理がなされる。
【0066】
図9は、操作パネル設定に関するフローチャートである。S61においては、ハーモニーモードの選択があるか否かを判定し、ある場合にはS62に処理を進め、ハーモニーに関する設定を行い、ない場合にはS63に処理を進める。同様に、S63,S66,S68の各ステップにおいては、それぞれ、ジェンダーコントロールの選択、ピッチ・トゥ・ノートの選択、パン設定モードの選択があるか否かを判定し、選択されたそれぞれの設定のステップに進む。
【0067】
S64においては、オリジナルの入力音声であるリード音に対して付与する効果として、ジェンダーコントロールの設定を行い、S65において性別の声質、すなわち、男性声あるいは女性声の設定を行う。なお、ハーモニー音についは、図1を参照した説明では、ピッチ差によって自動的に男性声あるいは女性声を設定するようにした。しかし、ハーモニー音についても、リード音と同様に操作子でジェンダーコントロールの設定を行うようにすることも可能である。S69においては、パンの種類、すなわち、通常のパンあるいはランダムパンの設定を行い、次のS70においては、ランダムパンにおいて音像定位を移動させるタイミング間隔をパンの指定長さ(int)として設定する。なお、図には記載を省略したが、キーオン(ノートオン)毎に音像定位をランダムに移動させる設定もここで行う。
【0068】
図10は、図9のS62「ハーモニーの設定」ステップのフローチャートである。S81においては、ハーモニーモードを解除し、S82においては、ボコーダハーモニーモードが選択されたか否かを判定し、ボコーダハーモニーモードが選択されたときには、S83に処理を進め、その他のモードが選択されたときには、S86に処理を進める。同様にして、S86,S88,S91においては、それぞれ、コーダルハーモニー,デチューンハーモニー,クロマチックハーモニーが選択されたか否かを判定し、選択されたそれぞれのモードの設定を行う。
【0069】
S83においては、ボコーダーハーモニーモードを設定し、次のS84においては、必要に応じてピッチ差対応の効果の設定を行う。すなわち、図3を参照して説明したボーカルピッチとのピッチ差に応じてハーモニー音信号に付与する効果を変化させる設定を行う。ピッチ差対応の効果の設定を行わない場合には、そのままリターンさせるが、この設定を行う場合には、S85において、ピッチ差対応の設定を行う効果の種類、例えば、ジェンダーコントロール,ビブラート,残響(リバーブ),トレモロ等の設定を行う。変化率特性は、例えばルックアップテーブル等を用いて設定できる。S90においては、デチューン量をピッチ差で設定し、S93においては、シフトさせる量をノート差で設定する。
【0070】
図11は、図9のS71「その他の指定された処理」ステップのフローチャートである。S101においては、音色設定モードであるか否かを判定し、音色設定モードであるときにS102に処理を進め、音色設定モードでなければS103に処理を進める。S102においては、ピッチ・トゥ・ノートのモードおよび電子楽器の通常の演奏モードにおいて使用する音色を設定する。S103においては、効果設定モードであるか否かを判定し、効果設定モードであればS104に処理を進め、効果設定モードでなければS108に処理を進める。
【0071】
S104〜S107においては、モード等に対応して決まる「音のパート」毎に複数種類の効果設定を行うとともに、効果を付与するタイミングを設定する。S104において、モード等の選択および効果付与の対象とする発音パートの選択を行い、S105に処理を進める。すなわち、ハーモニーモードを選択してリード音のパート、あるいは、1または複数のハーモニー音のパートを選択する。ジェンダーコントロールを行う場合においては、ジェンダーコントロールをする入力音声、あるいは、1または複数のハーモニー音のパートを選択する。ピッチ・トゥ・ノートのモードにおいては、入力音声によってピッチ指定される楽音のパートを選択する。通常演奏モードにおいては、鍵盤で指定される楽音のパートを選択する。
【0072】
S105においては、効果種類の選択を行い、S106に処理を進める。すなわち、S104において選択されたパートの処理チャンネルに対して、ジェンダーコントロール,ビブラート,トレモロ,遅延信号の付加(ディレイ)、残響(リバーブ)等の効果の種類および程度(深さ)を設定する。S106においては、設定方法の選択を行い、S107に処理を進める。すなわち、S106においては、S104において選択されたパートの処理チャンネルに対して、効果を常に付加するのか、あるいは、状況を見て所定の条件を満たす時に効果を付与するのかを選択して設定する。後者の一例としては、予め設定された効果付与開始時間[utime]をおいたタイミングで効果を付与する場合があり、具体的にはディレイビブラート等の「ディレイ効果」がある。
【0073】
後者の場合、時間によって変化させる効果の有無、あるいは、時間によって変化させる効果の程度等を示す効果変化表をルックアップテーブルとして持たせ、このテーブルを選択したり、およびまたは上述した効果付与開始時間[utime]などのパラメータの値を入力して演算する。これらの選択や入力を操作子で行う際には、表示器を入力画面に切り替えるようにする。S107においては、設定を終了するか否かを操作子の操作により判定し、終了する場合にはリターンとなるが、終了しない場合には、S104に処理を戻す。1つのパートに複数の種類の効果を設定することができ、この場合には、処理を戻した後に再び同じパートを選択して別の効果を設定すればよい。
【0074】
S108においては、ピッチ決定モードであるか否かを判定する。ピッチ決定モードであるときにはS109に処理を進め、ピッチ決定モードでないときにはS110のその他の処理に進む。このステップは、図1,図4を参照して説明したピッチ・トゥ・ノートを実行する際に設定する。S109においては、入力音声のピッチを丸めて楽音信号の音高を表すノート値とする第1の処理モードか、入力音声のピッチをそのまま楽音信号のピッチとする第2の処理モードを選択する。なお、入力音声そのものに対する効果付与部2における機能として、入力音声のピッチを矯正して音楽の音名に対するピッチに変換してリード音を生成することができる。S109は、上述した機能に対する設定ができるように変更可能である。
【0075】
図12は、図8のS53「演奏」ステップのフローチャートである。図13は、図12のS122「キーオンイベントに対応した音声,楽音信号を生成」ステップのフローチャートである。図12のS121においては、キーオンイベントが発生したか否かを判定し、キーオンイベントがあるときには、S122に処理を進め、キーオンイベントがないときにはS128に処理を進める。なお、ピッチ・トゥ・ノートにおけるノートオンの発生は、キーオンイベントとして処理し、ノートオフの発生はキーオフイベントとして処理する。S122においては、キーオンイベントに対応する音声,楽音信号を生成する。S122における処理を図13を参照して先に説明する。
【0076】
図13のS141においては、ハーモニーモードの設定があるか否かを判定し、この設定がある時にはS142に処理を進め、ない時にはS143に処理を進める。S142においてはハーモニー音の生成を行い、S143に処理を進める。S142の処理は、図14を参照して後述する。S143においては、ピッチ・トゥ・ノートの設定があるか否かを判定し、この設定がある時には、S144に処理を進め、ないときにはS145に処理を進める。S144においては、入力音声から検出されたピッチに応じたピッチ、設定された音色で楽音信号を生成し、S145に処理を進める。S145においては、通常演奏モードの設定があるか否かを判定し、この設定があるときにはS146に処理を進め、ないときにはリターンする。S146においては、処理キーオンのノートナンバーで、設定されている音色にて楽音信号を生成してリターンする。
【0077】
図12に戻って、再び「演奏」ステップにおける処理を説明する。S123においては、効果設定があるか否かを判定し、この効果設定があるときにはS124に処理を進め、ないときにはS127に処理を進める。なお、ここでいう効果とは、図11のS103〜S107において設定される効果である。S124においては、「ディレイ効果」の設定があるか否かを判定し、この設定があるときにはさらにS126に処理を進め、ないときにはS125に処理を進める。S126においては、ピッチ・トゥ・ノート及び通常楽音演奏モードにおける演奏形態がポルタメントコントロールされる演奏形態、または、ポルタメントコントロールされるレガート奏法の演奏形態であるか否かを判定し、これらの演奏形態である場合には、S125に処理を進め、これらの演奏形態でない場合には、S127に処理を進める。
【0078】
すなわち、「ディレイ効果」が設定されているときには、キーオンイベント(ノートオン)によっては生成された音声,楽音信号に直ちには効果を付与しないが、ポルタメントまたはレガートコントロールされた演奏形態において、最初のノートに対応する楽音に付与された効果を引き続き継続させる。S127においては、生成した音声,楽音信号を処理チャンネルに出力して、S130に処理を進める。
【0079】
一方、S128においては、キーオフイベントがあるか否かを判定し、あるときにはS129に処理を進め、ないときにはS130に処理を進める。S129においては、キーオフイベントに対応した音声,楽音信号の生成を停止し、S130に処理を進める。S130においては、音声,楽音出力中の処理チャンネル(n)があるか否かを判定し、あるときには、S131に処理を進め、ないときにはリターンする。なお、この図では省略しているが、S131〜S136においては、リード音のパートの処理チャンネルを除く、音声,楽音信号中の処理チャンネルの全てについて処理ステップを実行する。S131においては、「ディレイ効果」の設定があるか否かを判定し、設定がある場合にはS132に処理を進め、ない場合にはリターンする。
【0080】
S132においては、チャンネル(n)毎に、時間[time(n)]を+1加算し、S133に処理を進める。S133においては、時間[time(n)]が、図11のS106において設定された効果付与開始時間[utime]に達したか否かを判定し、達していないときにはS134に処理を進め、達したときにはリターンする。S134においては、効果を付与するまでの時間[time(n)]を再び0に初期化し、S135に処理を進める。S135においては、音声,楽音信号に「ディレイ効果」を付与し、S136においては、「ディレイ効果」を付与した音声,楽音信号を該当する処理チャンネル(n)に出力する。
【0081】
図14は、図13のS142「ハーモニー音の生成」ステップのフローチャートである。S161においては、ボコーダーハーモニーモードの設定がある否かを判定し、この設定がある場合には、S162に処理を進め、ない場合はS163に処理を進め、S163においては、コーダルハーモニーの設定があるか否かを判定し、この設定がある場合にはS164に処理を進め、ない場合にはS165に処理を進め、S165においては、デチューンハーモニーの設定があるか否かを判定し、この設定があるときにはS166に処理を進め、ないときにはS167に処理を進める。S167においては、クロマチックハーモニーの設定があるか否かを判定し、この設定がある場合にはS168に処理を進め、ない場合にはS169に処理を進める。各ハーモニーモードにおける処理は、既に図1,図2を参照して説明したとおりである。
【0082】
S169においては、ピッチ差対応の効果の設定があるか否かを判定し、この設定がある場合にはS170に処理を進め、ない場合にはリターンする。S170においては、キーオンのノートピッチからボーカルピッチを引いた値をピッチ差とし、S172において、選択されたルックアップテーブルからピッチ差に応じて効果のパラメータを設定し、リターンする。
【0083】
図15は、「ピッチ検出の割り込み処理」のフローチャートである。タイマー割り込みにより起動する。S181においては入力音声のピッチ検出を行い、S182に処理を進める。S182においては、ピッチ・トゥ・ノートの設定があるか否かを判定し、この設定がある場合にはS183に処理を進め、ない場合にはリターンする。S183においては、図4(a)を参照して説明した第1の処理モードであるか否かを判定し、第1の処理モードのときにはS184に処理を進め、図4(b)を参照して説明した第2の処理モードのときにはS186に処理を進める。
【0084】
S184においては、今回検出したピッチと前回検出したピッチにより決定したノートナンバーに対応する前回決定ピッチとの差が±100セント(半音)を超えたか否かを判定し、超えた場合にはS185に処理を進め、超えないときにはS187に処理を進める。なお、初めてピッチを検出したときにもS185に処理を進める。S185においては、変換テーブル(ルックアップテーブル)により、音楽の複数の音名に対応する半音単位のピッチの中から、今回の検出ピッチに最も近いピッチを選択し、この音名のノートナンバを決定する。また、この音名に対応するノートナンバが、次の割り込み処理時の前回決定ピッチとなる。
【0085】
一方、S186においては、検出したピッチそのものを楽音の音高とするための処理を行い、S187に処理を進める。具体的には、図4(b)を参照して先に説明したように、ピッチベンド処理とポルタメントコントロールとの組み合わせで行う。S187においては、S185で検出したノートナンバー、あるいは、S186で指定したピッチベンドデータおよび中心音高のノートナンバーによって楽音の音高を指定してリターンする。
【0086】
図16は、「音声,楽音出力とパン効果に関する割り込み処理」のフローチャートである。タイマー割り込みにより起動する。S191においては、現在発音中のチャンネルにおいてランダムパンが設定されている処理チャンネルの数(rdn)を求める。なお、この割り込み処理ではリード音のパートの処理チャンネルも含む。次のS192においては、rdn=0であるか否かを判定し、0のときにはS202に処理を進めるが、0でないときにはS193に処理を進め、時間[time]に+1を加算し、S194においては、時間[time]がランダムパンの指定長さ[int]を超えたか否かを判定し、超えたときにはS195に処理を進め、超えないときにはS202に処理を進める。S195においては、時間[time]を初期設定しなおす。
【0087】
次のS196〜S202までの処理は、図6を参照して説明したランダムパンの一具体例としての処理ステップである。S196においては、全分割区域内で音声,楽音の定位位置をランダムに決定する。次のS197においては、第1のランダムパンが設定されている発音中チャンネルに、決定したランダム位置に応じてパンのパラメータに数値を設定する。次のS198においては、ランダムパンの設定がされている処理チャンネルが他にあるか否かを検索し、ある場合にはS199に処理を進めるが、ない場合にはS202に処理を進める。S202においては、ランダムパンの設定がされていない処理チャンネルには、中央など所定の位置に定位位置を決定する。
【0088】
S199においては、まだ選ばれていない分割区域をランダムに決定し、S200において決定された分割区域の中で定位位置をランダムに決定する。次のS201においては、先にS198で検索されたランダムパンの設定された処理チャンネルに、S200で決定した位置に応じてパンのパラメータの数値を設定し、S198に処理を戻す。S202においては、各処理チャンネルは、パン状態が付与された音声,楽音信号を出力制御して、リターンする。
【0089】
なお、上述した説明では、マイクロフォン1から入力した使用者の音声を基にしてハーモニー音や楽音を生成した。しかし、基となる音声または楽音は、人の声や楽音に限られるものではなく、動物の声などピッチが検出可能なものであれば任意の種類の音でよい。また、パン効果を与える楽音信号については、ノイズ信号などピッチ検出ができない楽音信号でもよい。ピッチ検出ができない音も電子楽器の音色として通常使用されている。
【0090】
本発明によれば、歌声をリアルタイムに入力する場合に好適であるが、予め使用者の音声が録音されたものを再生して音声を取り込んで処理することもできる。また、ハーモニー音のピッチを制御する音高指定手段としては、鍵盤5を使用する代わりに、曲データファイル中のMIDIデータによってハーモニー音の音高を指定することもできる。
【0091】
上述した説明では、使用者の音声をピッチ変換しないものをリード音信号としてハーモニー音信号とミキシング合成してスピーカ15,16から放音するようにした。しかし、ハーモニー音信号だけを放音する装置であっても、演奏が可能である。また、使用者の音声そのものは、他のオーディオアンプから放音することもできる。
【0092】
【発明の効果】
本発明は、上述した説明から明らかなように、連続的に変化する音声信号または楽音信号のピッチに追従してピッチが連続して変化する楽音信号を発生させることができ、かつ、再発音を目立たないようにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の音声信号または楽音信号処理装置の実施の一形態の機能ブロック図である。
【図2】ボーカルハーモニーモードの具体例の説明図である。
【図3】ピッチ制御部による効果付与部の制御態様の説明図である。
【図4】ピッチ・トゥ・ノートの説明図である。
【図5】連続的に発生する楽音信号にディレイ効果を付与する場合の説明図である。
【図6】本発明の音声信号または楽音信号処理装置の実施の一形態の外観図である。
【図7】本発明の音声信号または楽音信号処理装置の実施の一形態のハードウエア構成を示す図である。
【図8】本発明の音声信号または楽音信号の処理装置の実施の一形態の動作を説明する処理ステップのメインフローチャートおよび割り込み処理のフローチャートである。
【図9】「操作パネル設定」に関するフローチャートである。
【図10】図9のS62「ハーモニーの設定」ステップのフローチャートである。
【図11】図9のS71「その他の指定された処理」ステップのフローチャートである。
【図12】図8のS53「演奏」ステップのフローチャートである。
【図13】図12のS122「キーオンイベントに対応した音声,楽音信号を生成」ステップのフローチャートである。
【図14】図13のS142「ハーモニー音の生成」ステップのフローチャートである。
【図15】「ピッチ検出の割り込み処理」のフローチャートである。
【図16】「音声,楽音出力とパン効果に関する割り込み処理」のフローチャートである。
【符号の説明】
1 マイクロフォン、2 効果付与部、3a,3b,7a,7b,9 ピッチ変換部、4 ピッチ検出部、5 鍵盤、6 ピッチ制御部、8 音源、10 信号出力制御部、11 操作パネル、12 機能制御部、13 パン制御部、14アンプ、15,16 スピーカ
Claims (2)
- 音声信号または第1の楽音信号である信号のピッチを検出するピッチ検出手段、第2の楽音信号を生成する楽音信号生成手段、音名同定手段、および、ピッチベンド処理手段を有し、
前記音名同定手段は、
前記ピッチ検出手段が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記信号のピッチを音名に同定するとともに、前記信号のピッチが連続的に変化しかつ同定された音名のピッチとの差がピッチベンドレンジを超えたときに、前記信号のピッチを音名に新たに同定し直すとともに再発音制御信号を出力するものであり、
前記ピッチベンド処理手段は、
前記信号のピッチと前記音名同定手段により同定された音名のピッチとの差に応じて、前記楽音信号生成手段が生成する第2の楽音信号のピッチを、前記音名同定手段により同定された音名のピッチを中心音高として、前記信号のピッチに追従させるものであり、
前記楽音信号生成手段は、
前記ピッチ検出手段が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記音名同定手段により同定された音名で、かつ、該ピッチベンド処理手段により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して発音させるとともに、
前記音名同定手段から再発音制御信号を入力したとき、前記第2の楽音信号を消音させるとともに、前記音名同定手段により新たに同定し直された音名で、かつ、前記ピッチベンド処理手段により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して再発音させ、かつ、再発音の前後で前記第2の楽音信号の振幅エンベロープの大きさを略一致させるものである、
ことを特徴とする音声信号または楽音信号の処理装置。 - 音声信号または第1の楽音信号である信号のピッチを検出するピッチ検出機能、第2の楽音信号を生成する楽音信号生成機能、音名同定機能、および、ピッチベンド処理機能を有し、
前記音名同定機能は、
前記ピッチ検出機能が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記信号のピッチを音名に同定するとともに、前記信号のピッチが連続的に変化しかつ同定された音名のピッチとの差がピッチベンドレンジを超えたときに、前記信号のピッチを音名に新たに同定し直すとともに再発音制御信号を出力するものであり、
前記ピッチベンド処理機能は、
前記信号のピッチと前記音名同定機能により同定された音名のピッチとの差に応じて、前記楽音信号生成機能が生成する第2の楽音信号のピッチを、前記音名同定機能により同定された音名のピッチを中心音高として、前記信号のピッチに追従させるものであり、
前記楽音信号生成機能は、
前記ピッチ検出機能が初めて前記信号のピッチを検出したとき、前記音名同定機能により同定された音名で、かつ、該ピッチベンド処理機能により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して発音させるとともに、
前記音名同定機能から再発音制御信号を入力したとき、前記第2の楽音信号を消音させるとともに、前記音名同定機能により新たに同定し直された音名で、かつ、前記ピッチベンド処理機能により前記信号のピッチに追従させたピッチで前記第2の楽音信号を生成して再発音させ、かつ、再発音の前後で前記第2の楽音信号の振幅エンベロープの大きさを略一致させるものである、
ことを特徴とする、音声信号または楽音信号の処理機能をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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