JP3617186B2 - プラスチックの油化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチック、特にポリオレフィンおよびポリスチレンを含む混合プラスチックを加熱分解して油化し、油状物を得るプラスチックの油化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックを熱分解して油化する方法としてシリカ・アルミナ、ゼオライトなどの固体酸触媒を使用する方法が知られている(例えば、特開昭48−967号、同48−43075号、同59−111815号など)。このような固体酸触媒はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含むプラスチックの油化に効果が高いとされている。
【0003】
しかし、従来の方法において用いられている一般の固体酸触媒は触媒活性が十分とは言えず、油化速度は不十分であった。特に、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含むプラスチック中にポリスチレンが含まれている混合プラスチックを油化する場合には、触媒の活性が低下するため効率よく油化を行うことができない。
【0004】
特開昭49−20284号には、触媒に鹿沼土を用いて、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンおよび塩化ビニルの割合が3/3/2/2である混合プラスチックの油化を行うと、ポリエチレン、ポリプロピレン単独の油化の場合に比べて触媒の活性が低下することが示されている。活性の低下した触媒は、この表面にカーボンが付着しており、この劣化触媒を600℃で焼成して再生する方法が示されている。
【0005】
一方、特開平6−220458号には、ポリスチレンについて油化を行う際、溶融物を熱分解して、ガス成分を分離除去した後、油状物を加熱炉でガス化して触媒と接触させて軽質化する方法が示されている。この方法では最初の熱分解で生成する軽質のガス成分を除去することにより、このガス成分が触媒によりさらに軽質の成分に分解されて、油状物の生成量が低下するのを防止している。このため、混合プラスチックの油化における触媒の活性低下については何ら考慮されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、効率よく油化を行うことができるプラスチックの油化方法、特にポリオレフィンのほかポリスチレンを含む混合プラスチックでも効率よく油化を行うことができるプラスチックの油化方法を提案することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のプラスチックの油化方法である。
(1) 粉末X線回折法によって測定された回折線スペクトルの強度から下記の計算式(1)によって求められた結晶化度が5%以下、シリカとアルミナとの重量比(SiO2/Al2O3)が90/10〜65/35、酸価が0.4mgKOH/g以下のシリカ・アルミナ触媒を、金属イオン処理した金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒の存在下に、
プラスチックを接触熱分解して油状物を製造することを特徴とするプラスチックの油化方法。
【数2】
結晶化度=[S1/(S1+S2)]×100(%) …(1)
(式中、S1は回折角2θの範囲が22〜42度の範囲にあるスペクトルの面積、S2は回折角2θの範囲が20〜70度の範囲にあるスペクトルの面積である。)
(2) シリカ・アルミナ触媒は、シリカとアルミナとの重量比(SiO2/Al2O3)が80/20〜70/30であることを特徴とする上記(1)記載のプラスチックの油化方法。
(3) シリカ・アルミナ触媒は、酸価が0.1mgKOH/g以下であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のプラスチックの油化方法。
(4) シリカ・アルミナ触媒は、比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
(5) 金属イオンが3、7、8、9、10、11または12族の金属イオンであることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
(6) 金属イオンが銅イオンまたは鉄イオンであることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
(7) プラスチックがポリオレフィンおよびポリスチレンを含む混合プラスチックであることを特徴とする上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
【0008】
本発明において油化の対象となるプラスチックは特に制限されず、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれのものでもよいが、ポリオレフィンを含むもの、特にポリオレフィンを主要成分として含むものが対象として適している。
上記熱可塑性樹脂としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン(PO)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA、ナイロン)およびポリカーボネート(PC)等があげられる。また上記熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂およびポリウレタン(PU)などがあげられる。これらのプラスチックは単独でも、あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0009】
上記プラスチックの中では、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンおよびこれらの混合物、あるいはこれらのポリオレフィン60〜99重量%、好ましくは70〜90重量%と、ポリスチレン40〜1重量%、好ましくは30〜10重量%とを含むプラスチックの混合物(混合プラスチック)が好適である。
【0010】
また油化の対象となるプラスチックとしては、都市ごみ、産業廃棄物などに含まれる廃プラスチックがあげられる。このような廃プラスチックは、一般に各種プラスチックが混合された状態で排出されるが、このような混合プラスチックは予め選別してもよく、選別しないでそのまま油化を行ってもよい。
【0011】
油化の対象となるプラスチックには、いわゆる樹脂に分類されるものの他に、ワックス、ゴム、エラストマーなども含まれる。これらの具体的なものとしては次のものなどがあげられる。
・エチレン系ワックス状重合体もしくはグリース状重合体。
・プロピレン系ワックス状重合体もしくはグリース状重合体、例えばアタクチックポリプロピレン。
・合成ゴム、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ポリブタジエンゴム(BR)およびそれらの架橋物(加硫物)、熱可塑性エラストマー、例えばエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム/ポリエチレン組成物の部分架橋物、スチレン−ブタジエン共重合体水素化物および通称「石油樹脂」等の合成「炭化水素樹脂」など。
【0012】
本発明で使用する金属イオン処理する前のシリカ・アルミナ触媒は、粉末X線回折法によって測定された回折線スペクトルの強度から、前記計算式(1)によって求められる結晶化度、すなわち粉末X線回折法によって測定されたチャートに見られる回折角2θの範囲が22〜42度の範囲にあるスペクトルの面積(S1)、および回折角2θの範囲が20〜70度の範囲にあるスペクトルの面積(S2)から、前記計算式(1)によって求められる結晶化度が5%以下、好ましくは1%以下のシリカ・アルミナである。
【0013】
そして上記シリカ・アルミナのシリカとアルミナとの重量比(SiO2/Al2O3)は(90/10)〜(65/35)、好ましくは(80/20)〜(70/30)であり、酸価は0.4mgKOH/g以下、好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0014】
また本発明で使用する金属イオン処理する前のシリカ・アルミナ触媒としては、BET法により測定した比表面積が400m2/g以上、好ましくは500m2/gのシリカ・アルミナが望ましい。
本発明で使用する金属イオン処理する前のシリカ・アルミナ触媒は、前記各物性値が前記一般的な範囲にあるものが使用できるが、前記物性値が全て好ましい範囲にあるシリカ・アルミナが最も好ましい。しかし特定の物性値が好ましい範囲にあり、かつ他の物性値が一般的な範囲にあるシリカ・アルミナも好ましいものとして使用できる。
【0015】
上記のようなシリカ・アルミナ触媒を金属イオン処理するには、下記に例示する金属化合物の水溶液に、シリカ・アルミナ触媒を浸漬し、ろ過して乾燥することによって達成され、必要に応じて焼成することもできる。これにより本発明で使用する金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒が得られる。
【0016】
金属化合物の水溶液の濃度は0.01〜50重量%の範囲で適宜選択されるが、0.1〜20重量%のものがイオン化濃度として好ましい。金属化合物の水溶液に対するシリカ・アルミナ触媒の浸漬は、室温〜200℃で0.1〜20時間程度実施されるが、50〜150℃で0.2〜6時間の浸漬が好ましい。また、ろ過後の乾燥は室温〜200℃で0.1〜40時間行われるが、50〜150℃で0.5〜20時間の乾燥が好ましい。必要に応じて行われる焼成は50〜800℃で0.1〜40時間、好ましくは100〜700℃で0.5〜10時間の範囲で行われる。
【0017】
金属イオンの種類としては、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による族番号1〜18で表示される長周期型の元素の周期表において3、7、8、9、10、11または12族に属する金属のイオンなどがあげられる。具体的には、マンガン、テクネチアム、レニウム等の7族の金属のイオン;鉄、ルテニウム、オスミウム等の8族の金属のイオン;コバルト、ロジウム、イリジウム等の9族の金属のイオン;ニッケル、パラジウム、白金等の10族の金属のイオン;銅、銀、金等の11族の金属のイオン;亜鉛、カドミウム、水銀等の12族の金属のイオンなどがあげられる。これらの中では、銅イオン、鉄イオンが好ましい。
【0018】
前記金属化合物の具体的なものとしては、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、硝酸ランタン、硝酸鉄、塩化銅、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸マンガン、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、酢酸パラジウム、塩化ロジウム、塩化ルテニウムなどがあげられる。
【0019】
シリカ・アルミナ触媒を金属イオン処理した場合のシリカ・アルミナの構造がどのように変化するかは明らかではないが、通常シリカ・アルミナのプロトンと金属イオンが交換するものと考えられ、場合によってはシリカ・アルミナ骨格の一部と金属イオンが交換するものと考えられる。
【0020】
本発明の方法によりプラスチックを油化するには、前記金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒の存在下に、前記プラスチックを接触熱分解する。これによりプラスチックが油化し、油状物が得られる。分解温度は150〜600℃、好ましくは250〜500℃、反応時間は0.1min〜5hrに設定するのが望ましい。反応系の雰囲気は本反応を妨害しない雰囲気であれば何れでも良く、例えば窒素雰囲気下で分解を行うことができる。
金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒の使用量は、プラスチックに対して0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%とするのが望ましい。
【0021】
プラスチックの熱分解に用いる反応装置は槽式、スクリュー式、パイプ式等の何れの形式でもよい。分解反応装置の具体例としては、管内に搬送用スクリューを備えた管型分解炉内であって、油状化対象のプラスチックを150〜600℃、好ましくは250〜500℃に加熱する機構を備えた装置があげられる。この型の分解反応装置は連続的分解能力を備えていることから、多量のプラスチックが定常的(継続的)に集積される処理施設に好適である。
【0022】
本発明の方法では、特定の物性値を有するシリカ・アルミナを金属イオン処理した金属イオン処理シリカ・アルミナを触媒として使用しているので、プラスチックを効率よく油化することができる。特に、ポリオレフィンのほか、ポリスチレンを含む混合プラスチックを油化する場合においても、効率よく油化することができる。
【0023】
本発明の方法により得られる油状物は燃料、原料、その他の任意の用途に利用することができる。シリカ・アルミナ触媒は油状物に混入した状態にしてもよいが、分離回収して再利用することもできる。
【0024】
【発明の効果】
本発明のプラスチックの油化方法は、特定の物性値を有するシリカ・アルミナ触媒を金属イオン処理した触媒の存在下にプラスチックを接触熱分解しているので、プラスチック、特にポリオレフィンおよびポリスチレンを含む混合プラスチックであっても、油化を効率よく行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施例について説明する。
実施例1
《触媒の調製》
前記計算式(1)により求めた結晶化度が0%、SiO2/Al2O3の重量比が71/29、触媒1gに50mlの水を加え、攪拌30分煮沸、ろ過後にろ液を0.01molKOH水溶液で滴定した酸価が0mgKOH/g、BET法で測定した表面積が510m2/gの合成シリカ・アルミナ〔触媒化成工業(株)製、触媒化成HA〕10gを、18.8gの硝酸銅を100mlの水に溶解した水溶液100mlに加え、50℃で0.5時間攪拌した。
【0026】
次に固形物を濾過し、100mlの蒸留水で3回洗浄した。これを50℃、 の減圧下に乾燥し、10.1gの触媒を得た。この硝酸銅で処理したシリカ・アルミナを錠剤成型器で成形した後粉砕し、18〜50メッシュの粒径のものを分別して下記のプラスチック油化反応に使用した。
【0027】
《プラスチックの油化反応》
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンを含む混合プラスチック(PE/PP/PSの重量比=50/20/30)10gを380℃に加熱して溶融し、これに3重量%の量に相当する上記硝酸銅で処理したシリカ・アルミナ(0.3g)を添加し、その後430℃まで昇温した。直ちに油状の分解油が留出し始め、8.7分後に8mlの油が留出した。8ml留出するまでの平均の留出速度は0.922ml/minである。反応の結果留出した分解油は6.95g、反応器に残った残渣量は2.14gであった。
【0028】
比較例1
実施例1と同様の混合プラスチック10gを380℃に加熱して溶融し、これに実施例1で用いた硝酸銅で処理する前の合成シリカ・アルミナ0.3gを添加し、その後430℃まで昇温した。直ちに油状の分解生成物が留出し始め、16.9分間に8mlの油が留出した。8ml留出までの平均の留出速度は0.473ml/minである。反応の結果留出した油は6.72g、反応器に残った残渣量は2.56gであった。
【0029】
以上の結果から、銅イオンで処理したシリカ・アルミナ触媒を用いて油化を行った実施例1は、銅イオン処理を行っていない比較例1に比べて分解油の油化速度が速く、銅イオンで処理した触媒の方が油化促進効果が高いことがわかる。
Claims (7)
- 粉末X線回折法によって測定された回折線スペクトルの強度から下記の計算式(1)によって求められた結晶化度が5%以下、シリカとアルミナとの重量比(SiO2/Al2O3)が90/10〜65/35、酸価が0.4mgKOH/g以下のシリカ・アルミナ触媒を、金属イオン処理した金属イオン処理シリカ・アルミナ触媒の存在下に、
プラスチックを接触熱分解して油状物を製造することを特徴とするプラスチックの油化方法。
【数1】
結晶化度=[S1/(S1+S2)]×100(%) …(1)
(式中、S1は回折角2θの範囲が22〜42度の範囲にあるスペクトルの面積、S2は回折角2θの範囲が20〜70度の範囲にあるスペクトルの面積である。) - シリカ・アルミナ触媒は、シリカとアルミナとの重量比(SiO2/Al2O3)が80/20〜70/30であることを特徴とする請求項1記載のプラスチックの油化方法。
- シリカ・アルミナ触媒は、酸価が0.1mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチックの油化方法。
- シリカ・アルミナ触媒は、比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
- 金属イオンが3、7、8、9、10、11または12族の金属イオンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
- 金属イオンが銅イオンまたは鉄イオンであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
- プラスチックがポリオレフィンおよびポリスチレンを含む混合プラスチックであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のプラスチックの油化方法。
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