JP3616717B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温ヒートシール性及び接着性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。更に詳しくは、熱可塑性樹脂の容器、シート等に加熱接着し、その後、剥離する際に、容器、シート基材から容易に剥離可能な熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂は、外観、機械的強度、成形性、包装作業性、経済性等に優れていることから、各種包装容器に広く用いられている。
これらの容器は、乳製品、菓子、豆腐、清涼飲料等の食品を充填し、これを熱封着した包装容器が主流として用いられ、これら包装容器に対する要求が多様化されるに従い、内容物の保護性だけでなく、使用時に容易に開封が可能な、接着強度が2,000g/15mm以下のものであることが求められている。
従来、これら容器の熱封着材料としては、ホットメルト接着剤や溶液型接着剤をコートしたものが用いられているが、これらは開封後にシール剤が容器側に付着し、食品衛生上に問題があった。また、熱封着材料に包装容器と同一の基材を用いた場合は、接着強度が3,000g/15mm以上の完全な封着状態となり、内容物保護性は十分であるが、開封が困難となり、実用的には不十分なものとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
こうした欠点を改良するため、近年、内容物保護性と易開封性を兼ね備えた材料が種々提案されている。この様な材料としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体と粘着付与剤とからなる組成物が一般に知られている。
しかしながら、内容物保護性の観点から、容器との接着強度を満足させるために、比較的高い酢酸ビニル含量のエチレン・酢酸ビニル共重合体、又は、より多くの粘着付与剤を必要とした。
しかしながら、この様な高い酢酸ビニル含量のエチレン・酢酸ビニル共重合体及び粘着付与剤の使用は、フィルム成形性及び成形後のフィルムのブロッキング等の問題が生じたり、また、高酢酸ビニル含量のエチレン・酢酸ビニル共重合体は融点が低く、耐熱性に乏しいことから、フィルム成形加工温度が低温度に限定されてしまい、常に常温近傍で使用される包装容器においては使用することができるが、ボイル等の処理が必要な包装容器には適さず、例えば90℃、30分間での熱処理における耐熱性に実用上不十分なものであった。
そこで、本発明者は上記欠点を改良する目的で、先に、オレフィン系重合体よりなる熱可塑性樹脂組成物(特開平6−293845号公報参照)を提案したが、エチレン・酢酸ビニル共重合体系のものと比べると、低温ヒートシール性に劣るものであった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題点を改良することを目的として検討を重ねた結果、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂、オレフィン系エラストマー及びスチレ系エラストマーより選ばれた少なくとも1種のエラストマー、及び、粘着付与剤からなる樹脂組成物が、上記問題点を全て改良することができるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記の成分(A)〜(C)からなることを特徴とするものである。
成分(A): 密度が0.890〜0.910g/cm3 、MFR(JIS K7210に準拠し190℃、2.16kg荷重で測定)が0.1〜30g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が2.5以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂 40〜90重量部
成分(B): 密度が0.850〜0.880g/cm3 であるオレフィン系エラストマー 3〜40重量部
成分(C): 粘着付与剤 3〜20重量部
【0005】
【発明の実施の形態】
[I]熱可塑性樹脂組成物
(1) 構成成分
(A) エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂(成分(A))
物 性
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂は、JIS K7112による密度が0.890〜0.910g/cm3 、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)によるMFRが0.1〜30g/10分、好ましくは1〜25g/10分、特に好ましくは2〜20g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が2.5以下の物性を示すものである。該密度が上記範囲未満ではフィルム表面にべたつきが生じ、上記範囲を超過すると低温ヒートシール性が不良となり、実用上から好ましくない。また、MFRが上記範囲未満ではフィルム成形時に膜切れを起こし、上記範囲を超過するとフィルム成形性が不安定となる。また、Q値が上記範囲を超過するとフィルム外観が悪化する。
【0006】
種 類
上記エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂としては、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の炭素数3〜12、好ましくは3〜8程度のα−オレフィンとの共重合体樹脂を挙げることができる。該共重合体はランダム、ブロック或いはグラフトと、どのような結合様式で製造されたのものでも使用できる。
これらのエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂は2種以上を混合して用いることもできる。
これらエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体樹脂、エチレン・ブテン−1共重合体樹脂、エチレン・ヘキセン−1共重合体樹脂、エチレン・オクテン−1共重合体樹脂等をその代表的なものとして挙げることができる。中でも、エチレン・ブテン−1共重合体樹脂、エチレン・オクテン−1共重合体樹脂が機械的特性の点から好ましい。
【0007】
(B) エラストマー(成分(B))
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するエラストマーとしては、以下に示すオレフィン系エラストマーが用いられる。
(a) オレフィン系エラストマー
上記オレフィン系エラストマーとしては、JIS K7112による密度が0.850〜0.880g/cm3 、好ましくは0.855〜0.875g/cm3 、特に好ましくは0.860〜0.875g/cm3 の物性を示すものである。
かかるオレフィン系エラストマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等のα−オレフィン相互の共重合体、或いは、これらα−オレフィン相互と5−エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンとの共重合体、或いは、1−ヘキセン等の高級α−オレフィンの単独重合体であって、ムーニー粘度(ML1+4100℃)が5〜400、好ましくは10〜300、特に好ましくは10〜200のエラストマー状の重合体である。
ムーニー粘度が上記範囲未満のものでは組成物の物性が低下する傾向があり、上記範囲を超過すると加工性が悪化する傾向があるので好ましくない。
これらのオレフィン系エラストマーの中では、エチレン含有量が50〜90重量%、好ましくは30〜85重量%のエチレン系エラストマーが品質、安定性及び臭気の点から特に好ましい。
【0008】
かかるエチレン系エラストマーの具体例を挙げると、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・ブテン−1共重合ゴム、エチレン・ヘキセン−1共重合ゴム、エチレン・オクテン−1共重合ゴム、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合ゴム等を挙げることができる。
上記非共役ジエンの具体例としては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、レジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等を挙げることができる。
これらエチレン系エラストマーの中では成分(A)及び成分(C)との相溶性の点からエチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・ブテン−1共重合ゴム、エチレン・ヘキセン−1共重合ゴム、エチレン・オクテン−1共重合ゴムを用いることが好ましい。
【0011】
(C) 粘着付与剤(成分(C))
種 類
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する粘着付与剤としては、軟化点(環球法)が80〜180℃である脂肪族、脂環族或いは芳香族の高分子低重合体であり、その具体例を挙げると、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、重合ロジン等のロジン系樹脂;α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール重合体等のテルペン系樹脂;C5 〜C9 の石油樹脂及びそれらの水素添加物を挙げることができる。中でも、色相、臭気の点でC9 留分を主原料とする芳香族系炭化水素樹脂を水素添加したものが好ましい。
これらの粘着付与剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0012】
物 性
更に、赤外分光光度計を用いて1,604cm−1の吸光度<A1>と890cm−1の吸光度<A2>から求めた吸光度比<A1>/<A2>で表される、芳香族核への水素添加率<A1>/<A2>が0.1〜5.0の水添芳香族系炭化水素樹脂がヒートシール性の点から特に好ましい。
これらの粘着付与剤の軟化点(環球法)は、一般には80〜180℃のものを用いることができるが、接着性及び取扱いが容易な点で軟化点は90〜160℃、特に100〜150℃のものが好ましい。しかし、用途によっては低軟化点のものと高軟化点のものを混合して用いることも有効であり、軟化点に限定されるものではない。
【0013】
(D)付加的成分(任意成分)
上記成分(A)〜(C)の必須成分の外に付加的成分(任意成分)を本発明の効果を著しく損なわない範囲内で添加することができる。
該付加的成分としては、例えば、他の熱可塑性樹脂、ゴム物質、無機フィラー、顔料、可塑剤、各種安定剤(酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤)等を挙げることができる。
(2)配合割合
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する上記各成分の配合割合は、成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂が40〜90重量部、好ましくは45〜85重量部、特に好ましくは50〜80重量部、成分(B)のオレフィン系エラストマー3〜40重量部、好ましくは4〜38重量部、特に好ましくは5〜35重量部、及び成分(C)の粘着付与剤が3〜20重量部、好ましくは4〜18重量部、特に好ましくは5〜15重量部である。
また、成分(B)のオレフィン系エラストマーと成分(C)の粘着付与剤の割合(重量比)が、成分(B)/成分(C)≧1、特に1〜3を満足するものであることが好ましい。
【0014】
上記成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂の含量が上記範囲未満では成形性の点で不十分であり、上記範囲を超過するとヒートシール性の点で満足なものが得られない。また、成分(B)のオレフィン系エラストマーの含量が上記範囲未満では接着性が不十分であり、上記範囲を超過すると成形加工性の点で本発明の目的を達成することができない。更に、成分(C)の粘着付与剤の含量が上記範囲未満では接着力発現の点で不十分であり、上記範囲を超過すると取扱い難くなる。
更に、成分(B)のオレフィン系エラストマーと成分(C)の粘着付与剤の割合(重量比)が、成分(B)/成分(C)≧1を満足しないものは接着強度の経時における安定性に満足するものが得られ難い傾向がある。
【0015】
(3) 組成物の製造
(a) 組成物の調製
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の各成分をドライブレンドして直接成形することによっても得ることができるが、種々の公知の手法、例えば、タンブラーブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、混合後に単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の通常の混練機で溶融混練し、造粒或いは粉砕する手法により調製することができる。
得られた組成物は成形に供される。
【0016】
(b) 成 形
上記組成物をインフレーション法、Tダイ法等によるフィルム成形、上記組成物をアルミニウム箔、紙、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基材層にラミネートする押出ラミネート成形、或いは、各種基材と上記組成物を共押出インフレーション、共押出キャスト成形等種々の方法で成形することができる。
【0017】
【実施例】
以下に示す実験例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
[I] 物性の測定方法と評価方法
(1) 物性の測定方法
(A) 密度:JIS K7112に準拠
(B) MFR:JIS K7210に準拠
(C) Q値:ゲルパーミェーションクロマトグラフィーを用いて、以下に示す測定条件で測定し、重量平均分子量/数平均分子量よりQ値を求めた。
機種:Waters Model 150C GPC
溶媒:o−ジクロロベンゼン
流速:1ml/分
温度:140℃
測定濃度:2mg/ml
注入量:200μl
カラム:昭和電工(株)製 AD80M/S
【0018】
(2) 評価方法
(A) ヒートシール強度:
熱板式ヒートシーラーを用い、接着面5mm幅、接着圧力2kg/cm2 、時間1秒、シール温度100〜180℃、ヒートシールした後、インストロン型引張試験機を用い、サンプル幅15mm、引張速度300mm/分でヒートシール強度を23℃で測定した。
【0019】
[II] 実験例
実施例1
熱可塑性樹脂組成物の製造
エチレン・ヘキセン−1共重合体樹脂(密度:0.895g/cm3 、MFR:3.5g/10分、Q値:1.9)86重量部、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(密度:0.860g/cm3 )7重量部、粘着付与剤として脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業(株)製「アルコンP−140」;環球法軟化点140℃)7重量部を混合し、40mmφ単軸押出機(L/D=23)を用い、樹脂温度180℃で溶融混練して、MFR:3g/10分の熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。
熱可塑性樹脂フィルムの製造及び評価
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを35mmφTダイ成形機を用いて、成形温度230℃で30μm厚みのフィルムを成形した。
該熱可塑性樹脂組成物フィルムと12μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムをポリエチレン20μmを介してサンドラミネーションして貼り合わせ、熱可塑性樹脂組成物層/ポリエチレン層/ポリエチレンテレフタレート層の3層からなる積層フィルムとした。
この積層フィルムの熱可塑性樹脂組成物層を接着面とし、各種基材とヒートシールした。ヒートシール強度の結果を表1に示す。
【0020】
実施例2及び比較例1〜3
表1に示す熱可塑性樹脂組成物について実施例1と同様にして評価した。
【0021】
参考例1〜2
実施例1と2の組成物を用いた積層フィルムをポリスチレンシートにヒートシールし、40℃、1週間放置した後のヒートシール強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
(i) エチレン・ヘキセン−1共重合体樹脂(エクソンケミカル社製「EXACT 4050」、密度:0.895g/cm3 、MFR:3.5g/10分、Q値:1.9)
(ii) 低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製「ノバテックLD LS500」、密度:0.92g/cm3 、MFR:4g/10分、Q値:10)
(iii) エチレン・プロピレン共重合体(日本合成ゴム社製 EP02P)、密度0.86g/cm3 、ML1+4100℃:24
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】
このような本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の各種包装容器等に使用される基材に対して良好な低温ヒートシール性、接着性を有し、フィルム、シート等への良好な成形加工性等の優れた性質を有するものであり、極めて実用性の優れたものである。
Claims (2)
- 下記の成分(A)〜(C)からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
成分(A): 密度が0.890〜0.910g/cm3 、MFR(JIS K7210に準拠し190℃、2.16kg荷重で測定)が0.1〜30g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が2.5以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂 40〜90重量部
成分(B): 密度が0.850〜0.880g/cm3 であるオレフィン系エラストマー 3〜40重量部
成分(C): 粘着付与剤 3〜20重量部 - 成分(B)と成分(C)の割合(重量比)が、成分(B)/成分(C)≧1である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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