JP3616397B2 - 抗原特異的tリンパ球反応の誘導 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、免疫学の分野に関し、特に適切に示された抗原を用いてTリンパ球を処理することによって好ましくはTリンパ球の未感作培養において抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法、その方法によって得られる抗原特異的Tリンパ球、それを含む薬剤組成物、およびT細胞免疫原性ペプチドを確認する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗原特異的Tリンパ球、特に、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(以下、CTLと記す)は、抗原といわれているウィルスやバクテリアなどに由来する病気に対する哺乳類、通常ヒトの保護のための薬剤の組成物において有用で有り得る。抗原特異的Tリンパ球は、自己由来の抗原に対して特異性を有するとき、たとえば前述の自己由来の抗原の発現増加や、前述の自己由来の抗原の変異種の発現によって通常の細胞とは異なった細胞である腫瘍細胞に対して治療剤として有用で有り得る。
【0003】
異種のあるいは自己由来の抗原のいずれかに由来し、抗原提示細胞の表面に位置する主要組織適合抗原複合体(MHC)分子と結合することができ、またT細胞反応を誘導することができるペプチドは、接種をする目的あるいは治療目的のいずれかのための薬剤の組成物においてもまた効用を有することも有り得る。
【0004】
インビトロにおける抗原特異的Tリンパ球反応の開始は、通常免疫された動物やヒトからのリンパ球集団を要求する。何故なら、未感作な(免疫されていない)個体における抗原特異的T細胞の前駆細胞の発生頻度が、非常に低いからである。たとえばマウスにおいて、全ての脾臓細胞のほぼ1/106あるいは脾臓のT細胞の1/3×105が抗原特異的CTL前駆細胞である(参照1)。したがって、インビトロにおける抗原特異的T細胞反応の誘導は、通常インビボにて抗原あるいは抗原パルスされた(たとえばウィルスを感染させた)細胞の接種を要求する。次に、インビトロにおいて二次的に刺激を与えられることを要求する。インビボでの感作の要求を回避することは、特に、ウィルスや腫瘍が会合したペプチドなどの、他の抗原に対するCTL反応の発生のために好ましい。何故なら、接種を必要としなければ、CTL反応を導く能力を有しているために与えられたMHCクラスI対立遺伝子に結合する能力を有するペプチドの迅速な選別が可能になるだろうからである。本発明は、CTL反応誘導を可能とするMHC結合ペプチドを同定するための、インビボでの感作の要求を回避することを目的とする。CTL反応の開始は、CD8+ CTL前駆細胞(参照2〜5)がMHCクラスI分子の抗原提示溝に存在している小さなペプチドを認識することを要求する。小さなペプチドとは、長さにおいて8〜11個のアミノ酸である。通常、CD4+ ヘルパーT細胞は、最適なCTL反応のために要求される(参照6,7)。今までウィルス誘導性抗原提示細胞(以下、APCと記す)や、ウィルスのペプチドが装填されたAPCに対するインビトロでのCTL反応誘導は、ウィルスに感染されたまたはウィルスのペプチドが充填された樹状細胞(DC)で唯一成功している(参照8)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
先に指摘したように今までは、インビトロのCTL反応では、ウィルス誘導性抗原掲示細胞(APC)あるいはウィルスのペプチドを装填したAPCに対するインビトロでのCTL反応の誘導は、ウィルスに感染され、あるいは活性ペプチドが装填された樹状細胞で成功していただけであった。我々は、ペプチドを装填したいわゆる「(抗原)プロセッシング」欠損細胞もまた同じ目的に使われることができることを発見した。後者の方法論は、我々によって最初に文献(9)で公開されたのだか、これが本特許出願の主題である。
【0006】
本発明の最重要点は、抗原プロセッシング欠損細胞の使用が刺激信号の増大を引き起こすので、第1次ペプチド特異的CTL反応が、非常に少ない数の特異的なペプチドを認識するCTL前駆細胞によって誘導されることが今や可能になったということである。刺激信号が非常に増大する理由は、外来のペプチドを装填した抗原プロセッシング欠損細胞において効果的に特異的ペプチド−MHCクラスIの密度が大変増加することにある。これは我々の出版物(9)および実施例1ならび2において述べられている。
【0007】
現在我々は、ペプチドを装填したネズミの抗原プロセッシング欠損RMA−S細胞およびペプチドを装填したヒトの抗原プロセッシング欠損T2細胞両者に対して第1次CTL反応を誘導することができる(Melief&Kast、非公開の所見)。第1次ペプチド特異的CTL反応を誘導することがペプチドを装填した抗原プロセッシング欠損細胞系で出来、親細胞系で出来ない重要な理由は、前者は後者よりも関連ペプチドを装填したMHCクラスI分子をより多く発現するからである。標的細胞の感作に必要な濃度よりも、より高い濃度のペプチドが、CTL反応を開始することに必要とされる。またCTL上のT細胞レセプタおよびCD8分子は、適切なペプチドで満たされた同じMHC分子と相互に作用し合わなければならないということが報告されている(参照10,11)。
【0008】
ペプチド誘導性の第1次CTL反応の生物学的関連性は、この観点からペプチド誘導性の第1次CTLが、能率的にウィルス感染細胞を溶解することにつながるということを示している。さらに、第1次CTL反応の誘導を可能にするペプチドの1つであるセンダイウィルスの16merのペプチド(アミノ酸が16個のペプチド)HGEFAPGNYPALWSYAの接種は、他の致命的なセンダイウィルスの投与に対する防御と関連してCTL記憶を生体内に誘導する(参照12)。同様に我々は、ウィルスのペプチドに特異的なCTLが、大きな腫瘍を撲滅することができるということを示している(参照13,14)。
【0009】
前述したネズミ由来の変異種である抗原プロセッシング欠損細胞系RMA−Sは、親細胞系のRMAと比べて温度37℃での細胞表面上のH−2DbKbMHCクラスIの重鎖およびβ2−ミクログロブリンの発現量が10%以下である(参照15,16)。19℃〜33℃へ温度を下げたRMA−S細胞の培養によってMHCクラスI分子の細胞表面での発現が顕著なレベルとなり、発現されたMHCクラスI分子のごくわずかが内因性のペプチドと結合している。これらのMHC分子の大部分は、ペプチドを結合していない空の状態である。以後、このようなMHC分子の状態を中空と呼ぶ。これらの中空MHC分子は、MHC結合ペプチドを加えることにより安定化させることができる。最近の証拠により、MHCクラスI分子に内生的ペプチドを装填することに失敗したのは、MHCクラスII領域内に位置するペプチドポンプをコードする遺伝子であるHAM−2における突然変異によるものであることが結論として示されている。
【0010】
内生的ペプチドによる競合を欠如させた状態にすると、中空MHCクラスI分子は、選択された外生的MHCクラスI結合ペプチドで効率よく画一的に満たされることができる。外生的ペプチドとの培養によってMHCの安定化と連動して達成されるMHCクラスIの発現レベルは、親細胞のMHCクラスIのレベルには決して達しない。しかしながら、抗原提示を考慮すると、単一の免疫原性ペプチドで画一的に装填することによって非常に補われる。
【0011】
本発明の目的は、さらに便利で、再現性のあるTリンパ球反応を導くための方法を提供することであり、また特にインビボにおいて免疫する必要のない、MHCクラスIが結合されているペプチドに対して第1次CTL反応を導くための方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Tリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法を提供し、その方法は、中空のMHC分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫主要組織複合性(MHC)結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクル存在下で、特異的Tリンパ球反応を誘導する条件下で、Tリンパ球を培養する工程と、随意に培養物から抗原に特異なTリンパ球を単離する工程と、前記単離されたTリンパ球を培養する工程とを含むことを特徴とする抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法である。
【0013】
また本発明は、中空のMHC分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする。
また本発明は、抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞は、約20℃〜約37℃の温度でペプチドを装填されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、Tリンパ球培養において抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を誘導する方法を提供し、その方法は、中空のMHCクラスI分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクル存在下で、特異的CTL反応を誘導する条件下で、CD8+T細胞前駆細胞からなるTリンパ球を培養する工程と、随意に培養物から抗原特異的CTLを単離する工程と、前記単離されたCTLを培養する工程とを含むことを特徴とする抗原に特異なCTLを誘導する方法である。
【0015】
また本発明は、中空のMHC分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞がネズミのRMA−S細胞、またはヒトの174 CEM T2細胞を含むことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルが、さらにT細胞反応の開始を促進する分子を担持することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルが、約8〜11個のアミノ酸を有する抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドで装填されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、CD8+T細胞前駆細胞を含むTリンパ球の特異的CTL反応誘導条件下の前記培養が、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルと前記CTL反応を開始する培養を支持する基質との両者の存在下で実行されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、抗原特異的前記CTL反応は、未感作のTリンパ球培養中で誘導される第1次CTL反応であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、抗原特異的前記CTL反応は、前記T細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを得る自己抗原に特異的であることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、Tリンパ球培養における抗原特異的ヘルパーTリンパ球反応を誘導する方法を対象とし、前記方法は、中空のMHCクラスII分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスII結合ペプチドを装填する工程からなり、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルの存在で、特異的ヘルパーTリンパ球反応を誘導する条件下で、CD4+T細胞前駆細胞からなるTリンパ球を培養する工程と、随意に培養物から抗原に特異なヘルパーTリンパ球を単離する工程と、前記単離されたヘルパーTリンパ球を培養する工程とを含むことを特徴とする抗原特異的ヘルパーTリンパ球を誘導する方法である。
【0023】
また本発明は、中空のMHCクラスII分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、約10〜約18個のアミノ酸を有する抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスII結合ペプチドで装填されることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前述のTリンパ球培養中の抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法によって得られる抗原特異的Tリンパ球を提供し、前記抗原特異的Tリンパ球は、中空のMHC分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗体由来のT細胞免疫原性MHC結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填された抗原を提示ビヒクルの存在下で、特異的Tリンパ球反応を誘導する条件下で、Tリンパ球を培養する工程と、随意に培養物から抗原特異的Tリンパ球を単離する工程と、前記単離されたTリンパ球を培養する工程とを含む抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法によって得られることを特徴とする抗原特異的Tリンパ球である。
【0025】
また本発明は、薬剤組成物を対象とし、前記薬剤組成物は、中空のMHC分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗体由来のT細胞免疫原性MHC結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装荷された抗原提示ビヒクルの存在下で、特異的Tリンパ球反応を誘導する条件下で、Tリンパ球を培養する工程と、随意に培養物から抗原特異的Tリンパ球を単離する工程と、前記単離されたTリンパ球を培養する工程とを含む抗原特異的Tリンパ球を誘導する方法によって得られる前記抗原特異的Tリンパ球と、キャリアまたは希釈剤またはアジュバントとを含み、抗原に特異な高い免疫効果を有することを特徴とする薬剤組成物である。
【0026】
また本発明は、薬剤組成物を対象とし、前記薬剤組成物は、中空のMHC分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫原性MHC結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填した抗原提示ビヒクルの存在下で、特異的なTリンパ球反応を誘導する条件下で、Tリンパ球を培養する工程とを含む抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法によって得られる前記抗原由来のT細胞免疫原性MHC結合ペプチドと、キャリアまたは希釈剤またはアジュバントとを含む抗原に特異な高い免疫効果を有することを特徴とする薬剤組成物である。
【0027】
また本発明は、候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法を提供し、候補ペプチドを合成する工程と、これらの候補ペプチド抗原を与えるビヒクルによって担持される中空のMHC分子に結合できるかをテストする工程と、どのMHC結合ペプチドがTリンパ球培養においてペプチドに特異的なTリンパ球反応を誘導できるかをテストする工程とを含むことを特徴とする特徴とする候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法である。
【0028】
また本発明は、中空のMHC分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする。
【0029】
また本発明は、抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞細胞は、ネズミのRMA−S細胞またはヒトの174.CEM T2細胞を含むことを特徴とする。
また本発明は、Tリンパ球培養においてインビトロ培養により抗原特異的細胞障害性Tリンパ球を誘導する方法において、
(a)哺乳類に由来し中空のMHCクラスI分子を担持する抗原プロセッシング欠損細胞系を含む抗原提示ビヒクルに、抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを装填し、MHCクラスI結合ペプチドを装填した抗原提示ビヒクルを形成する工程と、
(b)抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドに対して抗原特異性を有する細胞障害性Tリンパ球が形成される、特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)反応を誘導する条件下で、ペプチドが装填された抗原提示ビヒクルの存在下でナイーブリンパ球前駆細胞を培養する工程とを含むことを特徴とする抗原特異的細胞障害性Tリンパ球の誘導方法である。
また本発明は、抗原特異的細胞障害性Tリンパ球を単離する工程をさらに含むことを特徴とする。
また本発明は、単離された抗原特異的細胞障害性Tリンパ球を培養する工程をさらに含むことを特徴とする。
また本発明は、中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルが、同時にT細胞反応の開始をも促進する分子を担持することを特徴とする。
また本発明は、中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルに約8〜約11個のアミノ酸を有する抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドが装填されることを特徴とする。
また本発明は、CD8+Tリンパ球前駆細胞について特異的CTL反応を誘導する条件下における前記培養工程が、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルとCTL反応の誘導を補助する物質との存在下で前記Tリンパ球前駆細胞を培養する工程をさらに含むことを特徴とする。
また本発明は、前記抗原特異的CTL反応が、ナイーブTリンパ球培養において誘導される第1次CTL反応であることを特徴とする。
また本発明は、前記CTL反応が、前記T細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドが由来する自己抗原に対して特異的であることを特徴とする。
また本発明は、細胞障害性T細胞免疫原性ペプチドを同定する方法において、候補ペプチドを抗原提示ビヒクルに接触させる工程であって、前記抗原提示ビヒクルは中空のクラスI分子を担持する哺乳類由来の細胞系を含み、候補ペプチドと抗原提示ビヒクルとが結合するのに適切な温度と時間で接触され、ペプチド結合抗原提示ビヒクルが形成される接触工程と、
前記ペプチド結合抗原提示ビヒクルの存在下でナイーブリンパ球を培養する工程と、
候補ペプチドに対する抗原特異性を有する細胞障害性Tリンパ球のアッセイ工程であって、候補ペプチドに対する抗原特異性を有する細胞障害性Tリンパ球が存在することによって候補ペプチドが細胞障害性T細胞免疫原性ペプチドであることを提示するアッセイ工程とを含むことを特徴とする細胞障害性T細胞免疫原性ペプチドの同定方法である。
また本発明は、前記抗原提示ビヒクルが抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞系であることを特徴とする。
【0030】
【作用】
本発明は、インビボおいて免疫する必要性を回避する、第1次MHC結合ペプチド特異的CTL反応を誘導する方法論を提供する。
【0031】
その方法は、内因的ペプチドでMHCクラスI分子が装填されることのない抗原プロセッシング欠損による中空のMHCクラスI分子を発現する抗原提示細胞の使用法に基づいている。結果として、これらのAPCは、単一の外因的MHCクラスI結合ペプチドを効果的に装填し得る。ヒトのβ2−マイクログロブリンの付加によって、MHC分子を装填したペプチドの発現を増加し、第1次CTL反応の誘導が向上する。
【0032】
抗原プロセシングが欠損していないペプチド装填親細胞と対照的に、外因的ペプチド装填細胞は、第1次CTL反応の誘導が可能である。本発明は、外因的ペプチドが装填されたMHC分子を利用するさらに効果的なペプチド提示の法則に基づく、免疫されていない「未感作」の個体から得られる反応性リンパ球集団による第1次T細胞反応を誘導する全ての方法論を含む。
【0033】
この方法論は、全体としてインビトロにおける処置によって、異種あるいは自己由来双方のペプチドに対してT細胞反応の誘導が可能であるMHC結合ペプチドの同定を与える。
【0034】
1.第1次T細胞反応の誘導に好適な抗原プロセシング欠損細胞系と、他の中空のMHC分子を担持する抗原提示ビヒクル
本発明は、哺乳類起源の抗原プロセッシング欠損細胞系を利用する。これらの細胞系は、MHCクラスIあるいはMHCクラスII分子の中にペプチド装填が起こるときに細胞区画の中へのペプチド輸送を担う細胞遺伝子生成物の1つが欠損している。抗原プロセッシング欠損細胞系の原型は、ネズミ起源(参照15,18)のRMA−Sと、ヒト起源(参照20)の174.CEM T2である。抗原プロセッシング欠損は、細胞表面のMHCクラスIあるいはMHCクラスII分子が非常に高い割合で内因的にプロセシングされたペプチドを有しない限り、完全である必要はない。174.CEM T2細胞系は、たとえば、抗原プロセッシングが欠損しているにも拘わらず、明らかに細胞質から小胞体の中に移行可能な、前記細胞系の細胞表面のMHCクラスI分子に結合した信号ペプチドを有する(参照21)。同様に、RMA−S細胞における抗原プロセッシング欠損は、完全でない(参照23,24)。それにも拘わらず、両方の細胞系は、これらの親細胞と対照的に、免疫原性ペプチドでMHCクラスIを適切に装填したとき第1次CTL反応の誘導が可能である。RMA−Sの場合、抗原プロセッシング欠損はMHCクラスII領域内に位置するHAM−2遺伝子に原因がある。完全なHAM−2遺伝子あるいはそのラットアナログであるMTP−2をトランスフェクションすることによって、RMA−Sにおける内因的ペプチド(参照19,24)のプロセッシングを元に戻す。174.CEM T2細胞系は、HLAクラスII領域に大きな欠失部分を有する結果として非常に類似した抗原プロセッシング欠損を有する。そしてこれは、蛋白質からの細胞質ペプチドの生成に関与する可能性を有するプロテアソームエンコード領域と同様、HAM−1および2のヒトアナログを含む。
【0035】
発明の基本法則は、外因的、すなわち外部から加えられた免疫原性ペプチドを装填し得る、そして抗原提示のための高度に効果的なビヒクルとして機能し得る中空のMHCクラスIあるいはMHCクラスII分子を有する抗原プロセッシング欠損細胞における発現である。故に、本発明は、外因的ペプチドを装填し得る中空のMHC分子を有する全ての抗原提示脂質二重膜担持ビヒクルに及ぶ。これは、全ての動物、植物、昆虫、天然のもしくは外来の中空MHC分子を担持する他の細胞、あるいは、たとえば、中空MHC分子を結合させるリポソームのような中空MHC分子を担持する人工の脂質二重膜システムを含む。本発明は、CD4+T細胞前駆細胞に対するMHCクラスII分子に結合したペプチドの提示と同様、CD8+T細胞前駆細胞に対するMHCクラスI分子に結合したペプチドの提示を含む。
【0036】
2.抗原プロセッシング欠損細胞系における中空MHC分子および抗原提示ビヒクルに含まれる他の中空MHC分子の外因的免疫原性ペプチドによる装填
抗原プロセッシング欠損細胞系と前記抗原提示ビヒクルに含まれる中空MHC分子は、無血清ビヒクル中で、定義された長さ(MHCクラスIの装填に対して8〜11個のアミノ酸;MHCクラスIIの装填に対して約10〜18個のアミノ酸)の外因的免疫原性ペプチドで装填される。MHC分子の急速な分解を防ぐため、MHC結合ペプチドとのインキュベーションの間、温度を20〜30℃に下げてもよい。ネズミ由来の抗原プロセッシング欠損細胞系RMA−SのMHCクラスI分子に装填するペプチドの場合、ペプチド装填中のこの温度低下は、細胞表面で(参照9)MHCクラスIに装填されたペプチドの最適レベルを得るのに有利である。ヒト細胞系174.CEM T2の場合、温度低下がMHCクラスI分子に結合されたペプチドのレベルを改善することはない。
【0037】
ヒトβ2−マイクロブロブリンの付加は、ネズミ由来のRMA−S細胞とヒト由来の174.CEM T2細胞との両方に関して、ペプチドが装填されたMHCクラスIの発現をさらに高める。以降の第1次CTL反応の誘導もまた高められる。
【0038】
一旦ペプチドがMHC分子に結合すると、これらのMHC分子は安定となる。この結果、独自の免疫原性ペプチドで充分に満たされて、MHC分子の細胞表面発現が増加する。
【0039】
ペプチド装填細胞は、このとき37℃の培養においてTリンパ球に対する抗原提示の準備が整う。後の抗原提示を改善するために、抗原プロセッシング欠損細胞系あるいは前記無細胞性抗原提示ビヒクルは、T細胞のCD28のためのリガンドであるB7分子、T細胞上のLFA−1のリガンドであるICAM−1あるいはICAM−2のような補助分子といったT細胞反応開始のための相互刺激的信号として作用しうる付加分子、あるいはT細胞反応の開始の効果をさらに促進する他の分子のいずれともと装填し得る。これらの相互刺激性分子の発現は、抗原プロセッシング欠損細胞系におけるトランスフェクションによって、あるいは精製された補助分子の結合などの無細胞性抗原提示ビヒクルにおける生化学的処理によって得られる。
【0040】
3.ペプチドが装填された抗原プロセッシング欠損細胞系と、あるいは他のペプチドが装填された抗原提示ビヒクルと未感作個体由来の反応性リンパ球を伴う第1次T細胞反応の誘導のための細胞培養
未感作個体由来のリンパ球は、37℃で充分な時間、少数の特異的抗原反応性前駆細胞を増加させるために、ペプチド装填抗原プロセッシング欠損細胞系あるいは抗原提示ビヒクルに含まれる他の中空のMHC分子とともに培養される。一旦、T細胞反応が始まると培養は抗原プロセッシング欠損抗原提示細胞上のペプチド提示を含む種々の方法で再刺激を受ける。またあるいは、これは、反応が特異的T細胞反応を計測するのに充分な強さであれば、培養を再刺激する必要はない。
【0041】
反応開始培養を保持するビヒクルは、無血清であっても、血清含有であってもよい。また、エクストラサイトカインあるいは他の補足物を含んでいてもいなくてもよい。
【0042】
4.T細胞反応を誘導可能なペプチドの発生源
T細胞反応開始に使用されるペプチドは、たとえば、病原菌あるいは自己由来のペプチドの配列から得られる外来ペプチドであり得る。外来ペプチドに対抗する反応開始は、病原菌に対抗する反応の標的ペプチドの同定に重要である。自己由来のペプチドに対する反応開始は、非ウィルス性で誘導される癌の免疫的な除去に関与するT細胞によって認識される標的ペプチドの同定に重要であり、自己免疫疾患に含まれるT細胞によって認識されるペプチドの同定に重要である。ペプチドが装填されたネズミ由来のRMA−S抗原提示細胞(参照9,実施例1)を用いて、T細胞反応開始が免疫優性のペプチドに対して可能であることを示した。また、腫瘍抑制分子であるp53の自己由来のペプチドに対抗するT細胞反応開始が、p53のペプチド装填174P.CEM T2抗原提示細胞(参照実施例2)で可能であることを証明した。
【0043】
【実施例】
実施例1
抗原プロセッシング欠損RMA−S細胞の表面におけるセンダイまたはアデノウィルスペプチドが装填されたTbおよびDb中空MHCクラスI分子に対する第1次CTL反応の誘導
本実施例の第1次CTL反応誘導は、1991年11月27日に発行されている(参照9)。本件特許出願に関して、この刊行物に記載されていない事項を以下に述べる。
【0044】
材料と方法
1.マウス
C57BL/6(B6,H−2b)マウスを、我々の研究所にて特定病原菌のない環境下で飼育した。エライザ(ELISA)法にて、血清学的に試験を行った結果、これら実験に使用されたマウスはセンダイウィルスを持っておらず、またセンダイウィルスに感染したことがないことが明らかとなった。
【0045】
2.ペプチド
メリフィールド(Merrifield)に従って(文献25参照)、バイオサーチ(ミリポア(Millipore),ベッドフォード(Bedford),MA)9500ペプチド合成機を用いてペプチドを合成し、PBS(リン酸緩衝溶液)または無血清のアイスコフ(Iscove)改良型ダルベッコ(Dulbecco)培地、(IMDM,フローラボラトリーズ(Flow Laboratories),アイルビン(Irvine),スコットランド)に溶解し、−20℃で保存した。Ad5 E1Aペプチド(A16:アミノ酸(aa)配列232〜247)は、H−2Db制限CTLを得るためのアデノウィルス5型の免疫優性CTLエピトープを包含し、アデノウィルスE1誘導腫瘍(参照26)を全滅させ得るCTLクローンにより認識されることが判った。また、H−2Kb制限CTL(参照12)を得るために、センダイウィルス核蛋白質の免疫優性CTLエピトープを含む合成ペプチド(S16:アミノ酸配列321〜366)を用いた。9個のアミノ酸(aa)のセンダイペプチド(S9:アミノ酸配列324〜332)だけが、高い親和性にてMHCクラスI分子(文献4参照)に結合することができる。このペプチドは、アミノ酸の数が9よりも大きい合成ペプチドを調製する際に、僅かに生成される副産物(minor species)としてもまた存在する(参照4)。各ペプチドの1文字コード配列は、S16ペプチドがHGEFAPGNYPALWSYA、S9ペプチドがFAPGNYPAL、A16ペプチドがCDSGPSNTPPEIHPVVである。
【0046】
3.第1次CTL反応の誘導
RMA−SまたはRMA細胞を、2%のヒトプール血清、ペニシリン(100IU/ml)、カナマイシン(100 μg/ml)、S(硫黄)および2−ME(2−メルカプトエタノール,2×10−5M)が添加されたIMDM培地中にて、22℃または37℃で36時間予備培養を行った。細胞は、7500ラド(rad)にて照射されるか、あるいはマイトマイシンCにて処理(無血清培地中50μg/ml,22℃にて2時間)され、3回洗浄され、続いてA16、S16またはS9の合成ペプチドの存在下あるいは非存在下にて無血清のIMDM培地中22℃で4時間インキュベーションを行った。さらに洗浄を行わずに、これら(ペプチドが装填された)RMA−S細胞を、C57BL/6ナイロンウール通過脾臓細胞(B6 NWP SC)に1:1(v/v)で混合し、インキュベーションを行った。なお、インキュベーションは24穴の培養プレートを用いて行われ、各ウエル毎の培養培地1mlには、4×106の反応性細胞および1×106免疫刺激細胞が含まれており、さらに培養培地には10%のFCS、ペニシリン(100 IU/ml)、カナマイシン(100 μg/ml)および2−ME(2×10−5M)が添加されたIMDM培地を用いた。第1次CTL反応のために、未感作のC57BL/6マウスのNWP SCを用いた。
【0047】
4.ペプチド特異的CTLクローンの発生
上記の第3項目にて述べたように、センダイNTペプチドにより特異的に刺激された培養から得られる第1次CTLバルクに、ペプチドパルスされた正常脾臓細胞を用いて、再び刺激を2回行った。続いて、個々のT細胞クローンを増やすためのインターロイキン−2を豊富に含む培地の使用を含む限定希釈操作により、センダイペプチド特異的CTLクローンを得た(参照26)。このようにして、数種類のセンダイペプチド特異的CTLクローンを得た。その中の1種のクローンを詳細に調べた結果、ペプチドがパルスされた標的細胞およびセンダイウィルスに感染された細胞の両細胞に対して、このクローンは溶解能力を有していることが判った。毒性センダイウィルスに対するインビボ活性の結果では、ウィルス感染標的細胞に対するこのクローンの活性は、センダイ感作マウスから発生したCTLクローンの活性と大差はなかった(参照27)。したがって、このタイプのクローンは、養子免疫細胞移入実験において活性があるものと思われる。
【0048】
5.第2次CTL反応の誘導
第2次CTL反応のために、C57BL/6マウスのNWP SCを使用した。なお、文献28に示すように、マウスに102血液凝集反応単位(HAU)の非毒性センダイウィルス(ロット番号40340087,フローラボラトリーズ(Flow Laboratories)−7℃保存)を腹腔内注射して感作させ、免疫感作後4〜6週間の間で使用した。
【0049】
6.T細胞サブセット(subsetes)の減少
抗−CD4 モノクローナル抗体(以後、mABとする)(SN172.4のハイブリドーマ培養細胞SNの1:40 希釈,参照14)および抗−I−AbmAB(B17/263およびCの腹水体液1:1000希釈)による処理を行って、NWP SCからCD4+細胞およびMHCクラスII+細胞を減少させ、細胞測蛍光法によりその減少の程度を確認した。幾つかの実験においては、培養の間(B17/263の腹水体液の1:1000希釈)抗−I−AbmABが存在した。コントロールとして、文献32に示すCだけを用いてNWP SCの疑似処理を行った。抗−CD8 mAbによるCTL反応を阻止するため、5日間培養後における1:50、1:500および1:5000の異なる最終希釈液に、HPLCで精製された抗体53.6.7をそれぞれ添加した。
【0050】
これらの結果の広範囲な検討は、参考文献9を参照されたい。この例は、第1次ペプチド特異的CTL反応の刺激細胞としてのRMA−S細胞系の特異的性質を利用したインビトロにおける有効な誘導を示す。結果として生ずるCTL反応は、ペプチド特異的(参照図1)であり、ウィルス感染性標的細胞(参照図3,図4)を溶解可能である。ペプチド滴定実験によると、最適長の外因的ペプチドのみがMHCクラスI分子に効果的に結合し、そしてそれらはより長いペプチドの調製中において少量生成され存在するという考えかたに一致して、最適長のペプチドは反応する際低濃度で必要とされる(参照図2)。その結果によると、標的細胞の感作(参照図2B)は、インビトロにおける反応誘導(参照図2A)に必要とされるより、ずっと低い分量のペプチドを用いて完成する。
【0051】
RMA−S細胞系は、インビトロにおける第1次CTL反応に適した誘導体であるのに対して、その親細胞系RMAはそうではない(参照図3、図4)。RMAとRMA−Sは、このようにMHCクラスI分子の細胞表面の発現においてのみ異なることが知られている。そして、この特性のためにRMA−Sが選ばれた。非装填RMA−S細胞をペプチド装填RMA細胞の培養に付加し試験した際に、RMA−S細胞の相互刺激性活性によって第1次CTL反応は促進されなかった(データなし)。このように、RMAとRMA−S細胞間の(MHCクラスI発現の)唯一の関連性の相違と相互刺激性活性に関する分析評価とは、RMAとの比較においてRMA−Sによって相互刺激活性が増加されるという意見を支持しない。RMA−S細胞が37℃に対照して22℃で前培養される際には(参照図3、図4)、第1次CTL反応の誘導は、低濃度ペプチドにおいて確立されうる。MHCクラスI以外に試験された細胞表面マーカは、いずれも温度依存性発現を示さない(参照図6)。低温におけるRMA−S細胞表面における、中空MHC分子の発現の増加は、明らかに、第1次CTL反応の誘導を容易にし(参照図3、図4)、このことは、細胞表面の特異的ペプチド装填MHCクラスI分子の数と、第1次CTL反応誘導との間の直接的相互関係と矛盾しないものである。
【0052】
第2次CTL反応は、ペプチド装填RMA−Sと細胞溶解能を有するRMA細胞とを用い、刺激細胞のプレインキュベーション温度に依存して誘導される(参照図5)。外因的MHC結合ペプチドによって安定化され得るような低温においては、さらに多くの中空MHCクラスI分子がRMA−SおよびRMA細胞の細胞表面に出現する。
【0053】
1細胞につきRMA−S細胞に結合したペプチドの量は、RMA細胞上に結合したペプチド量より、2.5倍高い(参照図6B)。第1次CTL反応を誘導する濃度でRMA細胞上に結合するペプチドのレベルは、RMA−S細胞上に結合するペプチドのレベルに達することはなく、高濃度のペプチドを添加した場合においてさえも可能ではない(参照図6A。データなし)。2.5倍の差は大きくないように思われるが、それは閾値および/またはT細胞反応誘導のためのAPCの細胞表面における関連MHC/ペプチド複合体の密度の考えかたによるものであろう。他の考察は、RMA−S細胞上の中空MHC分子の効果的装填(参照図6B)と、ペプチド装填RMA−S細胞による第1次CTL反応誘導のCD8依存性(参照図8)とについて行われた。RMA上のMHC分子の大多数は無関係なペプチドを含んでいるにも拘わらず、RMA−S細胞には、無関係なペプチドで装填されたMHC分子は殆どないであろうと予測される。結果として、CTL前駆細胞上のT細胞レセプタ(TcR)およびCD8分子は、RMA細胞上よりもRMA−S上の方が関連MHC/ペプチド複合体に会合しやすい。CTL上のTcRとCD8とは、同一クラスI分子と相互作用しなければならない(参照10、11)。MHCクラスI分子は、関連ペプチドかあるいは無関係なペプチドで充満されており、CD8分子のリガンドとして作用する。それ故、無関係なペプチドで占められたMHCクラスI分子は、関連MHC/ペプチド複合体とCD8との相互作用を妨げ、そしてそれ故、インビボにおける特異的CTLの誘発作用を妨げると考えられる。
【0054】
反応性細胞集団からCD4+とMHCクラスII+細胞を除去してもペプチド装填RMA−S細胞によって生ずるCTL活性は減じられない(参照図7)。このように、ペプチド装填RMA−S細胞による第1次CTL反応の誘導は、完全にCD4+ ヘルパーT(Th)細胞とMHCクラスIIとのいずれからも独立している。この研究に用いられるペプチドはMHCクラスI分子によって提示され、CD8+ CTL前駆細胞を排他的に刺激する。CD8+ CTLがペプチド装填RMA−S細胞によって誘発され、自身のIL−2を生ずると仮定すると、これによってCD4+ Th細胞あるいは外因的IL−2への依存が妨げられると考えられる。
【0055】
さまざまなタイプの細胞が、第1次ウィルス特異的CTL反応の誘導能について試験された(データなし)。RMA−S細胞に加え、第1次ペプチド特異的CTL反応を誘導可能であることが報告されている唯一の他の細胞は、樹状細胞である(参照M.L.H. de Bruijn,J.D. Nieland,W.M. Kast and C.J.M. Melief.原稿提出)。けれども樹状細胞は、困難な分離処理の後、少量しか得られず、それに限っていえば系としてそれらを連続的に成長させようとする試みに反する。樹状細胞は、第1次CTL反応を刺激することが可能であると考えられるが、極めて大きな表面部分、粘着性、シアル酸を有するグルカンによる細胞表面の低占有率というような異なったメカニズムによるものであろう。
【0056】
以下に実験の結果を図面によって示す。
【0057】
図1には、ペプチドが装填されたRMA−S細胞を用いたインビトロにおける第1次CTL反応の誘導について示されている。
【0058】
B6NWP SCは、RMA−S細胞とともに1:1(v/v)でインビトロにて一回刺激され、22℃で36時間予備培養し、対照としてはそのままの状態のものを用い、そのままの状態のもの、A16ペプチドを50μM添加したもの、S16ペプチドを50μM添加したものをインキュベーションした。ペプチドは、25μMの濃度で、培養中5日間存在した。
【0059】
エフェクタ細胞を収集し、標的細胞として、B6マウスの胚細胞(MEC)およびB6マウスのLPS誘導性B細胞芽(LPS)を用いて、それぞれ50μMのA16ペプチドまたはS16ペプチドの存在下あるいは非存在下にて試験を行った。
【0060】
図2に、ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって誘導された第1次CTLの誘導レベル(A)と、標的水レベル(B)でのペプチド適定を示す。未感作B6マウスのNWP SCは、RMA−S細胞とともに、1:1(v/v)でインビトロにて一回刺激され、22℃で36時間予備培養され、S9ペプチドとS16ペプチドのセンダイペプチドと異なった濃度でインキュベーションされた。最終的なペプチド濃度は、図2(A)に示されている。エフェクタ細胞を収集し、B6マウスの胚細胞を用いて10μMのS9ペプチドとともに試験を行った。図2(B)において、マウスのNWP SCは、RMA−S細胞とともに、1:1(v/v)でインビトロにて一回刺激され、22℃で36時間予備培養され、10μMのS9ペプチドとともにインキュベーションされた。エフェクタ細胞を収集し、そして細胞傷害性分析において提示されるS9ペプチドとS16ペプチドのセンダイペプチドの異なった濃度存在下で、B6マウスの胚細胞を用いて試験が行われた。
【0061】
図3〜図5は、ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって誘導された第1次および第2次CTL反応を示している。第1次CTL反応のために、未感作B6マウスのNWP SCが用いられた(図3および図4参照)。第2次CTL反応のために、非毒性のセンダイウィルスを腹腔内注射して感作させたB6マウスのNWP SCを用いた、(図5参照)。
【0062】
37℃または22℃で予備培養されたRMA−S細胞とRMA細胞とに装填するために、異なる濃度のS9ペプチドを用いた。ペプチドが装填されたRMA細胞とRMA−S細胞は、図に示される最終ペプチド濃度にてB6 NWP SCと1:1(v/v)で5日間培養された。EL4細胞は、10μMのS9ペプチドとともに、あるいはS9ペプチドを用いずに標的細胞として用いられるか、または51CRで標識される前に、1時間あるいは12時間非毒性センダイウィルスと感染させられる。
【0063】
図6は、RMAとRMA−S細胞における直接的なペプチド結合の考察を示している。RMAとRMA−Sは、26℃で36時間培養される。125I−標識S9ペプチド(1μMまたは1nM)は、無血清のDMEMで2.5×106細胞/mLで4時間26℃にてインキュベーションされる。MHCクラスI分子は、ウサギ抗−H−2b血清を用いて免疫沈降された。MHCクラスI関連ペプチドは、γ−分光分析によって定量された。結果は2回測定した値の平均値で示し、正常の血清を用いたコントロール沈澱をさし引いた後のdpmで表示した(図6(A)参照)。図6(B)において、26℃で予備培養されたRMAとRMA−S細胞は、表面がヨウ素化されており、そしてH−2抗原は、ウサギ抗−H−2b血清を用いて,等量のTCA沈降可能カウントにて沈澱させた。RMA−S細胞における、細胞表面H−2の量は、RMA細胞における量に対して相対的に表現されており、RMA細胞における量を1任意単位として定められている。26℃で予備培養されたRMAとRMA−S細胞を700nM125Iで標識されたS9ペプチドとともに26℃で1時間後インキュベーションし、続いて抗−H−2b血清にて免疫沈降させた後、ペプチド結合を測定した。
【0064】
RMA−SにおけるMHCクラスI関連ペプチドの量は、RMA細胞における量に対して相対的に表現されており、RMA細胞における量を1任意単位として定められている。別々に3回測定を行ったが、同様の結果が得られた。
【0065】
図7は、ペプチドが装填されたRMA−S細胞により誘導された第1次CTL反応が、CD4+細胞とMHCクラスII+細胞から独立していることを示している。反応性細胞は、未感作B6マウスのNWP SC(A)、または抗−CD4(SN 172.4)mAbと、抗−I−Ab(B17/263)mAbと、Cとの処理によって、CD4+細胞およびMHCクラスII+細胞を欠損させたNWPSC(C,D)であった。(B)において、NWP SCは、C1だけの疑似処理が行われた。(D)において、抗−I−Ab mAb(B17/263)は、5日間の培養の間存在した。これらの反応性細胞は、20μMのS9ペプチドとともにインキュベーションされ、22℃で予備培養されたRMA−S細胞と1:1(v/v)にてインビトロにおいて一回刺激された。エフェクタ細胞を収集し、そして10μMのS9ペプチドなしにまたはそれらを用いてEL4標的細胞に対して試験し、あるいは51Crで標識される前に12時間センダイウィルスに感染させた。NWP SCおよびCD4+細胞のないNWP SCは、前述したように、完全にCD4+細胞依存性B6抗−bm6アロ特異的(allospecific)CTL反応において試験される(データ示さず、文献32参照)。反応性細胞集団からCD4+細胞を除去すると、完全にB6抗−bm6 CTL反応を消滅させたことから、CD4+細胞は機能的に欠損されたことを示した(文献32参照)。
【0066】
図8は、ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって誘導された第1次CTL反応がCD8に依存することが示されている。未感作B6マウスのNWP SCを、図に示したように、抗−CD8 mAB(53.6.7)の異なった希釈液の存在下、あるいは非存在下にて、20μMのS9ペプチドとともにインキュベーションし、22℃で予備培養されたRMA−S細胞を用いて、インビトロにて1:1(v/v)で一回刺激させた。5日後、エフェクタ細胞を収集し、10μMのS9ペプチドでインキュベーションしたEL4細胞を用いて試験を行った。
【0067】
7.細胞傷害性試験
5日培養後、リンホプレップ(lymphoprep,ナイコムドファーマ(Nycomed Pharma),オスロ,ノルウェイ)グラジエントを用いてエフェクタ細胞を収集し、2倍希釈法にてE/T(エフェクタ細胞/標的細胞)50〜E/T0.8までの200051Cr−標識標的細胞における細胞傷害性機能を調べた。特異的51Cr放射の百分率を次の式により計算した。
【0068】
【数1】
【0069】
バックグランド(培地)放射は常に、最高(2%トリトン(Triton)×100)放射の25%未満であった。培地での値を3倍したSE(標準誤差)は、常に、特異的51Cr放射の5%未満であった。個々の適用量応答曲線から計算された細胞溶解活性は、106エフェクタ細胞毎の溶解単位として表現される。計算は直線回帰を用いて行われた。標的細胞として、γ−インターフェロン(IFN−γ)50 U/mlを用いて37℃で2日間処理したB6マウス胚芽細胞、C57BL/6マウス(LPS)から得たLPS誘導性B細胞芽(脾臓細胞に30μg/mlのLPS−B,バクトラブ(Bacto Lab.),ジフコ(Difco),デトロイト(Detroit),MI,を添加し、37℃で5日間処理したもの)、またはEL4細胞(KbおよびDbを発現するC57BL/6起源の胸線腫細胞系)が供された。標的細胞を50μMのA16ペプチド、50μMのS16ペプチドまたは10μMのS9ペプチドの各ペプチドとともに15〜30分間インキュベーションした後、1:1(v/v)でエフェクタ細胞に添加し、37℃で6時間インキュベーションを行った。ウィルス感染標的細胞は、51Crで標識する前に、1mlの培地中に300HAUの非毒性センダイウィルスとともに、107標的細胞を1時間または12時間インキュベーションすることによって調製された(参照28)。
【0070】
8.直接ペプチド結合の考察
RMAおよびRMA−S細胞は、2%のヒトプール血清が添加されたアイスコフ(Iscove)の培地で36時間27℃にて培養された。S9ペプチドは、クロラミンT触媒ヨウ素化によりヨウ素化されて、特異的活性が約50Ci/mmolとなった。125I−標識S9ペプチドとともに、26℃にて1〜4時間細胞をインキュベーションし、DMEMにて3回洗浄し、10mMのトリトンX−100溶解緩衝液(トリス,pH7.8,140mM NaCl,1%トリトンX−100,1mMPMSF(p−メルクリベンゼンスルホン酸),1μg/mlトリプシン阻害剤,30mTIU/mlアプロチニン)中氷上にて溶解を行った。MHCクラスI分子は、ウサギ抗−H−2b血清を用いて免疫沈降させた(参照29)。MHCクラスI関連ペプチドは、γ−分光法により定量を行った。H−2レベルを決定するために、ラクトパーオキシダーゼ−触媒ヨウ素化を用いて106細胞をヨウ素化した。続いて、細胞をPBSにて3回洗浄し、トリトンX−100溶解緩衝液にて溶解した。H−2抗原は、ウサギ抗−H−2b(参照29)を用いて、等量のトリクロロ酢酸(TCA)−沈殿可能カウント(参照30)によって沈殿された。免疫沈降は、12%ゲルのSDS−PAGEより分析され、泳動後のゲルをコダック(Kodak)(ロケスター(Rochester),NY)X−AR5フィルムに露光させた。結果は任意の単位(ユニット)で表現された。そのうちの1ユニットは、各々RMA細胞における、細胞毎の細胞表面H−2レベルおよび細胞毎のペプチド結合のレベルとして定義される。
【0071】
結果
1.ペプチドが装填されたRMA−S細胞による第1次ウィルスペプチド特異的CTL反応の誘導
この実験に用いられた16merアデノウィルスペプチド(A16)は、アデノウィルスEI−誘導腫瘍を全滅することができるCTLクローンによる標的細胞の溶解を敏感にさせることが分かった(参照26)。16merセンダイウィルスペプチド(S16)は、C57BL/6マウスにおいて特異的H−2Kb−制限CTLによって溶解するため標的細胞を感作することができ、C57BL/6マウスにおける致死のセイダイウィルス感染に対する防御的免疫を誘導することができた(参照12)。A16およびS16ペプチドは、22℃で培養されたRMA−S細胞とともにインキュベーションされた。これらウィルスペプチドが装填されたRMA−S細胞により、第1次CTL反応を誘導することができた。この反応は、アデノおよびセンダイペプチドを誘導することにより特異的に進行した(図1参照)。
【0072】
2.ペプチド装填RMA−S細胞による第1次CTL反応の誘導、およびペプチド装填RMA−S細胞により誘導された第1次CTLバルクによる標的細胞の溶解に必要なペプチド濃度
9aa(アミノ酸)より長い合成ペプチドの調製の際に、副生成物として僅かに存在する9aaのセンダイペプチドが、高い親和性でH−2KbMHCクラスI分子に結合することが近年の研究により実証されている(参照4)。ペプチド適定実験より、9merペプチドは16merペプチドの50倍希釈濃度でT細胞反応の誘導に十分であることがわかった(図2A参照)。標的細胞を感作するため同じペプチド適定が行われた。その結果、標的細胞の感作は、インビトロにおける反応誘導に必要な濃度の約1/1000のペプチド濃度で完了することを示す(図2B参照)。
【0073】
3.ペプチドが装填されたRMA−S(RMAではない)細胞は、特異的第1次CTL反応を誘導することができ、RMAではできない。
【0074】
第1次CTL反応において、S9ペプチドとともにインキュベーションした後の、RMA−S細胞と親細胞系RMAの抗原提示能力を調べた(図3参照)。第1次CTL反応は、ペプチドを装填させたRMA−S細胞とともにT細胞を刺激したときのみ見られた(図3参照)。RMA−S細胞を温度を下げて(22℃)予備培養した場合、37℃で培養するときの約1/100のペプチド濃度が必要であり(図4参照)、このことはMHCクラスI発現の温度依存性に一致していた(図6参照)。ペプチドとともにインキュベーションしたRMA細胞は、いずれの濃度においてもどちらの温度でも刺激されなかった(図3参照)。
【0075】
4.第1次ペプチド特異的CTLは、ウィルス感染細胞に対して交差反応的である。
【0076】
センダイペプチドが装填されたRMA−S細胞により誘導された第1次CTL反応は、センダイペプチドに特異的であり(図1参照)、Kbに制限される(データ示さず)。また、ウィルス感染に続いてエピトープを内因的に発現する標的細胞を溶解することができた(図3および図4参照)。センダイウィルスが感染した標的細胞の溶解は、ウィルスにさらされた時間に依存した。センダイウィルスとともに12時間インキュベーションした標的細胞は、ペプチドが装填された標的細胞と同様に溶解されたが、1時間感染させた標的細胞ではペプチドを装填させた標的細胞と比べて最大で半分程度しか溶解されなかった(図4参照)。感染時間が長ければ長いほど、MHCクラスI分子により提示されるウィルスエピトープが増えるという理由から、この結果も予測どおりである。
【0077】
5.ペプチド装填RMAおよびペプチド装填RMA−Sの両細胞により引き起こされた特異的第2次CTL反応
第1次CTL反応とは対照的に、第2次CTL反応はペプチド装填RMA−SおよびRMAの両細胞に認められた(図5参照)。MHCクラスI発現を増加させるために、22℃でRMAおよびRMA−S細胞を予備培養した場合、反応性の向上が認められた(図5参照)。センダイウィルス感染RMA−S細胞は、センダイウィルス感染RMA細胞とは対照的に、第2次CTL反応を引き起こさなかった(データ示さず)。このことは、RMA−S細胞が内因性の経路を経て抗原を提示する欠陥を有するという見解に合致している(参照18,31)。
【0078】
6.RMA細胞と対比したRMA−S細胞の細胞におけるMHCクラスI発現の温度依存性
RMAおよびRMA−S細胞において、Thy−1、CD45、LFA−1α、LFA−1βおよびICAM−1の発現パターンが同様に認められた(参照9)。MHCクラスII分子、B細胞および単球/マクロファージ特異的標識の発現は、CD4およびCD8の発現と同様に実証できるものではない(参照9)。RMAおよびRMA−S細胞は、MHCクラスI(KbおよびDb)細胞表面発現のみが異なる(参照9)。このように、選ばれた分子すなわちMHC分子を除いて、特定された細胞表面標識のいずれもがRMA−S細胞系を選択することにより変化しない。さらに、試験を行ったすべての標識の中で、RMA−SおよびRMA細胞におけるMHCクラスI発現のみが強く温度に依存している(参照9)。
【0079】
7.RMAおよびRMA−S細胞におけるH−2複合体およびペプチド結合の相対的レベル
RMA細胞とRMA−S細胞との間のMHC/ペプチド発現における相違をさらに調べるために、これらの細胞におけるS9ペプチドのMHCクラスI分子への直接結合をH−2の細胞表面発現と対比して測定した(図6AおよびB参照)。RMA(26℃)およびRMA−S(26℃)におけるペプチドの結合を、それぞれ1μMのS9ペプチドおよび1nMのS9ペプチドを用いて比較した(図6A参照)。ペプチド装填RMA−S細胞で第1次CTL反応を誘導するために必要な最小濃度である20μMにおいても(図3および図4参照)、RMA細胞に結合するペプチドの量は、1μMにおいてRMA−S細胞に結合するペプチドの量にはおよばなかった(データ示さず)。このように、RMA細胞は、高いペプチド濃度においてさえも、第1次CTL反応誘導の条件下においてRMA−S細胞が結合するペプチドの量とは比較にならない程、その結合するペプチドの量はわずかであった。RMAおよびRMA−S細胞における細胞毎のペプチド結合は、2.5倍しか違わないが、RMA−S細胞における発現されたH−2分子毎のペプチド結合は、RMA細胞における結合の10倍である(図6B参照)。このことから、提供された外因性のペプチドが、RMA−S上のMHC分子に選択的に装填されていることがわかる。
【0080】
8.ペプチド装填RMA−S細胞により誘導される第1次ペプチド特異的CTL反応のCD4細胞およびMHCクラスII細胞に対する独立性
免疫応答個体集団からCD4+およびMHCクラスII+細胞を取り除くことにより、ペプチドが装填されたRMA−S細胞により引き起こされたCTLの活性は減少しない(図7参照)。このように、ペプチド装填RMA−S細胞により誘導された第1次CTL反応は、CD4+Th細胞およびMHCクラスIIから完全に独立していた。
【0081】
9.ペプチド装填RMA−S細胞により誘導された第1次CTL反応のCD8に対する独立性
ペプチド装填RMA−S細胞による第1次CTL反応誘導は、培養中に存在する抗−CD8 mAbにより完全に遮断され得る(図8参照)。また、標的細胞レベルにおいて、第1次CTLバルクのエフェクタ機能は、抗−CD8 mAbにより遮断された(データ示さず)。
【0082】
実施例2
174CEM.T2抗原プロセッシング欠損細胞の表面において、中空のHLA−A2.1MHCクラスI分子が装填された自己由来のp53腫瘍に対抗する抑制ペプチドの第1次CTL反応誘導について
方 法
1.血液提供者
献血者は、通常のNIHマイクロ細胞傷害性HLA型においてHLA−A2.1対立遺伝子を発現する正常で健康な血液提供者である。
【0083】
2.反応性細胞
反応性T細胞は、HLA−A2.1陽性の健康な提供者の単核白血球(PBL)中に含まれる。PBLはフィコール(Ficoll)処置(Lynphoprep of Nycomde−pharma,オスロ,ノルウェー,カタログナンバ105033)により軟層から単離され、プール状態のヒトの30%血清(補助として混合された培養リンパ球の容量が分析されると、2mMのグルタミン(ICN Biochemcals,Inc,Costa Mesa,CA,アメリカ,カタログナンバ15−801−55)と、ペニシリン(100IU/ml,Brocades Phrma,Leiderdorp,ネーデルランド)と、カナマイシン(100μg/ml,Sigma,St.Louis,MO,アメリカ)とが補足されたRPMI1640(Gibco Paislan,スコットランド,カタログナンバ041−02409)中で2度洗浄される。
【0084】
3.p53ペプチド
方法4に記述されたその分析により、HLA−A2.1との強い結合力を有する、正常で突然変異のないp53配列からのp53ペプチドは、174CEM.T2抗原プロセッシング欠損細胞でのペプチド提示による第1次CTL反応誘導に用いられる。このペプチドの配列はLLGRNSFEVである。
【0085】
このペプチドは、フリーのカルボキシの末端部を持ち、メリフィールド(
Merrifield)法(25)によって合成されたバイオサーチ(Biosearch)9500ペプチド合成機(Milpore,Bedford,MA,アメリカ)において合成される。またPBSあるいは血清無添加のアイスコフ(Iscove)が修正したダルベッコ(Dulbecco)培養液(IMDM,Flou Laboratoies,Irvine,スコットランド)に溶かされ、−20℃で貯蔵される。
【0086】
4.HLA−A2.1と結合したペプチド
(174.CEM)T2細胞は、FCSを取り除いた培養液中で2度洗浄され、血清無添加の培養液中で2×106cells/mlの比重にされる。この懸濁液40μlは96穴の底部がV字型をしたプレート(Greiner GmbH,Fri ckenhausen,ドイツ:651101)に個別のペプチド希釈物(1mg/ml)10μlとともに載置される。
【0087】
その最終濃度は8×104の(174.CEM)T2細胞を含んだ200μg/mlペプチドである。この溶液は湿気を含む空気中に5%濃度のCO2を発生させ、37℃で16時間培養した後、3分間静かに撹拌される。次に細胞は0.9%のNaClと、0.5%のウシの血清アルブミン(Sigma St.Louis,アメリカ;A−7409)と、0.02%のNaN3(Merck Darmstadt,ドイツ:822335)との溶液100μlで1度洗浄される。毎分1200回転の遠心分離機にかけられた後、その小球は4℃で30分間、特定のマウスのモノクローナル抗体BB7.2のHLA−A2.1の飽和量である50μl中に再び浸される。次に細胞は2度洗浄され、1対40の割合で希釈され全重量25μlのフルオルセインイソチオシアネート(Tago Inc Burlingame,CA,アメリカ:4350)と結合されたヤギの抗−マウスIgGの断片F(ab)2で30分間培養される。
【0088】
最終の培養の後、細胞は2度洗浄され、FACScan型の流動細胞計測器(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ,アメリカ)を用いて波長488nmで蛍光が測定される。免疫蛍光の著しい増加によりHLA−A2.1分子とペプチドとが結合していることが分かる。
【0089】
5.第1次CTL反応の誘導
1ml中、2×106の濃度中の174CEM.T2(T2)細胞は、グルタミン(2mM,ICN Biochemicals Inc.,Costa Mes,CA,アメリカ,カタログナンバ15−801,55)と、2において言及した抗生物質と、80μg/mlの最終濃度におけるp53ペプチドとを含む血清無添加のアイスコフ(Iscove)培養液(Biochrom KG,Seromed,Berlin,ドイツ,カタログナンバFO465)中でT25フラスコ(Falcom,Becton&Dickinson,Plymouth,イギリス,カナログナンバ3013)において37℃で13時間の間培養される。
【0090】
続いて、T2細胞は回転しながら沈殿し、37℃で1時間、血清無添加のRPMI1640(メーカは2参照のこと)培養液においてマイトマイシンC(最終濃度50μg/ml)とともに20×106cells/mlの濃度で処理
される。その後、T2細胞はRPMI1640中で3度洗浄される。
【0091】
第1次CTL反応は、80μg/mlの濃度で含まれるペプチドと、培養液(グルタミンと、前述した抗生物質とを含む血清無添加のRPMI1640液)の50μl中のマイトマイシンCで処理された1×105のT2細胞を、96穴の底部がU字型をしたプレート(Costar,Cambridge,MA,アメリカ,カナログナンバ3799)の全てのウェルに滴下することにより誘導される。これらの刺激細胞には、各々のウェルの50μl溶液中の4×105HLA−A2.1陽性PBLが加えられる。刺激剤と反応性細胞とは加湿培養器(湿度90%)で空気中のCO2濃度5%において、37℃で7日間共培養される。
【0092】
6.細胞傷害性分析
標的細胞として37℃で1時間、100μCi51CrでラベリングされたT2細胞を用いた。
【0093】
ラベリングの後、その細胞は血清無添加のアイスコフ(Iscove)培養液で2度洗浄される。そして血清無添加のアイスコフ(Iscove)培養液中1ml中細胞数2.0×106の細胞濃度中の20μg/mlのペプチドとともに60〜90分間培養される。
【0094】
標的細胞はエフェクタ細胞を加える前にもう1度洗浄される。エフェクタ細胞と標的細胞との割合は2倍の希釈で、20:1から2.5:1まで分類される。細胞傷害性は4%FCSと、プレートのウェル毎に20μg/mlの濃度のペプチドとを含む、RPMIの全量100μlにおいてウェルごとに2000の標的細胞上で実験される。培養の全期間は37℃で4時間である。放射性51Crのパーセンテージは以下の式によって算出される。
【0095】
【数2】
【0096】
7.限定希釈によるCLTのクローン培養操作
第1次CTL反応誘導(方法5参照のこと)の後、7日後および14日後にPBL(反応性細胞)はペプチドにより再び刺激される。この目的のために全ての細胞は採取される。有効な細胞はフィコール(Ficool)処理によって単離され、RPMI1640中で洗浄される。96穴の底部がU字型をした新しいプレート中の50,000有効な細胞は、μlのI培養液(RPMI(Gibco Paislan,スコットランド,カタログナンバ041−02409)と、15%のプール状態のヒトの血清と、グルタミンと、前述の抗生物質とともにどれも順調に生育する。
【0097】
ウェルのプレート毎に、20000の自己由来の放射線を照射(2500rad)されたPBLと10000の自己由来の放射線を照射(5000rad)されたEBVが形質転換されたB細胞とは、II培養液50μl(RPMI(Gibco,Paislan,スコットランド、カタログナンバ041−02409)と、15%のプール状態のヒトの血清と、グルタミンと、前述の抗生物質と、80μg/mlの最終濃度中のペプチドとがともに加えられる。
【0098】
その細胞はCO2濃度5%で湿度90%の培養器中で37℃で、7日間培養される。第1次CTL反応開始後21日で培養された細胞は採取される。有効な細胞は、フィコール(Ficool)処理によって単離され、RPMI1640中で洗浄される。この有効な細胞のバルクは限定希釈によってクローン培養される。96穴の底部がU字型をした新しいプレート(Costar,Cambridge,カタログナンバ3799)の各々のウェルの中の50μlのI培養液中には、100,10,1ないし0.3の有効な細胞がともに混合される。少なくとも3人の異なる提供者からのプール状態で放射線を照射(3000rad)されたPBL2000と、少なくとも2人の異なるHLA−A2.1陽性の提供者からの、プール状態で放射線を照射(10000rad)されたEBVが形質転換されたB細胞が変換したBリンパ球は、最終濃度で80μg/mlのペプチドと、2%の白色凝集源と、120IU/mlのヒトの再合成されたIL−2(Eurocetus,アムステルダム)とを含む50μlのII培養液とともにすべてのウェルに加えた。
【0099】
8.CTLクローン培養の拡大
LD培養の各々のプレートのウェルで細胞の生長が規則正しく観察される。大きく生長したウェル中の細胞はより大きな培養地に移植され、7で記述したように、照射されたPBLとHLA−A2.1陽性EBV B細胞と、p53ペプチドで繰返し刺激し、細胞傷害性を調べた。特異性が限定された有効なペプチド特異的HLA−A2.1でクローン培養された各々のCTLは、7において概略した手順によって少なくとも1度は再びクローン培養される。
【0100】
結果
自己由来のp53ペプチドに対するCTLクローン培養で限定された3種のHLA−A2.1の溶解活性
3種のCTLクローン培養の特異的な細胞傷害活性は、5、7、8の部分において概略した手順によって、健康な提供者のPBLからのp53ペプチドLLGRNSFEVに対して特異的に発生した3つのCTLクローンの特異的な細胞傷害活性を表1に示す。
【0101】
表1 第1次ペプチド誘導性CTL反応の開始に続いて生じる3種のp53ペプチド特異的CTLクローンの溶解活性
【0102】
【表1】
【0103】
CTLクローンであるCl,A5,D5は、A8ペプチドが装填されたT2細胞とともにインビトロで第1次CTL反応の誘導を達成する。クローンは、2倍の希釈段階でE/T20からE/T2.5の範囲でペプチド装填された51Crでラベリングされた標的細胞で特異的に検査した。A8ペプチドは9個のアミノ酸のペプチドで、野性種p53プロテインに由来する。D6ペプチドもまた野性種p53配列に由来し、ネガティブコントロールとして用いられる。
【0104】
両者のペプチドは方法4において記述したようにHLA−A2.1分子と結合する。2種のペプチドの1文字コード配列は、A8ペプチドは、LLGRNSFEVで、D6ペプチドは、RMPEAAPPVである。
【0105】
ペプチドの滴定実験は、A8ペプチドの20μg/mlが標的細胞の感作に十分であることを示している。この実験において用いられる濃度は20μg/mlである。ペプチドに特異的なクローンは、p53ペプチドと培養されたHLA−A2.1陽性の標的細胞のみを溶解し、ペプチドと培養されなかったHLA−A2.1陽性の標的細胞、あるいは無関係なペプチドと結合したHLA−A2.1で培養された標的細胞は溶解されない。この結果は、健康な免疫されていない未感作のHLA−A2.1陽性の提供者からのPBL中の反応のもっぱらインビトロでの誘導によって、自己由来のペプチド、この場合p53腫瘍抑制遺伝子生成物のペプチドに対するCTL反応を発生させることが可能であることを示している。
【0106】
【発明の効果】
本発明に従えば、内因的ペプチドがMHCクラスI分子に装填することなく排抗原プロセッシング欠損による中空のMHCクラスI分子を発現する抗原提示性細胞の使用法に基づいている。結果として、これらのAPCは、特定のペプチドを結合する単一の外因的MHCクラスIを効果的に装填し得る。またヒトのβ2−マイクログロブリンの付加は、ペプチドを装填したMHC分子の発現を増加し、第1次CTL反応の誘導を改善するという効果がある。
【0107】
また本発明に従えば、抗原プロセッシングが欠損していないペプチド装填親細胞と対照的に、外因的ペプチド装填細胞は、第1次CTL反応の誘導が可能であり、外因的ペプチドで装填されたMHC分子を利用する。さらに効果的なペプチド提示の法則に基づく、免疫されていない未感作の個体からの反応性リンパ球集団を伴う第1次T細胞反応を誘導するという効果がある。
【0108】
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【図面の簡単な説明】
【図1】ペプチドが装填されたRMA−S細胞にインビトロで第1次CTL反応を誘導したときの標的ウィルスと免疫刺激の関係を示すグラフである。
【図2】ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって導かれたCTLの誘導レベル(A)と標的レベル(B)とでの特異的溶解(%)とペプチド濃度との関係を示すグラフである。
【図3】ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって導かれた第1次CTL反応における溶解単位とペプチド濃度との関係を示すグラフである。
【図4】ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって導かれた第1次CTL反応における溶解単位とペプチド濃度との関係を示すグラフである。
【図5】ペプチドが装填されたRMA−S細胞によって導かれた第2次CTL反応における溶解単位とペプチド濃度との関係を示すグラフである。
【図6】RMA細胞およびRMA−S細胞とペプチドとの結合のしやすさを示すグラフである。
【図7】各種反応性細胞集団による標的ウィルスの溶解量を示すグラフである。
【図8】抗−CD8の濃度によるE/T比と溶解割合の関係を示すグラフである。
Claims (28)
- Tリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法において、
中空の主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルの存在下で、特異的Tリンパ球反応を誘導する条件下で、Tリンパ球を培養する工程とを含むことを特徴とする、Tリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法。 - 培養物から抗原特異的Tリンパ球を単離する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載のTリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 前記単離されたTリンパ球を培養する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項2記載のTリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞は、20℃〜37℃の温度でペプチドを装填されることを特徴とする、請求項4記載のTリンパ球培養における抗原特異的Tリンパ球反応を誘導する方法。
- Tリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を誘導する方法において、
中空のMHCクラスI分子を担持する抗原提示ビヒクルに抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを装填する工程と、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルの存在下で、特異的CTL反応を誘導する条件下で、CD8+T細胞前駆細胞からなるTリンパ球を培養する工程とを含むことを特徴とする、Tリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。 - 培養物から抗原特異的CTLを単離する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項6記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 前記単離されたCTLを培養する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞は、ネズミのRMA−S細胞、またはヒトの174.CEM T2細胞を含むことを特徴とする、請求項9記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、さらにT細胞反応の開始を促進する分子を担持することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルが、8〜11個のアミノ酸を有する抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドで装填されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- CD8+T細胞前駆細胞を含むTリンパ球の特異的CTL反応誘導条件下での前記培養が、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルと前記CTL反応を開始する培養を支持する基質との両者の存在下で実行されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 抗原特異的前記CTL反応は、未感作のTリンパ球培養中で誘導される第1次CTL反応であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 抗原特異的前記CTL反応は、前記T細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを得る自己抗原に特異的であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1つに記載のTリンパ球培養における抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球反応を誘導する方法。
- 候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法において、候補ペプチドを合成する工程と、これらの候補ペプチドのどのペプチドが抗原提示ビヒクルによって担持される中空のMHCクラスI分子に結合できるかをテストする工程と、どのMHCクラスI結合ペプチドがTリンパ球培養においてペプチドに特異的なTリンパ球反応を誘導できるかをテストする工程とを含むことを特徴とする、候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルは、抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞を含むことを特徴とする、請求項16記載の候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法。
- 抗原プロセッシング欠損を有する前記抗原提示細胞は、ネズミのRMA−S細胞、またはヒトの174.CEM T2細胞を含むことを特徴とする、請求項17記載の候補ペプチドのグループにおけるT細胞免疫原性ペプチドを同定する方法。
- Tリンパ球培養においてインビトロ培養により抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を誘導する方法において、
(a)哺乳類に由来し中空のMHCクラスI分子を担持する抗原プロセッシング欠損細胞系を含む抗原提示ビヒクルに、抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドを装填し、MHCクラスI結合ペプチドを装填した抗原提示ビヒクルを形成する工程と、
(b)抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドに対して抗原特異性を有する細胞傷害性Tリンパ球が形成される、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を誘導する条件下で、ペプチドが装填された抗原提示ビヒクルの存在下でナイーブリンパ球前駆細胞を培養する工程とを含むことを特徴とする抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。 - 抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を単離する工程をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 単離された抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を培養する工程をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルが、同時にT細胞反応の開始を促進する分子を担持することを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 中空のMHCクラスI分子を担持する前記抗原提示ビヒクルに8〜11個のアミノ酸を有する抗原由来のT細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドが装填されることを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- CD8+Tリンパ球前駆細胞について特異的CTL反応を誘導する条件下における前記培養工程が、ペプチドを装填された抗原提示ビヒクルとCTL反応を開始する培養を支持する基質との存在下で前記Tリンパ球前駆細胞を培養する工程をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 前記抗原特異的CTL反応が、ナイーブTリンパ球培養において誘導される第1次CTL反応であることを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 前記CTL反応が、前記T細胞免疫原性MHCクラスI結合ペプチドが由来する自己抗原に対して特異的であることを特徴とする請求項19に記載の抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球の誘導方法。
- 細胞傷害性T細胞免疫原性ペプチドを同定する方法において、
候補ペプチドを抗原提示ビヒクルに接触させる工程であって、前記抗原提示ビヒクルは中空のMHCクラスI分子を担持する哺乳類由来の細胞系を含み、候補ペプチドと抗原提示ビヒクルとが結合するのに適切な温度と時間で接触され、ペプチド結合抗原提示ビヒクルが形成される接触工程と、
前記ペプチド結合抗原提示ビヒクルの存在下でナイーブリンパ球を培養する工程と、
候補ペプチドに対する抗原特異性を有する細胞傷害性Tリンパ球のアッセイ工程であって、候補ペプチドに対する抗原特異性を有する細胞傷害性Tリンパ球が存在することによって候補ペプチドが細胞傷害性T細胞免疫原性ペプチドであることを提示するアッセイ工程とを含むことを特徴とする細胞傷害性T細胞免疫原性ペプチドの同定方法。 - 前記抗原提示ビヒクルが抗原プロセッシング欠損を有する抗原提示細胞系であることを特徴とする請求項27に記載の細胞傷害性T細胞免疫原性ペプチドの同定方法。
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