JP2004500059A - ペプチドおよび核酸組成物を使用する、癌胎児性抗原に対する細胞性免疫応答の誘導 - Google Patents

ペプチドおよび核酸組成物を使用する、癌胎児性抗原に対する細胞性免疫応答の誘導 Download PDF

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Abstract

本発明は、抗原がT細胞により認識される機構に関する本発明者らの知見を使用して、癌胎児性抗原(CEA)エピトープを同定し、そして癌胎児性抗原(CEA)エピトープを調製し、そして癌胎児性抗原(CEA)を保有する腫瘍に対して指向される、エピトープベースのワクチンを開発する。より詳細には、本出願は、薬学的組成物に関する本発明者らの発見、ならびに癌の予防および処置における使用方法に関する本発明者らの発見を伝える。

Description

【0001】
(I.発明の背景)
増加中の証拠群が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が腫瘍細胞に対する免疫応答において重要であることを示唆する。CTLは、ほとんどすべての有核細胞の表面上で発現されるHLAクラスI分子の状況でペプチドエピトープを認識する。内因的に合成された腫瘍抗原の細胞内プロセシング後、抗原由来ペプチドエピトープが、小胞体においてクラスI HLA分子に結合し、次いで、生じた複合体が、細胞表面に輸送される。CTLは、このペプチド−HLAクラスI複合体を認識し、次いでこのことは、このHLA−ペプチド複合体を保有する細胞の、直接このCTLによる破壊、および/または非破壊的機構の活性化(例えば、免疫応答を増強しそして腫瘍細胞の破壊を促進するリンホカイン(例えば、腫瘍壊死因子α(TNF−α)またはインターフェロンγ(IFNγ)の活性化)を介する破壊を生じる。
【0002】
腫瘍特異的ヘルパーTリンパ球HTLもまた、有効な抗腫瘍免疫を維持するために重要であることが公知である。抗腫瘍免疫におけるその役割が、これらの細胞がCTLおよび抗体応答の誘導の補助を提供するだけでなく、エフェクター機能も提供するように作用する動物モデルにおいて示されており、これは、直接の細胞接触により媒介され、そしてリンホカイン(例えば、IFNγおよびTNF−α)の選択によっても媒介される。
【0003】
有効な腫瘍ワクチンの開発における基本的難題は、生じ得る免疫抑制または免疫寛容である。従って、進行を妨げそして/または腫瘍を除去するに十分な範囲および強さの免疫応答を惹起するワクチン実施形態を確立する必要が存在する。
【0004】
本発明において使用されるエピトープアプローチは、それが、標的腫瘍関連抗原(TAA)の別個の領域および/または他のTAAの領域からの種々の抗体、CTLエピトープおよびHTLエピトープを単一のワクチン組成物に組み込み可能にするという点で、この難題に対する解決を示す。このような組成物は、複数のドミナント(dominant)エピトープおよびサブドミナントエピトープを同時に標的とし得、それにより種々の集団における有効な免疫を達成するために使用され得る。
【0005】
癌胎児性抗原(CEA)は、ほとんどのヒト腺癌(結腸腺癌、直腸腺癌、膵臓腺癌および胃腺癌を含む)(Muraroら、Cancer Res.45:5769〜5780、1985)上で、ならびに乳癌の50%(Stewardら、Cancer(Phila)33:1246〜1252、1974)および非小細胞肺癌の70%(Vincentら、J.Thorac.Cardiocvasc.Surg.66:320〜328、1978)上で過剰発現される、180kDの細胞表面および分泌糖タンパク質である。CEAはまた、いくらかの程度、正常な上皮組織上で発現され、そしていくつかの胎児組織上でも発現される(Thompsonら、J.Clin.Lab.Anal.5;344〜366、1991)。癌細胞上での異常に高い発現は、CEAを免疫療法についての重要な標的にする。
【0006】
この節において提供される情報は、本出願の出願日時点で現在理解されている技術水準を開示することが意図される。本出願の優先日後に得られた情報は、この節に含まれる。従って、この節の情報は、いかようにも、本発明の優先日で線引きすることが意図されない。
【0007】
(II.発明の要旨)
本発明は、例えば、TAAに対するエピトープベースワクチンを開発するために、抗原がT細胞によって認識される機構についての本発明者らの知識を適用する。より詳細には、本願は、特異的エピトープの薬学的組成物ならびに癌の予防および処置における使用方法についての、本発明者らの発見を伝える。
【0008】
適切な技術の開発により、このエピトープベースワクチンの使用は、特に、ワクチン組成物における抗原全体の使用と比較した場合に、現在のワクチンを超えるいくつかの利点を有する。例えば、抗原全体中に存在し得る免疫抑制エピトープが、エピトープベースワクチンの使用により回避され得る。このような免疫抑制エピトープは、例えば、抗原全体におけるイムノドミナントエピトープに対応し得、これは、非ドミナント領域からペプチドエピトープを選択することによって回避され得る(例えば、Disisら、J.Immunol.156:3151〜3158、1996を参照のこと)。
【0009】
エピトープベースワクチンのアプローチのさらなる利点は、選択されたエピトープ(CTLおよびHTL)を組み合わせる能力であり、さらに(例えば、増強された免疫原性を達成する)これらのエピトープの組成を改変する能力である。従って、免疫応答は、標的疾患について適切なように調節され得る。この応答の類似の操作は、従来のアプローチでは可能でない。
【0010】
エピトープベース免疫刺激ワクチンの別の主な利点は、その安全性である。それ自体の固有の生物学的活性を有し得る病原菌(infectious agent)またはタンパク質抗原全体によって引き起こされる、可能性のある病理学的副作用は、排除される。
【0011】
エピトープベースワクチンはまた、同じ病原体(「病原体」とは、病原菌または腫瘍関連分子であり得る)由来の複数の選択された抗原に対して免疫応答を指向し焦点を合わせる能力を提供する。従って、特定の病原体に対する免疫応答における患者間の変動性は、ワクチン組成物に、この病原体由来の複数の抗原由来のエピトープを含めることによって軽減され得る。
【0012】
さらに、エピトープベース抗腫瘍ワクチンはまた、複数の腫瘍関連分子に由来するエピトープを組み合わせる機会を提供する。従って、この能力は、所定の腫瘍型について広く標的とする抗腫瘍ワクチンを開発する場合に生じる腫瘍間の変動性という問題に取り組み得、そしてまた、抗原損失に起因する腫瘍の逸脱の可能性を減少し得る。例えば、1人の患者中の乳癌腫瘍は、別の患者中の乳癌腫瘍と異なる標的TAAを発現し得る。複数のTAAに由来するエピトープが、両方の乳癌腫瘍を標的とするポリエピトープワクチンに含まれ得る。
【0013】
しかし、広く効果的なエピトープベース免疫療法剤の開発に対する最も困難な障壁の1つは、HLA分子の極度な多型性であった。今日まで、非遺伝学的偏向がない有効な集団適用範囲は、かなり複雑な課題であり;このような適用範囲は、各々個々のHLA対立遺伝子に対応するHLA分子に特異的なエピトープを使用することを必要とした。従って、民族的に多様な集団をカバーするためには、実行不可能に多くの数のエピトープを使用しなければならなかった。従って、エピトープベースワクチンにおける使用のための、複数のHLA抗原分子が結合したペプチドエピトープの必要性が存在していた。結合するHLA抗原分子数が多いほど、ワクチンによる集団の適用範囲の広さは大きくなる。
【0014】
さらに、より詳細に本明細書中に記載されるように、ペプチド結合特性を(例えば、複数のHLA抗原に結合し得るペプチドが、免疫応答を刺激する親和性で複数のHLA抗原に結合するように)調節する必要性が存在していた。免疫原性に相関する親和性で1つより多くHLA対立遺伝子によって拘束されるエピトープの同定が、十分な集団適用範囲を提供するため、そしてその集団の多様な部分において感染を予防または排除するに十分に強力な応答の誘発を可能にするために、重要である。このような応答はまた、広範な多くのエピトープを標的し得る。本明細書中に開示される技術は、このような好ましい免疫応答を提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物に含むためのエピトープは、既知の抗原のタンパク質配列を、モチーフ保有エピトープまたはスーパーモチーフ保有エピトープの存在について評価するプロセスによって、選択される。次いで、モチーフ保有エピトープまたはスーパーモチーフ保有エピトープに対応するペプチドを合成し、そしてそれらのペプチドを、その選択されたモチーフを認識するHLA分子に結合する能力について試験する。中程度の親和性または高い親和性(すなわち、HLAクラスI分子ついては、IC50(またはK値)500nM以下、またはHLAクラスII分子については、IC501000nM以下で結合するこれらのペプチドを、CTL応答またはHTL応答を誘導するそれらの能力についてさらに評価する。免疫原性ペプチドエピトープを、ワクチン組成物に含むために選択する。
【0016】
スーパーモチーフ保有ペプチドを、HLAスーパータイプファミリー内の複数の対立遺伝子に結合する能力について、さらに試験し得る。さらに、ペプチドエピトープを、HLAスーパータイプ内の複数の対立遺伝子に対する結合親和性および/またはこれら複数の対立遺伝子に結合する能力を改変するために、アナログ化し得る。
【0017】
本発明はまた、既知のHLA型を有する患者において、TAAに対する免疫応答をモニターまたは評価するための方法を含む、実施形態を包含する。このような方法は、患者由来のTリンパ球サンプルを、TAAエピトープを含むペプチド組成物と共にインキュベートする工程、および、このペプチドに結合するTリンパ球の存在について検出する工程を包含し、このTAAエピトープは、その患者に存在する少なくとも1つのHLA対立遺伝子の産物を結合する、表XXIII〜XXVIIおよび表XXXIに記載のアミノ酸配列を有する。CTLペプチドエピトープは、例えば、この型の分析のためのテトラマー複合体の成分として使用され得る。
【0018】
本発明に従うペプチドエピトープを規定するための代替的様式は、特定の対立遺伝子特異的HLA分子または対立遺伝子特異的HLA分子のグループへの結合に相関される、物理的特性(例えば、長さ;一次構造;または電荷)を記載することである。ペプチドエピトープを規定するためのさらなる様式は、HLA結合ポケットの物理的特性またはいくつかの対立遺伝子特異的HLA結合ポケットに共有される特性(例えば、ポケットの形状および電荷分布)を記載すること、およびこのペプチドエピトープがポケット(単数または複数)に適合しそして結合することを記載することである。
【0019】
以下の議論から明らかなように、他の方法および実施形態もまた意図される。さらに、本明細書中の方法のいずれかによって生成された新規合成ペプチドもまた、本発明の一部である。
【0020】
(III.図面の簡単な説明)
適用されず。
【0021】
(IV.発明の詳細な説明)
本発明のペプチドエピトープおよび対応する核酸組成物は、CTL応答またはHTL応答の生成を刺激することによって、TAAに対する免疫応答を刺激するために有用である。これらのペプチドエピトープは、ネイティブTAAタンパク質アミノ酸配列に直接的または間接的に由来し、HLA分子に結合し得そしてTAAに対する免疫応答を刺激し得る。分析されるTAAタンパク質の完全配列は、Genbankより入手され得る。以下に提供する開示から明らかなように、ペプチドエピトープおよびそのアナログはまた、配列情報から容易に決定され得、配列情報は、今後、以前に未知であった特定のTAAの改変体について発見されるかもしれない。
【0022】
標的TAAの一覧としては、以下の抗原が挙げられるが、これらに限定されない:MAGE1、MAGE2、MAGE3、MAGE−11、MAGE−A10、BAGE、GAGE、RAGE、MAGE−C1、LAGE−1、CAG−3、DAM、MUC1、MUC2、MUC18、NY−ESO−1、MUM−1、CDK4、BRCA1、NY−LU−1、NY−LU−7、NY−LU−12、CASP8、RAS、KIAA−2−5、SCC、p53、p73、CEA、Her2/neu、Melan−A、gp100、チロシナーゼ、TRP2、gp75/TRP1、カリクレイン、PSM、PAP、PSA、PT1−1、B−カテニン、PRAME、テロメラーゼ、FAK、サイクリンD1タンパク質、NOEY2、EGF−R、SART−1、CAPB、HPVE7、p15、葉酸レセプターCDC27、PAGE−1およびPAGE−4.
本発明のペプチドエピトープは、以下で議論されるように、多くの方法で同定された。特定のアミノ酸残基を改変して、変化した免疫原性を示すペプチドアナログを作製することによって、アナログペプチドを誘導し、そしてHLA分子の結合活性が調節されることもまた、より詳細に議論する。さらに、本発明は、種々の対立遺伝子によってコードされるHLA分子と相互作用し得るエピトープベースワクチンに、先行技術のワクチンよりも広い集団適用範囲を提供させ得る、組成物および組成物の組み合わせを提供する。
【0023】
(IV.A.定義)
本発明は、アルファベット順に列挙した、以下の定義を参照してより良好に理解され得る。
【0024】
「コンピューター」または「コンピューターシステム」は、一般に、以下を備える:プロセッサー;少なくとも1つの情報記憶/検索装置(例えば、ハードドライブ、ディスクドライブまたはテープドライブなど);少なくとも1つの入力装置(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、またはマイクロホンなど);およびディスプレイ構造。さらに、コンピューターは、ネットワークと連絡する通信チャネルを備え得る。このようなコンピューターは、多かれ少なかれ、上記に列挙したものを備え得る。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「構築物」は、一般に、天然に存在しない組成物を示す。構築物は、核酸またはアミノ酸についての合成技術(例えば、組換えDNAの調製および発現または化学合成技術)によって、生成され得る。構築物はまた、結果としてその形態が天然において見い出されないように、ある材料への別の材料の付加または添加(affiliation)によって生成され得る。
【0026】
「交差反応結合」とは、1より多いHLA分子がペプチドに結合することを示し;同義語は、縮重(degenerate)結合である。
【0027】
「潜在(criptic)エピトープ」は、単離されたペプチドでの免疫によって応答を誘導するが、そのエピトープを含むインタクトなタンパク質全体が抗原として使用される場合に、その応答は、インビトロで交差反応性でない。
【0028】
「ドミナント(dominant)エピトープ」は、ネイティブ抗原全体での免疫に際して免疫応答を誘導するエピトープである(例えば、Sercarzら、Annu.Rev.Immunol.11:729−766,1993を参照のこと)。このような応答は、単離されたペプチドエピトープとは、インビトロで交差反応性である。
【0029】
特定のアミノ酸配列に関して、「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセットであるか、またはT細胞の状況下では、T細胞レセプタータンパク質および/または主要組織適合遺伝子複合体(MHC)レセプターによる認識に必要な残基である。インビボまたはインビトロでの免疫系の設定において、エピトープは、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を共に形成する、分子の集団的特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造および三次ペプチド構造および電荷のような)である。本開示全体を通して、エピトープおよびペプチドは、しばしば、交換可能に使用される。
【0030】
本発明のエピトープおよびさらなるアミノ酸を含むタンパク質またはペプチド分子が、本発明の範囲内にあることが理解されるべきである。特定の実施形態において、さもなければ本明細書で規定されるような構築物ではないとする、本発明のペプチドの長さに関する制限が存在する。長さが制限される実施形態は、本発明のエピトープを含むタンパク質/ペプチドがネイティブ配列と100%同一性を有する領域(すなわち、一連の連続するアミノ酸)を含む場合に、生じる。例えば、天然分子全体に対する読み取り枠由来の具陳したエピトープの定義を回避するために、ネイティブペプチド配列との100%同一性を有する任意の領域の長さが制限される。従って、本発明のエピトープおよびネイティブペプチド配列との100%同一性を有する領域を含む(そして、さもなければ構築物ではない)ペプチドについて、ネイティブ配列に対する100%同一性を有するその領域は、一般に、600アミノ酸以下、しばしば、500アミノ酸以下、しばしば、400アミノ酸以下、しばしば、250アミノ酸以下、しばしば、100アミノ酸以下、しばしば、85アミノ酸以下、しばしば、75アミノ酸以下、しばしば、65アミノ酸以下、そしてしばしば、50アミノ酸以下の長さを有する。特定の実施形態において、構築物ではない本発明の「エピトープ」は、ネイティブペプチド配列に対して100%同一性を有する51アミノ酸未満(任意の変化量(50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5)のアミノ酸から5アミノ酸まで)の領域を有するペプチドに含まれる。
【0031】
600アミノ酸より長い特定のペプチドまたはタンパク質配列は、本発明の範囲内である。このような長い配列は、それらが、ネイティブペプチド配列との100%同一性を有する600アミノ酸よりも大きい任意の連続配列を含まない限り、または、600アミノ酸より長い場合には、それらが構築物である限り、本発明の範囲内にある。ネイティブ配列に対応する5以下連続する残基を有する任意のペプチドについては、本発明の範囲内にあるための、そのペプチドの最大長さに対する制限は存在しない。本発明のCTLエピトープは、600未満の任意の変化分の残基長から8アミノ酸残基であることが、現在では好ましい。
【0032】
「ヒトリンパ球抗原」または「HLA」は、ヒトクラスIまたはクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質(例えば、Stitesら、Immunology、第8版、Lange Publishing,Los Altos,CA(1994)を参照のこと)である。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「HLAスーパータイプまたはファミリー」とは、共有するペプチド結合特異性に基づいてグループ化したHLA分子のセットを記載する。特定のアミノ酸モチーフを保有するペプチドに対して幾分類似した結合親和性を共有するHLAクラスI分子は、HLAスーパータイプにグループ化される。用語HLAスーパーファミリー、HLAスーパータイプファミリー、HLAファミリーおよびHLA xx様分子(ここで、xxは、特定のHLA型を示す)は、同義である。
【0034】
本開示全体を通して、結果を、用語「IC50」で表す。IC50は、参照ペプチドの結合の50%阻害が観察される、結合アッセイにおけるペプチドの濃度である。アッセイを行う条件(すなわち、律速のHLAタンパク質濃度および標識ペプチド濃度)を考慮すると、これらの値は、K値と近似する。結合を測定するためのアッセイは、例えば、PCT公開WO94/20127およびWO94/03205に、詳細に記載される。IC50値が、アッセイ条件が変化する場合に、そして使用する特定の試薬(例えば、HLA調製物など)に依存して、(しばしば、劇的に)変化し得ることに留意するべきである。例えば、過剰濃度のHLA分子は、所定のリガンドの見かけ上測定されるIC50を増加させる。
【0035】
あるいは、結合は、参照ペプチドと関連して表される。特定のアッセイが、より高感度またはより低感度になるにつれて、試験するペプチドのIC50は、幾分変化し得るが、参照ペプチドに対する結合は、有意には変化しない。例えば、参照ペプチドのIC50が10倍増加するような条件下で行うアッセイにおいて、試験ペプチドのIC50値もまた、約10倍シフトする。従って、あいまい性を回避するために、ペプチドが良好な結合因子であるか、中程度の結合因子であるか、弱い結合因子であるかまたはネガティブな結合因子であるかの評価は、一般に、標準ペプチドのIC50と相対的な、そのIC50に基づく。
【0036】
結合はまた、以下を使用するアッセイ系を含む、他のアッセイ系を使用して測定され得る:生細胞(例えば、Ceppelliniら、Nature 339:392,1989;Christnickら、Nature 352:67、1991;Buschら、Int.Immunol.2:443、19990;Hillら、J.Immunol.147:189、1991;del Guercioら、J.Immunol.154:685,1995)、界面活性剤溶解物を使用する無細胞系(例えば、Cerundoloら、J.Immunol.21:2069,1991)、固定した精製MHC(例えば、Hillら、J.Immunol.152,2890,1994;Marshallら、J.Immunol.152:4946,1994)、ELISA系(例えば、Reayら、EMBO J.11:2829,1992)、表面プラズモン共鳴(例えば、Khilkoら、J.Biol.Chem.268:15425,1993);高フラックス可溶相アッセイ(high flux solublephase assay)(Hammerら、J.Exp.Med.180:2353,1994)、およびクラスI MHCの安定化またはアセンブリの測定(例えば、Ljunggrenら、Nature 346:476、1990;Schumacherら、Cell 62:563、1990;Townsendら、Cell 62:285、1990;Parkerら、J.Immunol.149;1896,1992)。
【0037】
本明細書中で使用される場合、HLAクラスI分子に関する「高親和性」とは、50nM以下のIC50またはK値での結合として定義され;「中程度の親和性」とは、約50nMと約500nMとの間のIC50またはK値での結合である。HLAクラスII分子への結合に関する「高親和性」とは、100nM以下のIC50またはK値での結合として定義され;「中程度の親和性」とは、約100nMと約1000nMとの間のIC50またはK値での結合である。
【0038】
2以上のペプチド配列の状況下で、用語「同一」またはパーセント「同一性」とは、配列比較アルゴリズムを使用してかまたは手動の整列化および目視検査によって測定されるように、比較ウインドウにわたる最大一致について比較および整列化した場合に、同じであるかまたは特定のパーセンテージの同一アミノ酸残基を有する、2以上の配列または部分配列をいう。
【0039】
「免疫原性ペプチド」または「ペプチドエピトープ」とは、そのペプチドがHLA分子を結合しそしてCTL応答および/またはHTL応答を誘導するような、対立遺伝子特異的モチーフまたはスーパーモチーフを含むペプチドである。従って、本発明の免疫原性ペプチドは、適切なHLA分子に結合し得、そしてその後、免疫原性ペプチドが由来する抗原に対する、細胞傷害性T細胞応答またはヘルパーT細胞応答を誘導し得る。
【0040】
句「単離された」または「生物学的に純粋」とは、そのネイティブ状態において見い出される場合に通常その物質に付随する成分を、実質的または本質的に含まない物質をいう。従って、本発明に従う単離されたペプチドは、好ましくは、そのインサイチュ環境下でそのペプチドに通常会合する物質を含まない。
【0041】
「連結」または「結合」とは、ペプチドを機能的に接続するための当該分野で公知の任意の方法をいい、これらには、組換え融合、共有結合、ジスルフィド結合、イオン結合、水素結合、および静電結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
「主要組織適合遺伝子複合体」または「MHC」は、生理的免疫応答を担う細胞性相互作用の制御において役割を担う遺伝子のクラスターである。ヒトにおいて、MHC複合体はまた、HLA複合体として公知である。MHC複合体およびHLA複合体の詳細な説明については、Paul、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY,第3版、Raven Press,New York,1993を参照のこと。
【0043】
用語「モチーフ」は、規定された長さのペプチドにおける残基のパターンをいう。一般に、クラスI HLAモチーフについて約8〜約13アミノ酸およびクラスII HLAモチーフについて約6〜約25アミノ酸のペプチドであり、これは、特定のHLA分子によって認識される。ペプチドモチーフは、代表的には、各々のヒトHLA対立遺伝子によってコードされる各々のタンパク質について異なり、そして一次アンカー残基および二次アンカー残基のパターンにおいて異なる。
【0044】
「陰性な(negative)結合残基」または「有害な(deterious)残基」は、ペプチドエピトープにおける特定の位置(代表的には一次アンカー位置ではない)に存在する場合に、対応するHLA分子に対するペプチドの結合親和性の減少を生じさせるアミノ酸である。
【0045】
「非ネイティブ」な配列または「非ネイティブ」な「構築物」は、天然には見出されない(すなわち、「天然には存在しない」)配列をいう。このような配列としては、例えば、脂質化(lipidate)されるかさもなくば改変されたペプチド、およびネイティブなタンパク質配列中では連続しないエピトープを含むポリエピトープ性(polyepitopic)組成物が挙げられる。
【0046】
用語「ペプチド」は、本明細書中において「オリゴペプチド」と相互変換可能に使用され、(代表的には、隣接するアミノ酸のα−アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって)互いに連結される一連の残基(代表的にはL−アミノ酸)を示す。本発明の好ましいCTL誘導ペプチドは、13以下の残基長であり、そして通常、約8残基と約11残基との間(好ましくは9または10残基)からなる。好ましいHTL誘導オリゴペプチドは、約50残基長未満であり、そして通常、約6残基と約30残基との間からなり、より通常には、約12残基と25残基との間、そしてしばしば約15残基と20残基との間からなる。
【0047】
「薬学的に受容可能な」は、一般に、非毒性の、不活性な、および/または薬理学的に適合性の組成物をいう。
【0048】
「薬学的賦形剤」は、アジュバント、キャリア、pH調整剤、および緩衝剤のような物質、張度調整剤、湿潤剤、防腐剤などを含む。
【0049】
「一次アンカー残基」は、免疫原性ペプチドとHLA分子との間の接触点を提供することが理解されるペプチド配列に沿った特定位置におけるアミノ酸である。規定された長さのペプチド内の1〜3個(通常は2個)の一次アンカー残基は、一般に、免疫原性ペプチドについての「モチーフ」を規定する。これらの残基は、結合溝(groove)自身の特定のポケットにおいて埋没するこれらの側鎖を有する、HLA分子のペプチド結合溝(groove)と密接に接触して適合することが理解される。1つの実施形態において、例えば、一次アンカー残基は、本発明に従って9残基ペプチドエピトープの位置2(アミノ末端位から)およびカルボキシル末端位に配置される。各々のモチーフおよびスーパーモチーフについての一次アンカー位置は、表1に示される。例えば、アナログペプチドは、これらの一次アンカー位置における特定の残基の存在または非存在を変更することによって作製され得る。このようなアナログを使用して、特定のモチーフまたはスーパーモチーフを含むペプチドの結合親和性を調節する。
【0050】
「乱雑な認識」は、種々のHLA分子の状況下において、別々のペプチドが同一のT細胞クローンによって認識されることである。乱雑な認識または結合は、交差反応性結合と同義である。
【0051】
「防御免疫応答」または「治療的免疫応答」は、感染性因子または腫瘍抗原由来の抗原に対するCTL応答および/またはHTL応答をいい、これは、疾患の症状または進行を予防するかまたは少なくとも部分的に抑制する。免疫応答はまた、ヘルパーT細胞の刺激によって促進された抗体応答を含み得る。
【0052】
用語「残基」は、アミド結合またはアミド結合模倣物によってオリゴペプチドに組み込まれるアミノ酸またはアミノ酸模倣物をいう。
【0053】
「二次アンカー残基」は、ペプチドにおける一次アンカー位置以外の位置での、ペプチド結合に影響し得るアミノ酸である。二次アンカー残基は、結合したペプチドの中である位置でのアミノ酸の無秩序な分布によって期待されるより有意に高い頻度で生じる。二次アンカー残基は、「二次アンカー位置」で生じるといわれる。二次アンカー残基は、高い親和性もしくは中程度の親和性で結合するペプチドの中でより高頻度で存在する残基、またはさもなくば高い親和性もしくは中程度の親和性の結合と関連する残基として同定され得る。例えば、アナログペプチドは、これらの二次アンカー位置における特定の残基の存在または非存在を変更することによって作製され得る。このようなアナログを使用して、特定のモチーフまたはスーパーモチーフを含むペプチドの結合親和性を良好に調節する。
【0054】
「サブドミナント(subdominant)エピトープ」は、エピトープを含む抗原全体での免疫に際して応答をほとんど引き起こさないかまたは全く引き起こさないが、単離されたペプチドでの免疫によって応答が得られ得るエピトープであり、そして(潜在エピトープの場合とは異なり)この応答は、タンパク質全体を使用してインビトロまたはインビボでの応答をリコール(recall)する場合に、検出される。
【0055】
「スーパーモチーフ」は、2つ以上のHLA対立遺伝子によってコードされるHLA分子によって共有されるペプチド結合特異性である。好ましくは、スーパーモチーフ保有ペプチドは、2つ以上のHLA抗原によって高い親和性または中程度の親和性(本明細書中に規定される)で認識される。
【0056】
「合成ペプチド」は、化学合成または組換えDNA技術のような方法を使用してヒトが作製したペプチドをいう。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「ワクチン」は、本発明の1つ以上のペプチドを含む組成物である。本発明に従うワクチンの実施形態(例えば、1つ以上のペプチドのカクテルによって;ポリエピトープ性のペプチドによって含まれる本発明の1以上のエピトープ;または、このようなペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸(例えば、ポリエピトープ性のペプチドをコードするミニジーン(minigene)))が数多く存在する。「1つ以上のペプチド」は、1〜150の単位整数全体のいずれか(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145もしくは150またはそれより多く)の本発明のペプチドを含み得る。これらのペプチドまたはポリペプチドは、必要ならば、例えば、脂質化、標的化配列もしくは他の配列の付加によって改変され得る。本発明のHLAクラスI結合ペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球の両方の活性化を促進するために、HLAクラスII結合ペプチドと混合され得るかまたは連結され得る。ワクチンはまた、ペプチドでパルス(pulse)された抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を含み得る。
【0058】
ペプチド化合物を記載するために使用される命名法は、慣用的な実践に従い、ここで、アミノ基は各々のアミノ酸残基の左(N末端)そしてカルボキシル基は右(C末端)に示される。アミノ酸残基位置がペプチドエピトープにおいて言及される場合、これらは、エピトープ、または一部分であり得るペプチドもしくはタンパク質のアミノ末端に近接する位置である位置により、アミノからカルボキシルの方向において番号付けられる。本発明の選択された特定の実施形態を示す形式において、特には示されないが、アミノ末端基およびカルボキシル末端基は、さもなくば特定されない場合に生理学的pH値でとる形態である。アミノ酸構造の形式において、各残基は、一般に、標準的な3文字表記または1文字表記によって示される。L−型のアミノ酸残基は、大文字の1文字または3文字記号の最初の文字の大文字によって示され、そしてD−型を有するこれらのアミノ酸についてのD−型は、小文字の1文字または小文字の3文字記号によって示される。グリシンは、非対称の炭素原子を有さず、そして単に「Gly」またはGとしていわれる。本明細書中で示されるペプチドのアミノ酸配列は、一般的に、標準的な1文字記号を使用して示される(A,アラニン;C,システイン;D,アスパラギン酸;E,グルタミン酸;F,フェニルアラニン;G,グリシン;H,ヒスチジン;I,イソロイシン;K,リジン;L,ロイシン;M,メチオニン;N,アスパラギン;P,プロリン;Q,グルタミン;R,アルギニン;S,セリン;T,トレオニン;V,バリン;W,トリプトファン;およびY,チロシン)。これらの記号に加えて、本明細書中で使用される1文字略語「B」は、α−アミノ酪酸を示す。
【0059】
(IV.B.CTL応答およびHTL応答の刺激)
T細胞が抗原を認識するメカニズムは、過去10年間に記述されている。免疫系についての本発明者等の理解に基づいて、広範な集団におけるTAAに対する治療的または予防的な免疫応答を誘発し得る有効なペプチドエピトープワクチン組成物を本発明者等は開発してきた。特許請求した組成物の価値および効力を理解するために、免疫学関連技術についての簡単な概説を提供する。この概説は、本出願の出願日の時点での、当該分野の目下の理解水準を開示することが意図される。本出願の優先日後に発生した情報は、本節に含まれる。したがって本節の情報は、いかなる点でも、本発明に関する優先日を記述するよう意図されない。
【0060】
HLA分子とペプチド抗原との複合体は、HLA拘束T細胞により認識されるリガンドとして作用する(Buus,S.ら、Cell 47:1071,1986;Babbitt,B.P.ら、Nature 317:359,1985;Townsend,A.and Bodmer,H.,Annu.Rev.Immunol.7:601,1989;Germain,R.N.,Annu.Rev.Immunol.11:403,1993)。単一アミノ酸置換抗原アナログの研究、ならびに内因的結合した天然でプロセシングされたペプチドの配列決定により、HLA抗原分子に特異的に結合するために必要とされるモチーフに対応する重要な残基が同定されており、本明細書中に記載され、表I、表IIおよび表IIIに示されている(例えば、Southwoodら、J.Immunol.160:3363,1998;Rammenseeら、Immunogenetics 41:178,1995;Rammenseeら、SYFPEITHI、http://134.2.96.221/scripts.hlaserver.dll/home.htmにてウェブを介するアクセス;Sette,A.and Sidney,J.Curr.Opin.Immunol.10:478,1998;Engelhard,V.H.,Curr.Opin.Immunol.6:13,1994;Sette,A.and Grey,H.M.,Curr.Opin.Immunol.4:79,1992;Sinigaglia,F.and Hammer,J.Curr.Biol.6:52,1994;Ruppertら、Cell 74:929−937,1993;Kondoら、J.Immunol.155:4307−4312,1995;Sidneyら、J.Immunol.157:3480−3490,1996;Sidneyら、Human Immunol.45:79−93,1996;Sette,A.and Sidney,J.Immunogenetics 1999 Nov;50(3−4):201−12,Reviewも参照のこと)。
【0061】
さらにHLAペプチド複合体のX線結晶解析は、ペプチドリガンドにより運ばれたされる残基を対立遺伝子特異的様式で収容するHLA分子のペプチド結合裂溝(cleft)内のポケットを明示した。これらの残基は次に、それらが存在するペプチドのHLA結合能力を決定する(例えば、Madden,D.R.、Annu.Rev.Immunol.13:587,1995;Smithら、Immunity 4:203,1996;Fremontら、Immunity 8:305,1998;Sternら、Structure 2:245,1994;Jones,E.Y.、Curr.Opin.Immunol.9:75,1997;Brown,J.H.ら、Nature 364:33,1993;Guo,H.C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8053,1993;Guo,H.C.ら、Nature 360:364,1992;Silver,M.L.ら、Nature 360:367,1992;Matsumura,M.ら、Science 257:927,1992;Maddenら、Cell 70:1035,1992;Fremont,D.H.ら、Science 257:919,1992;Saper,M.A.,Bjorkman,P.J.and Wiley,D.C.,J.Mol.Biol.219:277,1991を参照のこと)。
【0062】
したがって、クラスI対立遺伝子特異的HLA結合モチーフおよびクラスII対立遺伝子特異的HLA結合モチーフの規定、あるいはクラスIスーパーモチーフまたはクラスIIスーパーモチーフの規定は、特定のHLA分子を結合する可能性を有するタンパク質内の領域の同定を可能にする。
【0063】
本明細書中に開示する結合親和性と免疫原性との相関は、候補ペプチドを評価する場合に考えられるべき重要な因子であるということを本発明者等は見出した。したがって、モチーフ検索とHLA−ペプチド結合アッセイとの組合せにより、エピトープベースのワクチンのための候補物が同定された。それらの結合親和性を決定後、さらなる確認作業を実行して、これらのワクチン候補物の中で、集団適用範囲、抗原性および免疫原性に関して好ましい特徴を有するエピトープを選択し得る。
【0064】
免疫原性を評価するために種々の戦略が利用され得る。それらの例を以下に挙げる:
1)正常個体由来の初代T細胞培養物の評価(例えば、Wentworth,P.A.ら、Mol.Immunol.32:603,1995;Celis,E.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2105,1994;Tsai,V.ら、J.Immunol.158:1796,1997;Kawashima,I.ら、Human Immunol.59:1,1998を参照のこと)。これらの手順は、数週間の期間に亘るインビトロでの抗原提示細胞の存在下での、正常被験者由来の末梢血リンパ球(PBL)の試験ペプチドによる刺激を包含する。このペプチドに特異的なT細胞は、この時間中に活性化され、例えばペプチド感作標的細胞を包む51Cr放出アッセイを用いて検出される。
【0065】
2)HLAトランスジェニックマウスの免疫(例えば、Wentworth,P.A.ら、J.Immunol.26:97,1996;Wentworth,P.A.ら、Int.Immunol.8:651,1996;Alexander,J.ら、J.Immunol.159:4753,1997を参照のこと)。この方法では、不完全フロイントアジュバント中のペプチドが、HLAトランスジェニックマウスに皮下投与される。免疫後数週間目に、脾臓細胞が取り出され、試験ペプチドの存在下で約1週間、インビトロで培養される。例えばペプチド感作標的細胞と内因的に生成された抗原を発現する標的細胞とを包む、51Cr放出アッセイを用いて、ペプチド特異的T細胞が検出される。
【0066】
3)効果的にワクチン接種された患者または腫瘍を有する患者からのリコール(recall)T細胞応答の立証(例えば、Rehermann,B.ら、J.Exp.Med.181:1047,1995;Doolan,D.L.ら、Immunity 7:97,1997;Bertoni,R.ら、J.Clin.Invest.100:503,1997;Threlkeld,S.C.ら、J.Immunol.159:1648,1997;Diepolder,H.M.ら、J.Virol.71:6011,1997;Tsangら、J.Natl.Cancer Inst.87:982−990,1995;Disisら、J.Immunol.156:3151−3158,1996を参照のこと)。この戦略の適用に際しては、リコール応答は、「自然に」免疫応答を生じていた癌患者由来のPBL、あるいは腫瘍抗原ワクチンでワクチン接種された患者由来のPBLを培養することにより検出される。被験者由来のPBLは、試験ペプチドおよび抗原提示細胞(APC)の存在下で1〜2週間インビトロで培養されて、「ナイーブ」T細胞と比較した場合、「記憶」T細胞の活性化を可能にする。培養期間終了時に、ペプチド感作標的、T細胞増殖またはリンホカイン放出を包含する51Cr放出を含めたT細胞活性に関するアッセイを用いて、T細胞活性が検出される。
【0067】
本発明のペプチドエピトープおよび対応する核酸を以下で説明する。
【0068】
(IV.C.HLA分子に関するペプチドエピトープの結合親和性)
本明細書中で示されているように、HLA多型の大きな程度は、ワクチン開発に対するエピトープベースのアプローチに関して考慮されるべき重要な因子である。この因子に対処するために、複数のHLA分子に高親和性または中親和性で結合し得るペプチドの同定を包含するエピトープ選択が好ましくは利用され、最も好ましくはこれらのエピトープは、高親和性または中親和性で2つ以上の対立遺伝子特異的HLA分子に結合する。
【0069】
ワクチン組成物のための目的のCTL誘導性ペプチドとしては、クラスI HLA分子についてのIC50または結合親和性値、好ましくは500nMまたはそれより優れた値(すなわち、その値は500nM以下である)を有するものが挙げられる。HTL誘導性ペプチドとしては、クラスII HLA分子についてのIC50または結合親和性、、好ましくは1000nMまたはそれより優れた値(すなわち、その値は1000nM以下である)を有するものが挙げられる。例えばペプチド結合は、インビトロで精製HLA分子に結合する候補ペプチドの能力を試験することにより評価される。次に、高親和性または中親和性を示すペプチドが、さらなる分析のために考慮される。選択されたペプチドは、スーパータイプファミリーの他のメンバーに対して試験される。好ましい実施形態では、交差反応結合を示すペプチドは次に、細胞スクリーニング分析またはワクチンにて用いられる。
【0070】
本明細書中に開示するように、高いHLA結合親和性ほど、高い免疫原性と相関する。より高い免疫原性は、いくつかの異なる方法で表示され得る。免疫原性は、免疫応答が少しでも惹起されるのか否か、および任意の特定の応答の強さ、ならびに応答が惹起される集団の程度に対応している。例えばペプチドは、多様な群の集団にて免疫応答を惹起し得るが、しかし強力な応答を生じることはない。さらに高結合親和性ペプチドほど、より強力な免疫原性応答を引き起こす。その結果、高親和性結合ペプチドまたは中親和性結合ペプチドが用いられる場合には、同様の生物学的作用を惹起するために、より少ないペプチドしか必要とされない。したがって本発明の好ましい実施形態では、高親和性結合エピトープまたは中親和性結合エピトープが、特に有用である。
【0071】
HLAクラスI分子に対する結合親和性と結合した抗原上の別々のペプチドエピトープの免疫原性との関係は、本発明人等により当該分野で初めて決定された。結合親和性と免疫原性との相関は、2つの異なる実験アプローチで分析された(例えば、Setteら、J.Immunol.153:5586−5592,1994を参照のこと)。最初のアプローチでは、HLA結合親和性における10,000倍の範囲を超える潜在エピトープの免疫原性が、HLA−A0201トランスジェニックマウスで分析された。第二のアプローチでは、全てA0201結合モチーフを保有している約100個の異なるB型肝炎ウイルス(HBV)由来潜在エピトープの抗原性が、急性肝炎患者由来のPBLを用いて評価された。これらのアプローチにしたがって、親和性閾値約500nM(好ましくは50nM以下)がCTL応答を惹起するペプチドエピトープの能力を決定するということを決定した。これらのデータは、天然でプロセシングされたペプチドについてのクラスI結合親和性測定値、ならびに合成T細胞エピトープについてのクラスI結合親和性測定値に関しては、正しい。これらのデータは、T細胞応答の決定に際しての決定基選択の重要な役割も示す(例えば、Schaefferら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4649−4653,1989を参照のこと)。
【0072】
HLAクラスII DR分子の状況での免疫原性に関連した親和性閾値も記述されている(例えば、Southwoodら、J.Immunology 160:3363−3373,1998および同時係属中の米国特許出願第09/009,953号(1998年1月21日出願)を参照のこと)。DR結合親和性の生物学的に有意の閾値を規定するために、それらの拘束エレメント(すなわちモチーフを結合するHLA分子)に対する32DR拘束エピトープの結合親和性のデータベースが編集された。約半数の例(32個のうちの15個のエピトープ)において、DR拘束は高結合親和性(すなわち、100nM以下の結合親和性値)に関連した。他の半数の例(32個のうち16個)では、DR拘束は中親和性(100〜1000nM範囲の結合親和性値)に関連した。32例のうちの1例のみにおいて、DR拘束は1000nM以上のIC50に関連した。したがって1000nMは、DR分子の状況での免疫原性に関連した親和性閾値と規定され得る。
【0073】
腫瘍関連抗原の場合、ペプチドパルスされた標的細胞およびそのエピトープを内因的に発現する腫瘍細胞標的を溶解するCTLを誘導することが示されている多数のCTLペプチドエピトープが、200nM以下の結合親和性またはIC50値を示す。このようなTAAエピトープの結合親和性および免疫原性の関連を評価した研究では、高結合剤(すなわち50nM以下の親和性で結合するペプチドエピトープ)の100%(10/10)が免疫原性であり、それらの80%(8/10)が、腫瘍細胞を特異的に認識するCTLを惹起した。51〜200nM範囲で、非常によく似た数値が得られた。ペプチドおよび腫瘍細胞に対して陽性であるCTL誘導は、それぞれペプチドの86%(6/7)および71%(5/7)認められた。201〜500nM範囲では、ほとんどのペプチド(4/5野生型)が、野生型ペプチドを認識するCTLの誘導に関して陽性であったが、腫瘍認識は検出されなかった。
【0074】
HLA分子に対するペプチドの結合親和性は、以下の実施例1に記載されているように決定され得る。
【0075】
(IV.D.ペプチドエピトープ結合モチーフおよびスーパーモチーフ)
単一アミノ酸置換抗原アナログの研究、ならびに内因的に結合された天然でプロセシングされたペプチドの配列決定により、HLA分子との対立遺伝子特異的結合に必要とされる重要残基が同定されている。これらの残基の存在は、HLA分子に対する結合親和性と相関する。高親和性結合および中親和性結合と相関するモチーフおよび/またはスーパーモチーフの同定は、ワクチン中の含入物のための免疫原性ペプチドエピトープの同定に関して重要な問題である。Kast等(J.Immunol.152:3904−3912,1994)は、モチーフ保有ペプチドが対立遺伝子特異的HLAクラスI分子に結合するエピトープの90%を占めることを示した。この研究では、ヒトパピローマウイルス16型のE6タンパク質およびE7タンパク質の全体配列を網羅する、9アミノ酸長の、かつ、8個のアミノ酸を重複する考え得る全てのペプチド(240ペプチド)が、異なる民族群間で高頻度で発現される5つの対立遺伝子特異的HLA分子との結合に関して評価された。このペプチドの偏りのない組が、HLAクラスIモチーフの予測値の評価を可能にした。240ペプチドの組から、22ペプチドが、高親和性または中親和性で対立遺伝子特異的HLA分子に結合すると同定された。これら22ペプチドのうち、20ペプチド(すなわち91%)がモチーフ保有性であった。したがって、この研究は、ワクチン中に含めるためのペプチドエピトープの同定に関するモチーフの値を立証する。モチーフベースの同定技法の適用は、標的抗原タンパク質配列中の潜在エピトープの約90%を同定する。
【0076】
このようなペプチドエピトープは、下記の表中で確認される。
【0077】
本発明のペプチドは、MHCクラスIIDR分子に結合するエピトープも含む。そのペプチドのN末端およびC末端と比較して、モチーフのサイズおよび結合フレーム位置の両方における、より度合いの高い不均一性が、クラスIIペプチドリガンドに存在する。HLAクラスIIペプチドリガンドのこの不均一性の増大は、そのクラスI対応部分と違って両端で開いている、HLAクラスII分子の結合溝(groove)の構造によるものである。HLAクラスIIDRB0101ペプチド複合体の結晶解析は、結合の主エネルギーが、DRB0101分子上の相補的ポケットと複合体化されたペプチド残基によるものであることを示した。重要なアンカー残基は、最も深い疎水性ポケットにかみ合い(例えば、Madden,D.R.Ann.Rev.Immunol.13:587,1995を参照のこと)、位置1(P1)と呼ばれる。P1はクラスII結合ペプチドエピトープのN末端残基を表し得るが、さらに典型的には、1つ以上の残基によりN末端方向に隣接される。他の研究は、種々のDR分子との結合に関して、P1に対して、C末端方向への6番目の位置のペプチド残基に関する重要な役割もまた指摘している。
【0078】
過去数年間、ほぼ重複するペプチド結合レパートリーならびに主ペプチド結合ポケットのコンセンサス構造により各々特徴づけされる、多くのHLAクラスI分子およびHLAクラスII分子が、比較的少数のスーパータイプに分類され得ることを立証する証拠が蓄積されてきた。したがって本発明のペプチドは、いくつかのHLA特異的アミノ酸モチーフ(例えば表I〜IIIを参照のこと)のいずれか1つによってか、またはそのモチーフの存在がいくつかの対立遺伝子特異的HLA分子を結合する能力に対応する場合には、スーパーモチーフにより、同定される。特定のアミノ酸スーパーモチーフを保有するペプチドに結合するHLA分子は、集合的にHLA「スーパータイプ」と呼ばれる。
【0079】
下記の、ならびに表I〜IIIに要約されたペプチドモチーフおよびスーパーモチーフは、本発明に従ったペプチドエピトープの同定および使用に関する指針を提供する。
【0080】
それぞれのスーパーモチーフまたはモチーフを保有するペプチドエピトープの例は、下記の各モチーフまたはスーパーモチーフの説明において示される表中に含まれている。表は、ペプチドエピトープのいくつかに関して列挙される結合親和性比を含む。その比は、以下の式を用いてIC50に変換され得る:標準ペプチドのIC50/比=試験ペプチド(すなわちペプチドエピトープ)のIC50。クラスIペプチドに関する結合親和性を決定するために用いられる標準ペプチドのIC50値は、表IVに示されている。クラスIIペプチドに関する結合親和性を決定するために用いられる標準ペプチドのIC50値は、表Vに示されている。本明細書中に記載した結合アッセイのための標準として用いられるペプチドは、標準の例である。代替的標準ペプチドも、結合試験を実施する場合に用いられ得る。
【0081】
表VII〜XXの各々に列挙したペプチドエピトープ配列を得るために、指定スーパーモチーフまたはモチーフの存在に関してCEAのアミノ酸配列が評価された。すなわち、それぞれのモチーフまたはスーパーモチーフの各々に関して表I(クラスIモチーフに関して)または表III(クラスIIモチーフに関して)に記述されたような一次アンカー残基の存在に関して、アミノ酸配列が検索された。
【0082】
表中、CEA配列のモチーフ保有エピトープおよび/またはスーパーモチーフ保有エピトープは、下記のCEA配列および番号付けに関して位置番号およびエピトープ長により示されている。「pos」(位置)欄は、エピトープの最初のアミノ酸残基に対応するCEAタンパク質配列中のアミノ酸位置を示す。「アミノ酸の数」は、エピトープ配列中の残基の数を、ひいてはエピトープの長さを示す。例えば表VIIに列挙した最初のペプチドエピトープは、位置440で始まる8残基長の配列である。したがって、このエピトープのアミノ酸配列は、ASNPPAQYである。
【0083】
表VII〜XXに示される結合データは、相対結合比(上記)として表される。
【0084】
(CEAアミノ酸配列)
【0085】
【化1】
Figure 2004500059
(CTL誘導ペプチドエピトープを示すHLAクラスIモチーフ)
下記のHLAクラスIペプチドエピトープスーパーモチーフおよびHLAクラスIペプチドエピトープモチーフの一次アンカー残基は、表Iに概説されている。表I(a)に記述されたHLAクラスIモチーフは、本明細書中で特許請求される本発明に最も特に関連があるものである。一次アンカー位置および二次アンカー位置は、表IIに概説されている。HLAクラスIスーパータイプファミリーを含む対立遺伝子特異的HLA分子は、表VIに列挙されている。いくつかの場合、ペプチドエピトープは、重複一次アンカー特異性が原因で、モチーフおよびスーパーモチーフの表の両方に列挙される。特定のモチーフおよびそれぞれのスーパーモチーフの関係は、個々のモチーフの説明中に示されている。
【0086】
(IV.D.1.HLA−A1スーパーモチーフ)
HLA−A1スーパーモチーフは、このエピトープの第2位における小さい(TまたはS)または疎水性の(L、I、VまたはM)一次アンカー残基、ならびにC末端位置での芳香族(Y、FまたはW)一次アンカー残基の、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられる。A1スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、HLA−A1スーパータイプ)は、少なくとも:A0101、A2601、A2602、A2501およびA3201からなる(例えば、DiBrino,M.ら,J.Immunol.151:5930,1993;DiBrino,M.ら,J.Immunol.152:620,1994;Kondo,A.ら,Immunogenetics 45:249,1997を参照のこと)。このA1スーパーファミリーのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。これらの個々のHLAタンパク質の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0087】
A1スーパーモチーフを含む代表的ペプチドエピトープを、表VIIに示す。
【0088】
(IV.D.2.HLA−A2スーパーモチーフ)
対立遺伝子特異的HLA−A2.1分子に対する一次アンカー特異性(例えば、Falkら,Nature 351:290−296,1991;Huntら,Science 255:1261−1263,1992;Parkerら,J.Immunol.149:3580−3587,1992;Ruppertら,Cell 74:929−937,1993参照)、ならびにHLA−A2およびHLA−A28分子間の交差反応結合は、記載されている(関連データの総説については、例えば、Fruciら,Human Immunol.38:187−192,1993;Tanigakiら,Human Immnol.39:155−162,1994;Del Guercioら,J.Immunol.154:685−693,1995;Kastら,J.Immunol.152:3904−3912,1994を参照のこと)。これらの一次アンカー残基は、HLA−A2スーパーモチーフを規定し;ペプチドリガンド中のその存在は、いくつかの異なるHLA−A2およびHLA−A28分子を結合する能力に対応する。このHLA−A2スーパーモチーフは、このエピトープの第2位の一次アンカー残基としてL、I、V、M、A、TまたはQおよびこのエピトープのC末端位置の一次アンカー残基としてL、I、V、M、AまたはTを有する、ペプチドリガンドを含む。
【0089】
HLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、これらのペプチドを結合するHLA−A2スーパータイプ)は、少なくとも:A0201、A0202、A0203、A0204、A0205、A0206、A0207、A0209、A0214、A6802およびA6901からなる。このA2スーパーファミリーのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。以下で詳細に説明するように、これらの個々の対立遺伝子特異的HLA分子の各々への結合は、一次アンカー位置および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0090】
A2スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表VIIIに示す。第2位に一次アンカー残基V、A、TまたはQおよびC末端位置に一次アンカー残基L、I、V、AまたはTを含むこれらのモチーフは、本明細書中の特許請求された本発明に最も特に関連があるモチーフである。
【0091】
(IV.D.3.HLA−A3スーパーモチーフ)
HLA−A3スーパーモチーフは、このエピトープの第2位の一次アンカーとしてのA、L、I、V、M、SまたはTおよびこのエピトープのC末端位置(例えば、9マーの第9位)の正荷電残基RまたはKの、ペプチドリガンド中の存在により特徴付けられる(例えば、Sidneyら,Hum.Immunol.45:79,1996を参照のこと)。このA3スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、HLA−A3スーパータイプ)のメンバーの例としては、少なくとも:A0301、A1101、A3101、A3301およびA6801が挙げられる。このA3スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。以下で詳細に説明されるように、これらの個々の対立遺伝子特異的HLAタンパク質の各々に結合するペプチドは、そのペプチドの一次および/または二次アンカー位置でのアミノ酸の置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0092】
このA3スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表IXに示す。
【0093】
(IV.D.4.HLA−A24スーパーモチーフ)
HLA−A24スーパーモチーフは、このエピトープの第2位の一次アンカーとしての芳香族残基(F、WまたはY)または疎水性脂肪族残基(L、I、V、MまたはT)およびこのエピトープのC末端位置の一次アンカーとしてのY、F、W、L、IまたはMの、ペプチドリガンド中の存在により特徴付けられる(例えば、SetteおよびSidney,Immunogenetics 1999 Nov;50(3−4):201−12,Reviewを参照のこと)。このA24スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、A24スーパータイプ)としては、少なくとも:A2402、A3001およびA2301が挙げられる。このA24スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。これらの対立遺伝子特異的HLA分子の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0094】
このA24スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表Xに示す。
【0095】
(IV.D.5.HLA−B7スーパーモチーフ)
HLA−B7スーパーモチーフは、このエピトープの一次アンカーとして第2位におけるプロリンならびにこのエピトープのC末端位置での一次アンカーとして疎水性または脂肪族アミノ酸(L、I、V、M、A、F、WまたはY)を保有するペプチドによって、特徴付けられる。このB7スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、HLA−B7スーパータイプ)は、少なくとも:B0702、B0703、B0704、B0705、B1508、B3501、B3502、B3503、B3504、B3505、B3506、B3507、B3508、B5101、B5102、B5103、B5104、B5105、B5301、B5401、B5501、B5502、B5601、B5602、B6701およびB7801を含む、少なくとも26個のHLA−Bタンパク質からなる(関連データの総説については、例えば、Sidneyら,J.Immunol.154:247,1995;Barberら,Curr.Biol.5:179,1995;Hillら,Nature 360:434,1992;Rammenseeら,Immunogenetics 41:178,1995を参照のこと)。このB7スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。以下で詳細に説明されるように、これらの個々の対立遺伝子特異的HLAタンパク質の各々に結合するペプチドは、このペプチドの一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、スーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0096】
このB7スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XIに示す。
【0097】
(IV.D.6.HLA−B27スーパーモチーフ)
HLA−B27スーパーモチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカーとしての正荷電(R、HまたはK)残基およびこのエピトープのC末端位置での一次アンカーとしての疎水性(F、Y、L、W、M、I、AまたはV)残基の、ペプチドリガンド中の存在により特徴付けられる(例えば、SidneyおよびSette,J.Immunogenetics 1999 Nov;50(3−4):201−12,Reviewを参照のこと)。このB27スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、B27スーパータイプ)の例示的メンバーとしては、少なくとも:B1401、B1402、B1509、B2702、B2703、B2704、B2705、B2706、B3801、B3901、B3902およびB7301が挙げられる。このB27スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。この対立遺伝子特異的HLA分子の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、スーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0098】
このB27スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XIIに示す。
【0099】
(IV.D.7.HLA−B44スーパーモチーフ)
HLA−B44スーパーモチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカーとしての負荷電(DまたはE)残基およびこのエピトープのC末端位置での一次アンカーとしての疎水性残基(F、W、Y、L、I、M、VまたはA)の、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられる(例えば、Sidneyら,Immunol.Today 17:261,1996を参照のこと)。このB44スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、B44スーパータイプ)の例示的なメンバーとしては、少なくとも:B1801、B1802、B3701、B4001、B4002、B4006、B4402、B4403およびB4404が挙げられる。これらの対立遺伝子特異的HLA分子の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0100】
(IV.D.8.HLA−B58スーパーモチーフ)
HLA−B58スーパーモチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカー残基としての小さい脂肪族残基(A、SまたはT)およびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としての芳香族または疎水性残基(F、W、Y、L、I、V、MまたはA)の、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられる(例えば、SidneyおよびSette,Immunogenetics 1999 Nov; 50(3−4):201−12,Reviewを参照のこと)。このB58スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわちB58スーパータイプ)の例示的なメンバーとしては、少なくとも:B1516、B1517、B5701、B5702およびB5801が挙げられる。このB58スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。これらの対立遺伝子特異的HLA分子の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0101】
このB58スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XIIIに示す。
【0102】
(IV.D.9.HLA−B62スーパーモチーフ)
HLA−B62スーパーモチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカーとしての極性脂肪族残基Qまたは疎水性脂肪族残基(L、V、M、IまたはP)およびこのエピトープのC末端位置での一次アンカーとしての疎水性残基(F、W、Y、M、I、V、LまたはA)の、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられる(例えば、SidneyおよびSette,Immunogenetics 1999 Nov;50(3−4):201−12,Reviewを参照のこと)。このB62スーパーモチーフに結合するHLA分子のこの対応するファミリー(すなわち、B62スーパータイプ)の例示的なメンバーとしては、少なくとも:B1501、B1502、B1513およびB5201が挙げられる。このB62スーパータイプのメンバーであると予測される他の対立遺伝子特異的HLA分子を、表VIに示す。これらの対立遺伝子特異的HLA分子の各々に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このスーパーモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0103】
このB62スーパーモチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XIVに示す。
【0104】
(IV.D.10.HLA−A1モチーフ)
HLA−A1モチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカー残基としてのT、SまたはMおよびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としてのYの、このペプチドリガンドにおける存在によって特徴付けられる。代替的な対立遺伝子特異的A1モチーフは、第2位ではなくむしろ第3位での一次アンカー残基によって特徴付けられる。このモチーフは、このエピトープの第3位での一次アンカー残基としてのD、E、AまたはSおよびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としてのYの存在によって特徴付けられる(関連データの総説については、例えば、DiBrinoら,J.Immunol.,152:620,1994;Kondoら,Immunogenetics 45:249,1997;およびKuboら,J.Immunol.152:3913, 1994を参照のこと)。HLA−A1に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0105】
いずれかのA1モチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XVに示す。第2位にT、SまたはMそしてC末端位置にYを含むエピトープはまた、これらの残基が、A1スーパーモチーフ一次アンカーのサブセットであるので、表VIIに列挙されるHLA−A1スーパーモチーフ保有ペプチドエピトープのリストに含まれる。
【0106】
(IV.D.11.HLA−A0201モチーフ)
HLA−A20201モチーフは、9残基ペプチドの第2位での一次アンカー残基としてのLまたはMおよび9残基ペプチドのC末端位置での一次アンカー残基としてのLまたはVの、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられることが決定され(例えば、Falkら,Nature 351:290−296,1991を参照のこと)、そしてさらに、9アミノ酸ペプチドの第2位でIおよびC末端位置でIまたはAを含むことが見出された(例えば、Huntら,Science 255:1261−1263,March 6,1992;Parkerら,J.Immunol.149:3580−3587,1992を参照のこと)。このA0201対立遺伝子特異的モチーフは、このエピトープの第2位に一次アンカー残基としてV、A、TまたはQおよびこのエピトープのC末端位置に一次アンカー残基としてMまたはTをさらに含むことが、本発明者らによって規定された(例えば、Kastら,J.Immunol.152:3904−3912,1994を参照のこと)。従って、HLA−A0201モチーフは、このエピトープの第2位に一次アンカー残基としてL、I、V、M、A、TまたはQおよびこのエピトープのC末端位置に一次アンカー残基としてL、I、V、M、AまたはTを有する、ペプチドリガンドを含む。このHLA−A0201モチーフの一次アンカー位置を特徴付ける、これらの好ましくかつ許容される残基は、A2スーパーモチーフを説明する残基と同一である(関連データの総説については、例えば、del Guercioら,J.Immunol.154:685−693,1995;Ruppertら,Cell 74:929−937,1993;Sidneyら,Immunol.Today 17:261−266,1996;SetteおよびSidney,Curr.Opin.in Immunol.10:478−482,1998を参照のこと)。このA0201モチーフを特徴付ける二次アンカー残基が、さらに規定されている(例えば、Ruppertら,Cell 74:929−937,1993を参照のこと)。これらは、表IIに示されている。HLA−A0201分子に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0107】
0201モチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表VIIIに示す。第2位に一次アンカー残基V、A、TまたはQおよびC末端位置に一次アンカー残基L、I、V、AまたはTを含むA0201モチーフは、本明細書における特許請求された本発明に最も特に関連があるモチーフである。
【0108】
(IV.D.12.HLA−A3モチーフ)
HLA−A3モチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカー残基としてのL、M、V、I、S、A、T、F、C、GまたはDおよびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としてのK、sY、R、H、FまたはAの、ペプチドリガンド中の存在によって特徴付けられる(例えば、DiBrinoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1508,1993;およびKuboら,J.Immunol.152:3913−3924,1994を参照のこと)。HLA−A3に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0109】
このA3モチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XVIに示す。このA3スーパーモチーフも含むペプチドエピトープはまた、表IXに列挙される。このA3スーパーモチーフ一次アンカー残基は、A3−およびA11−対立遺伝子特異的モチーフ一次アンカー残基のサブセットを含む。
【0110】
(IV.D.13.HLA−A11モチーフ)
HLA−A11モチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカー残基としてのV、T、M、L、I、S、A、G、N、C、DまたはFおよびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としてのK、R、YまたはHの、ペプチドリガンドにおける存在によって特徴付けられる(例えば、Zhangら,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 90:2217−2221,1993;およびKuboら, J.Immunol.152:3913−3924,1994を参照のこと)。HLA−A11に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0111】
このA11モチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XVIIに示す。A3対立遺伝子特異的モチーフを含むペプチドエピトープもまた、A3モチーフ一次アンカー特異性とA11モチーフ一次アンカー特異性との間の広範な重複に起因してこの表に示される。さらにA3スーパーモチーフを含むペプチドエピトープもまた、表IXに列挙される。
【0112】
(IV.D.14.HLA−A24モチーフ)
HLA−A24モチーフは、このエピトープの第2位での一次アンカー残基としてのY、F、WまたはMおよびこのエピトープのC末端位置での一次アンカー残基としてのF、L、IまたはWの、ペプチドリガンドにおける存在によって特徴付けられる(例えば、Kondoら,J.Immunol.155:4307−4312,1995;およびKuboら,J.Immunol.152:3913−3924,1994を参照のこと)。HLA−A24分子に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換(好ましくは、このモチーフに特定化された各々の残基を選択して)によって調節され得る。
【0113】
このA24モチーフを含む代表的なペプチドエピトープを、表XVIIIに示す。これらのエピトープは、このA24対立遺伝子特異的モチーフを特徴付ける一次アンカー残基が、A24スーパーモチーフ一次アンカー残基のサブセットを含むので、表X(HLA−A24−スーパーモチーフ保有ペプチドエピトープを示す)にも列挙される。
【0114】
(クラスII HTL誘導ペプチドエピトープを示すモチーフ)
以下で記載されるHLAクラスIIペプチドエピトープスーパーモチーフおよびHLAクラスIIペプチドエピトープモチーフの一次および二次アンカー残基を、表IIIに要約する。
【0115】
(IV.D.15.HLA DR−1−4−7スーパーモチーフ)
3つの共通HLAクラスII対立遺伝子特異的HLA分子:HLA DRB10401、DRB10101およびDRB10701に結合するペプチドに関しても、モチーフは同定されている(例えばSouthwoodら、J.Immunology 160:3363−3373,1998による概説を参照)。集合的に、これらのモチーフからの共通の残基は、HLA DR−1−4−7スーパーモチーフを記述する。これらのDR分子に結合するペプチドは、位置1における一次アンカー残基としての大型芳香族または疎水性残基(Y、F、W、L、I、VまたはM)、ならびに9マーコア領域の位置6における一次アンカー残基としての小非荷電残基(S、T、C、A、P、V、I、LまたはM)により特徴付けられるスーパーモチーフを保有する。対立遺伝子特異的二次作用およびこれらのHLA型の各々に関する二次アンカーも同定されている(Southwood et al.、上記)。これらは、表IIIに記載されている。HLA−DRB10401、DRB10101および/またはDRB10701に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換により調整されることができ、好ましくはスーパーモチーフに特異化されるそれぞれの残基を選択する。
【0116】
スーパーモチーフの位置1が9残基コアの位置1にある、DR−1−4−7スーパーモチーフを含む、考え得るエピトープ9マーコア領域は、表XIXに記載されている。その各々が9残基コアを含む15アミノ酸残基長のそれぞれのペプチドエピトープの例も、15残基スーパーモチーフ保有ペプチドの例に関する交差反応性結合データとともに、表に示されている。
【0117】
(IV.D.16.HLA DR3モチーフ)
2つの代替的モチーフ(すなわちサブモチーフ)は、HLA−DR3分子に結合するペプチドエピトープを特徴付ける(例えば、Gelukら、J.Immunol.152:5742,1994参照)。第一のモチーフ(サブモチーフDR3a)では、大型疎水性残基(L、I、V、M、FまたはY)が9マーコアのアンカー位置1に存在し、そしてDがエピトープのカルボキシル末端に向けて、位置4にアンカーとして存在する。その他のクラスIIモチーフの場合と同様に、コア位置1がペプチドN末端位置を占めることもあるし、そうでないこともある。
【0118】
代替的DR3サブモチーフは、エピトープのカルボキシル末端に向かう位置6での正電荷の存在により、アンカー位置1での大型疎水性残基の欠如に、および/または位置4での負荷電またはアミド様アンカー残基の欠如に備える。従って代替的対立遺伝子特異的DR3モチーフ(サブモチーフDR3b)に関しては:L、I、V、M、F、Y、AまたはYがアンカー位置1に存在し;D、N、Q、E、SまたはTがアンカー位置4に存在し;そしてK、RまたはHがアンカー位置6に存在する。HLA−DR3に結合するペプチドは、一次および/または二次アンカー位置での置換により調整されることができ、好ましくはそのスーパーモチーフに特異化されるそれぞれの残基を選択する。
【0119】
DR3aサブモチーフ(モチーフの位置1が9残基コアの位置1である)を含む9残基配列に対応する、考え得るペプチドエピトープ9マーコア領域は、表XXaに記載されている。その各々が9残基コアを含む15アミノ酸残基長のそれぞれのペプチドエピトープの例も、代表的なDR3サブモチーフ保有ペプチドに関する結合データとともに、表XXaに示されている。
【0120】
DR3bサブモチーフを含む、考え得るペプチドエピトープ9マーコア領域、ならびにDR3サブモチーフ−bエピトープを含むそれぞれの代表的15マーペプチドは、代表的なDR3サブモチーフ−b保有ペプチドの結合データとともに、表XXbに記載されている。
【0121】
本明細書中の表に記載されているHLAクラスIまたはクラスIIペプチドエピトープの各々は、単にこの出願の本発明の一態様であるとみなされる。さらに各ペプチドエピトープが任意のその他のペプチドエピトープと組合せて用いられ得るということも、本発明の一態様である。
【0122】
(IV.E.ワクチンの強化集団適用範囲)
商業的により発展可能であり、そして一般的にほとんどの人々に適用可能であるために、広範な集団適用範囲を有するワクチンが好ましい。広範な集団適用範囲は、全体的に考えた場合に、ほとんどの集団に存在するHLA対立遺伝子に結合するペプチドエピトープを選択することにより、本発明のペプチド(ならびにこのようなペプチドをコードする核酸組成物)を用いて得られる。表XXIは、種々の民族におけるHLAクラスIスーパータイプの全体的頻度(表XXIa)およびA2−、A3−およびB7−スーパータイプ(表XXIb)により達成された併合集団適用範囲を列挙する。A2−、A3−およびB7スーパータイプは、これら5つの主要民族群の各々において平均で40%を超えて各々存在する。80%という過剰の適用範囲は、これらのスーパーモチーフの組合せにより達成される。これらの結果は、有効かつ民族的偏りのない集団適用範囲が、限定数の交差反応性ペプチドの使用時に達成されることを示唆する。これら3つの主要ペプチド特異性により達成された集団適用範囲は高いが、付加的スーパーモチーフまたは対立遺伝子特異的モチーフ保有ペプチドの使用時には、95%およびそれ以上の集団適用範囲に達するよう、そして真の多特異的応答をさらに容易に達成するよう、適用範囲は拡張され得る。
【0123】
B44−スーパータイプ、A1−スーパータイプおよびA24−スーパータイプは、これらの主要民族集団中に平均で25%〜40%の範囲で各々存在する(表XXIa)。全体的に低流布性であるが、しかしB27−、B58−およびB62スーパータイプは各々、少なくとも1つの主要民族群中に25%より大きい頻度で存在する(表XXIa)。表XXIbは、5つの主要民族群で同定されたHLAスーパータイプの組合せの流布概算値を概説する。A2、A3およびB7適用範囲へのA1スーパータイプ、A24スーパータイプおよびB44スーパータイプの含入により得られた適用範囲増分、ならびに本明細書中に記載された全てのスーパータイプを用いて得られた適用範囲が示されている。
【0124】
A2−、A3−およびB7スーパータイプの従来の定義と一緒に本明細書中に提示されたデータは、全ての抗原(A29、B8およびB46は考え得る例外として)が全部で9つのHLAスーパータイプに分類され得ることを示す。6つの最も高頻度のスーパータイプからのエピトープを含入することにより、99%という平均集団適用範囲が5つの主要民族群に関して得られる。
【0125】
(IV.F.免疫応答刺激ペプチドアナログ(類似体、類縁体))
概して、CTLおよびHTL応答は、全ての考え得るエピトープに対して向けられるというわけではない。むしろそれらは2〜3の「腫瘍抗原」決定基(immunodominant determinant)に拘束される(Zinkernagel,ら、Adv.Immunol.27:5159,1979;Bennik,ら、J.Exp.Med.168:1935−1939,1988;Rawle,ら、J.Immunol.146:3977−3984,1991)。イムノドミナント(immunodominant)(Benacerraf,ら、Science 175:273−279,1972)は、特定のHLAタンパク質を選択的に結合する(決定因子選択理論)(Vitiello,ら、J.Immunol.131:1635,1983;Rosenthalら、Nature 267:156〜158,1997)または既存のTCR(T細胞受容体)特異性により選択的に認識される(レパートリー理論)(Klein,J.,IMMUNOLOGY,THE SCIENCE OF SELF/NONSELF DISCRIMINATION,John Wiley & Sons,New York,pp.270−310,1982)所定のエピトープの能力のいずれかにより説明され得る。主としてプロセシング事象に結び付けられる付加的因子も、厳密な免疫原性を越えて、多数の考え得る決定因子が主要抗原決定基として存在することを指令する場合に重要な役割を演じ得る、ということが立証されている(Sercarz,ら、Annu.Rev.Immunol.11:729−766,1993)。
【0126】
組織特異性および発生性TAAは、少なくともいくつかの時点で、または身体内の少なくともいくつかの位置で正常組織上に発現されるため、それらに対するT細胞、特にドミナント(dominant)エピトープは免疫監視中に排除され、そして寛容が誘導される、と予測され得る。しかしながら正常ドナーと癌患者の両方において腫瘍エピトープに対するCTL応答が検出されており、これは寛容が不完全であることを示し得る(例えば、Kawashimaら、Hum.Immunol.59:1,1998;Tsang,J.Natl.Cancer Inst.87:82−90,1995;Rongounら、J.Immunol.163:1037,1999参照)。従って免疫寛容は、高親和性HLAクラスI結合ペプチドを認識し得るCTL前駆体を完全には排除または不活性化しない。
【0127】
寛容を克服するためのさらに別の戦略は、アナログ(類似体)ペプチドを用いることである。理論によって束縛されることを意図しないが、ドミナント(dominant)エピトープに対するT細胞はクローン的に欠失されているため、サブドミナント(subdominant)エピトープの選択が既存のT細胞を必要にさせ、これが次に治療的または予防的応答をもたらすことが考えられる。しかしながらサブドミナント(subdominant)エピトープとのHLA分子の結合は、しばしばドミナント(dominant)エピトープとの結合よりも低強硬(vigorous)である。従って、1つまたはそれ以上のHLA分子に対する特定の免疫原性エピトープの結合親和性を調整し、それにより、例えばより強力な(vigorous)応答を引き出すアナログ(類似体)ペプチドを調製するよう、ペプチドにより引き出される免疫応答を調整し得る必要がある。
【0128】
上記のスクリーニング手法により、スーパーファミリーの全ての対立遺伝子間の適切な交差反応性を有するペプチドが同定されているが、しかし交差反応性はいつもできるだけ完全であるというわけではなく、ある場合には、ペプチドの交差反応性を増大するための手法が有用であり得る。さらにこのような手法は、結合親和性またはペプチド安定性のようなペプチドの他の特性を改質するためにも用いられ得る。所定のモチーフまたはスーパーモチーフ内のHLA対立遺伝子に対するペプチドの交差反応性を支配する一般原則が確立されれば、より広範な(あるいはそうでなければ修飾された)HLA結合能力を達成するために、当該特定の目的のペプチドの構造の修飾(すなわちアナログ(類似体)化)が実施され得る。より詳細には、最も広範な交差反応性パターンを示すペプチドが、本明細書中の教示に従って生成され得る。アナログ(類似体)生成に関連した本発明の概念は、米国同時係属出願の第09/226,775号(1999年1月6日提出)に詳細に記載されている。
【0129】
要するに、用いられる戦略は、ある種のHLA分子との結合と相関するモチーフまたはスーパーモチーフを利用する。モチーフまたはスーパーモチーフは、一次アンカーを、多くの場合には、二次アンカーを有することにより規定される。アナログ(類似体)ペプチドは、一次アンカー、二次アンカーでのまたは一次および二次アンカー位置のアミノ酸残基を置換することにより作製され得る。一般にアナログ(類似体)は、モチーフまたはスーパーモチーフをすでに保有するペプチドに対して作製される。HLAクラスIおよびクラスII結合ペプチドに関して規定されていたスーパーモチーフおよびモチーフの好ましい二次アンカー残基は、それぞれ表IIおよびIIIに示される。
【0130】
本発明の多数のモチーフまたはスーパーモチーフに関して、対立遺伝子特異的HLA分子、またはそれぞれのモチーフまたはスーパーモチーフを結合するHLAスーパータイプのメンバーに結合することが有害である残基が規定される(表IIおよびIII)。従って結合に有害であるこのような残基の除去が、本発明に従って実施され得る。例えばA3スーパータイプの場合には、このような有害残基を有する全てのペプチドが、分析に用いられるペプチドの集団から除去されると、交差反応性の発生率は、22%から37%に増大した(例えば、Sidney,J.ら、Hu.Immunol.45:79,1996参照)。従って、所定のスーパーモチーフ内のペプチドの交差反応性を改善するための一戦略は、単に、ペプチド内に存在する1つ以上の有害残基を欠失させ、小「中性」残基、例えばAla(ペプチドのT細胞認識に影響を及ぼし得ない)を置換することである。ペプチド内の有害残基の排除とともに、対立遺伝子特異的HLA分子とのまたはスーパーファミリー内の多数のHLA分子との高親和性結合に関連した「好ましい」残基が挿入される場合に、交差反応性強化の可能性が、予期される。
【0131】
アナログ(類似体)ペプチドが、ワクチンとして用いられる場合、インビボでネイティブな(native)エピトープに対するCTL応答を実際に惹起する(またはクラスIIエピトープの場合は、野生型ペプチドと交差反応するヘルパーT細胞を惹起する)ことを保証するために、アナログ(類似体)ペプチドが、適切なHLA対立遺伝子を有する個体からインビトロでT細胞を免疫化するために用いられ得る。その後、野生型ペプチド感作標的細胞の溶解を誘導する免疫化細胞の能力が評価される。それは、内因的に産生された抗原が関連T細胞によっても認識されるか否かを確定するために、適切な遺伝子で感染されたかまたはトランスフェクトされた細胞であるか、あるいはクラスIIエピトープのみの場合には、全タンパク質抗原でパルスされたことのある細胞のいずれかである抗原提示細胞として用いるのが望ましい。
【0132】
本発明の別の実施形態は、弱結合ペプチドのアナログ(類似体)を作製し、それにより適正数の交差反応性細胞結合剤を保証することである。500〜5000nMの結合親和性を示し、かつ許容可能であるが、一方または両方の位置に最適下限の一次アンカー残基を保有するクラスI結合ペプチドは、それぞれのスーパータイプに従って好ましいアンカー残基を置換することにより「固定」され得る。次に、アナログ(類似体)ペプチドは交差結合活性に関して試験され得る。
【0133】
有効なペプチドアナログ(類似体)を生成するための別の実施形態は、例えば液体環境中でのペプチド安定性または溶解性に悪影響を及ぼす残基の置換を包含する。この置換は、ペプチドエピトープの任意の位置で起こり得る。例えばシステインはαアミノ酪酸(本明細書中に列挙したペプチド配列に関する一文字略語で「B」)を選択して置換され得る。その化学的性質のために、システインはジスルフィド架橋を形成する傾向を有し、そして結合能力を低減するのに十分なだけペプチドを構造的に変える。システインの代わりにα−アミノ酪酸を置換すると、この問題が改善されるだけでなく、ある場合には結合および交差結合能力が実際に改良される(例えば、Setteら、In:Persistent Viral Infections,Eds.R.Ahmed and I.Chen,John Wiley & Sons,England,1999による概説を参照)。
【0134】
代表的アナログ(類似体)ペプチドは、表XXII〜XXVIIに記載されている。表は、アナログ(類似体)ペプチドの長さおよび配列、ならびに適当な場合には、モチーフまたはスーパーモチーフを示す。「供給源」欄は、それぞれのアナログ(類似体)に関して支持された位置番号で置換された残基を示す。
【0135】
(IV.G.スーパーモチーフ保有ペプチドまたはモチーフ保有ペプチドに関する疾患関連抗原からのタンパク質配列のコンピュータースクリーニング)
標的抗原中のスーパーモチーフ保有ペプチドまたはモチーフ保有ペプチドを同定するために、ネイティブなタンパク質配列、例えば腫瘍関連抗原、または感染生物体、または移植用ドナー組織由来の配列は、配列内のスーパーモチーフまたはモチーフの存在を確定するために、知的計算またはコンピューターのような演算のための手段を用いて、スクリーニングされる。ネイティブなペプチドの分析から得られる情報は、ネイティブなペプチドの状態を評価するために直接用いられ得るか、またはその後ペプチドエピトープを生成するために利用され得る。
【0136】
対象スーパーモチーフまたはモチーフの発生に関するタンパク質配列の迅速スクリーニングを可能にするコンピュータープログラムが、アナログ(類似体)ペプチドの生成を可能にするプログラムと同様に、本発明に包含される。これらのプログラムは、任意の同定されたアミノ酸配列を分析するか、あるいは未知の配列に関して作動し、同時に配列を確定して、そのモチーフ保有エピトープを同定するために実行される。アナログ(類似体)も同様に同時に確定され得る。一般に同定された配列は、病原性生物体または腫瘍関連ペプチド由来である。例えば、標的TAA分子としては、CEA、MAGE、p53およびber2/neuが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
ペプチド結合の予測のために利用される選択判定基準は、実際の結合と最も効率的に相関するためにできるだけ正確であることが重要である。適切な一次アンカーの存在に基づいた、例えばHLA−A0201に結合するペプチドの予測は、約30%の割合で有望である(例えば、Ruppert,J.ら、Cell 74:929,1993参照)。しかしながら、本明細書中に開示するペプチド−HLA結合データ、関連特許出願中のデータおよび当該技術のデータを広範に分析することにより、本発明者らは、一次アンカー残基の単独での存在を基礎にした同定を上回って予測値を劇的に増大する多数の対立遺伝子特異的多項式アルゴリズムを開発した。これらのアルゴリズムは、一次アンカーの存在または非存在だけでなく、二次アンカー残基(異なる位置での異なるアミノ酸の影響を説明するため)の肯定的または有害な存在も考慮に入れる。アルゴリズムは本質的には、ペプチド−HLA相互作用の全親和性(または△G)が以下の型の一次多項式関数として概算され得るという仮定に基づく:
△G=a1ixa2ixa3i・・・・xani
(式中、a1iは、n個のアミノ酸のペプチドの配列に沿って所定位置(i)での所定アミノ酸(j)の存在の影響を表す係数である)。この方法の重要な仮定は、各位置での影響が本質的に互いに無関係であるということである。この仮定は、ペプチドがHLA分子に結合され、本質的に拡張配座におけるT細胞により認識されることを立証する研究により正当化される。特定のアルゴリズム係数の誘導は、例えば、Gulukota,K.ら、J.Mol.Biol.267:1258,1997に記載されている。
【0138】
また特異的モチーフを使用する好ましいペプチド配列を同定するためのさらに別の方法としては、ニューラルネットワークおよび分子モデリングプログラムの使用が挙げられる(例えば、Milikら、Nature Biotechnology 16:753,1998;Altuviaら、Hum.Immunol.58:1,1997;Altuviaら、J.Mol.Biol.249:244,1995;Buus,S.Curr.Opin.Immunol.11:209−213,1999;Brusic,V.ら、Bioinformatics 14:121−130,1998;Parkerら、J.Immunol.152:163,1993;Meisterら、Vaccine 13:581,1995;Hammerら、J.Exp.Med.180:2353,1994;Sturnioloら、Nature Biotechnol.17:555,1999参照)。
【0139】
例えば、少なくとも1つの好ましい二次アンカー残基を含有するA0201モチーフ保有ペプチドのセット中では、任意の有害な二次アンカー残基の存在を回避する一方で、ペプチドの69%がA0201を結合し、IC50は500nM未満である、ということが示されている(Ruppert,J.ら、Cell 74:929,1993)。これらのアルゴリズムはまた、カットオフスコアが所望により、より大きいまたはより低い予測結合特性を有するペプチド組を選定するよう調整され得るという点で、融通性がある。
【0140】
ペプチドエピトープを同定するためにコンピュータースクリーニングを利用する際、タンパク質配列または翻訳配列は、モチーフを検索するために開発されたソフトウェア、例えば「FINDPATTERNS」プログラム(Devereux,ら、Nucl.Acids Res.12:387−395,1984)、あるいは適切なHLA結合モチーフを含有する潜在性ペプチド配列を同定するためのMotifSearch1.4ソフトウェアプログラム(D.Brown,San Diego,CA)を用いて分析され得る。同定ペプチドは、特異的HLAクラスIまたはクラスII対立遺伝子を結合するそれらの能力を予測するために、カスタマイズド多項式アルゴリズムを用いてスコア付けされ得る。当業者に理解されるように、既知または未知のペプチド配列を評価するために(例えばエピトープを同定するために、ペプチド長当たりのエピトープ濃度を同定するために、またはアナログ(類似体)を生成するために、ただし、これらに限定されない)、コンピュータープログラミングソフトウェアおよびハードウェアオプションの大型アレイが、本発明のモチーフを実行するために用いられ得る関連業界で利用可能である。
【0141】
上記の手法に従って、HLAスーパータイプ群または対立遺伝子特異的HLA分子を結合することが可能であるCEAペプチドエピトープおよびそのアナログ(類似体)が同定されている(表VII〜XX、表XXII〜XXXI)。
【0142】
(IV.H.ペプチドエピトープの調製)
本発明によるペプチドは、組換えDNA技術または化学合成により合成的に、あるいはネイティブの腫瘍または病原性生物体のような天然供給源から調製され得る。ペプチドエピトープは、別々に、またはポリエピトープペプチドとして合成されてもよい。ペプチドは好ましくは他の天然に存在する宿主細胞タンパク質およびそれらのフラグメントを実質的に含まないが、いくつかの実施形態では、ペプチドはネイティブのフラグメントまたは粒子と合成的に結合され得る。
【0143】
本発明によるペプチドは、種々の長さであり得、それらの中性(非荷電)形態または塩である形態であり得る。本発明によるペプチドは、グリコシル化、側鎖の酸化またはリン酸化のような修飾を含まないか、あるいはそれらは、修飾が本明細書中に記載するようなペプチドの生物活性を破壊しないという条件で、これらの修飾を含有する。
【0144】
可能な場合は、約8〜約13、多くの場合8〜11、好ましくは9〜10のアミノ酸残基の長さに、ポリエピトープ構築物中で用いられ得るように、本発明のHLAクラスI結合エピトープを最適化するのが望ましい。本発明のHLAクラスII結合ペプチドエピトープは、約6〜約30のアミノ酸長の長さ、好ましくは約13〜約20の残基に最適化され得る。好ましくは、ペプチドエピトープは、関連HLA分子に結合される内因的処理病原体由来ペプチドまたは腫瘍細胞ペプチドとサイズが同等であるが、本発明のエピトープを含むペプチドの同定および調製はまた、本明細書中に記載する技法を用いて実行され得る。
【0145】
代替的実施形態では、本発明のエピトープは、ポリエピトープペプチド、またはポリエピトープペプチドをコードするミニジーンとして連結され得る。
【0146】
別の実施形態では、高濃度のクラスIおよび/またはクラスIIエピトープを含有するネイティブのペプチド領域を同定するのが好ましい。このような配列は一般に、それがアミノ酸長当たり最大数のエピトープを含有することを基礎にして選択される。エピトープは入れ子式または重複様式で存在し、例えば10アミノ酸長ペプチドは2つの9アミノ酸長エピトープおよび1つの10アミノ酸長エピトープを含有し得、細胞内プロセシング時には各エピトープは露出され得、このようなペプチドの投与時にはHLA分子により結合され得ると理解されるべきである。このより大きい、好ましくは多エピトープのペプチドは、合成的に、組換え的に、またはネイティブの供給源からの切断により生成され得る。
【0147】
本発明のペプチドは、多種多様の方法で調製され得る。好ましい比較的短いサイズに関しては、ペプチドは慣用的技法にしたがって溶液中でまたは固体支持体上で合成され得る。種々の自動合成機が市販されており、既知のプロトコールにしたがって用いられ得る(例えば、Stewart & Young,SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS,2D,ED.,Pierce Chemical Co.,1984参照)。さらに個々のペプチドエピトープは、化学的連結を用いて連結されて、やはり本発明の範囲内である大型ペプチドを生成し得る。
【0148】
あるいは、目的の免疫原性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が、発現ベクターに挿入され、適切な宿主細胞中に形質転換されるかまたはトランスフェクトされ、そして発現に適した条件下で培養される組換えDNA技術が用いられ得る。これらの手法は、Sambrookら,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor New York(1989)に記載されているように、一般に当該技術で既知である。したがって、本発明の1つまたはそれ以上のペプチド配列を含む組換えポリペプチドは、適切なT細胞エピトープを提示するために用いられ得る。
【0149】
本明細書中で意図される好ましい長さのペプチドエピトープに関する配列をコードするヌクレオチドは、化学的技法により、例えばMatteucciら、J.Am.Chem.Soc.103:3185 (1981)のホスホトリエステル法により合成され得る。ペプチドアナログは、ネイティブのペプチド配列をコードするものの代わりに、適切なかつ所望の核酸塩基(単数または複数)を単に置換することにより作製され得る。典型的な核酸置換例は、本明細書中のモチーフ/スーパーモチーフにより規定されるアミノ酸をコードするものである。次にコード配列は、適切なリンカーを提供され、当該技術で一般的に利用可能な発現ベクター、ならびに適切な宿主を形質転換するために用いられるベクターに連結されて、所望の融合タンパク質を産生し得る。多数のこのようなベクターおよび適切な宿主系が目下利用可能である。融合タンパク質の発現に関しては、コード配列は、作動可能に連結される開始および停止コドン、プロモーターおよびターミネーター領域、ならびに通常は複製系を提供されて、所望の細胞宿主中での発現のための発現ベクターを提供する。例えば、細菌宿主と適合性のプロモーター配列は、所望のコード配列の挿入に便利な制限部位を含有するプラスミド中に提供される。その結果生じる発現ベクターは、適切な細菌宿主中に形質転換される。当然ながら、酵母、昆虫または哺乳類細胞宿主も、適切なベクターおよび制御配列を用いて使用され得る。
【0150】
(IV.I.T細胞応答を検出するためのアッセイ)
いったんHLA結合ペプチドが同定されれば、それらはT細胞応答を引き出す能力に関して試験され得る。モチーフ保有ペプチドの調製および評価は、PCT国際公開公報第94/20127号および同第第94/03205号に記載されている。要するに、特定の抗原からのエピトープを含むペプチドが合成され、適切なHLAタンパク質に結合するそれらの能力に関して試験される。これらのアッセイは、精製HLAクラスI分子への本発明のペプチドの結合を、放射性ヨウ素標識参照ペプチドの結合に関して評価することを包含する。あるいは、免疫蛍光染色および流動微小蛍光測定により、空のクラスI分子を発現する細胞(すなわちその中にペプチドを欠く)が、ペプチド結合に関して評価され得る。ペプチド結合を評価するために用いられ得るその他のアッセイとしては、ペプチド依存性クラスIアセンブリーアッセイおよび/またはペプチド競合によるCTL認識の抑制が挙げられる。典型的には500nMまたはそれ未満の親和性で、クラスI分子に結合するペプチドは、感染または免疫化固体由来のCTLに対する標的として役立つそれらの能力に関して、ならびに疾患と関連した選定標的細胞と反応し得るCTL集団を生じ得る一次インビトロでのまたはインビボでのCTL応答を誘導するそれらの能力に関して、さらに評価される。対応するアッセイは、HLAクラスII結合ペプチドの評価のために用いられる。典型的には1000nMまたはそれ未満の親和性にて結合することが示されているHLAクラスIIモチーフ保有ペプチドはさらに、HTL応答を刺激する能力に関して評価される。
【0151】
T細胞応答を検出するために利用される慣用的アッセイとしては、増殖アッセイ、リンホカイン分泌アッセイ、直接的細胞傷害性アッセイおよび限界希釈アッセイが挙げられる。例えばペプチドとともにインキュベートされた抗原提示細胞は、応答体細胞集団中でCTL応答を誘導する能力に関してアッセイされ得る。抗原提示細胞は、末梢血単核細胞または樹状細胞のような正常細胞、であり得る。あるいは内部処理ペプチドとともにクラスI分子を負荷する能力を欠き、適切なヒトクラスI遺伝子でトランスフェクトされた突然変異体非ヒト哺乳類細胞系は、インビトロでの一次CTL応答を誘導するペプチドの能力に関して試験するために用いられ得る。
【0152】
末梢血単核細胞(PBMC)は、CTL前駆体の応答体細胞供給源として用いられ得る。適切な抗原提示細胞は、ペプチドとともにインキュベートされ、その後、ペプチド負荷抗原提示細胞が、最適化培養条件下にて応答体細胞集団とともにインキュベートされる。陽性CTL活性化は、放射能標識標的細胞、両特異的ペプチドパルス化標的、ならびにペプチド配列が由来する内因的処理形態の抗原を発現する標的細胞を死滅するCTLの存在に関して培養物をアッセイすることにより確定され得る。
【0153】
つい最近、フルオレセイン標識HLAテトラマー複合体で染色することにより抗原特異的T細胞の直接定量を可能にする方法が案出された(Altman,J.D.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10330,1993;Altman,J.D.et al.,Science 274:94,1996)。他の比較的最近の技術的開発としては、細胞内リンホカインに対する染色およびインターフェロン放出アッセイまたはELISPOTアッセイが挙げられる。テトラマー染色、細胞内リンホカイン染色およびELISPOTアッセイは全て、より慣用的アッセイより感度が少なくとも10倍高いと思われる(Lalvani,A.et al.,J.Exp.Med.186:859,1997;Dunbar,P.R.et al.,Curr.Biol.8:413,1998;Murali−Krishna,K.et al.,Immunity 8:177,1998)。
【0154】
HTL活性化も、T細胞増殖およびリンホカイン、例えばIL−2の分泌のような当業者に既知の技法を用いて評価され得る(例えば、Alexandarら,Immunity 1:751−761,1994参照)。
【0155】
あるいは、HLAトランスジェニックマウスの免疫化を用いて、ペプチドエピトープの免疫原性を確定し得る。ヒトA2.1、A11(HLA−A3エピトープを分析するために付加的に用いられ得る)およびB7対立遺伝子を有するマウスを含むいくつかのトランスジェニックマウスモデルが特性化され、そして他のもの(例えばHLA−A1およびA24に関するトランスジェニックマウス)が開発されつつある。HLA−DR1およびHLA−DR3マウスモデルも開発されている。他のHLA対立遺伝子を有するさらに別のトランスジェニックマウスモデルが、必要な場合には生成され得る。マウスは不完全フロイントアジュバント中に乳化されたペプチドで免疫化され、その結果生じるT細胞が、ペプチドパルス化標的細胞および適切な遺伝子でトランスフェクトされた標的細胞を認識するそれらの能力に関して試験される。CTL応答は、上記の細胞傷害性アッセイを用いて分析され得る。同様に、HTL応答は、T細胞増殖またはリンホカインの分泌のようなアッセイを用いて分析され得る。
【0156】
(IV.J.診断剤としてのならびに免疫応答を評価するためのペプチドエピトープの使用)
本発明の一実施形態では、本明細書中に記載するようなHLAクラスIおよびクラスII結合ペプチドが、免疫応答を評価するための試薬として用いられる。評価されるべき免疫応答は、試薬として用いられるべきペプチドエピトープ(単数または複数)を認識し、それに結合する抗原特異的CTLまたはHTLの産生を結果として生じ得る任意の作用物質を免疫原として用いることにより誘導される。ペプチド試薬は、免疫原として用いられる必要はない。このような分析のために用いられるアッセイ系としては、テトラマー、細胞内リンホカインに対する染色およびインターフェロン放出アッセイまたはELISPOTアッセイのような比較的最近の技術的開発が挙げられる。
【0157】
例えば、本発明のペプチドは、腫瘍細胞抗原または免疫原への曝露後に抗原特異的CTLの存在に関して末梢血単核細胞を評価するためのテトラマー染色アッセイに用いられる。HLA−テトラマー複合体は、抗原特異的CTLを直接可視化するために(例えば、Oggら,Science 279:2103−2106,1998、およびAltmanら,Science 174:94−96,1996参照)、および末梢血単核細胞サンプル中の抗原特異的CTL集団の頻度を確定するために用いられる。本発明のペプチドを用いるテトラマー試薬は、以下のように生成される:HLA分子に結合するペプチドが、対応するHLA重鎖およびβ−ミクログロブリンの存在下でリフォールディングされて、三分子複合体を生成する。複合体は、タンパク質に予め操作された部位で重鎖のカルボキシル末端でビオチン化される。次にストレプトアビジンの添加により、テトラマー形成が誘導される。蛍光的標識ストレプトアビジンにより、テトラマーは抗原特異的細胞を染色するために用いられる。次に細胞は、例えばフローサイトメトリーにより同定され得る。このような分析は、診断または予後用途に用いられ得る。当該手法により同定される細胞は、治療用途にも用いられ得る。
【0158】
本発明のペプチドは、免疫リコール応答を評価するための試薬としても用いられる(例えば、Bertoniら,J.Clin.Invest.100:503−513,1997およびPennaら,J.Exp.Med.174:1565−1570,1991参照)。例えば、癌を有する個体からの患者PBMCサンプルは、特異的ペプチドを用いて抗原特異的CTLまたはHTLの存在に関して分析される。単核細胞を含有する血液サンプルは、PBMCを培養し、本発明のペプチドで細胞を刺激することにより評価され得る。適切な培養時間後、増殖した細胞集団が、例えばCTLに関してまたはHTL活性に関して分析され得る。
【0159】
ペプチドは、ワクチンの効力を評価するための試薬としても用いられる。免疫原でワクチン接種された患者から得られるPBMCは、例えば上記方法のいずれかを用いて分析される。患者はHLA型分類され、その患者に存在する対立遺伝子特異的分子を認識するペプチドエピトープ試薬が分析のために選定される。ワクチンの免疫原性は、PBMCサンプル中のエピトープ特異的CTLおよび/またはHTLの存在により示される。
【0160】
本発明のペプチドは、当該技術で周知の技法を用いて抗体を作製するためにも用いられ(例えば、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,Willey/Greene,NY、およびAntibodies A Laboratory Manual,Harlow and Lane,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989参照)、これは癌を診断またはモニターするための試薬として有用であり得る。このような抗体としては、HLA分子の情況でペプチドを認識するもの、すなわちペプチド−MHC複合体に結合する抗体が挙げられる。
【0161】
(IV.K.ワクチン組成物)
本明細書中に記載されるような免疫原的有効量の1つまたはそれ以上のペプチドを含有するワクチンおよびワクチンの調製方法は、本発明のさらなる実施形態である。いったん適切免疫原性エピトープが定義されれば、それらは種々の手段により分類および送達されて、本明細書中では「ワクチン」組成物と呼ばれる。このようなワクチン組成物としては、例えばリポペプチド(例えば、Vitiello,A.et al.,J.Clin.Invest.95:341,1995)、ポリ(DL−ラクチドコグリコド)(「PLG」)微小球中に封入されるペプチド組成物(例えば、Eldridgeら、Molec.Immunol.28:287−294,1991;Alonsoら,Vaccine 12:299−306,1994;Jonesら,Vaccine 13:675−681,1995参照)、免疫刺激複合体(ISCOMS)中に含入されるペプチド組成物(例えば、Takahashiら,Nature 344:873−875,1990;Huら,Clin Exp Immunol.113:235−243,1998参照)、多抗原ペプチド系(MAPs)(例えば、Tam,J.P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.85:5409−5413,1988;Tam,J.P.,J.Immunol.Methods 196:17−32,1996参照)、多価ペプチドとして処方されるペプチド;弾道送達系での使用のためのペプチド、典型的には結晶化ペプチド、ウイルス送達ベクター(Perkus,M.E.ら:Concepts in vaccine development,Kaufmann,S.H.E.,編,p.379,1996;Chakrabarti,S.ら,Nature 320:535,1986;Hu,S.L.ら,Nature 320:537,1986;Kieny,M.P.ら,AIDS Bio/Technology 4:790,1986;Top,F.H.ら,J.Infect.Dis.124:148,1971;Chanda,P.K.ら,Virology 175:535,1990)、ウイルスまたは合成起源の粒子(例えば、Kofler,N.ら,J.Immunol.Methods.192:25,1996;Eldridge,J.H.ら,Sem.Hematol.30:16,1993;Falo,L.D.,Jr.ら,Nature Med.7:649,1995)、アジュバント(Warren,H.S.,Vogel,F.R.,およびChedid,L.A.,Annu.Rev.Immunol.4:369,1986;Gupta,R.K.ら,Vaccine 11:293,1993)、リポソーム(Reddy,R.ら,J.Immumol.148:1585,1992;Rock,K.L.,Immunol.Today 17:131,1996)、あるいは裸または粒子吸収cDNA(Ulmer,J.B.ら,Science 259:1745,1993;Robinson,H.L.,Hunt,L.A.,およびWebster,R.G.,Vaccine 11:957,1993;Shiver,J.W.ら:Concepts in vaccine development,Kaufmann,S.H.E.,編,p.423,1996;Cease,K.B.,およびBerzofsky,J.A.,Annu.Rev.Immunol.12:923,1994、およびEldridge,J.H.ら,Sem.Hematol.30:16,1993)が挙げられ得る。レセプター媒介性ターゲッティングとしても既知の毒素標的化送達技術、例えばAvant Immunotherapeutics,Inc.(Needham,Massachusetts)のものも用いられ得る。
【0162】
本発明のワクチンとしては、核酸媒介性様相が挙げられる。本発明の1つまたはそれ以上のペプチドをコードするDNAまたはRNAも、患者に投与され得る。このアプローチは、例えばWolffら,Science 247:1465(1990)ならびに米国特許第5,580,859号、同第5,589,466号、同第5,804,566号、同第5,739,118号、同第5,736,524号、同第5,679,647号、国際公開第98/04720号、および以下にさらに詳細に記載される。DNAベースの送達技術の例としては、「裸のDNA」促進(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、陽イオン性脂質複合体、ならびに粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性送達が挙げられる(例えば、米国特許第5,922,687号参照)。
【0163】
治療的または予防的免疫化用途のために、本発明のペプチドはまた、ウイルスまたは細菌ベクターによって発現され得る。発現ベクターの例としては、ワクシニアまたはファウルポックスのような弱毒ウイルス宿主が挙げられる。このアプローチの一例として、ワクシニアウイルスは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとして用いられる。腫瘍を保有する宿主中への導入時に、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現し、それにより宿主CTLおよび/またはHTL応答を引き出す。免疫化プロトコールに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(Bacille Calmette Guerin)である。BCGベクターは、Stoverら,Nature 351:456−460(1991)に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与または免疫化に有用な多種多様の他のベクター、例えばアデノおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、Salmonella typhiベクター、解毒炭疽毒素ベクター等は、本明細書中の説明から、当業者には明らかである。
【0164】
さらに、本発明によるワクチンは、1つ以上の特許請求するペプチドの組成物を包含する。ペプチドは、ワクチン中に別々に存在し得る。あるいはペプチドは、同一ペプチドの多数のコピーを含むホモポリマーとして、あるいは種々のペプチドのヘテロポリマーとして存在し得る。ポリマーは、免疫学的反応増大という利点を有し、異なるペプチドエピトープがポリマーを製造するために用いられる場合、免疫応答のために標的化された、病原性生物体または腫瘍関連ペプチドの異なる抗原決定因子と反応する抗体および/またはCTLを誘導するさらなる能力を有する。この組成物は、抗原の天然に存在する領域であり得るか、あるいは例えば組換え的にまたは化学合成により調製され得る。
【0165】
本発明のワクチンとともに用いられ得るキャリアは目的の分野で周知であり、例えばチログロブリン、ヒト血清アルブミンのようなアルブミン、破傷風毒素、ポリL−リシン、ポリL−グルタミン酸のようなポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク質などが挙げられる。ワクチンは、生理学的に耐容可能な(すなわち許容可能な)希釈剤(例えば水または生理食塩水、好ましくはリン酸塩緩衝塩類溶液)を含有し得る。ワクチンはまた典型的には、アジュバントを含む。不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはミョウバンのようなアジュバントが、目的の分野で周知の物質の例である。さらに、本明細書中に開示するように、CTL応答は、例えばトリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(PCSS)のような脂質に本発明のペプチドを結合することによりプライミングされ得る。
【0166】
注射、エアロゾル、経口、経皮、経粘膜、胸膜腔内、鞘内またはその他の適切な経路を介しての本発明によるペプチド組成物での免疫化時に、宿主の免疫系は、所望の抗原に特異的な大量のCTLおよび/またはHTLを産生することにより、ワクチンに応答する。その結果として、宿主はその後の感染に対して少なくとも部分的に免疫を持つようになるか、または進行中の慢性感染の発症に対して少なくとも部分的に耐性となるか、あるいは抗原が腫瘍関連性である場合には、少なくともいくつかの治療的有益性を引き出す。
【0167】
いくつかの実施形態では、クラスIペプチド構成成分を、目的の標的抗原に対して中和抗体および/またはヘルパーT細胞応答を誘導または容易にする構成成分と組み合わせることが望ましい。このような組成物の好ましい実施形態は、本発明によるクラスIおよびクラスIIエピトープを含む。このような組成物の代替的実施形態は、本発明によるクラスIおよび/またはクラスIIエピトープを、HLAクラスII交差反応性結合分子、例えばPADRETM(Epimmune,San Diego,CA)分子とともに含む(例えば米国特許第5,736,142号に記載されている)。
【0168】
本発明のワクチンはまた、抗原提示細胞(APC)(例えば樹状細胞(DC))を本発明のペプチドを提示するためのビヒクルとして含み得る。ワクチン組成物は、樹状細胞動員および収集(それにより樹状細胞の充填がインビトロで起こる)後にインビトロで作製され得る。例えば樹状細胞は、例えば本発明によるミニジーンによりトランスフェクトされ、あるいはペプチドによりパルス刺激される。次に樹状細胞は、インビボで免疫応答を引き出すために患者に投与され得る。
【0169】
DNAまたはペプチドベースのいずれかのワクチン組成物もまた、樹状細胞動員(それにより樹状細胞の充填がインビボで起こる)と組合せて、インビボで投与され得る。
【0170】
抗原性ペプチドは、同様にCTLおよび/またはHTL応答をエキソビボで引き出すために用いられる。その結果生じるCTLまたはHTL細胞は、他の慣用的形態の治療に応答しないか、または本発明による治療用ワクチンペプチドまたは核酸に応答しない患者において、腫瘍を治療するために用いられ得る。特定の腫瘍関連抗原に対するエキソビボCTLまたはHTL応答は、患者のまたは遺伝子的に適合性のCTLまたはHTL前駆細胞を、樹状細胞のような抗原提示細胞の供給源、および適切な免疫原性ペプチドと一緒に組織培養物中でインキュベートすることにより誘導される。前駆細胞が活性化され、エフェクター細胞に膨張される適切なインキュベーション時間(典型的には約7〜28日)後、細胞は患者に注入し戻され、そこでそれらはそれらの特異的標的細胞(感染細胞または腫瘍細胞)を破壊し(CTL)、または破壊を促す(HTL)。トランスフェクトされた樹状細胞も、抗原提示細胞として用いられ得る。
【0171】
本発明のワクチン組成物はまた、癌のために用いられるその他の治療と併用して、例えばIL−2、IL−12、GM−CSF等のような免疫アジュバントと組合せても用いられ得る。
【0172】
好ましくは、ワクチン中に用いるためにポリエピトープ組成物中に含入するためにエピトープのアレイを選定する場合、あるいはワクチン中に含入される、および/またはミニジーンのような核酸によりコードされる別々のエピトープを選定するために、以下の原理が利用される。癌を治療または予防するためにワクチン中に利用され得る典型的なエピトープは、表XXIII〜XXVIIおよびXXXIに記載される。選定を行なうためには、以下の原理の各々が釣り合っているのが好ましい。所定のワクチン組成物中に組み込まれる多数のエピトープは、エピトープが得られる天然抗原中の配列にて連続的であり得るが、そうである必要はない。
【0173】
1.)投与時に、腫瘍クリアランスと相関することが観察された免疫応答を模倣するエピトープが選択される。HLAクラスIに関しては、これは少なくとも1つのTAAからのものである3〜4個のエピトープを含む。HLAクラスIIに関しては、同様の論理的根拠が用いられ、これも3〜4個のエピトープが少なくとも1つのTAAから選定される(例えば、Rosenberg et al.,Science 278:1447−1450参照)。1つのTAAからのエピトープは、1つ以上のさらなるTAAからのエピトープと組合せて用いられて、例えば実施例15に記載されているように、高頻度発現TAAの種々の発現パターンで腫瘍を標的にするワクチンを生産し得る。
【0174】
2.)免疫原性と相関することが確立された必要な結合親和性を有するエピトープが選定される。HLAクラスIに関してはIC50は500nMまたはそれ未満、クラスIIに関してはIC50は1000nMまたはそれ未満である。
【0175】
3.)広範な集団適用範囲を与えるのに十分なスーパーモチーフ保有ペプチド、または対立遺伝子特異的モチーフ保有ペプチドの十分なアレイが選定される。例えば、少なくとも80%の集団適用範囲を有するのが好ましい。目的の分野で既知の統計学的評価であるモンテカルロ分析が、集団適用範囲の広さまたは重剰性を評価するために用いられ得る。
【0176】
4.)癌関連抗原からエピトープを選定する場合、患者は天然エピトープに対する寛容を発生し得るため、類縁体を選定するのがしばしば有用である。感染性疾患関連抗原に関するエピトープを選定する場合は、天然または類似させたエピトープを選定するのが好ましい。
【0177】
5.)特に関連があるのは、「入れ子構造(nested)エピトープ」と呼ばれるエピトープである。入れ子構造エピトープは、所定のペプチド配列中に少なくとも2つのエピトープが重複する場合に起こる。入れ子構造ペプチド配列は、HLAクラスIおよびHLAクラスIIエピトープの両方を含み得る。入れ子構造エピトープを提供する場合、一般的目的は、1配列当たり最大数のエピトープを提供することである。したがって一つの局面は、ペプチド中のアミノ末端エピトープのアミノ末端およびカルボキシル末端エピトープのカルボキシル末端より任意に長いペプチドを提供するのを避けることである。入れ子構造エピトープのような多エピトープ配列、配列を提供する場合、病理学的またはその他の有害な生物学的特性を有さないことを保証するために、配列をスクリーニングすることが一般的に重要である。
【0178】
6.)ポリエピトープタンパク質が作製されるか、またはミニジーンを作製する場合、目的のエピトープを包含する最小ペプチドを生成することが一目的である。この原理は、入れ子構造ペプチドを含むペプチドを選択する場合に用いられるのと同様でない場合には、類似する。しかしながら人工ポリエピトープペプチドを用いる場合、サイズ最小化の目的物は、ポリエピトープタンパク質中のエピトープ間に任意のスペーサー配列を組み込む必要性に対して釣り合いをとられる。スペーサーアミノ酸残基は、例えば結合(junctional)エピトープ(免疫系により認識され、標的抗原中に存在せず、エピトープの人工並置によってのみ作製されるエピトープ)を回避するために、あるいはエピトープ間の切断を促し、それによりエピトープ提示を高めるために導入され得る。結合エピトープは一般に、回避される。なぜなら、レシピエントが非天然ペプチドに対して免疫応答を生じ得るからである。特に重要なのは、「ドミナント(dominant)エピトープ」である結合エピトープである。ドミナント(dominant)エピトープは、他のエピトープに対する免疫応答が縮小されるかまたは抑制されるような熱狂的な応答を引き起こし得る。
【0179】
(IV.K.1.ミニジーンワクチン)
多数のエピトープの同時送達を可能にする多数の異なるアプローチが利用可能である。本発明のペプチドをコードする核酸は、本発明の特に有用な実施形態である。ミニジーンに含入するためのエピトープは、好ましくは前節に記載した指針にしたがって選択される。本発明のペプチドをコードする核酸を投与する好ましい手段は、本発明の1つまたは多数のエピトープを含むペプチドをコードするミニジーン構築物を使用する。
【0180】
多エピトープミニジーンの使用は、以下に、ならびに例えば米国同時係属出願第09/311,784号、Ishioka et al.,J.Immunol.162:3915−3925,1999、An,L.and Whitton,J.L.,J.Virol.71:2292,1997、Thomson,S.A.et al.,J.Immunol.157:822,1996、Whitton,J.L.et al.,J.Virol.67:348,1993、Hanke,R.et al.,Vaccine 16:426,1998に記載されている。例えば、CEAの複数の領域から得られるスーパーモチーフおよび/またはモチーフ保有CEAエピトープ、普遍的(universal)ヘルパーT細胞エピトープ(例えばPADRETM(またはCEAからの多HTLエピトープ))、および小胞体翻訳シグナル配列をコードする多エピトープDNAプラスミドが、操作され得る。ワクチンは、CEAエピトープのほかに、他のTAA由来のエピトープも含む。
【0181】
多エピトープミニジーンの免疫原性は、試験されるエピトープに対するCTL誘導応答の規模を評価するためにトランスジェニックマウスで試験され得る。さらにDNAコードエピトープのインビボでの免疫原性は、DNAプラスミドでトランスフェクトされた標的細胞に対する特異的CTL系のインビトロ応答と相関し得る。したがってこれらの実験は、ミニジーンが、1)CTL応答を生じること、および2)誘導CTLが、コードされるエピトープを発現する細胞を認識するのに役立つことの両方を示し得る。
【0182】
例えば、ヒト細胞中での発現のための選定エピトープをコードするDNA配列(ミニジーン)を作製するために、エピトープのアミノ酸配列は逆翻訳されてもよい。ヒトコドン使用法表は、各アミノ酸に対するコドン選択をガイドするために用いられ得る。これらのエピトープコードDNA配列は、翻訳される場合、連続ポリペプチド配列が作られるように、直接隣接され得る。発現および/または免疫原性を最適化するために、ミニジーン設計にさらなる要素が組み込まれ得る。逆翻訳され、ミニジーン配列中に含入され得るアミノ酸配列の例としては、以下のものが挙げられる:HLAクラスIエピトープ、HLAクラスIIエピトープ、ユビキチン結合シグナル配列および/または小胞体ターゲッティングシグナル。さらに、CTLおよびHTLエピトープのHLA提示は、CTLまたはHTLエピトープに隣接する合成(例えばポリアラニン)または天然に存在するフランキング配列を含入することにより改善され得る。エピトープ(単数または複数)を含むこれらの大型ペプチドは、本発明の範囲内である。
【0183】
ミニジーン配列は、ミニジーンのプラスおよびマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドを集合することによりDNAに変換され得る。周知の技法を用いて適切な条件下で、重複オリゴヌクレオチド(30〜100塩基長)が合成され、リン酸化され、精製され、アニーリングされ得る。オリゴヌクレオチドの末端は、例えばT4DNAリガーゼを用いて連結される。次に、エピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニジーンは所望の発現ベクター中にクローン化され得る。
【0184】
当業者に周知の標準調節配列は、好ましくは標的細胞中での発現を保証するためにベクター中に含入される。以下のようないくつかのベクター要素が望ましい:ミニジーン挿入のための下流クローニング部位を有するプロモーター、効率的転写終結のためのポリアデニル化シグナル、大腸菌複製起点、および大腸菌選択可能マーカー(例えばアンピシリンまたはカナマイシン耐性)。この目的のために、例えばヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーターのような多数のプロモーターが用いられ得る。他の適切なプロモーター配列に関しては、例えば米国特許第5,580,859号および第5,589,466号を参照されたい。
【0185】
ミニジーン発現および免疫原性を最適化するためには、さらなるベクター改変が望ましくあり得る。いくつかの場合、効率的遺伝子発現のためにイントロンが必要であり、1つ以上の合成または天然に存在するイントロンが、ミニジーンの転写領域に組み込まれ得る。哺乳類細胞におけるmRNA安定化配列および複製用配列の含入もまた、ミニジーン発現増大のために考慮され得る。
【0186】
いったん発現ベクターが選定されれば、ミニジーンはプロモーターの下流のポリリンカー領域にクローン化される。このプラスミドは、適切な大腸菌株中で形質転換され、標準技法を用いてDNAが調製される。ミニジーンの配向およびDNA配列、ならびにベクター中に含入されるすべてのその他の要素が、制限マッピングおよびDNA配列分析を用いて確認される。正しいプラスミドを保有する細菌細胞は、マスター細胞バンクおよび作業用細胞バンクとして貯蔵され得る。
【0187】
さらに、免疫刺激配列(ISSまたはCpG)は、DNAワクチンの免疫原性にて役割を果たすようである。これらの配列は、免疫原性を強化するのが望ましい場合には、ミニジーンコード配列の外側の、ベクター中に含入され得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、ミニジーンにコードされるエピトープおよび第二のタンパク質(免疫原性を強化または低減するために含入される)の両方の産生を可能にする2シストロン発現ベクターが用いられ得る。同時発現された場合に有益に免疫応答を高め得るタンパク質またはポリペプチドの例としては、サイトカイン(例えば、IL−2、IL−12、GM−CSF)、サイトカイン誘導性分子(例えばLeIF)、同時刺激分子、あるいはHTL応答に関しては、汎DR(pan−DR)結合タンパク質(PADRETM、Epimmune,San Diego,CA)が挙げられる。ヘルパー(HTL)エピトープは、細胞内ターゲッティングシグナルに連結され、発現CTLとは別個に発現される。これは、CTLエピトープの場合と異なる細胞区画へのHTLエピトープの誘導を可能にする。必要な場合、これはHLAクラスII経路へのHTLエピトープのより効率的侵入を促し、それによりHTL誘導を改良し得る。HTLまたはCTL誘導に対比して、免疫抑制分子(例えばTGF−β)の同時発現による免疫応答の特異的低減は、ある種の疾患においては有益であり得る。
【0189】
治療的量のプラスミドDNAは、例えばE.coliにおける発酵、続く精製により生産され得る。作業用細胞バンクからのアリコートを用いて、増殖培地に接種し、周知の技法にしたがって振盪フラスコまたはバイオリアクター中で飽和するまで増殖させる。プラスミドDNAは、標準生物分離技法(例えばQIAGEN,Inc.(Valencia,California)により供給される固相陰イオン交換樹脂)を用いて精製され得る。必要な場合、ゲル電気泳動またはその他の方法を用いて、スーパーコイルDNAが開環および線状形態から単離され得る。
【0190】
精製プラスミドDNAは、種々の処方物を用いた注射用に調製され得る。これらのうち最も簡単なのは、滅菌リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)中での凍結乾燥されたDNAの再構成である。「裸のDNA」として既知のこのアプローチは、一般に臨床試験における筋肉内(IM)投与用に用いられている。ミニジーンDNAワクチンの免疫治療効果を最大にするためには、精製プラスミドDNAを処方するための代替的方法が望ましくあり得る。種々の方法が記載されており、新規の技法が利用可能になってい得る。陽イオン性脂質、糖脂質およびフソゲン性(fusogenic)リポソームも処方物中に用いられ得る(例えば、国際公開93/24640;Mannino & Gould−Fogerite,Bio Techniques 6(7):682 (1988)、米国特許第5,279,833号、国際公開91/06309およびFelgner,et al.Pro.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413 (1987)参照)。さらに、総称して保護的、相互作用的、非縮合化合物(PINC)と呼ばれるペプチドおよび化合物もまた、精製プラスミドDNAと複合体化されて、安定性、筋肉内分散または特定の器官または細胞型への輸送のような変数(変量)に影響を及ぼし得る。
【0191】
標的細胞感作は、ミニジーンコードCTLエピトープの発現およびHLAクラスI提示に関する機能性アッセイとして用いられ得る。例えばプラスミドDNAは、標準CTLクロム放出アッセイのための標的として適した哺乳類細胞系中に導入される。用いられるトランスフェクション方法は、最終処方物に依存するであろう。エレクトロポレーションは、「裸の」DNAのために用いられ、一方、陽イオン性脂質は、直接インビトロトランスフェクションを可能にする。グリーン蛍光タンパク質(GFP)を発現するプラスミドは、同時トランスフェクトされて、蛍光標示式細胞分取(FACS)を用いたトランスフェクト化された細胞の富化を可能にする。これらの細胞は次に、クロム−51(51Cr)標識されて、エピトープ特異的CTL系に対する標的細胞として用いられる。51Cr放出により検出される細胞溶解は、ミニジーンコードCTLエピトープの産生およびHLA提示の両方を示す。HTLエピトープの発現は、HTL活性を評価するためにアッセイを用いて同様の方法で評価され得る。
【0192】
インビボ免疫原性は、ミニジーンDNA処方物の機能性試験のための第2のアプローチである。適切なヒトHLAタンパク質を発現するトランスジェニックマウスは、DNA産物で免疫化される。投与の用量および経路は、処方物依存性である(例えばPBS中のDNAに関してはIM、脂質複合化DNAに関しては腹腔内(IP))。免疫化後21日目に、脾臓細胞を収集し、試験される各エピトープをコードするペプチドの存在下で1週間再刺激した。その後、CTLエフェクター細胞に関しては、アッセイは、標準技法を用いて、ペプチド充填51Cr標識標的細胞の細胞溶解に関して実行される。ミニジーンコードエピトープに対応するペプチドエピトープを負荷されたHLAにより感作された標的細胞の溶解は、CTLのインビボ誘導に関するDNAワクチン機能を立証する。HTLエピトープの免疫原性は、同様の方法で、トランスジェニックマウスで評価される。
【0193】
あるいは、核酸は、例えば米国特許第5,204,253号に記載されるように弾道送達を用いて投与され得る。この技法を用いて、DNA単独で構成される粒子が投与される。さらなる代替的実施形態では、DNAは粒子、例えば金粒子に付着される。
【0194】
ミニジーンは、目的の分野で周知のその他の細菌またはウイルス送達系を用いても送達され得る。例えば本発明のエピトープをコードする発現構築物は、ワクシニアのようなウイルスベクター中に組み込まれ得る。
【0195】
(IV.K.2.CTLペプチドのヘルパーペプチドとの組合せ)
本発明のペプチドまたはその類縁体を含むワクチン組成物は、免疫刺激活性を有し、所望の属性、例えば血清半減期の改良を提供するために、あるいは免疫原性を高めるために改変してもよい。
【0196】
例えば、ペプチドがCTL活性を誘導する能力は、Tヘルパー細胞応答を誘導し得る少なくとも1つのエピトープを含有する配列にペプチドを連結することにより高められ得る。免疫原性を高めるためのCTLエピトープを伴うTヘルパーエピトープの使用は、例えば米国同時係属出願第08/820,360号、第08/197,484号および第08/464,234号に説明されている。
【0197】
CTLペプチドは、Tヘルパーペプチドに直接連結され得るが、しかし多くの場合CTLエピトープ/HTLエピトープ結合体はスペーサー分子により連結される。スペーサーは典型的には、生理学的条件下で実質的に荷電されない、比較的小型の中性分子、例えばアミノ酸またはアミノ酸擬似体で構成される。スペーサーは、典型的には、例えばAla、Gly、または非極性アミノ酸または中性極性アミノ酸のその他の中性スペーサーから選択される。任意に存在するスペーサーは同一残基で構成される必要はなく、したがってヘテロまたはホモオリゴマーであってもよいと理解される。存在する場合、スペーサーは通常、少なくとも1つまたは2つの残基、さらに通常は3〜6つの残基、場合によっては10またはそれを超える残基であろう。CTLペプチドエピトープは、直接またはスペーサーを介して、CTLペプチドのアミノまたはカルボキシ末端でTヘルパーペプチドエピトープに連結され得る。免疫原性ペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれかのアミノ末端は、アシル化されてもよい。
【0198】
ある種の実施形態では、Tヘルパーペプチドは、大多数の集団中に存在するTヘルパー細胞により認識されるものである。これは多数の、ほとんどの、または全てのHLAクラスII分子に結合するアミノ酸配列を選定することにより成し遂げられ得る。これらは「ゆるくHLA拘束された」または「混然とした」Tヘルパー配列として既知である。混然としたペプチドの例としては、位置830〜843(QYIKANSKFIGITE)での破傷風毒素、位置378〜398(DIEKKLAKMEKASSVFNVVNS)でのPlasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)スポロゾイト周囲(CS)タンパク質、および位置116(GAVDSILGGVATYGAA)でのStreptococcus(連鎖球菌)18kDタンパク質のような抗原からの配列が挙げられる。その他の例としては、DR1−4−7スーパーモチーフ、またはDR3モチーフのいずれかを保有するペプチドが挙げられる。
【0199】
あるいは、天然には見出されないアミノ酸配列を用いて、ゆるくHLA拘束された様式で、Tヘルパーリンパ球を刺激し得る合成ペプチドを調製することができる(例えば、国際公開公報第95/07707号参照)。汎DR結合エピトープ(例えばPADRE(商標)、Epimmune,Inc.,San Diego,CA)と呼ばれるこれらの合成化合物は、最も好ましくはほとんどのHLA−DR(ヒトHLAクラスII)分子を結合するよう設計される。例えば、次式:aKXVAAWTLKAAa(式中、「X」はシクロヘキシルアラニン、フェニルアラニンまたはチロシンであり、「a」はD−アラニンまたはL−アラニンである)を有する汎DR結合エピトープペプチドは、ほとんどのHLA−DR対立遺伝子に結合し、それらのHLA型とは関係なく、ほとんどの個体からのTヘルパーリンパ球の応答を刺激することが判明した。汎DR結合エピトープの代替物は、全ての「L」型天然アミノ酸を含み、エピトープをコードする核酸の形態で提供され得る。
【0200】
HTLペプチドエピトープも、それらの生物特性を改変するよう修飾され得る。例えばそれらは、プロテアーゼに対するそれらの耐性を増大させ、したがってそれらの血清半減期を延長するためにそれらのD−アミノ酸を含入するよう修飾され得るか、あるいはそれらはその生物活性を増大するために脂質、タンパク質、炭水化物等のようなその他の分子と結合され得る。例えばTヘルパーペプチドは、アミノまたはカルボキシル末端で、1つまたはそれ以上のパルミチン酸鎖と結合され得る。
【0201】
(IV.K.3.T細胞プライミング剤とのCTLペプチドの組合せ)
いくつかの実施形態では、細胞傷害性Tリンパ球をプライミングする少なくとも1つの構成成分を本発明の薬学的組成物中に含むのが望ましい。脂質はウイルス抗原に対してインビボでCTLをプライミングし得る作用物質であると同定されている。例えば、パルミチン酸残基は、リシン残基のεおよびα−アミノ基に結合され、次に1つまたはそれ以上の連結残基、例えばGly、Gly−Gly−、Ser、Ser−Ser等を介して免疫原性ペプチドに連結される。次に脂質化ペプチドは、ミセルまたは粒子中に直接投与され、リポソーム中に組み込まれるか、あるいはアジュバント、例えば不完全フロイントアジュバント中で乳化され得る。好ましい免疫原性組成物は、Lysのε−およびα−アミノ基に結合されるパルミチン酸を含み、これは、結合(例えばSer−Ser)を介して免疫原性ペプチドのアミノ末端に結合される。
【0202】
CTL応答の脂質プライミングの別の例として、大腸菌リポタンパク質、例えばトリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(PCSS)は、適切なペプチドと共有結合される場合、ウイルス特異的CTLをプライミングするために用いられ得る(例えば、Deresら、Nature 342:561,1989参照)。本発明のペプチドは、例えば標的抗原に対するCTL応答を特異的にプライミングするために個体に投与されるリポペプチドであるPCSSに結合され得る。さらに中性抗体の誘導も、PCSS結合エピトープでプライミングされ得る。2つのこのような組成物は、より効率的に体液および細胞媒介性応答を引き出すために併合され得る。
【0203】
CTLおよび/またはHTLペプチドは、互いにペプチドを連結するのを容易にする、キャリア支持体またはより大きなペプチドにカップリングする、ペプチドまたはオリゴペプチドの物理的または化学的特性を修飾する、などのためにペプチドの末端にアミノ酸を付加することによっても修飾され得る。アミノ酸、例えばチロシン、システイン、リシン、グルタミン酸またはアスパラギン酸などは、ペプチドまたはオリゴペプチド、特にクラスIペプチドのCまたはN−末端に導入され得る。しかしながら、CTLエピトープのカルボキシル末端の修飾は、いくつかの場合には、ペプチドの結合特性を変え得るということに留意すべきである。さらにペプチドまたはオリゴペプチド配列は、末端NHアシル化により、例えばアルカノイル(C〜C20)またはチオグリコリルアセチル化、末端カルボキシルアミド化、例えばアンモニア、メチルアミン等により修飾されることにより天然配列と異なり得る。いくつかの場合には、これらの修飾は、支持体またはその他の分子に結合するための部位を提供し得る。
【0204】
(IV.K.4.CTLおよび/またはHTLペプチドでパルス化されたDCを含むワクチン組成物)
本発明のワクチン組成物の実施形態は、エピトープ保有ペプチドのカクテルを患者血液からPBMCまたはそこからの単離DCへエキソビボで投与することを包含する。DCの収集を促すための薬剤、例えばProgenipoietin(商標)(Monsanto,St.Louis,MO)またはGM−CSF/IL−4が用いられ得る。ペプチドを用いて、DCをパルス化後、かつ患者への再注入前にDCを洗浄して非結合ペプチドを除去する。この実施形態では、ワクチンは、それらの表面にHLA分子と複合体を形成するパルス化ペプチドエピトープを提示するペプチドパルス化DCを含む。
【0205】
DCを、ペプチドのカクテルを用いてエキソビボでパルス化することができ、そのうちのいくつかが1つまたはそれ以上の当該抗原、例えば腫瘍関連抗原、例えばCEA、p53、Her2/neu、MAGE、前立腺癌関連抗原等に対するCTL応答を刺激する。任意に、ヘルパーT細胞ペプチド、例えばPADRE(商標)ファミリー分子は、CTL応答を促進するために含入され得る。
【0206】
(IV.L.治療または予防用途のためのワクチンの投与)
本発明のペプチドならびに製剤および本発明のワクチン組成物は、代表的には癌を治療するために治療的に用いられる。本発明のペプチドを含有するワクチン組成物は、代表的には1つまたはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現に関連した悪性疾患を有する癌患者に投与される。あるいはワクチン組成物は、特定の種類の癌、例えば乳癌に罹り易いか、またはそうでなければ発症する危険がある個体に投与され得る。
【0207】
治療的用途においては、ペプチドおよび/または核酸組成物は、腫瘍抗原に対する有効なCTLおよび/またはHTL応答を引き出すのに、そして症状および/または合併症を治癒するかあるいは少なくとも部分的に休止させるかまたは遅延させるのに十分な量で患者に投与される。これを成し遂げるのに適した量は、「治療的有効用量」と定義される。この使用に有効な量は、例えば投与される特定の組成物、投与の方法、治療される疾患の病期および重症度、患者の体重および全身健康状態、ならびに処方医の判断によっている。
【0208】
上記のように、本発明のCTLおよび/またはHTLエピトープを含むペプチドは、HLA分子により提示され、ペプチドにより構成されるエピトープに特異的なCTLまたはHTLと接触されると、免疫応答を誘導する。ペプチドがCTLまたはHTLと接触される方法は、本発明にとっては重要でない。例えばペプチドはインビボまたはインビトロでCTLまたはHTLと接触され得る。接触がインビボで起こる場合、ペプチドそれ自体が患者に投与されるか、あるいはその他のビヒクル、例えば1つまたはそれ以上のペプチドをコードするDNAベクター、ペプチド(単数または複数)をコードするウイルスベクター、リポソーム等が、本明細書中に記載されているように用いられ得る。
【0209】
ペプチドがインビトロで接触される場合、ワクチン剤は、細胞、例えばペプチドを用いてインビトロで抗原提示細胞をパルス処理することにより誘導された、ペプチドパルス化樹状細胞またはTAA特異的CTLの集団を含み得る。その後、このような細胞集団は治療的有効量で患者に投与される。
【0210】
薬学的組成物に関しては、本発明の免疫原性ペプチドまたはそれらをコードするDNAは一般に、すでに癌と診断された個体に投与される。ペプチドまたはそれらをコードするDNAは、別々に、または1つまたはそれ以上のペプチド配列の融合体として投与され得る。
【0211】
治療的使用に関しては、投与は一般に、癌の初回診断時に開始すべきである。この後、少なくとも症状が実質的に軽減されるまで、そしてその後一定期間、用量をブーストさせる。患者に送達されるワクチン組成物の実施形態(即ち、その例としては例えば、ペプチドカクテル、ポリエピトープポリペプチド、ミニジーンまたはTAA特異的CTLが挙げられるが、これらに限定されない)は、疾患の病期によって変わり得る。例えばTAA特異的CTLを含むワクチンは、代替的実施形態よりも進行性疾患患者における腫瘍細胞を死滅させることにおいてより有効であり得る。
【0212】
本発明のワクチン組成物は、手術のような治療と組合せて治療的にも用いられ得る。一例は、患者が原発性腫瘍を除去するために手術を受け、その後ワクチンを用いて、再発および/または転移を遅延させたりまたは防止する状況である。
【0213】
感受性個体、例えば特定の種類の腫瘍の発症に対して遺伝的素因を受け継いでいると診断され得る個体が、癌の診断前に同定された場合、組成物はそれらを標的にし、したがってより大きな集団への投与の必要性を最小限にし得る。
【0214】
初回治療的免疫化のための投与量は一般に、低いほうの値が約1、5、50、500または1,000μgであり、高い方の値が約10,000、20,000、30,000、または50,000μgである単位投与量範囲である。ヒトのための投与量値は、代表的には体重70kgの患者につき約500μg〜約50,000μg範囲である。数週間〜数ヶ月間にわたる追加免疫レジメンにしたがって約1.0μg〜約50,000μgのペプチドの追加免疫投与量が、患者の応答、ならびに患者の血液から得られるCTLおよびHTLの特異的活性を測定することにより確定されるような条件に依存して投与され得る。
【0215】
投与は、少なくとも臨床症状または実験室試験が、腫瘍が排除されたことを、または腫瘍細胞負荷が実質的に軽減されたことを示唆するまで、そしてその後一定期間、継続されるべきである。投与の投与量、経路および用量計画は、当該分野で公知の方法論にしたがって調整される。
【0216】
ある実施形態では、本発明のペプチドおよび組成物は、重篤な疾患状態に、即ち致命的または致命的な恐れのある状況で用いられる。このような場合、本発明の好ましい組成物中の最小量の外来物質および比較的に無毒性のペプチドの結果、これらの規定投与量と比較して実質的に過剰量のこれらのペプチド組成物を投与することができるし、治療医には望ましいと感じられ得る。
【0217】
治療的処置のための薬学的組成物は、非経口的、局所的、経口的、鞘内または限局投与を意図される。好ましくは薬学的組成物は、非経口的に、例えば静脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与される。したがって本発明は、受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリア中に溶解または懸濁される免疫原性ペプチドの溶液を含む非経口投与用の組成物を提供する。種々の水性キャリア,例えば水、緩衝化水、0.8%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等が用いられ得る。これらの組成物は、慣用的周知の滅菌技法により滅菌され得るし、あるいは滅菌濾過され得る。その結果生じる水溶液は、そのままで用いるために包装されるか、あるいは凍結乾燥され、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液と併合される。組成物は、生理学的に近似していることが要求される薬学的に受容可能な補助物質、例えばpH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、湿潤剤、防腐剤等、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート等を含有し得る。
【0218】
薬学的処方物中の本発明のペプチドの濃度は広範に、即ち約0.1%未満、通常少なくとも約2重量%から、20重量%〜50重量%またはそれ以上の範囲で変わり得、選定された特定の投与形態にしたがって、主として流体容積、粘度などにより選定される。
【0219】
ペプチド組成物のヒト単位用量形態は、代表的には、ヒト単位用量の受容可能なキャリア、好ましくは水性キャリアを含む薬学的組成物中に含入され、そしてヒトへのこのような組成物の投与のために用いられることが当業者に既知である流体の容積中に投与される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第17版,A.Gennaro(編)Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania,1985参照)。
【0220】
本発明のペプチドは、特定の組織、例えばリンパ系組織に対してペプチドを標的にするのに、あるいは感染細胞に対して選択的に標的にするのに、ならびにペプチド組成物の半減期を増大するのに役立つリポソームを介しても投与され得る。リポソームは、エマルジョン、発泡体、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層等を含む。これらの調製物中では、送達されるペプチドはリポソームの一部として、単独で、またはリンパ系細胞、例えばCD45抗原に結合するモノクローナル抗体間に広く存在している受容体に結合する分子と一緒に、あるいはその他の治療用または免疫原性組成物と一緒に、組入れられ得る。したがって、本発明の所望のペプチドを充填されるかまたはそれで修飾されるリポソームはリンパ系細胞の部位に向けられて、そこでリポソームは次に、ペプチド組成物を送達する。本発明にしたがって用いるためのリポソームは、標準小胞形成脂質から形成され、これは一般に中性および負荷電リン脂質、ならびにステロール、例えばコレステロールを含む。脂質の選定は一般に、例えばリポソームサイズ、酸の不安定性および血流中のリポソームの安定性を考察することにより導き出される。リポソームを調製するためには、例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467 (1980)および米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号および第5,019,369号に記載されているような種々の方法が利用可能である。
【0221】
免疫系の細胞をターゲッティングするために、リポソーム中に組入れられるリガンドとしては、例えば所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体またはそれらの断片が挙げられる。ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、静脈内、限局的、局所的等で、とりわけ、投与の様式、送達されるペプチドおよび処置される疾患の病期によって変わる用量で、投与され得る。
【0222】
固体組成物に関しては、従来の無毒性固体キャリアが用いられ、その例としては、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等が挙げられる。経口投与に関しては、薬学的に受容可能な無毒性組成物が、通常で用いられる賦形剤、例えば上記キャリアのいずれか、一般的に10〜95%の活性成分、即ち本発明の1つまたはそれ以上のペプチドを、ならびにさらに好ましくは25%〜75%の濃度で組み込むことにより形成される。
【0223】
エアロゾル投与に関しては、免疫原性ペプチドは好ましくは界面活性剤および噴射剤と一緒に、微粉砕形態で供給され得る。ペプチドの代表的パーセンテージは、0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%である。界面活性剤は、もちろん無毒性であり、好ましくは噴射剤中に可溶である。このような物質の代表例は、6〜22個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えばカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリック酸(olesteric acid)、オレイン酸の、脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物とのエステルまたは部分エステルである。混合エステル、例えば混合または天然グリセリドが用いられ得る。界面活性剤は、組成物の0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.25重量%〜5重量%を構成し得る。組成物の残余物は、普通は噴射剤である。所望により、例えば鼻腔内送達のためのレシチンのような、キャリアも含まれ得る。
【0224】
(IV.M.HLA発現:T細胞ベースの免疫療法に対する関連)
(癌および感染性疾患における疾患進行)
動的相互作用が、癌および感染性疾患の設定において宿主および疾患間に存在することは十分認識されている。感染性疾患の設定では、病原体が疾患中に進化するいうことは十分確定されている。HIV感染において初期に優勢である菌株は、AIDSおよび後期疾患段階に関連するものとは異なる(NS対S菌株)。感染の確立において有効である病原体形態は、複製および慢性に関して最も有効であるものとは異なり得ることが長い間仮定されてきた。
【0225】
同様に、個体が新生物性疾患に屈する病理プロセスは複雑であることが広範に認識されている。疾患の経過中、多数の変化が癌細胞中で起こる。腫瘍は、増殖および分化の機能不全調節に部分的に関連するが、その増殖能力を最大にすることにも関連し、薬剤治療および/または身体の免疫監視から逃れる変異を蓄積する。新生物性疾患は、疾患進行の関数としての癌細胞のいくつかの異なる生化学的変化の蓄積を生じる。それは、特に後期転移期において、有意レベルの癌内および癌間異質性も生じる。
【0226】
治療結果に影響を及ぼす細胞変化のよく知られた例としては、治療経過中の放射線または化学療法耐性腫瘍の進展が挙げられる。これらの例は、攻撃的化学療法の結果としての薬剤耐性ウイルス株の出現、例えば慢性HBVおよびHIV感染の出現、ならびに結核およびマラリアを引き起こす薬剤耐性生物の現行の復活と並行している。応答の有意の異質性は、癌療法に対するその他のアプローチ、例えば抗血管新生剤、受動抗体免疫療法、および活性T細胞ベースの免疫療法にも関連する。したがって、このような現象の点から見て、多疾患関連抗原からのエピトープはワクチンおよび治療薬に用いられることができ、それにより、突然変異を生じ治療を逃れる疾患細胞の能力を妨害する。
【0227】
(疾患と免疫系の間の相互作用)
宿主と疾患の間の動的相互作用に関与する主な因子のうちの1つが、病原体,感染細胞または悪性疾患細胞に対して立ち上げられる免疫応答である。多数の症状において、このような免疫応答は疾患を制御する。いくつかの動物モデル系およびヒトにおける自然感染の期待される研究は、病原体に対する免疫応答が病原体を制御し、重症疾患への進行を防止し、および/または病原体を排除し得ることを示唆する。共通の主題は、多特異的T細胞応答に関する要件であり、狭い範囲に集中する応答は有効性が低いと思われる。これらの観察は、広範な免疫応答を提供する本発明の方法および組成物の実施形態に関して当業者に指針を示す。
【0228】
癌の場合、免疫応答が新生物増殖に影響を及ぼし得ることを示す以下のようないくつかの知見が認められる:
第一に、多数の異なる動物モデルにおける、MHCクラスIにより拘束される抗腫瘍T細胞が腫瘍を防止し、または治療することが可能であるという証拠。
【0229】
第二に、有望な結果が免疫療法試験から得られた。
【0230】
第三に、自然疾患の経過中に成された観察が腫瘍内のT細胞浸潤の型および組成を陽性臨床結果と相関させた(Coulie PGら、Antitumor immunity at work in a melanoma patient In Advances in Cancer Research,213−242,1999)。
【0231】
最後に、腫瘍は一般的に、突然変異を引き起こし、それによりそれらの免疫学的認識を変える能力を有する。例えば、単一特異的CTLの存在は、抗原損失が発生するまで、腫瘍増殖の制御にも相関した(Riker Aら、Immune selection after antigen−specific immunotherapy of melanoma Surgery,Aug;126(2):112−20,1999;Marchand Mら、Tumor regressions observed in patients with metastatic melanoma treated with an antigenic peptide encoded by gene MAGE−3 and presented by HLA−A1  Int.J.Cancer 80(2):219−30,Jan.18,1999)。同様に、β2ミクログロブリンの損失が、NCIで免疫療法を受けた後の黒色腫患者から確立された5/13株で検出された(Restifo NPら、Loss of functional Beta2−microglobulin in metastatic melanomas from five patients receiving immunotherapy Journal of the National Cancer Institute,Vol.88(2),100−108,Jan.1996)。HLAクラスIは種々の腫瘍型で高頻度に変更される、ということが長い間認識されてきた。これは、クラスI拘束CTLにより腫瘍に加えれる免疫圧力をこの現象が反映し得る、という仮説をもたらした。HLAクラスI発現の変更の範囲および程度は、過去の免疫圧力を反映するものであると思われ、予後値も有し得る(van Duinen SGら、Level of HLA antigens in locoregional metastases and clinical course of the disease in patients with melanoma Cancer Research 48,1019−1025,Feb.1988;Moller Pら、Influence of major histocompatibility complex class I and II antigens on survival in colorectal carcinoma Cancer Research 51,729−736,Jan.1991)。合わせて考えると、これらの観察は癌および感染性疾患の免疫療法の根拠を提供し、そして有効な戦略は、疾患に関連した一連の複雑な病理学的変化を説明する必要があることを示唆する。
【0232】
(腫瘍におけるHLA発現の3つの主な型の変化ならびにそれらの機能的意味)
腫瘍におけるHLAクラスI抗原の発現のレベルおよびパターンは、多数の異なる腫瘍型で研究されており、研究された腫瘍の全ての型において変化が報告されている。HLAクラスI変化の基礎を成す分子メカニズムは、全く異質であることを立証した。それらは、TAP/プロセシング経路の変化、β2−ミクログロブリンおよび特異的HLA重鎖の突然変異、クラスI発現を制御する調節エレメントの変化、ならびに全染色体区分の損失を包含する。この題目に関するいくつかの総説がある(例えば、Garrido Fら、Natural history of HLA expression during tumour development Immunol Today 14(10):491−499,1993;Kaklamanis Lら、Loss of HLA class−I alleles,heavy chains and β2−microglobulin in colorectal cancer Int.J.Cancer,51(3):379−85,May 28,1992参照)。HLAクラスI変化には3つの主な型が存在する(完全損失、対立遺伝子特異的損失および発現低減)。各変化の機能的意味は別個に考察される。
【0233】
(HLA発現の完全損失)
HLA発現の完全損失は、種々の異なる分子メカニズムに起因し得る。それらについては以下の文献で概説されている(Algarra Iら、The HLA crossroad in tumor immunology Human Immunology 61,65−73,2000;Browning Mら、Mechanisms of loss of HLA class I expression on colorectal tumor cells Tissue Antigens 47:364−371,1996;Ferrone Sら、Loss of HLA class I antigens by melanoma cells:molecular mechanisms,functional significance and clinical relevance Immunology Today,16(10):487−494,1995;Garrido Fら、Natural history of HLA expression during tumour development Immunology Today 14(10):491−499,1993;Tait,BD,HLA Class I expression on human cancer cells:Implications for effective immunotherapy Hum Immunol 61,158−165,2000)。機能に関して、この型の変化はいくつかの重要な意味を有する。
【0234】
クラスI発現の完全非存在はそれらの腫瘍細胞のCTL認識を排除するが、一方、HLAクラスIの損失も、NK細胞からの溶解に対して腫瘍細胞を異常に感受性にさせる(Ohnmacht,GAら、Heterogeneity in expression of human leukocyte antigens and melanoma−associated antigens in advanced melanoma J Cellular Phys 182:332−338,2000;Liunggren HGら、Host resistance directed selectively against H−2 deficient lymphoma variants:Analysis of the mechanism J.Exp.Med.,Dec 1:162(6):1745−59,1985;Maio Mら、Reduction in susceptibility to natural killer cell−mediated lysis of human FO−1 melanoma cells after induction of HLA class I antigen expression by transfection with B2m gene J.Clin.Invest.88(1):282−9,July 1991:Schrier PIら、Relationship between myc oncogene activation and MHC class I expression Adv.Cancer Res.,60:181−246,1993)。
【0235】
HLA発現の損失とNK感受性の獲得との間の相補的相互作用は、Coulieと共同研究者(Coulie,PGら、Antitumor immunity at work in a melanoma patient.In Advances in Cancer Research,213−242,1999)の、数年に亘る経過中の患者の免疫応答の進展を記載した古典的研究により例示されている。NK溶解に対する感受性増大のために、概して生得免疫の、特にNK活性の刺激をもたらすアプローチは特別の意義を有することが予測される。このようなアプローチの一例は、種々の造血性増殖因子、例えばFlt3リガンドまたはProGPによる大量の樹状細胞(DC)の誘導である。このアプローチに関する根拠は、樹状細胞が、生得免疫および特にNK活性に対する最も強力な刺激剤の1つである大量のIL−12を産生するという周知の事実にある。あるいはIL−12は直接投与されるか、またはそれをコードする核酸として投与される。この点から見て、Flt3リガンド治療がクラスI陰性前立腺ネズミ癌モデルの一過性腫瘍退行を生じるということに留意するのは興味深い(Ciavarra RPら、Flt3−Ligand induces transient tumor regression in an ectopic treatment model of major histocompatibility complex−negative prostate cancer Cancer Res.60:2081−84,2000)。この情況では、本発明の特異的抗腫瘍ワクチンはこれらの型の造血増殖因子と相乗作用して、CTLおよびNK細胞応答の両方を促進し、それにより突然変異を生じ、それにより有効な治療を逃れる細胞の能力を明らかに減損する。したがって本発明の実施形態は、本発明の組成物を、NK細胞の機能的活性または数を増大する方法または組成物と一緒に包含する。このような実施形態は、NK誘導性の様式で引き続き、あるいはNK誘導性の様式で同時期に、本発明の組成物を提供するプロトコールを包含し得る。
【0236】
第二に、HLAの完全損失はしばしば腫瘍細胞の画分においてのみ起こるが、一方、腫瘍細胞の残り部分は正常発現を示し続ける。機能に関して、腫瘍は部分的に依然としてCTL応答からの直接攻撃を受け、細胞のHLAを欠く部分はNK応答を受ける。CTL応答のみが用いられる場合でも、腫瘍のHLA発現画分の破壊は生存時間およびクオリティーオブライフに劇的影響を及ぼす。
【0237】
異種HLA発現の場合には、正常HLA発現ならびに欠陥細胞はともに、「傍観者効果」に基づいた免疫破壊を受け易いと予測される、ということにも留意すべきである。このような効果は、例えば抗体標的化スーパー抗原の作用のインビボメカニズムを調べたRosendahlと共同研究者の研究において立証された(Rosendahl Aら、Perforin and IFN−gamma are involved in the antitumor effects of antibody−targeted superantigens J.Immunol.160(11):5309−13,June 1,1998)。傍観者効果は、例えばHLA保有標的細胞に作用するCTLから引き出されるサイトカインにより媒介され、それによりサイトカインは付随して殺害される他の罹患細胞の環境中に存在すると理解される。
【0238】
(対立遺伝子特異的損失)
クラスI分子の変化の最も一般的な種類の1つは、HLAに対してヘテロ接合性の個体中のある種の対立遺伝子の選択的損失である。対立遺伝子特異的変化は、単一HLA拘束エレメントにより拘束されるイムノドミナント(immunodominant)応答により加えられる免疫圧力に対する腫瘍適合を反映し得る。この種類の変化は、腫瘍にクラスI発現を保持させ、したがってNK細胞認識を逃れさせるが、なお依然として残りのHLA型に対応するエピトープを含む本発明のCTLベースのワクチンに感受性である。したがって対立遺伝子特異的損失の考え得るハードルを克服するための実際的な解決策は、多数の特異的応答の誘導に頼っている。本発明のワクチン中の多数の疾患関連抗原の含入は特定の疾患抗原の損失を生じる突然変異を防ぐのとちょうど同じように、多数のHLA特異性および多数の疾患関連抗原を同時にターゲッティングすることは、対立遺伝子特異的損失による疾患逃避を阻止する。
【0239】
(発現の低減(対立遺伝子特異的または非特異的))
エフェクターCTLの感受性は、長年立証されてきた(Brower,RCら、Minimal requirements for peptide mediated activation of CD8+CTL Mol.Immunol.,31:1285−93,1994;Chriustnick,ETら、Low numbers of MHC class I−peptide complexes required to trigger a T cell response Nature 352:67−70,1991;Sykulev,Yら、Evidence that a single peptide−MHC complex on a target cell can elicit cytolytic T cell response Immunity,4(6):565−71,June 1996)。単一ペプチド/MHC複合体でさえ、腫瘍細胞溶解を生じ、抗腫瘍リンホカインを放出し得る.HLA発現低減および免疫認識からの考え得る腫瘍逃避の生物学的意義は、完全にはわかっていない。それにもかかわらず、1つという少ないMHC/ペプチド複合体のCTL認識で、腫瘍細胞溶解を導くのに十分である、ということが立証されている。
【0240】
さらに、HLAの発現は、エフェクターCTLにより一般的に分泌されるγIFNにより上方制御され得る、ということが一般的に観察される。さらにHLAクラスI発現は、αおよびβIFNの両方によりインビボで誘導され得る(Halloranら、Local T cell responses induce widespread MHC expression,J Immunol 148:3837,1992;Pestka,Sら、Interferons and their actions Annu.Rev.Biochem.56:727−77,1987)。逆に、HLAクラスI発現のレベル低減も細胞をNK溶解に対してより感受性にさせる。
【0241】
γIFNに関しては、Torres等(Torres,MJら、Loss of an HLA haplotype in pancreas cancer tissue and its corresponding tumor derived cell line.Tissue Antigens 47:372−81,1996)は、ハロタイプの全体的損失が起こらない限り、HLA発現が膵臓癌におけるγIFNにより上方制御される、ということに注目している。同様にReesとMianは、対立遺伝子欠失および損失は、サイトカイン(例えばIFN−γ)により少なくとも部分的に回復され得る、ということに注目した(Rees,Rら、Selective MHC expression in tumours modulates adaptive and innate antitumour responses Cancer Immunol Immunother 48:374−81,1999)。IFN−γ治療は、研究された症例の大多数におけるクラスI分子の上方制御をもたらす、ということも注目された(Browning Mら、Mechanisms of loss of HLA class I expression on colorectal tumor cells,Tissue Antigens 47:364−371,1996)。Kaklamakis等も、IFN−γを用いるアジュバント免疫療法がHLAクラスI陰性腫瘍の場合に有益であり得る、ということを示唆した(Kaklamanis L,Loss of transporter in antigen processing 1 transport protein and major histocompatibility complex class I molecules in metastatic versus primary breast cancer,Cancer Research 55:5191−94,November 1995)。局所炎症/免疫化によりIFN−γ産生が誘導され、自己増幅されて(Halloranら、Local T cell responses induce widespread MHC expression,J.Immunol 148:3837,1992)、炎症部位から離れた部位でもMHC発現の大増加をもたらす、と強調することは重要である。
【0242】
最後に、研究により、HLA発現の低減が腫瘍細胞をNK溶解に対してより感受性にさせ得るということが立証された(Ohnmacht,GAら、Heterogeneity in expression of human leukocyte antigens and melanoma−associated antigens in advanced melanoma J Cellular Phys 182:332−338,2000;Liunggren HGら、Host resistance directed selectively against H−2 deficient lymphoma variants:Analysis of the mechanism J.Exp.Med.,162(6):1745−59,December 1,1985;Malo Mら、Reduction in susceptibility to natural killer cell−mediated lysis of human FO−1 melanoma cells after induction of HLA class I antigen expression by transfection with β2m gene J.Clin.Invest.88(1):282−9,July 1991:Schrier PIら、Relationship between myc oncogene activation and MHC class I expression Adv.Cancer Res.,60:181−246,1993)。もしHLA発現の低減が、CTL逃避を促すために腫瘍に対して利益を与えるが、腫瘍をNK溶解に対して感受性にさせるならば、NK活性に対する耐性を可能にするHLA発現の最小レベルが選定される(Garrido Fら、Implications for immunosurveillance of altered HLA class I phenotypes in human tumours Immunol Today 18(2):89−96,February 1997)。したがって本発明の治療用組成物または方法は、HLA発現を上方制御するための治療および/または高親和性T細胞による治療と一緒に、腫瘍をCTL破壊に対して感受性にさせる。
【0243】
(HLA発現における変化の頻度)
クラスI発現における変化の頻度は、多数の研究の対象である(Algarra Iら、The HLA crossroad in tumor immunology Human Immunology 61,65−73,2000)。ReesとMianは、対立遺伝子損失は全体で3〜20%の腫瘍に起こり、対立遺伝子欠失は15〜50%の腫瘍で起こると概算している。各細胞は2つの別々の組のクラスI遺伝子を有し、その各遺伝子が1つのHLA−Aおよび1つのHLA−B遺伝子座を保有する、ということに留意すべきである。したがって完全へテロ接合型個体は、2つの異なるHLA−A分子と2つの異なるHLA−B分子を保有する。したがって、任意の特異的対立遺伝子に関する損失の実際の頻度は、全頻度の4分の1という少なさであり得る。概して、発現の勾配は正常細胞、原発性腫瘍および腫瘍転移間に存在する、ということにも彼等は留意した。Nataliと共同研究者(Natali PGら、Selective changes in expression of HLA class I polymorphic determinants in human solid tumors PNAS USA 86:6719−6723,September 1989)からの研究では、固形腫瘍は、W6/32抗体を用いて、全体的HLA発現に関して、およびBB7.2抗体の使用により評価した場合のA2抗原の対立遺伝子特異的発現に関して検査された。腫瘍試料は、13の異なる腫瘍型に関して原発性癌または転移から得られ、20%未満である場合は陰性、30〜80%の範囲である場合には低減、そして80%を超える場合には正常と採点された。腫瘍は全て、原発性も転移も、W6/32を用いてHLA陽性であった。A2発現に関しては、低減は16.1%の症例で認められ、A2は39.4%の症例で検出されないと採点された。Garridoと共同研究者(Garrido Fら、Natural history of HLA expression during tumour development Immunol Today 14(10):491−99,1993)は、HLA変化は良性から最も攻撃的までの進行中の特定の段階で起こると思われることを強調した。Jiminez等(Jiminez Pら、Microsatellite instability analysis in tumors with different mechanisms for total loss of HLA expression,Cancer Immumol Immunother 48:684−90,2000)は、118の異なる腫瘍を分析した(結腸直腸癌68例、喉頭癌34例および黒色腫16例)。HLA発現の全体的損失に関して報告された頻度は、結腸癌11%、黒色腫18%および喉頭癌13%であった。したがってHLAクラスI発現は、恐らくは免疫圧力の反映として、または病理学的変化および罹患細胞の変化の蓄積の単なる反映として、腫瘍型の有意の画分中で変更される。
【0244】
(HLA損失情況での免疫療法)
大多数の腫瘍はHLAクラスIを発現し、後期段階で、かつ低分化腫瘍において、より重篤な変化が見出される傾向がある。このパターンは、免疫療法の情況において有望であり、特に以下のようであると考える:1)免疫組織化学的技法の相対的低感度は、腫瘍におけるHLA発現を低く評価し得る;2)クラスI発現は、局所的炎症およびリンホカイン放出の結果として腫瘍細胞中で誘導され得る;および3)クラスI陰性細胞は、NK細胞による溶解に感受性である。
【0245】
したがって本発明の種々の実施形態は、特に腫瘍性疾患の情況において、HLA分子のある程度の損失が存在し得るという事実を考慮して選択され得る。例えば治療医は、HLAが発現されているか否かを確証するために患者の腫瘍をアッセイし得る。あるパーセンテージの腫瘍細胞がクラスIHLAを発現しないならば、NK細胞応答を引き出す方法または組成物を含む本発明の実施形態が用いられ得る。本明細書中に記載されているように、このようなNK誘導法または組成物は、樹状細胞の動員を促進するFIt3リガンドまたはProGPを含み得る。理論的根拠は、樹状細胞が大量のIL−12を産生するということにある。IL−12はアミノ酸形態または核酸形態のいずれかで直接投与され得る。本発明の組成物はNK細胞誘導性組成物と同時に投与され得るし、あるいはこれらの組成物は引き続いて投与され得る、ということに留意すべきである。
【0246】
対立遺伝子特異的HLA損失の情況では、腫瘍はクラスI発現を保持し、したがってNK細胞認識を逃れ、さらに残りのHLA型に対応するエピトープを含む本発明のCTLベースのワクチンに依然として感受性であり得る。この概念はここでは、特異的抗原の損失をもたらす突然変異に対して防護するために多数の疾患抗原を含む本発明の実施形態に類似する。したがって、対立遺伝子特異的損失、ならびに疾患関連抗原損失による腫瘍逃避を防止するために、多数の疾患関連抗原からの多数のHLA特異性および多数のエピトープを同時に標的にし得る。さらに本発明の実施形態は、代替的治療組成物および方法と併合され得る。このような代替的組成物および方法は、放射線、細胞傷害性薬剤および/または体液性抗体応答を誘導する組成物/方法を包含するが、これらに限定されない。
【0247】
さらに、HLAの発現は、エフェクターCTLにより一般的に分泌されるγIFNにより上方制御され得ること、およびHLAクラスI発現は、αおよびβIFNの両方によりインビボで誘導され得ることが観察された。したがって本発明の実施形態は、HLAの上方制御を促進するために、α、βおよび/またはγIFNも含み得る。
【0248】
(IV.N.副作用を誘導する療法からの猶予期間:「計画治療中断または薬剤休日(drug holiday)」)
病原体に感染し、初期に病原体負荷を低減する治療レジメンで処置されたある患者は、治療レジメンから外れた場合でも、即ち「薬剤休日」中も、病原体負荷低減を維持し得た、ということを近年の証拠は示している(Rosenberg,E.ら、Immune control of HIV−1 after early treatment of acute infection Nature 407:523−26,Sept.28,2000)。当業者に理解されるように、病原体および癌の両方に対する多数の治療レジメンは、多数の、しばしば重篤な副作用を有する。薬剤休日中に、患者の免疫系は疾患を抑制している。本発明の組成物を用いるための方法は、癌および病原性感染に対して薬剤休日の情況で用いられる。
【0249】
感染の治療に関しては、療法が特に免疫抑制性であるわけでない場合、本発明の組成物が標準療法と同時に投与される.この期間中は、患者の免疫系は、本発明の組成物により含まれるエピトープに対する応答を誘導することに向けられる。副作用を有する治療から外れた時点で、患者は、病原体負荷が増大し始める場合に感染性病原体に対して応答するようプライミングされる。本発明の組成物は、薬剤休日中も同様に提供され得る。
【0250】
癌患者に関しては、多数の療法が免疫抑制性である。したがって、寛解が達成されるかまたは、患者が標準治療に対して難治性であると同定され、次に免疫抑制療法から外れた場合、本発明の組成物が投与される。したがって患者の免疫系が再構成するにつれ、貴重な免疫源が同時に癌に向けられる。本発明の組成物は、所望により免疫抑制レジメンと同時にも投与され得る。
【0251】
(IV.O.キット)
本発明のペプチドおよび核酸組成物は、ワクチン投与のための指示書とともにキットの形態で提供され得る。代表的に、キットは、容器中の所望のペプチド組成物(好ましくは、単位用量形態にある)および投与のための指示書を含む。代替的なキットは、投与のための指示書とともに、容器中の本発明の所望の核酸を含むミニジーン構築物(好ましくは、単位用量形態にある)を含む。IL−2またはIL−12のようなリンホカインもまた、キットに含まれ得る。所望であり得る他のキット構成要素には、例えば、滅菌シリンジ、ブースター投薬、および他の所望の賦形剤が挙げられる。
【0252】
(IV.P.概要)
本発明に従うエピトープは、免疫応答を誘導するために首尾良く使用された。これらのエピトープを用いた免疫応答は、これらのエピトープを種々の形態で投与することによって誘導された。これらのエピトープは、ペプチドとして、核酸として、そして本発明のエピトープをコードする核酸を含むウイルスベクターとして投与された。ペプチドベースのエピトープ形態の投与において、免疫応答は、細胞で発現される空のHLA分子上にエピトープを直接負荷することによって、そしてこのエピトープのインターナリゼーションおよびHLA I型経路を介するプロセシングを介して誘導された;いずれの場合においても、次いで、このエピトープを発現するHLA分子は、相互作用し得、そしてCTL応答を誘導し得た。ペプチドは、直接的に、またはリポソームのような薬剤を使用して送達され得る。これらは、さらに、銃式送達(ballistic delivery)を使用して送達され得、ここで、ペプチドは、代表的には、結晶形態である。DNAを使用して免疫応答を誘導する場合、DNAは、裸のDNAとして(一般的に、約1〜5μgの投薬範囲)または銃式の「遺伝子銃」送達を介して(代表的に、約10〜100μgの投薬範囲)のいずれかで投与される。DNAは、種々のコンホメーション(例えば、線状、環状など)で送達され得る。本発明に従うエピトープをコードする核酸を含む、種々のウイルスベクターもまた、首尾良く使用された。
【0253】
従って、本発明に従う組成物は、いくつかの形態で存在する。本発明に従うこれらの組成物形態の各々の実施形態は、免疫応答を誘導するために首尾良く使用された。
【0254】
本発明に従う1つの組成物は、複数のペプチドを含む。この複数のペプチドまたはペプチドのカクテルは、一般的に、1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤と混合される。ペプチドカクテルは、同じペプチドの複数のコピーを含み得るか、またはペプチドの混合物を含み得る。ペプチドは、天然に存在するエピトープのアナログであり得る。ペプチドは、人工アミノ酸および/または化学的改変(例えば、脂質化;アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、リン酸化のような表面活性分子の付加)を含み得る。ペプチドは、CTLエピトープまたはHTLエピトープであり得る。好ましい実施形態において、ペプチドカクテルは、複数の異なるCTLエピトープおよび少なくとも1つのHTLエピトープを含む。HTLエピトープは、天然または非天然(例えば、PADRE(登録商標)、Epimmune Inc.,San Diego、CA)であり得る。本発明の実施形態における異なるエピトープの数は、一般的に、1〜200の整数(whole unit integer)である(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200)。
【0255】
本発明に従う組成物のさらなる実施形態は、ポリペプチド多エピトープ構築物(すなわち、ポリエピトープペプチド)を含む。本発明に従うポリエピトープペプチドは、当該分野において周知の技術の使用によって調製される。これらの公知の技術の使用によって、本発明に従うエピトープは、互いに連結される。ポリエピトープペプチドは、線状または非線状(例えば、多価)であり得る。これらのポリエピトープ構築物は、人工アミノ酸、スペーシングまたはスペーサーアミノ酸、隣接アミノ酸、または隣接エピトープ単位間の化学的改変を含み得る。ポリエピトープ構築物は、ヘテロポリマーまたはホモポリマーであり得る。ポリエピトープ構築物は、一般的に、2〜200の間の任意の整数の量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100など)のエピトープを含む。ポリエピトープ構築物は、CTLエピトープおよび/またはHTLエピトープを含み得る。構築物中の1以上のエピトープは、例えば、表面活性物質(例えば、脂質)の付加によって改変され得るか、または化学的に改変され得る(例えば、アセチル化など)。さらに、多エピトープ構築物における結合は、ペプチド結合以外(例えば、共有結合、エステルまたはエーテル結合、ジスルフィド結合、水素結合、イオン結合など)であり得る。
【0256】
あるいは、本発明に従う組成物は、ネイティブ配列に対して相同性を有する(すなわち、対応するかまたは近接する)アミノ酸の系列、配列、ストレッチ(stretch)を含む構築物を含む。このアミノ酸のストレッチは、より長い系列のアミノ酸から切断されるかまたは単離された場合に、本発明に従って、HLA I型エピトープまたはHLA II型エピトープとして機能する、アミノ酸の少なくとも1つのサブ配列(subsequence)を含む。この実施形態において、ペプチド配列は、当該分野で公知であるかまたは提供される多数の技術を使用することによって、本明細書中に規定されるような構築物になるように改変される。ポリエピトープ構築物は、70〜100%(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)の任意の整数の増分でネイティブ配列に対して相同性を含み得る。
【0257】
本発明に従う組成物のさらなる実施形態は、本発明に従う1以上のエピトープを含む、抗原提示細胞である。抗原提示細胞は、「プロフェッショナル」抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)であり得る。抗原提示細胞は、当該分野において公知の任意の手段または当該分野において決定された任意の手段によって、本発明のエピトープを含み得る。このような手段には、銃式核酸送達のような核酸投与によって、または核酸の投与のための当該分野の他の技術(ベクターベースの(例えば、ウイルスベクター)核酸の送達を含む)によって、樹状細胞を1以上の個々のエピトープまたは複数のエピトープを含む1以上のペプチドでパルスすることを含む。
【0258】
本発明に従う組成物のさらなる実施形態は、本発明の1以上のペプチドをコードする核酸、または本発明に従うポリエピトープペプチドをコードする核酸を含む。当業者によって理解されるように、種々の核酸組成物は、遺伝コードの縮重に起因して同じペプチドをコードする。これらの核酸組成物の各々は、本発明の範囲内に含まれる。本発明のこの実施形態は、DNAまたはRNAを含み、特定の実施形態において、DNAおよびRNAの組み合わせを含む。本発明に従うペプチドをコードする核酸を含む任意の組成物または本発明に従う任意の他のペプチドベースの組成物が、本発明の範囲内にあることが理解される。
【0259】
本発明のペプチドベースの形態(ならびに、これらをコードする核酸)が、当該分野で既に公知であるかまたは公知になる原理を使用して作製される、本発明のエピトープのアナログを含み得ることが理解される。アナログ化に関する原理は、現在、当該分野において公知であり、本明細書中に開示される;さらに、アナログ化原理(ヘテロクリティックアナログ化)は、1999年1月6日に出願された同時係属出願シリアル番号U.S.S.N.第09/226,775号に開示される。一般的に、本発明の組成物は、単離されているかまたは精製されている。
【0260】
本発明を、特定の実施例によってより詳細に記載する。以下の実施例は、例示の目的のために提供され、そしていかなる様式においても本発明を制限することを意図しない。当業者は、本発明に従って代替の実施形態を得るために変化または改変され得る重要でない種々のパラメータを容易に認識する。
【0261】
(V.実施例)
以下の実施例は、ワクチン組成物に含ませるための免疫原性クラスIおよびクラスIIペプチドエピトープの同定、選択、および使用を例示する。
【0262】
(実施例1.HLAクラスIおよびクラスII結合アッセイ)
HLA分子に結合するペプチドの以下の例は、HLAクラスIおよびクラスIIペプチドの結合親和性の定量化を示す。結合アッセイは、モチーフを保有するかまたはモチーフを保有しないペプチドを用いて実施され得る。
【0263】
精製HLA分子を使用するHLAクラスIおよびクラスII結合アッセイを、開示のプロトコルに従って行った(例えば、PCT公開WO94/20127;Sidneyら,Current Protocols in Immunology 18.3.1(1998);Sidney,ら,J.Immunol.154:247(1995);Sette,ら,Mol.Immunol.31:813(1994))。手短には、精製MHC分子(5〜500nM)を、種々の未標識ペプチドインヒビターおよび上記の1〜10nMの125I放射標識プローブペプチドと共にインキュベートした。インキュベーション後、MHCペプチド複合体を、ゲル濾過によって遊離ペプチドから分離し、そして結合したペプチドの画分を決定した。代表的には、予備実験において、各MHC調製物を、固定量の放射標識ペプチドの存在下で滴定し、全放射活性の10〜20%を結合するのに必要とされるHLAの濃度を決定した。全てのその後の阻害アッセイおよび直接結合アッセイを、これらのHLA濃度を用いて実施した。
【0264】
[標識]<[HLA]およびIC50≧[HLA]のこれらの条件下で、測定されたIC50値は、真のK値の適切な近似である。ペプチドインヒビターは、代表的に、120μg/ml〜1.2ng/mlの範囲の濃度で試験され、そして2〜4回の完全に独立した実験において試験される。異なる実験から得られたデータの比較を可能にするために、阻害についてのポジティブコントロールのIC50を各々の試験したペプチド(代表的には、その放射標識されたプローブペプチドの標識されていないバージョン)のIC50で除算することによって、相対的な結合の数値を、各ペプチドについて計算した。データベース目的および実験間比較のために、相対的な結合値を編集する。続いて、これらの値を、阻害についてのポジティブコントロールのIC50 nMを目的のペプチドの相対的な結合で除算することによって、IC50 nM値に変換し得る。このデータの編集方法は、異なる日、または異なるロットの精製MHCで試験したペプチドを比較するために、最も正確でかつ一貫していることが証明された。
【0265】
上に概説された結合アッセイは、例えば、実施例2に記載されるようなスーパーモチーフおよび/またはモチーフを保有するエピトープを分析するために使用され得る。
【0266】
(実施例2.HLAスーパーモチーフおよびモチーフを保有するCTL候補エピトープの同定)
本発明のワクチン組成物は、広範な集団適用範囲を達成するために、複数のHLAスーパーモチーフまたはHLAモチーフを含む、複数のエピトープを含み得る。この実施例は、このようなワクチン組成物に含ませるためのスーパーモチーフおよびモチーフ保有エピトープの同定を例示する。集団適用範囲の計算を、以下に記述されるストラテジーを用いて実施した。
【0267】
(スーパーモチーフおよび/またはモチーフを保有するエピトープの同定のためのコンピュータ検索およびアルゴリズム)
実施例2および5においてモチーフ保有ペプチド配列を同定するために実施される検索は、腫瘍関連抗原CEA(GenBank登録番号M59255)についてのタンパク質配列データを使用した。
【0268】
HLAクラスIまたはクラスIIのスーパーモチーフまたはモチーフを保有するエピトープについてのコンピュータ検索を、以下のように実施した。全ての翻訳されたタンパク質配列を、テキスト記号列検索(text string search)ソフトウェアプログラム(例えば、MotifSearch 1.4(D.Brown,Sna Diego))を使用して分析して、適切なHLA結合モチーフを含む潜在的なペプチド配列を同定した;代替のプログラムは、本明細書中に開示されたモチーフ/スーパーモチーフを考慮して、当該分野の情報に従って容易に作成される。さらに、このような計算は、頭の中で行われ得る。同定したA2スーパーモチーフ配列、A3スーパーモチーフ配列およびDRスーパーモチーフ配列を、特定のHLAクラスIまたはクラスII分子に結合するそれらの能力を予測するための、多項式アルゴリズムを使用してスコア付けした。これらの多項式アルゴリズムは、伸長モチーフおよび洗練モチーフの両方を考慮し(すなわち、異なる位置での異なるアミノ酸の影響を考慮すること)、そしてペプチド−HLA分子相互作用の全体の親和性(つまり、ΔG)が、以下の型の線形多項式関数として近似され得るという事実に本質的に基づく:
“ G”=a1i×a2i×a3i......×ani
ここで、ajiは、n個のアミノ酸のペプチドの配列に沿った所定の位置(i)での所定のアミノ酸(j)の存在の効果を表す係数である。この方法の重要な仮定は、各位置での効果が、本質的に互いに独立である(すなわち、個々の側鎖の独立した結合)ことである。残基jが、ペプチドの位置iに生じる場合、一定の量のjがペプチドの残りの配列に関わらず、このペプチドの結合の自由エネルギーに寄与することを仮定する。この仮定は、ペプチドが、実質的に伸びたコンホメーションで、MHCに結合しそしてT細胞によって認識されるということを立証した本発明者らの研究室からの研究によって証明される(本明細書においてデータは省略した)。
【0269】
特定のアルゴリズム係数の導出方法は、Gulukotaら,J.Mol.Biol.267:1258−126,1997に記載されている;(Sidneyら,Human Immunol.45:79−93,1996;およびSouthwoodら,J.Immunol.160:3363−3373,1998をまた、参照のこと)。簡潔には、全てのi位について、アンカーおよび非アンカーと同様に、jを保有する全てのペプチドの平均相対結合(ARB)の幾何平均を、この群の残りに対して計算し、そしてjの推定値として使用する。クラスIIペプチドについて、複数の整列が可能である場合、最も高いスコアの配列のみが使用され、反復手順に続く。試験セットにおける所定のペプチドのアルゴリズムスコアを計算するために、そのペプチドの配列に対応するARB値を、乗算する。この積が、選択された閾値を超えた場合、このペプチドは、結合すると予測される。適切な閾値は、所望の予測の厳密さの程度の関数として選択される。
【0270】
(HLA−A2スーパータイプ交差反応性ペプチドの選択)
CEAからの完全なタンパク質配列を、モチーフ同定ソフトウェアを使用して走査し、HLA−A2スーパーモチーフ一次アンカー特異性を含む8マー、9マー、10マーおよび11マーの配列を同定した。
【0271】
総計336個のHLA−A2スーパーモチーフ陽性配列を同定した。これらのうち、これらの配列に対応する266個のペプチドを合成し、そしてインビトロで精製HLA−A0201分子(HLA−A0201は、原型のA2スーパータイプ分子であると考えられる)を結合するそれらの能力について試験した。この266個のペプチドのうち14個のペプチドが、500nM以下のIC50値でA0201に結合した。
【0272】
続いて、この14個のA0201結合ペプチドを、さらなるA2スーパータイプ分子(A0202、A0203、A0206、およびA6802)に結合するそれらの能力について試験した。表XXIIに示されるように、この14個のペプチドのうち10個が、A2スーパータイプ交差反応性結合剤であることが見出され、これは、試験した5つのA2スーパータイプ対立遺伝子のうちの少なくとも3つに結合する。
【0273】
(HLA−A3スーパーモチーフ保有エピトープの選択)
上記で走査したタンパク質配列をまた、HLA−A2スーパーモチーフ保有エピトープを同定するために行った方法に類似する方法を使用して、HLA−A3スーパーモチーフ一次アンカーを有するペプチドの存在について試験する。
【0274】
次いで、これらのスーパーモチーフ保有配列に対応するペプチドを合成し、HLA−A0301およびHLA−A1101分子(2つの最も一般的なA3スーパータイプ対立遺伝子)への結合について試験する。次いで、500nM以下の結合親和性でこの2つの対立遺伝子のうちの一方に結合することが見出されるペプチドを、他の一般的なA3スーパータイプ対立遺伝子(A3101、A3301、およびA6801)への結合交差反応性について試験し、これらの試験した5つのHLA−A3スーパータイプ分子のうちの少なくとも3つに結合し得るペプチドを同定する。この手順に従って同定されたHLA−A3交差結合スーパーモチーフ保有ペプチドの例を、表XXIIIに提供する。
【0275】
(HLA−B7スーパーモチーフ保有エピトープの選択)
同じ標的抗原タンパク質配列をまた分析して、HLA−B7スーパーモチーフ保有配列を同定する。次いで、これらの対応するペプチドを合成し、そしてHLA−B0702(最も一般的なB7スーパータイプ対立遺伝子(すなわち、原型のB7スーパータイプ対立遺伝子))への結合について試験する。次いで、500nM以下のIC50でB0702に結合するこれらのペプチドを、他の一般的なB7スーパータイプ分子(B3501、B5101、B5301およびB5401)への結合について試験し、これらの試験した5つのB7スーパータイプ対立遺伝子のうちの3つ以上に結合し得るペプチドを同定する。この手順に従って同定されたHLA−B7交差結合スーパーモチーフ保有ペプチドの例を、表XXIVに提供する。
【0276】
(A1およびA24モチーフ保有エピトープの選択)
集団適用範囲をさらに増加させるために、HLA−A1エピトープおよびHLA−A24エピトープをまた、強力なワクチン構築物に組み込み得る。上記で利用した標的抗原からのタンパク質配列データの分析もまた行って、HLA−A1−モチーフ含有保存配列およびHLA−A24−モチーフ含有保存配列を同定する。次いで、この対応するペプチド配列を合成し、適切な対立遺伝子特異的HLA分子(HLA−A1またはHLA−24)への結合について試験する。500nM以下のIC50で対立遺伝子特異的HLA分子に結合するペプチドを同定する。この手順に従って同定されたペプチドの例を、表XXVおよびXXVIに提供する。
【0277】
(実施例3:免疫原性の確認)
10個の交差反応性候補物であるCTL A2スーパーモチーフ保有ペプチドのうちの9個を、インビトロ免疫原性試験について選択した。試験を、以下の方法論を用いて行った:
(細胞性スクリーニングのための標的細胞系)
HLA−A2.1遺伝子を、HLA−A、HLA−B、HLA−Cを有さない変異体ヒトBリンパ芽球状細胞株721.221に移入することによって産生された.221A2.1細胞株を、ペプチドをロードされた標的として用いて、HLA−A2.1拘束CTLの活性を測定した。HLA型の黒色腫細胞株(624melおよび888mel)を、Y.KawakamiおよびS.Rosenberg、National Cancer Institute、Bethesda、MDから得た。結腸腺癌の細胞株SW403およびHT−20、骨肉腫株Saos−2ならびに胸部腫瘍(breast tumor)株BT540を、American Type Culture Collection(ATCC)(Rockville、MD)から得た。胃癌株KATO IIIを、Japanese Cancer Research Resources Bankから得た。Saos−2/175(175位に変異を含むp53遺伝子でトランスフェクトされたSaos−2)を、Dr.Levine、Princeton University、Princeton、NJから得た。ATCCから得た細胞株を、供給者によって推奨される培養条件の下で維持した。すべての他の細胞株を、抗生物質、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸および10%(v/v)熱非働化FCSを補充したRPMI−1640培地で増殖させた。黒色腫、結腸癌細胞および胃癌細胞を、51Cr放出およびインサイチュIFNアッセイにおける標的としての使用の前に、37℃で48時間、100U/mlのIFN(Genzyme)で処理した。p53腫瘍標的物を、アッセイの前に、20ng/mlのIFNおよび3ng/mlのTNFで24時間処理した(例えば、Theobaldら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:11993、1995を参照のこと)。
【0278】
(一次CTL誘導培養物)
樹状細胞(DC)の作製:PBMCを、30g/mlのDNAseを含むRPMIに融解し、2回洗浄し、そして完全培地(RPMI−1640ならびに5%ABヒト血清、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン)に再懸濁した。単球を、6ウェルプレートに、1ウェル当たり10×10PBMCをプレーティングすることによって精製した。37℃で2時間後、非付着細胞を、プレートを穏やかに振盪し、そして上清を吸引することによって除去した。ウェルを、3mlのRPMIで合計3回洗浄して、大半の非付着細胞およびゆるい付着細胞を除去した。次いで、50ng/mlのGM−CSFおよび1,000U/mlのIL−4を含む3mlの完全培地を、各々のウェルに添加した。DCを、培養の7日後にCTL誘導培養物について使用した。
【0279】
DCおよびペプチドを用いたCTLの誘導:CD8+T細胞を、Dynal免疫磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標)M−450)およびdetacha−bead(登録商標)試薬を用いたポジティブ選択によって単離した。代表的には、約200〜250×10個のPBMCをプロセスして、24×10個のCD8T細胞(48ウェルプレート培養に十分である)を得た。手短に言えば、PBMCを、30μg/mlのDNAseを含むRPMIに融解し、1%ヒトAB血清を含むPBSで1回洗浄し、そして20×10細胞/mlの濃度で、PBS/1%AB血清に再懸濁した。磁気ビーズを、PBS/AB血清で3回洗浄し、細胞に添加し(20×10細胞当たり140μlのビーズ)、そして連続的に混合しながら、4℃で1時間インキュベートした。このビーズおよび細胞を、PBS/AB血清で4回洗浄して非付着細胞を除去し、そして100μl/mlのdetacha−bead(登録商標)試薬および30μg/mlのDNAseを含むPBS/AB血清に、100×10細胞/mlで(最初の細胞数に基づく)再懸濁した。この混合物を、連続的に混合しながら、室温で1時間インキュベートする。このビーズを、PBS/AB/DNAseで再び洗浄して、CD8+T細胞を収集した。DCを収集し、そして1300rpmで5〜7分間遠心分離し、1%BSAを含むPBSで1回洗浄し、計数し、そして20℃で4時間、3μg/mlのβ−ミクログロブリンの存在下で、1〜2×10/mlの細胞濃度で、40μg/mlのペプチドを用いてパルス(pulse)した。次いで、このDCを、照射し(4,200rad)、培地で1回洗浄し、そして再び計数した。
【0280】
誘導培養物のセットアップ:0.25mlのサイトカイン生成DC(@1×10細胞/ml)を、10ng/mlのIL−7の存在下で、48ウェルプレートの各々のウェルにおいて、0.25mlのCD8+T細胞(@2×10細胞/ml)とともに共存培養した。組換えヒト(rhuman)IL10を、最終濃度10ng/mlで翌日添加し、そして組換えヒトIL2を、10IU/mlで48時間後に添加した。
【0281】
ペプチドでパルスした付着細胞での誘導培養物の再度刺激:一次誘導の7日および14日後、細胞を、ペプチドでパルスした付着細胞で再度刺激した。PBMCを融解し、そしてRPMIおよびDNAseで2回洗浄した。この細胞を、5×10細胞/mlで再懸濁し、そして約4200radで照射した。PBMCを、1ウェル当たり0.5mlの完全培地中に2×10でプレーティングし、そして37℃で2時間インキュベートした。このプレートを、穏やかにプレートをトラップ(trap)することによってRPMIで2回洗浄して、非付着細胞を除去し、そして付着細胞を、1ウェル当たり0.25mlのRPMI/5%ABにおいて3μg/mlのβミクログロブリンの存在下で、37℃で2時間、10μg/mlのペプチドでパルスした。各ウェルからのペプチド溶液を吸引し、そしてこのウェルを、RPMIで1回洗浄した。大半の培地を、誘導培養物(CD8+細胞)から吸引し、そして新鮮な培地で0.5mlにした。次いで、これらの細胞を、ペプチドでパルスした付着細胞を含むウェルに移した。24時間後、組換えヒトIL10を、最終濃度10ng/mlで添加し、そして組換えヒトIL2を翌日添加し、そして再び50IU/mlで2〜3日後に添加した(Tsaiら、Critical Reviews in Immunology 18(1−2):65−75、1998)。7日後、この培養物を、51Cr放出アッセイにおいてCTL活性についてアッセイした。いくつかの実験において、この培養物を、第二の再度刺激時に、インサイチュIFNγ ELISAにおいて、ペプチド特異的認識についてアッセイし、その後、7日後に内因性認識のアッセイを行った。拡張(expansion)後、活性を、平衡して比較するために両方のアッセイにおいて測定した。
【0282】
51Cr放出によるCTL溶解活性の測定)
第二の再度刺激の7日後、細胞傷害性を、一つのE:Tで個々のウェルをアッセイすることによって、標準的な(5時間)51Cr放出アッセイにおいて決定した。ペプチドでパルスした標的物を、細胞を37℃で一晩10μg/mlのペプチドとともにインキュベートすることによって調製した。
【0283】
付着標的細胞を、トリプシン−EDTAを用いて培養フラスコから除去した。標的細胞を、37℃で1時間、200μCiの51Crクロム酸ナトリウム(Dupont、Wilmington、DE)で標識した。標識した標的細胞を、10/mlで再懸濁し、そして3.3×10/mlの濃度でK562細胞を用いて1:10に希釈した(NK感受性赤芽細胞腫(erythroblastoma)細胞株を使用して、非特異的溶解を減少させた)。標的細胞(100リットル)および100μlのエフェクターを、96ウェル丸底プレートにプレーティングし、そして37℃で5時間インキュベートした。この時、100μlの上清を、各々のウェルから収集し、そしてパーセント溶解を、以下の式に従って決定した:[(試験サンプルのcpm−自発的な51Cr放出サンプルのcpm)/(最大の51Cr放出サンプルのcpm−自発的な51Cr放出サンプルのcpm)]×100。最大の放出および自発的な放出は、それぞれ、1%Triton X−100および培地単独とともに、標識された標的物をインキュベートすることによって決定した。ポジティブ培地を、個々のウェルの場合に、特異的溶解(サンプル−バックグラウンド)が10%以上であり、そして拡張された培養物をアッセイした場合に、2つの最も高いE:Tの比で、15%以上であると規定した。
【0284】
(ペプチド特異的認識および内因性認識の指標としてのヒトγIFN産生のインサイチュ測定)
Immulon2プレートを、4℃で一晩、マウス抗ヒトIFNモノクローナル抗体(4g/ml 0.1M NaHCO、pH8.2)でコーティングした。このプレートを、Ca2+、Mg2+を含まないPBS/0.05% Tween20で洗浄し、そしてPBS/10%FCSで2時間ブロックし、この後、CTL(1ウェル当たり100リットル)および標的物(1ウェル当たり100リットル)を、各々のウェルに添加し、空のウェルを、標準およびブランクのために残した(これらには、培地のみ入れた)。標的細胞(ペプチドでパルスした標的物または内因性の標的物のいずれか)を、1×10細胞/mlの濃度で使用した。このプレートを、5%COとともに37℃で48時間インキュベートした。
【0285】
組換えヒトIFNを、400pg/100リットル/ウェルまたは1200pg/100リットル/ウェルで開始する標準ウェルに添加し、そしてこのプレートを、37℃で2時間インキュベートした。このプレートを洗浄し、そして100リットルのビオチン化マウス抗ヒトIFNモノクローナル抗体(PBS/3%FCS/0.05%Tween20において4g/ml)を添加し、そして室温で2時間インキュベートした。再び洗浄した後、100リットルのHRP−ストレプトアビジンを添加し、そして室温で1時間インキュベートした。次いで、このプレートを、洗浄緩衝液で6回洗浄し、1ウェル当たり100リットルの展開溶液(TMB1:1)を添加し、そしてこのプレートを、5〜15分間展開した。反応を、1ウェル当たり50リットルの1M HPOで停止させ、そしてOD450にて読み取った。バックグラウンドを超えて1ウェル当たり少なくとも50pgのIFNを測定し、そして発現がバックグラウンドレベルの2倍である場合に、培養物をポジティブとみなした。
【0286】
CTL拡張。ペプチドでパルスした標的物および/または腫瘍標的物に対して特異的な溶解活性を示す培養物を、抗CD3を用いて2週間を超えて拡張した。手短に言えば、5×10個のCD8+細胞を、以下を含むT25フラスコに添加した:10%(v/v)ヒトAB血清、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、25μM 2−メルカプトエタノール、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI−640における、1ml当たり1×10個の照射(4,200rad)PBMC(自家組織または同種の)、1ml当たり2×10個の照射(8,000rad)EBV−形質転換細胞、および1ml当たり30ngでのOKT3(抗CD3)。組換えヒトIL2を、200IU/mlの最終濃度で24時間後に添加し、その後、50IU/mlで新鮮な培地を3日ごとに添加した。細胞濃度が、1×10/mlを超えた場合に、細胞をはがし、そして培養物を、拡張の前と同じ標的物を用いて、51Cr放出アッセイにおいて30:1、10:1、3:1および1:1のE:T比で、またはインサイチュIFNアッセイにおいて1×10/mlで、13日目と15日目の間にアッセイした。
【0287】
(A2−スーパーモチーフ保有ペプチドの免疫原性)
A2−スーパーモチーフ交差反応性結合ペプチドを、正常な個体においてペプチド特異的CTLを誘導する能力について、細胞性アッセイにおいて試験した。この分析において、少なくとも2のドナーにおいて(別段の通知のない限り)、ペプチド特異的CTLを誘導し、そしてこれらのCTLもまた、内因性に発現したペプチドを認識した場合に、ペプチドを、エピトープとみなした。表XXVIIは、少なくとも2の正常なドナーにおいてペプチド特異的CTL応答を誘導し得たペプチドの例を同定する。さらなる分析は、野生型ペプチドを用いてパルスされた標的細胞、およびCEAを内因性に発現する腫瘍標的物をまた認識したペプチドの例を実証した(表XXVII)。
【0288】
CEAエピトープ691および605を、以前に同定した(Kawashimaら、Hum.Immunol.59:1−14、1998を参照のこと)。4つの免疫原性エピトープを、さらに評価した。CEA.233、CEA.569およびCEA.687に対するペプチド特異的CTLを、1〜2のドナーにおいて観察したが、内因性認識は、CEA.687を用いた場合にのみ観察された。
【0289】
51Cr放出アッセイにおいて、CEA.687に対するポジティブ応答を実証したCTLを拡張し、そしてペプチドでパルスした標的物および内因性標的物に対して再度アッセイした。4つの個々の培養物のうち3つをまた、内因性標的物を認識した。1つの培養物は、ペプチドでパルスした標的物の有意な溶解を示したが、腫瘍標的物の溶解は示さなかった。個々のポジティブ培養物のうちの2つをまた、異なるペプチド濃度でパルスした221A2.1標的細胞に対して試験して、CTLアビディティーを測定した。1つの株は、1ng/mlまで低い濃度で、高い特異的溶解を示したが、一方、両方の培養物は、CEA.687をエピトープとしてさらに有効にする活性力価を示した。ペプチドでパルスした標的物を、51Crで標識された標的物とインキュベートして、CTLによる溶解について競争するコールドの標的阻害アッセイにおいて、2つの異なるCTL株による放射能標識された標的細胞の溶解を、CEA.687でパルスされた標的細胞数を増大することによってブロックした。非特異的ペプチドHBVc.18は、溶解を阻害せず、それ故、CTLのエピトープ特異性をさらに示した。
【0290】
(A03/A11免疫原性の評価)
HLA−A3スーパーモチーフを保有する交差反応性結合ペプチドをまた、HLA−A2スーパーモチーフペプチドの免疫原性を評価するために使用したものと類似の方法論を用いて、免疫原性について評価する。この手順を用いて、免疫応答を誘導するペプチドを同定する。このようなペプチドの例を、表XXIIIに示す。
【0291】
(モチーフ/スーパーモチーフ保有ペプチドの免疫原性の評価)
当業者によって理解されるような類似の方法論を利用して、本明細書中に述べられるHLAクラスIモチーフおよび/またはスーパーモチーフを保有するペプチドの免疫原性を決定する。このような手順を使用して、免疫応答を誘導するペプチドを同定する(例えば、表XXVIを参照のこと)。
【0292】
(実施例4.アナログの作製によってネイティブのエピトープの結合能を改善するための拡張されたスーパーモチーフのインプリメンテーション)
HLAモチーフおよびスーパーモチーフ(一次残基および/または二次残基を含む)は、本明細書中に説明されるように、高度に交差反応性のネイティブペプチドの同定および調製に有用である。さらに、HLAモチーフおよびスーパーモチーフの定義もまた、ネイティブのペプチド配列内部の残基を同定することによって、高度に交差反応性のエピトープの設計を可能にする。このネイティブのペプチド配列は、アナログ化されるか(analogued)、または「固定」されて、ペプチドに、特定の特性(例えば、スーパータイプを含むHLA分子集団内のより大きな交差反応性、および/またはこれらのHLA分子のうちのいくつかもしくはすべてに対するより大きな結合親和性)を与え得る。調節された結合親和性を示すアナログペプチドの例を、本実施例に示し、そして表XXIIからXXVIIに提供する。
【0293】
(一次アンカー残基でのアナログ化)
ペプチド操作戦略を実行して、上記で同定されたエピトープの交差反応性をさらに増大した。例えば、関連し、そして同時係属中のU.S.S.N 09/226,775に開示されるデータに基づいて、A2スーパーモチーフ保有ペプチドの主要なアンカーを変更して、例えば、2位に好ましいL、I、VまたはMを導入し、そしてC末端にIまたはVを導入する。
【0294】
少なくとも弱いA0201結合(5000nM以下のIC50)を示し、そして2位、C末端位置、またはその両方のいずれかに、最適未満のアンカー残基を保有するペプチドが、規範的な置換を導入することによって(2位にL、そしてC末端にV)固定され得る。次いで、A0201結合において少なくとも3倍の増大を示し、そして500nM以下のIC50で結合するこれらのアナログ化ペプチドを、これらの野生型(WT)相対物に加えて、A2交差反応性結合について試験した。次いで、5つのA2スーパータイプ対立遺伝子のうちの少なくとも3つを結合するアナログ化ペプチドを、細胞性スクリーニング分析について選択した。
【0295】
さらに、細胞性スクリーニング分析についてのアナログの選択を、WT親ペプチドが、3つ以上のA2スーパータイプ対立遺伝子に少なくとも弱く結合する(すなわち、5000nM以下のIC50で結合する)能力によりさらに限定した。この要求についての原理は、WTペプチドが、生物学的に適切であるに十分な量で内因性に存在しなければならない、ということである。アナログ化ペプチドは、WTエピトープに対して特異的なT細胞によって増大した免疫原性および交差反応性を有することが示されている(例えば、Parkhurstら、J.Immunol.157:2539、1996;およびPogueら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8166、1995を参照のこと)。
【0296】
これらのペプチドアナログの細胞性スクリーニングにおいて、アナログ特異的CTLはまた、野生型ペプチド、そして可能であれば、このエピトープを内因性に発現する腫瘍標的物を認識し得ることを実証することが重要である。
【0297】
65個のCEAペプチドが、規範的な置換を導入することによって、一次アンカー残基でのアナログ化に対する基準を満たした:これらのペプチドは、少なくとも弱いA0201結合(5000nM以下のIC50)を示し、そして最適未満のアンカー残基を保有した。
【0298】
これらのペプチドのうちの9つのアナログを作製し、そして他のA2スーパータイプ分子への交差反応性結合について評価した(表XXII)。5つのA2スーパータイプ対立遺伝子のうちの3つに最低限結合したこれらのうちの8つおよびこれらのWT親もまた、5つの対立遺伝子のうちの3つに少なくとも弱く結合した。ペプチドCEA.605の場合、このアナログは、A0201結合親和性において、3倍の増大を示さなかった。しかし、このペプチドは、交差反応性の増大を示し、従って、免疫原性について分析されるべきペプチドの選択に含まれた。
【0299】
8つのアナログを、細胞性スクリーニング研究について選択した。これらのCEA.24V9のうちの1つを、エピトープとして以前に同定した(Kawashimaら、Hum.Immunol.59:1−14、1998)。3つのさらなるペプチドをスクリーニングし、そして表XXVIIに示されるように、CEA.233V10、CEA.605V9およびCEA.589V9はすべて、ペプチドでパルスした標的物および/または腫瘍標的物を認識し得たCTLを誘導した。ポジティブ培養物の拡張後、このCTLを、アナログ、および親WTペプチド、および腫瘍標的物に対して再び試験した。両方のアナログに対するCTLは、WTペプチド、および腫瘍細胞株KATO IIIの認識を示した。免疫原性であることに加えて、CEA.233V10およびCEA.605V9は、対応するWTペプチド、ならびに4つの対立遺伝子に対する交差反応性結合と比較した場合に、改善された全体的な結合を示した。さらなるエピトープであるCEA.589V9は、免疫原性であり、そしてCEA.589V9特異的CTLは、野生型ペプチドを認識したが、内因性認識は観察されなかった。
【0300】
HLA−A2アナログを開発するために使用されたものと類似の方法論を用いて、HLA−A3およびHLA−B7スーパーモチーフ保有エピトープのアナログをまた作製する。例えば、A3スーパータイプ分子のうちの5分の3に少なくとも弱く結合するペプチドは、一次アンカー残基で操作されて、2位に好ましい残基(V、S、MまたはA)を有し得る。次いで、このアナログペプチドを、A03およびA11(プロトタイプのA3スーパータイプの対立遺伝子)を結合する能力について試験する。次いで、500nM以下の結合能を示すこれらのペプチドを、A3スーパータイプの交差反応性について試験する。HLA−A3スーパーモチーフアナログペプチドの例を、表XXIIIに提供する。
【0301】
B7スーパーモチーフ保有ペプチドは、例えば、操作されて、C末端一次アンカー位置で、好ましい残基(V、I、LまたはF)を有し得る(例えば、Sidneyら(J.Immunol.157:3480−3490、1996)を参照のこと)。次いで、アナログ化ペプチドを、B7スーパータイプ対立遺伝子への交差反応性結合について試験する。B7スーパーモチーフ保有アナログペプチドの例を、表XXIVに提供する。
【0302】
同様に、HLA−A1およびHLA−A24モチーフ保有ペプチドを、一次アンカー残基で操作して、対立遺伝子特異的HLA分子への結合を改善し得るか、または交差反応性結合を改善し得る。アナログ化HLA−A1およびHLA−A24モチーフ保有ペプチドの例を、表XXVおよびXXVIに提供する。
【0303】
改善された結合および/または交差反応性を示すアナログ化ペプチドを、HLA−A2スーパーモチーフ保有ペプチドの分析について記載されたものと類似の方法論を用いて、免疫原性について評価する。このような手順を用いて、免疫応答を誘導するペプチドを、例えば、XXIIIおよびXXVIに同定する。
【0304】
(二次アンカー残基でのアナログ化)
さらに、HLAスーパーモチーフは、高度に交差反応性のペプチド、および/またはこのような性質に関連する二次アンカー位置で特定の残基を同定することによって、増大した親和性でHLA分子を結合するペプチドを設計する際に価値がある。このようなアナログ化ペプチドの例を、表XXIVに提供する。
【0305】
例えば、1位での目立たない(discreet)1アミノ酸置換の典型であるB7スーパーモチーフ保有ペプチドの結合能を分析し得る。例えば、ペプチドをアナログ化して、1位でLをFで置換し得、そして引き続いて、増大した結合親和性および/または増大した交差反応性について評価し得る。この手順は、調節された結合親和性を有するアナログ化ペプチドを同定する。
【0306】
改善された結合および/または交差反応性を示すアナログ化ペプチドを、HLA−A2スーパーモチーフ保有ペプチドの分析について記載されたものと類似の方法論を用いて、免疫原性について評価する。このような手順を用いて、免疫応答を誘導するペプチドを同定する。
【0307】
(他のアナログ化戦略)
アンカー位置に関連しない別の形態のペプチドのアナログ化は、αアミノ酪酸でのシステインの置換に関与する。その化学的性質に起因して、システインは、ジスルフィド架橋を形成し、そして結合能を減少するように、構造的にペプチドを十分に変更する性質を有する。システインのαアミノ酪酸での置換は、この問題を解消するだけではなく、いくつかの例において、結合能および交差結合能を改善することが示されている(例えば、Setteらによる総説、Persistent Viral Infections、R.AhmedおよびI.Chen編、John Wiley & Sons、England、1999を参照のこと)。
【0308】
改善された結合および/または交差反応性を示すアナログ化ペプチドを、HLA−A2スーパーモチーフ保有ペプチドの分析について記載されたものと類似の方法論を用いて、免疫原性について評価する。このような手順を用いて、免疫応答を誘導するペプチドを同定する。
【0309】
従って、本実施例は、1つのアミノ酸置換でさえ使用することによって、HLAスーパータイプ分子に対するペプチドリガンドの結合親和性および/または交差反応性を調節することを実証する。
【0310】
(実施例5.HLA−DR結合モチーフを有するペプチドエピトープ配列の同定)
HLAクラスIIスーパーモチーフまたはモチーフを保有するペプチドエピトープをまた、実施例1〜3に記載されるものと類似の方法論を用いて、以下に概説されるように同定し得る。
【0311】
(HLA−DRスーパーモチーフ保有エピトープの選択)
HLAクラスII HTLエピトープを同定するために、CEAタンパク質配列を、HLA−DRモチーフまたはスーパーモチーフを保有する配列の存在について分析した。具体的には、9マーのコアをさらに含むDRスーパーモチーフ、ならびに3残基のN末端隣接領域およびC末端隣接領域を含む(合計15アミノ酸)、15マーの配列を選択した。
【0312】
DR分子に結合するペプチドの推定についてのプロトコルが開発されている(Southwoodら、J.Immunol.160:3363−3373、1998)。個々のDR分子に特異的なこれらのプロトコルは、9マーのコア領域の得点付けおよびランク付けを可能にする。各々のプロトコルは、9マーのコアの内部のDRスーパーモチーフの一次アンカーの存在(すなわち、1位および6位)について、ペプチド配列を得点付けするだけではなく、さらに、二次アンカーの存在についても配列を評価する。対立遺伝子に特異的な選択表(例えば、Southwoodら、同書を参照のこと)を用いて、これらのプロトコルが、特定のDR分子を結合する高い確率で、ペプチド配列を効果的に選択することが見出されている。さらに、これらのプロトコル(具体的には、DR1、DR4w4およびDR7についてのプロトコル)を連繋して実行することにより、DRの交差反応性ペプチドを効果的に選択し得ることが見出されている。
【0313】
上記で同定されたCEA由来のペプチドを、種々の一般的なHLA−DR分子に対する結合能について試験した。すべてのペプチドを、最初に、一次パネル:DR1、DR4w4およびDR7において、DR分子への結合について試験した。次いで、1000nM以下のIC50値でこれらの3つのDR分子のうちの少なくとも2つを結合するペプチドを、DR50101、DRB11501、DRB11101、DRB10802およびDRB11302への結合について試験した。試験した8つの対立遺伝子のうちの少なくとも5つに、1000nM以下のIC50値で結合した場合、ペプチドを、交差反応性のDRスーパータイプバインダー(binder)とみなした。
【0314】
上記に概説した戦略の後、100個のDRスーパーモチーフ保有配列を、CEAタンパク質配列内で同定した。これらのうち24個が、3つの複合(combined)DR147アルゴリズムのうちの2つにおいて、ポジティブと得点付けされた。これらのペプチドを合成し、そしてHLA−DRB10101、DRB10401、DRB10701への結合について試験した。試験した24個のペプチドのうち10個が、3つの対立遺伝子のうちの少なくとも2つを結合した(表XXVIII)。
【0315】
次いで、これらの10個のペプチドを、二次DRスーパータイプ対立遺伝子:DRB50101、DRB11501、DRB11101、DRB10802およびDRB11302への結合について試験した。試験した8つの対立遺伝子のうちの少なくとも5つを結合し、そして別個の非重複領域において生じた5つのペプチドを同定した(表XXIX)。
【0316】
(DR3モチーフペプチドの選択)
HLA−DR3は、カフカス人集団、黒人集団およびスペイン系人集団において優勢な対立遺伝子であるので、DR3結合能は、HTLエピトープの選択における重要な基準である。しかし、以前に生成されたデータは、DR3のみが、他のDR対立遺伝子とめったに交差反応しないことを示した(Sidneyら、J.Immunol.149:2634−2640、1992;Gelukら、J.Immunol.152:5742−5748、1994;Southwoodら、J.Immunol.160:3363−3373、1998)。これは、DR3ペプチド結合モチーフが、大半の他のDR対立遺伝子の特異性とは異なるようである点において、まったく驚くべきことではない。ワクチン候補物の開発における最大の効率について、DR3モチーフが、DRスーパーモチーフ領域に近接して密集することが望ましい。従って、候補物であると示されたペプチドもまた、そのDR3結合能についてアッセイされ得る。しかし、DR3モチーフの異なる結合特異性を考慮して、DR3のみに結合するペプチドをまた、ワクチン処方物への包含についての候補物とみなし得る。
【0317】
DR3を結合するペプチドを効果的に同定するために、CEAタンパク質配列を、Gelukら(J.Immunol.152:5742−5748、1994)によって報告される2つのDR3特異的結合モチーフ(表III)のうちの1つを保有する保存配列について分析した。30のモチーフポジティブペプチドを同定した。次いで、対応するペプチドを合成し、そして1000nMまたはよりよい(すなわち、1000nM未満(less than 1000 nM)の)親和性でDR3を結合する能力について試験した。この結合基準を満たす2つのペプチドを見出し(表XXX)、それによって、HLAクラスII高親和性バインダーとみなす。さらに、2つのDR3バインダーを、DRスーパータイプ対立遺伝子への結合について試験した(表XXXI)。両方のペプチドについて、他のDRスーパータイプ分子への結合を観察したが、どちらのペプチドも、DRスーパータイプの交差反応性結合ペプチドとして類別不可能であった。逆に、DRスーパータイプの交差反応性結合ペプチドをまた、DR3結合能について試験した。1つのペプチド、すなわちCEA.50が、DR3結合を示した(表XXXI)。
【0318】
次いで、このように同定されたDR3結合エピトープを、DRスーパーモチーフ保有ペプチドエピトープを有するワクチン組成物に含め得る。
【0319】
まとめると、5つのDRスーパータイプの交差反応性結合ペプチドおよび3つのDR3結合ペプチドを、CEAタンパク質配列から同定し、1つのペプチドが、2つのモチーフ間で共有された。
【0320】
(実施例6.HTLエピトープの免疫原性)
本実施例は、実施例5における方法論を用いて同定されたエピトープ間の、免疫原性DRスーパーモチーフ保有エピトープおよびDR3モチーフ保有エピトープを決定する。HTLエピトープの免疫原性を、HTL応答を刺激する能力の評価および/または適切なトランスジェニックマウスモデルの使用によって、CTLエピトープの免疫原性の決定に類似の様式で評価する。免疫原性を、以下についてのスクリーニングによって決定する:1.)正常なPBMCを用いたインビトロ一次誘導、または2.)癌患者のPBMC由来のリコール(recall)応答。このような手順は、HTL応答を誘導するエピトープを同定する。
【0321】
(実施例7.集団範囲の広さを決定するための、種々の人種背景におけるHLAスーパータイプの表現型頻度の計算)
本実施例は、複数のスーパーモチーフおよび/またはモチーフを含む複数のエピトープから構成されるワクチン組成物の集団範囲の広さの評価を例示する。
【0322】
集団範囲を分析するために、HLA対立遺伝子の遺伝子頻度を決定した。各々のHLA対立遺伝子についての遺伝子頻度を、二項分布式gf=1−(SQRT(1−af))を利用して、抗原頻度または対立遺伝子頻度から計算した(例えば、Sidneyら、Human Immunol.45:79−93、1996を参照のこと)。全体の表現型頻度を得るために、累積遺伝子頻度を計算し、そして累積抗原頻度は、逆関数式[af=1−(1−Cgf)]の使用によって導かれた。
【0323】
頻度のデータが、DNA分類のレベルで入手不可能であった場合、血清学的に規定された抗原頻度の対応を仮定した。合計の潜在的なスーパータイプの集団範囲を得るために、連鎖不均衡を仮定せず、そして各々のスーパータイプに属することが確認される対立遺伝子のみを含めた(最小限の見積もり)。位置間(inter−loci)の組み合わせによって達成される合計の潜在的な範囲の見積もりを、考慮されるB対立遺伝子によって覆われることが期待され得る、Aで覆われない集団の割合を、A範囲に付加することによって作製した(例えば、合計=A+B(1−A))。A3様スーパータイプの確認されたメンバーは、A3、A11、A31、A3301およびA6801である。A3様スーパータイプはまた、A34、A66およびA7401を含み得るが、これらの対立遺伝子は、合計の頻度計算に含めなかった。同様に、A2様スーパータイプファミリーの確認されたメンバーは、A0201、A0202、A0203、A0204、A0205、A0206、A0207、A6802およびA6901である。最終的に、B7様スーパータイプの確認された対立遺伝子は、以下である:B7、B3501〜03、B51、B5301、B5401、B5501〜2、B5601、B6701およびB7801(潜在的には、またB1401、B3504〜06、B4201およびB5602)。
【0324】
A2スーパータイプ、A3スーパータイプおよびB7スーパータイプを結合することによって達成される集団範囲は、5つの主要な人種群において、約86%である(表XXIを参照のこと)。範囲は、A1モチーフおよびA24モチーフを保有するペプチドを含めることによって拡張され得る。平均して、A1は、5つの異なる主要な人種群(カフカス人、北米黒人、中国人、日本人およびスペイン系人)に渡る集団の12%に存在し、そしてA24は、この5つの異なる主要な人種群に渡る集団の29%に存在する。合わせて、これらの対立遺伝子を、これらの同じ人種集団において39%の平均頻度で表す。A1およびA24を、A2スーパータイプ対立遺伝子、A3スーパータイプ対立遺伝子およびB7スーパータイプ対立遺伝子の範囲と組み合わせる場合、主要な民族的背景に渡る合計の範囲は、95%を超える。類似のアプローチを使用して、クラスIIモチーフ保有エピトープの組み合わせを用いて達成される集団範囲を概算し得る。
【0325】
(実施例8.プライム後の内因性にプロセスされた抗原の認識)
本実施例は、実施例1〜6に記載されるように同定されかつ選択される、ネイティブのペプチドエピトープまたはアナログ化ペプチドエピトープによって誘導されるCTLが、トランスジェニックマウスモデルを使用して、内因性に合成された(すなわち、ネイティブの)抗原を認識することを決定する。
【0326】
ペプチドエピトープ(例えば、Wentworthら、Mol.Immunol.32:603、1995に記載されるような)で免疫したトランスジェニックマウスから単離したエフェクター細胞(例えば、HLA−A2スーパーモチーフ保有エピトープ)を、ペプチドでコーティングした刺激(stimulator)細胞を用いて、インビトロで再度刺激する。6日後、エフェクター細胞を、細胞傷害性についてアッセイし、そしてペプチド特異的細胞傷害性活性を含む細胞系を、さらに再度刺激する。さらに6日後、これらの細胞系を、ペプチドの非存在または存在下で、51Crで標識したJurkat−A2.1/K標的細胞に対する細胞傷害性活性について試験し、そしてまた、内因性に合成された抗原を保有する51Crで標識した標的細胞(すなわち、TAA発現ベクターを用いて安定にトランスフェクトされる細胞)について試験する。
【0327】
結果は、ペプチドエピトープを用いてプライムした動物から得られたCTL系が、内因性に合成された抗原を認識することを実証する。このような分析について使用されるべきトランスジェニックマウスモデルの選択は、評価されているエピトープに依存する。HLA−A0201/Kトランスジェニックマウスに加えて、ヒトA11を有するマウスを含むいくつかの他のトランスジェニックマウスモデル(これはまた、A3エピトープを評価するために使用され得る)およびB7対立遺伝子を有するマウスを含むいくつかの他のトランスジェニックマウスモデルが特徴付けられ、そして他のもの(例えば、HLA−A1およびA24についてのトランスジェニックマウス)が開発されている。HLA−DR1マウスモデルおよびHLA−DR3マウスモデルもまた開発され、これは、HTLエピトープを評価するために使用され得る。
【0328】
(実施例9.トランスジェニックマウスにおけるCTL−HTL結合体化エピトープの活性)
本実施例は、腫瘍関連抗原CTL/HTLペプチド結合体の使用によるトランスジェニックマウスにおけるCTLおよびHTLの誘導を実証し、それによって、ワクチン組成物が、癌患者に投与されるべきペプチドを含む。ペプチド組成物は、複数のCTLエピトープおよび/またはHTLエピトープを含み得、そしてさらに、複数の腫瘍関連抗原から選択されるエピトープを含み得る。このエピトープを、実施例1〜6に記載されるような方法論を用いて同定する。この分析は、ワクチン組成物における1つ以上のHTLエピトープの包含によって達成され得る免疫原性の増大を実証する。このようなペプチド組成物は、好ましいCTLエピトープに結合体化したHTLエピトープを含み得、このCTLエピトープは、例えば、表XXIII〜XXVIIから選択される少なくとも1つのCTLエピトープまたはこのエピトープの他のアナログを含む。このHTLエピトープは、例えば、表XXXIから選択される。所望であれば、このペプチドは脂質化(lipidate)され得る。
【0329】
免疫化手順:トランスジェニックマウスの免疫化を、記載されるように行う(Alexanderら、J.Immunol.159:4753−4761、1997)。例えば、A2/Kマウス(これは、ヒトHLA A2.1対立遺伝子についてトランスジェニックであり、そしてHLA−A0201モチーフ保有エピトープまたはHLA−A2スーパーモチーフ保有エピトープの免疫原性の評価に有用である)を、生理食塩水またはDMSO/生理食塩水中に処方された0.1mlのペプチド結合体で、皮下的に(尾の基部)プライムする。プライムの7日後、これらの動物から得られた脾細胞を、ペプチドでコーティングされた、同系の(syngenic)照射されたLPS活性化リンパ芽球で再度刺激する。
【0330】
ペプチド特異的細胞傷害性アッセイについての標的細胞は、HLA−A2.1/Kキメラ遺伝子でトランスフェクトされたJurkat細胞である(例えば、Vitielloら、J.Exp.Med.173:1007、1991)。
【0331】
インビトロCTL活性化:プライムの1週間後、脾臓細胞(30×10細胞/フラスコ)を、10mlの培養培地/T25フラスコにおいて、同系の照射された(3000rad)、ペプチドでコーティングされたリンパ芽球(10×10細胞/フラスコ)とともに、37℃で共存培養する。6日後、エフェクター細胞を収集し、そして細胞傷害性活性についてアッセイする。
【0332】
細胞傷害性活性についてのアッセイ:標的細胞(1.0〜1.5×10)を、200μlの51Crの存在下で37℃でインキュベートする。60分後、細胞を3回洗浄し、そして培地中に再懸濁する。ペプチドを添加し、この場合、1μg/mlの濃度で必要とされる。アッセイについて、10個の51Crで標識された標的細胞を、U底の96ウェルプレートに、異なる濃度のエフェクター細胞(最終容量は200μl)を添加する。37℃で6時間のインキュベーション後、上清の0.1mlのアリコートを、各々のウェルから除去し、そして放射能を、Micromedic自動ガンマカウンターにおいて決定する。パーセント特異的溶解を、以下の式によって決定する:パーセント特異的放出=100×(実験的放出−自発的放出)/(最大放出−自発的放出)。同じ条件下で行われる別々のCTLアッセイ間の比較を容易にするために、%51Cr放出データを、溶解単位/10細胞として表す。1溶解単位を、6時間の51Cr放出アッセイにおいて、10,000個の標的細胞の30%の溶解を達成するために必要とされるエフェクター細胞の数として任意に規定する。特定の溶解単位/10を得るために、ペプチドの非存在下において得られる溶解単位/10を、ペプチドの存在下において得られる溶解単位/10から差し引く。例えば、30%の51Cr放出が、ペプチドの非存在下で、50:1のエフェクター(E):標的(T)比(すなわち、10,000個の標的に対して5×10個のエフェクター細胞)で得られ、そしてペプチドの存在下で、5:1の比(すなわち、10,000個の標的に対して5×10個のエフェクター細胞)で得られる場合、この特定の溶解単位は、以下である:[(1/50,000)−(1/500,000)]×10=18LU。
【0333】
結果を分析して、免疫原性のCTL/HTL結合体ワクチン調製物を用いて注射された動物のCTL応答の大きさを評価する。CTL応答の頻度および程度をまた、CTLエピトープ自体を使用して達成されるCTL応答と比較し得る。これに類似の分析を行って、複数のCTLエピトープおよび/または複数のHTLエピトープを含むペプチド結合体の免疫原性を評価し得る。これらの手順に従って、CTL応答が誘導され、そして付随して、HTL応答が、このような組成物の投与の際に誘導されることが見出される。
【0334】
(実施例10:癌ワクチンに含有させるためのCTLエピトープおよびHTLエピトープの選択)
この実施例は、本発明ワクチン組成物のためのペプチドエピトープを選択する手順を説明する。本組成物中のペプチドは、ペプチドをコードする単独または一つ以上の配列(つまり、ミニジーン)のいずれかの核酸配列という形態であってもよいし、単独および/またはポリエピトープ性のペプチドであってもよい。
【0335】
ワクチン組成物中に含有させるためのエピトープのアレイを選択する際、次の原理を利用する。選択を行うために、次のそれぞれの原理を比較考慮する。
【0336】
投与の際に、腫瘍排除と相関することが認められた免疫応答を模倣するエピトープを選択する。例えば、ワクチンには、最低1つのTAA由来の3−4個のエピトープが含まれ得る。例えば、実施例15にて記述するような、頻繁に発現されるTAAの発現パターンが変化する腫瘍を標的とするワクチンを調製するために、一つのTAA由来のエピトープを、一つ以上のさらなるTAA由来のエピトープと組み合わせて使用し得る。
【0337】
好ましくは、HLAクラスI分子に対する結合アフィニティー(IC50)が500nM以下、多くの場合、200nM以下、またはクラスII分子に対する結合アフィニティーが1000nM以下であるエピトープを選択する。
【0338】
幅広い集団の適用範囲を与えるように、十分なスーパーモチーフを持つペプチド、または十分な、対立遺伝子特異的モチーフを持つペプチドの十分なアレイを選択する。例えば、最低80%の集団の適用範囲を提供するように、エピトープを選択する。集団の適用範囲の広さまたは重複性を評価するために、当該分野で既知の統計的評価であるモンテカルロ分析を使用し得る。
【0339】
癌関連抗原からエピトープを選択する際、患者はネイティブのエピトープに対して耐性を持つようになるので、多くの場合、アナログを選択することが好ましい。
【0340】
例えばミニジーンなどのポリエピトープ性組成物を調製する際、スペーサーまたは他の隣接配列もまた組み込まれ得るが、目的のエピトープを含有することが可能な最小のペプチドを調製することが典型的には望ましい。用いる原理は、多くの場合、入れ子構造になった(nested)エピトープを含むペプチドを選択する際に用いる原理と同様である。しかしながら、さらに、ミニジーンとして提供される核酸配列を決定する際に、結合エピトープが生じているか否かを調べるために、その核酸配列がコードするペプチド配列を解析する。例えばモチーフ解析により予想されるように、結合エピトープは、潜在的なHLA結合エピトープである。レシピエントがHLA分子に結合し、ネイティブのタンパク質配列には存在しないそのエピトープに対して免疫応答を生じ得るので、結合エピトープは一般的に避けられるべきである。
【0341】
ワクチン組成物に含有させることを目的としたエピトープを、例えば、表XXIII−XXVIIおよびXXXIで挙げたものから選択する。選択したペプチドを含むワクチン組成物は、それを投与した場合、安全で有効であり、腫瘍細胞の破壊、および腫瘍の大きさまたは質量の減少を引き起こす免疫応答を惹起する。
【0342】
(実施例11:ミニジーンマルチエピトープDNAプラスミドの構築)
この実施例は、ミニジーン発現プラスミド構築に対する一般的な説明を提供する。勿論、ミニジーンプラスミドは、本明細書中で記載しているような様々なCTLおよび/またはHTLエピトープまたはエピトープアナログを含み得る。例えば、1999年5月13日に提出された同時係属中のU.S.S.N.09/311,784において記述されているように、発現プラスミドを構築し、評価した。
【0343】
ミニジーン発現プラスミドには、複数のCTLおよびHTLペプチドエピトープが含まれ得る。本実施例において、HLA−A2、HLA−A3、HLA−B7スーパーモチーフを持つペプチドエピトープおよび、HLA−A1およびHLA−A24モチーフを持つペプチドエピトープを、DRスーパーモチーフを持つエピトープおよび/またはDR3エピトープとともに使用する。好ましいエピトープは、例えば、表XXIII−XXVIIおよびXXXIにおいて明らかになっている。幅広い集団の適用範囲を確実にするために複数のスーパーモチーフ/モチーフが示されるように、複数のTAA由来のHLAクラスIスーパーモチーフまたはモチーフを持つペプチドエピトープを選択する。同様に、幅広い集団の適用範囲を提供するように複数の腫瘍抗原からHLAクラスIIエピトープを選択する、つまり、HLA DR−1−4−7スーパーモチーフを持つエピトープおよびHLA DR−3モチーフを持つエピトープの両方をミニジーン構築物に含めるために選択する。次に、選択したCTLおよびHTLエピトープを、発現ベクターで発現するようにミニジーンに組み込む。
【0344】
この実施例は、そのようなミニジーンを持つ発現プラスミドの構築に使用する方法を説明する。ミニジーン組成物に使用し得る他の発現ベクターが利用可能であり、当業者により既知である。
【0345】
ミニジーンDNAプラスミドには、コンセンサスコザック配列およびコンセンサスマウスカッパIg−軽鎖シグナル配列が含まれる。このコンセンサスマウスカッパIg−軽鎖シグナル配列の後に、本明細書中で開示した原理に従い選択したCTLおよび/またはHTLエピトープが続く。本配列は、pcDNA3.1Myc−HisベクターによりコードされたMycおよびHis抗体エピトープタグと融合したオープンリーディングフレームをコードする。
【0346】
重複するオリゴヌクレオチド、例えば、長さが平均しておよそ70ヌクレオチドで、15個のヌクレオチド重複を持つ8個のオリゴヌクレオチドを合成し、HPLC精製する。オリゴヌクレオチドは、適切なリンカーヌクレオチドであるコザック配列およびシグナル配列、ならびに選択したペプチドエピトープをコードする。PCRを用いた3セットの反応で重複オリゴヌクレオチドを伸長させて、最終的なマルチエピトープミニジーンを組み立てる。Perkin/Elmer 9600 PCR装置を使用し、次の条件を用いて全部で30サイクル行う。その条件とは、95℃で15秒、アニーリング温度(それぞれのプライマーペアの計算上の最低Tm値よりも5℃低い温度)で30秒、および72℃で1分である。
【0347】
第一のPCR反応に対して、5μgの二つのそれぞれのオリゴヌクレオチドをアニーリングさせ、伸長させる。オリゴヌクレオチド1+2、3+4、5+6および7+8を、Pfuポリメラーゼ緩衝液(1×=10mM KCl、10mM(NHSO、20mM Tris−塩酸、pH8.75、2mM MgSO、0.1% TritonX−100,100μg/ml BSA)、0.25mMの各dNTP、および2.5UのPfuポリメラーゼを含む100μlの反応系に添加する。全長のダイマー産物をゲルにより精製し、1+2および3+4の産物、ならびに5+6および7+8の産物を含む2つの反応物を混合し、アニーリング、伸長反応を10サイクル行う。次に二つの反応系の半分を混合し、5サイクルのアニーリングおよび伸長を行った後、隣接プライマーを添加して、25サイクルの反応を行って全長産物を増幅させる。全長産物をゲルにより精製し、pCR−blunt(Invitrogen)にクローニングし、個々のクローンを配列決定によりスクリーニングする。
【0348】
(実施例12:プラスミド構築物およびそれが免疫原性を誘導する程度)
実施例11で概説した方法論を使用して調製したプラスミド構築物がどの程度免疫原性を誘導可能であるかを、マウスへのインビボ注射およびそれに続くインビトロでのCTLおよびHTL活性の測定により評価する。例えば、1999年5月13日に提出されたU.S.S.N 09/311,784、およびAlexanderら、Immunity 1:751−761、1994にて詳述されているような、細胞傷害性および増殖解析をそれぞれ用いて、CTLおよびHTL活性を解析する。
【0349】
あるいは、エピトープ発現核酸構築物を用いたAPCの形質導入またはトランスフェクションに続いて、インビトロでAPCによるエピトープ提示を試験することによりプラスミド構築物を評価し得る。そのような試験により、「抗原性」が決定され、ヒトAPCの使用が可能になる。細胞表面上のエピトープ−HLAクラスI複合体密度を定量することにより、T細胞により認識される状況において、エピトープのAPCにより提示される能力がそのアッセイから決定される。直接、APCから溶出したペプチド量を測定することにより(例えば、Sijtsら、J.Immunol.156:683−692,1996;Demotzら、Nature342:682−684,1989を参照すること)定量を行い得る;または、感染した標的細胞またはトランスフェクトした細胞により誘導される溶解またはリンホカイン放出量を測定し、次いで同等レベルの溶解またはリンホカイン放出を得るために必要なペプチド濃度を決定することによりペプチド−HLAクラスI複合体数を推定し得る(例えば、Kageyamaら、J.Immunol.154:567−576、1995を参照すること)。
【0350】
インビボにてCTLを誘導するpMinミニジーン構築物(例えば、U.S.S.N.09/311,784にて記述されているように調製したpMinミニジーン構築物)の能力を評価するために、例えば、HLA−A11/Kトランスジェニックマウスに、100μgの裸のcDNAを筋肉内免疫する。cDNAの免疫によって誘導されるCTLレベルを比較する方法として、複数のエピトープがミニジーンによりコードされている場合、単一のポリペプチドとして合成した複数のエピトープを含む実際のペプチド組成物を用いて、コントロール群の動物もまた免疫する。
【0351】
免疫した動物由来の脾臓細胞を、それぞれの別個の組成物(ミニジーンでコードされているペプチドエピトープ、またはポリエピトープ性ペプチド)で二回刺激し、51Cr放出アッセイにおいてペプチド特異的細胞傷害性活性についてアッセイする。その結果から、A3拘束性エピトープに対して向けられるCTL応答の程度、従って、ミニジーンワクチンおよびポリエピトープ性ワクチンのインビボでの免疫原性が示される。従って、ポリエピトープ性ペプチドワクチンが免疫応答を惹起するように、ミニジーンが、HLA−A3スーパーモチーフペプチドエピトープに対して向けられた免疫応答を惹起するということが明らかになる。HLA−A2およびHLA−B7モチーフ、またはスーパーモチーフエピトープによるCTL誘導を評価するために、他のHLA−A2およびHLA−B7トランスジェニックマウスモデルを使用して同様の解析をまた行う。
【0352】
クラスIIエピトープをコードするミニジーンがインビボでHTLを誘導する能力を評価するために、例えば、I−Ab拘束性マウスに、筋肉内に100μgのプラスミドDNAを免疫する。DNA免疫により誘導されるHTLレベルを比較する方法として、コントロール群の動物もまた、完全フロイントアジュバントで乳化した実際のペプチド組成物を用いて免疫する。CD4+T細胞、つまりHTLを、免疫した動物の脾臓細胞から精製しそれぞれの別個の組成物(ミニジーンでコードされているペプチド)で刺激する。H−チミジン取り込み増殖解析(例えば、Alexanderら、Immunity 1:751−761,1994を参照すること)を用いてHTL応答を測定する。その結果から、HTL応答の大きさ、従って、インビボでのミニジーンの免疫原性が示される。
【0353】
実施例11にて記述するように構築したDNAミニジーンをまた、プライムブーストプロトコルを用いてブースト剤(boosting agent)と組み合わせたワクチンとして評価し得る。ブースト剤は、組換えタンパク質(例えば、Barnettら、Aids Res.and Human Retroviruses 14、補遺3:S299−S309,1998)または、組換えワクシニア(例えば、ミニジーンまたは目的の完全なタンパク質をコードするDNAを発現する)からなり得る(例えば、Hankeら、Vaccine 16:439−445,1998;Sedegahら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 95:7648−53、1998;Hankeおよび McMichael,Immunol.Letters 66:177−181,1999;およびRobinsonら、Nature Med.5:526−34,1999を参照すること)。
【0354】
例えば、トランスジェニックマウスにおいてDNAミニジーンの有効性を評価し得る。この実施例において、A2.1/Kトランスジェニックマウスに対して、免疫原性ペプチドをコードする100 gのDNAミニジーンを用いて筋肉内注射により免疫する。インキュベーション期間(3−9週間の範囲)後、DNAミニジーンにコードされている同じ配列を発現している組換えワクシニアウイルス10pfu/マウスを用いて、マウスに追加免疫を行う。コントロールマウスに、ミニジーン配列無しで、またはミニジーンをコードするDNAとともに、100 gのDNAまたは組換えワクシニアで免疫するが、ワクシニア追加免疫は行わない。さらなる2週間のインキュベーション期間後、マウスから採取した脾臓細胞を、直ちにELISPOTアッセイによってペプチド特異的活性についてアッセイする。さらに、ミニジーン中にコードされているA2拘束性ペプチドエピトープおよび組換えワクシニアで脾臓細胞をインビボで刺激し、次いで、IFN− ELISAにおいてペプチド特異的活性をアッセイする。プライムブースト様式で利用したミニジーンが、HLA−A2スーパーモチーフペプチドに対して、DNA単独の場合よりも大きな免疫応答を惹起するということがわかる。HLA−A3およびHLA−B7モチーフまたはスーパーモチーフエピトープによるCTL誘導を評価するために、他のHLA−A11およびHLA−B7トランスジェニックマウスモデルを用いてそのような解析もまた行う。
【0355】
(実施例13:予防的使用のためのペプチド組成物)
腫瘍を発症している危険性のある人において、癌を予防するために、本発明ワクチン組成物を使用する。例えば、集団の80%以上を標的とするようにも選択した実施例9および/または10で選択したような複数のCTLおよびHTLエピトープを含むポリエピトープ性ペプチドエピトープ組成物(または同じものを含む核酸)を、例えば乳癌などの癌の危険性を持つ個体に投与する。本組成物を、複数のエピトープを含む単一ポリペプチドとして与える。フロイント不完全アジュバントを含む水性担体とともに本ワクチンを投与する。初回免疫のペプチド用量は、体重70kgの患者に対しておよそ1からおよそ50,000μg、一般的には100−5,000μgである。ワクチンの初回投与後、4週間目に追加免疫投与を行い、その後、PBMC試料中のエピトープ特異的CTL集団の存在を測定する技術により、患者の免疫応答の大きさを評価する。必要に応じてさらなる追加免疫用量を投与する。本組成物は、安全であること、および癌に対する予防剤として有効であるということのいずれもが認められる。
【0356】
あるいは、当該分野で公知であり本明細書中で開示している方法論に従って核酸としてポリエピトープ性ペプチド組成物を投与し得る。
【0357】
(実施例14:ネイティブTAA配列由来のポリエピトープ性ワクチン組成物)
複数のエピトープを含み、好ましくは、完全なネイティブ抗原より長さが短い、「比較的短い」ポリタンパク質領域を同定するために、好ましくは、それぞれのクラスIおよび/またはクラスIIスーパーモチーフもしくはモチーフに関して定義されたコンピューターアルゴリズムを用いて、ネイティブTAAポリタンパク質配列をスクリーニングする。複数の別個のものでさらに重複しているエピトープを含むこの比較的短い配列を選択し、ミニジーン構築物を調製するために使用する。ネイティブタンパク質配列に相当するペプチドを発現するように構築物を構築する。「比較的短い」ペプチドは、一般的に長さが100、500、または250アミノ酸未満、多くの場合、長さが100アミノ酸未満、好ましくは75アミノ酸未満、より好ましくは50アミノ酸未満である。ワクチン組成物のタンパク質配列は、そのタンパク質配列に含まれるエピトープが最大数である、つまり、エピトープが高濃度に存在するので、そのタンパク質配列が選択される。本明細書中で述べているように、エピトープモチーフを入れ子構造にしてもいよいし、重複させてもよい(つまり、互いに対してフレームシフトが起こっている)。例えば、フレームシフトが起こっている重複エピトープがある場合、二つの9マーのエピトープおよび一つの10マーのエピトープが、10アミノ酸ペプチド中に存在し得る。治療または予防を目的として、そのようなワクチン組成物を投与する。
【0358】
ワクチン組成物には、好ましくは、例えば、TAA由来の3つのCTLエピトープおよび少なくとも一つのHTLエピトープが含まれる。このポリエピトープ性ネイティブ配列を、ペプチドとして、またはそのペプチドをコードする核酸配列としてのいずれかで投与する。あるいは、このネイティブ配列から、アナログを作製し、それにより一つ以上のエピトープがそのポリエピトープ性ペプチドの交差反応性および/または結合アフィニティー特性を変化させる置換を含む。
【0359】
この実施例の実施形態により、今までのところ発見されていない免疫系プロセシングの局面がネイティブ入れ子構造配列に対して適用され、それによって治療または予防を目的とした免疫応答誘導ワクチン組成物の調製を促進する可能性が与えられる。さらに、そのような実施形態は、現在のところ未知のHLA構造に対する、モチーフを持つエピトープの可能性を提供する。さらに、この実施形態(アナログがない)は、実際にネイティブTAAに存在し、従っていかなる結合エピトープを評価する必要も回避する、複数のペプチド配列に対する免疫応答を指向する。最後に、本実施形態は、核酸ワクチン組成物を調製する場合、規模の経済性を提供する。
【0360】
この実施形態に関連して、当該分野における、標的配列において配列長あたりのエピトープの最大数を同定する原理に従い、コンピュータープログラムを導出し得る。
【0361】
(実施例15:多様な腫瘍に対するポリエピトープ性のワクチン組成物)
様々なタイプの腫瘍の処置に有用なワクチン組成物を調製するために、本発明のCEAペプチドエピトープを他の標的腫瘍抗原由来のペプチドエピトープとともに使用する。例えば、ほとんどの一般的な上皮腫瘍を標的とすることが可能になるようにTAAエピトープのセットを選択し得る(例えば、Kawashimaら、Hum.Immunol.59:1−14,1998を参照すること)。そのような組成物は、CEA、HER−2/neu、およびMAGE2/3由来のエピトープを含み、これらの全ては、肺、乳房、および消化器腫瘍など、よく見られる腫瘍において相当な程度(20−60%)で発現されている。
【0362】
様々なTAA由来の複数のエピトープを組み入れた単一ポリペプチドとして本組成物を提供し得るか、または一つ以上の別個のエピトープを含む組成物として本組成物を投与し得る。あるいは、ミニジーン構築物として、またはインビボでペプチドエピトープで負荷をかけた樹状細胞として本ワクチンを投与し得る。
【0363】
複数の腫瘍抗原を標的にすることはまた、任意の特定型の腫瘍の大きな割合の適用範囲を提供するために重要である。1個のTAAは、所定のタイプの腫瘍の大半においてはまれにしか発現していない。例えば、胸部腫瘍のおよそ50%がCEAを発現し、20%がMAGE3を、30%がHER−2/neuを発現する。従って、免疫療法で1つの抗原しか使用しなかった場合、限られた患者の適用範囲にしか示されない。しかしながら、3つのTAAを組み合わせた場合、およそ70%の胸部腫瘍に対処できる。さらに、およそ50%の胸部腫瘍で過剰発現しているp53由来のCTLエピトープを含有することにより、適用範囲は全ての胸部腫瘍のおよそ85%に達し得る。複数の腫瘍抗原由来のエピトープを含むワクチン組成物はまた、個々の腫瘍抗原の発現の欠失によるエスケープ変異体の可能性をも減少させる。
【0364】
(実施例16:免疫応答を評価するためのペプチドの使用)
TAAに向けられた特異的なCTLまたはHTL集団の存在に対する免疫応答を解析するために本発明ペプチドを使用し得る。例えば、Oggら、Science 279:2103−2106,1998およびGretenら、Proc.Natl.Acad.Sci USA 95:7568−7573,1998によって記述されているような多量体複合体を用いてそのような解析を行い得る。次の例において、免疫原としてではなく、診断目的または予測目的の試薬として本発明に従ったペプチドを使用する。
【0365】
この例において、例えば、異なる疾患段階またはその後のA*0201モチーフを含むTAAペプチドを用いた免疫後の腫瘍関連抗原HLA−A*0201陽性患者からのHLA−A*0201特異的CTL頻度の断面的分析について、高感度のヒト白血球抗原テトラマー複合体(「テトラマー」)を使用する。記述されているように(Murseyら、N.Engl.J.Med.337:1267,1997)、テトラマー複合体を合成する。簡潔に述べると、原核生物発現システムにより、精製したHLA重鎖(この実施例でのA*0201)およびβ2−ミクログロブリンを合成する。膜貫通−細胞質テールの欠失およびCOOH−末端へのBirA酵素のビオチン化部位を含む配列付加により重鎖を改変する。重鎖、β2−ミクログロブリン、およびペプチドを希釈により再折りたたみする。45−kDの再折りたたみ産物を、高速タンパク質液体クロマトグラフィーで単離し、次に、ビオチン(Sigma,St.Louis,Missouri)、アデノシン5’三リン酸およびマグネシウム存在下でBirAによりビオチン化を行う。ストレプトアビジン−フィコエリトリン結合体をモル比1:4で添加し、テトラマー産物を1mg/mlになるように濃縮する。得られた産物をテトラマー−フィコエリトリンと呼ぶ。
【0366】
患者血液試料の分析に対して、およそ百万のPBMCを、300gで5分間遠心分離し、50μlの冷リン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁する。抗−CD8−Tricolor、および抗−CD38とともに、テトラマー−フィコエリトリンを用いてTri−color分析を行う。PBMCを、テトラマーおよび抗体とともに、氷上で30分から60分インキュベーションし、ホルムアルデヒドで固定する前に二回洗浄する。ゲートに99.98%を超えるコントロール試料を含むようにアプライする。テトラマーのコントロールは、A*0201−陰性の個体およびA*0201−陽性の非感染ドナー両方を含む。次に、テトラマーにより染色された細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより測定する。その結果から、エピトープ拘束性CTLを含むPBMC試料における細胞数が示され、それにより、TAAエピトープに対する免疫応答の程度、従って腫瘍の進行段階、または防御的または治療的応答を惹起するワクチンへの曝露が容易に示される。
【0367】
(実施例17:再帰性応答を評価するためのペプチドエピトープの使用)
本発明ペプチドエピトープを、患者の急性または再帰性の応答などのT細胞応答を評価するための試薬として使用する。寛解状態にある患者、腫瘍がある患者、またはTAAワクチンでワクチン接種されている患者に対してそのような解析を行い得る。
【0368】
例えば、ワクチン接種されている人のクラスI拘束性CTL応答を解析し得る。ワクチンは、任意のTAAワクチンであり得る。PBMCをワクチン接種された個体から回収し、HLA型を検出する。次に、複数のHLAスーパータイプファミリーメンバーとの交差反応性を与えるスーパーモチーフを随意で持つ本発明の適切なペプチドエピトープを、そのHLA型を持つ個体由来の試料の解析に使用する。
【0369】
ワクチン接種を行った個体由来のPBMCを、Ficoll−Histopaque密度勾配(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で分離し、HBSS(GIBCO Laboratories)で3回洗浄し、10%熱非働化ヒトAB血清を含む、L−グルタミン(2mM)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50 g/ml)およびHepes(10mM)を添加したRPMI−1640(GIBCO Laboratories)(完全RPMI)で再懸濁し、マイクロ培養形式でプレートする。本発明エピトープを含む合成ペプチドを、10μg/mlになるようにそれぞれのウェルに添加し、刺激の第一週目の間の補助的なT細胞源としてHBVコア128−140エピトープを1μg/mlになるように各ウェルに添加する。
【0370】
マイクロ培養形式において、100μl/ウェルの完全RPMIを添加した96ウェル丸底プレート中の8個の同型培養において4X105PBMCをペプチドで刺激する。3日目と10日目に、それぞれのウェルに100 lの完全RPMIおよび最終濃度20U/mlのrIL−2を添加する。7日目に、培養物を96ウェル平底プレートへ移し、ペプチド、rIL−2および放射線照射(3,000rad)した10個の自系支持細胞で再び刺激する。その培養物を、14日目に細胞傷害性活性に関して試験を行う。以前に記述されているように(Rehermannら、Nature Med.2:1104−1108,1996;Rehermannら、J.Clin.Invest.97:1655−1665,1996;およびRehermannら、J.Clin.Invest.98:1432−1440,1996)、非感染コントロール被験者との比較に基づいて、陽性CTL応答として、8個の同型培養物のうちの2以上において10%を越える特異的51Cr放出を示すことが必要である。
【0371】
標的細胞株は、American Society for Histocompatibility and Immunogenetics(ASHI,Boston、MA)から購入するか、または記述されているように(Guilhotら、J.Viol.66:2670−2678,1992)、患者のプールから確立するか、いずれかの自系および同種異系EBV形質転換B−LCLである。
【0372】
次の様式で細胞傷害性アッセイを行う。標的細胞は、10μMの本発明合成ペプチドエピトープと共に一晩インキュベーションを行い、100μCiの51Cr(Amersham Corp.,Arlington Heights,IL)で1時間標識し、その後HBSSで4回洗浄を行った同種異系HLA適合または自系EBV形質転換Bリンパ芽球細胞株のどちらかからなる。
【0373】
3,000標的細胞/ウェルが入っているU底96ウェルプレートを用いて標準的な4時間のスプリット−ウェル(split−well)51Cr放出アッセイで細胞溶解活性を調べる。14日目に、20〜50:1のエフェクター/標的(E/T)比で、刺激したPBMCを試験する。式:100X[(実験による放出−自発的放出)/最大放出ー自発的放出)]からパーセント細胞傷害性を算出する。界面活性剤(2% TritonX−100;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を用いた標的細胞溶解により最大放出を調べる。自発的放出は、全ての実験について、最大放出の25%未満である。
【0374】
そのような解析の結果から、HLA−拘束性CTL集団がTAAまたはTAAワクチンに対する以前の曝露により刺激されている程度が示される。
【0375】
クラスII拘束性HTL応答もまた解析し得る。精製したPBMCを、96ウェル平底プレートで、1.5×10細胞/ウェルの密度で培養し、10μg/mlの合成ペプチド、完全抗原、またはPHAで刺激する。細胞を通常通り、それぞれの条件に対して4−6ウェルの同型培養としてプレートする。培養7日後、培養液を除去し、10U/mlのIL−2を含む新鮮な培養液に交換する。2日後、1μCiのH−チミジンをそれぞれのウェルに添加し、さらに18時間インキュベーションを続ける。次に細胞内のDNAをグラスファイバーマット上に取り出し、H−チミジン取り込みについて解析する。抗原非存在下でのH−チミジン取り込み量で割った抗原存在下でのH−チミジン取り込み量の比として抗原特異的T細胞増殖を計算する。
【0376】
(実施例18:ヒトでの特異的CTL応答の誘導)
本発明CTLおよびHTLエピトープを含む免疫原性組成物に対するヒトの治験をINDフェーズI、投与量漸増試験として開始する。そのような治験を、例えば次のように設計する。
【0377】
全体でおよそ27人の被験者を登録し、3つの群に分ける:
第一群:3人の被験者にプラセボを注射し、6人の被験者に5μgのペプチド組成物を注射する。
【0378】
第二群:3人の被験者にプラセボを注射し、6人の被験者に50μgのペプチド組成物を注射する。
【0379】
第三群:3人の被験者にプラセボを注射し、6人の被験者に500μgのペプチド組成物を注射する。
【0380】
最初の注射から4週間後に、全ての被験者に対して同じ投与量で追加免疫接種を行う。同じスケジュールで更なる追加免疫接種を行い得る。
【0381】
この試験で測定する項目は、ペプチド組成物の免疫原性と同時にその安全性および認容性に関連する。本ペプチド組成物に対する細胞性免疫応答は、ペプチド組成物の本質的な活性の指標であり、従って、生物学的有効性の目安として見なされ得る。次に、安全性および有効性の項目に関連する臨床および実験データを要約する。
【0382】
安全性:プラセボおよび薬物処置群で有害事象の発生率を監視し、程度および可逆性に関して評価する。
【0383】
ワクチン有効性の評価:ワクチンの有効性を評価するために、被験者から注射の前後に採血する。Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離により末梢血単核細胞を新鮮なヘパリン処理血液から単離し、凍結保存用培地中にアリコートに分け、冷凍保存する。試料をCTLおよびHTL活性に関して分析する。
【0384】
本ワクチンが安全であり有効であることが認められる。
【0385】
(実施例19:癌患者における治療的使用)
癌患者におけるCTL−HTLペプチド組成物の有効性を確認するために、ワクチン組成物の評価を行う。本治験の主要な目的は、癌患者においてCTLを誘導するために有効な用量およびレジメンを決定すること、これらの患者におけるCTLおよびHTL応答誘導の安全性を確立すること、およびどの程度のCTL活性化が、腫瘍細胞数の減少により明らかとなるように、癌患者の臨床状態を向上させるのかを調べることである。例えば次のように、そのような治験を設計する。
【0386】
複数の施設で本試験を行う。本治験設計は、単回用量としてペプチド組成物を投与し、6週間後に同じ用量で単回追加免疫を行う、非盲検の非対照用量漸増プロトコル(open−label,uncontrolled,dose escalation protocol)である。投与量は、一回の注射あたり50、500および5000マイクログラムである。薬物関連副作用(重症度および可逆性)を記録する。
【0387】
患者を3群に分ける。第一群に、50μgのペプチド組成物を注射し、第二群、第三群に、それぞれ、500および5000μgのペプチド組成物を注射する。それぞれの群の患者は、21〜65歳であり、男女ともに含み(腫瘍が、例えば、乳癌、前立腺癌などの性別特異的でない限り)、様々な人種背景を示す。
【0388】
(実施例20:プライムブーストプロトコルを用いたCTL応答の誘導)
その基礎をなす原理において、実施例12で記述したトランスジェニックマウスでのDNAワクチン有効性を評価するために使用するプロトコールと同様のプライムブーストプロトコルを、ヒトへのワクチン投与に対しても使用し得る。このようなワクチンレジメンには、例えば裸のDNAを用いた初回投与と、それに続く本ワクチンをコードする組換えウイルス、またはアジュバント中で投与される組換えタンパク質/ポリペプチドもしくはペプチド混合物を用いた追加免疫が含まれ得る。
【0389】
例えば、裸の核酸を複数部位に0.5〜5mgの量をIM(またはSCもしくはID)投与する形態で、実施例11で構築しているような発現ベクターを用いて初回免疫を行い得る。その核酸(0.1から1000μg)はまた、遺伝子銃(gene gun)を用いて投与することも可能である。3−4週間のインキュベーション期間後、追加免疫投与を行う。追加免疫は、組換え鶏痘ウイルスを5×10から5×10pfuの用量で投与するものであり得る。MVA、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルスなどの、他の組換えウイルスもまた、追加免疫に使用してもよいし、ポリエピトープ性のタンパク質またはペプチド混合物を投与してもよい。ワクチンの有効性を評価するために、患者血液試料を、免疫前ならびに初回ワクチン投与後および追加免疫用量のワクチン投与後に一定間隔で採取する。新鮮なヘパリン処理血液から、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離により末梢血単核細胞を単離し、凍結保存用培地中にアリコートに分け、凍結保存する。試料をCTLおよびHTL活性に関してアッセイする。
【0390】
その結果の解析から、癌に対する防御免疫を達成するに十分な応答の大きさが生じることが示される。
【0391】
(実施例21:樹状細胞を用いたワクチン組成物の投与)
抗原提示細胞(APC)または樹状細胞(DC)などの「専門の(professional)」APCを用いて本発明のペプチドエピトープを含むワクチンを投与し得る。この実施例において、インビボでのCTL応答を刺激するためにペプチドでパルスしたDCを患者に投与する。この方法において、樹状細胞を単離し、増大させ、本発明のペプチドCTLおよびHTLエピトープを含むワクチンでパルスする。インビボでCTLおよびHTL応答を誘発するように、樹状細胞を、患者に注入して戻す。そして、誘導したCTLおよびHTLは、ワクチン中のエピトープが由来するタンパク質を持つ特異的標的腫瘍細胞を破壊(CTL)、または破壊を促進(HTL)する。
【0392】
例えば、エピトープを持つペプチドのカクテルを、エキソビボで患者血液由来のPBMCに投与するか、または患者から単離したDCに投与する。DCの回収を促進する薬剤、例えばProgenipoietinTM(Monsanto,St.Louis,MO)またはGM−CSF/IL−4のような薬剤を使用し得る。DCをペプチドでパルスした後、および患者に再注入する前に、非結合ペプチドを除去するためにDCを洗浄する。臨床的に認識されるように、および臨床成果を基礎にした技術の一つにより容易に決定されるように、患者に再注入する樹状細胞数は様々であり得る(例えば、Nature Med.4:328,1998;Nature Med.2:52,1996およびProstate 32:272,1997を参照すること)。典型的には、患者一人当たり2〜50×10の樹状細胞を投与するが、10または10のようなさらに多くの樹状細胞をも与えられ得る。そのような細胞集団は、典型的に、50〜90%の樹状細胞を含む。
【0393】
いくつかの実施形態において、ペプチドを負荷したPBMCを、DCを精製せずに患者に注入する。例えば、ProgenipoetinTMのような薬剤で処理した後に生じたDCを含むPBMCを、DCを精製せずに患者に注射する。投与するPBMCの総数は、多くの場合、10から1010の範囲である。一般的に、患者に注射する細胞用量は、例えば特異的抗DC抗体を用いた免疫蛍光解析により測定されるような、それぞれの患者の血液中のDCのパーセンテージに基づく。従って、例えば、ProgenipoietinTMによって所定の患者の末梢血液中で2%のDCが動員され、その患者が5X106個の細胞を受容する場合、その患者はペプチドを負荷した2.5×10個のPBMCを注射される。ProgenipoietinTMなどの薬剤により動員されたDCのパーセントは、典型的に、2−10%の間と見積もられるが、当業者によって認識されるように様々であり得る。
【0394】
(エキソビボでのCTL/HTL応答活性化)
あるいは、組織培養中で、患者の、または遺伝学的に適合性のCTLまたはHTL前駆細胞を、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)源および適切な免疫原性ペプチドとともにインキュベーションすることによって、特定の腫瘍関連抗原に対するex vivoでのCTLまたはHTL応答を誘導し得る。前駆細胞が活性化されエフェクター細胞へと発達するような適切なインキュベーション時間後(典型的には7−28日)、その細胞を患者に注入して戻す。そこで、戻された細胞はそれらの特異的標的細胞、つまり腫瘍細胞を破壊(CTL)または破壊を促進(HTL)する。
【0395】
(実施例22:モチーフを持つペプチドの代替的同定法)
モチーフを持つペプチドを同定する別の方法は、規定されたMHC分子を持つ細胞からそれらを抽出することである。例えば、組織型決定に使用するEBV形質転換B細胞株は、それがどのHLA分子を発現しているのかを決定するために徹底的に特徴付けられた。ある場合では、これらの細胞はただ一つのタイプのHLA分子のみを発現する。これらの細胞を病原性生物に感染させてもよいし、これらの細胞に目的の腫瘍抗原を発現する核酸をトランスフェクトしてもよい。その後、感染の結果として(またはトランスフェクションの結果として)産生されたペプチドの内因性抗原プロセシングにより生じたペプチドが、細胞中でHLA分子と結合し、細胞表面上に運ばれ提示される。
【0396】
次に、温和な酸性条件に曝露することにより、ペプチドをHLA分子から抽出し、例えば、質量分析によって(例えば、Kuboら、J.Immunol.152:3913,1994)そのアミノ酸配列を決定する。本明細書中で開示しているように特定のHLA分子を結合する大部分のペプチドがモチーフを持つものなので、これは、細胞上で発現されている特定のHLA分子と相関したモチーフを持つペプチドを獲得するための代わりの様相である。
【0397】
あるいは、内因性HLA分子を全く発現していない細胞株に、1つのHLA対立遺伝子をコードする発現構築物をトランスフェクションし得る。そこでこれらの細胞を記述するように使用し得る、つまり、細胞表面上に提示されている病原体または目的の抗原に相当するペプチドを単離するために、これらの細胞に病原性生物を感染させてもよいし、目的の抗原をコードする核酸をトランスフェクションしてもよい。そのような分析から得たペプチドは、細胞で発現される一つのHLA対立遺伝子との結合に対応するモチーフを持つ。
【0398】
当業者により認識されるように、1を超えるHLA対立遺伝子を持つ細胞において同様の分析を行い、続いて、発現しているそれぞれのHLA対立遺伝子に特異的なペプチドを決定し得る。さらに、当業者はまた、細胞に対して抗原源を与えるために、タンパク質抗原での負荷のような、感染またはトランスフェクション以外の手段を使用し得るということも認識する。
【0399】
本発明を説明するために上記の実施例を提供するが、これはその範囲を限定するものではない。例えば、主要組織適合遺伝子複合体についてのヒトの用語、すなわちHLAを、この書類全体を通して使用する。これらの原理を他の種に同じように拡大し得ることが認識される。従って、本発明の他の改変が、当業者に対して容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲により包含される。本明細書で引用する全ての刊行物、特許および特許出願は全ての目的に対して参考として本明細書により援用される。
【0400】
【表1】
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【0401】
【表2】
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【0402】
【表3】
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【0403】
【表4】
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【0404】
【表5】
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【0405】
【表6】
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【0406】
【表7】
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【0407】
【表8】
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【0408】
【表9】
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【0409】
【表10】
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【0410】
【表11】
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【0411】
【表12】
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【0412】
【表13】
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【0413】
【表14】
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【0414】
【表15】
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【0415】
【表16】
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【0416】
【表17】
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【0417】
【表18】
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【0418】
【表19】
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【0419】
【表20】
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【0420】
【表21】
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【0421】
【表22】
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【0422】
【表23】
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【0423】
【表24】
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【0424】
【表25】
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【0425】
【表26】
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【0426】
【表27】
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【0427】
【表28】
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【0428】
【表29】
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【0429】
【表30】
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【0430】
【表31】
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Claims (34)

  1. 単離された調製された癌胎児性抗原(CEA)エピトープであって、該エピトープは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列からなる群より選択される配列からなる、エピトープ。
  2. 前記エピトープがCTLエピトープと混合しているかまたはCTLエピトープに結合している、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記CTLエピトープが請求項1にて示される群より選択される、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記エピトープがHTLエピトープと混合しているかまたはHTLエピトープに結合している、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記HTLエピトープが請求項1にて示される群より選択される、請求項4に記載の組成物。
  6. 前記HTLエピトープが汎DR結合分子である、請求項4に記載の組成物。
  7. 請求項1にて示される群より選択される少なくとも3つのエピトープを含む、請求項1に記載の組成物。
  8. リポソームをさらに含む請求項1に記載の組成物であって、前記エピトープが該リポソーム上にあるかまたは該リポソーム内にある、組成物。
  9. 前記エピトープが脂質に結合している、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記エピトープがリンカーに結合している、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記エピトープが、HLA重鎖と、β2−ミクログロブリンと、ストレプトアビジンとの複合体に結合しており、それによりテトラマーが形成されている、請求項1に記載の組成物。
  12. 抗原提示細胞をさらに含む請求項1に記載の組成物であって、前記エピトープが、該抗原提示細胞上にあるかまたは該抗原提示細胞内にある、組成物。
  13. 請求項12に記載の組成物であって、前記エピトープが前記抗原提示細胞上のHLA分子に結合しており、それにより、該HLA分子に拘束されている細胞傷害性リンパ球(CTL)が存在する場合には、該CTLのレセプターが、該HLA分子と該エピトープとの複合体に結合する、組成物。
  14. クローン性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であって、該CTLは、インビトロで培養され、そして表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、および表XXVIIにて示される群より選択されるエピトープの複合体に結合し、該複合体はHLA分子に結合している、CTL。
  15. 第1のエピトープおよび第2のエピトープを少なくとも含むペプチドであって、該第1のエピトープが、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列からなる群より選択され;
    該ペプチドは、ネイティブのペプチド配列と100%同一性を有する50個未満連続するアミノ酸を含む、ペプチド。
  16. 前記第1のエピトープおよび前記第2のエピトープが、請求項14に記載の群より選択される、請求項15に記載の組成物。
  17. 請求項15に記載の群より選択される第3のエピトープをさらに含む、請求項16に記載の組成物。
  18. 前記ペプチドがヘテロポリマーである、請求項15に記載の組成物。
  19. 前記ペプチドがホモポリマーである、請求項15に記載の組成物。
  20. 前記第2のエピトープがCTLエピトープである、請求項15に記載の組成物。
  21. 前記CTLエピトープが、CEAではない腫瘍関連抗原に由来する、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記第2のエピトープが汎DR結合分子である、請求項15に記載の組成物。
  23. 前記第1のエピトープがリンカー配列に連結されている、請求項1に記載の組成物。
  24. ワクチン組成物であって、CEAのネイティブのペプチド配列と100%同一性を有する50個未満連続するアミノ酸を含むペプチドの単位用量と;
    薬学的賦形剤とを含み、
    該ペプチドは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列からなる群より選択される第1のエピトープを少なくとも含む、ワクチン組成物。
  25. 第2のエピトープをさらに含む、請求項24に記載のワクチン組成物。
  26. 前記第2のエピトープが汎DR結合分子である、請求項24に記載のワクチン組成物。
  27. 前記薬学的賦形剤がアジュバントを含む、請求項24に記載のワクチン組成物。
  28. ペプチドをコードする単離された核酸であって、該ペプチドは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列からなる群より選択される配列からなるエピトープを含む、単離された核酸。
  29. ペプチドをコードする単離された核酸であって、該ペプチドは、第1のエピトープおよび第2のエピトープを少なくとも含み、該第1のエピトープは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列からなる群より選択され;
    該ペプチドは、ネイティブのペプチド配列と100%同一性を有する50個未満連続するアミノ酸を含む、単離された核酸。
  30. 前記ペプチドは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列から選択される少なくとも2つのエピトープを含む、請求項29に記載の単離された核酸。
  31. 前記ペプチドは、表XXIII、表XXIV、表XXV、表XXVI、表XXVIIおよび表XXXIにて示される配列から選択される少なくとも3つのエピトープを含む、請求項30に記載の単離された核酸。
  32. 前記第2のペプチドがCTLエピトープである、請求項29に記載の単離された核酸。
  33. 前記CTLが、CEAではない腫瘍関連抗原に由来する、請求項32に記載の単離された核酸。
  34. 前記第2のペプチドがHTLエピトープである、請求項20に記載の単離された核酸。
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