JP3616273B2 - 加熱調理器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は電子レンジ、オーブンレンジなどの加熱調理器に関し、特に、加熱のための熱エネルギーが有効利用される加熱調理器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のオーブンレンジなどでは、冷却ファンによってキャビネット外の室内空気を給気口から取入れてマグネトロン、高圧トランスおよびオーブン本体などを冷却した後に、一部空気はキャビネット外部へ排出され一部空気はオーブン内に流入する。高級な機種になると、給気口にダンパが配置されて、オーブン加熱時には該ダンパを閉めることにより、冷却ファンで制御回路ユニットなどを冷却しながら冷却ファンから送られる冷たい空気の加熱室内への供給を制限している。
【0003】
上述したように、ダンパを用いて空気流路の切換が行なわれた加熱調理器としては、たとえば実開昭62−162502号公報、実開昭62−141102号公報、特開平8−31561号公報および特開平7−42949号公報に示されるものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、加熱調理時に冷却ファンによって給気口からオーブン内に供給された空気は、オーブン内のヒータなどで加熱された後、調理物から生成される水蒸気、匂い、油煙などとともに排気口から外部に圧送排出されるだけであるから、加熱室内で加熱されて得たエンタルピー(顕熱および潜熱)は外部にそのまま捨てられている。このとき、排気口から外部に放出される最大熱量は市販のオーブンレンジにおける全放熱量の20%にも及び、非効率的でエネルギーロスが大きい。高級機種における給気口のダンパ閉鎖による冷気の侵入制限においては、排気口からの放熱量の低減効果はあるが、調理物から発生する匂い、油煙、ガスなどが加熱室内に滞留し調理物に悪影響を及ぼすから、ユーザによっては調理の仕上がり状態に不満を抱く場合もあった。
【0005】
それゆえにこの発明の目的は、加熱のための熱エネルギーを有効利用できる加熱調理器を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、調理の仕上がり状態に優れる加熱調理器を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の加熱調理器は、調理器本体に内蔵されて調理物が収容される加熱室の内部を加熱するために駆動される加熱手段と、調理器本体の外部の気流を外部から加熱室の内部に通じる供給路を介して圧送して加熱室の内部に供給する給気手段と、加熱室の内部で加熱された気流を加熱室の内部から外部に通じる排出路を介して圧送して外部に排出する排出手段と、供給路および排出路の途中に設けられて、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流との間で熱交換するための熱交換手段と、熱交換手段の排出路を通過する気流の出口側に、当該気流を圧送排出するために駆動される排気ファンとを備える。熱交換手段により交換される熱は顕熱または全熱の一方であり、熱交換手段により顕熱または全熱が交換される場合に加熱調理においては、排気ファンは熱交換手段の温度が100℃以上であるときは停止され100℃未満であるときは駆動される。
【0008】
請求項1によれば、熱交換手段において加熱室内から排出される加熱された気流と加熱室内に外部から供給される冷めた気流との間で熱交換が行なわれることにより、排出される気流の熱は加熱室内に供給される気流に回収される。
【0009】
したがって、本来排出されていた熱量を加熱室内に再度与えて加熱調理に利用できるから熱エネルギーを有効に利用できる。また、加熱調理中に調理物から発生した油煙や臭いの成分は排出手段により外部に排気されるから、加熱調理中にこれら成分が加熱室内に滞留して調理物に悪影響が及ぼされることがなくなって、ユーザが満足する調理の仕上がり状態を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の加熱調理器は、請求項1に記載の加熱調理器において排出路を通過して圧送排出される気流の量は、供給路を通過して圧送供給される気流の量以上である。
【0011】
請求項2によれば排出される気流の量は供給される気流の量以上であるから、加熱室内を負圧状態にできて加熱室の隙間または本体の隙間から加熱室内の熱が外部に漏れることが防止されて、熱交換手段にて効率よく熱交換できる。
【0012】
また、このように負圧状態とされることによりこれらの隙間を介して調理物から発生した油煙、結露水分が漏れることも防止されて使用性に優れる。
【0013】
請求項3に記載の加熱調理器は、請求項1または2に記載の加熱調理器において熱交換手段が、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが接触する面状の熱交換媒体を有する。そして、熱交換手段においては、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが熱交換媒体を間に介して略直交して通過する。
【0014】
請求項3によれば供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが熱交換媒体を間に介して略直交して通過するから、可動部なしで熱交換面積を大きくした状態で熱交換できて熱交換手段の小型化、ひいては加熱調理器の小型化が可能となる。
【0015】
請求項1または2に記載の加熱調理器における熱交換手段は、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが接触する面状の熱交換媒体を有し、熱交換手段においては、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが熱交換媒体を間に介して対向して通過するよう構成されてもよい。
【0016】
請求項1または2に記載の加熱調理器における熱交換手段は、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが接触する面状の熱交換媒体を有し、熱交換手段においては、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とが熱交換媒体を間に介して同一方向に並行して通過するよう構成されてもよい。
【0017】
請求項1または2に記載の加熱調理器における熱交換手段は、同心円状に回転する面状の熱交換媒体を有し、供給路を通過する気流と排出路を通過する気流とは回転する熱交換媒体に対向するように入射して通過する。
【0018】
上述のように熱交換媒体が回転しながら熱交換が行なわれるから効率的に熱交換が行なわれる。
【0019】
請求項4に記載の加熱調理器は、請求項に記載の加熱調理器において熱交換媒体の表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去手段をさらに備える。
【0020】
請求項4によれば、汚れ除去手段により熱交換媒体の表面に付着した汚れを除去できるから、排出気流に含まれていた油成分が熱交換媒体の表面に付着して熱交換効率が低下することが防止されて、安定して熱交換効率を維持できる。
【0021】
請求項5に記載の加熱調理器は、請求項4に記載の加熱調理器において熱交換媒体の表面に予め担持された熱触媒と、熱交換媒体の表面温度を所定温度にまで上昇させるために加熱手段を駆動する加熱駆動手段とを備える。
【0022】
請求項5によれば、熱交換媒体の表面には予め熱触媒が担持された状態で表面を所定温度にまで加熱することにより、触媒反応により表面に付着した油汚れなどの有機物が分解されて表面から除去される。したがって、熱交換媒体の表面に汚れが付着して熱交換効率が低下することが防止されて、安定して熱交換効率を維持できる。
【0023】
また、熱触媒が用いられることで、熱触媒を用いずに油汚れを加熱手段を用いて分解する場合に比較して表面温度が低くても分解を良好に進行させることができるから省エネルギー効果がある。
【0024】
請求項6に記載の加熱調理器は、請求項5に記載の加熱調理器において熱触媒は、貴金属系酸化触媒および金属酸化物系酸化触媒の少なくとも一方である。
【0025】
請求項6によれば、熱交換媒体の表面には予め貴金属系酸化触媒および金属酸化物系酸化触媒の少なくとも一方が担持された状態で表面を所定温度にまで加熱することにより、触媒反応により表面に付着した油汚れなどの有機物が分解されて表面から除去される。したがって、熱交換媒体の表面に汚れが付着して熱交換効率が低下することが防止されて、安定して熱交換効率を維持できる。
【0026】
また、これら触媒が用いられることで、触媒を用いずに油汚れを加熱手段を用いて分解する場合に比較して表面温度が低くても分解を良好に進行させることができるから省エネルギー効果がある。
【0027】
請求項7に記載の加熱調理器は、請求項4に記載の加熱調理器の汚れ除去手段は、熱交換媒体の表面に予め担持される光触媒と、熱交換媒体の表面に光線を照射するための光照射手段とを備える。
【0028】
請求項7によれば、熱交換媒体の表面には予め光触媒が担持された状態で表面に光が照射されることにより、光触媒反応により表面に付着した油汚れなどの有機物が分解されて表面から除去される。したがって、熱交換媒体の表面に汚れが付着して熱交換効率が低下することが防止されて、安定して熱交換効率を維持できる。
【0029】
また、光触媒が用いられることで、表面温度が常温であっても分解を良好に進行させることができるから省エネルギー効果がある。
【0031】
請求項によれば熱交換手段の排出路を通過する気流の出口側に、当該気流を圧送排出するために駆動される排気ファンが設けられるから、加熱室内に隙間があっても熱交換手段を通過する排出気流の量を、供給気流の量以上と調整することが簡単にできる。したがって、熱交換手段にて効率のよい熱交換を行なわせることが容易にできる。
【0033】
請求項によれば、排出される気流に含まれる顕熱または潜熱(たとえば調理物から発生した蒸気の潜熱)が加熱室内に供給される気流に回収される。
【0034】
したがって、本来排出されていた熱量または水分を加熱室内に再度与えて加熱調理に利用できるからエネルギーを有効に利用できる。
【0035】
また、調理物の解凍時には周囲の蒸気の潜熱により均一に、かつ加熱室内の熱量も増すので短時間のうちに解凍できる。
【0036】
また、野菜などの調理物を茹でるような加熱調理時には、調理物を誦しフィルムなどで覆わなくとも周囲の蒸気の潜熱により良好に、かつ加熱室内の熱量も増すので短時間のうちに茹で上げることができる。
【0037】
請求項に記載の加熱調理器において顕熱と潜熱を含む全熱交換がされる場合には熱交換媒体は吸湿性材料からなる。
【0039】
請求項によれば熱交換手段の温度に基づいて排気ファンの駆動を制御して、熱交換素子における熱交換効率を適正に維持できる。したがって、加熱調理の加熱条件に応じて熱交換効率が適正となるように切替ることができて、安定して高い熱交換効率を維持できる。
【0040】
請求項に記載の加熱調理器において、加熱手段の加熱モードはオーブン加熱モードとレンジ加熱モードとを有して、熱交換手段により顕熱または全熱が交換される場合には、排気ファンはオーブン加熱モードにおいては停止されレンジ加熱モードにおいては駆動されるようにしてもよい。
【0041】
したがって、加熱調理器の加熱モードに応じて熱交換手段における熱交換効率が適性となるように切替えることができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の実施の形態によるオーブンレンジの一部内部構造が示された外観斜視図である。図2(A)と(B)は、図1のX−Z面とY−Z面から見たオーブンレンジの断面構造をそれぞれ示す図である。
【0043】
図1と図2(A)および(B)においてオーブンレンジは調理物が載置されるターンテーブル10を底部に有する加熱室4を内蔵した本体1を備える。本体1の前面にはユーザにより取っ手3を持って操作されるドア2が加熱室4を開閉自在とするように取付けられる。加熱室4の外部底面にはターンテーブル10を回転保持するためのターンテーブルモータ9が設けられ、加熱室4の上面と底面には調理物を加熱するための上ヒータ7としたヒータ8が設けられる。
【0044】
また、加熱調理のためのマイクロ波を加熱室4内部に供給するために導波管12とマグネトロン11が設けられる。また、加熱室4の壁面には給気孔5と排気孔6が形成され、オーブンレンジに関連して加熱室4内に外部の空気を圧送して供給するために設けられる給気ファンである冷却ファン14、給気送風口21、給気部15および給気ダクト16が設けられ、加熱室4内の空気を外部に圧送して排出するための排気ダクト18、排気吹出し口22、排気口19および排気ファン20が設けられる。また、排気ダクト18を通過する排気と給気ダクト16を通過する給気との間で熱交換を行なうための熱交換素子17が設けられる。
【0045】
冷却ファン14は当該オーブンレンジの電装部品およびシステム全体を冷却するために外部空気を送風(供給)するためのファンである。冷却ファン14により給気部15から吸引された本体1外部の冷気は給気送風口21からマグネトロン11に送風されてマグネトロン11を冷却した後に、給気ダクト16を通過して熱交換素子17を通り加熱室4の壁面に形成された給気孔5から加熱室4内部に流入する。
【0046】
一方、加熱室4内の空気は排気ファン20によって吸引されて加熱室4の壁面に形成された排気孔6から加熱室4外部に排気されて、排気ダクト18および熱交換素子17を通過した後に、排気吹出し口22から本体1の側面に設けられた排気口19を介して本体1外部に排出される。
【0047】
給気ダクト16と排気ダクト18とは図1ならびに図2(A)および(B)に示されるように略十字形を形成し、この両ダクトの交差部分において熱交換素子17が配設される。
【0048】
図3は、図1ならびに図2(A)および(B)に示される熱交換素子17の構成を示す図である。熱交換素子17は給気ダクト16と排気ダクト18とが略直交する部分において配設されるので、ここでは直交流型熱交換素子と呼ぶ。直交流型熱交換素子17は吸湿性を有した複数枚の波板WBと吸湿性を有した平板である複数枚の隔板SBとを交互に積層してなり、排気ダクト18を通過する気流と給気ダクト16を通過する気流とが熱交換素子17を直交するように通過する時、両気流の間で顕熱と潜熱とが同時に交換されるよう作用する、いわゆる全熱交換素子である。
【0049】
なお、熱交換素子17を波板WBと隔板SBが吸湿性のない金属板または耐熱性樹脂板で構成されて上述の両気流間で顕熱のみ交換されるような、顕熱交換素子としてもよい。ただし、このように構成された場合には顕熱のみ交換可能であるから、両気流間で水蒸気による水分や潜熱の交換は不可能となる。
【0050】
図4、図5および図6はこの発明の実施の形態に適用できる熱交換素子の他の第1例、他の第2例および他の第3例をそれぞれ示す図である。
【0051】
図4の熱交換素子17Aは波板WBを境にして二分された筒状の空間を有し、一方空間には給気ダクト16の気流が通過し、他方空間には給気ダクト16の気流と対向するようにして排気ダクト18の気流が通過することで波板WBを介して両気流間で熱交換が行なわれるから、ここでは図3の熱交換素子17Aを対向流型熱交換素子と呼ぶ。
【0052】
図5の熱交換素子17Bは、図4の熱交換素子17Aと同様な構造を有して一方空間には給気ダクト16の気流が通過し、他方空間には給気ダクト16の気流と並行するようにして排気ダクト18の気流が通過することにより波板WBを介して両気流間で熱交換が行なわれるので、ここでは図5の熱交換素子17Bを並行流型熱交換素子と呼ぶ。
【0053】
図6の熱交換素子17Cはモータ23と、モータ23の回転運動がベルトなどを介して伝達されることにより回転する回転子(ロータ)24からなる。回転子(ロータ)24は全体が熱交換素子であって、図示されないが波板WBと隔板SBとが同心円状に交互に巻かれてハニカム構造を形成する。
【0054】
回転子(ロータ)24には給気ダクト16を通過する気流と排気ダクト18を通過する気流とが回転する回転子(ロータ)24に対向するように入射して通過する時に回転子(ロータ)24を介して両気流間で熱交換が行なわれるので、ここでは図6の熱交換素子17Cを回転型熱交換素子と呼ぶ。
【0055】
一般に知られているように、熱交換素子に回転型熱交換素子を用いることにより直交流型熱交換素子を用いる場合よりも顕熱および潜熱の交換効率に優れる。
【0056】
また、加熱調理時に調理物から発生する油煙が排気ダクト18を通過する気流に混入して、図3ないし図6の熱交換素子を構成する波板WBおよび隔板SBの表面に当該油煙による汚れが付着するので、これら表面での熱交換および水分の交換が油汚れで阻害される。当該油汚れである有機物を表面にて炭酸ガスと水に酸化分解して除去するためには表面温度を500℃以上となるように高温で加熱する必要があり熱交換素子の耐熱性に悪影響を与えると共に電力消費量が多くなり経済的でない。そこで、ここでは、表面温度が比較的に低温でも油汚れの酸化分解作用を効率的に進めるために熱触媒が予めこれら表面に担持される。そして付着した油汚れは空焼きなどによりこれら表面温度を約300℃に上げるだけで酸化分解して除去される。これにより、当該熱交換素子における熱および水分の交換効率が低下することはない。また、前述の触媒により加熱調理中に排気ダクト18を通過する気流を、混入している油成分および匂い成分を分解してクリーンな状態で排気できる。
【0057】
なお、上述したように熱作用に用いられて性能に優れる熱触媒としては例えばPt(白金)、Pd(パラジウム)などで代表される貴金属系酸化触媒または酸化マンガン、酸化銅などで代表される金属酸化物系酸化触媒がある。波板WBおよび隔板SBの表面には貴金属系酸化触媒および金属酸化物系酸化触媒の少なくともいずれか一方が担持される。
【0058】
このように、加熱調理時には、熱交換素子17により、調理物から発生する油煙、匂いは排気されないから新鮮な空気を加熱室4内に供給しながら排気中の熱(顕熱または潜熱)または水分を給気中に回収することができるから、加熱調理に関し使用性の向上と省エネルギー効果を図ることができる。
【0059】
なお、上述の空焼きとは、加熱室4内に調理物を入れない状態である無負荷の状態で上下ヒータ7および8を用いてオーブン加熱を行ない、加熱室4内および熱交換素子17自体の温度を、汚れである有機物を酸化触媒を用いて酸化分解することのできる温度にまで上昇させることをいう。
【0060】
また、図1に示されるように、熱交換素子17は、その中心が排気ダクト18を通過する気流の最下流(排気ファン20側)よりも上流側に位置するよう設けられているから、空焼きにおいては、熱交換素子17に熱が滞留しやすくその温度を効果的に上昇させることができる。
【0061】
ここでは、酸化触媒としては上述の熱触媒に限定されず光触媒が用いられても良い。つまり熱交換素子17の波板WBまたは隔板SBの表面に光触媒を予め担持して、図示されないが紫外線発光ランプを紫外線光がこれら表面に照射されるように熱交換素子付近に取付けてもよい。これにより加熱調理時に調理物から発生して排気ダクト18を通過する排気中に混入する油成分などがこれら表面に付着して汚染されたとしても、光触媒に紫外線光が照射されることにより波板WBまたは隔板SBの表面における水分から活性酸素(OHラジカルとスーパオキサイドアニオン)が生成されて、表面に付着した油汚れは活性酸素によって常温で分解されて除去される。なお、上述の光触媒としてはたとえば酸化チタン(TiO)がある。
【0062】
上述した直交流型熱交換素子17、対向流型熱交換素子17A、並行流型熱交換素子17Bおよび回転型熱交換素子17Cは、いずれも全熱交換素子ともなり得るし顕熱交換素子ともなり得る。
【0063】
さて、実際に加熱調理器に搭載するためには熱交換素子17自体のサイズが小さく、かつ給気と排気の接触面積が大きいものが望ましい。このことを考慮すると、直交流型熱交換素子17および回転型熱交換素子17Cを採用するのが好ましく、そのうち最も好ましいのは回転型熱交換素子17Cのように可動部なしで装置のコンパクト化が図られながらも給気と排気の接触面積が大きく熱交換効率に優れる直交流型熱交換素子17である。
【0064】
図1および図2(A)と(B)を参照して、たとえばオーブン加熱モード時には、排気ファン20を停止させ、冷却ファン14を運転しながらヒータ7と8への通電によって加熱室4内が加熱されてターンテーブル10上に載せられた調理物が加熱される。このとき、排気孔6から排気ダクト18へ流出する気流による温風は全熱交換素子17において顕熱を奪われ、その温度を下げて排気口19から本体1の外部へ排出される。一方、給気部15から供給されて給気ダクト16に流入する気流は全熱交換素子17において排気ダクト18を通過する気流から顕熱を回収してその温度を上昇させ、給気孔5から加熱室4内に供給される。
【0065】
レンジ加熱モード時には、排気ファン20が運転される。そして、マグネトロン11から供給されるマイクロ波は導波管12を通って加熱室4内に照射されるのでターンテーブル10上に載せられた調理物は、これを吸収して加熱される。このとき調理物から生じる水分(水蒸気)は、排気孔6から排気ダクト18へ流出して全熱交換素子17を通過する際に吸湿されてその湿度が下げられて排気口19から本体1の外部へ排出される。一方、給気部15から供給されて給気ダクト16に流入する気流は、全熱交換素子17において排気ダクト18を通過する気流から水分を回収して湿度を上げ、給気孔5から加熱室4内に供給される。
【0066】
図7および図8のそれぞれは、図1のオーブンレンジにおけるオーブン加熱モード時の温度効率および加熱室内温度をそれぞれ示す図である。図7には、寸法50×50×50(mm)、200(セル/in)の直交流型全熱交換素子17を組込んだ場合において、上ヒータ7と下ヒータ8の出力を合計800(W)として水を負荷(加熱対象)とした場合のオーブン加熱時の温度効率が示され、図8にはそのときの加熱室4内の中空温度が示される。
【0067】
図7には縦軸に熱交換素子17における温度効率(単位:%)がとられ横軸に冷却ファン14による冷却能力、すなわち給気量を示す冷却ファン供給電圧(単位:V)が示される。図8には縦軸に加熱室4内の中空温度(単位:℃)がとられ横軸には冷却ファン14の供給電圧(単位:V)が示される。なお、図7の温度効率は温度効率=(熱交換素子の給気入口温度−熱交換素子の給気出口温度)/(熱交換素子の給気入口温度−熱交換素子の排気入口温度)とが示される。
【0068】
オーブン加熱モード時には図7に示されるように排気ファン20により排気風量が大きくなるほど温度効率はよくなるが、図7では排気ファン20がない場合(停止している場合)が加熱室4内の温度が最も高くなり、加熱室4内において熱エネルギーが最も良好に滞留している状態、すなわち省エネルギーの状態であることがわかる。この状態においては、実験によれば熱交換素子17自体の温度が100℃以上となっているので、熱交換素子17における水分の蒸発が盛んとなり熱交換素子17における水分の吸着程度が低くなり湿度効率は低下する。言換えれば、オーブン加熱モードでは排気中の顕熱を給気中に高い効率で回収することができる。
【0069】
なお、上述の湿度効率は湿度効率=(熱交換素子の給気入口絶対湿度−熱交換素子の給気出口絶対湿度)/(熱交換素子の給気入口絶対湿度−熱交換素子の排気入口絶対湿度)で示される。
【0070】
図9ないし図11のそれぞれは、図1のオーブンレンジにおけるレンジ加熱モード時の温度効率、湿度効率および全熱(エンタルピー)効率をそれぞれ示す図である。なお、全熱(エンタルピー)効率は全熱効率=(熱交換素子の給気入口エンタルピー−熱交換素子の給気出口エンタルピー)/(熱交換素子の給気入口エンタルピー−熱交換素子の排気入口エンタルピー)で示される。
【0071】
図9には図7で示されたのと同じ直交流型全熱交換素子17を組込んだ場合において、水負荷を300Wによるマイクロ波でレンジ加熱した場合の温度効率が示され、図10にはそのときの湿度効率が示され、図11には全熱(エンタルピー)効率が示される。
【0072】
レンジ加熱モードでは、図9〜図11に示されるように排気ファン20により排気風量が多くなるほど全熱交換素子17における温度効率、湿度効率および全熱効率は高くなる。つまり、レンジ加熱モードでは、全熱交換素子17において排気ダクト18を通過して加熱室4内部から外部に排出される排気中の顕熱と潜熱を高効率で給気ダクト16を通過して加熱室4内部に供給され給気中に回収することができる。すなわち、レンジ加熱モードでは全熱(エンタルピー)効率が高く省エネルギーが図られる。したがって、レンジ加熱モードでは加熱室4内の熱容量が増加して調理物に対する加熱能力が向上し、また加熱室4内の雰囲気中の蒸気が有する多くの潜熱を利用することもできる。したがって、冷凍された調理物であってもこの潜熱を利用して均一に素早く解凍できるし、また樹脂フィルムで覆わなくとも野菜を上手に茹で上げることができる。
【0073】
また熱交換素子17の排気出口の下流に排気ファン20が配設されているので、加熱室4の壁面に隙間が多くあっても熱交換素子17における給気風量と排気風量をほぼ等しくすることができて、熱交換素子17における温度効率、湿度効率および全熱効率を大きくすることができる。つまり、排気ファン20が設けられない場合は、給気ファンである冷却ファン14により加熱室4内部に空気を押し込めるだけの状態となるから、加熱室4の壁面の隙間から熱が逃げてしまい熱交換素子17における風量に関して(給気風量>排気風量)の状態となって熱交換に関する温度効率、湿度効率および全熱効率を向上させることはできない。そこで、排気ファン20を熱交換素子17の排気出口の下流に配設して排気風量≧給気風量となるように駆動することにより、熱交換素子17における温度効率、湿度効率および全熱効率を大きくすることができる。また、排気ファン20による排気風量を冷却ファン14による給気風量よりも若干多くすることで、加熱室4内をわずかに負圧状態とすることができて、ドア2周辺の隙間から加熱調理時の油煙および結露した水分が漏れたりするのも防止できる。
【0074】
図7〜図11を参照して説明したように、レンジ加熱モードのように加熱調理中の全熱交換素子17の温度が100℃以下である場合には排気ファン20を運転し、オーブン加熱モードのように加熱調理中の全熱交換素子17の温度が100℃以上となる場合には排気ファン20を停止させることにより、各モードにおける熱交換素子17の温度効率、湿度効率および全熱効率が最大となり、効果的に省エネルギーを図ることができる。
【0075】
図12はこの発明の実施の形態によるオーブンレンジにおける排気ファン運転制御処理のフローチャートである。図12のフローチャートは該オーブンレンジに内蔵される図示されないマイクロコンピュータのメモリにプログラムとして登録されてCPUの制御の下で実行される。つまり、CPUはオーブンレンジの運転時に熱交換素子17自体の温度が100℃以上に達したか判定し(S1)、100℃以上と判定すれば排気ファン20を停止状態として(S2)加熱室4内温度を効率的に高め、100℃以上でないと判定すれば排気ファン20を運転状態とし(S3)、排気量を多くして熱交換素子17にて加熱室4内への給気中に排気中から顕熱と潜熱を高い効率で回収して加熱室4内における顕熱量および潜熱量を効率的に高める。
【0076】
なお図12のフローチャートにてCPUによる熱交換素子17の温度が100℃以上であるか否かの判断は、熱交換素子17自体の温度を検出するセンサを設けてそのセンサ出力に基づいて行なうようにしてもよく、また当該オーブンレンジの運転モード(レンジ加熱モードまたはオーブン加熱モード)に基づいて行なうようにしてもよく、その判断方法は限定されない。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態によるオーブンレンジの一部内部構造が示された外観斜視図である。
【図2】(A)と(B)は、図1のX−Z面とY−Z面から見たオーブンレンジの断面構造をそれぞれ示す図である。
【図3】図1ならびに図2(A)および(B)で示される熱交換素子の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態に適用できる熱交換素子の他の第1例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態に適用できる熱交換素子の他の第2例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態に適用できる熱交換素子の他の第3例を示す図である。
【図7】図1のオーブンレンジにおけるオーブン加熱モード時の温度効率を示す図である。
【図8】図1のオーブンレンジにおけるオーブン加熱モード時の加熱室内温度を示す図である。
【図9】図1のオーブンレンジにおけるレンジ加熱モード時の温度効率を示す図である。
【図10】図1のオーブンレンジにおけるレンジ加熱モード時の湿度効率を示す図である。
【図11】図1のオーブンレンジにおけるレンジ加熱モード時の全熱(エンタルピー)効率を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態によるオーブンレンジにおける排気ファン運転制御処理のフローチャートである。
【符号の説明】
4 加熱室
14 冷却ファン(給気ファン)
16 給気ダクト
17、17A、17B、17C 熱交換素子
18 排気ダクト
20 排気ファン
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (7)

  1. 調理器本体に内蔵されて調理物が収容される加熱室の内部を加熱するために駆動される加熱手段と、
    前記調理器本体の外部の気流を前記外部から前記加熱室の内部に通じる供給路を介して圧送して前記加熱室の内部に供給する給気手段と、
    前記加熱室の内部で加熱された気流を前記加熱室の内部から前記外部に通じる排出路を介して圧送して前記外部に排出する排出手段と、
    前記供給路および前記排出路の途中に設けられて、前記供給路を通過する前記気流と前記排出路を通過する前記気流との間で熱交換するための熱交換手段と
    前記熱交換手段の前記排出路を通過する前記気流の出口側に、当該気流を圧送排出するために駆動される排気ファンをさらに備え、
    前記熱交換手段により交換される熱は、顕熱または全熱の一方であり、
    前記熱交換手段により前記顕熱または前記全熱が交換される場合に、加熱調理において前記排気ファンは前記熱交換手段の温度が100℃以上であるときは停止され100℃未満であるときは駆動される、加熱調理器。
  2. 前記排出路を通過して圧送排出される前記気流の量は、前記供給路を通過して圧送供給される前記気流の量以上である、請求項1に記載の加熱調理器。
  3. 前記熱交換手段は、前記供給路を通過する前記気流と前記排出路を通過する前記気流とが接触する面状の熱交換媒体を有し、
    前記熱交換手段においては、前記供給路を通過する前記気流と前記排出路を通過する前記気流とが前記熱交換媒体を間に介して略直交して通過する、請求項1または2に記載の加熱調理器。
  4. 前記熱交換媒体の表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去手段をさらに備える、請求項に記載の加熱調理器。
  5. 前記汚れ除去手段は、
    前記熱交換媒体の表面に予め担持された熱触媒と、
    前記熱交換媒体の表面温度を所定温度にまで上昇させるために前記加熱手段を駆動する加熱駆動手段とを備える、請求項4に記載の加熱調理器。
  6. 前記熱触媒は、貴金属系酸化触媒および金属酸化物系酸化触媒の少なくとも一方である、請求項5に記載の加熱調理器。
  7. 前記汚れ除去手段は、
    前記熱交換媒体の表面に予め担持される光触媒と、
    前記熱交換媒体の表面に光線を照射するための光照射手段とを備える、請求項4に記載の加熱調理器。
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