JP3615881B2 - 自動車タイヤ用内装材及び自動車タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車タイヤ、特にラジコンカー用タイヤ、レースカー用タイヤ等の競走用自動車タイヤのグリップ力及び直進安定性を向上させるための内装材およびその内装材が一体化された自動車タイヤに関する。
【0002】
なお、この明細書において、「自動車タイヤ」の語は、一般自動車用タイヤのみならず、ラジコンカー用タイヤ、レースカー用タイヤ等、全ての自動車用タイヤを包含する意味で用いる。
【0003】
【従来の技術】
例えば、ラジコンカー用、レースカー用として、トレッドパターンのないスリックタイヤが使用されている。スリックタイヤは、トレッドと路面との接触面積が大きく、大きなグリップ力が得られるから、特にカーブでの走行安定性に優れ、より高速でのカーブ走行を可能とできるからである。
【0004】
一方、公道を走る一般自動車用タイヤとしては、駆動性、旋回性、乗り心地、騒音、摩耗、安全性等総合的な観点から、種々のトレッドパターンを有するタイヤが一般に使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記スリックタイヤは、主に競走用として使用されるため、より高速での安定したカーブ走行を可能とさせるべく、更なるグリップ力の向上が強く要求されている。また、直進安定性についても一層向上させることが要求されている。
【0006】
また、上記要求はスリックタイヤに限られたものではなく、一般自動車用タイヤにおいても同様であり、特に安全性の観点から、一層のグリップ力及び直進安定性の向上が望まれている。
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、自動車タイヤのグリップ力及び直進安定性を向上させうる内装材およびグリップ力及び直進安定性に優れた自動車タイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、帯状環状体に形成された、特定の物性を有するゴム発泡体または合成樹脂発泡体を自動車タイヤに内装することにより、グリップ力及び直進安定性を向上しうることを見出すに至り、本発明を完成したものである。
【0009】
即ち、請求項1の発明にかかる自動車タイヤ用内装材は、見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm2 、破断伸びが150〜400%の特性を有するゴム発泡体からなる帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、上記請求項1の自動車タイヤ用内装材において、ゴム発泡体が天然ゴム発泡体である構成を採用したものである。
【0011】
請求項3の発明にかかる自動車タイヤ用内装材は、見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm2 、破断伸びが150〜400%の特性を有する合成樹脂発泡体からなる帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明にかかる自動車タイヤは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車タイヤ用内装材がタイヤ内周面に積層一体化されていることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の自動車タイヤ用内装材(1)の材質としては、ゴム発泡体または合成樹脂発泡体が用いられ、上記ゴム発泡体としては、特に限定されるものではないが、天然ゴム、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリクロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム等が挙げられ、中でも天然ゴムが好適に用いられる。また上記合成樹脂発泡体としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン、ポリスチレン、ABS樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記発泡体には、諸性質の向上を目的として、安定剤、酸化防止剤、着色剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0015】
この発明において、前記発泡体は、見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm2 の特性を有する必要がある。上記2特性の内、1つでも上記範囲を逸脱すると、この発明の効果が達成されない。
【0016】
中でも、見掛比重は0.30〜0.45、25%歪み時の圧縮応力は40〜600g/cm2 であることが好ましい。
【0017】
前記発泡体の破断伸びは150〜400%である必要がある。150%未満あるいは400%を超えるとグリップ力向上の効果が十分に得られない。
【0018】
また、前記発泡体の常温永久歪(50%ひずみ×22時間)は、5〜30%であることが好ましく、加熱永久歪(50%ひずみ×70℃22時間)は、45〜80%であることが好ましい。また、前記発泡体のスポンジ硬度は、5〜40°であることが好ましい。
【0019】
この発明の自動車タイヤ用内装材(1)は、上記特性を有する発泡体からなる帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなるものである。前記環状形状は、円形であることが好ましいが、特に円形形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形状であっても良い。
【0020】
前記帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されていることによりタイヤ内周面(2a)との摩擦による発泡体の摩耗を防止することができる。
【0021】
内装材(1)の横断面形状は矩形状あるいはこれに近似する形状であることが好ましい。特に内装材の外周面(1a)側は高速回転時にタイヤの内周面(2a)に可能なかぎり均一に当接させることが好ましいから、内装材の外周面(1a)形状は、タイヤの内周面(2a)形状に適合する形状であることが好ましい。
【0022】
内装材(1)の幅は内装対象となるタイヤ(2)の幅の20%〜100%に設定することが好ましく、中でも60%〜90%に設定することがより好ましい。20%未満ではグリップ力向上の効果が十分に得られず、好ましくない。
【0023】
また、内装材(1)の厚さは内装対象となるタイヤ(2)厚さの1倍〜5倍であることが好ましく、中でも1.5〜3倍であることが好ましい。1倍未満あるいは5倍を超えるとグリップ力向上の効果が十分に得られなくなる。
【0024】
内装材(1)の外周長さを設定するに際しては、図2(ロ)に示すように、内装材(1)の外周長さをタイヤ(3)の内周長さより僅かに小さく設定し、静止時の内装状態において、内装材の外周面(1a)とタイヤの内周面(2a)との間に隙間が生じるようにしても良いし、あるいは内装材(1)の外周長さを内装対象となるタイヤ(3)の内周長さと同等長さに設定して内装材の外周面(1a)がタイヤの内周面(2a)に当接するようにしても良い。ただし、タイヤ(2)を高速回転状態にした時に内装材(1)が膨脹して内装材の外周面(1a)がタイヤの内周面(2a)に当接するものでなければ、この発明の効果が得られないので、高速回転時に内装材の外周面(1a)がタイヤの内周面(2a)に当接し得るように内装材(1)の外周長さを設定する必要がある。
【0025】
一方、ホイール(3)に対しても同様で、静止時において、内装材内周面(1b)がホイール外周面(3a)のリブ(3b)に当接するように設計しても良いし、あるいは内装材内周面(1b)とホイール外周面(3a)のリブ(3b)との間に隙間が生じるように設計しても良い。
【0026】
この発明に係る内装材(1)を自動車タイヤ(3)に内装することにより、グリップ力及び直進安定性が向上する理由は定かではないが、タイヤ(3)の高速回転状態において、遠心力により内装材(1)が膨脹してタイヤ(3)の内側に強く圧接することにより、タイヤ(3)の路面に対する接地圧が大きくなるためと推定される。
【0027】
また、この発明に係る自動車タイヤは、前記内装材(1)がタイヤ内周面(2a)に積層一体化されてなるものであるが、その一体化の方法としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタンゴム系接着剤、ブチルゴム系接着剤、シリコーンゴム系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等の合成ゴム系接着剤等による接着が挙げられる。
【0028】
【実施例】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0029】
<比較例4、比較例2〜3>
天然ゴムを発泡成形して、表1に示す特性を有する天然ゴム発泡体からなる内装材(幅22mm、厚さ5mm、外径60mmの帯状環状体)を得た。
【0030】
<実施例1>
ポリクロロプレンゴムを発泡成形して、表1に示す特性を有するポリクロロプレンゴム発泡体からなる帯状環状体(幅22mm、厚さ5mm、外径60mm)を得、この表面に厚さ0.3mmの非発泡クロロプレンゴムを一体化して、内装材を得た。
【0031】
<比較例5>
ポリスチレン樹脂を発泡成形して、表1に示す特性を有するポリスチレン樹脂発泡体からなる内装材(幅22mm、厚さ5mm、外径60mm)を得た。
【0032】
<実施例2>
ポリウレタン樹脂を発泡成形して、表1に示す特性を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる帯状環状体(幅22mm、厚さ5mm、外径60mm)を得、この表面に厚さ0.3mmの非発泡クロロプレンゴムを一体化して、内装材を得た。
【0033】
<比較例1>
ポリウレタン樹脂を発泡成形して、表1に示す特性を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる内装材(幅22mm、厚さ5mm、外径60mm)を得た(従来より一般に使用されている内装材である)。
【0034】
<試験方法および評価方法>
上記各内装材をラジコンカーのゴムタイヤ(外周面幅27mm、内周面幅23mm、外径66mm、タイヤ厚さ2.5mm)に内装して、このラジコンカーを熟練者が操縦して走行させ、下記評価方法に従い、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
A.グリップ力評価方法
時速30kmで曲率半径6.5mのカーブを走行させ、その時の走行安定性を評価した。グリップ力を発揮して何ら支障なくカーブを曲がり切れたものを合格とし、コースアウト、スピン、車体が転倒する等カーブ走行に支障が生じたものを不合格とし、各10回試験を行って、その合格回数で比較評価した。
【0036】
B.直進安定性評価方法
時速45kmで40mの直線コースを走行させ、その時の直進安定性を下記判定基準により評価した。
【0037】
(判定基準)
車体の横ぶれがない ○
車体の横ぶれが小さい △
車体の横ぶれが大きい ×
【0038】
【表1】
【0039】
表1から明らかなように、この発明の実施例1、2の内装材をタイヤに内装すれば、カーブ走行安定性に優れるとともに、直進安定性にも優れる。
【0040】
これに対し、この発明の範囲を逸脱する比較例1〜3の内装材をタイヤに内装した場合には、カーブ走行安定性、直進安定性ともに劣っている。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る自動車タイヤ用内装材は、見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm2 の特性を有するゴム発泡体または合成樹脂発泡体からなり、帯状環状体に形成されてなるものであるから、自動車タイヤに内装すれば、タイヤのグリップ力を向上させることができて、より高速での安定したカーブ走行を可能とすることができ、かつ直進安定性をも向上させることができる。また、タイヤの制動性能をも向上させることができ、例えばタイヤが高速回転状態の時に急激なブレーキ操作を行っても横すべりやスピンを生じることがなく、安定した減速あるいは停止を行うことができる。更に、内装されたタイヤの摩耗量は減少するから、タイヤ寿命をも延ばすことができる。加えて、空気が圧充填される自動車タイヤに内装した場合には、走行時において、釘などの異物がタイヤ内周面まで貫通するようなことがあっても、厚みを有する内装材が膨張してタイヤ内周面に圧接しているから、シール効果を発揮して、急激な空気漏れが生じるのを防止でき、従って殊に車両走行時におけるパンクによる危険を回避することができる。
【0042】
また、発泡体の破断伸びが150〜400%の範囲にあるから、一段とグリップ力が向上してカーブ走行安定性を一層向上させることができる。
【0043】
更に、帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されているから、タイヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止することができる。
【0044】
また、この発明に係る自動車タイヤは、前記内装材がタイヤ内周面に積層一体化されているから、グリップ力に優れて、高速での安定したカーブ走行が可能となるとともに、直進安定性にも優れ、かつ制動性能にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の好ましい実施の形態の1つを示す図であって、同図(イ)は斜視図、同図(ロ)は側断面図である。
【図2】タイヤへの内装態様を示す図であって、同図(イ)は一部を切り欠いた斜視図、同図(ロ)は側断面図である。
【符号の説明】
1…内装材
2…タイヤ
3…ホイール
Claims (4)
- 見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm2 、破断伸びが150〜400%の特性を有するゴム発泡体からなる帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなることを特徴とする自動車タイヤ用内装材。
- ゴム発泡体が天然ゴム発泡体である請求項1に記載の自動車タイヤ用内装材。
- 見掛比重が0.20〜0.50、25%歪み時の圧縮応力が20〜1000g/cm 2 、破断伸びが150〜400%の特性を有する合成樹脂発泡体からなる帯状環状体の表面に、ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなることを特徴とする自動車タイヤ用内装材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車タイヤ用内装材がタイヤ内周面に積層一体化されていることを特徴とする自動車タイヤ。
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