JP3615120B2 - 基板乾燥装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、純水によって洗浄された後の半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)を乾燥させる基板乾燥装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記基板には薬液によるエッチング、純水による洗浄処理等の表面処理および乾燥処理が順次施されて、一連の基板処理が達成されている。これらの各処理のうち乾燥処理は一般に、純水による仕上げの洗浄が行われた後の最終の処理として実行されるものである。
【0003】
従来より、このような基板の乾燥処理の方式としては、基板を高速で回転させてその遠心力により水分を振り切る方式(いわゆるスピンドライ)や、IPA(イソプロピルアルコール)を用いる方式が存在している。ところが、近年の半導体デバイス構造の複雑化に伴い、ウォーターマークと呼ばれる乾燥不良問題が注目されるようになり、かかる問題を発生しにくいIPAを用いた乾燥方式が主流になりつつある。ウォーターマークとは、基板表面に付着した水分が基板の素材であるシリコンおよび空気中の酸素と反応してパーティクルを発生させることにより生じた乾燥シミのことであり、基板表面に水分が付着している時間が長いほど発生しやすい。
【0004】
IPAは基板表面に付着した水分に置換して短時間のうちに気化するため、IPAを用いた乾燥方式においては、ウォーターマークが比較的発生しにくいのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、IPAを用いた乾燥方式には、水分が付着した基板の表面にIPAの蒸気を吹き付けて乾燥させる方式(IPAベーパー乾燥)や純水表面に形成したIPAの薄い液層中を基板を引き揚げて通過させる方式(マランゴニ乾燥)が存在する。
【0006】
しかしながら、いずれの方式を採用したとしても、近年においては周知のように環境問題が重要視されており、そのまま外部に放出したのでは環境に負荷を与えるIPAを廃棄するためには、所定の廃棄処理を施して環境に対して無害にする必要があった。かかる廃棄処理は当然に相応の費用を要するものであり、このことが基板処理のコストアップを生じさせるという問題が存在していた。
【0007】
また、最近は、基板表面に形成されたデバイス構造が益々微細化・複雑化されており、IPAを用いた乾燥方式であってもウォーターマークの問題が発生する場合があった。さらに、マランゴニ乾燥においては、IPAの液層と純水との界面に生じたマランゴニ対流によって、基板表面に付着したパーティクルの転写が生じるという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、微細化・複雑化された構造を有する基板であってもパーティクルを付着させることなく、しかも乾燥処理に要するコストの上昇を抑制することができる基板乾燥装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、純水によって洗浄された後の基板を乾燥させる基板乾燥装置において、純水を貯留し、その純水中に基板を浸漬することによって当該基板を洗浄する洗浄槽と、前記洗浄槽から洗浄後の基板を引き揚げる引き揚げ手段と、前記洗浄槽に貯留された純水の水面にシリコーンを含有する乾燥液を供給して液体のシリコーン層を形成するシリコーン層形成手段と、を備え、前記引き揚げ手段に、前記洗浄槽から洗浄後の基板を引き揚げることによって、前記洗浄槽の純水水面に形成された前記シリコーン層を当該基板に通過させている。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板乾燥装置において、前記洗浄槽中の純水およびその純水水面に形成された前記シリコーン層に超音波振動を付与する超音波振動付与手段をさらに備えている。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板乾燥装置において、前記洗浄槽に純水を供給する純水供給手段をさらに備え、前記引き揚げ手段が前記シリコーン層を基板に通過させている間は、前記純水供給手段に前記洗浄槽に純水を供給させることによって前記洗浄槽の上部より純水およびシリコーンを流出させ続けるとともに、前記シリコーン層形成手段に前記洗浄槽に前記乾燥液を供給させ続けている。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る基板乾燥装置において、前記乾燥液を、シリコーンのみによって構成している。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る基板乾燥装置において、前記乾燥液に、シリコーンおよび10体積%以下の水溶性溶剤を含ませている。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る基板乾燥装置において、前記シリコーンを、低分子シリコーンとしている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<1.基板乾燥装置の構成>
図1は、本発明に係る基板乾燥装置の全体構成を示す図である。この基板乾燥装置は、大別して乾燥処理を行うための乾燥槽10とその乾燥槽10に種々のガスおよび液体を供給する機構とにより構成されている。図2は乾燥槽10の平面図であり、図3は乾燥槽10の側面図である。
【0017】
乾燥槽10は、蓋(図示省略)を閉じることによって内部を密閉空間とすることができる筐体である。乾燥槽10への基板Wの搬出入はその蓋を開放している状態にて、図外の搬送ロボットによって行う。
【0018】
乾燥槽10の内部には洗浄槽20が固定配置されている。洗浄槽20は、純水を貯留し、その純水中に基板Wを浸漬することによって当該基板Wを洗浄するための処理槽である。洗浄槽20の内側底部には、2つの純水供給ノズル22が配設されている。それぞれの純水供給ノズル22は、その長手方向が略水平となるように設けられているとともに、乾燥槽10の外部に設けられた純水供給源21と配管23を介して接続されている。また、それぞれの純水供給ノズル22には、複数の吐出孔22aが設けられている(図3参照)。純水供給源21から送給された新鮮な純水は配管23を流れて純水供給ノズル22に到達し、純水供給ノズル22の吐出孔22aから洗浄槽20に吐出される。なお、吐出孔22aは斜め上方に向けて形成されており、純水供給ノズル22から供給される純水は斜め上方に向けて(洗浄槽20の中心部近傍に向けて)吐出される。
【0019】
純水供給ノズル22から供給された純水は、洗浄槽20内部に貯留され、やがて洗浄槽20の上端部から溢れ出る。洗浄槽20の上端部から溢れ出た純水は、回収部24に流れ込む(図1参照、図2および図3では図示の便宜上回収部24の記載を省略する)。回収部24は図外の排水機構に接続されており、回収部24に流れ込んだ純水は当該排水機構を経て装置外部に排出される。
【0020】
なお、洗浄槽20には、純水のみならず、エッチング液等の薬液を供給・排出する機構をさらに付設するようにしてもよい。
【0021】
また、乾燥槽10の内部であって、洗浄槽20の外側には外槽60が設けられている。外槽60は例えばステンレス製の容器であり、その外側底部には超音波振動子を有する超音波震動源61が付設されている。そして、外槽60と洗浄槽20との間は伝播水62で満たされている。これによって、超音波震動源61から発せられたメガヘルツ帯の超音波振動は、伝播水62を介して洗浄槽20に伝達され、さらに洗浄槽20を介してその内部の純水や純水に浸漬されている基板Wにも付与される。なお、超音波震動源61を直接洗浄槽20に付設しないのは、洗浄槽20が石英製であるため、直接超音波震動源61を接触させることができないためである。また、超音波震動源61からの超音波振動がメガヘルツ帯に限定されるものでないのは勿論である。
【0022】
また、乾燥槽10の内部にはリフターLHが設けられている(図2、図3参照)。リフターLHは、リフターアーム25を鉛直方向に昇降させる機能を有している。リフターアーム25には、3本の保持棒26a、26b、26cがその長手方向が略水平(純水供給ノズル22と平行)となるように固設されており、3本の保持棒26a、26b、26cのそれぞれには基板Wの外縁部がはまり込んで基板Wを起立姿勢にて保持する複数の保持溝が所定間隔に配列して設けられている。
【0023】
このような構成により、リフターLHは3本の保持棒26a、26b、26cによって相互に平行に積層配列されて保持された複数の基板Wを洗浄槽20に貯留された純水に浸漬する位置とその純水から引き揚げた位置との間で昇降させることができる。なお、リフターLHには、リフターアーム25を昇降させる機構として、ボールネジを用いた送りネジ機構やプーリとベルトを用いたベルト機構など種々の機構を採用することが可能である。
【0024】
また、乾燥槽10の内部には2本の乾燥液供給ノズル30および2本の窒素ガス供給ノズル50が設けられている。2本の乾燥液供給ノズル30および2本の窒素ガス供給ノズル50は、いずれも長手方向を略水平方向にして(3本の保持棒26a、26b、26cと平行に)配置された中空の円筒形状の部材である。乾燥液供給ノズル30には複数の吐出孔30aが形成され、窒素ガス供給ノズル50には、複数の吐出孔50aが形成されている(図3参照)。
【0025】
ここで、乾燥液供給ノズル30に設けられた吐出孔30aは、その吐出方向が略水平方向となるように形成されている。一方、窒素ガス供給ノズル50に設けられた吐出孔50aは、その吐出方向が斜め下方を向くように形成されている。そして、吐出孔30aは、リフターLHの3本の保持棒26a、26b、26cによって相互に平行に配列保持された複数の基板Wのそれぞれの間に位置するように形成されている(図3参照)。
【0026】
乾燥液供給ノズル30には、乾燥槽10外部に設けられた乾燥液供給機構から乾燥液が送給される。かかる乾燥液供給機構は、乾燥液タンク31と、送給ポンプ32と、配管35とによって構成されている。乾燥液タンク31には、液体のシリコーンが貯留されている。
【0027】
シリコーンは、主鎖が(Si−O)xとなる鎖状オルガノポリシロキサンの総称であるが、重合度によって液状、グリース状、ゴム状、樹脂状のものがある。本発明に係る基板乾燥装置において使用されるシリコーンは、重合度の低い液状(粘性が低い)の低分子シリコーンである。低分子シリコーンの構造式を以下に示す。
【0028】
【化1】
【0029】
本発明における低分子シリコーンとは、2量体から5量体まで(nが2から5)のものであり、本実施形態では2量体を用いている。本発明における低分子シリコーンの重合度を2量体から5量体までのものに限定するのは、この範囲であれば粘性の低い液状態となるため、送給ポンプ32が乾燥液として供給しやすいためである。なお、本明細書において低分子シリコーンというときには、特に明記しない限り2量体から5量体までのものを示す。
【0030】
乾燥液タンク31に貯留されている液体シリコーンは、送給ポンプ32によって配管35を介して乾燥液供給ノズル30に乾燥液として送給される。乾燥液供給ノズル30に送給された乾燥液は、乾燥液供給ノズル30の吐出孔30aからミストの形態にて洗浄槽20に吐出される。なお、本実施形態においては、乾燥液タンク31に液体シリコーンのみが貯留されており、乾燥液はシリコーンのみによって構成されている。
【0031】
洗浄槽20に供給された乾燥液の挙動についてはさらに後述するが、シリコーンは非水溶性であって水よりも比重が小さいため、洗浄槽20中に貯留されている純水の表面に薄いシリコーンの液層を形成する。
【0032】
一方、窒素ガス供給ノズル50には、乾燥槽10外部に設けられた窒素ガス供給源52から窒素ガスが送給される。窒素ガス供給源52は、配管55を介して窒素ガス供給ノズル50と接続されている。また、配管55が配設されている経路途中にはヒータ57が設けられている。窒素ガス供給源52から送り出された窒素ガスは、配管55を通過し、その途中においてヒータ57によって加熱された後に窒素ガス供給ノズル50に到達し、窒素ガス供給ノズル50の吐出孔50aから斜め下方に向けて吐出される。
【0033】
なお、本実施形態においては、乾燥液供給ノズル30がシリコーン層形成手段に相当し、リフターLHが引き揚げ手段に相当し、超音波震動源61が超音波振動付与手段に相当し、純水供給ノズル22が純水供給手段に相当する。
【0034】
<2.基板乾燥装置における乾燥処理>
次に、上記構成を有する基板乾燥装置における乾燥処理の手順について図4から図8を用いつつ説明する。図4から図8は、上記基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【0035】
まず、図4において、基板Wには純水による洗浄処理(水洗処理)が行われている。水洗処理は、相互に間隔を隔てて積層配列された複数の基板WがリフターLHにより保持されて洗浄槽20中の純水に浸漬されることによって進行する。このときに、純水供給ノズル22から洗浄槽20に純水が供給され続け、洗浄槽20の上端部から常に純水が溢れ出る状態になっている(いわゆるアップフロー処理)。このようにしてパーティクル等の汚染物質が基板Wから剥離して洗浄槽20の外部に排出されることにより、基板Wの洗浄が行われる。なお、洗浄槽20から溢れ出た使用済みの純水は、回収部24に流れ込んで回収され、乾燥槽10の外部に排出される。また、水洗処理に先立って、洗浄槽20において薬液による基板Wの表面処理を行っても良いし、別の槽にて薬液処理済みの基板Wを乾燥槽10に搬入するようにしても良い。
【0036】
水洗処理が行われている段階においては、乾燥液供給ノズル30からの乾燥液供給は行われていない。一方、窒素ガス供給ノズル50からは、乾燥槽10に窒素ガスを供給するようし、窒素雰囲気下において水洗処理を実行するようにしても良い。
【0037】
次に、所定時間の水洗処理が終了すると、基板Wの引き揚げに先立って乾燥液供給ノズル30からの乾燥液供給が開始される(図5)。乾燥液は、図中矢印A5にて示すように、乾燥液供給ノズル30からミスト状にて洗浄槽20に供給される。上述の如く、本実施形態においては乾燥液がシリコーンのみによって構成されている。シリコーンは非水溶性であって水よりも比重が小さいため、供給されたシリコーンは純水と完全に分離し、洗浄槽20に貯留されている純水の水面に薄い液体シリコーン層を形成する。
【0038】
なお、この段階においては、基板Wは水洗処理時と同じ位置に留まっており、また純水供給ノズル22から純水が供給され続け、洗浄槽20の上端部からは純水が溢れ出る状態になっている。このときに、純水水面のシリコーン層も純水と共に洗浄槽20の上端部から流出するが、乾燥液供給ノズル30からの乾燥液供給も絶えず行われているため、洗浄槽20に貯留されている純水の水面には常にシリコーン層が形成されている。
【0039】
次に、洗浄槽20の純水水面にシリコーン層が形成された後、リフターLHが保持している洗浄後の複数の基板Wを一括して引き揚げる(図6)。この段階においても、少なくとも基板Wがシリコーン層を通過している間は、純水供給ノズル22から洗浄槽20に純水が供給され続け、洗浄槽20の上端部からは純水が溢れ出る状態となっている。また、少なくとも基板Wがシリコーン層を通過している間は、図中矢印A61にて示すように乾燥液供給ノズル30から乾燥液供給が行われ続けるとともに、図中矢印A62にて示すように超音波震動源61による超音波発振が行われる。
【0040】
基板Wの引き揚げ時にも、シリコーンの液層は純水と共に洗浄槽20の上端部から流出するものの、乾燥液も絶えず供給され続けるため、洗浄槽20に貯留されている純水の水面には常にシリコーン層が形成されている。従って、リフターLHによって引き揚げられる複数の基板Wは、純水水面に形成されたシリコーン層を通過することとなる。そして、洗浄槽20中の純水、その純水水面に形成されたシリコーン層および引き揚げられつつある基板Wには超音波震動源61によって伝播水62を介して超音波振動が付与されるのである。
【0041】
図9は、引き揚げられつつある基板Wがシリコーン層中を通過する様子を示す図である。洗浄槽20中の純水DIの水面には液体のシリコーン層SLが形成されている。基板Wは図中矢印A9にて示すように、上方に引き揚げられる。よって、基板Wの上端から順にシリコーン層SLを通過することとなる。基板Wが純水DI中にあるときには、基板Wの表面は当然に水に接触している。そして、その基板Wがシリコーン層SLを通過するときに、シリコーン層SLを構成するシリコーンの液体が基板Wの表面に接触していた水分に置換して付着する。
【0042】
また、基板Wが引き揚げられるときには、超音波震動源61によって超音波振動が付与されている(図9中においても矢印A62として示している)。この超音波振動は、シリコーン層SLと純水DIと基板Wとの境界部分にも伝播され、基板Wの表面に接触している水の層を剥離することに寄与する。すなわち、超音波震動源61からの超音波振動は、シリコーンの液体が基板Wの表面に接触していた水分に置換することを促進するのである。
【0043】
このようにして、洗浄後基板Wの表面に接触していた水分はシリコーンによって完全に置換され、気中に露出した基板Wの表面(図中シリコーン層SLよりも上方に位置する基板Wの表面)にはシリコーンの液体のみが付着している状態となる。
【0044】
ところで、上記置換によって剥離された水分は、微細な水滴としてシリコーン層SL中に多数漂っており、このような微細な水滴が過剰に増えるとシリコーンによる置換効率が低下する。本実施形態においては、上述の通り基板W引き揚げ時においても、少なくとも基板Wがシリコーン層SLを通過している間はアップフロー処理が行われ続け、シリコーン層SLも洗浄槽20の上端部から徐々に流出して回収部24に流れ込んでいる。これにより、シリコーン層SL中に漂っている微細な水滴も順次洗浄槽20から排出されることとなる。その結果、シリコーン層SL中に漂っている微細な水滴も一定以下に抑制され、シリコーンによる置換効率も維持されることとなるのである。
【0045】
次に、リフターLHによって洗浄槽20から基板Wが完全に離脱されると、乾燥液供給ノズル30からの乾燥液供給を停止するとともに、窒素ガス供給ノズル50から窒素ガスまたはヒータ57によって加熱された窒素ガスを供給する(図7)。窒素ガス供給ノズル50から窒素ガスを供給することによって乾燥槽10内部の雰囲気が不活性な窒素ガスに置換されるとともに、基板Wに付着したシリコーンが気化する。特に、基板Wに加熱された窒素ガスが吹き付けられる場合は、シリコーンの気化が促進され、乾燥時間が短縮される。また、この段階においては、超音波震動源61による超音波発振が停止されるとともに、純水供給ノズル22からの純水供給も停止され、使用済みの純水およびシリコーンが洗浄槽20から排出される。
【0046】
その後、基板Wに付着したシリコーンが完全に気化した後、窒素ガス供給ノズル50からの窒素ガス供給を停止し、乾燥槽10の蓋を開放して乾燥後の基板Wを槽外に搬出する(図8)。以上のようにして、一連の基板Wの乾燥処理が終了する。
【0047】
以上のように、本発明に係る基板乾燥装置においては、洗浄槽20の純水水面にシリコーン層を形成し、そのシリコーン層を洗浄後の基板Wに通過させることによって基板Wの表面に接触していた水分を剥離して低分子シリコーンに置換している。そして、置換後に基板Wの表面に付着した低分子シリコーンを気化させることによって基板Wを乾燥させている。シリコーンは、化粧品等にも使用されており、オゾン破壊や温暖化等の問題を生じない、環境に対する負荷が軽い素材であるため、廃棄に際して特段の処理を必要としない。このため、乾燥処理に要するコストの上昇を抑制することができる。
【0048】
また、低分子シリコーンは表面張力が小さく、水のそれが71.8dyn/cm、IPAが20.8dyn/cmであるのに対して、低分子シリコーンの表面張力は16.5dyn/cm以下である。このように、低分子シリコーンの表面張力が小さいことは、その浸透性がIPAよりも高いことを意味している。低分子シリコーンは、その浸透性が高いために、近年の微細化・複雑化されたデバイス構造であっても容易に水分と置換することができ、特にホールの如きアスペクト比(径に対する長さの比)の大きな箇所においても低分子シリコーンは水分と置換することができる。従って、低分子シリコーンを用いた乾燥方式では、近年の微細化・複雑化されたデバイス構造においても乾燥性能が良好であり、付着水分に起因したウォーターマークの問題が生じにくく、基板Wへのパーティクル付着を防止することができる。
【0049】
また、低分子シリコーンは蒸発潜熱も小さく、水のそれが2256J/g、IPAが674J/gであるのに対して、低分子シリコーンの蒸発潜熱は300J/g以下である。低分子シリコーンの蒸発潜熱が小さいことは、その乾燥速度がIPAよりも速いことを意味している。従って、低分子シリコーンを用いた乾燥方式では、IPAを用いた場合よりも乾燥に要する時間を短くすることができ、スループットが向上するとともに、付着水分に起因したウォーターマークがより発生しにくく、基板Wへのパーティクル付着をより効果的に抑制することが可能となる。
【0050】
また、上記実施形態においては、洗浄槽20の純水水面に形成されたシリコーン層中を基板Wに通過させて、その表面に接触していた水分をシリコーンに置換しているため、基板W主面に接触している水分が外気に曝されることなくシリコーンに置換されることとなり、ウォーターマークの発生をより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、超音波震動源61からの超音波振動によって基板Wの表面に接触していた水の層を剥離しやすくしているため、シリコーンによる置換効率がより高いものとなる。
【0052】
また、上記実施形態においては、少なくとも基板Wがシリコーン層を通過している間は純水供給ノズル22から洗浄槽20に純水を供給して、洗浄槽20の上端部から純水およびシリコーン層を流出させ続けるとともに、乾燥液供給ノズル30が洗浄槽20に新たな乾燥液を供給し続けるため、置換によって剥離され、水滴としてシリコーン層中に漂う水分が順次に洗浄槽20から排出され、洗浄槽20の純水水面には新たなシリコーン層が形成されることとなり、シリコーンによる高い置換効率を維持することができる。
【0053】
さらに、シリコーンは非水溶性であって水と完全に分離するため、シリコーン層と純水との界面にはマランゴニ対流が発生しない。このため、マランゴニ対流に起因したパーティクルの転写等の問題が生じることもない。
【0054】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、乾燥液タンク31に液体の低分子シリコーンのみを貯留し、乾燥液をシリコーンのみによって構成していたが、これを乾燥液タンク31に液体低分子シリコーンおよび水溶性溶剤の混合液を貯留し、乾燥液をシリコーンおよび水溶性溶剤の混合液としても良い。水溶性溶剤としては、例えば、IPAの如きアルコール、アセトン、ケトン、カルボン酸等を用いることができる。また、混合乾燥液中の水溶性溶剤は10体積%以下とする必要がある。これは、混合乾燥液中の水溶性溶剤が10体積%より多くなると、混合乾燥液中におけるシリコーンの比率が低下し、上述したようなシリコーンを用いることによる効果が得られにくくなるとともに、IPA等を用いることによる固有の問題(廃棄の問題等)が生じるからである。混合乾燥液中の水溶性溶剤が10体積%以下であれば、かかる問題はほとんど生じない。
【0055】
また、上記実施形態では、複数の基板Wを一括して処理するいわゆるバッチ式の装置であったが、これを基板Wを一枚ずつ処理するいわゆる枚葉式の装置としても本発明に係る技術を適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明によれば、洗浄槽から洗浄後の基板を引き揚げることによって、その洗浄槽の純水水面に形成された液体のシリコーン層を当該基板に通過させ、基板表面に接触する水分をシリコーンに置換することによって乾燥しており、シリコーンは浸透性・乾燥性に優れているため、微細化・複雑化された構造を有する基板であってもパーティクルを付着させることがないとともに、シリコーンは環境に負荷を与えないため、廃棄に特段の処理を必要とせず、乾燥処理に要するコストの上昇を抑制することができる。
【0057】
また、請求項2の発明によれば、洗浄槽中の純水およびその純水水面に形成されたシリコーン層に超音波振動を付与しているため、基板表面の水分が剥離しやすくなってシリコーンによる置換効率が高まり、その結果請求項1の発明と同様の効果を効率良く得ることができる。
【0058】
また、請求項3の発明によれば、引き揚げ手段がシリコーン層を基板に通過させている間は、純水供給手段が洗浄槽に純水を供給することによって洗浄槽の上部より純水およびシリコーンを流出させ続けるとともに、シリコーン層形成手段が洗浄槽に乾燥液を供給し続けるため、置換によって剥離され、水滴としてシリコーン層中に漂う水分が順次に洗浄槽から排出され、洗浄槽の純水水面には新たなシリコーン層が形成されることとなり、シリコーンによる高い置換効率を維持することができ、その結果請求項1の発明と同様の効果を効率良く得ることができる。
【0059】
また、請求項4の発明によれば、乾燥液はシリコーンのみによって構成されているため、請求項1の発明と同様の効果を効率良く得ることができる。
【0060】
また、請求項5の発明によれば、乾燥液はシリコーンおよび10体積%以下の水溶性溶剤を含むため、請求項1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、請求項6の発明によれば、シリコーンは、低分子シリコーンであるため、容易に乾燥液として供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板乾燥装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1の基板乾燥装置の乾燥槽の平面図である。
【図3】図1の基板乾燥装置の乾燥槽の側面図である。
【図4】図1の基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【図5】図1の基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【図6】図1の基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【図7】図1の基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【図8】図1の基板乾燥装置における乾燥処理の様子を説明する図である。
【図9】引き揚げられつつある基板がシリコーン層中を通過する様子を示す図である。
【符号の説明】
10 乾燥槽
20 洗浄槽
22 純水供給ノズル
30 乾燥液供給ノズル
50 窒素ガス供給ノズル
61 超音波震動源
LH リフター
SL シリコーン層
W 基板
Claims (6)
- 純水によって洗浄された後の基板を乾燥させる基板乾燥装置であって、
純水を貯留し、その純水中に基板を浸漬することによって当該基板を洗浄する洗浄槽と、
前記洗浄槽から洗浄後の基板を引き揚げる引き揚げ手段と、
前記洗浄槽に貯留された純水の水面にシリコーンを含有する乾燥液を供給して液体のシリコーン層を形成するシリコーン層形成手段と、
を備え、
前記引き揚げ手段は、前記洗浄槽から洗浄後の基板を引き揚げることによって、前記洗浄槽の純水水面に形成された前記シリコーン層を当該基板に通過させることを特徴とする基板乾燥装置。 - 請求項1記載の基板乾燥装置において、
前記洗浄槽中の純水およびその純水水面に形成された前記シリコーン層に超音波振動を付与する超音波振動付与手段をさらに備えることを特徴とする基板乾燥装置。 - 請求項1または請求項2に記載の基板乾燥装置において、
前記洗浄槽に純水を供給する純水供給手段をさらに備え、
前記引き揚げ手段が前記シリコーン層を基板に通過させている間は、前記純水供給手段が前記洗浄槽に純水を供給することによって前記洗浄槽の上部より純水およびシリコーンを流出させ続けるとともに、前記シリコーン層形成手段が前記洗浄槽に前記乾燥液を供給し続けることを特徴とする基板乾燥装置。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板乾燥装置において、
前記乾燥液は、シリコーンのみによって構成されていることを特徴とする基板乾燥装置。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板乾燥装置において、
前記乾燥液は、シリコーンおよび10体積%以下の水溶性溶剤を含むことを特徴とする基板乾燥装置。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の基板乾燥装置において、
前記シリコーンは、低分子シリコーンであることを特徴とする基板乾燥装置。
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