JP3614586B2 - ジピロメテン金属キレート化合物及びこれを用いた光記録媒体 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なジピロメテン金属キレート化合物及びこれを用いた光記録媒体に関する。特に、追記型光記録媒体において、従来に比較して高密度に記録及び再生可能な光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンパクトディスク(以下、CDと略す)規格に対応した追記型光記録媒体としてCD−R(CD−Recordable)が提案・開発されている[例えば、日経エレクトロニクス No. 465, P.107, 1989年1月23日号、あるいはOPTICAL DATA STORAGE DIGEST SERIES vol.1 P45, 1989等]。このCD−Rは図1に示すように透明樹脂基板1上に記録層2、反射層3、保護層4がこの順で積層されており、該記録層に高パワーのレーザー光を照射することにより、記録層が物理的あるいは化学的変化を起こし、ピットの形で情報を記録する。形成されたピット部位に低パワーのレーザー光を照射し、反射率の変化を検出することによりピットの情報を再生することができる。このような光記録媒体の記録・再生には一般に波長770〜830nmの近赤外半導体レーザーを用いており、レッドブックやオレンジブック等のCDの規格に準拠しているため、CDプレーヤーやCD−ROMプレーヤーと互換性を有するという特徴を有する。
【0003】
しかし、上記の従来の媒体の記録容量は650MB程度であり、動画の記録を考慮すると容量が十分でなく、情報量の飛躍的増加に伴い情報記録媒体に対する高密度化・大容量化の要求は高まっている。
【0004】
また、光ディスクシステムに利用される短波長半導体レーザーの開発が進み、波長680nm、650nm及び635nmの赤色半導体レーザーが実用化されている[例えば、日経エレクトロニクス、No.592、P.65、1993年10月11日号]。記録・再生用レーザーの短波長化および対物レンズの開口数を大きくすることによりビームスポットを小さくすることができ、高密度な光記録媒体が可能になる。実際に半導体レーザーの短波長化、対物レンズの開口数増大化、データ圧縮技術などにより動画を長時間記録できる大容量の光記録媒体が開発されてきている〔例えば、日経エレクトロニクス、No.592、P.65、1993年8月30日号、あるいはNo.594、P.169、1993年11月8日号]。最近では、2時間以上の動画をデジタル記録したデジタルビデオディスク(DVD)が開発されてきた。DVDディスクは4.7GBの記録容量を有する再生専用の媒体であり、この容量に合った記録可能な光ディスクの開発がさらに要望されている。
【0005】
また、YAGレーザーの高調波変換による532nmのレーザーも実用可されている。
【0006】
532nmよりさらに短波長の490nmの青/緑色半導体レーザーも研究されているが、まだ実用化の段階まで至っていない[例えば、Applied Physics Letter,P.1272−1274,Vol.59(1991)や日経エレクトロニクス、No.552,P.90,1992年4月27日号]。
【0007】
短波長レーザーを使用した場合、光ディスクの線記録密度と半径方向記録密度は理論的には同等に高密度化できるが、現状では、半径方向の記録密度は線記録密度ほど大きくすることは困難である。レーザー光は溝またはランドにより回折散乱されるため、トラックピッチを狭くするほど信号検出光量が低下する。また、十分なトラッキング信号が得られる深さを保ったままトラックピッチを狭くするにも成形上限界がある。また溝が深く狭いと、記録層を均一に成膜することが困難である。さらに、溝とランドのエッジ部分は平滑ではなく微小凹凸があるため、ノイズの原因となる。このような悪影響はある程度トラックピッチが狭くなったところで急激に生じる。これらのことを考慮すると、波長520nmで対物レンズの開口数が0.6では溝ピッチの限界は約0.5μmと考えられる。
【0008】
追記型光記録媒体の色素層にレーザー光を照射し、物理変化または化学変化を生じさせることでピットを形成させる際、色素の光学定数、分解挙動が良好なピットができるかの重要な要素となる。分解しづらいものは感度が低下し、分解が激しいかまたは、変化しやすいものはピット間および半径方向のランド部への影響が大きくなり、信頼性のあるピット形成が困難になる。従来のCD−R媒体では、高密度記録で用いられているレーザー波長では色素層の屈折率も低く、消衰係数も適度な値ではないため、反射率が低く充分な変調度が取れなかった。さらには、絞られたビームで小さいピットを開けるべきところが、周りへの影響が大きいために分布の大きいピットになったり、半径方向へのクロストークが悪化した。逆にピットが極端に小さくなり充分な変調度が取れない場合もあった。従って、記録層に用いる色素の光学的性質、分解挙動の適切なものを選択する必要がある。
【0009】
例えば、特開平6−199045号公報には、波長680nmの半導体レーザーで記録再生可能な光記録媒体が提案されている。この媒体は、記録層にシアニン色素を用いており高密度の記録再生の可能性は示しているものの、実際に高密度に記録した記述はない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、波長520〜690nmの短波長レーザーでの記録及び再生が可能な高密度記録に適した光記録媒体を提供することである。また本発明は、このような光記録媒体を実現するための記録層材料として新規なジピロメテン金属キレート化合物を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
▲1▼ 下記一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物、
【0012】
【化4】
〔式中、R1は、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アラルキル基、アリ−ル基、アルコキシカルボニルアルキル基または炭素数2〜20のアルケニル基を表し、R2〜R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルカルボニルアミノ基、アリ−ルカルボニルアミノ基、アリ−ルアミノカルボニル基、アリ−ルオキシカルボニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、アルケニルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアルコキシカルボニル基、モノ(ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル基、ジ(ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル基、モノ(アルコキシアルキル)アミノカルボニル基、ジ(アルコキシアルキル)アミノカルボニル基または炭素数2〜20のアルケニル基を表す。〕
【0013】
▲2▼ 下記一般式(2)で示される▲1▼記載のジピロメテン金属キレート化合物、
【0014】
【化5】
〔式中、R1〜R10は、一般式(1)と同じ意味を表し、Mはニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、オスミウム、イリジウム、白金、マンガンまたは亜鉛を表す。〕
【0015】
▲3▼ 下記一般式(3)で示される▲1▼記載のジピロメテン金属キレート化合物、
【0016】
【化6】
〔式中、R1〜R10は、一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0017】
▲4▼ 基板上に、少なくとも、記録層及び反射層を有する光記録媒体において、記録層中に、▲1▼〜▲3▼のいずれかに記載のジピロメテン金属キレート化合物を含有する光記録媒体、
【0018】
▲5▼ 波長520〜690nmの範囲から選択されるレーザー光に対して記録及び再生が可能である▲4▼記載の光記録媒体、
【0019】
▲6▼ レーザー波長において、記録層の屈折率が1.8以上、且つ、消衰係数が0.04〜0.40である▲4▼記載の光記録媒体、
【0020】
▲7▼ 波長520〜690nmの範囲から選択されるレーザー光に対して、基板側から測定した反射率が20%以上である▲4▼〜▲6▼のいずれかに記載の光記録媒体、に関するものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的構成について以下に説明する。
【0022】
光記録媒体とは予め情報を記録されている再生専用の光再生専用媒体及び情報を記録して再生することのできる光記録媒体の両方を示すものである。但し、ここでは適例として後者の情報を記録して再生のできる光記録媒体、特に基板上に記録層、反射層を有する光記録媒体に関して説明する。この光記録媒体は図1に示すような基板1、記録層2、反射層3及び保護層4が順次積層している4層構造を有しているか、図2に示すような貼り合わせ構造を有している。即ち、基板1’上に記録層2’が形成されており、その上に密着して反射層3’が設けられており、さらにその上に接着層4’を介して基板5’が貼り合わされている。ただし、記録層2’の下または上に別の層があってもよく、反射層3’の上に別の層があってもかまわない。
【0023】
基板の材質としては、基本的には記録光及び再生光の波長で透明であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等の高分子材料やガラス等の無機材料が利用される。これらの基板材料は射出成形法等により円盤状の基板に成形される。必要に応じて、基板表面に案内溝やピットを形成することもある。このような案内溝やピットは、基板の成形時に付与することが好ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を用いて付与することもできる。通常CDとして用いる場合は、厚さ1.2mm程度、直径80ないし120mm程度の円盤状であり、中央に直径15mm程度の穴が開いている。
【0024】
本発明においては、基板上に記録層を設けるが、本発明の記録層は、λmaxが450〜630nm付近に存在する一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物を含有する。中でも、520nm〜690nmから選択される記録及び再生レーザー波長に対して適度な光学定数(光学定数は複素屈折率(n+ki)で表現される。式中のn,kは、実数部nと虚数部kに相当する係数である。ここでは、nを屈折率、kを消衰係数とする。)を有する必要がある。
【0025】
一般に有機色素は、波長λに対し、屈折率nと消衰係数kが大きく変化する特徴がある。nが1.8より小さい値になると正確な信号読み取りに必要な反射率と信号変調度は得られず、kが0.40を越えても反射率が低下して良好な再生信号が得られないだけでなく、再生光により信号が変化しやすくなり実用に適さない。この特徴を考慮して、目的とするレーザー波長において好ましい光学定数を有する有機色素を選択し記録層を成膜することで、高い反射率を有し、且つ、感度の良い媒体とすることができる。
【0026】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、通常の有機色素に比べ、吸光係数が高く、また、置換基の選択により吸収波長域を任意に選択できるため、520nm〜690nmのレーザー光の波長において記録層に必要な光学定数である、nが1.8以上、且つ、kが0.04〜0.40の値、更に好ましくは、nが2.0以上で、且つ、kが0.04〜0.20の値を満足する極めて有用な化合物であることを見出した。更には、メソ置換ピロ−ルの窒素原子に置換された置換基により、溶剤溶解性の向上や分子会合がみられないという特徴を有する極めて有用な化合物である。
【0027】
本発明の記録層に含有される一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物の具体例を次に述べる。
【0028】
R1の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、3−エトキシプロピル基等のアルコキシアルキル基;アリル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基;ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアリ−ル基;メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−エトキシカルボニルエチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基等が挙げられる。
【0029】
R2〜R10としては、例えば、水素原子;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシ基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、cyclo−ペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、3−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、1,1,2−トリメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、cyclo−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−オクチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル−4,5−メチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラエチルオクチル基、4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−トリデシル基、6−メチル−4−ブチルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、3,5−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、2,4−ジメチルヘプチル基、2,2,5,5−テトラメチルヘキシル基、1−cyclo−ペンチル−2,2−ジメチルプロピル基、1−cyclo−ヘキシル−2,2−ジメチルプロピル基等の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基;
【0030】
クロロメチル基、ジクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等のハロゲノアルキル基;
メトキシエチル基、エトキシエチル基、iso−プロピルオキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−メトキシブチル基等のアルコキシアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、iso−ペントキシ基、neo−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等のアルコキシ基;
【0031】
メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、3−メトキシプロピルオキシ基、3−(iso−プロピルオキシ)プロピルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;
フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、4−iso−プロピルフェノキシ基等のアリールオキシ基;
ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、iso−ペンチルカルボニル基、neo−ペンチルカルボニル基、2−メチルブチルカルボニル基、ニトロベンジルカルボニル基等のアシル基;
【0032】
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、2,4−ジメチルブチルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;
メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n−プロピルアミノカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基、n−ヘキシルアミノカルボニル基等のアルキルアミノカルボニル基;
ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジ−n−プロピルアミノカルボニル基、ジ−n−ブチルアミノカルボニル基、N−メチル−N−シクロヘキシルアミノカルボニル基等のジアルキルアミノカルボニル基;
アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ブチルカルボニルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基;
フェニルカルボニルアミノ基、4−エチルフェニルカルボニルアミノ基、3−ブチルフェニルカルボニルアミノ基等のアリ−ルカルボニルアミノ基;
フェニルアミノカルボニル基、4−メチルフェニルアミノカルボニル基、2−メトキシフェニルアミノカルボニル基、4−n−プロピルフェニルアミノカルボニル基等のアリールアミノカルボニル基;
フェノキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基、4−t−ブチルフェノキシカルボニル基等のアリ−ルオキシカルボニル基;
【0033】
ベンジル基、ニトロベンジル基、シアノベンジル基、ヒドロキシベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ジクロロベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基、ナフチルメチル基、ニトロナフチルメチル基、シアノナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基、トリフルオロメチルナフチルメチル基等のアラルキル基;
フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ジクロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、ナフチル基、ニトロナフチル基、シアノナフチル基、ヒドロキシナフチル基、メチルナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基等のアリール基;
ピロリル基、チエニル基、フラニル基、オキサゾイル基、イソオキサゾイル基、オキサジアゾイル基、イミダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、ベンゾイミダゾイル基、ベンゾフラニル基、インドイル基等のヘテロアリール基;
【0034】
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、2−メチルブチルチオ基、1−メチルブチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、1,2−ジメチルプロピルチオ基、1,1−ジメチルプロピルチオ基等のアルキルチオ基;
フェニルチオ基、4−メチルフェニルチオ基、2−メトキシフェニルチオ基、4−t−ブチルフェニルチオ基等のアリ−ルチオ基;
アリルオキシカルボニル基、2−ブテノキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基;
ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;
メトキシカルボニルメトキシカルボニル基、エトキシカルボニルメトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニルメトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニルメトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニルアルコキシカルボニル基;
【0035】
メチルカルボニルメトキシカルボニル基、エチルカルボニルメトキシカルボニル基等のアルキルカルボニルアルコキシカルボニル基;
ヒドロキシエチルアミノカルボニル基、2−ヒドロキシプロピルアミノカルボニル基、3−ヒドロキシプロピルアミノカルボニル基等のモノ(ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル基;
ジ(ヒドロキシエチル)アミノカルボニル基、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミノカルボニル基、ジ(3−ヒドロキシプロピル)アミノカルボニル基等のジ(ヒドロキシアルキル)アミノカルボニル基;
メトキシメチルアミノカルボニル基、メトキシエチルアミノカルボニル基、エトキシメチルアミノカルボニル基、エトキシエチルアミノカルボニル基、プロポキシエチルアミノカルボニル基等のモノ(アルコキシアルキル)アミノカルボニル基;
【0036】
ジ(メトキシエチル)アミノカルボニル基、ジ(エトキシメチル)アミノカルボニル基、ジ(エトキシエチル)アミノカルボニル基、ジ(プロポキシエチル)アミノカルボニル基等のジ(アルコキシアルキル)アミノカルボニル基;
ビニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、iso−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2,2−ジシアノビニル基、2−シアノ−2−メチルカルボキシルビニル基、2−シアノ−2−メチルスルホンビニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と一緒にキレート化合物を形成する金属としては、一般にジピロメテン系化合物とキレート化合物を形成する能力を有する金属であれば特に制限されないが、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、オスミウム、イリジウム、白金、マンガン、亜鉛等の遷移元素やホウ素原子が好ましい。
【0038】
本発明の一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物は、代表的には、例えば、臭化水素酸やトリフルオロ酢酸等の酸触媒の存在下、一般式(4)で示される化合物と一般式(5)および/または一般式(6)で表される化合物とを反応させた後、クロラニール等で酸化し、最後に三フッ化ホウ素類やニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、オスミウム、イリジウム、白金、マンガン、亜鉛等の酢酸塩、ハロゲン化物と反応させることにより、容易に製造できる。
【0039】
【化7】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記に同じ。)
【0040】
【化8】
(式中、R5、R6およびR7は前記に同じ。)
【0041】
【化9】
(式中、R8、R9およびR10は前記に同じ。)
【0042】
一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物の好ましい具体例としては、表−1及び表−2に示す置換基及び金属を有する化合物が挙げられる。
【0043】
【化10】
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【化11】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
また、記録層を形成する際、本発明のジピロメテン金属キレート化合物に加えて、記録特性などの改善のために、波長450〜630nmに吸収極大を有し、520〜690nmでの屈折率が大きい色素を混合してもよい。具体的には、シアニン色素、スクアリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ポルフィリン系色素、テトラピラポルフィラジン系色素、インドフェノール系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、インダスレン系色素、インジゴ系色素、チオインジゴ系色素、メロシアニン系色素、チアジン系色素、アクリジン系色素、オキサジン系色素等があり、複数の色素の混合であってもよい。これらの色素の混合割合は、0.1〜30%程度である。
【0050】
記録層を成膜する際に、必要に応じて前記の色素に、クエンチャー、色素分解促進剤、紫外線吸収剤、接着剤等を混合するか、あるいは、そのような効果を有する化合物を前記色素の置換基として導入することも可能である。
【0051】
クエンチャーの具体例としては、アセチルアセトナート系、ビスジチオ−α−ジケトン系やビスフェニルジチオール系等のビスジチオール系、チオカテコール系、サリチルアルデヒドオキシム系、チオビスフェノレート系等の金属錯体が好ましい。また、アミン系も好適である。
【0052】
熱分解促進剤としては、例えば、金属系アンチノッキング剤、メタロセン化合物、アセチルアセトナート系金属錯体等の金属化合物が挙げられる。
【0053】
さらに、必要に応じて、バインダー、レベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0054】
記録層を基板の上に成膜する際に、基板の耐溶剤性や反射率、記録感度等を向上させるために、基板の上に無機物やポリマーからなる層を設けても良い。
【0055】
ここで、記録層における一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物の含有量は、30%以上、好ましくは60%以上である。尚、実質的に100%であることも好ましい。
【0056】
記録層を設ける方法は、例えば、スピンコート法、スプレー法、キャスト法、浸漬法等の塗布法、スパッタ法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられるが、スピンコート法が簡便で好ましい。
【0057】
スピンコート法等の塗布法を用いる場合には、一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物を1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%となるように溶媒に溶解あるいは分散させた塗布液を用いるが、この際、溶媒は基板にダメージを与えないものを選ぶことが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、オクタフルオロペンタノール、アリルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラフルオロプロパノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、乳酸メチル等のエステル系溶媒、水などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、或いは、複数混合して用いてもよい。
【0058】
なお、必要に応じて、記録層の色素を高分子薄膜などに分散して用いたりすることもできる。
【0059】
また、基板にダメージを与えない溶媒を選択できない場合は、スパッタ法、化学蒸着法や真空蒸着法などが有効である。
【0060】
記録層の膜厚は、特に限定するものではないが、好ましくは50〜300nmである。記録層の膜厚を50nmより薄くすると、熱拡散が大きいため記録出来ないか、記録信号に歪みが発生する上、信号振幅が小さくなる。また、膜厚が300nmより厚い場合は反射率が低下し、再生信号特性が悪化する。
【0061】
次に記録層の上に、好ましくは、厚さ50〜300nmの反射層を形成する。反射層の材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いもの、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Cr及びPdの金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。この中でもAu、Al、Agは反射率が高く反射層の材料として適している。これら以外でも下記のものを含んでいてもよい。例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Biなどの金属及び半金属を挙げることができる。また、Auを主成分としているものは反射率の高い反射層が容易に得られるため好適である。ここで主成分というのは含有率が50%以上のものをいう。金属以外の材料で低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、反射層として用いることも可能である。
【0062】
反射層を形成する方法としては、例えば、スパッタ法、イオンプレーテイング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板の上や反射層の下に反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0063】
さらに、反射層の上の保護層の材料としては反射層を外力から保護するものであれば特に限定しない。有機物質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等を挙げることができる。また、無機物質としては、SiO2、SiN4、MgF2、SnO2等が挙げられる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などは適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。UV硬化性樹脂は、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによって形成することができる。UV硬化性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのアクリレート樹脂を用いることができる。これらの材料は単独であるいは混合して用いてもよいし、1層だけでなく多層膜にして用いてもよい。
【0064】
保護層の形成の方法としては、記録層と同様にスピンコート法やキャスト法などの塗布法やスパッタ法や化学蒸着法等の方法が用いられるが、この中でもスピンコート法が好ましい。
【0065】
保護層の膜厚は、一般には0.1〜100μmの範囲であるが、本発明においては、3〜30μmであり、好ましくは5〜20μmがより好ましい。
【0066】
保護層の上に更にレーベル等の印刷を行うこともできる。
【0067】
また、反射層面に保護シートまたは基板を貼り合わせる、あるいは反射層面相互を内側とし対向させ光記録媒体2枚を貼り合わせる等の手段を用いてもよい。
基板鏡面側に、表面保護やゴミ等の付着防止のために紫外線硬化樹脂、無機系薄膜等を成膜してもよい。
【0068】
ここで、本発明でいう波長520〜690nmのレーザーは、特に限定はないが、例えば、可視領域の広範囲で波長選択のできる色素レーザーや波長633nmのヘリウムネオンレーザー、最近開発されている波長680、650、635nm付近の高出力半導体レーザー、波長532nmの高調波変換YAGレーザーなどが挙げられる。本発明では、これらから選択される一波長または複数波長において高密度記録及び再生が可能となる。
【0069】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0070】
〔実施例1〕
窒素気流下、ジクロロメタン40mlに2,4−ジメチルピロ−ル2.5gおよび1−メチル−2−ピロ−ルカルボキシアルデヒド1.4gを溶解し、トリフルオロ酢酸116mg加えて室温で3時間撹拌した。この溶液に更にジクロロメタン40mlを加えた後、0.1Nの苛性ソ−ダ水溶液100mlで洗浄し、水洗後、ジクロロメタンを溜去し、下記式(1−a)で示される化合物3.4gを得た。
【0071】
【化12】
【0072】
次に、ジクロロメタン50mlに式(1−a)で示される化合物3.3gを溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)2.7g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン4.5gを加えて30分間撹拌した後、ボロントリフルオリドエチルエ−テルコンプレックス5gを加え更に2時間撹拌した。水洗後、ジクロロメタンを溜去し、クロマトグラフィ−(シリカゲル/クロロホルム:メタノ−ル=20:1)にて精製し、下記構造式(3−1)で示される化合物を3g得た。
【0073】
【化13】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0074】
【表5】
MS(m/e):327(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において513nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は2.67×105ml/g.cmであった。
【0075】
〔実施例2〕
窒素気流下、ジクロロメタン40mlに2,4−ジメチル−3−エチル−ピロ−ル3.2gおよび1−メチル−2−ピロ−ルカルボキシアルデヒド1.4gを溶解し、トリフルオロ酢酸116mg加えて室温で3時間撹拌した。この溶液に更にジクロロメタン40mlを加えた後、0.1Nの苛性ソ−ダ水溶液100mlで洗浄し、水洗後、ジクロロメタンを溜去し、下記式(1−b)で示される化合物4.2gを得た。
【0076】
【化14】
【0077】
次に、ジクロロメタン50mlに式(1−b)で示される化合物3.9gを溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)2.7g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン4.5gを加えて30分間撹拌した後、ボロントリフルオリドエチルエ−テルコンプレックス5gを加え更に2時間撹拌した。水洗後、ジクロロメタンを溜去し、クロマトグラフィ−(シリカゲル/クロロホルム:メタノ−ル=20:1)にて精製し、下記構造式(3−2)で示される化合物を3.2g得た。
【0078】
【化15】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0079】
【表6】
MS(m/e):383(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において538nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.99×105ml/g.cmであった。
【0080】
〔実施例3〕
窒素気流下、ジクロロメタン40mlに2,4−ジメチル−3−エチル−ピロ−ル3.2gおよび1−イソアミル−2−ピロ−ルカルボキシアルデヒド1.76gを溶解し、トリフルオロ酢酸116mg加えて室温で3時間撹拌した。この溶液に更にジクロロメタン40mlを加えた後、0.1Nの苛性ソ−ダ水溶液100mlで洗浄し、水洗後、ジクロロメタンを溜去し、下記式(1−c)で示される化合物4.4gを得た。
【0081】
【化16】
【0082】
次に、ジクロロメタン25mlに式(1−c)で示される化合物2.3gを溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)1.4g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン2.3gを加えて30分間撹拌した後、ボロントリフルオリドエチルエ−テルコンプレックス2.5gを加え更に2時間撹拌した。水洗後、ジクロロメタンを溜去し、クロマトグラフィ−(シリカゲル/クロロホルム:メタノ−ル=20:1)にて精製し、下記構造式(3−3)で示される化合物を2.0g得た。
【0083】
【化17】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0084】
【表7】
MS(m/e):439(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において539nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.69×105ml/g・cmであった。
【0085】
〔実施例4〕
エタノ−ル50mlに式(1−b)で示される化合物2.5gを溶解し、DDQ1.4g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液に酢酸コバルト(四水和物)1.8gを加えて還流下2時間撹拌した。冷却後、析出物を濾取し、水洗後、トルエンで再結晶して下記構造式(2−1)で示される化合物を2.4g得た。
【0086】
【化18】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0087】
【表8】
MS(m/e):728(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において517nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.04×105ml/g・cmであった。
【0088】
〔実施例5〕
エタノ−ル100mlに式(1−c)で示される化合物3.9gを溶解し、クロラニル2.45g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液に酢酸ニッケル(四水和物)2.5gを加えて還流下2時間撹拌した。冷却後、析出物を濾取し、水洗後、トルエンで再結晶して下記構造式(2−2)で示される化合物を3.9g得た。
【0089】
【化19】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0090】
【表9】
MS(m/e):840(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において530nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は0.82×105ml/g・cmであった。
【0091】
〔実施例6〕
エタノ−ル56mlに式(1−a)で示される化合物2.8gを溶解し、クロラニル2.45g加えて室温で30分間撹拌した。この溶液に酢酸亜鉛1.8gを加えて還流下2時間撹拌した。冷却後、析出物を濾取し、水洗後、トルエンで再結晶して下記構造式(2−3)で示される化合物を2.9g得た。
【0092】
【化20】
下記の分析結果より目的物であることを確認した。
【0093】
【表10】
MS(m/e):622(M+)
このようにして得られた化合物はクロロホルム溶液中において493nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.40×105ml/g.cmであった。
【0094】
〔実施例7〕
化合物(3−2)0.2gをジメチルシクロヘキサン10mlに溶解し、色素溶液を調製した。基板は、ポリカーボネート樹脂製で連続した案内溝(トラックピッチ:0.8μm)を有する直径120mmφ、厚さ1.2mmの円盤状のものを用いた。
【0095】
この基板上に色素溶液を回転数1500rpmでスピンコートし、70℃3時間乾燥して、記録層を形成した。この記録層の吸収極大は545nmであり、光学定数は、680nmではnが2.1、kは0.05であり、650nmではnが2.2、kは0.06であり、635nmではnが2.3、kは0.08である。
【0096】
この記録層の上にバルザース社製スパッタ装置(CDI−900)を用いてAuをスパッタし、厚さ100nmの反射層を形成した。スパッタガスには、アルゴンガスを用いた。スパッタ条件は、スパッタパワー2.5kW、スパッタガス圧1.0×10−2Torrで行った。
【0097】
さらに反射層の上に紫外線硬化樹脂SD−17(大日本インキ化学工業製)をスピンコートした後、紫外線照射して厚さ6μmの保護層を形成し、光記録媒体を作製した。
【0098】
得られた光記録媒体に、波長635nmでレンズの開口数が0.6の半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、線速度3.5m/s、レーザーパワー8mWで最短ピット長0.44μmになるように記録した。記録後、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッド(レンズの開口数は0.6)を搭載した評価装置を用いて信号を再生し、反射率、エラーレート及び変調度を測定した結果、いずれも良好な値を示した。
【0099】
次に680nm半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、線速度1.4m/s、レーザーパワー10mWで最短ピット長0.60μmになるように記録した。この記録した媒体を680nm、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)を用いて信号を再生し、反射率、エラーレート及び変調度を測定した。いずれも良好な値を示した。
【0100】
このように、この媒体は複数のレーザー波長で記録及び再生を良好に行うことが出来た。
【0101】
なお、エラーレートはケンウッド社製CDデコーダー(DR3552)を用いて計測し、変調度は以下の式により求めた。
変調度={(信号の最大強度)−(信号の最小強度)}/(信号の最大強度)
【0102】
〔実施例8〕
基板にポリカーボネート樹脂製で連続した案内溝(トラックピッチ:0.8μm)を有する直径120mmφ、厚さ0.6mmの円盤状のものを用いる以外は実施例7と同様にして塗布及び反射層を形成した。
【0103】
さらに反射層上に紫外線硬化性接着剤SD−301(大日本インキ化学工業製)をスピンコートし、その上にポリカーボネート樹脂製で直径120mmφ、厚さ0.6mmの円盤状基板を乗せた後、紫外線照射して貼り合わせした光記録媒体を作製した。
【0104】
作製した媒体に、0.6mm厚に対応した635nm半導体レーザーヘッドを搭載している以外は実施例1と同様にパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて記録した。記録後、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッドを搭載した評価装置を用いて信号を再生し、反射率、エラーレート及び変調度を測定した結果、いずれも良好な値を示した。
【0105】
〔実施例9〜26〕
表−1、2に記載したジピロメテン金属キレート化合物を用いる以外は、実施例8と同様にして光記録媒体を作製した。
【0106】
作製した媒体に実施例7と同様に635nm半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて記録した。記録後、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッドを搭載した評価装置を用いて信号を再生し、反射率、エラーレート及び変調度を測定した結果、いずれも良好な値を示した。
【0107】
〔実施例27〕
化合物(2−1)と塗布溶媒としてジアセトンアルコールを用い、基板にポリカーボネート樹脂製で連続した案内溝(トラックピッチ:0.53μm)を有する直径120mmφ、厚さ0.6mmの円盤状のものを用いる以外は実施例8と同様にして光記録媒体を作製した。
【0108】
この記録層の吸収極大は525nmであり、光学定数は、532nmではnが2.3、kは0.10である。
【0109】
作製した媒体に、0.6mm厚に対応した532nmYAG高調波変換レーザーヘッドを搭載した光ディスク評価装置及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、線速度3.8m/s、レーザーパワー7mWで記録した。記録後、同評価装置を用いて信号を再生した結果、反射率は約50%、エラーレートが7cps及び変調度が0.65であり、いずれも良好な値を示した。
【0110】
〔比較例1〕
実施例8において、ジピロメテン金属キレート化合物(3−2)の代わりに、ペンタメチンシアニン色素NK−2929[1,3,3,1’,3’,3’−ヘキサメチル−2’,2’−(4,5,4’,5’−ジベンゾ)インドジカルボシアニンパークロレート、日本感光色素研究所製]を用いること 以外は同様にして光記録媒体を作製した。作製した媒体に実施例7と同様に635nm半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、線速3.5m/s、レーザーパワー7mWで記録した。記録後、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッドを搭載した評価装置を用いて信号を再生した結果、反射率は低く、エラーレートは大きく、変調度も小さかった。さらに、長時間再生していると信号が劣化した。
【0111】
〔比較例2〕
比較例1において、NK2929の代わりにトリメチンシアニン色素NK79[1,3,3,1’,3’,3’−ヘキサメチル−2’,2’−インドジカルボシアニンアイオダイド、日本感光色素研究所製]を用いたこと以外は同様にして光記録媒体を作製した。作製した媒体に実施例7と同様に635nm半導体レーザーヘッドを搭載したパルステック工業製光ディスク評価装置(DDU−1000)及びKENWOOD製EFMエンコーダーを用いて、線速3.5m/s、レーザーパワー7mWで記録した。記録後、650nm及び635nm赤色半導体レーザーヘッドを搭載した評価装置を用いて信号を再生した結果、波形が歪み、エラーレートは大きく、変調度も小さかった。さらに、長時間再生していると信号が劣化した。
【0112】
以上の実施例7〜26および比較例1〜2において、記録層の光学定数および各媒体を635nmで記録して、650及び635nmでの再生時の反射率、エラーレート、変調度を表−3にまとめて示す。
【0113】
【表11】
【0114】
【表12】
【0115】
【表13】
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、ジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物を記録層として用いることにより、高密度光記録媒体として非常に注目されている波長520〜690nmのレーザーで記録再生が可能な追記型光記録媒体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光記録媒体及び本発明の層構成を示す断面構造図。
【図2】本発明の光記録媒体の層構成を示す断面構造図。
【符号の説明】
1:基板
2:記録層
3:反射層
4:保護層
1’:基板
2’:記録層
3’:反射層
4’:接着層
5’:基板
Claims (7)
- 下記一般式(1)で示されるジピロメテン系化合物と金属イオンとのジピロメテン金属キレート化合物。
- 基板上に、少なくとも、記録層及び反射層を有する光記録媒体において、記録層中に、請求項1〜3のいずれかに記載のジピロメテン金属キレート化合物を含有する光記録媒体。
- 波長520〜690nmの範囲から選択されるレーザー光に対して記録及び再生が可能である請求項4記載の光記録媒体。
- レーザー波長において、記録層の屈折率が1.8以上、且つ、消衰係数が0.04〜0.40である請求項4記載の光記録媒体。
- 波長520〜690nmの範囲から選択されるレーザー光に対して、基板側から測定した反射率が20%以上である請求項4〜6のいずれかに記載の光記録媒体。
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