JP3613876B2 - 糞便採取用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、糞便を略定量的に採取することができると共に、糞便採取から懸濁液の調製に至る工程を衛生的且つ簡便に実施することができる糞便採取用具及び該糞便採取用具を使用する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
糞便は、血液、尿と同様に、臨床検査試料として好適であり、診断上有用な情報を提供している。とりわけ、糞便中の潜血の検出は、消化器系の疾患、特に大腸癌等の診断上非常に有用であることから、集団検診、老人検診等にも取り入れられており、国民の健康の維持に不可欠なものとなっている。
糞便中の潜血検出法として、従来からグアヤック法等の化学法が利用されていたが、最近は、免疫学的な反応原理に基づく方法が開発されてきている。この方法は、特異性や感度の点で優れているので、糞便中の潜血検出法は、ますますその重要性を増してきている。この免疫学的測定法に基づいて糞便中の潜血を検出するためには、定量的に糞便を採取し、適当な液体中に懸濁させる必要があるため、これらの機能を備え且っその他の器具の使用の必要性がなく、更に、採便時に付着した糞便の拭き取り等の必要性のない簡便で衛生的に操作できる糞便採取用具が強く求められている。
【0003】
このような目的で使用される糞便採取用具としては、従来図6に示すように、下端に滴下部1を形成し、内部に液体2を収容した容器本体3と、該容器本体3に冠着される蓋体4と、該蓋体4に取り付けられた採便ステイック5と、前記容器本体内に固定したゴム栓6と、前記採便ステイック5をその外周に摺擦するように挿通する前記ゴム栓6に形成した貫通孔7とからなり、前記採便ステイック5先端部には糞便を付着させるための螺旋状の溝8を形成した糞便採取用具が知られていた。
【0004】
しかしながら、上記糞便採取用具は、螺旋状の溝8に糞便を付着させるものであるため、溝8内に完全に付着させることが難かしいことと、少量しか付着させることができないものであることから、付着量に誤差が生じ易い難点があった。即ち、完全に溝8に糞便を付着させてゴム栓6を通過させるようにすれば、糞便は略均一に付着させることができるが、実際には素人が採便するため、完全には溝8に糞便を満たさずにゴム栓6を通過させる場合が多いので、ゴム栓6を通過させても溝8には糞便が満たされない部分が生じることから、糞便採取量にバラツキが生じるからである。
【0005】
そればかりか、大腸癌の大部分はS状結腸部や直腸に生じるが、便は形成された後にS状結腸部や直腸部を通過するため、S状結腸癌や直腸癌の場合は、血液は糞便の表面を覆うようになる。しかしながら、上記従来の突き刺す方式の採便ステイック5では、糞便の表面部を効果的に採取できないので、正確に糞便中潜血の有無を判定できない可能性がある問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、糞便を略定量的に且つ簡便に採取することができ、しかも糞便中潜血の有無を正確に判定し得るように糞便を採取するための用具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究の結果、糞便採取棒に設けられている糞便採取部を、ブラシ状若しくはブラシ様状に形成すれば、糞便の表面を転がすようにして容易にその表面部の糞便を採取することができることや、ブラシに均一に糞便を付着させなくとも貫通孔を通過させる過程で、略均一に糞便採取部(ブラシ部)に糞便が付着し、余分な糞便は貫通孔を通過する過程で除去されることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は、糞便を懸濁させる液体を収容する容器本体と、該容器本体の一端に連設する蓋体と、前記容器本体と蓋体との内部空間を区分する分離手段と、該分離手段に形成された貫通孔と、該貫通孔に嵌挿される糞便採取棒とを具備し、該糞便採取棒は、糞便採取棒本体と、該糞便採取棒本体の先端若しくは先端付近に設けられた多数の毛を有する糞便採取部とを有し、該糞便採取棒を前記貫通孔に嵌挿すると前記多数の毛が倒れて前記貫通孔に密接するように構成したことを特徴とする。
また本発明方法は、糞便を懸濁させる液体を収容する容器本体と蓋体との内部空間を区分する分離手段に形成された貫通孔に、多数の毛を有する糞便採取部で糞便を採取した糞便採取棒を嵌挿して、前記多数の毛を倒して余分な糞便は上方に押し上げ、前記糞便採取部には糞便を略定量的に保持させ、前記貫通孔を通過させた多数の毛は起立して、前記容器本体中の液体に糞便を懸濁させることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例を示す断面図であり、下端に先細に形成した滴下部11を有し、内部に液体12を収容した円筒状容器13の上端開口部には、両端が開口し内部に分離壁17を設けた円筒状連結部材25が密嵌して、円筒状容器本体26を形成している。尚、筒状容器13と筒状連結部材25とは、一体化して筒状容器本体26を形成しても勿論良い。
筒状連結部材25の上端開口部には、円筒状蓋体14が螺合若しくは嵌合し、蓋体14の底面中央には、断面円形の糞便採取棒15が密嵌固定されている。
糞便採取棒15は、図1に示すように、前記分離壁17の中央に形成した円形貫通孔16に密嵌摺動し得るようになっている。
【0010】
糞便採取棒15は、ロッド状糞便採取棒本体30の先端に、ブラシ部(糞便採取部)18を連設することにより形成されている。ブラシ部18は、図2に示すように、採取棒本体30の先端に連設された針金若しくは針金を捩って作成されたような線状又は棒状体19を中心として、多数の毛20を固定して、毛の先端を結ぶ外形が略円筒状となるように形成されている。
ブラシ部18は、毛若しくは毛束状のものを固定し、表面を転がすようにして糞便を採取できるものであれば良く、例えば、筆状に形成したり、或は刷毛状に形成しても差し支えない。
【0011】
上記実施例に於いては、毛20は、棒状体19の外周から、棒状体の縦方向(換言すれば、糞便採取棒の縦方向)に対し、水平方向に多数連設され、毛の先端を結ぶ外形が略円筒状になるように形成されているが、これは必ずしもこのようでなくとも良い。棒状体19の縦方向に対して、上向き、下向き及び水平方向の毛が単独若しくは混在するようにしても良い。
【0012】
毛20の長さも同一でなく、長短混在させても差し支えない。また、棒状体の外周に満遍なく形成しても、局部的に偏在させても良い。尚、棒状体の代わりに針金のような線状体のものも同様に使用可能である。
【0013】
図3及び図4は、本発明の糞便採取棒15の他の例を示すものであり、多数の毛20は糞便採取棒本体30の先端部に直接多数連設されてブラシ部18を形成している。
上記実施例に於いては、毛20は、図4に於いて、上下方向にのみ連設され、毛の先端を結ぶ外形が略楕円筒状になるように形成されている。
ブラシ部18を上記図3及び図4のように形成すると、採取棒15を回転させて糞便を採取することにより、表面の糞便だけでなく、内部の糞便も一緒に採取することができる。また回転による採取と、突き刺す方式による採取とを併用する場合に好都合である。
【0014】
本発明に使用する毛20の材質としては、可とう性のものが好ましいが、毛20が貫通孔16を通過するとき屈曲し得るなら硬い材質のもので形成しても良い。例えば、歯ブラシの毛に使用されている材質の毛が好適に使用できる。
本発明に使用する毛20の材質としては、例えば、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、例えばナイロン等のポリアミド樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0015】
上記実施例に於いては、筒状連結部材25の上端は、斜めの切断面(より具体的には、円筒を斜めに切断した形状)27に形成されている。これは必ずしもこのようにする必要はないが、このようにすると、糞便採取棒15が挿入し易くなる。
また、上記実施例に於いては、分離壁17の上面21は、貫通孔16に向かってテ−パ−状に下降している。これは、必ずしもこのようでなくとも良いが、このように構成すると、ブラシ部18を貫通孔16に嵌挿させ易くなるので好ましい。
【0016】
分離壁17は、栓体のように別体として形成しても、或は筒状連結部材25若しくは筒状容器13と一体に形成しても差し支えない。また、別体として形成し、上端部を容器本体26上端に密嵌係止するようにしても良い。
分離壁17は、ゴム、シリコン、軟質プラスチック等のような弾性材料や合成樹脂で形成すると良い。分離壁17をゴムのような弾性材料で形成すると、ブラシ部18を強く弾性押圧することができるから、特に好ましい。
【0017】
滴下部11は漏斗状に形成され、上端にはフイルター22が装着されている。採取した糞便を液体中に懸濁させた後、滴下部足部23下端から濾液を滴下させるときは、足部下端を通常の方法により穿孔しても或は足部23の適当な位置にくびれ28を形成し、くびれ部28を手で折っても良い。
上記フイルタ−22は、糞便を懸濁させた溶液中の不溶物を漉し取るために設けられるものであり、通常は容器内部に装着されるものであるが、該溶液を潜血検出用に供する際に、溶液中の不溶物を漉し取ることができるように適宜外部に装着するようにしても良い。また、フイルタ−22が所定位置から外れないようにするために、図5に示す如く爪29を設けても良い。
【0018】
本発明の糞便採取用具は、図1に示す状態で市販しても良い。その場合、採取棒15は、貫通孔16に密嵌して栓体の役割をするようにすれば良い。また、採取棒15を備えた蓋体14と容器本体13とを別体とし、貫通孔16には栓体を密嵌させて市販しても良い。この場合、使用に際し、ブラシ部18を貫通孔16に嵌挿させることによって、栓体は、液体中に落下するようにすると良い。
【0019】
本発明の糞便採取用具の密封性を高めるため、キャップ14と容器本体26との当接部にゴム、シリコン、軟質プラスチック等の弾性材料を設けるようにしても良い。また、前記分離壁17をゴム等の弾性材料で容器本体26上端に係止するように構成し、パッキンの役割をするように構成しても良い。勿論パッキンを介在させても良い。
ブラシ部18に付着した余分の糞便が液体12中に混入するのを防止するため、糞便採取棒15は、密嵌摺動し得るようにすると良い。密嵌摺動し易くするため、分離壁17は、ゴム等の弾性材料で形成すると良い。
【0020】
図5は、本発明の他の実施例を示すものであり、糞便採取棒本体30は、先端に細長い棒状体若しくは線状体31を連設した段部32を有する形状に形成され、該棒状体若しくは線状体31が貫通孔16を密嵌摺動し得るようになっている。
上記実施例では、貫通孔16上端を凹状に形成し、段部32を該凹状部に密嵌する凸状に形成し、両者を密嵌させて、所謂栓の役割を果すような構造としている。
【0021】
次に、上記図1〜図4に示すように構成された本発明の糞便採取用具を使用する方法を説明する。
図2に示すように、糞便採取棒15を容器本体26から分離した状態で、ブラシ部18の外周部を糞便上で転がすようにして、表面の糞便を採取する。S状結腸癌や直腸癌等の場合には、糞便表面に血液が存在する確率が高いが、このようにすればこれを容易に採取することができる。
【0022】
ついで、このブラシ部18を容器本体13の分離壁17の貫通孔16に嵌合させる。この状態でブラシ部18の毛は、倒れて貫通孔16に密接するので、糞便は弾性押圧されるから、ブラシ部18中に満遍なく拡がり、余分な糞便は上方に押し上げられて分離壁17の上面に除かれる。
それから、ブラシ部18を液体12中に没入させると、ブラシ部18の毛20は勢い良く起立し、その反発力で強く液体12に当たるので、ブラシ部18に付着した糞便は、容易に液体12中に懸濁させることができる。
【0023】
従来の図6に示す採取棒では、糞便は容易に液体12中に懸濁しない場合も生じたが、本発明のブラシ部18に付着した糞便は、大きな塊となっていないことと、接触面積が大きくなることから、必要なら震盪することによって、容易に且つ完全に液体12中に懸濁させることができる。
このようにして、液体12中に懸濁させた糞便は、このまま検査所に輸送することができる。輸送後は、通常の方法により、フイルター22を通して滴下部下端から滴下して検査すれば良い。
本発明の糞便採取棒15は、従来と同じように、突き刺すようにして、糞便を採取しても良い。この場合でも、従来法と比べて定量性が高められる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、糞便採取部を多数の毛を設けたブラシ様とすることによって、糞便の表面部を効果的に採取することができるので、大腸癌を正確に検査することができるほか、従来の凹部に採取するのと比べて満遍なくブラシ部に付着させることができるから、定量性が向上すると共に、採取した糞便を容易に且つ完全に液体中に懸濁させることができ、大腸癌等を容易に且つ簡便に検診できる等、この種従来の糞便採取具には全く見られなかった著しく顕著な効果を奏する。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の糞便採取棒の断面図である。
【図3】本発明の糞便採取棒の他の例を示す側面図である。
【図4】図3のA−A′断面図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図6】従来の糞便採取用具を示す断面図である。
【符号の説明】
11 滴下部
12 糞便を懸濁させる液体
14 蓋体
15 糞便採取棒
16 貫通孔
17 分離壁
18 ブラシ部(糞便採取部)
26 容器本体
30 糞便採取棒本体
Claims (16)
- 糞便を懸濁させる液体を収容する容器本体と、該容器本体の一端に連設する蓋体と、前記容器本体と蓋体との内部空間を区分する分離手段と、該分離手段に形成された貫通孔と、該貫通孔に嵌挿される糞便採取棒とを具備し、該糞便採取棒は、糞便採取棒本体と該糞便採取棒本体の先端若しくは先端付近に設けられた多数の毛を有する糞便採取部とを有し、該糞便採取棒を前記貫通孔に嵌挿すると前記多数の毛が倒れて前記貫通孔に密接するように構成したことを特徴とする糞便採取用具。
- 前記糞便採取部が、ブラシ状又はブラシ様状に形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記多数の毛が、前記糞便採取棒の縦方向に対して、水平、上向き若しくは下向き、またはこれらを混在させて連設されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記糞便採取部が、線状若しくは棒状体に多数の毛を連設して形成されたものである請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記多数の毛が、前記線状若しくは棒状体の外周部に満遍なく或は局部的に偏在している請求項1または4に記載の糞便採取用具。
- 前記多数の毛の先端を結ぶ外形が、略円筒形若しくは略楕円形となるように形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記多数の毛が、合成樹脂で形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記糞便採取棒が、前記蓋体に連設されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記容器本体の他端に、フイルタ−を有する滴下部が形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記糞便採取棒本体が、前記貫通孔に密嵌摺動し得るように形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記容器本体が、下端に滴下部を有する筒状容器の上端開口部に、内部に分離壁を設けた筒状連結部材を密嵌することにより形成されている請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記糞便採取棒本体を、先端に細長い棒状体若しくは線状体を連設した段部を有するように形成し、該棒状体若しくは線状体を前記貫通孔に密嵌摺動し得るように形成している請求項1に記載の糞便採取用具。
- 前記貫通孔上端を凹状に形成し、前記糞便採取棒本体段部を、前記凹状部に密嵌する凸状に形成している請求項12に記載の糞便採取用具。
- 前記分離手段が、前記容器本体内周面に連設され且つ弾性材料で形成されている請求項1、12または13に記載の糞便採取用具。
- 糞便を懸濁させる液体を収容する容器本体と蓋体との内部空間を区分する分離手段に形成された貫通孔に、多数の毛を有する糞便採取部で糞便を採取した糞便採取棒を嵌挿して、前記多数の毛を倒して余分な糞便は上方に押し上げ、前記糞便採取部には糞便を略定量的に保持させ、前記貫通孔を通過させた多数の毛は起立して、前記容器本体中の液体に糞便を懸濁させることを特徴とする糞便を採取し懸濁液を調整する方法。
- 前記糞便採取棒の先端若しくは先端付近に形成した多数の毛を有する糞便採取部を、糞便の表面に転がして糞便を採取する請求項15記載の方法。
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