JP3613495B2 - 形状保持性、形状回復性に優れた肩パット - Google Patents

形状保持性、形状回復性に優れた肩パット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コート、スーツ、ブラウス等、衣料上衣の両肩部に使用されるパットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的に使用される肩パットは、不織布シート等の数点の部材から構成された物(特開平4−222264号公報、特開平5−177634号公報)や、綿を布帛でくるんで構成された物などを始めとして各種存在している。そして、これら肩パットは、不織布の厚みや詰め綿の膨らみで、上衣肩部の形状を整えていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしなら、従来の肩パットは、輸送中、あるいは収納中に、押さえつけられた状態で長期間放置されると、実際の使用時に当初の形状に戻らず、これを用いた衣料は、たとえば、店頭ディスプレイにおいて高級感を損ない、また、収納後取り出して着用する場合、型くずれの感を免れない。
【0004】
このような欠点を防ぐために、パット自体の厚みを増したり、硬度が高く変形の少ない素材を用いたパットとすると、特異な形態のファッションスタイルとなったり、輸送中にかさばって、一定容積に収納し得る上衣の数量が減ってしまうという問題が生ずる。
本発明はかかる問題点を解決するものであって、その目的は、特定のメッシュシートを内部に封入することによって、輸送、保管時の柔軟性と、比較的厚みの少ないパットでも使用時の形状保持性、形状回復性を与えることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、短繊維からなる複数のシート状物が積層され且つ所定の形状に成形されてなる肩パットにおいて、繊維径が0.3〜1.0mmである繊維からなり、鞘成分の融点が芯成分の融点よりも低い芯鞘型複合フィラメント糸を用い、当該繊維の交叉点を融着せしめたメッシュシートを挟んで、低融点繊維を混用せしめた不織布シートが積層され、該メッシュシートの空隙率が20%以上であり、該メッシュシートは該芯鞘型複合フィラメント糸が経糸群及び/または緯糸群の一部にあるいは経糸群または緯糸群の一方のみに用いられ、上下に位置するシート状物は該メッシュシートの空隙を通じて相互に絡み合ったことを特徴とする形状保持性、形状回復性に優れた肩パットである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の肩パットは、短繊維からなる複数のシート状物からなり、適度な毛羽を有するものが好ましく、かかるシート状物としては具体的には不織布シートあるいは綿等の短繊維ウエブをいう。
【0007】
ここで、不織布シートとしては、種々の短繊維を用いることが可能であるが、安全性に問題のある樹脂加工等を必要としない点で後述するような低融点繊維を混用したものが好ましい。また、低融点繊維に加えて、中空繊維を混用すれば、軽量化を図ることも可能となる。更に、熱収縮率等の異なる複数の成分をサイドバイサイド状等に接合したものは、熱処理によりスパイラル状の捲縮が発現し短繊維同士の絡み合いが多くなるため好ましい。具体的には、3〜15d程度のポリエステル短繊維を用い、低融点繊維の比率を20〜40%程度とすることが好ましい。
また、ニードルパンチによるフェルト化は、特別な設備が必要となる他、凹凸が生じたり、均一なフェルト化が困難であるのに対し、低融点繊維を用いた場合は、後加工において熱処理を施すだけで均一なフェルト化が可能であって好ましい。
【0008】
一方、短繊維ウエブとしては、例えば、前記の不織布シートにおいて、低融点繊維を混用しないもの等をいい、特に短繊維の積極的な接合処理を施さないものをいう。
このようなシート状物は、目付が100〜400g/m 、厚みが1〜5mm程度のものが好ましい。
【0009】
本発明の肩パットは、かかる不織布シートを積層して所定の形状に成形したり、短繊維ウエブを所定形状の側地でくるんで成形したりしたものであり、このような肩パットの構造自体は公知である。
一方、本発明の肩パットは、前記の如きシート状物を、後述する特定のメッシュシートを挟んで積層したもので、メッシュシートが肩パットの中心部に封入された構造を採るものである。
【0010】
以下、本発明で用いるメッシュシートについて説明する。
メッシュシートは、低融点成分を含む融着繊維を用い、繊維の交叉点を融着せしめたものを用い、具体的には、鞘成分が低融点の樹脂成分であり、芯成分が鞘成分より融点の高い樹脂成分である芯鞘型複合フィラメント糸を用いたメッシュ織物、メッシュ編物が好ましい。
【0011】
メッシュ織物の場合、織布を構成する経糸群及び/または緯糸群の全部、またはその一部に、あるいは経糸群または緯糸群の一方のみに該芯鞘型複合フィラメント糸を使用すれば良い。但し、芯鞘型複合フィラメント糸の含有量が、織物重量の25重量%以下では、後述する硬さが不足するおそれがある。
【0012】
芯鞘型複合フィラメント糸を構成する鞘成分の融点は、前述の通り、芯成分の融点より低いものを使用するが、好ましくは、芯成分の融点より20℃以上低い樹脂成分を使用する。前記芯成分は、エステル系ポリマーまたはアミド系ポリマー等の通常の繊維形成性ポリマーからなるものでよく、又鞘成分に使用される低融点ポリマーは同一系統の低融点ポリマー、例えば芯成分がポリエステル繊維の場合は、イソフタル酸共重合ポリエステルがあげられる。
【0013】
本発明では、前記メッシュシートの空隙率が20%以上であることが重要である。すなわち、メッシュシートの空隙率が20%未満になると、メッシュシートを挟んで積層された上下の不織布シートまたは短繊維ウエブ同士の絡み合いが少なくなりパットの一体感が損なわれ、またメッシュシートの移動を抑えるためには、接着剤等を併用しなければならず、風合いを硬化させてしまう。一方、空隙率が20%未満となるとメッシュシートの密度が高くなる点でも風合いの硬化が生ずるおそれがある。
【0014】
ここで、空隙率とは、メッシュ織物にあってはその平面図である図3に示す如く経糸7の繊維径(a)と隣接する経糸の間隔(A)及び緯糸8の繊維径(b)と隣接する緯糸の間隔(B)について、(((A−a)×(B−b))/A×B)×100により求められる値をいう。次に、メッシュシートを構成する糸の繊維径は、0.3〜1.0mmとすることが必要である。すわち、繊維径が1.0mmを超えると、メッシュシートが硬くなり、この場合は、例え空隙率が20%あっても、芯織物の表裏の間隔が広くなりすぎるため、また、繊維径が0.3mm未満になると個々の空隙の大きさが微細となるため、どちらの場合も空隙を通じて上下に位置するシート状物が相互に絡み合うことが少なくなる。
【0015】
ここで、糸の繊維径は、見かけ上の繊維径で判断する。例えば、前記芯鞘型複合フィラメント糸としてマルチフィラメントを用いた場合、後の熱処理によって各単糸フィラメントが溶融して収束し、見かけ上モノフィラメントの如き形態をなす。この場合は、この一体化したマルチフィラメント全体の直径をもって、本発明では繊維径と判断する。
【0016】
また、前記芯鞘型複合フィラメント糸の如き融着糸を用いた場合は、シートを製作後加熱処理を施して融着を行う必要があり、織物の場合、直接機台上で加熱融着を行ったり、後加工において加熱処理を施したりする方法を採ることができる。
【0017】
以上の如きメッシュシートは、前述の如くシート状物と積層して成形することにより肩パットとなす。かかる際、肩パットは衣料に取り付けてもその存在が目立たず、着用時に体のシルエットを引き立てるものが好ましいため、一様の硬さを持つ物でなく、前述した機能が出るよう必要な部分のみ硬さを持たせる一方、全体としては柔らかさを残すものが好ましい。
【0018】
そのため、メッシュシートは、前記芯鞘型複合フィラメント糸を経緯方向の一方のみに用いる等して、その方向に応じて硬さを変え、肩パットの成形時にその方向性を考慮することが好ましい。この場合、メッシュシートの硬さの違いは、図4に示す如く、張り出し5cmのカンチレバー状態で測定して、24時間後の先端変位量(距離)の比(c:d)において、1:5以上、好ましくは1:10以上となすことが望ましい。
このような、メッシュシートは、経方向、緯方向のいずれを硬くしても良く、肩パットの組立時に、肩の線に沿った直角方向に硬くなるよう使用すれば良い。
【0019】
尚、本発明で用いるメッシュシートは、1つの部品のみで構成される肩パットにおいても弾力性を付与するため、その内側にメッシュシートを張り付けて使用することも可能である。この場合でも、前記の如く、硬さの方向を考慮すると良い。
また、肩パットに封入するメッシュシートは、単数だけでなく、目的とする弾性等に応じて複数であってもよい。
【0020】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明に係る肩パットの実施例を説明する。
図1は、本発明に係る肩パットの平面図であり、図2(A)は該肩パットの片面を巻き上げ内部構造を示した説明図、図2(B)は該肩パットの断面図である。
これら図面において、1は下部外層不織布シート、2は上部外層不織布シート、3は下部内層不織布シート、4は上部内層不織布シート、5は上部メッシュ織物、6は下部メッシュ織物である。
【0021】
これらの部材は図2(B)に示す如く積層し、凹状の金型に挟んで熱セットすることにより立体形状に成形し、更に、分解しないように、衣料に取り付けられたとき首に遠くなる側を糸縫いして肩パットとなした。
【0022】
また、不織布シート1、2、3、4は、中空率25%の中空ポリエステル短繊維6d×51mmと、芯ポリエステル、鞘イソフタル酸共重合ポリエステルの芯鞘型複合フィラメント4d×51mmを、7:3の混率で含み、150℃で熱処理した厚さ3mm、目付け70g/m のものを使用した。
【0023】
更に、メッシュ織物は、経糸にポリエステル240デニール48フィラメントをS80T/Mで2本合撚した糸を、緯糸に芯ポリエステル、鞘イソフタル酸共重合ポリエステルの複合フィラメント250デニール16フィラメントをS80T/Mで3本合撚した糸を使用し、経密度28本/インチ, 緯密度20本/インチに織り上げ次いで機台上で熱処理して、経緯糸の交叉点を相互に十分融着させた。
【0024】
尚、メッシュ織物は、図2(A)のD方向を経方向として同方向にポリエステルフィラメントを用いた。
【0025】
また、比較例として、メッシュ織物5、6のみを16番手ポリエステルスパン糸、経緯合計密度100本/インチの織物に変えて、同様に肩パットを製作した。
【0026】
実施例と比較例の肩パットを夫々10回洗濯し、洗濯前後の折曲げヒステリシスを、テンシロンを用いて調査した。結果を図5に示す。
【0027】
また、実施例と比較例の肩パットについて、サンプルを2つ折にした状態で、上から500gの荷重をかけ、7日間放置した後、荷重を取り除いて、角度回復状態を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003613495
【0029】
【発明の効果】
本発明の肩パットは、形状回復性に優れるため、従来の肩パットが、輸送中、あるいは収納中に押さえつけられた状態で長期間放置された場合、衣料の変形を来たし、販売店頭でのディスプレイで高級感を損ない、また、収納後取り出して着用する場合の型くずれ等が生ずるという問題を解決することができる。
【0030】
また、衣料用に用いる肩パットにとって大切なことは、着用時に体のシルエットを引き立てることであるが、本発明の肩パットは、衣料に取り付けてもその存在が目立たず、着用時に体のシルエットを崩すことがない。尚、経緯で硬度を変えることによって、必要な部分のみ硬さを持たせ、全体として柔らかさを残すことのも可能である。
【0031】
更に、本発明の肩パットは、洗濯を繰り返しても、芯織物の交叉点が固定されているため、初期の性能を保つことが出来る。尚、芯鞘型複合フィラメント糸を用いた場合は、織物の経または緯に配された複合糸が、熱処理によって各単糸フィラメントが互いに融着して、モノフィラメント状になり、硬さと耐洗濯性をさらに向上せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の肩パットの平面図である。
【図2】本発明の肩パットの内部構造を示す説明図である。
【図3】メッシュ織物の平面図であって、空隙率を説明するものである。
【図4】先端変位量の測定方法を示す説明図である。
【図5】肩パットの変形ヒステリシスを示すグラフである。
【符号の説明】
1 下部外層不織布シート
2 上部外層不織布シート
3 下部内層不織布シート
4 上部内層不織布シート
5 上部メッシュ織物
6 下部メッシュ織物
7 経糸
8 緯糸

Claims (4)

  1. 短繊維からなる複数のシート状物が積層され且つ所定の形状に成形されてなる肩パットにおいて、繊維径が0.3〜1.0mmである繊維からなり、鞘成分の融点が芯成分の融点よりも低い芯鞘型複合フィラメント糸を用い、当該繊維の交叉点を融着せしめたメッシュシートを挟んで、低融点繊維を混用せしめた不織布シートが積層され、該メッシュシートの空隙率が20%以上であり、該メッシュシートは該芯鞘型複合フィラメント糸が経糸群及び/または緯糸群の一部にあるいは経糸群または緯糸群の一方のみに用いられ、上下に位置するシート状物は該メッシュシートの空隙を通じて相互に絡み合ったことを特徴とする形状保持性、形状回復性に優れた肩パット。
  2. 前記不織布シートは、熱収縮率の異なる複数の成分をサイドバイサイド状に接合したものを含むものである請求項1記載の肩パット。
  3. 前期メッシュシートの経緯方向の硬さの違いは、張り出し5cmのカンチレバー状態で測定して、24時間後の先端変位量(距離)の比が1:5以上である請求項1または2記載の肩パット。
  4. 前記シート状物は、目付が100〜400g/m 、厚みが1〜5mmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の肩パット。
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