JP3613360B2 - タービンの非常調速機のオイルトリップ試験装置 - Google Patents

タービンの非常調速機のオイルトリップ試験装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、運転中に蒸気タービン等のタービンの過速度を検出する非常調速機の動作の検証試験を行うオイルトリップ試験の試験装置の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来の蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
タービンの保護装置のうち過速度に対するものは最も重要である。この保護装置のなかで非常調速機によるものは、タービンの回転数が定格の110〜111%になると、図3に示すタービンのロータ1内に設置された非常調速機2,2の飛出し棒3,3が加速により増加した遠心力によりロータ1外に飛び出して、非常調速機指示装置4のレバー5,5を叩き、非常調速機指示装置4のパイロット弁6,6がバネ6a,6aに抗して移動して、このパイロット弁6,6の動作を近接スイッチ7、7により電気的に検出して、これらの検出信号8,8により電気式タービン保安装置9の危急遮断装置が作動し、制御潤滑油圧を遮断して蒸気加減弁・主蒸気止め弁等のタービン入口弁を緊急全閉してタービンをトリップするものである。
なお、前記した非常調速機は信頼性の観点から通常上記したように同一構造のものを2個設けてある。
【0003】
オイルトリップ試験は、前記したタービンの過速度を検出して保護する非常調速機が正常に動作するかを確認する試験であり、この試験は、前記した非常調速機の作動を油圧によりタービン運転中にタービンを停止させることなく行うものである。
【0004】
以下、従来のオイルトリップ試験装置による試験方法を図4に基づいて説明する。
(1) まず、前記したようにオイルトリップ試験により運転中のタービンの電気式タービン保安装置9が作動しないように、タービン保安試験装置10よりの指令Aにより、スイッチBを開いて非常調速指示装置4,4からの検出信号8が前記タービン保安試験装置10に送信(C,C)されて電気式タービン保安装置9に伝達しないようにロックアウトをかける。
(2) 圧力準備電磁弁11が励磁され、主油ポンプ12からの潤滑油の圧油がオイルトリップ試験用送油制御器13とリセット電磁弁14,14まで導かれ、これらに連結されている油配管に接続されている準備油圧高確認用圧力スイッチ15の作動によって、油圧が規定値以上であることを確認する。
(3) タービン保安試験装置10からの開度指令により、オイルトリップ試験用送油制御器13を操作し、所定の油圧の試験油をタービンのロータ前部の軸1aの軸方向に貫通した貫通孔1bを介して非常調速機2,2へ導き、試験油圧低検出用圧力スイッチ17の作動により検出した試験油圧が所定値以上に上昇すると、前記非常調速機2,2がこの油圧により作動する。この場合に試験油圧高検出用圧力スイッチ18が作動せず前記した油圧が許容限界値内であることを確認する。
(4) 前記非常調速機2,2の動作を、非常調速機指示装置4のレバー5の移動によるパイロット弁6,6の動作を検出した近接スイッチ7,7の検出信号8,8によりタービン保安試験装置10にて確認する。
(5) 前記した非常調速機2,2の作動後に、オイルトリップ試験用送油制御器13を試験前の状態に戻し、試験油を非常調速機2,2の隙間、及びオイルトリップ試験用送油制御器13を通過して排出して、試験油圧消失確認用圧力スイッチ16が作動したことで油圧が消失したことを確認する。
【0005】
(6) 次に、リセット電磁弁14,14を励磁させ所定の油圧のリセット油を非常調速機指示装置4,4にそれぞれ導き、運転位置に復帰したことを近接スイッチ7,7により確認する。
(7) リセット電磁弁14,14を消磁させ、リセット油圧が消失したことをリセット消失確認用圧力スイッチ19の作動で確認し、また圧力準備電磁弁11を消磁させ油圧が低下したことを準備油圧消失確認用圧力スイッチ20の作動により確認する。
(8) タービン保安試験装置10からの指令AによりスイッチBを作動させ、非常調速機指示装置4,4と電気式タービン保安装置9とのロックアウトを解除して、非常調速機指示装置4,4からの検出信号8,8がタービン運転中に検出可能な状態に復帰させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来のオイルトリップ試験装置において、非常調速機2,2へ所定の油圧の試験油を送油するオイルトリップ試験用送油制御器13は、図4に示すように、油圧を調節する切換弁13a、この切換弁13aを駆動する駆動装置13b、この駆動装置13bを操作するモータ13c、及び前記駆動装置13bにより前記切換弁13aの移動による試験油の送油を遮断及び全開する駆動装置13cの切換弁13aに連結された駆動軸13dのそれぞれの位置を検出するリミットスイッチ13e及び13f等の多くの部品で構成され構造が複雑で高価であるとともに、このオイルトリップ試験用送油制御器13を設置するには、大きな設置スペースを必要としてオイルトリップ試験装置が大がかりになるという問題があった。
【0007】
また、オイルトリップ試験において非常調速機の作動した時の試験油圧が所定の油圧の許容範囲内であるかの確認は、従来は試験油圧高検出用圧力スイッチ18及び試験油圧低検出用圧力スイッチ17の作動の有無の検出により行われているので、試験時の試験油圧値を前記したタービン保安試験装置10にて確認することができず、試験油圧の異常が発生した場合には現場の試験装置の油配管に設けられている油圧を指示する試験油用圧力計21を目視して確認しなければならず、オイルトリップ試験時での異常時における対応が遅くなるという問題もあった。
【0008】
この発明の課題は、従来のような大きな設置スペースを必要とせず、経済的なオイルトリップ試験装置を提供するとともに、オイルトリップ試験時に試験油圧をタービン保安試験装置にて常時監視することを可能として非常調速機の作動試験の信頼性の向上を図ったオイルトリップ試験装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、この発明は、タービンの主油ポンプからの潤滑油の圧油を送油する油配管に一方端が連結された圧油準備電磁弁が設けられ、この圧油準備電磁弁の他方端に連結された油圧を検出する圧力検出器を設けた油配管に、タービン保安試験装置からの開度指令信号により開いて非常調速機のオイルトリップ試験を行うための前記圧油準備電磁弁から前記非常調速機へ油配管を介して試験油の油圧を可変して送油するオイルトリップ電磁比例弁と、非常調速機の作動後の前記タービン保安試験装置からの閉鎖指令信号により前記オイルトリップ電磁比例弁が閉じた後に前記タービン保安試験装置からの開度指令信号により開いて前記非常調速機をリセットするための前記圧油準備電磁弁からリセット油を送油するリセット電磁弁とがそれぞれ並列に連結されるとともに、前記圧油準備電磁弁から非常調速機へ送油する試験油の油圧を検出する圧力検出器が油配管に連結されているものとする。
上記のように、オイルトリップ試験用の試験油を非常調速機へ油圧を変えて送油する制御器を電磁比例弁とする構成からなる装置とすることにより、安価で設置スペースの小さいオイルトリップ試験装置を得ることができる。
【0010】
また、オイルトリップ試験時において、圧油準備電磁弁から非常調速機へ送油する試験油の油圧を検出する圧力検出器が、検出した油圧値をタービン保安試験装置へ送信する圧力発振器からなり、検出された油圧値と非常調速機が動作する所定の油圧値とを比較演算する演算器と、前記の検出した油圧値と演算結果を表示する表示器とを有するものとすることにより、オイルトリップ試験の省力化と試験油圧の異常及び非常調速機の良否の判定をより迅速に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
実施の形態1
図1は、この発明の第1の実施の形態からなる蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
図1に示すように、この発明の実施の形態は、前記した従来の図4に示すオイルトリップ試験装置の圧油準備電磁弁11に連結され、非常調速機2,2へ試験油の送油及び遮断を行うオイルトリップ試験用送油制御器13に代えてタービン保安試験装置10からの指令により開閉動作を行うオイルトリップ試験用電磁比例弁22を設けたことにある。
【0012】
このオイルトリップ試験用電磁比例弁22は、前記したタービン保安試験装置10から、オイルトリップ試験用電磁比例弁22の電磁コイル22aに印加する電圧を可変して出力する電磁比例弁開度指令にて前記電磁比例弁22の電磁弁の開閉を調節して、図2に示すように、非常調速機2,2に送油する試験油圧の値を可変するようにする。
この第1の実施の形態からなるオイルトリップ試験装置による試験は、従来と同様に行われるが、準備油圧高確認用圧力スイッチ15の作動によって、油圧が規定値以上であることを確認した後、図1に示した、試験油圧低検出用圧力スイッチ17の作動が作動し、かつ試験油圧高検出用圧力スイッチ18が作動しない範囲で、図2に示す前記した非常調速機2,2が動作する所定の試験油圧設定範囲内となるように前記したようにタービン保安試験装置10からオイルトリップ試験用電磁比例弁22の電磁コイル22aに電圧を上昇して徐々に印加する。
そして、所定の設定油圧にて非常調速機2,2が動作した後、前記したようにリセット油により非常調速機指示装置4,4を試験前の運転位置に復帰して非常調速機2,2を動作可能な状態に維持する。
【0013】
前記したオイルトリップ試験用電磁比例弁22は、従来のオイルトリップ試験用送油制御器13に比して、電磁弁を電磁コイル22aで駆動する方式であるので、従来の図4に示した油圧を調節する切換弁13aを駆動する駆動装置13bとモータ13c、及び前記切換弁13aと連動する駆動軸13dの位置を検出するリミットスイッチ13e及び13f等を必要としない構成であるので、構造が簡単で形状をも小形化することが可能となる。
【0014】
実施の形態2
図3は、この発明の第2の実施の形態からなる蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
この発明の実施の形態では、前記した第1の実施の形態の非常調速機2,2へ送油される油配管に圧力発振器23を設けてあり、この圧力発信器23は、タービン保安試験装置10からの開度指令により開いたオイルトリップ電磁比例弁22から送油されてきた試験油の油圧を検出して、その検出した油圧値をタービン保安試験装置10へ送信する構成からなっている。
【0015】
前記した圧力発振器23を設けることにより、従来のオイルトリップ試験装置の試験油の油圧の監視用の試験油圧高検出用圧力スイッチ18及び試験油圧低検出用圧力スイッチ17を設置することなく、前記圧力発信器23からの検出信号によりタービン保安試験装置20にて常時試験油の油圧値を確認できるとともに、非常調速機2,2が動作した時の試験油圧を前記タービン保安試験装置10からの非常調速機指示装置4,4からの検出信号8,8を受信した時点の値を検出することにより読み取ることができる。
【0016】
更に、この実施の形態では図3に示すように、前記した圧力発信器23からの油圧値を非常調速機2,2が動作する所定の設定値と比較演算する演算器24と、前記圧力発信器23からオイルトリップ試験時での油圧の経時変化と、前記制御器24からの結果とを表示するプリンタ、LED及びブラウン管等の表示器25をタービン保安試験装置20に接続して設けてある。
これにより、非常調速機2,2へ送油する試験油の油圧を常時監視できるので、オイルトリップ試験時に前記非常調速機2,2の動作不良が電磁コイル22a等の構成部品の不具合によるものか、または、例えばオイルトリップ電磁比例弁22の動作不良等による試験油圧の異常によるものかを確認することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、この発明は、非常調速機のオイルトリップ試験装置において、非常調速機へ送油する試験油の油圧を可変するオイルトリップ試験用の油圧を変えて送油する制御器を従来より小形で安価な電磁比例弁にて構成することにより、設置スペースの小さいオイルトリップ試験装置を経済的に得ることが可能となる。
更に、非常調速機へ送油する試験油の油圧を圧力発振器にて検出するとともに、その検出した油圧値を比較する演算器及び表示器を備える構成を附加することにより、試験油の油圧値の異常の確認あるいは非常調速機の動作異常を迅速に容易に検証できトリップ試験の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態からなる蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
【図2】オイルトリップ試験用電磁比例弁の開度指令と試験油圧との特性図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態からなる蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
【図4】従来の蒸気タービンのオイルトリップ試験装置の構成図である。
【符号の説明】
2 非常調速機
4 非常調速機指示装置
9 電気式タービン保安装置
10 タービン保安試験装置
11 圧力準備電磁弁
14 リセット電磁弁
22 オイルトリップ電磁比例弁
23 圧力発振器
24 演算器
25 表示器

Claims (2)

  1. タービンの過速度を検出して、タービンを非常トリップさせる電気式タービン保安装置の危急遮断装置への動作指令信号を送るタービンのロータ内に設けられた非常調速機の作動試験を行うオイルトリップ試験装置において、タービンの主油ポンプからの加圧された潤滑油を送油する油配管の一方端に圧油準備電磁弁が連結して設けられ、この圧油準備電磁弁の他方端に連結された油圧を検出する圧力検出器を設けた油配管に、タービン保安試験装置からの開度指令信号により開いて非常調速機のオイルトリップ試験を行うための前記圧油準備電磁弁から非常調速機へ油配管を介して前記潤滑油の試験油の油圧を可変して送油するオイルトリップ電磁比例弁と、非常調速機の作動後の前記タービン保安試験装置からの閉鎖指令信号により前記オイルトリップ電磁比例弁が閉じた後に前記タービン保安試験装置からの開度指令信号により開いて前記非常調速機をリセットするためのリセット油を前記圧油準備電磁弁からの潤滑油にて送油するリセット電磁弁とがそれぞれ並列に連結され、前記圧油準備電磁弁から非常調速機へ送油する試験油の油圧を検出する圧力検出器が油配管に連結されて構成されたことを特徴とするタービンの非常調速機のオイルトリップ試験装置。
  2. 請求項1に記載の非常調速機のオイルトリップ試験装置において、圧力検出器が検出した油圧値をタービン保安試験装置へ送信する圧力発振器からなり、検出された油圧値と非常調速機が動作する所定の油圧値とを比較演算する演算器と、前記の検出した油圧値と演算結果を表示する表示器とを有することを特徴とするタービンの非常調速機のオイルトリップ試験装置。
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