JP3611982B2 - 逆止弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入口から弁本体の弁孔内へ流入する順方向の流体流れは出口へ通過させると共に、出口から入口へ向かう逆方向の流体流れは前記弁孔内で阻止する逆止弁に関するものであり、特に可動弁体と弁座及び環状パッキンとによる弁座開口部のシール機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超高圧水ポンプの複動型増圧機に使用される逆止弁は、従来から次のものが一般的に知られている。図6は、従来例の逆止弁の断面図を示したものであり、逆止弁は、一端で流入口523に連通する貫通孔502および該貫通孔502の他端で弁孔508内に対面して開口する弁座505を有する弁座部材503と、弁孔508内で流出口525側から流入口523側へ向かう方向に移動することによって弁座505に着座する球状の球状弁体501と、球状弁体501を保持すると共に、弁孔508内で軸方向移動可能に配置された弁体ホルダー507と、弁孔内で球状弁体501を保持した状態で弁体ホルダー507を流出口側から流入口側へ向かって押圧付勢するスプリング519とから構成されるものである。そして、球状弁体501と弁座部材503とは共に金属部材により構成されている。
【0003】
このような逆止弁では、スプリング519により弁体ホルダー507を流出口側から流入口側へ付勢することによって、弁体ホルダー507に保持された球状弁体501が弁座505に着座し弁座開口部506が封止される。この状態で流入口523側から流体を流すと、流体の流れがスプリング519による付勢力に抗して球状弁体501を弁体ホルダー507ごと流入口側から流出口側へ押し戻し、球状弁体501と弁座505との間に間隙が生じ、流入口523から流入した流体はこの間隙を通って弁孔内を通過し流出口525に流れるようになっている。
【0004】
一方、スプリング519は常に弁体ホルダー507を流出口側から流入口側へ付勢しているため、流体が出口525から流入した場合には、球状弁体501による弁座開口部506のシール状態は維持されたままとなり、このため流出口525から流入した流体の流れは球状弁体501と弁座505とによって阻止され、流入口523まで到達しないようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、複動型増圧機は水のみを加圧するものであったが、近年細かい粉状物や粒状物が懸濁した液体(以下、「スラリー」という。)を加圧する必要性が増加してきている。しかしながら、従来の逆止弁にスラリーを流すとスラリー中の粒子等により次のような問題が生じてきている。
【0006】
従来の逆止弁は、図6に示すように球状弁体と弁座部材とが共に金属製であるため、可動弁体と弁座との間にスラリー中の粒状物等がかみ込むことにより、可動弁体と弁座との接触面が損傷し易い。このため、弁座開口部を短時間(約2〜3分程度)でしか正常に封止することができないという問題がある。
【0007】
このような問題を回避すべく、図7に示すように、樹脂製の環状パッキン613を弁座の出口側開口縁に設け弁座面を形成させて、金属製の球状弁体による弁座開口部の封止が弱くなった場合でも環状パッキン613によりスラリーの漏れを防止するように構成することも考えられる。しかしながら、この場合には、損傷の問題は解決するが弁座開口部のシール性が悪いという問題がある。
【0008】
また、図7において球状弁体601による弁座開口部606の封止のため、ゴム製の環状パッキン613を使用した場合には高いシール性は確保できるが、ゴム製パッキンの強度が弱いため長時間に亘るスプリング619の付勢力による可動弁体からの押圧によって、次第にパッキンの復元力が弱くなり寿命が短くなるという問題がある。
【0009】
更に、従来の逆止弁では、可動弁体は弁体ホルダーと共に軸方向移動するため、弁体ホルダー外周部分にスラリー中の粒状物等が詰まる場合があり、この結果逆止弁の動作不良が生じやすいという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、弾性環状パッキンを用いてこれを弁体ホルダーと可動弁体とから押圧することにより、可動弁体による弁座開口部の十分なシール性を確保しつつ、スラリーによる損傷を防止して長期間使用可能な逆止弁を提供することを主な目的とする。また、本発明の別の目的は、可動弁体を弁体ホルダーと独立に軸方向移動可能とすることにより、動作の安定性を確保でき故障の少ない逆止弁を提供することである。本発明の別の目的は、複動増圧機の吐出側逆止弁として使用した場合でも、増圧器から吐出される高圧流体による弁座部材の破損を防止できる逆止弁を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、入口から弁本体の弁孔内へ流入する順方向の流体流れは出口へ通過させると共に、出口から入口へ向かう逆方向の流体流れは前記弁孔内で阻止する逆止弁において、一端で入口に連通する貫通孔および該貫通孔の他端で前記弁孔内に対面して開口する弁座を有する弁座部材と、前記弁孔内で出口側から入口側へ向かう方向に移動することによって前記弁座に着座する可動弁体と、前記弁座の出口側開口縁に一連の弁座面を形成するように前記弁孔内で前記弁座の開口端に隣接して固定配置された弾性環状パッキンと、前記可動弁体を包持するキャビティを前記入口側の端部に有すると共に、前記弁孔内に軸方向移動可能に配置された弁体ホルダーと、前記弁体ホルダーの前記キャビティ内で前記可動弁体を前記弁座へ向かって押圧付勢する第1のスプリングと、前記弁孔内で前記弁体ホルダーを出口側から入口側へ向かって押圧付勢する第2のスプリングとを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、弾性環状パッキンが弁孔内で弁座開口端に隣接して固定配置され、弁座部材と共に弁座面を形成している。ここで、弾性環状パッキンは、可動弁体と弁座との間からスラリーが漏れることを防止して、弁座開口部の封止を補強するものであり、ゴム製パッキン等の弾性体の他、樹脂製パッキンも含まれる。即ち、可動弁体と弁座開口との封止は、金属製でない弾性環状パッキンで行っているので、スラリーを流した場合でも可動弁体と環状パッキンの接触面に損傷は生じにくい。また、たとえパッキンのシール面に多少の傷が付いても弾性パッキンの弾性作用によりシール性には問題がない。
【0013】
また、本発明では、第1のスプリングによって弁体ホルダーのキャビティ内で可動弁体を弁座へ向かって押圧付勢するので、可動弁体は弁座を形成する弾性環状パッキンを押圧することになる。また、第2のスプリングによって、弁体ホルダーを出口側から入口側へ向かって押圧付勢する。ここで、弁体ホルダーは可動弁体を包持するキャビティを入口側の端部に有するので、第2のスプリングによる押圧力はキャビティを介して可動弁体を押圧し、その結果、弁座を形成する弾性環状パッキンを押圧することになる。即ち、弾性環状パッキンは、第1のスプリングによる押圧付勢力の他、第2のスプリングによる押圧付勢力を受けることになるので、可動弁体及び弁座の損傷防止のため弾性環状パッキンとして樹脂製で構成しても、両スプリングによる押圧力によって封止が不十分になることはない。このため、可動弁体と弁座の損傷を防止しながら、確実に可動弁体と弾性環状パッキンとによる弁座開口部のシール性が確保されることになり、弁体ホルダーを付勢するスプリングのみしかない従来の逆止弁に比べて、確実なシール性を維持しながら長期間の使用が可能となる。
【0014】
更に、本発明では、可動弁体は、弁体ホルダー内のキャビティ内に包持され第1のスプリングによって弁体ホルダーのキャビティ内で弁座へ向かって押圧付勢され、入口から流入されるスラリーの流れによって出口側へ移動可能である。即ち、可動弁体はスラリーの流れによって弁体ホルダー内で移動可能であり、第1のスプリングによって弁体ホルダーとは独立に軸方向移動することになる。このため、スラリーの流れによって軸方向移動するのは可動弁体だけであり、弁体ホルダーは移動しないので、スラリーの流れによって可動弁体と弁体ホルダーが一体となって軸方向移動する従来の逆止弁に比べ、可動部分が少なくなりスラリーが弁体ホルダーの外周部分にかみ込むこともなく動作不良を防止することができる。
【0015】
本発明の可動弁体は、弁座に着座して弁座開口を封止するものであればその構成は限定されるものではなく、球状とする他入口側に頂点を有する円錐形状とすることができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の逆止弁において、前記弁体ホルダーの前記キャビティ側先端面が外周縁から内周縁へ向かって前記出口側へ傾斜したテーパー面に形成され、前記弾性環状パッキンには前記第2のスプリングにより押圧された前記弁体ホルダーの前記テーパー面を受け止めて第2のスプリングによる押圧力の分力で該パッキンの少なくとも一部を前記可動弁体へ押しつけるための環状衝合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、第2のスプリングの弁体ホルダーに対する押圧力は、弁体ホルダーのキャビティへ伝達される。そして、弁体のホルダーのキャビティ側先端面は外周縁から内周縁へ向かって出口側へ傾斜したテーパー面に形成されているので、伝達された押圧力はキャビティ側先端部分の内側へ分力として作用する。パッキンの環状衝合部はこのテーパ面を受け止めて、押圧力の分力により弾性環状パッキンを内側に縮ませて可動弁体へ押しつける。このように本発明では、第1のスプリングの押圧付勢力により可動弁体を弁座に押圧すると共に、第2スプリングの押圧付勢力の分力により環状衝合部を介して環状パッキンを可動弁体に押し付けているので、可動弁体と弁座を形成する環状パッキンとによる弁座開口部の封止を確実、かつ強固に行うことができる。
【0018】
ここで、弁体ホルダーのキャビティ側先端のテーパ面は外周縁から内周縁へ向かって出口側へ傾斜して第2のスプリングからの押圧力を衝合部材に伝達するものであればその構成は特に限定されるものではなく、その傾斜角度は任意である。
【0019】
また、パッキンの環状衝合部は、弁体ホルダーのキャビティ側先端のテーパ面を受け止め、パッキンの少なくとも一部を可動弁体へ押しつけるものであればその構成は特に限定されるものではない。例えば、環状衝合部に、更にバリ防止のための溝を形成しても良い。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の逆止弁において、前記可動弁体と前記弁座のみとがセラミックス製であることを特徴とする。
【0021】
本発明では、可動弁体と弁座とが共にセラミックス製であるため、可動弁体と弁座との間にスラリーの粒状物等がかみ込んだ場合でも、可動弁体及び弁座が損傷する可能性を少なくし、逆止弁の寿命を長期化できる。
【0022】
セラミックスは圧縮応力には強いが引張応力には弱く破損しやすいという性質がある。ここで、可動弁体には入口から流入する流体流れにより圧縮応力が外圧としてかかり、一方弁座部材には可動弁体と環状パッキンとから圧縮応力としての外圧の他に、入口から流入する流体流れにより引張応力が貫通孔内から内圧としてかかる。可動弁体には常に外圧のみがかかるため高圧の流体が流入した場合でも破損するという問題はない。また、逆止弁を増圧機の給液側逆止弁として用いる場合には、逆止弁の入口には増圧前の低圧の流体が流入するため弁座部材の貫通孔内壁面にかかる内圧(引張応力)も低いため問題はない。
【0023】
しかし、逆止弁を増圧機の吐出側逆止弁として用いる場合には、逆止弁の入口からは増圧後の高圧流体が流入するため弁座部材の貫通孔内壁面にかかる内圧(引張応力)が高くなり、弁座部材が全てセラミックス製の場合にはかかる内圧により弁座部材が破損するおそれがある。
【0024】
本発明では、弁座部材の弁座のみをセラミックス製としており、弁座以外の弁座部材の部分はセラミックス製でないため高圧流体からの内圧が作用しても破損は生じず、また内圧に弱い弁座には、その外方の環状パッキンと可動弁体とから押圧されている。即ちセラミックス製弁座には高圧流体からの内圧の他に可動弁体と環状パッキンとからの圧縮応力としての外圧も作用する。このため、逆止弁を増圧機の吐出側逆止弁として用いる場合でも、弁座部材は高圧流体からの内圧に耐えうるものとなり、弁座部材の破損を防止することができる。
【0025】
ここで、弁座部材の弁座以外の部分は、セラミックス製以外の材質で構成されていればその構成は特に限定されるものではないが、耐高圧性を有する金属製であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の逆止弁は増圧機の吐出側逆止弁として用いたときにその効果を発揮するものであるが、給液側逆止弁として用いても良い。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施形態について、以下図示例とともに説明する。第1の実施形態に係る逆止弁の断面図を図2に示す。本実施形態の逆止弁は複動増圧機の給液側逆止弁として使用されるものであり、この複動増圧機に使用した状態を図1に示す。本実施形態の逆止弁は、給液側逆止弁31であり、後述する管路14aで複動増圧機の高圧シリンダ部(以下、「複動増圧器」という。)に接続されている。また、逆止弁31の流出口(出口)には吐出側逆止弁32が接続されている。本実施形態の逆止弁31は、流入口(入口)23から弁本体の弁孔内へ流入するスラリーを複動増圧器へ吸入させるが、流出口から流入口へ向かう逆方向の流れは弁孔内で阻止するようになっている。尚、吐出側逆止弁32については後述する。
【0028】
本実施形態に係る逆止弁は、図2に示すとおり、貫通孔2を有し弁孔8内に対面して開口する弁座5を有する金属製の弁座部材3と、弁座面を形成するように弁孔8内で弁座5の開口端に隣接して配置された環状パッキン13と、弁座5に着座して弁座開口を封止する金属製の球状弁体1と、球状弁体1を保持する弁体ホルダー7と、弁体ホルダー7内で球状弁体1を押圧付勢する第1スプリング17と、弁体ホルダー7を押圧付勢する第2スプリングとから概略構成される。
【0029】
弁座部材3には、流入口23に連通する貫通孔2が設けられている。この貫通孔2の流入口側と反対側の開口部分及び開口縁部分は弁座5を形成する。この弁座5は、球状弁体1の面に合致する曲面をなしており、流出口側から流入口側に向かって径が小さくなっている。このため、球状弁体1が弁座5に着座すると弁座開口部6が封止されるようになっている。
【0030】
球状弁体1は、逆止弁の軸方向(図2における左右方向)に移動可能に構成されており、流出口側から流入口側に移動して弁座5に着座することにより弁座開口部6を封止する。尚、本実施形態では、弁体を球状としているが、弁座開口部を封止できるものであればどのような形状のものを用いても良い。具体的には、流入口側に頂点を有し、流出口側に底面を有する略円錐形状の弁体が挙げられる。この場合、弁座5の形状も略円錐形状の弁体の側面に合致した形状となる。
【0031】
弁座5の流出口側開口端には、環状パッキン13が固定されている。この環状パッキン13は、樹脂製であり、弁座開口縁5と共に一連の弁座面を形成している。即ち、球状弁体1が弁座5に着座した状態で、球状弁体1は同時に環状パッキン13も押圧して弁座開口部6を封止するようになっている。図4に球状弁体1が弁座5に着座した状態の部分拡大断面図を示す。
【0032】
このように本実施形態では樹脂製の環状パッキン13を用いているので、スラリーを流した場合でも球状弁体1と環状パッキン13の接触面に損傷は生じない。図4に示すように、この環状パッキン13の流出口側先端の外周面は、後述するキャビティ9先端のリング部11の先端面(テーパ面10)を受け止めるように、流入口側から流出口側に向かって内側に傾斜するテーパ状の衝合部13を形成している。
【0033】
また、環状パッキン13の外周面には、その円周に亘り溝部16が設けられている。この溝部16は、環状パッキン13が球状弁体1及びテーパ面10からの過剰な押圧力を受けることによって、変形によりバリ等が発生することを防ぐため、押圧力を緩和するためのものである。即ち、環状パッキン13は、球状弁体1及びテーパ面10によって流出口側から押圧されるが、環状パッキン13は樹脂製であるため押圧力によって変形する場合がある。しかし、環状パッキン13の外周面には溝部16が設けられているため、環状パッキンが受けた過剰な押圧力は、この溝部によって吸収され、環状パッキン13の変形を防止できるものである。
【0034】
弁体ホルダー7は略筒形状となっており、弁孔8内で軸方向に移動可能に構成されている。ここで、図3に弁体ホルダー7の斜視図を示す。弁体ホルダー7の流入口側には、球状弁体1を包持するキャビティ9が形成されている。このキャビティ9は、弁体ホルダー7の本体よりも大径となっており、本体との接続部分において流入口側から流出口側に向かい径が次第に小さくなるようなテーパ状となっている。また、弁体ホルダー7のやや流出口寄りの部分には、外方に突き出た略円板形状の突出部12が設けられている。この突出部12は、後述する第2スプリング19からの押圧付勢力を受け止めるものであり、この付勢力を突出部12で受け止めることによって、弁体ホルダー7は図2の右方向に軸方向移動し、球状弁体1を弁座5に押し付けるようになっている。
【0035】
更に、弁体ホルダー7のほぼ中央付近の外周面には、4個の孔部14が設けられている。この孔部14のうち1つは、複動増圧器への管路14aに接続されており、流入口から流入した流体を複動増圧器に供給する一方、複動増圧器から排出された流体を弁孔8内に導入する。
【0036】
キャビティ9の流入口側先端には、環状のリング部11が一体形成されている。このリング部11の先端面は、図4に示すように、外周縁から内周縁に向かって流出口側に傾斜したテーパ面10を形成し、その角度は軸心に対し約30度となっている。このテーパ面10は、環状パッキン13の衝合部15を押圧するものである。
【0037】
キャビティ9内の流出口側内壁面には、第1スプリング17が装着されている。この第1スプリング17の他端は球状弁体1に当接し、このため第1スプリング17の弾性力によって常に球状弁体1を流出口側から流入口側へ押圧付勢している。このため、球状弁体1は、第1スプリング17からの付勢によって通常は弁座5に着座し弁座開口部6を封止している。
【0038】
また、弁孔8内の流出口側内壁面には、第2スプリング19が装着されており、この第2スプリング19の他端は弁体ホルダー7の突出部12を流出口側から流入口側の方向に押圧付勢している。このため、キャビティ先端のリング部11のテーパ面10は、第2スプリング19によって環状パッキン13の衝合部15を内側に押圧するようになっている。これにより、環状パッキン13は内側に縮もうとするため、弁座5に着座して環状パッキン13によって弁座開口部6を封止している状態の球状弁体1は、環状パッキン13から押圧されることになる。言い換えれば、弁座開口部6を封止した状態で球状弁体1は、第1スプリング17からの軸方向の押圧力と、環状パッキン13からの押圧力という2方向からの押圧力によって封止が強固なものとなっている。即ち、本実施形態では球状弁体1と弁座5の損傷防止のためシール性の弱い樹脂製の環状パッキン13を使用しているが、2方向から押圧力によって可動弁体は弁座5及び環状パッキン13に押圧されているので、球状弁体1と弁座5の損傷を防止しながら確実に球状弁体1と弾性環状パッキン13とによる弁座開口部6のシール性が確保され、長期間の使用が可能となる。
【0039】
このように構成された本実施形態の逆止弁では、複動増圧器の吸入行程が開始されると、複動増圧器のピストン(図示せず)の吸引力により球状弁体1が第1スプリング17の付勢力に抗して図2の左方向へ軸方向移動する。このため、球状弁体1は弁座5から離座して、逆止弁31が開状態となる。一方、吐出側逆止弁32の弁体は弁座開口部に着座した状態を維持する。このため、スラリーは逆止弁31の流入口23から弁孔8内に流入し、更に管路14aを介して複動増圧器へ吸入される。
【0040】
また、本実施形態の逆止弁31では、軸方向移動するのは球状弁体1だけであり弁体ホルダー7は移動しないので可動部分は少ない。このため、スラリーが弁体ホルダー7の外周部分にかみ込むこともなく逆止弁の動作不良は防止される。
【0041】
一方、複動増圧器の吐出行程が開始されると、管路14aを通じて吐出されるスラリーは、キャビティ内に流入するが、弁座開口部6は球状弁体1により封止されており、またスラリーの流れも第1スプリング17が球状弁体1を押圧付勢する方向と同一であるため、球状弁体1が弁座5から離座することはなく、逆方向のスラリーの流れが球状弁体1によって阻止される。この場合、吐出側逆止弁32が開状態となり、複動増圧器から吐出された流体は吐出側逆止弁32の流入口から流入し流出口から排出される。かかる動作については、第2実施形態において詳述する。
【0042】
次に第2実施形態に係る逆止弁について説明する。第2実施形態の逆止弁は複動増圧機の吐出側逆止弁として使用されるものである。図1は第2実施形態の逆止弁を複動増圧機の吐出側逆止弁32として使用した状態を示しており、図5は吐出側逆止弁32の概略構成を示す断面図である。第2実施形態の逆止弁32では、弁座5と球状弁体1とがセラミックス製である点及び複動増圧器と接続される管路が設けられていない点が第1実施形態の逆止弁と異なる。このため、弁座と球状弁体1以外の部分については、図2と同一符号を付し説明を省略する。尚、本実施形態の弁座部材3は金属製である。また、本実施形態の吐出側逆止弁32の流入口(入口)23は、給液側逆止弁31の流出口25と接続されている。
【0043】
本実施形態の逆止弁では、球状弁体1と弁座5とが共にセラミックス製であるため、球状弁体1と弁座5との間にスラリーの粒状物等がかみ込んだ場合でも、球状弁体1及び弁座5が損傷することがなく、逆止弁の寿命が長期化する。
【0044】
このように構成された本実施形態の吐出側逆止弁32では、複動増圧器の吸入行程が開始されても、複動増圧器のピストン(図示せず)からの吸引力が作用する方向が球状弁体1に対する第1スプリング17の付勢力の方向と同一であるため、球状弁体1が弁座5から離座することはなく、逆方向のスラリーの流れが球状弁体1によって阻止される。
【0045】
一方、複動増圧器の吐出行程が開始されると、給液側逆止弁31の管路14aを通じて吐出されるスラリーが給液側逆止弁31の流出口から吐出側逆止弁32の流入口23を通じて流入し、第1スプリング17付勢力に抗して球状弁体1を押込む。この結果、吐出側逆止弁32の球状弁体1は、図5の左方向に軸方向移動して弁座5から離座し、吐出側逆止弁32が開状態となる。これにより、吐出されたスラリーは、吐出側逆止弁32の弁孔8内を通過して流出口25から排出される。
【0046】
ここで、吐出側逆止弁32に流入する吐出流体は複動増圧器で加圧され高圧となっている。この高圧の流体は、貫通孔2から弁座部材3と弁座5に対し内圧として作用する。しかし、弁座部材3は金属製であるため、高圧流体からの内圧が作用しても破損は生じない。また内圧に弱いセラミックス製弁座5には、高圧流体による内圧の他に、環状パッキン13と球状弁体17とから外圧が作用している。このため、吐出側逆止弁32の弁座部材3及びセラミックス製弁座5は高圧流体からの内圧に耐え、弁座5及び弁座部材3は破損することはない。
【0047】
尚、第2実施形態では、逆止弁32を複動増圧機の吐出側逆止弁として使用しているが、この他給液側逆止弁として使用できることは言うまでもない。
【0048】
また、第1実施形態及び第2実施形態の逆止弁は共に複動増圧機に使用しているが、これに限られず単動増圧機等いずれの装置にも適用できるものである。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明は、弁座の流出口側開口縁に一連の弁座面を形成するように弁孔内で弁座の開口端に隣接して固定配置された弾性環状パッキンと、弁体ホルダーのキャビティ内で可動弁体を弁座へ向かって押圧付勢する第1のスプリングと、弁孔内で弁体ホルダーを流出口側から流入口側へ向かって押圧付勢する第2のスプリングとを備えているため、可動弁体と弁座の損傷を防止しながら、確実に可動弁体と弾性環状パッキンとによる弁座開口部6のシール性が確保されることになり、確実なシール性を維持しながら長期間の使用ができるという効果がある。
【0050】
また、本発明は、可動弁体は、弁体ホルダー内のキャビティ内に包持され、弁体ホルダーのキャビティ内で可動弁体を前記弁座へ向かって押圧付勢する第1スプリングと、弁孔内で弁体ホルダーを流出口側から流入口側へ向かって押圧付勢する第2のスプリングとを備えているので、スラリーの流れによって軸方向移動するのは可動弁体だけであり、可動部分が少なくなりスラリーが弁体ホルダーの外周部分にかみ込むことを回避して動作不良を防止できるとういう効果がある。
【0051】
更に、本発明では、可動弁体と弁座がセラミックス製であるため、可動弁体と弁座との間にスラリーの粒状物等がかみ込んだ場合でも、可動弁体及び弁座が損傷する可能性を少なくし、逆止弁の寿命を長期化できるという効果がある。
【0052】
本発明では、弁座部材の弁座のみをセラミックス製としており、セラミックス製弁座には環状パッキン及び可動弁体からの外圧も作用するので、逆止弁を増圧機の吐出側逆止弁として用いる場合でも、高圧流体からの内圧による弁座部材の破損を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の逆止弁を複動増圧機の給液側逆止弁として、第2実施形態の逆止弁を複動増圧機の吐出側逆止弁として、夫々使用した状態を示す説明図である。
【図2】第1実施形態の逆止弁の概略構成を示す断面図である。
【図3】第1実施形態の逆止弁の弁体ホルダーの斜視図である。
【図4】第1実施形態のキャビティ及び弁体の部分の拡大断面図である。
【図5】第2実施形態の逆止弁の概略構成を示す断面図である。
【図6】従来例としての逆止弁の概略構成を示す断面図である。
【図7】従来例として環状パッキンを使用した逆止弁の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1,501,601:球状弁体
2,502,602:貫通孔
3,503,603:弁座部材
5,505,605:弁座(弁座開口縁)
6,506,606:弁座開口部
7,507,607:弁体ホルダー
8,508,608:弁孔
9:キャビティ
10:テーパ面
11:リング部
12:突出部
13,613:環状パッキン
14:孔部
14a:複動増圧器への通路
15:衝合部
16:溝部
17:第1スプリング
19:第2スプリング
21:弁箱
23,523,623:流入口
25,525,625:流出口
31:給液側逆止弁
32:吐出側逆止弁
519,619:スプリング

Claims (3)

  1. 入口から弁本体の弁孔内へ流入する順方向の流体流れは出口へ通過させると共に、出口から入口へ向かう逆方向の流体流れは前記弁孔内で阻止する逆止弁において、
    一端で入口に連通する貫通孔および該貫通孔の他端で前記弁孔内に対面して開口する弁座を有する弁座部材と、
    前記弁孔内で出口側から入口側へ向かう方向に移動することによって前記弁座に着座する可動弁体と、
    前記弁座の出口側開口縁に一連の弁座面を形成するように前記弁孔内で前記弁座の開口端に隣接して固定配置された弾性環状パッキンと、
    前記可動弁体を包持するキャビティを前記入口側の端部に有すると共に、前記弁孔内に軸方向移動可能に配置された弁体ホルダーと、
    前記弁体ホルダーの前記キャビティ内で前記可動弁体を前記弁座へ向かって押圧付勢する第1のスプリングと、
    前記弁孔内で前記弁体ホルダーを出口側から入口側へ向かって押圧付勢する第2のスプリングと
    を備えたことを特徴とする逆止弁。
  2. 前記弁体ホルダーの前記キャビティ側先端面が外周縁から内周縁へ向かって前記出口側へ傾斜したテーパー面に形成され、
    前記弾性環状パッキンには前記第2のスプリングにより押圧された前記弁体ホルダーの前記テーパー面を受け止めて第2のスプリングによる押圧力の分力で該パッキンの少なくとも一部を前記可動弁体へ押しつけるための環状衝合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
  3. 前記可動弁体と前記弁座のみとがセラミックス製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の逆止弁。
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