JP3610645B2 - オートクラッチ用半クラッチ点設定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
オートクラッチ車においては、発進時や変速時にクラッチが自動的に半クラッチとなるよう制御されるが、本発明は、半クラッチとするためのクラッチストローク値(その位置を以下「半クラッチ点」という)を設定するためのオートクラッチ用半クラッチ点設定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両のクラッチ制御は、マニュアル車ではクラッチペダルによって行われるが、オートクラッチ車では、コントローラからのクラッチ制御信号で制御されるクラッチアクチュエータによって行われる。
図3は、クラッチアクチュエータによって駆動されるクラッチの1例を示す図である。図3(イ)はクラッチ接の状態を示し、図3(ロ)はクラッチ断の状態を示している。
【0003】
図3において、9はクラッチ、90はクランクシャフト、91はフライホイール、92はクラッチディスク、93はプレッシャプレート、94はダイヤフラムスプリング、95はレリーズベアリング、96はクラッチシャフト、97はレリーズフォーク、98は支点、99はロッド、20はクラッチアクチュエータ、21はクラッチストロークセンサである。
【0004】
クランクシャフト90と一体に回転するフライホイール91に対向して、ドーナツ状のクラッチディスク92が配設され、その背後にプレッシャプレート93が配設される。ダイヤフラムスプリング94は、通常はその弾発力によりプレッシャプレート93を押圧しているが、クラッチシャフト96上を摺動可能なレリーズベアリング95に中心部を押圧された時には、弾発力が反転して前記押圧を解除する。
【0005】
レリーズベアリング95は、クラッチアクチュエータ20のロッド99によって駆動され、支点98を中心に回動するレリーズフォーク97によって、その動きが制御される。クラッチアクチュエータ20は、図示しないコントローラからのクラッチ制御信号によって制御される。ロッド99を右方に移動すると、クラッチは断され、左方に移動すると接される。クラッチストロークセンサ21は、例えば、ロッド99の動きをポテンショメータ等で検出することにより、クラッチストロークを検出する。
【0006】
マニュアル車のクラッチと同様に、通常時は、クラッチは図3(イ)のように接されている。しかし、発進や変速をするに先立ち、クラッチアクチュエータ20がロッド99を右方に移動させ、レリーズベアリング95を左方に移動させて、図3(ロ)のようにクラッチを断にする。
【0007】
クラッチの制御が行われるのは発進時や変速時であるが、発進時や変速時には、クラッチを断からいきなり完接とはせずに、まず半クラッチに制御する必要がある。半クラッチへの制御は、半クラッチ状態となるであろうというクラッチストロークの点(半クラッチ点)を、図示しないコントローラにおいて設定しておき、その半クラッチ点の値に基づいて行われる。その後、クラッチを更に接にして行き、最後に完接処理がなされる。以下、それらについて説明する。
【0008】
(半クラッチ点の設定)
コントローラには、当初、半クラッチ初期設定値が与えられており、これを半クラッチ点として用いるが、その後は、運転中ニュートラルにされる度にコントローラ自らの学習により、次に述べるような「ニュートラル学習点」を得て、それより少し接方向の位置を半クラッチ点として設定し、それを用いていた。
【0009】
ニュートラル学習点とは、トランスミッションはニュートラル、クラッチは断、インプットシャフト回転数は0rpmという状態から出発して、クラッチを徐々に接方向へ進めてゆき、インプットシャフト回転数が所定値(例えば、エンジン回転数の半分)まで上昇した時のクラッチ位置のことである。この位置は、クラッチストロークで表す。
【0010】
(発進時)
アクセルペダルが踏み込まれたことを検出して発進要求が出されたことを検知すると、クラッチは、まず完断の位置から半クラッチ点に制御される。そして、トランスミッションのインプットシャフト回転数が上昇して来ると、完接の位置へと制御される。
【0011】
(変速時)
チェンジレバーが操作されたことを検出して変速要求が出されたことを検知すると、まずクラッチは完断とされる。目標ギヤ段に入れられたことを確認すると、完断位置から速やかに半クラッチ点に制御される。半クラッチ点付近で接にする速度はゆるやかにされるが、その後は再び速やかに完接位置へと制御される。
【0012】
前記したような従来の半クラッチ点設定方法を、図7,図4によって更に詳細に説明する。
図7は、従来の半クラッチ点設定方法を説明するフローチャートであり、図4は、従来設定されていた半クラッチ点のクラッチストロークの例を説明する図である。図4では、左端をクラッチストローク基準点P0 として、クラッチストロークを表している。
因みに、クラッチ完接点PE までのクラッチストロークをSE 、クラッチ完断点PC までのクラッチストロークをSC としている。クラッチの完接は、クラッチアクチュエータ20のクラッチ制御力を解放した後に行われるが、解放後のクラッチ位置をクラッチ完接点といい、クラッチストロークで表される。クラッチ完接学習とは、その解放後のクラッチストロークを検出してメモリ5−1に記憶することであり、学習によって求められたクラッチ位置が、クラッチ完接学習点である。
【0013】
以下、図7のステップに従って説明する。
ステップ1…コントローラは、半クラッチ点の設定を行うに際し、まずニュートラル学習を済ませているかどうかを調べる。これは、コントローラのメモリのニュートラル学習値を記憶しておく箇所に、0以外の値が記憶されているかどうかを調べることによって行う。当初は0とされているから、それ以外の値が記憶されていれば、学習済みであると判断する。
【0014】
ステップ2…まだニュートラル学習をしていない場合には、そういう場合に半クラッチ点として用いるようにと、予めコントローラに記憶させてある「半クラッチ点初期設定値SHO」(図4参照)の点を、半クラッチ点として設定する。図4で言えば、クラッチストローク基準点P0 より、クラッチストロークが半クラッチ点初期設定値SHOのところにある点PHOを、半クラッチ点として設定することになる。なお、図4中のSHOの大きさは、1例である。
【0015】
ステップ3…ニュートラル学習済の場合には、そのニュートラル学習点PN より「半クラッチ調整値Sh 」だけクラッチ接の側の点PH を、半クラッチ点として設定する。ニュートラル学習点は、トランスミッションをニュートラルにした状態(いわば無負荷状態)で、漸くインプットシャフトが回転するクラッチ位置であるから、この位置では発進時や変速時に半クラッチ状態は実現できない。
【0016】
なぜなら、発進時や変速時にはトランスミッションは走行ギヤに入れられるが、走行ギヤに入れた状態(即ち、負荷状態)でクラッチをニュートラル学習点にしてみたところで、結合状態が弱くて車輪を駆動する力は伝達できない。駆動力を伝達するためには、クラッチをニュートラル学習点の位置からもう少し接側の位置に調整してやる必要がある。そのための値が、半クラッチ調整値Sh である。この値は実験等により求め、予めコントローラのメモリ内に与えておく。なお、図4中のSh の大きさは、1例である。
【0017】
(従来の文献)
なお、オートクラッチ車のクラッチ制御に関する従来の文献としては、例えば、特開昭60−1450号公報、特開昭61−119440号公報等がある。
特開昭60−1450号公報の技術は、クラッチの磨耗に対応してクラッチ制御を変化させる技術であり、その制御の参考とするため、クラッチ内のフライホイールとクラッチディスクとのスリップ率が100%であるクラッチストロークを、完断位置から接方向に進める場合と、完接位置から断方向に進める場合とについて、学習するようにしたものである。
【0018】
特開昭61−119440号公報の技術は、発進時に積荷が軽いと発進ショックを受けたり、積荷が重いと走行開始が遅れたりするのを防止する技術である。この技術では、トランスミッションを無負荷(ニュートラル)にしてインプットシャフトが回転し始める点と、トランスミッションに負荷をかけ(走行ギヤに入れ)てインプットシャフトが回転し始める点とを求め、両者にクラッチ板の磨耗状態やその時の車両重量に応じて「重み付け平均処理」をして、クラッチをつなぎ始める点を求めるようにしている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
(問題点)
前記したように半クラッチ点を設定していたのでは、クラッチに撓みが生じたり、偏って磨耗している偏磨耗を生じたりすると、実際の半クラッチ点と一致しなくなるという問題点があった。そのため、発進時や変速時に、エンジンの吹け上がりやクラッチ滑りが甚だしくなるという現象が生じていた。
【0020】
(問題点の説明)
まず、クラッチディスクに撓みが生じている場合を考える。トランスミッションをニュートラルにしていた場合(ニュートラル学習する場合)、クラッチディスクがフライホイールに軽く接触していさえすれば、クラッチシャフトは回転する。従って、クラッチディスクが撓んでいて、一部がフライホイール側にせり出していると、撓んでいない場合に比べてニュートラル学習点は断側の位置に変わる。
一方、実際に駆動力が伝達され始める点は、クラッチディスクがある程度しっかりとフライホイールに接触される点であるから、撓みが生じていてもあまり変化しない。その結果、ニュートラル学習点との間隔は大となる。
【0021】
また、クラッチの磨耗が一様に進行していれば、ニュートラル学習点も実際に駆動力が伝達され始める点も、ほぼ同程度に変化するから、両者の間隔はそれほど変化しない。しかし、クラッチディスクが偏磨耗している場合は、両者が同程度には変化しない。ニュートラル学習点が断側の位置に変わり、やはり両者の間隔は大となる。
【0022】
従って、トランスミッションを発進ギヤ等に入れて駆動力を伝達しようとする場合、撓みや偏磨耗があると、それらがない場合に比べて、ニュートラル学習点から相当クラッチ位置を接方向にしなければ、駆動力を伝達できない。即ち、半クラッチの状態にできない。
【0023】
このことを、図4で説明すれば、半クラッチ調整値Sh としては、従来は、当初コントローラに与えられている値をいつまでも用いていたが、それでは撓みや偏磨耗が進行して来るにつれ、現実の状態に適合しなくなるということである。つまり、設定されている半クラッチ点と、エンジントルクが駆動輪へ伝達され始めるという実際の半クラッチ点との間に、次第に差が生じて来ていた。
【0024】
設定した半クラッチ点の位置にクラッチを制御すると、コントローラはエンジンへの燃料の噴射を増やすわけであるが、実際には半クラッチになっていないので、エンジンが吹け上がり、クラッチ滑りがひどくなる。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明では、クラッチストロークがクラッチアクチュエータにより自動制御されるクラッチの半クラッチ点を設定するオートクラッチ用半クラッチ点設定装置において、エンジン回転センサと、トランスミッションのインプットシャフト回転センサと、クラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサと、車両にブレーキがかけられていることを検出するブレーキ検出手段と、車両の停止を検出する車両停止検出手段と、車両にブレーキをかけて停止させ、トランスミッションをギヤインした状態で、所定値に保たれていたエンジン回転数がクラッチを徐々につないでいく過程で落ち込んだ時に検出されるクラッチストロークを、ギヤイン学習点として記憶する記憶手段と、該ギヤイン学習点とニュートラルにされる度に学習して得られるニュートラル学習点とのクラッチストローク差が、所定の半クラッチ調整値以上である場合には、前記ニュートラル学習点より該クラッチストローク差だけ接側の点を半クラッチ点と設定し、該所定の半クラッチ調整値より小である場合には、前記ニュートラル学習点より前記半クラッチ調整値だけ接側の点を半クラッチ点と設定する制御手段とを具えることとした。
【0026】
(動作の概要)
クラッチアクチュエータで制御するクラッチの半クラッチ点を設定するに際し、新たにギヤイン学習点という概念を導入し、これも利用して設定することにした。
即ち、トランスミッションをニュートラルにした状態で、クラッチを徐々につないでいく過程でインプットシャフト回転数が所定値まで上昇した時に検出されるクラッチストロークを、ニュートラル学習点として記憶する。一方、車両にブレーキをかけて停止させ、トランスミッションをギヤインした状態で、所定値に保たれていたエンジン回転数がクラッチを徐々につないでいく過程で落ち込んだ時に検出されるクラッチストロークを、ギヤイン学習点として記憶する。
【0027】
ギヤイン学習点とニュートラル学習点とのクラッチストローク差が所定値より大の場合には、ニュートラル学習点より該クラッチストローク差だけ接側の点を半クラッチ点として設定する。
このようにすると、クラッチの撓みや偏磨耗が進行しても、実際にエンジントルクを伝達し得るクラッチ位置を、半クラッチ点として設定することが出来るようになる。そのため、発進時や変速時にエンジンが吹け上がることもなく、ひどいクラッチ滑りも生ずることがない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のオートクラッチ用半クラッチ点設定装置が組み込まれた車両駆動部を示す図である。図1において、1はアクセルセンサ、2は変速指令装置(チェンジレバー装置)、3はブレーキスイッチ、4はパーキングブレーキスイッチ、5はA/Tコントローラ(A/T…Automatic Transmission)、5−1はメモリ、6はギヤイン学習スイッチ、7はエンジンコントロールアクチュエータ、8はエンジン、9はクラッチ、10はトランスミッション、11はギヤ位置検出スイッチ、12はギヤシフトユニット、13は電磁弁、14は駆動軸、15は車速センサ、16はエアパイプ、17はエアタンク、18はエンジン回転センサ、19はインプットシャフト回転センサ、20はクラッチアクチュエータ、21はクラッチストロークセンサ、22は電磁弁である。
【0029】
エンジンコントロールアクチュエータ7は、A/Tコントローラ5からの制御信号に従い、エンジンの燃料噴射量を制御する。変速指令装置2から変速指令信号が出されると、目標とするギヤにシフトすべく、A/Tコントローラ5は電磁弁13に制御信号を発する。電磁弁13は、エアタンク17からギヤシフトユニット12へのエアを制御し、トランスミッション10内のギヤをシフトする。
【0030】
発進要求や変速要求があった時は、まずクラッチ9を断にし、ついで半クラッチ点に制御し、最後に接に制御しなければならないが、その制御信号は、A/Tコントローラ5から電磁弁22に送られる。電磁弁22は、エアタンク17からクラッチアクチュエータ20へのエアを制御し、クラッチを制御する。
【0031】
ギヤイン学習スイッチ6は、本発明で新設されたスイッチであり、運転席に設けられる。これは、次に説明する「ギヤイン学習点」を、A/Tコントローラ5に求めさせる時に使用するスイッチである。ここに、ギヤイン学習点とは、次のようなクラッチ位置のことと定義する。
即ち、車両にブレーキをかけて停車させ、トランスミッション10を走行ギヤに入れた状態(ギヤイン状態)にしておいて、クラッチを断から接の方向へ徐々に進めて行った場合に、エンジン回転が所定値以上低下したクラッチ位置。なお、この所定値は、予め定めておく。
【0032】
図6は、ギヤイン学習点の求め方を説明するフローチャートである。
ステップ1…A/Tコントローラ5は、ギヤイン学習スイッチ6がオンされているかどうかを調べる。つまり、ギヤイン学習が命令されているかどうかを調べる。ドライバーは、車両の運転状態から判断して、ギヤイン学習を新しく行うことが必要と思った場合に、ギヤイン学習スイッチ6をオンする。
【0033】
ステップ2…ブレーキがかけられているかどうか調べる。これは、図1のブレーキスイッチ3,パーキングブレーキスイッチ4からの信号により調べる。
ステップ3…車両が停止しているかどうか確認する。これは、車速センサ15からの信号により調べる。ブレーキがかけられていても、車両がまだ動いていれば、トランスミッション10のインプットシャフトは回転していて、ギヤイン学習をするには適さないからである。
【0034】
ステップ4…トランスミッション10が、ギヤイン状態になっているかどうか調べる。これは、ギヤ位置検出スイッチ11からの信号によって判断する。
なお、ステップ2〜4において、いずれかがNOであれば、ギヤイン学習を行う条件が整わないから、ステップ1に戻る。
【0035】
ステップ5…A/Tコントローラ5からエンジンコントロールアクチュエータ7に指令を送り、エンジン回転数を、アイドル回転数NIDより少し大きい所定回転数NG に制御する。少し大きくする理由は、ステップ7で落ち込んでも、アイドル回転数NIDは保てるようにするためである。
ステップ6…次に、クラッチを断から接方向へ進め、徐々につないでゆく。
【0036】
ステップ7…エンジン回転センサ18からの検出信号を監視し、エンジン回転数が所定値以上落ち込んだか否かを調べる。ここに所定値と言ったのは、ノイズ的な僅かな落ち込みは除外し、意味のある大きさの落ち込みのことを指すためである。それは、例えば、前記したNG −NID程度の落ち込みである。
もし、落ち込んでいなかった場合には、依然としてギヤイン学習の条件が保たれているかどうかをチェックするため、ステップ2に戻る。ステップ2〜4の条件が1つでも満たされなくなっていれば(例えば、ブレーキが解除されていたりすると)、ギヤイン学習をいったん中止するため、ステップ1に戻る。そして、ドライバーが、あらためてギヤイン学習スイッチ6をオンするのを待つ。
【0037】
ステップ8…エンジン回転数が落ち込んだ時は、クラッチが半クラッチ状態になった時である。なぜなら、半クラッチになると、駆動力を伝えることが出来るわけであるが、トランスミッション10はギヤインされ、車両にはブレーキがかけられているために、クラッチシャフト96は回転できず、エンジン回転数の方が低下するからである。
この時のクラッチ位置(クラッチストローク)が、現在の撓みや磨耗状態下におけるクラッチで半クラッチになった点であるので、A/Tコントローラ5は、これを「ギヤイン学習点」として判断し、そのクラッチストロークSG を、ギヤイン学習値としてメモリ5−1内に記憶する。
以上が、A/Tコントローラ5によるギヤイン学習である。
【0038】
次に、以上のようにして求めたギヤイン学習点を利用して、半クラッチ点を設定する方法を説明する。
図2は、本発明で使用される半クラッチ点設定方法を説明するフローチャートであり、図5は、本発明で設定される半クラッチ点のクラッチストロークを説明する図である。図5の符号は、図4のものに対応している。以下、図5を参照しつつ、図2で半クラッチ点設定方法を説明してゆく。
【0039】
ステップ1…ニュートラル学習済みかどうか調べる。これは、A/Tコントローラ5のメモリ5−1内の、ニュートラル学習点PN のクラッチストロークSN を記憶すべき箇所に、0(当初値)とは異なる値が記憶されているかどうかで判断する。記憶されていれば、学習済みである。
ステップ2…ニュートラル学習をまだしてない場合、あるいはしたことがあっても、何らかの理由によりその記憶値が消されてしまった場合には、クラッチストロークが、予め用意してある半クラッチ初期設定値SHOの点PHOを、半クラッチ点として設定する。即ち、その点のクラッチストロークを、メモリ5−1内の半クラッチ点を記憶すべき箇所に記憶する(以下も同様)。
【0040】
ステップ3…ニュートラル学習済みの場合には、ギヤイン学習済みかどうか調べる。これも、メモリ5−1内のギヤイン学習点のクラッチストロークを記憶すべき箇所に、なんらかの意味のある値(図6のステップ8で得た値)が記憶されているかどうかを調べることによって行う。
ステップ4…ギヤイン学習を行っていない場合には、ニュートラル学習点PN より半クラッチ調整値Sh だけ接側の点PH を、半クラッチ点として設定する。
【0041】
ステップ5…ギヤイン学習済みの場合、ギヤイン学習点PG がニュートラル学習点PN より接側にあるかどうか確かめる(正常なら接側にある筈)。もし、接側でなければ、そのギヤイン学習点PG は信用できないので、ステップ4に進み、ニュートラル学習点PN に基づいて設定を行う。
ステップ6…ギヤイン学習点PG が、クラッチ完接点PE より断側にあるかどうか確かめる(正常なら断側ある筈。図5参照)。もし、断側でなければ、そのギヤイン学習点PG は信用できないので、ステップ4に進み、ニュートラル学習点PN に基づいて設定を行う。
【0042】
ステップ7…ニュートラル学習点PN の学習値(即ち、クラッチストロークSN )と、ギヤイン学習点PG の学習値(即ち、クラッチストロークSG )とのクラッチストローク差SD を求める。
ステップ8…求めたクラッチストローク差SD が、半クラッチ調整値Sh より大かどうか調べる。図5は、SD >Sh の場合を示している。もし小の場合は、ステップ4に進み、ニュートラル学習点PN に基づいて設定を行う。
ステップ9…SD >Sh であれば、ニュートラル学習点PN よりクラッチストローク差SD だけ接側の点、即ち、ギヤイン学習点PG を半クラッチ点として設定する。
【0043】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明のオートクラッチ用半クラッチ点設定装置によれば、半クラッチ点の設定を行うに際し、トランスミッションをギヤインした状態で半クラッチになるクラッチストローク(ギヤイン学習点)を求めておき、これを参考にしつつ設定するので、クラッチディスクが撓んだり偏磨耗が進行したりしていても、実際の状態に適合した半クラッチ点を設定することが出来る。
そのため、発進時や変速時にエンジンが吹け上がることもなく、ひどいクラッチ滑りを生ずることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオートクラッチ用半クラッチ点設定装置が組み込まれた車両駆動部を示す図
【図2】本発明で使用される半クラッチ点設定方法を説明するフローチャート
【図3】クラッチアクチュエータによって駆動されるクラッチの1例を示す図
【図4】従来設定されていた半クラッチ点のクラッチストロークを説明する図
【図5】本発明で設定される半クラッチ点のクラッチストロークを説明する図
【図6】ギヤイン学習点の求め方を説明するフローチャート
【図7】従来の半クラッチ点設定方法を説明するフローチャート
【符号の説明】
1…アクセルセンサ、2…変速指令装置、3…ブレーキスイッチ、4…パーキングブレーキスイッチ、5…A/Tコントローラ、6…ギヤイン学習スイッチ、7…エンジンコントロールアクチュエータ、8…エンジン、9…クラッチ、10…トランスミッション、11…ギヤ位置検出スイッチ、12…ギヤシフトユニット、13…電磁弁、14…駆動軸、15…車速センサ、16…エアパイプ、17…エアタンク、18…エンジン回転センサ、19…インプットシャフト回転センサ、20…クラッチアクチュエータ、21…クラッチストロークセンサ、22…電磁弁、90…クランクシャフト、91…フライホイール、92…クラッチディスク、93…プレッシャプレート、94…ダイヤフラムスプリング、95…レリーズベアリング、96…クラッチシャフト、97…レリーズフォーク、98…支点、99…ロッド
Claims (1)
- クラッチストロークがクラッチアクチュエータにより自動制御されるクラッチの半クラッチ点を設定するオートクラッチ用半クラッチ点設定装置において、
エンジン回転センサと、
トランスミッションのインプットシャフト回転センサと、
クラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサと、
車両にブレーキがかけられていることを検出するブレーキ検出手段と、
車両の停止を検出する車両停止検出手段と、
車両にブレーキをかけて停止させ、トランスミッションをギヤインした状態で、所定値に保たれていたエンジン回転数がクラッチを徐々につないでいく過程で落ち込んだ時に検出されるクラッチストロークを、ギヤイン学習点として記憶する記憶手段と、
該ギヤイン学習点とニュートラルにされる度に学習して得られるニュートラル学習点とのクラッチストローク差が、所定の半クラッチ調整値以上である場合には、前記ニュートラル学習点より該クラッチストローク差だけ接側の点を半クラッチ点と設定し、該所定の半クラッチ調整値より小である場合には、前記ニュートラル学習点より前記半クラッチ調整値だけ接側の点を半クラッチ点と設定する制御手段と、
を具えたことを特徴とするオートクラッチ用半クラッチ点設定装置。
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