JP3609787B2 - ドラム式洗濯機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水平軸又は傾斜軸を中心に回転するドラムを有するドラム式洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドラム式洗濯機は、水平軸又は傾斜軸を中心に円筒籠状のドラムを外槽内部に回転自在に配置した構成を備えており、このドラム内に洗濯物を収容して水を貯留した外槽内で回転させることによって洗濯物の叩き洗いを行う。こうした一般的なドラム式洗濯機では、略直方体形状の外箱の前面に衣類を投入するための扉体が横開きに設けられており、その扉体を開くと外槽に設けた開口を通して、ドラムの一端面に設けられた衣類投入口が覗くように構成されている。
【0003】
こうしたドラム式洗濯機に対する一般消費者の大きな不満の一つは、衣類の出し入れがしにくいことである。すなわち、そのため、上記構成を有するドラム式洗濯機では、衣類投入口が低い位置にあり、洗濯機を専用の置台上に載置した場合であっても、衣類投入のしにくさは完全には解消されない。このような不満に対応するため、従来、市販されているドラム式洗濯機では、傾斜軸を用いてドラムの衣類投入口をやや斜め上向きにしたものがある。また、衣類投入口をできるだけ大きくすることも試みられている。しかしながら、このような構成によっても、渦巻き式洗濯機の操作性に慣れた者にとってみれば、その使い勝手は必ずしも充分に良好であるとは言えない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ドラム式洗濯機における上記のような使い勝手の悪さを解消する一つの方法として考えられるのは、従来の一般の渦巻き式洗濯機と同じように、洗濯物投入口を外箱の前面ではなく上面に設けることである。しかしながら、ドラム式洗濯機で外箱上面に洗濯物投入口を設ける場合、洗濯物投入口の直下に配設されている外槽と、その外槽の内部に収容されているドラムとにそれぞれ開口を設ける必要があり、従来の渦巻き式洗濯機やドラム式洗濯機とは異なる様々な問題が生じる。
【0005】
例えば、外箱の上面に洗濯物投入口を設けようとすると、外箱上面と外槽上部との間の空間に各種部材を配置することが難しくなり、従来のドラム式洗濯機のように上方から強力なばねで外槽を吊下げ支持することが困難である。そこで、外槽を安定的に、且つ外箱へ伝達される振動をできる限り吸収するように支持する構造が要望されている。
【0006】
また、こうしたドラム式洗濯機では、脱水運転時にドラムが高速回転されると、外槽とドラムとの間の間隙に強い空気流が生起されるが、このような空気流が外槽内に開口した給水口から給水管へと逆流してしまうと、給水管の端部に接続されている洗剤容器内に収容されている洗剤や柔軟仕上剤を押し上げてしまうことがある。また、このような空気流が外槽内に開口した、乾燥運転時の空気取り出し口から乾燥風路内に勢いよく入り込むと、その空気流に乗って微細な水滴も流れ込み、乾燥風路内に設置されているヒータの腐食の原因となり易い。
【0007】
また、こうしたドラム式洗濯機では、脱水運転時の振動が問題になることが多いが、このような振動は騒音などの原因になるのみならず、洗濯機自体の故障を生じさせる一因ともなり易い。したがって、振動を抑制するとともに、故障の発生の少ない高い信頼性を有する構造が要望されている。
【0008】
本発明は上記のような課題を始めとする、ドラム式洗濯機に関する様々な課題を解決するために成されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段、及び効果】
上記課題を解決するために成された第1発明は、外箱と、この外箱の上面に設けた洗濯物投入口と、前記外箱内に配設した外槽と、この外槽の周面の上部から斜め前方にかけて、前記洗濯物投入口と一致する位置に設けた洗濯物を出し入れするための外槽開口と、この外槽内に左右方向に延伸する水平軸を中心に回転自在に設けられたドラムと、このドラムの周面に設けた洗濯物を出し入れするためのドラム開口とを具備し、斜め前方に位置している洗濯物投入口からドラム内に洗濯物が投入されるドラム式洗濯機において、
前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定された三本のダンパを介して前記外槽を支え受けるようにするとともに、前記三本のダンパのうち一本は前記外槽の前方側下部を、他の二本は該外槽の後方側下部を支え受けることを特徴としている。
【0010】
第1発明に係るドラム式洗濯機では、外槽は台座部に対して三点支持されるため、外槽の安定性を保つのに有利である。特に、外箱上面に洗濯物投入口を設けたような構成では、外槽上部と外箱との間の間隙にスペースが少なく、強力なばねを用いて外槽を吊下げ支持する構造とすることが困難であるが、そのような場合でも、上からのばねの支持に殆ど頼ることなく三本のダンパで安定して外槽を担持することができる。
【0011】
に、斜め前上方に設けられた洗濯物投入口を通してドラム内に洗濯物が投入される場合、その洗濯物投入口に対向する位置付近、つまり外槽の後方側下部に二本のダンパを設けることで、高い安定性を確保することができる。また、前方側のダンパを一本のみにしておくことにより、外箱の前面板を取り外して内部の故障の修理や点検などを行う場合に、障害物が少なくなり作業性が向上する。
【0012】
また、上記ダンパを弾性体を介挿して外槽や台座部に取り付ける場合、弾性体の圧縮量(潰ししろ)が大きいほど、振動吸収効果は劣化して外槽の振動が外箱に伝わり易くなる反面、洗濯物をドラム内に出し入れする際の外槽の揺れは小さく作業性が高い。逆に弾性体の圧縮量が小さいと、高い振動吸収効果が得られ、外槽が振動しても外箱が振動しにくくなる反面、洗濯物をドラム内に出し入れする際に外槽が揺れ易く作業がしにくい。
【0013】
そこで、振動吸収性と洗濯物の出し入れの容易性という相矛盾する両方の要求を満足するために、第1発明に係るドラム式洗濯機では、前記ダンパは振動吸収用の弾性体を介挿して前記外槽及び台座部に固定され、その固定の際の前記弾性体の圧縮量は前記水平軸又は傾斜軸を挟んで配置された一本の側のダンパよりも二本の側のダンパで小さく設定されている構成とすることが好ましい。これにより、ダンパが一本である側では外槽の揺れを少なくして洗濯物の出し入れをし易くすることができ、二本のダンパの側では、振動吸収効果を充分に発揮させて外箱の振動を抑制することが可能となる。
【0014】
また、弾性体の圧縮量を調節するほか、弾性体自体の硬度を変えることによっても同様の効果を奏することは明白である。すなわち、第1発明に係るドラム式洗濯機の他の態様として、前記ダンパは振動吸収用の弾性体を介挿して前記外槽及び台座部に固定され、該弾性体の硬度は前記水平軸又は傾斜軸を挟んで配置された一本の側のダンパよりも二本の側のダンパで小さく設定されている構成としてもよい。
【0015】
また、洗濯時には外槽内に水が貯留され、それによって外槽全体の重量が大きく増加するが、注水時に外槽が一方に傾くことなく、全体に平均して沈み込むするようにすることが望ましい。そこで、第1発明に係るドラム式洗濯機では、前記ダンパはばねを含み、前記水平軸又は傾斜軸を挟んで配置された一本の側のダンパのばねの定数は二本の側のダンパのばね定数を加算したものと略等しく設定されている構成とするとよい。この構成によれば、水平軸又は傾斜軸を挟んだ両側のダンパにおけるばね定数がほぼ揃いバランスが良くなるので、外槽に水が注水された場合でも外槽が全体に平均して沈み込み、一方に傾くことを避けることができる。なお、実際には外槽の重心の位置等によっては適宜ばね定数を調節することが好ましいが、その場合にも上記条件から大きく逸脱することはなく、上記「略等しく」の範囲に含まれる。
【0016】
更にまた、ドラムに収容されている洗濯物が片寄った状態でドラムが回転駆動されたとき、軸方向に外槽の略中央部で外槽を支持しているダンパよりも端面に近い位置で外槽を支持しているダンパにより大きな負荷が掛かる。そこで、第1発明に係るドラム式洗濯機では、前記水平軸又は傾斜軸を挟んで配置された二本の側の各ダンパの減衰力は一本の側のダンパの減衰力よりも大きく設定されている構成とすることができる。これにより、洗濯物が片寄っていても外槽の振動をより効果的に抑制することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例であるドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は本実施例のドラム式洗濯機の外観斜視図、図2は上部の側面縦断面図である。このドラム式洗濯機において、外箱は、上面部1aと前面部1bとの間の角部がやや丸みをもちつつ前下がりになった傾斜状に形成されている。この傾斜部1cからその後方の上面部1aにかけて大きな洗濯物投入口3が開口し、この洗濯物投入口3を開閉するための上蓋2は、図2に示すように、横方向に水平に延伸する軸2a,2bにより、洗濯物投入口3の後方に二つ折り状態で起立可能である。
【0037】
上蓋2の左側には前方に引き出し自在の洗剤容器4が、右側には前後方向に延伸して操作パネル5が設けられている。操作パネル5には、運転コースや予約時間等を設定するためなどの各種の操作キーと、これら設定に応じて点灯したり、洗濯行程の進捗状況を報知したり、或いは予約や運転の残り時間などを表示するための各種の表示器が適宜に分散して配置されている。操作パネル5はそのほぼ全体が斜め上方を指向しているため、使用者が本洗濯乾燥機の前方に立った姿勢で斜め下方を見下ろしたとき、操作パネル5面はその視線に対して垂直に近い状態となり、表示が見易く且つ操作キーも押し易いという配慮がなされている。
【0038】
次に、図3〜図7に基づき、本ドラム式洗濯機の内部構成について概略的に説明する。図3は本洗濯機内部の要部の正面縦断面図、図4は同じく内部の左側面図、図5は内部の右側面縦断面図、図6は内部の右側面図、図7は内部の乾燥風路を中心に描いた正面縦断面図である。
【0039】
外箱1の内部にあっては、周面が略円筒形状で両端面がほぼ閉塞された外槽10が、外箱1の左右側面にそれぞれ端面が対向する状態で、左右両側上方から吊下げ支持する二本のばね11と、前後方向に外槽10の下部を支持する前方側一本及び後方側二本のダンパ12a,12b,12cとにより適度に揺動自在に保持されている。この外槽10の内部には、洗濯物を内部に収容するための内槽として、多数の通水穴が穿孔された略円筒形状の周面の両端面がほぼ閉塞されている横型のドラム13が、左右方向に延伸する水平軸線Cを中心に回転自在に設けられている。
【0040】
ドラム13の左端面中央に固着された主軸14は、外槽10の左端面に固定されている第1軸受ケース16に保持された軸受17により支承されている。他方、ドラム13の右端面中央に固着された補助軸15は、外槽10の右端面に固定されている第2軸受ケース18に保持された第2軸受19により支承されている。この主軸14及び補助軸15により上記水平軸線Cが形成される。外槽10の左端面から側方へと突出した主軸14の先端には、アウタロータ型のモータ20のロータ20bが固定され、一方、モータ台を兼ねる第1軸受ケース16にはモータ20のステータ20aが固定されている。すなわち、ドラム13はモータ20によりダイレクト駆動される構成となっており、図示しない制御回路からステータ20aに駆動電流が供給されるとそれによってロータ20bが回転し、主軸14を介してロータ20bと同一の回転速度でドラム13が回転駆動される。
【0041】
一方、外槽10の右外側には、乾燥時に加熱空気をドラム13内に供給するとともに、洗濯物から奪った水蒸気を多量に含む空気を冷却し、水を凝縮・液化して除去した後の空気を再び加熱するように循環する乾燥風路が設けられている。乾燥風路の構成については後で詳述する。
【0042】
外槽10の周面の上部から斜め前方にかけて、外箱の洗濯物投入口3と一致する位置に、洗濯物を出し入れするための外槽開口100aが設けられ、外槽開口100aは左右水平方向に延伸する軸を中心に回動自在に設けられた外槽扉102により開閉自在となっている。また、ドラム13の周面にも洗濯物を出し入れするためのドラム開口130が設けられ、ドラム開口130は、前後方向に観音開き構造を有する二枚の扉体131a,131bから成るドラム扉131により開閉自在となっている。但し、ドラム13は回転可能であるため、ドラム開口130が外槽開口100aと径方向に一致した位置でドラム13が停止状態を維持するように、ステータ20aの下方にはドラム位置固定装置21が設けられており、ドラム13停止時にはドラム位置固定装置21から突出する係合凸部とロータ20bに形成されている係合凹部とが噛み合い、ドラム13の停止位置が決まる。
【0043】
更にまた、外槽10の右側底部には排水口100dが設けられ、排水口100dはトルクモータ23の動作により開閉する排水バルブ22を介し、図示しない排水ホースを通して外部の排水溝へと接続されている。
【0044】
次に、本実施例に係るドラム式洗濯機の特徴的な構成要素について詳細に説明する。
【0045】
まず、特徴の1つである外槽10の支持構造について説明する。上述したように、本ドラム式洗濯機において、外槽10は外箱1の底部を構成する台座部6に対し、一本の前方側ダンパ12aと二本の後方側ダンパ12b,12cとの合計三本のダンパで支持されている。外槽10の上部はばね11で補助的に吊支されているが、この吊支による力は弱く、実質的に外槽10を支持しているのはダンパである。
【0046】
外槽10への三本のダンパ12a,12b,12cの固着箇所は上から見たときに略二等辺三角形の頂点になっている。このように、三本のダンパ12a,12b,12cで外槽10の底部を三点支持することにより、外槽10が安定的に台座部6上に支持される。また、斜め前方に位置している洗濯物投入口3からドラム13内に洗濯物を投入する際に、後方側により大きな力が掛かるが、後方側を二本のダンパ12b,12cで支持しているため、左右方向への揺れが小さく、洗濯物の出し入れが容易である。更にまた、外箱1の前面板を取り外して修理・点検などを行う際に、前側にはダンパ12aは一本のみであるため、作業の邪魔になりにくいという利点もある。
【0047】
図8は前方側ダンパ12a周辺を拡大して示す側面縦断面図である。このダンパはいわゆる油圧式のダンパであって、内部に油が封入された円筒状のシリンダ120と、該シリンダ120内部で軸方向に摺動自在のピストン(図示しない)に連結されたロッド121と、該ロッド121に固定されたばね受け板123とシリンダ120上端との間に挟設されたコイルばね122とを備える。ロッド121の上部にはフランジ124が設けられるとともにネジ溝125が形成され、またシリンダ120からロッド121の突出方向とは反対の下方向へ突設された軸126にも同様にフランジ127及びネジ溝128が形成されている。
【0048】
一方、外槽10の左右方向の略中央で前方側には、ダンパ取付板200がネジ201で強固に固定されている。そして、上記ダンパ12aのロッド121の上端部は、フランジ124で係止される座金202とダンパ取付板200との間にゴム製の円環状のクッション材203が介挿されるとともに、ネジ溝125に螺合されたナット205で固定される座金204とダンパ取付板200との間に他のクッション材206が介挿されることにより、外槽10に対して固定されている。また、ダンパ12aの軸126の下端も同様に、フランジ127で係止される座金209とダンパ取付板207との間にクッション材210が介挿されるとともに、ネジ溝128に螺合されたナット212で固定される座金211とダンパ取付板207との間に他のクッション材213が介挿されることにより、台座部6に対して固定されている。したがって、上端のナット205を強く締め付けるほどクッション材203,206は押し潰され、下端のナット212を強く締め付けるほどクッション材210,223は押し潰される。
【0049】
また、二本の後方側ダンパ12b,12cも、外槽10の左右端部に近い位置の後方側に、上記前方側ダンパ12aと同様の取付構成により固定されている。
【0050】
上記構成では、ナット205,212(及び後方側ダンパ12b,12cにおける同等の箇所のナット)の締付け度合で決まるクッション材の潰ししろが小さい(つまり押し潰しが弱い)ほど、ゴムの弾性力が発揮され易く振動吸収効果が高くなる。そのため、外槽10の振動が台座部6に伝播しにくく外箱1の振動抑制効果が高いという利点がある。その反面、外槽10は揺動し易くなり、洗濯物を出し入れする際に外槽10がふらついて出し入れしにくくなるという不利な点もある。そこで、本ドラム式洗濯機の構成では、充分な外箱1の振動抑制効果を得つつ、洗濯物の出し入れがしにくくなるほど外槽10が揺れるのを回避するため、より安定性の高い後方側の二本のダンパ12b,12cでは、一本であるために安定性の低い前方側のダンパ12aよりもクッション材の潰ししろを相対的に小さくしている。これにより、外箱1の振動をできるだけ抑制するとともに、洗濯物投入時における外槽10の揺れを適度に抑えている。
【0051】
なお、クッション材の潰ししろの大きさでゴムの弾性力を調整する以外に、硬度の異なるゴムを用いても同様の効果を達成することができる。すなわち、後方側の二本のダンパ12b,12cでは前方側の一本のダンパ12aよりもゴムの硬度を低いものとする(つまり軟らかいゴムを使用する)ようにしてもよい。
【0052】
また、前方側ダンパ12aのコイルばね122のばね定数は、後方側の二本のダンパ12b,12cのコイルばね122のばね定数を加算したものと同程度になるように設定されている。上述したように三本のダンパ12a,12b,12cの外槽10への固着位置は略二等辺三角形を成すが、上記のようにばね定数を設定したことにより、ダンパによる前後方向の支持の中心点は上記二等辺三角形の前後の中央(つまり二本の後方側ダンパ12b,12cの固着箇所を結ぶ線を底辺とし、その底辺の中心から前方側ダンパ12aの固着箇所との間に引いた垂線の中心)付近となり、左右方向の支持の中心点も上記二等辺三角形の左右の中央付近になる。そのため、前後及び左右方向の支持の中心点は外槽10の重心の位置とほぼ一致する。このように構成することによって、外槽10に水が貯留された場合でも、外槽10全体がほぼ均一に沈み込むようにすることができる。
【0053】
更にまた、前方側ダンパ12aは外槽10の左右方向の略中央部を支持しているのに対し、後方側ダンパ12b,12cは外槽10の端面に近い部位を支持している。そのため、ドラム13内で洗濯物が片寄っていた場合に、後方側ダンパ12b又は12cにより大きな負荷が掛かる。そこで、後方側ダンパ12b,12cでは前方側ダンパ12aよりも減衰力を大きく設定し、外箱1への振動が伝達しにくいように構成している。
【0054】
次に、外槽10の構成について説明する。外槽10は、略筒状体の一端面がほぼ閉塞した外槽胴部材100と、該外槽胴部材100の開放端面をほぼ閉塞するように装着される端面カバー101とから成る。図9は外槽胴部材100の正面縦断面図である。
【0055】
外槽胴部材100はプラスチック製の一体成型品であって、水平軸線C方向の略中央下部に外槽10の内側に連通する下部開口100bを有し、該下部開口100bから水平軸線C方向に延伸して右側開放端面まで至る筒状管路100cが一体に形成されている。この下部開口100bが乾燥運転時に外槽10から湿った空気が排出される出口になり(そのため、以下の説明ではこの開口を排気出口100bと呼ぶこととする)、筒状管路100cは乾燥風路の一部となる。
【0056】
外槽胴部材100の右側開放端面をほぼ閉塞する端面カバー101にあって、上記筒状管路100cの開放端面に対応する箇所には円形状の開口101aが形成されている。端面カバー101には、乾燥風路を構成する部材として、上記開口101aに被さる除湿パイプ30と、第2軸受ケース18に形成された開口18a(後記理由により、以下、熱風供給口18aと呼ぶ)に被さるヒータカバー32とがファンケーシング31を挟んで固定され、これにより、上記筒状管路100cと併せて、外槽10の排気出口100bから熱風供給口18aにまで至る、外槽10外部の乾燥風路が形成されている。この風路内には、排気出口100bから順に、外槽10内から吐き出された湿った空気を除湿する除湿部33と、該風路内に空気流を生起するべくモータ34により回転駆動されるファン35と、空気流を加熱するシーズ線から成るヒータ36とが配設されている。
【0057】
上記構成において、モータ34によりファン35が回転駆動されると、ファン35は後方側から吸い込んだ空気を側方に向けて吐き出す。そのため、ファンケーシング31からヒータカバー32内へと向かう空気流が形成され、ヒータカバー32内を通過する間にヒータ36で加熱された空気は、熱風供給口18aを通して外槽10内へと送り込まれる。ドラム13の端面は補助軸15の周囲に複数の開口13bを有しており、主としてその開口13bからドラム13内へと加熱空気が流れ込む。ドラム13内に濡れた洗濯物が収容されている場合、加熱空気は洗濯物同士の隙間や洗濯物の繊維の隙間を通過し、その際に洗濯物から水分を奪う。水分を含む空気は主として通水穴を通ってドラム13の外側へ出て、ドラム13と外槽10との隙間を通って排気出口100bへと向かう。
【0058】
そして、排気出口100bから外槽10の外側へ取り出された、水蒸気を多量に含む空気は、筒状管路100cを通って除湿部33に達し急激に冷却される。その結果、空気に含まれる水蒸気は凝縮して水となり、除湿された乾いた空気がファンケーシング31へと戻り、再びヒータ36で加熱されるように循環される。なお、除湿部33で凝縮した水は除湿パイプ30の内壁を流下して、凝縮により生じた水とともに図示しない排水穴から排出される。
【0059】
このようにモータ20は外槽胴部材100に形成されている端面側に設けられ、それと相対する他の端面である端面カバー101に上記乾燥風路が設けられるようになっている。重量でみると、乾燥風路よりもモータ20のほうが遙かに重いが、外槽胴部材100に形成された端面(左端面)のほうがより強度が高いため、安定してモータ20を取り付けることができる。また、端面カバー101は外槽胴部材100に嵌合させた上でネジで固定する構成であるため、ガタによって軸の中心が若干ずれるおそれがあるのに対し、外槽胴部材100は軸の中心精度が高いため、外槽10の内周面とドラム13の外周面との間隙を周方向に均一化するのに有利である。
【0060】
また、モータ20と上記乾燥風路とによる左右方向の重量のアンバランスを補うように、外槽胴部材100の右端側底部には所定重量を有する重錘27が装着されている。これによって、外槽10の左右方向の重量バランスが良好になり、外槽10全体の傾きがなくなり、脱水運転時の振動も抑えられる。また、特に外槽胴部材100の底部に重錘27を設けることによって、外槽10の重心が低くなり、これによっても振動低減が図れる。
【0061】
また、図5に示すように、外槽胴部材100の後端付近には、上方から給水管路の一端が接続される給水管部100eが直上に突出するように形成されており、図示しない給水バルブが開放される又は風呂水ポンプが作動されると、水道水又は風呂水が洗剤容器を介して供給される。図10はこの給水管部100eを通して外槽10に供給される水の流れと、ドラム13が高速回転されるときに外槽10内に生起される空気流との関係を簡略化して示した図である。
【0062】
脱水運転時等、ドラム13が高速で回転駆動されるとき、ドラム13と外槽10との間の間隙にはドラム13の回転と同一方向に空気流が生起される。しかしながら、給水管部100eは外槽胴部材100に対して合流角度θが鋭角を成すように接続されているため、給水管部100eには強い空気流が入り込みにくい。そのため、給水管路内を空気が逆流することがなく、洗剤容器にまで達した空気流が洗剤容器に予め収容されている洗剤や柔軟仕上剤を押し出してしまうことを防止することができる。
【0063】
また、洗い運転後の中間脱水行程では、洗濯物から吐き出された洗剤水が撹拌されることによって多量の泡が発生することがあり、この泡を抑えるために脱水運転を行いながら少量の水を注ぐような制御を行うことがある。その場合でも、ドラム13の高速回転により生起される空気流が給水管部100eに逆流して来にくいので、該空気流が外槽10内への水の供給の障害とならず、外槽10内で確実に洗剤水の泡立ちを抑制することができる。
【0064】
図6に示すように、端面カバー101には溢水口101bが設けられ、溢水口101bは溢水ホース28を介して排水バルブ22の出口側に接続されている。外槽10内に供給された水が外槽10内部に貯留されて水位が上昇してゆき、溢水口101bまで達すると、溢水口101bから溢水ホース28を経て外部へと水が流出する。したがって、例えば給水バルブが故障等により閉じなくなった場合でも、外槽10内の水位が異常に上昇して機外へと漏出することを未然に防止できる。また、溢水口101bは熱風供給口18aよりも低い位置に設けられている。そのため、たとえ外槽10内の水位が上昇して溢水口101bから流出し始める程度まで達しても、熱風供給口18aから水がヒータカバー32内に流れ込んでヒータ36が被水することを防止できる。
【0065】
また、図5に示すように、外槽10内に開口した排気出口100bの下端は外槽10内周面の最底部よりも高さdだけ高くなるように段差が設けられている。これにより、外槽10内に何らかの異物が落ちた場合でも、外槽10の最底部まで落下した異物は上記段差によってそこに留まり、筒状管路100c内にその異物が入り込みにくいようになっている。
【0066】
なお、ドラム13が停止した状態で底部となるドラム胴部13aには、ドラム13内側から着脱可能な蓋体25により開閉自在の異物取出し口13cを設けている。外槽10とドラム13との隙間に異物を落としてしまった場合に、使用者(又はサービス担当者)がドラム13の内周側から蓋体25を取り外すと、異物取出し口13cを通して外槽10が覗くから、指等を入れて、上記段差に留まっている異物を容易に拾い上げることができる。
【0067】
また、図10に示すように、排気出口100bの位置及び向きは、ドラム13が高速回転した際に生起された空気流が流れ込みにくいように、上記外槽胴部材100に対する給水管部100eの接続方向と同様に、周回する空気流の直進成分に対して進行を妨げるように設けられている。そのため、筒状管路100cには空気流が流れ込みにくくなっており、これにより、脱水運転の際に洗濯物から飛散した水の微細水滴や洗剤による泡が乾燥風路に入り込みにくくなっている。これにより、乾燥風路に泡が充満してしまうことや、ヒータ36に水滴が付着して腐食し易くなることを防止することができる。
【0068】
更にまた、図11は外槽胴部材100底部の排水口100d付近の要部の正面縦断面図である。排水口100dには、エアトラップ26を一体に形成した排水バルブケーシング22aが装着され、エアトラップ26の底部開口は底栓26aで閉塞される。バルブケーシング22a内にはトルクモータ23の駆動によって進退する弁体22bが備えられている。エアトラップ26の上部孔には図示しないエアホースを介して圧力センサが接続され、該圧力センサにより外槽10内の水位を検知できるように構成されている。外槽10に対し低い位置にエアトラップ26を設けるほど低い水位まで検知することが可能となるが、排水バルブケーシング22aにエアトラップ26を設けるようにすることにより、外槽10内の最も低い位置にエアトラップ26を配置することができる。もちろん、同様の効果を得るために、エアトラップと排水バルブケーシングとを別体で形成し、後でエアトラップを排水バルブケーシングに連結する構成としてもよい。
【0069】
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるドラム式洗濯機の外観斜視図。
【図2】本実施例のドラム式洗濯機の上部の側面縦断面図。
【図3】本実施例のドラム式洗濯機内部の要部の正面縦断面図。
【図4】本実施例のドラム式洗濯機内部の左側面図。
【図5】本実施例のドラム式洗濯機内部の右側面縦断面図。
【図6】本実施例のドラム式洗濯機内部の右側面図。
【図7】本実施例のドラム式洗濯機内部の乾燥風路を中心に描いた正面縦断面図。
【図8】本実施例のドラム式洗濯機における前方側ダンパ周辺の拡大図。
【図9】本実施例のドラム式洗濯機における外槽胴部の正面縦断面図。
【図10】本実施例のドラム式洗濯機において、給水管部を通して外槽に供給される水の流れと、ドラムが高速回転されるときに外槽内に生起される空気流との関係を簡略化して示す図。
【図11】本実施例のドラム式洗濯機における排水口付近の要部の正面縦断面図。
【符号の説明】
1…外箱
3…洗濯物投入口
6…台座部
10…外槽
100…外槽胴部材
100a…外槽開口
100b…排気出口(下部開口)
100c…筒状管路
100d…排水口
100e…給水管部
101…端面カバー
101a…開口
101b…溢水口
102…外槽扉
12a,12b,12c…ダンパ
120…シリンダ
121…ロッド
123…ばね受け板
124,127…フランジ
125…ネジ溝
126,128…軸
13…ドラム
20…モータ
200,207…ダンパ取付板
201…ネジ
202,204,209,211…座金
203,206,210,213…クッション材
205,212…ナット
22…排水バルブ
22a…排水バルブケーシング
22b…弁体
23…トルクモータ
26…エアトラップ
27…重錘
28…溢水ホース
30…除湿パイプ
31…ファンケーシング
32…ヒータカバー
33…除湿部
34…モータ
35…ファン
36…ヒータ

Claims (5)

  1. 外箱と、この外箱の上面に設けた洗濯物投入口と、前記外箱内に配設した外槽と、この外槽の周面の上部から斜め前方にかけて、前記洗濯物投入口と一致する位置に設けた洗濯物を出し入れするための外槽開口と、この外槽内に左右方向に延伸する水平軸を中心に回転自在に設けられたドラムと、このドラムの周面に設けた洗濯物を出し入れするためのドラム開口とを具備し、斜め前方に位置している洗濯物投入口からドラム内に洗濯物が投入されるドラム式洗濯機において、
    前記外箱の下部に設けられた台座部に下端が固定された三本のダンパを介して前記外槽を支え受けるようにするとともに、前記三本のダンパのうち一本は前記外槽の前方側下部を、他の二本は該外槽の後方側下部を支え受けることを特徴とするドラム式洗濯機。
  2. 前記ダンパは振動吸収用の弾性体を介挿して前記外槽及び台座部に固定され、その固定の際の前記弾性体の圧縮量は前記水平軸を挟んで配置された一本の側のダンパよりも二本の側のダンパで小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
  3. 前記ダンパは振動吸収用の弾性体を介挿して前記外槽及び台座部に固定され、該弾性体の硬度は前記水平軸を挟んで配置された一本の側のダンパよりも二本の側のダンパで小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
  4. 前記ダンパはばねを含み、前記水平軸を挟んで配置された一本の側のダンパのばねの定数は二本の側のダンパのばね定数を加算したものと略等しく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
  5. 前記水平軸を挟んで配置された二本の側の各ダンパの減衰力は一本の側のダンパの減衰力よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
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