JP3609301B2 - ケーシング掘削機の油圧回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築・土木の基礎工事などに使用される大口径鋼管杭・鋼管類の地盤等への押し込み、地盤等からの引き抜きをおこなうケーシング掘削機の油圧回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のケーシング掘削機の油圧回路として、従来、特開平7−180460号公報に記載のものがある。以下、この従来技術について図4,5に基づいて説明する。図4はケーシング掘削機の外観構成を示す正面図、図5は従来のケーシング掘削機の油圧回路を示す回路図である。
【0003】
はじめに、図4によりケーシング掘削機の外観構成について説明する。掘削具を形成するケーシングAの下端には、掘削用ビットB’を備えたケーシングヘッドBが設けられている。ケーシングAはチャック装置Iで把持され、回転用油圧モータEを備えた回転装置Fにより回転力を与えられるようになっている。また、ケーシングAは昇降シリンダ15の作動により、昇降ガイドDに案内され昇降する。固定部を形成するベースフレームGには複数個のアウトリガHが装着され、これらのアウトリガHが地盤上に載置される。上述した昇降シリンダ15の一端、例えばロッドの端部は、ベースフレームGに固定され、他端、例えばヘッド側に位置するシリンダ端部は、上述の回転装置Fの非回転部分に固定されている。
【0004】
このようなケーシング掘削機による地盤等の掘削時には、昇降シリンダ15を伸長させた状態で、チャック装置IでケーシングAを把持させ、回転用油圧モータEでチャック装置Iを回転させてケーシングAを回転させながら昇降シリンダ15を収縮させてこのケーシングAを下降させ、ケーシングヘッドBのビットB’により地盤等を掘削する。そして、掘削されたケーシングA内の土砂は、ハンマグラフ等のバケットにより外部に排出される。昇降シリンダ15の収縮ストローク分の掘削を終えたら、チャック装置IによるケーシングAの把持を解き、昇降シリンダ15を伸長させ、チャック装置I及び回転装置Fの回転部分等を上昇させる。この状態で再び、チャック装置IでケーシングAを把持させ、回転用油圧モータEを作動させ、かつ、昇降シリンダ15を収縮させる。これにより上述のように、ケーシングAが回転しながら下降し、ビットB’による昇降シリンダ15の収縮ストローク分の掘削がおこなわれる。このような掘削の間、掘削深さが大きくなると、最下端のケーシングAの直上にビットB’を有さないケーシングAがピンで連結される。この状態にあって再び上述の掘削がおこなわれる。継ぎ足されるケーシングAは、所望の掘削深さに応じて複数本になることが多い。
【0005】
上述のような掘削動作とは逆に、例えばケーシングAを引き上げる動作は以下のようにおこなわれる。すなわち、昇降シリンダ15を収縮させた状態でチャック装置IによってケーシングAを把持させ、昇降シリンダ15を伸長させる。これによりケーシングAは昇降シリンダ15の伸長ストロークだけ上昇する。ここでケーシングAの上方部分は、図示しない拘束手段で落下しないように拘束される。この状態でチャック装置IによるケーシングAの把持を解き、昇降シリンダ15を収縮させる。この状態で再びチャック装置IによってケーシングAを把持させ、前述の拘束手段による拘束を解き、昇降シリンダ15を伸長させる。これによりケーシングAは再び昇降シリンダ15の伸長ストロークだけ上昇する。このような動作が繰り返された後、最上部のケーシングAの連結が解かれ、その最上部のケーシングAが外される。以下同様の動作が繰り返され最後にビットB’を備えたケーシングAが外されて、ケーシングAの引き上げが終了する。
【0006】
次に、上述したケーシング掘削機の駆動回路を構成する従来の油圧回路について、図5により説明する。
この図5において、15は前述した昇降シリンダで、複数、例えば4本設けられている。従来の油圧回路は、この昇降シリンダ15を作動させる圧油を供給する油圧ポンプ、例えば可変容量油圧ポンプ1と、この油圧ポンプ1の吐出管路を形成する油路aに連絡され、昇降シリンダ15を伸長させる圧油を導く伸長側油路cと、油路aに連絡され、昇降シリンダ15を収縮させる圧油を導く収縮側油路dと、これらの伸長側油路c及び収縮側油路dに介設され、油圧ポンプ1から昇降シリンダ15に供給される圧油の流れ、及び昇降シリンダ15からタンクに戻される圧油の流れを制御する方向制御弁、すなわちソレノイド弁5とを備えている。
【0007】
また、油圧ポンプ1から吐出される圧油の圧力のうちの、伸長側油路cに圧油を供給するときの最大圧を規定するリリーフ弁4と、収縮側油路dに圧油を供給するときの最大圧を規定するリリーフ弁2と、これらのリリーフ弁4,2の作動を選択的に切換えるソレノイド弁3とを備えている。
【0008】
また、収縮側油路dを流れる圧油の伸長側油路cへの供給を選択的に可能にするパイロットチェック弁12と、このパイロットチェック弁12を作動させるソレノイド弁10と、伸長側油路cに介設されるカウンタバランス弁14とを備えている。
【0009】
さらに、伸長側油路c及び収縮側油路dから分岐させた油路eと、この油路e中にそれぞれ介設されるスロットル弁8、ソレノイド弁7、リリーフ弁11、チェック弁6を備えている。
【0010】
この従来の油圧回路にあっては、ソレノイド弁3のSOL1を励磁して当該ソレノイド弁3を図の上段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL4を励磁して当該ソレノイド弁5を図の右位置に切換えることにより、油圧ポンプ1の圧油が油路a、ソレノイド弁5、伸長側油路cを介して昇降シリンダ15のヘッド側に供給され、また、昇降シリンダ15のロッド側の油が収縮側油路d、ソレノイド弁5を介してタンクに戻され、これによって昇降シリンダ15が伸長する。
【0011】
また、ソレノイド弁3のSOL2を励磁して当該ソレノイド弁3を図の下段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL3を励磁して当該ソレノイド弁5を図の左位置に切換えることにより、油圧ポンプ1の圧油が油路a、ソレノイド弁5、収縮側油路dを介して昇降シリンダ15のロッド側に供給され、昇降シリンダ15のヘッド側の油が伸長側油路c、ソレノイド弁5を介してタンクに戻され、これによって昇降シリンダ15が収縮する。
【0012】
このような昇降シリンダ15の伸長、収縮とともに、前述した図4に示す回転用油圧モータEを駆動することにより、図4に示すケーシングAが回転しながら下降して通常の圧入掘削がおこなわれる。
【0013】
また、差動回路時には,ソレノイド弁3のSOL1を励磁して当該ソレノイド弁3を図の上段位置に切換えるとともに、ソレノイド弁10のSOL5を励磁して当該ソレノイド弁10を図の右位置に切換えることにより、油圧ポンプ1の圧油が油路a、ソレノイド弁10を介して、パイロットチェック弁12に与えられ、このパイロットチェック弁12が、圧油の逆流を可能にするように作動する。したがって、収縮側油路dから伸長側油路c方向への圧油の流入が可能になる。
【0014】
また、軟弱地盤等に対しておこなわれる自重掘削(フリー回路)、すなわち回転装置Fの回転部分、回転用油圧モータE、チャック装置I等の機器の自重と、ケーシングAの自重との合計荷重により昇降シリンダ15を自然降下させて掘削をおこなう自重掘削時には、スロットル弁8の開度の手動調整とともに、ソレノイド弁7のSOL8を励磁して図の右位置に切換えることがおこなわれる。これにより、昇降シリンダ15のヘッド側から流出される油が、伸長側油路c、スロットル弁8を介して、一部が収縮側油路dを介して昇降シリンダ15のロッド側に供給され、残りがタンクに戻される。このような昇降シリンダ15の収縮動作とともに図4に示す回転用油圧モータEを駆動することにより、自重掘削がおこなわれる。
【0015】
さらに、自重掘削を利用するもののケーシングAの下降速度を制御しようとする自重制御掘削に際しては、スロットル弁8の開度の手動調整とともに、ソレノイド弁7のSOL7を励磁して図の左位置に切換えることがおこなわれる。これにより、昇降シリンダ15のヘッド側から流出される油が、伸長側油路c、スロットル弁8、リリーフ弁11を介して、一部が収縮側油路dを介して昇降シリンダ15のロッド側に供給され、残りがチェック弁6を経てタンクに戻される。これにより、昇降シリンダ15のヘッド側室にリリーフ弁11の設定圧力に応じた背圧が作用し、ケーシングヘッドBに自重−α(背圧に相当する荷重)の抑制された荷重が作用する。したがって、掘削対象物の変化に応じた下降速度での掘削動作が実施される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術では、自重掘削あるいは自重制御掘削に際し、スロットル弁8の手動調整によってケーシングAの下降速度を制御しているが、スロットル弁8を一度調整しても、既設のケーシングAに新たなケーシングAが連結されて全体の自重が増加すると、作動油の圧力に変化を生じ、このスロットル弁8の通過流量が変化し、ケーシングAの下降速度が速くなってしまう。また、寒冷地における駆動時には、油の温度が低いことから油の粘度が高くなるが、このように油の粘度が高いときにスロットル弁8の手動調整をすると、作業の継続によって油温が上昇し、油の粘度が小さくなるように変化したときに、ケーシングAの下降速度が速くなってしまう。このようにケーシングAの下降速度が変化した場合には、作業者がスロットル弁8の再調整をおこなうが、作業者の手動でおこなわれる調整作業であることから、作業者の勘に頼る面もあり、最適な速度とすることが困難である。
【0017】
また、このようなスロットル弁8の再調整に際しては、作業者は掘削機を操作する操作盤から離れて、操作盤とは通常は離隔した位置に設置されている油圧ユニットの場所まで行き、その油圧ユニットに含まれるスロットル弁8の調整をおこなうことになる。したがって、操作盤と油圧ユニット間の煩雑な移動動作を余儀なくされる。このようなことから、当該掘削機を介して実施される掘削作業の能率の向上を見込めない問題もある。
【0018】
さらに、掘削対象物には、岩盤とか、鉄筋を含むコンクリート基礎とか、鋼材などの硬い掘削対象物なども含まれるが、このような硬い掘削対象物を速すぎる下降速度で、すなわち制御が十分になされていない下降速度で掘削しようとすると、ケーシングヘッドBの下端のビットB’が大きな荷重を受けた状態で掘削対象物に衝合することになり、このビットB’の損耗あるいは折損を生じやすい。
【0019】
なお、偏荷重のかかる傾斜岩盤とか、地中に埋設される建造物の壁などを掘削する場合には、下降速度を微速度にすることが必要になることがある。このような場合に、微速度を実施できないときには、ビットB’が掘削対象物上を滑って、本来鉛直に下降させるはずのケーシングAが傾いてしまう懸念がある。上述した従来技術では、スロットル弁8の手動調整によるものであることから、基本的に下降速度の制御が困難であることに伴い、このような微速度制御がさらに困難となる問題もある。
【0020】
本発明は、上記した従来技術における実情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、手動調整されるスロットル弁を必要とすることなく、ケーシングの下降速度の遠隔制御を可能とするケーシング掘削機の油圧回路を提供することにある。
【0021】
また、第2の目的は、微速度制御を可能とするケーシング掘削機の油圧回路を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、下端部に掘削用ビットを有するケーシングを昇降させる複数の昇降シリンダと、この昇降シリンダを作動させる圧油を供給する油圧ポンプと、この油圧ポンプと上記昇降シリンダとを連絡し、上記昇降シリンダを伸長させる圧油を導く伸長側油路と、上記油圧ポンプと上記昇降シリンダとを連絡し、上記昇降シリンダを収縮させる圧油を導く収縮側油路とを備え、上記ケーシングに回転力を与えながら上記昇降シリンダを収縮させることにより、上記ケーシングが回転しながら下降し、当該ケーシングの下端の上記ビットが掘削をおこなうケーシング掘削機の油圧回路において、上記油圧ポンプから上記収縮側油路に供給される圧油の流量を制御する流量制御手段を備え、上記伸長側油路に、上記油圧ポンプから上記昇降シリンダへの圧油の流れを許容し、上記昇降シリンダから上記油圧ポンプへの圧油の流れを阻止するチェック弁と、当該伸長側油路の圧力を、上記昇降シリンダを収縮させる際に上記ケーシングを、その自重及び上記昇降シリンダによって昇降される部分の自重によって自然降下させない所定の大きさの圧力に規定する可変リリーフ弁とを並列に配置し、上記流量制御手段によって上記収縮側油路へ供給される圧油の流量を調整することにより上記昇降シリンダの収縮速度を、ケーシング及び昇降シリンダによって昇降される部分の自重の影響を受けずに制御する構成にしてある。
【0023】
このように構成した請求項1に係る発明にあっては、伸長側油路の圧力を規定する可変リリーフ弁を備えているが,このような可変リリーフ弁は遠隔制御が可能なものから構成することができる。したがって、例えば当該掘削機を操作する操作盤に,この可変リリーフ弁を制御する操作部を設けることができる。
【0024】
可変リリーフ弁の操作部を操作して、その設定圧力を、ケーシング及び掘削機の昇降し得る部分を自然降下させない所定の圧力に設定しておき,この状態でケーシングに回転力を与えながら昇降シリンダの収縮側油路に流量制御手段によって制御される流量を供給すると、この昇降シリンダは供給された流量に依存する速度で収縮し,これに伴ってケーシングを下降させることができる。すなわち、ケーシング及び掘削機の昇降し得る部分の自重による影響を受けずに,ケーシングの下降速度を制御することができる。ケーシングが複数連結された場合も同様であり,連結されて自重が増加する度に可変リリーフ弁の設定圧力を,ケーシング及び掘削機の昇降し得る部分を自然降下させない所定の圧力に設定することがおこなわれる。このようにして,手動調整されるスロットル弁を要することなく,遠隔操作によって,ケーシングの下降速度を制御でき,所望の掘削作業を実施することができる。
【0025】
また,上記第1の目的を達成するために、本願の請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明において、上記可変リリーフ弁が,上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な電磁比例リリーフ弁から成る構成にしてある。
【0026】
電磁比例リリーフ弁の操作部を,例えば掘削機を操作する操作盤に設けることは容易に可能である。このように構成すれば、電磁比例リリーフ弁を操作盤から遠隔操作することができる。
【0027】
上記第1の目的を達成するために、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、上記伸長側油路の圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサによって検出される圧力値よりも大きい所定の圧力に相当するリリーフ圧となるように上記電磁比例リリーフ弁を制御する制御信号を出力するコントローラとを備えた構成にしてある。
【0028】
このように構成した請求項3に係る発明では、コントローラは、圧力センサで検出される圧力値よりも大きいリリーフ圧となるように可変リリーフ弁を自動制御する。
【0029】
上記第1の目的を達成するために、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る発明において、上記油圧ポンプが可変容量油圧ポンプから成り、上記流量制御手段が、上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な上記可変容量油圧ポンプのおしのけ容積を制御するレギュレータから成る構成にしてある。
【0030】
レギュレータを電気的に制御できるように構成し、その操作部を、例えば掘削機を操作する操作盤に設けることは容易に可能である。このように構成すれば、レギュレータを操作盤から遠隔操作することができる。
【0031】
上記第2の目的を達成するために、本願の請求項5に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に係る発明において、上記流量制御手段が、上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な電磁比例フローコントロール弁から成る構成にしてある。
【0032】
電磁比例フローコントロール弁は,圧力補償,温度補償機能を有するものであり、流量の微調節を実現できる。また、その操作部を,例えば掘削機を操作する操作盤に設けることは容易に可能である。したがって、掘削条件の変化に対応して遠隔的に昇降シリンダに供給される流量を制御してケーシングの下降を微速度まで制御することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下,本発明のケーシング掘削機の油圧回路の実施形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の請求項1,2,4に相当する第1実施形態を示す回路図である。なお、ケーシング掘削機の外観構成は,前述した図4に示したものと例えば同等である。したがって、以下の説明においては必要に応じて図4で示した符号を用いて説明をおこなう。また、図1において、あるいは後述する図2,3において、前述した図5に示すものと同等のものは同じ符号で示してある。
【0034】
図1に示す第1実施形態にあっても、チャック装置Iによって把持させたケーシングA(図4に示す)を昇降させる昇降シリンダ15を備えている。この昇降シリンダ15は複数、例えば4本備えている。また、昇降シリンダ15を作動させる圧油を供給する油圧ポンプ,例えば可変容量油圧ポンプ1と、この油圧ポンプ1の吐出管路を形成する油路aに連絡され、昇降シリンダ15を伸長させる圧油を導く伸長側油路cと,油路aに連絡され,昇降シリンダ15を収縮させる圧油を導く収縮側油路dと、これらの伸長側油路c及び収縮側油路dに介設され、油圧ポンプ1から昇降シリンダ15に供給される圧油の流れ,及び昇降シリンダ15からタンクに戻される圧油の流れを制御する方向制御弁、すなわちソレノイド弁5とを備えている。30は、可変容量油圧ポンプ1から吐出される圧油の流量を制御する流量制御手段、すなわち油圧ポンプ1の押しのけ容積を制御するレギュレータである。
【0035】
また、油圧ポンプ1から吐出される圧油の圧力のうちの、伸長側油路cに圧油を供給するときの最大圧を規定するリリーフ弁4と、収縮側油路dに圧油を供給するときの最大圧を規定するリリーフ弁2と、これらのリリーフ弁4,2の作動を選択的に切換えるソレノイド弁3とを備えている。以上の各構成については、前述した図5に示したものと同等である。
【0036】
この第1実施形態は特に、伸長側油路cに、油圧ポンプ1から昇降シリンダ15への圧油の流れを許容し、昇降シリンダ15から油圧ポンプ1への圧油の流れを阻止するチェック弁17と、当該伸長側油路cの圧力を規定する可変リリーフ弁、例えばケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な電磁比例リリーフ弁16とを並列に配置してある。また、電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を、ケーシングAを自然降下させない所定の大きさの圧力に設定してある。すなわち、ケーシングAの自重と掘削機の昇降動作が可能な部分の自重の合計荷重を、電磁比例リリーフ弁16で設定された圧力と、昇降シリンダ15と、掘削機の非駆動部と、前述した図4に示したベースフレームGと、アウトリガHとを介して、掘削機が載置される地盤に支持させてある。
【0037】
このように構成した第1実施形態では、以下のようにして掘削作業が実施される。
すなわち、図示しない操作盤からの操作により、ソレノイド弁3のSOL1を励磁して当該ソレノイド弁3を図1の上段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL4を励磁して当該ソレノイド弁5を図1の右位置に切換える。これにより、油圧ポンプ1から吐出される圧油が油路a、ソレノイド弁5、伸長側油路cを介して昇降シリンダ15のヘッド側に供給され、また、昇降シリンダ15のロッド側の油が収縮側油路d、ソレノイド弁5を介してタンクに戻される。これによって、昇降シリンダ15が伸長し、昇降シリンダ15に接続された掘削機の可動部分が上昇する。この状態において、最初のケーシングAすなわち図4に示したビットB’を下端に備えたケーシングAが掘削機の中央部分に挿入され、操作盤からの操作によりチャック装置Iが作動して、ケーシングAがこのチャック装置Iによって把持される。
【0038】
このとき、図示しない操作盤からの操作により、電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を調節する操作がなされる。すなわち、ケーシングAが自然に降下しない程度の背圧を昇降シリンダ15のヘッド側室に立たせるように、電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を所定の圧力に調節する操作がなされる。これにより、ケーシングAは自然降下しない状態に保たれる。
【0039】
この状態から、操作盤における操作により図4に示した回転用油圧モータEを駆動させると、ケーシングAが回転する。また、操作盤における操作によりソレノイド弁3のSOL2を励磁して当該ソレノイド弁3を図1の下段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL3を励磁して当該ソレノイド弁5を図1の左位置に切換えることにより、油圧ポンプ1の圧油が油路a、ソレノイド弁5、収縮側油路dを介して昇降シリンダ15のロッド側に供給され,昇降シリンダ15のヘッド側の油が伸長側油路c、ソレノイド弁5を介してタンクに戻され、これによって昇降シリンダ15が収縮する。これらにより、ケーシングAが回転しながら下降し、ケーシングAの下端のビットB’による昇降シリンダ15の収縮ストローク分の掘削がおこなわれる。なお、操作盤におけるレギュレータ30の操作により、油圧ポンプ1の吐出流量が制御され、これにより昇降シリンダ15の収縮時の作動速度、つまりケーシングAの下降速度が制御される。
【0040】
昇降シリンダ15の収縮ストローク分の掘削を終えたら、チャック装置IによるケーシングAの把持を解き、昇降シリンダ15を伸長させ、チャック装置I及び回転装置Fの回転部分(可動部分)等を上昇させる。この状態で再び、操作盤からの操作により、チャック装置IによってケーシングAを把持させる動作がおこなわれ、次いで前述のように、回転用油圧モータEを作動させ、かつ、昇降シリンダ15を収縮させる動作がなされる。これにより前述と同様に、ビットB’による昇降シリンダ15の収縮ストローク分の掘削がおこなわれる。このような掘削の間、掘削深さが大きくなると、最下端のケーシングAの直上にビットB’を有さないケーシングAがピンで連結される。
【0041】
このとき、追加されたケーシングAの自重に相当する荷重だけ増加するが、前述と同様に操作盤からの操作により電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を調節する操作がなされる。すなわち、複数本のケーシングAが自然に降下しない程度の背圧を昇降シリンダ15のヘッド側室に立たせるように、電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を所定の圧力まで増加させる操作がなされる。このような電磁比例リリーフ弁16の設定圧力の調節は、ケーシングAが増加する毎になされる。
【0042】
上述したようにして、新たなケーシングAが連結されると、再び上述の掘削がおこなわれる。継ぎ足されるケーシングAは、予定する掘削深さに応じた本数設けられる。このようにして、所望の掘削深さの大口径鋼管杭用の縦坑等が掘削される。
【0043】
また、上述した掘削動作とは逆に、例えばケーシングAを土中から引き上げる動作は以下のようにおこなわれる。すなわち、昇降シリンダAを収縮させた状態でチャック装置IによってケーシングAを把持させ、図示しない操作盤からの操作により、ソレノイド弁3のSOL1を励磁して当該ソレノイド弁3を図1の上段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL4を励磁して当該ソレノイド弁5を図1の右位置に切換える。これにより、油圧ポンプ1から吐出される圧油が油路a、ソレノイド弁5、伸長側油路cを介して昇降シリンダ15のヘッド側に供給され、また、昇降シリンダ15のロッド側の油が収縮側油路d、ソレノイド弁5を介してタンクに戻される。これによって、昇降シリンダ15が伸長し、昇降シリンダ15に接続された掘削機の可動部分、及びチャック装置Iに把持されたケーシングAが上昇する。すなわち、ケーシングAは昇降シリンダ15の伸長ストロークだけ上昇する。ここでケーシングAの上方部分は、図示しない拘束手段で落下しないように拘束される。この状態でチャック装置IによるケーシングAの把持を解き、操作盤における操作によりソレノイド弁3のSOL2を励磁して当該ソレノイド弁3を図1の下段位置に切換え、ソレノイド弁5のSOL3を励磁して当該ソレノイド弁5を図1の左位置に切換える。これにより、油圧ポンプ1の圧油が油路a、ソレノイド弁5、収縮側油路dを介して昇降シリンダ15のロッド側に供給され,昇降シリンダ15のヘッド側の油が伸長側油路c、ソレノイド弁5を介してタンクに戻され、昇降シリンダ15が収縮する。この状態で再びチャック装置IによってケーシングAを把持させ、前述の拘束手段による拘束を解き、昇降シリンダ15を伸長させる。これによりケーシングAは再び昇降シリンダ15の伸長ストロークだけ上昇する。このような動作が繰り返された後、最上部のケーシングAの連結が解かれ、その最上部のケーシングAが外される。
【0044】
以下同様の動作が繰り返され、最後にビットB’を備えたケーシングAが外されて、ケーシングAの引き上げが終了する。
【0045】
このように構成した第1実施形態にあっては、掘削機による掘削作業に際し、昇降シリンダ15のヘッド側室に、ケーシングAが自然に降下しないような背圧を立てた状態で、レギュレータ30の操作により油圧ポンプ1から吐出される流量を制御して、昇降シリンダ15のロッド側室への供給流量を制御し、当該昇降シリンダ15の下降操作をおこなわせ、ケーシングAを下降させるようにしてあることから、ケーシングA及び掘削機の可動部の自重による下降速度の影響を除くことができる。すなわち、このケーシングAの下降速度をレギュレータ30で制御される流量に依存させることができ、精度の高いケーシングAの下降速度制御を実現させることができる。しかも、この下降速度制御は、従来のような手動調整されるスロットル弁を要することなく、操作盤からレギュレータ30を操作することにより遠隔的に実施することができる。
【0046】
したがって、精度の高い下降速度制御を実現できることから、掘削精度を高めることができ、これにより掘削作業の能率を向上させることができる。また、作業者は操作盤の位置だけで操作することが可能となり、すなわち、作業中に、あるいはケーシングAの数が変化する度に、操作盤と油圧ユニット間を往復する煩雑な動作が必要でなくなり、この点からも掘削作業の能率を向上させることができる。
【0047】
また、上述のようにケーシングAの下降速度を高い精度で制御できることから、ケーシングAの下降速度が速すぎて硬い掘削対象物にケーシングAの下端のビットB’が衝合する事態を防ぎながら掘削作業を続けることができ、これによりビットB’の損耗や折損を抑制することができ、当該掘削機の耐久性を向上させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、4本の昇降シリンダ15に、互いに等しい大きさの背圧を常時かけながら昇降シリンダ15を収縮させてケーシングAを下降させるので、4本の昇降シリンダ15の下降速度が等速になり、これによりケーシングAを鉛直に下降させることができる。
【0049】
なお、上述した電磁比例リリーフ弁16の設定圧力を、0に設定したり、掘削機の上下方向の可動部と全てのケーシングAの重量とを加えた自重に相応する圧力よりも小さい圧力に設定すれば、従来におけるのと同様に自重掘削をおこなわせることができる。
【0050】
図2は本発明の請求項1,2,5に相当する第2実施形態を示す回路図である。
この図2に示す第2実施形態は、油圧ポンプとして固定容量油圧ポンプ1´を設けてあるとともに、この油圧ポンプ1´の吐出管路を形成する油路aに、油圧ポンプ1´から吐出される圧油の流量を制御する流量制御手段、例えば操作盤からの操作が可能な電磁比例フローコントロール弁18を設けてある。この電磁比例フローコントロール弁8は、圧力補償、温度補償機能を有するものであり、微少流量を高精度に制御し得ることが一般に知られている。その他の構成は,前述した図1に示す第1実施形態におけるのと同様である。
【0051】
このように構成した第2実施形態にあっては、基本的には前述した第1実施形態と同様に昇降シリンダ15のヘッド側室に十分に大きな背圧を立てることができるので、この第1実施形態におけるのと同様の作用を奏するが、特に微少流量を高精度に制御し得る電磁比例フローコントロール弁8を備えていることから、図示しない操作盤からの遠隔操作により、油圧ポンプ1´から吐出され昇降シリンダ15のロッド側室に供給される流量の微調節を実現できる。すなわち、昇降シリンダ15を収縮させる際のケーシングAの下降を微速度制御することができる。
【0052】
この第2実施形態によれば、第1実施形態におけるよりもさらに高精度のケーシングAの下降速度制御を実現でき、特に、偏荷重のかかる傾斜岩盤とか、地中に埋設される建造物の壁などを掘削する際の微速度制御が容易であり、したがって、ビットB’の掘削対象物上のすべりを抑えながらケーシングAを鉛直に下降させることができ、このように微速度制御が必要な掘削対象物を掘削する際の作業性に優れている。
【0053】
図3は、本発明の請求項1,2,3,4に相当する第3実施形態を示す回路図である。この図3に示す第3実施形態は、チャック装置IによりケーシングAを把持させ、ケーシングAが自然降下しない状態の伸長側油路cの圧力を検出する圧力センサ31と、この圧力センサ31から出力される圧力値Pに、比較的小さな所定の圧力値ΔPを加算(P+ΔP)する演算をおこない、その演算値に相当する制御信号を電磁比例リリーフ弁16の制御部に出力するコントローラ32とを備えている。その他の構成は前述した第1実施形態におけるのと同様である。
【0054】
このように構成した第3実施形態にあっては、ケーシングAの連結本数の如何にかかわらず、圧力センサ31から出力される信号に応じてコントローラ32は、昇降シリンダ15を伸長させて静止させ、ケーシングAを把持させたときに、そのケーシングが自然に降下することのない圧力よりもわずかに大きい圧力に相当するリリーフ圧となるように電磁比例リリーフ弁16を自動的に制御するので、操作盤における作業者の操作が必要でなく、操作が簡単である。その他の作用効果については、前述した第1実施形態におけるのと同様である。なお、第2実施形態の構成において、上述した圧力センサ31とコントローラ32の組み合わせを設けるようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
本願の各請求項に係る発明によれば、昇降シリンダにケーシングの自然降下を生じさせない常時十分に大きい背圧をかけながら収縮側油路に流量制御手段によって制御される圧油を供給してケーシングを下降させるようにしてあり、従来のような手動調整されるスロットル弁を必要とすることなく、ケーシングの下降速度の遠隔制御が可能となり、従来に比べて掘削作業の能率を向上させることができる。
【0056】
また、可変リリーフ弁を遠隔制御することにより、ケーシングの下降速度を高精度に制御でき、これによりケーシングヘッドの下端のビットが掘削対象物に速い速度で衝合することを抑えることができ、ビットの損耗あるいは折損を防ぐことができ、当該掘削機の耐久性を向上させることができる。
【0057】
また、ケーシングを下降させる複数の昇降シリンダに、互いに等しい背圧を常時かけながら当該昇降シリンダを収縮させてケーシングを下降させるので、昇降シリンダの下降速度が等速になり、これによりケーシングを鉛直に下降させることができる。
【0058】
そして特に、請求項3に係る発明によれば、電磁比例リリーフ弁を圧力センサから出力される信号に応じて自動制御でき、操作が簡単である。
【0059】
また、請求項5に係る発明によれば、電磁比例フローコントロール弁によりポンプ吐出流量を高精度に制御できるので、ケーシングの微速度制御を実現でき、これにより偏荷重のかかる傾斜岩盤とか、建造物の壁などの掘削に際してもケーシングをより確実に鉛直に下降させることができ、さらに精度の高い掘削作業を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーシング掘削機の油圧回路の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す回路図である。
【図4】ケーシング掘削機の外観構成を示す正面図である。
【図5】従来のケーシング掘削機の油圧回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1 可変容量油圧ポンプ
1´ 固定容量油圧ポンプ
5 ソレノイド弁(方向制御弁)
15 昇降シリンダ
16 電磁比例リリーフ弁(可変リリーフ弁)
17 チェック弁
18 電磁比例フローコントロール弁(流量制御手段)
30 レギュレータ(流量制御手段)
31 圧力センサ
32 コントローラ
a 油路
c 伸長側油路
d 収縮側油路
A ケーシング
B ケーシングヘッド
B´ 掘削用ビット
D 昇降ガイド
E 回転用油圧モータ
F 回転装置
G ベースフレーム
H アウトリガ
I チャック装置

Claims (5)

  1. 下端部に掘削用ビットを有するケーシングを昇降させる複数の昇降シリンダと、
    この昇降シリンダを作動させる圧油を供給する油圧ポンプと、
    この油圧ポンプと上記昇降シリンダとを連絡し、上記昇降シリンダを伸長させる圧油を導く伸長側油路と、
    上記油圧ポンプと上記昇降シリンダとを連絡し、上記昇降シリンダを収縮させる圧油を導く収縮側油路とを備え、
    上記ケーシングに回転力を与えながら上記昇降シリンダを収縮させることにより、上記ケーシングが回転しながら下降し、当該ケーシングの下端の上記ビットが掘削をおこなうケーシング掘削機の油圧回路において、
    上記油圧ポンプから上記収縮側油路に供給される圧油の流量を制御する流量制御手段を備え、
    上記伸長側油路に、上記油圧ポンプから上記昇降シリンダへの圧油の流れを許容し、上記昇降シリンダから上記油圧ポンプへの圧油の流れを阻止するチェック弁と、当該伸長側油路の圧力を、上記昇降シリンダを収縮させる際に上記ケーシングを、その自重及び上記昇降シリンダによって昇降される部分の自重によって自然降下させない所定の大きさの圧力に規定する可変リリーフ弁とを並列に配置し、
    上記流量制御手段によって上記収縮側油路へ供給される圧油の流量を調整することにより上記昇降シリンダの収縮速度を、ケーシング及び昇降シリンダによって昇降される部分の自重の影響を受けずに制御することを特徴とするケーシング掘削機の油圧回路。
  2. 上記可変リリーフ弁が、上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な電磁比例リリーフ弁から成ることを特徴とする請求項1記載のケーシング掘削機の油圧回路。
  3. 上記伸長側油路の圧力を検出する圧力センサと、この圧力センサによって検出される圧力値よりも大きい所定の圧力に相当するリリーフ圧となるように上記電磁比例リリーフ弁を制御する制御信号を出力するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項2記載のケーシング掘削機の油圧回路。
  4. 上記油圧ポンプが可変容量油圧ポンプから成り、上記流量制御手段は、上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な上記可変容量油圧ポンプのおしのけ容積を制御するレギュレータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーシング掘削機の油圧回路。
  5. 記流量制御手段が、上記ケーシング掘削機の操作部を形成する操作盤からの操作が可能な電磁比例フローコントロール弁であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケーシング掘削機の油圧回路。
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