JP2024053367A - 杭打機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】オーガの昇降ストロークを大きくとりながら地質構造に応じた施工を進めることが可能な杭打機の制御装置を提供する。【解決手段】ベースマシン14に起伏可能に立設したベースリーダ15の前方に、該ベースリーダに対して昇降可能に装着されるスライドリーダ16と、該スライドリーダに対して昇降可能に装着される掘削用のオーガ25とを設け、スライドリーダを昇降させる動力を油圧シリンダの伸縮駆動で発生させ、オーガを昇降させる動力を油圧モータの回転駆動で発生させる杭打機11の制御装置において、スライドリーダに対して下降するオーガの動作状態を検出する検出部と、該検出部がオーガの設定動作状態を検出したときに、スライドリーダに対するオーガの下降動作を停止させ、ベースリーダに対するスライドリーダの下降動作を実行させる駆動切替部とを備えている。【選択図】図1
Description
本発明は、杭打機の制御装置に関し、詳しくは、掘削用のオーガを備えた杭打機の制御装置に関する。
一般に、リーダに沿って昇降する掘削用のオーガを備えた杭打機は、その構造上、1回あたりの掘削長さ(オーガ昇降における1ストローク長さ)が、リーダの長さを限度として制限される。そのため、比較的小型の杭打機では、輸送性と作業性とが両立する設計範囲で、オーガの昇降ストロークを大きくとれる各種機構を備えたリーダ装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
各特許文献に記載のリーダ装置は、いずれも可動側の部材と固定側の部材とを組み合わせて構成され、可動側の部材を長さ方向にスライドさせる油圧駆動装置を備えている。しかしながら、こうした油圧駆動装置は、オーガの昇降ストロークが得られる反面、機構を成立させるための専用部品が増えてしまうことから、コストアップの要因になりやすい。また、当該装置を油圧モータで動かす場合(特許文献1)と、油圧シリンダで動かす場合(特許文献2)とでは、力や速度に関して異なる特性を有しているものであるから、現場によっては、地質構造の変化に柔軟に対応することができないという不都合がある。
そこで本発明は、オーガの昇降ストロークを大きくとりながら地質構造に応じた施工を進めることが可能な杭打機の制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の制御装置は、ベースマシンに起伏可能に立設したベースリーダの前方に、該ベースリーダに対して昇降可能に装着されるスライドリーダと、該スライドリーダに対して昇降可能に装着される掘削用のオーガとを設け、前記スライドリーダを昇降させる動力を油圧シリンダの伸縮駆動で発生させ、前記オーガを昇降させる動力を油圧モータの回転駆動で発生させる杭打機の制御装置において、前記スライドリーダに対して下降する前記オーガの動作状態を検出する検出部と、該検出部が前記オーガの設定動作状態を検出したときに、前記スライドリーダに対する前記オーガの下降動作を停止させ、前記ベースリーダに対する前記スライドリーダの下降動作を実行させる駆動切替部とを備えていることを特徴としている。
また、前記設定動作状態は、前記オーガの昇降位置があらかじめ設定された昇降範囲の下限に達した状態であることを特徴とし、さらに、前記設定動作状態は、掘削長さに対応する前記オーガの移動量があらかじめ設定された移動量に達した状態であることを特徴とし、加えて、前記設定動作状態は、前記オーガに作用する圧入抵抗又は引抜抵抗の増加に従って増加する圧入力又は引抜力があらかじめ設定された上限に達した状態であることを特徴としている。また、前記設定動作状態は、前記オーガに作用する回転抵抗の増加に従って増加する回転トルクがあらかじめ設定された上限に達した状態であることを特徴としている。
本発明の杭打機の制御装置によれば、ベースリーダに装着されたスライドリーダを該ベースリーダに対して昇降させる油圧シリンダ駆動と、スライドリーダに装着されたオーガを該スライドリーダに対して昇降させる油圧モータ駆動とをそれぞれ制御可能に構成し、オーガの設定動作状態に応じて、スライドリーダに対するオーガの下降動作からベースリーダに対するスライドリーダの下降動作に運転方式を切り替える駆動切替部を備えているので、可動部における駆動方式の切替動作を円滑に行いながら、各部を同方向に順々に駆動(単独駆動)させてオーガの昇降ストロークを大きくとることができる。しかも、一般的な油圧部品をそのまま使用できるだけでなく、既存システムに組み込むソフト的な対応も容易なことから、安価に構成できるものである。とりわけ、効率の良い油圧モータ駆動と低速域でも安定が得られる油圧シリンダ駆動との2通りの駆動方式を適切に切り替えることが可能となり、両者の動作特性の違いを活かした施工、すなわち、現場の多様な地質構造に応じた施工を進めることができる。
図1乃至図5は、本発明の一形態例における制御装置を杭打機に適用した図である。杭打機11は、図1に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したベースリーダ15と、該ベースリーダ15に対して長さ方向(図1の上下方向)にスライド自在に組み付けられたスライドリーダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、ベースリーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられている。さらに、上部旋回体13の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ18が設けられるとともに、上部旋回体13の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト19が搭載されている。
ベースリーダ15は、後方から起伏シリンダ20で回動可能に支持され、前部側には長さ方向にスライドリーダ16を摺動させる係合構造を備え、上部側にはスライドシリンダ21が組み付けられている。各シリンダ20,21は、油圧駆動される一般的な復動型油圧シリンダであって、所定のストローク長さを有している。スライドリーダ16は、輸送性や作業性などを考慮して最大限長く形成され、長さ方向中間部後面にはスライドシリンダ21のピストンロッドが軸支されるブラケット16aが設けられている。スライドリーダ16の上端部には吊りロープが巻き掛けられるトップシーブ22が、下端部には施工部材(例えばロッド)23の振れ止め用として下部ガイド24がそれぞれ装着されており、スライドリーダ16の前面には掘削用のオーガ(回転駆動装置)25が昇降可能に装着されている。
オーガ25は、油圧で回転駆動され、出力軸に連結した施工部材23に回転力を付与するものである。オーガ25の上下には、スライドリーダ16の上下端の一方側に設けられた駆動スプロケットと、他方側に設けられた従動スプロケットとの間に架け渡された昇降用チェーン26の両端がそれぞれ取り付けられ、チェーン式の昇降装置を構成する。昇降装置は、図示は省略するが、駆動スプロケットを昇降駆動用油圧モータで回転駆動し、該駆動スプロケットと従動スプロケットとに掛け回された昇降用チェーン26を上下方向に移動させることにより、スライドリーダ16の前面に沿ってオーガ25を昇降させる。昇降駆動用油圧モータは、固定容量型油圧モータ(例えばギヤモータ)である。昇降駆動用油圧モータとスライドシリンダ21とは、共通の油圧源(油圧ポンプ)を有するものであるが、基本的には、それぞれ単独で駆動される。
また、オーガ25は、装置本体内の減速機構に接続される回転駆動用油圧モータ25aと、これに付設される電磁比例減圧弁(図示せず)とを備えている。回転駆動用油圧モータ25aは、斜板の傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧モータである。斜板の傾転角、すなわち、押しのけ容積(モータ1回転当たりの吐出量)は、レギュレータによって調節される。このレギュレータは、電磁比例減圧弁から出力される制御圧力によって制御される。
電磁比例減圧弁は、杭打機11に実装される施工管理装置の制御指令に基づいて制御圧力を変化させる。具体的には、ソレノイドに入力される制御電流の増減に伴い減圧度を変更するように構成され、制御指令が入力されると、発生する指令パイロット圧(2次圧力)が大きくなっていき、レギュレータの作動によって押しのけ容積を漸次減少させてモータを稼動する。一方、制御指令を最小に固定すると、押しのけ容積を最大に調節してモータを稼動する。すなわち、電磁比例減圧弁の制御電流と制御圧力とは比例関係にあるが、制御圧力と押しのけ容積とは反比例の関係にある。これにより、回転駆動用油圧モータ25aは、流量一定ならば、押しのけ容積が小さいほどモータは高速回転し、押しのけ容積が大きいほど回転数は低くなるものの、多くの作動油を使用して回転することから、大きなトルクを発生させる。
ここで、杭打機11を鋼管杭の埋設を目的として使用する場合には、施工部材23として鋼管杭が使用される。鋼管杭(図示せず)は、オーガ25の出力軸下端にロッドキャップを介して連結され、回転駆動用油圧モータ25aの駆動を受けて、ロッドキャップを回転させながらオーガ25を下降させることにより地中に圧入される。
一方、杭打機11を地盤改良を目的として使用する場合には、図1に示すように、施工部材23としてロッドが使用される。ロッドは、回転駆動用油圧モータ25aの駆動を受けて回転され、上端がオーガ25の上方でスイベルジョイント27と連結されるとともに下端が掘削ヘッド28と連結される。これにより、ロッドを回転させながらオーガ25を下降させることにより、ロッドの内部流路を通じて掘削ヘッド28の先端から噴射したセメントミルクなどの地盤改良剤が地盤内に注入される。
また、近年、杭打機11の多機能化が進むなかで、杭打機11をケーシング掘削を目的として使用する場合には、掘削ヘッド28に代えてケーシング(図示せず)が使用される。ケーシングは、ロッドの下端にカップリングを介して連結される。これにより、ケーシングは、円筒状の本体がロッドの回転軸と同心に設けられて一体回転され、ロッドを回転させながらオーガ25を下降させることによってケーシング先端の掘削ビットで地盤を掘削、あるいは、旧基礎などの障害物を切削する。
こうした各種施工を行うために、オペレータの搭乗するキャブ29内には、走行や旋回、オーガ25の昇降・回転駆動、ベースリーダ15の起伏、スライドリーダ16の昇降などを行う操作レバーや操作ペダル、押しボタンスイッチ、タッチパネル式のディスプレイなどの機器が操作性を考慮して運転席の近傍に集約的に配置されており、さらに、これらの機器や杭打機11の動作状態を検出する動作センサ(検出部)などと電気的に接続された制御装置として、施工管理装置が設置されている。
施工管理装置は、施工管理(工法制御)のための制御プログラムを実行して、データ処理や判定などの演算処理を行うCPUを中心に構成されており、制御プログラムを記憶するFLASH ROMや処理中の各種データを一時的に記憶するRAM、さらには、施工現場における施工計画データ及び制御プログラムの実行により作成された実施工時の各種データを記憶する記憶部や、オペレータが制御プログラムの実行結果を表示画面で確認したり、タッチパネル操作でデータ入力を行ったりするディスプレイなどを備えている。
オーガ25の動作センサを構成する複数のセンサには、昇降位置センサや深度センサ、トルクセンサ、圧入力センサ、引抜力センサ、回転センサなどが挙げられる。昇降位置センサは、スライドリーダ16に対するオーガ25の上昇限界位置及び下降限界位置を検出するオーガ昇降位置センサと、ベースリーダ15に対するスライドリーダ16の上昇限界位置及び下降限界位置を検出するリーダ昇降位置センサとからなる。オーガ昇降位置センサは、例えば、スライドリーダ16の上下端に設けられたリミットスイッチである。一方、リーダ昇降位置センサは、例えば、スライドシリンダ21が伸縮ストロークエンドに達したときに、作動圧がリリーフ状態となっていることを検出する油圧スイッチである。
深度センサは、掘削長さ(深度)に対応する杭打機11の可動部の移動量を検出するセンサであって、オーガ25の移動量を検出するオーガ移動センサと、スライドリーダ16の移動量を検出するリーダ移動センサとからなる。オーガ移動センサは、例えば、昇降装置の従動スプロケットの回転角度を検出するロータリーエンコーダである。一方、リーダ移動センサは、スライドシリンダ21の伸縮移動量(伸縮ストローク)を検出するリニアエンコーダである。
トルクセンサは、オーガ25に作用する回転トルクを測定するセンサであって、回転駆動用油圧モータ25aの駆動圧力(ポンプ負荷圧力)を測定する駆動圧センサと、制御圧力を測定する制御圧センサとからなる。駆動圧センサは、上部旋回体13に設けられ、メイン油圧ポンプの出口の圧力を測定する。一方、制御圧センサは、オーガ25に設けられ、パイロット油圧ポンプからの圧油を電磁比例減圧弁で減圧して得た圧力を測定する。
圧入力センサ及び引抜力センサは、昇降駆動用油圧モータの上昇側及び下降側の各作動においてオーガ25に作用する圧入抵抗及び引抜抵抗を測定するセンサである。ここで、圧入力とは、オーガ25の下降時にオーガ25がロッドを押し込む力(圧入抵抗)を意味し、一方、引抜力とは、オーガ25の上昇時にオーガ25がロッドを引き抜く力(引抜抵抗)を意味している。例えば、オーガ25が下降すれば、自ずとロッドを押し込むことになり、その押し込む原動力は、昇降駆動用油圧モータの力(トルク)、すなわち、モータの駆動圧力となる。回転センサは、出力機構の歯車の歯を近接センサで検出し、そのパルス信号をカウントしている。
各センサによって検出あるいは測定された信号は施工管理装置に伝達され、例えば、回転駆動用油圧モータ25aの駆動圧力と、制御圧力に対応する押しのけ容積とに基づき、施工負荷として回転トルク(施工トルク)が算出される。深度や昇降速度(昇降動作に係るフィード速度)、圧入力、引抜力、積算回転数についても、各部に設けられたエンコーダや近接センサ、圧入力センサ、引抜力センサなどで測定した信号に基づいてそれぞれ算出される。
また、施工管理装置は、通信接続によって制御プログラムや施工計画データなどをダウンロードすることが可能である。施工計画データは、施工現場におけるボーリング調査(地盤調査の一例)の結果などを踏まえて作成した施工計画書に基づき、あらかじめ事務所内のコンピュータに入力されるもので、杭番号の他、該杭番号に関連付けられた施工順序や、目標深度、掘削速度(昇降速度)、回転数、セメントミルク流量などの各種の施工目標値が含まれる。例えば、掘削速度は、地質構造の変化に応じて深度区間毎に詳細に設定される。
施工計画データの入力作業は、施工図面と対比して杭位置データを入力することによって行われ、具体的には、施工地点(杭の埋設予定位置)を、座標上の原点からの相対的位置(距離)として二次元座標で指定することになる。作成された施工計画データは、施工現場の住所の位置情報や施工する杭打機11の号機情報などが付加されて、ネットワーク上のデータサーバにアップロードされる。また、施工計画データに基づいて実施される工法のための制御プログラムや、該制御プログラムの設定パラメータのデータも作成され、同様にして、データサーバにアップロードされる。
このように構成された施工管理装置は、追加的に組み込まれる掘削速度制御プログラムを実行させ、駆動切替部として機能するCPUの演算によって、スライドリーダ16に対するオーガ25の昇降動作と、ベースリーダ15に対するスライドリーダ16の昇降動作とを相互に切り替える4つの制御モード(順次切替モード、移動量切替モード、圧入引抜力切替モード、トルク切替モード)を有している。駆動切替部は、オーガ25の動作センサから設定動作状態に対応する検出信号を受けると、例えば、スライドリーダ16に対するオーガ25の昇降動作を停止させた後直ちに、もしくは、停止と略同時にベースリーダ15に対するスライドリーダ16の昇降動作を実行させる。
設定動作状態とは、制御モード毎に設定されるもので、順次切替モードの場合は、オーガ25の昇降位置があらかじめ設定された昇降範囲の上限あるいは下限に達した状態である。移動量切替モードの場合は、掘削長さに対応するオーガ25の移動量があらかじめ設定された移動量に達した状態である。トルク切替モードの場合は、オーガ25に作用する回転抵抗の増加に従って増加する回転トルクがあらかじめ設定された上限に達した状態である。圧入引抜力切替モードの場合は、オーガ25に作用する圧入抵抗又は引抜抵抗の増加に従って増加する圧入力又は引抜力があらかじめ設定された上限に達した状態である。各種制御モードは、単独で設定してもよいし、複数を同時に設定してもよい。
オーガ25の昇降とスライドリーダ16の昇降とを切り替える動作は、油圧モータ駆動と油圧シリンダ駆動との2通りの駆動方式を切り替えるものであるから、切替前後の昇降速度が一定となるように、対象毎に作動油の供給量を調整するための油圧制御がなされる。例えば、油圧モータと油圧シリンダとの動作の切替タイミングに合わせて流量制御弁(例えばソレノイドバルブ)の開度を調整し、切替後においても目標速度を維持できる流量が確保される。このとき、掘削速度制御プログラムの調整値において、各アクチュエータの運動特性に起因した追従遅れの発生量が加味され、きめ細かく速度制御がなされる。
以下では、一例として、地盤改良工法における杭打機11の自動運転を行う場合について説明する。まず、現場に搬入された状態の杭打機11は、ベースリーダ15を水平に倒した輸送姿勢になっており、当然ながら、この状態のままでは作業が行えない。こうした輸送姿勢は、図示は省略するが、スライドリーダ16及びオーガ25が両方とも下降限界位置に保持され、トレーラなどで輸送する際の輸送制限を満足できるものとなっている。
このようなコンパクト性のある輸送姿勢から掘削作業が可能な作業姿勢に変更するためには、運転操作によってベースリーダ15を起立させた後、スライドリーダ16及びオーガ25を上昇させて、それぞれ上昇限界に位置させる(図1)。そして、用意したロッド(施工部材23)を吊り込み、オーガ25の出力軸に連結する。ロッドは、継ぎ足し可能に形成されていることから、例えば、スライドリーダ16の長さの2倍の長尺で用いることができる。この場合、中間部がオーガ25によって把持される。こうして、ロッドは、下端に掘削ヘッド28が取り付けられて完成状態となり、スライドリーダ16の前面において、回転可能かつ昇降可能に保持される。
ここで、掘削作業を進める際に、オーガ25を上昇限界位置Hxから下降限界位置Lxに移動させれば、作業1回あたりの昇降ストロークXが最大(Xmax)で得られる。一方、スライドリーダ16を上昇限界位置Hyから下降限界位置Lyに移動させれば、作業1回あたりの昇降ストロークYが最大(Ymax)で得られる。したがって、オーガ25の最大昇降ストロークは、昇降駆動用油圧モータを回転駆動した昇降装置による移動量Xmaxと、スライドシリンダ21を伸縮駆動したスライドリーダ16による移動量Ymaxとの合算で得られる。
施工管理装置の電源が入って起動すると、基本プログラムが実行され、ディスプレイにログイン画面が表示される。ここで、作業者IDによりシステムにログインするとともに、メニュー画面から目的に応じて条件を設定すると、必要な施工管理プログラムや施工計画データなどがダウンロードされ、図示は省略するが、ディスプレイには施工計画杭配置画面(杭選択画面)が表示される。
施工計画杭配置画面は、施工現場の全体が表示されるように縮尺が調整された表示画面であって、二次元座標で図形的に表示されている。例えば、円形で表された複数の杭表示体は施工地点を示し、円の内側の数字は施工順序、外側の数字は杭番号をそれぞれ示している。所定の杭番号を施工する場合、杭打機11を施工地点(杭芯)に位置合わせした後、タッチパネルの操作で対象の杭表示体を選択する。そして、表示を施工画面に切り替えた状態で、実施工データを作成しながら目標深度に到達するまで計画通りに掘削作業が進められる。画面上には、「杭番号」や「深度」、「施工トルク」、「圧入引抜力」などの各種数値データやグラフが表示される。
ここで、掘削速度制御プログラムを実行した自動運転の具体的な動作について、図2乃至図5に示す2つの駆動方式の対応関係を表すグラフを参照しながら説明する。図2は、順次切替モードの切替動作を例示的に表すグラフである。図3は、主に、移動量切替モードの切替動作を例示的に表すグラフである。図4は、主に、圧入引抜力切替モードの切替動作を例示的に表すグラフである。図5は、主に、トルク切替モードの切替動作を例示的に表すグラフである。
また、各図(A)(B)は、それぞれ二次元座標グラフの横軸を時間変化(t)としている。一方、縦軸については、各図(A)は、オーガ25及びスライドリーダ16の昇降速度(v)とし、濃色部でオーガ25の昇降を表し、淡色部でスライドリーダ16の昇降を表している。また、各図(B)は、オーガ25及びスライドリーダ16の昇降ストロークX,Y(l)とし、オーガの25の昇降Xを実線で表し、スライドリーダ16の昇降Yを破線で表している。
作業開始は、ディスプレイのタッチパネル操作によって、例えば、順次切替モード、移動量切替モード、圧入引抜力切替モード、トルク切替モードの4つの制御モードを同時に選択した状態で、計測ボタンを操作した後、運転操作レバーの傾動操作を行う。これにより、回転駆動されるオーガ25をスライドリーダ16に対して下降させ、掘削ヘッド28によって地盤に掘削孔を形成しながら、掘削土を地盤改良剤と混合撹拌していく。
このとき、初期状態から時間t1において、図2(A)に示すように、オーガ25の下降動作、つまり、掘削ヘッド28の押し込み動作が、実線グラフのように一定速度に維持され、図2(B)に示すように、上昇限界位置Hxを起点としたオーガ25のストロークXが、実線グラフのように徐々に増加していく。そして、時間t1に達したとき、ストロークXが最大(Xmax)になって、オーガ昇降位置センサがオーガ25の下降限界位置Lxを検出する。
ここで、駆動切替部は、オーガ昇降位置センサからオーガ25の下降限界に達した検出信号を受けると、順次切替モードを機能させる。すなわち、オーガ25の下降動作を停止させ、直ちにスライドリーダ16を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧モータ駆動から油圧シリンダ駆動に駆動方式が切り替えられ、図2(A)に示すように、オーガ25の下降動作とスライドリーダ16の下降動作との間の切替タイミング(t1)において、切替前後の速度が、連続する実線グラフ及び点線グラフから見てとれるように、一定速度に維持される。
その後、上昇限界位置Hyを起点としたスライドリーダ16のストロークYが、図2(B)の点線グラフのように徐々に増加していく。そして、時間t2に達したとき、ストロークYが最大(Ymax)になって、リーダ昇降位置センサがスライドリーダ16の下降限界位置Lyを検出する。これにより、駆動切替部の油圧制御に従って、スライドリーダ16の下降動作が停止される。
こうした1回目の作業において、オーガ25及びスライドリーダ16のストローク(Xmax+Ymax)が全て尽きると、例えば、ロッドの中間部の把持を解除したオーガ25を上昇させ、上部を把持させる掴み替えを行う(詳細説明略)。このとき、スライドリーダ16に対しても上昇操作が行われ、これにより、オーガ25及びスライドリーダ16は、両方とも上昇限界位置Hx,Hyに復帰し、2回目の作業が行える状態となる。
ところで、オーガ25の下降限界位置Lxに達する前に、土質(砂、礫、粘土)の変化に応じて高い押込力(圧入力)が必要になる場合は、その時点でシリンダ推力が得られると動作が安定的である。そこで、駆動切替部は、施工計画の設定深度に基づいて、移動量切替モードを機能させる。
具体的には、図3(A)に示すように、初期状態から時間t3において、オーガ25の下降動作が、実線グラフのように一定速度に維持され、図3(B)に示すように、上昇限界位置Hxを起点としたオーガ25のストロークXが、実線グラフのように徐々に増加していく。そして、オーガ移動センサの検出結果に基づいて、オーガ25の移動量が設定深度(掘削長さ)に対応するストロークX(移動量)に達した切替タイミング、つまり、時間t3において、オーガ25の下降動作を停止させ、直ちにスライドリーダ16を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧モータ駆動から油圧シリンダ駆動に駆動方式が切り替えられ、図3(A)に示すように、オーガ25の下降動作とスライドリーダ16の下降動作との間の切替タイミング(t3)において、切替前後の速度が、連続する実線グラフ及び点線グラフから見てとれるように、一定速度に維持される。
こうして、時間t3から時間t4において、上昇限界位置Hyを起点としたスライドリーダ16のストロークYが、図3(B)の点線グラフのように徐々に増加していく。そして、設定深度区間の終点に達した切替タイミング、つまり、時間t4において、スライドリーダ16の下降動作を停止させ、直ちにオーガ25を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧シリンダ駆動から油圧モータ駆動に駆動方式が切り替えられ、図3(A)に示すように、スライドリーダ16の下降動作とオーガ25の下降動作との間の切替タイミング(t4)において、切替前後の速度が、連続する点線グラフ及び実線グラフから見てとれるように、一定速度に維持される。
駆動方式を油圧モータ駆動に切り替えた後、順次切替モードと同様にストロークXが最大(Xmax)になって、オーガ25の下降限界位置Lxに到達し、オーガ25の下降動作とスライドリーダ16の下降動作との間の切替タイミング(t5)が到来する。駆動切替部は、オーガ昇降位置センサからオーガ25の下降限界に達した検出信号を受けると、上述した順次切替モードを機能させる。そして、スライドリーダ16の残りのストロークYが尽きたタイミング(t6)で、オーガ25及びスライドリーダ16のストローク(Xmax+Ymax)が全て用い尽くされる。
ところで、根入れ深度付近(基礎底付近)などにおいて、必要な圧入力や引抜力が昇降駆動用油圧モータの能力を超えると、機械の停止状態に陥ることになるが、その状況を回避できると、施工能率に優れたものとなる。そこで、駆動切替部は、オーガ25に作用する圧入抵抗又は引抜抵抗に基づいて、圧入引抜力切替モードを機能させる。
具体的には、図4(A)に示すように、時間t7までにおいて、オーガ25の下降動作が、実線グラフのように一定速度に維持され、図4(B)に示すように、オーガ25のストロークXが、実線グラフのように徐々に増加していく。そして、例えば、圧入力センサの検出結果に基づいて、オーガ25に作用する圧入抵抗の増加に従って増加する圧入力が設定上限値に達した切替タイミング、つまり、時間t7において、オーガ25の下降動作を停止させ、速やかにスライドリーダ16を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧モータ駆動から油圧シリンダ駆動に駆動方式が切り替えられ、図4(A)に示すように、オーガ25の下降動作とスライドリーダ16の下降動作との間の切替タイミング(t7)において、切替前後の速度が、連続する実線グラフ及び点線グラフから見てとれるように、一定速度に維持される。ここで、設定上限値とは、例えば、昇降駆動用油圧モータが発揮する最大圧入力よりも少し低い値である。
こうして、時間t7から時間t8において、スライドリーダ16のストロークYが、図4(B)の点線グラフのように徐々に増加していく。そして、オーガ25に作用する圧入抵抗の減少に従って減少する圧入力が設定上限値を下回った切替タイミング、つまり、時間t8において、スライドリーダ16の下降動作を停止させ、昇降駆動用油圧モータの停止状態からの復帰により直ちにオーガ25を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧シリンダ駆動から油圧モータ駆動に駆動方式が切り替えられ、図4(A)に示すように、スライドリーダ16の下降動作とオーガ25の下降動作との間の切替タイミング(t8)において、切替前後の速度が、連続する点線グラフ及び実線グラフから見てとれるように、一定速度に維持される。なお、図4の時間t7から時間t8の間は、例えば、地盤の中間層に存在する硬質地盤を掘り進めている状態などが想定される。また、オーガ25の上昇動作においても、引抜力センサの検出結果に基づいて、同様に機能するものである。
ところで、地盤の状況は同じ現場でも施工地点によって様々であり、目標深度付近において低速掘削を行いたいというニーズは高い。また、設計で決められた支持層到達深度で施工を行うと、当初予想していなかった地層の変化もあり得る。例えば、軟質地盤から硬質地盤に地質構造が変化したときに、そのままの速度では、掘削ヘッド28の先端に作用する抵抗が増えて回転トルクを大きく増加させる。そして、万一、トルクの上限値を超えてしまった場合には、過負荷状態に陥ってしまう。そこで、駆動切替部は、オーガ25に作用する回転抵抗に基づいて、トルク切替モードを機能させる。
具体的には、図5(A)に示すように、時間t9までにおいて、オーガ25の下降動作が、実線グラフのように一定速度に維持され、図5(B)に示すように、オーガ25のストロークXが、実線グラフのように徐々に増加していく。換言すれば、油圧モータを駆動した効率重視で掘削が進められる。そして、トルクセンサの検出結果に基づいて、オーガ25に作用する回転抵抗の増加に従って増加する回転トルクが設定上限トルク(出力トルクの上限値)に達した切替タイミング、つまり、時間t9において、オーガ25の下降動作を停止させ、速やかにスライドリーダ16を下降させる。このとき、油圧制御によって油圧モータ駆動から油圧シリンダ駆動に駆動方式が切り替えられ、図5(A)に示すように、オーガ25の下降動作とスライドリーダ16の下降動作との間の切替タイミング(t7)において、切替後の速度が、切替前と所定の速度差を有して低速に変化される。
ここで、設定上限トルクは、施工部材や掘削具などの種類に応じて定まる安全率が考慮され、切替後にオーバーシュート(速度超過)を起こさないようになっているが、例えば、切替タイミングにおいて、油圧シリンダの駆動停止状態を保持、つまり、掘削ヘッド28の押し込み動作を完全に停止させてもよい。このようにすれば、掘削ヘッド28は、回転を継続したまま、その場回転状態となって、先端に作用する抵抗が速やかに減少する。これにより、掘削開始時は、油圧モータの駆動による効率重視で掘り進められ、一方、硬質地盤の層に達してからは、油圧シリンダの駆動による低速で、かつ、掘削ヘッド28の仕様に見合う能力で、掘削時間をかけて確実に掘削する。すなわち、一定かつ大きい回転トルクで安定して掘り進められる。
このように、本発明の杭打機11の制御装置によれば、ベースリーダ15に装着されたスライドリーダ16を該ベースリーダ15に対して昇降させる油圧シリンダ駆動と、スライドリーダ16に装着されたオーガ25を該スライドリーダ16に対して昇降させる油圧モータ駆動とをそれぞれ制御可能に構成し、オーガ25の設定動作状態に応じて、スライドリーダ16に対するオーガ25の下降動作からベースリーダ15に対するスライドリーダ16の下降動作に運転方式を切り替える駆動切替部を備えているので、可動部における駆動方式の切替動作を円滑に行いながら、各部を同方向に順々に駆動(単独駆動)させてオーガ25の昇降ストロークを大きくとることができる。しかも、一般的な油圧部品をそのまま使用できるだけでなく、既存システムに組み込むソフト的な対応も容易なことから、安価に構成できるものである。とりわけ、効率の良い油圧モータ駆動と低速域でも安定が得られる油圧シリンダ駆動との2通りの駆動方式を適切に切り替えることが可能となり、両者の動作特性の違いを活かした施工、すなわち、現場の多様な地質構造に応じた施工を進めることができる。
また、設定動作状態として、オーガ25の昇降位置があらかじめ設定された昇降範囲の下限に達した状態(順次切替モード)、掘削長さに対応するオーガ25の移動量があらかじめ設定された移動量に達した状態(移動量切替モード)、オーガ25に作用する圧入抵抗又は引抜抵抗の増加に従って増加する圧入力又は引抜力があらかじめ設定された上限に達した状態(圧入引抜力切替モード)、オーガ25に作用する回転抵抗の増加に従って増加する回転トルクがあらかじめ設定された上限に達した状態(トルク切替モード)の、いずれの状態を検出する場合でも、施工管理に必要な既存の動作センサ(検出部)を流用できることから、実用性にも優れている。
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、制御プログラムは、既存の制御装置にアドオンして機能させる簡易な構成であればよく、杭打機の仕様や掘削具の種類などに応じて適宜変更することができる。また、設定動作状態についても、種々の切替モードに適用することができる。例えば、順次切替モードでは、下降だけでなく、上昇の切替動作にも適用できる。移動量切替モードでは、押込力を調整する目的だけでなく、深度区間毎の速度調整を行う目的でも適用できる。トルク切替モードでは、切替時に一旦停止状態を作り、別途、停止解除操作を行うなどの安全対策を講じることもできる。とりわけ、油圧シリンダ駆動によれば、油圧モータ駆動では得られない極低速域(限りなく0に近い低速域)での掘削作業が行えることから、現場の多様な施工ニーズに応えることができる。
さらに、実施例では、一般に定速制御を行う利点の大きい地盤改良を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、鋼管埋設やケーシング掘削などにも適用することができる。この場合、杭打機の仕様について幅広く設定でき、例えば、昇降装置を既知のラックピニオン式として構成することで、多段に配したピニオンギヤをそれぞれ回転駆動する複数の油圧モータを備えることができる。加えて、油圧回路の構成も適宜変更することができる。また、本実施例では全ての切替モードを機能させたが、施工前に不要なモードを非選択としたり、予め機能しない設定としたりすることもできる。
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…ベースリーダ、16…スライドリーダ、16a…ブラケット、17…リーダサポート、18…ジャッキ、19…カウンタウエイト、20…起伏シリンダ、21…スライドシリンダ、22…トップシーブ、23…施工部材、24…下部ガイド、25…オーガ、25a…回転駆動用油圧モータ、26…昇降用チェーン、27…スイベルジョイント、28…掘削ヘッド、29…キャブ
Claims (5)
- ベースマシンに起伏可能に立設したベースリーダの前方に、該ベースリーダに対して昇降可能に装着されるスライドリーダと、該スライドリーダに対して昇降可能に装着される掘削用のオーガとを設け、前記スライドリーダを昇降させる動力を油圧シリンダの伸縮駆動で発生させ、前記オーガを昇降させる動力を油圧モータの回転駆動で発生させる杭打機の制御装置において、
前記スライドリーダに対して下降する前記オーガの動作状態を検出する検出部と、該検出部が前記オーガの設定動作状態を検出したときに、前記スライドリーダに対する前記オーガの下降動作を停止させ、前記ベースリーダに対する前記スライドリーダの下降動作を実行させる駆動切替部とを備えていることを特徴とする制御装置。 - 前記設定動作状態は、前記オーガの昇降位置があらかじめ設定された昇降範囲の下限に達した状態であることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
- 前記設定動作状態は、掘削長さに対応する前記オーガの移動量があらかじめ設定された移動量に達した状態であることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
- 前記設定動作状態は、前記オーガに作用する圧入抵抗又は引抜抵抗の増加に従って増加する圧入力又は引抜力があらかじめ設定された上限に達した状態であることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
- 前記設定動作状態は、前記オーガに作用する回転抵抗の増加に従って増加する回転トルクがあらかじめ設定された上限に達した状態であることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
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JP2022159592A Pending JP2024053367A (ja) | 2022-10-03 | 2022-10-03 | 杭打機の制御装置 |
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JP (1) | JP2024053367A (ja) |
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2022
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