JP3608551B2 - リングの切断装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製リングの切断装置に関し、特にベルト式CVT(Continuously Variable Transmission=連続無段変速機)におけるCVTベルトの金属ベルト素片として用いるのに好適なリングの切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ベルト式CVTの巻き掛け伝達要素として用いられる金属製のCVTベルトは、略V字状をなす数百個の金属製の駒(ブロック)を無端状の金属ベルトにて連結したものが主流を占めており、金属ベルト自体は薄板無端状のリングを幾層にも積層したものが使用されている。
【0003】
そして、上記のリングは、例えばマルエージング鋼等の特殊鋼からなるコイル材を丸めた上で溶接接合して無端状のリング状素材を形成する工程と、リング状素材を所定幅寸法のリングに切断する工程と、上記切断加工時に発生する「ばり」を除去しつつ内外周のコーナーエッジ部をアール面取り形状に研磨する工程のほか、圧延(塑性)加工工程および熱処理工程等を経て製造される(類似技術が例えば特開昭57−161334号公報および実開昭57−68947号公報等に記載されている)。
【0004】
上記リングを切断するためのより具体的な方法としては、図13,14に示すように、幅広且つ無端状のリング状素材Wを対をなす駆動ロール51と従動ロール52の間に巻き掛けて所定の張力を付与しつつ周回移動させる一方、駆動ロール51にはこれと同軸一体にカッター53を設けるとともに、リング状素材Wをはさんで駆動ロール51に押し付けられることになる押さえロール54にもカッター55を設け、押さえロール54に所定の圧下力を加えることで、周回移動しているリング状素材Wをカッター53,55同士のせん断力によって切断して所定幅寸法のリングを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の切断方法では、リング状素材Wに張力を付与した状態でせん断方式にてリングを切断する方式であるため、図15に示すようにせん断開始位置P1に近いせん断終了位置直前にはせん断力ではなく張力によるいわゆるちぎれ破断Qの発生に伴って「ばり」が発生し、特にリング状素材Wの直径に対してそのリング状素材Wが巻き付けられる駆動ロール51の直径が小さいことから、その巻き付け曲率が上記のちぎれ破断Qを一段と助長するかたちとなる。
【0006】
また、リング状素材Wは上記のように一対のロール51,52間に掛け渡されるかたちとなるため、両ロール51,52間の平行度のずれによりせん断の開始および終了位置となるつなぎ部分にずれが生じ、いわゆる「段差ばり」が発生する。
【0007】
そして、上記のちぎれ破断Qによる「ばり」および「段差ばり」は後工程での研磨加工によってある程度除去されることになるものの、大きさ次第では研磨加工後も残存する可能性があり、万が一残存した場合には金属疲労もしくは応力集中によるリング切れ等の引き金となりやすく、早期寿命を招きやすい。
【0008】
また、上記のせん断式のカッターに代えて砥石の切り込みによってリングを切断するようにすれば、上記の「ばり」等の不具合要素の発生を大幅に抑制することが可能であるが、砥石の特殊性として切断のための砥石幅分の研削代を予め考慮しておく必要があり、材料歩留まりが極端に悪くなり実用的でない。
【0009】
本発明は以上のような課題に着目してなされたものであり、とりわけ切断時における「ばり」や「段差ばり」等の不具合要素の発生を防止したリングの切断装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、幅広のリング状素材を切断してこれよりも幅狭のリングを得るための装置であって、リング状素材を支持するべくそのリング状素材に内挿される駆動ロールに設けられて、リング状素材のうち少なくともリングとして切断されるべき領域に対し直接圧接してその内側より拡径方向の張力を付与する弾性体と、上記駆動ロールに弾性体と隣接するように配置された切断刃と、
回転中心が上記駆動ロールの軸心と平行であって且つその回転中心方向での位置が弾性体の位置と同じとなるようにリング状素材の外側に切断刃と対をなして配置される回転刃とを備えている。そして、上記リング状素材と弾性体を一体的に回転駆動させながら切断刃と回転刃を噛み合わせることにより、その噛み合い開始位置からリング状素材が少なくとも1回転する間に、上記回転刃で押圧された弾性体の撓みに基づく切断刃と回転刃のせん断作用によってリングが切断されるようになっていることを特徴としている。
【0012】
ここで、上記のように、リング状素材に対しその内側より弾性体にて拡径方向の張力を付与した上でそのリング状素材を弾性体とともに一体的に回転駆動させることは、リング状素材をその周長を円周とする円形状に拘束し、且つその円の中心を回転中心として自転のごとき形態で回転させることにほかならない。その結果、従来のような従動ロールは不要になる。
【0013】
この場合に、請求項2に記載のように上記弾性体はリング状のものとして形成されているとともに、その弾性体を拡径および縮径させる手段が設けられていることがリング状素材の挿入性および切断後のリングの取り出し容易性の上で好ましい。
【0014】
また、請求項2の記載を前提として、請求項3に記載のように上記駆動ロールに設けられる切断刃の数をn個としたとき弾性体の数がn+1個となるように、その駆動ロールの軸心方向に沿って弾性体と切断刃とを交互に配置するとともに、上記切断刃と噛み合うことになる回転刃を各弾性体と対応する位置に配置することがいわゆる多数個取りの上で好ましいものとなる。
【0015】
さらに、請求項1〜3のいずれかの記載を前提として、請求項4に記載のように、上記駆動ロールと回転刃をそれぞれ速度の可変制御が可能なサーボモータ等の独立した回転駆動手段にて回転駆動させるようになっているが、切断刃と回転刃の切れ刃同士の周速を一致させる上で好ましい。
【0016】
したがっって、請求項1〜4に記載の発明では、リング状素材と弾性体を一体的に回転駆動させながら切断刃と回転刃を噛み合わせることにより、その噛み合い開始位置からリング状素材が少なくとも1回転すれば上記切断刃と回転刃のせん断作用によってリングが切断される。その結果として、切断開始位置と切断終了位置が正確に一致するようになって従来のような段差ばり等の発生がなくなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3の記載を前提として、切断時における上記駆動ロールとリング状ワークとの軸心方向での相対位置決めは、リング状素材の両側に位置する位置決めリングにてそのリング状素材を挟み込むことでなされるようになっていることを特徴としている。
【0018】
この場合において、一方の位置決めリングを例えばミクロン単位でその位置制御が可能なメジャーリングとして機能させるとともに、他方の位置決めリングをメジャーリングに対しリング状素材を押し付けるテールストックリングとして機能させ、なおかつ双方の位置決めリングを積極的に軸心方向で進退移動可能な構成として、切断後のリングやリング状素材の払い出し機構もしくは押し出し機構として機能させることができるようになっていることが望ましい。
【0019】
したがって、請求項5に記載の発明では、駆動ロール上でのリング状素材の位置決めが正確に行われ、しかも切断時におけるリングの動きも拘束し得る。その上、位置決めリングの進退移動を利用して、切断されたリングの払い出しや連続切断加工時におけるリング状素材の送り出しをも行うことができるようになる。
【0020】
この場合において、請求項6に記載のように、上記駆動ロールは、隣り合ういずれか一つの弾性体と切断刃との接合面に相当する位置で分割されていて、その分割された両者がロール軸心方向で互いに接近離間可能に構成されていることが上記のような切断後のリングの取り出し容易性を確保する上で好ましい。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、切断すべきリング相当部全体に内側の弾性体にて均等に張力を付与しつつ円形状態に拘束した状態で切断するようにしたため、従来は必須とされた従動ロールが不要となるだけでなく、切断開始位置と切断終了位置が正確に一致するようになり、いわゆる段差ばりの発生を未然に防止して、リングの品質向上に寄与できる。その上、従動ロールがなくなることによって切断条件の制御が簡単になるほか、切断刃と回転刃の位置合わせや切断面の振れならびに平行度の調整が容易となって、リングの切断精度が一段と向上する。さらに、リング状素材を実質的にその周長を円周とする円形に拘束した状態で切断するため、切断に関与する部分の曲率を大きくすることができ、その結果としてせん断終了直前時におけるちぎれ破断の発生を抑制できる利点がある。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、リング状の弾性体を積極的に拡径および縮径させる手段が設けられていることから、請求項1に記載の発明と同様の効果に加えて、駆動ロールに対するリング状素材の挿入および切断後のリングの取り出しをきわめて容易に行えるほか、弾性体の拡径をもって瞬時にリング状素材を位置決めクランプできる利点がある。
【0023】
また請求項3に記載の発明によれば、切断刃の数をn個としたとき弾性体の数がn+1個となるように弾性体と切断刃とを交互に配置し、切断刃と噛み合うことになる回転刃を各弾性体と対応する位置に配置したことから、請求項3に記載の発明と同様の効果に加えて、複数の弾性体をもってリング状素材に均等に張力を付与することができることから加工精度が一段と向上するとともに、いわゆる多数個取りが可能となって生産性が向上する。特に多数個取りのなかでも偶数個取りとした場合には切断時に最も安定した状態となり、せん断の伴う側圧に対してもバランスをとりやすくリングの加工精度がなお一層向上する。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、駆動ロールと回転刃をそれぞれ独立した回転駆動手段にて回転駆動させるようにしたため、切断刃と回転刃の切れ刃同士の周速を一致させることが容易となり、両者間の滑りがなくなることによってリングの傷付き防止を図ることができるほか、切断刃および回転刃の長寿命化にも寄与できる利点がある。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、切断時における駆動ロールとリング状ワークとの軸心方向での相対位置決めを、リング状素材の両側に位置する位置決めリングにてそのリング状素材を挟み込むことで行うようにしたため、リング状素材の正確の位置決めと切断時におけるリングの動きを確実に阻止できる利点がある。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、駆動ロールを隣り合ういずれか一つの弾性体と切断刃との接合面に相当する位置で分割して、その分割された両者がロール軸心方向で互いに接近離間可能な構成としたため、その分割空間を利用して切断後のリングを払い出しをきわめて容易に行える利点がある。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1〜3は本発明の好ましい第1の実施の形態を示す図であり、この例では幅広且つ無端状のリング状素材Wから均一幅寸法のリングRをせん断方式にて連続的に切断する場合の例を示している。
【0028】
図1の(A)〜(C)に示すように、リング状素材Wは前工程において例えば0.3〜0.5mm程度のマルエージング鋼等のコイル材を母材としてこれを丸めた上で溶接接合することにより無端状に予備成形され、そのままの形態で切断工程に投入される。
【0029】
切断工程には、リング状素材Wに内挿されてそのリング状素材Wを支持することになる駆動ロール1のほか、その駆動ロール1と軸心が平行な回転刃2が設けられている。駆動ロール1には、外周面がその駆動ロール1と面一状態となるような円板状もしくはリング状の切断刃3と例えばウレタンゴム等からなるリング状のゴム系弾性体4とが隣接配置されていて、回転刃2と切断刃3とは対をなして後述する切断加工のためのせん断作用を司ることになる。なお、駆動ロール1の外径はリング状素材Wの内径よりもわずかに小さく形成されている。また、回転刃2のほか切断刃3および弾性体4は共にほぼ同一幅寸法に設定されている。
【0030】
弾性体4は、図2に示すようにその自由状態における外径寸法Aがリング状素材Wのそれと同一もしくはわずかに大きく設定されていて、図3に示すようにその外径Aをわずかに縮径化させながらリング状素材Wに挿入すると、それ自体の弾性復元力をもってリング状素材Wの内周面に密着して、リング状素材Wの全周に均等な張力Pを付与することになる。すなわち、自由状態における弾性体4の外径寸法Aはリング状素材Wの外径寸法と同一もしくはわずかに大きく設定されていることから、弾性体4は少なくともリング状素材Wの板厚寸法に相当する撓み代をもってリング状素材Wの内周面に圧接することになる。
【0031】
したがって、図1の(A)に示すように、切断刃3と弾性体4とが付帯している駆動ロール1にリング状素材Wを挿入すると、その弾性体4の撓み変形に伴う圧縮力をもって弾性体4がリング状素材Wの内周面に密着して、リング状素材Wのうち少なくともその密着部分についてその全周に均等に張力を付与した状態となる。それによって、リング状素材Wのうち弾性体4と接触する部分は張力付与状態で且つほぼ真円状態に保たれ、同時にその張力をもってリング状素材Wが駆動ロール1にクランプされたことになる。
【0032】
この状態で、切断刃3および弾性体4が付帯している駆動ロール1とリング状素材Wとを互いに一体のものとして回転駆動させる一方、同じく回転刃2を回転駆動しながらリング状素材Wに近付けて、同図(B),(C)に示すように切断刃3と回転刃2とのせん断作用をもってリング状素材Wから所定幅寸法のリングRを切断する。この時、弾性体4は回転刃2に対応する位置に設けられている故に回転刃2と切断刃3との噛み合い量分だけ撓み変形するかたちとなり、その回転刃2と切断刃3との噛み合い開始位置から少なくともリング状素材Wが1回転すればリングRがリング状素材Wから切断されて分離することになる。
【0033】
すなわち、リング状素材WのうちリングRとして切断されるべき領域は予め張力が付与された状態でほぼ真円状態に保たれており、その円の中心を回転中心として自転のごとき形態で1回転する間にリングRとして切断されることから、従来のような段差ばりは発生しにくいものとなる。しかも、従来のような従動ロールが不要であり、それとの平行度誤差等に起因するばりの発生も解消されるほか、切断条件の制御も簡単なものとなる。その上、先に述べたようにリング状素材Wを実質的にその周長を円周とする円形に拘束した状態で切断することから、切断に関与する部分の曲率を大きくすることができる故にせん断終了直前時におけるちぎれ破断の発生も抑制できるようになる。
【0034】
ここで、駆動ロール1と回転刃2とをそれぞれ独立したサーボモータ等の可変速制御が可能な回転駆動手段にて個別に回転駆動するようにすると、切断刃3と回転刃2の切れ刃同士の周速を電気的な制御で一致させることができるようになり、両者の滑りをなくして例えばリングRへの傷付き防止を図ることができるほか、摩耗や発熱を抑制できることでそれら切断刃3および回転刃2の長寿命化をも図れるようになる。
【0035】
図4〜8には上記弾性体4をもってリング状素材Wに張力を付与する機構の別の例を示す。すなわち、図1〜3ではリング状素材Wの内径よりも予めその外径を大きく設定した弾性体4それ自体の縮径に伴う弾性力をもって張力を付するようにしているのに対して、図4〜8ではリング状素材Wの内径よりも予めその外径を小さく設定した弾性体14を外力により拡径させ、それに伴う弾性力をもって張力を付するようにしたものである。
【0036】
図4の例では、リング状のゴム系弾性体14と先端がテーパ状に形成されたマンドレル5とを組み合わせたものを使用し、弾性体14に対しマンドレル5を挿入(圧入)することでその弾性体14を拡径させ、その拡径に伴う弾性体14の撓み変形をもってリング状素材Wに圧接して張力を付与する。なお、マンドレル5は弾性体14への圧入の際にその軸心周りに回転させると圧入動作が一段とスムーズに行われる。
【0037】
ここで、弾性体14の自由状態での外径をφB、内径をφCとすると、マンドレル5の最大直径はφC+βに設定され、弾性体14にマンドレル5を挿入したときの弾性体14の外径はφB+αに設定される。また、上記弾性体14によって張力が付与されるリング状素材Wの内径はφB+α−γに設定され、このγの値が弾性体14によりリング状素材Wに張力が付与される際の撓み代(クランプ代)となる。
【0038】
図5の例では、弾性体14の内周に傾斜カム面6aを有する複数のスライドカム6を放射状に配置して、直径方向にのみスライド変位可能に保持する一方、さらにそれら複数のスライドカム6,6…の内周にテーパ状のドライブカム面7aを有するドライブカム7を軸心方向に進退移動可能に配置してある。この例では、ドライブカム7の進退移動に応じて各スライドカム6,6…が直径方向に進退移動することから、それをもって弾性体14の拡径および縮径を行わせることができる。
【0039】
図6の例では、いわゆるワンウェイクラッチ機構の原理を応用したものであり、弾性体14の内周に複数のバックアッププレート8,8…を配置するとともにその内周側に回転可能なインナスリーブ9を配置し、さらに各バックアッププレート8,8…とインナスリーブ9との間にはスチールボールもしくはニードル(ころ)等の転動体10を介在させてある。インナスリーブ9の外周には山部9aと谷部9bを交互に且つ連続的に形成して全体として略鋸歯状のものとして形成してあることから、同図に示すように、インナスリーブ9の回転変位によりその山部9aとバックアッププレート8,8…の間に転動体10を介在させてある状態では、各バックアッププレート8,8…を外側に変位させて弾性体14を拡径させることができる。逆に、インナスリーブ9を同図の状態から時計回り方向に回転させて、その谷部9bとバックアッププレート8,8…との間に転動体10を介在させるようにすれば弾性体14を縮径させることができることになる。
【0040】
ここで、上記構造に代えて、例えば図7に示すように個々のバックアッププレート8,8…をそれらに個別に対応する油圧シリンダもしくはエアシリンダ等の直動型アクチュエータ11にて直接的に進退移動させてもよい。
【0041】
図8の例では、弾性体14の内周側を密閉空間として、その部分に弾性体14と同種もしくは異種の弾性体または液体からなる中間媒体12を封入するとともにプランジャ13を設けたもので、プランジャ13の前進後退移動により中間媒体12を加圧したりその加圧力を解除することで、弾性体14を拡径させたり縮径させたりすることができる。
【0042】
図9,10にはそれぞれ本発明の第2,3の実施の形態を示す。図9に示す実施の形態では、駆動ロール21側のリング状をなす切断刃23の両側にリング状のゴム系弾性体24を隣接配置する一方、これらの弾性体24に個別に対応するように一対の回転刃22を並設して、いわゆる2個取り形式にしたものである。また、図10に示す実施の形態では、同じ原理で4個取り形式にしたものである。
【0043】
これらの偶数個取り形式の場合には、切断刃23の数をn個とした場合には弾性体24の数がn+1個となって、それら切断刃22と弾性体24とがリング状素材Wの軸心方向で交互に並ぶことにとなり、同時に回転刃22としては各弾性体24に個別に対応する位置に設けられることになる。なお、これらの実施の形態においては、各弾性体24を拡径,縮径させる手段として図4〜7に記載のいずれかの方式のものを採用することができる。
【0044】
これらの複数個取り形式の場合にはその生産性に優れることはもちろんのこと、特に偶数個取り形式とした場合には、切断刃23の両側に位置する複数の弾性体24をもってリング状素材Wに均等に張力を付与することができ、しかも切断時に最も安定した状態となり、せん断の伴う側圧に対してもバランスをとりやすくリングRの加工精度が一段と向上する。また、連続切断加工を行う場合でもリング状素材Wの端末部まで確実に張力を付与して拘束することができるため、最後のリングRの切断後に端材もしくはスクラップとして残される領域を可及的に削減して材料歩留まりの向上にも寄与できるようになる。
【0045】
図11,12には本発明の第4の実施の形態を示す。この実施の形態では、図9に示した2個取り形式を基本として、駆動ロール31に対するリング状素材Wの位置決めを、そのリング状素材Wの両側に位置して一対の位置決めリングとして機能することになるメジャーリング15およびテールストックリング16にて行うようにしたものである。
【0046】
メジャーリング15およびテールストックリング16は、共に図示しないスライド駆動機構にて駆動されて駆動ロール31の軸心方向に進退移動可能となっている一方、特にメジャーリング15はミクロン単位でその位置の調整が可能となっている。つまり、位置出しが行われたメジャーリング15に対してリング状素材Wの端面を押し付けるべく、それらメジャーリング15とテールストックリング16とでリング状素材Wを挟み込むことで駆動ロール31に対する軸心方向でのリング状素材Wの位置決めがなされるようになっている。
【0047】
また、図12にも示すように、駆動ロール31について一方の弾性体24と切断刃23との接合面に相当する位置にて二つのロール分割片31a,31bに分割した構造とし、両者を互いに軸心方向で接近離間可能な構造としてある。
【0048】
したがって、この実施の形態では、切断刃23と回転刃22とのせん断作用に基づく切断時の挙動は図9に示したものと全く同じであるから、特に一つのリング状素材Wから多数のリングRを得るべく連続的に切断加工を行う場合に、そのリング状素材Wの位置決めが正確且つ確実に行われるようになり、リングRの切断品質が向上する。
【0049】
この場合に、先に述べたメジャーリング15およびテールストックリング16のスライド自由度を積極的に有効利用して、後述するようにメジャーリング15を切断済みのリングRの払い出し機構として、テールストックリング16をリング状素材Wの押し出し機構としてそれぞれ有効活用するものとする。
【0050】
そして、切断加工時には図11の加工形態とするも、切断加工後には図12に示すように双方のロール分割片31a,31bを所定距離だけ離間させて、先ずメジャーリング15を前進動作させて切断済みの二つのリングRをロール分割片31a,31b同士の対向間隙内に払い出す。これにより、切断済みのリングRは自重落下して製品として回収されることになる。
【0051】
切断済みのリングRの払い出しを終えたならば、メジャーリング15を図11と同じ位置まで後退動作させるとともに、双方のロール分割片31a,31bを再び接近させて突き合わせる。さらにテールストックリング16を前進動作させてリング状素材Wを押し出すことにより、そのリング状素材Wの切断面をメジャーリング15に押し当てる。その結果、直ちに次の切断動作に移行することができることになる。なお、上記リングRの切断加工を連続的に行う場合、一つのリング状素材Wから切断し得る最後のリングRの切断を終えた段階では、一方のロール分割片31a上に端材たるスクラップが残ることになるが、このスクラップは上記テールストックリング16を前進動作させることで、上記メジャーリング15による切断済みのリングRの払い出し動作と同じ要領で払い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す図で、(A)はリング切断前の要部断面説明図、(B)はリング切断直後の要部断面説明図、(C)は同図(B)の右側面説明図。
【図2】(A)は図1における弾性体の自由状態での説明図、(B)は同図(A)の断面説明図。
【図3】(A)は図1における弾性体の張力付与状態での説明図、(B)は同図(Aの)断面説明図。
【図4】弾性体を拡径させる手段の詳細を示す図で、(A)は拡径前の断面説明図、(B)は拡径後の断面説明図。
【図5】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図6】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図7】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図8】弾性体を拡径させる手段のさらに他の例を示す要部断面説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図11】本発明の第4の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図12】図11の作動説明図。
【図13】従来のリング切断工程の概略説明図。
【図14】図13の右側面説明図。
【図15】図13の要部拡大説明図。
【符号の説明】
1…駆動ロール
2…回転刃
3…切断刃
4…弾性体
14…弾性体
15…メジャーリング(位置決めリング)
16…テールストックリング(位置決めリング)
21…駆動ロール
22…回転刃
23…切断刃
24…弾性体
31…駆動ロール
31a…ロール分割片
31b…ロール分割片
R…リング
W…リング状素材
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製リングの切断装置に関し、特にベルト式CVT(Continuously Variable Transmission=連続無段変速機)におけるCVTベルトの金属ベルト素片として用いるのに好適なリングの切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、ベルト式CVTの巻き掛け伝達要素として用いられる金属製のCVTベルトは、略V字状をなす数百個の金属製の駒(ブロック)を無端状の金属ベルトにて連結したものが主流を占めており、金属ベルト自体は薄板無端状のリングを幾層にも積層したものが使用されている。
【0003】
そして、上記のリングは、例えばマルエージング鋼等の特殊鋼からなるコイル材を丸めた上で溶接接合して無端状のリング状素材を形成する工程と、リング状素材を所定幅寸法のリングに切断する工程と、上記切断加工時に発生する「ばり」を除去しつつ内外周のコーナーエッジ部をアール面取り形状に研磨する工程のほか、圧延(塑性)加工工程および熱処理工程等を経て製造される(類似技術が例えば特開昭57−161334号公報および実開昭57−68947号公報等に記載されている)。
【0004】
上記リングを切断するためのより具体的な方法としては、図13,14に示すように、幅広且つ無端状のリング状素材Wを対をなす駆動ロール51と従動ロール52の間に巻き掛けて所定の張力を付与しつつ周回移動させる一方、駆動ロール51にはこれと同軸一体にカッター53を設けるとともに、リング状素材Wをはさんで駆動ロール51に押し付けられることになる押さえロール54にもカッター55を設け、押さえロール54に所定の圧下力を加えることで、周回移動しているリング状素材Wをカッター53,55同士のせん断力によって切断して所定幅寸法のリングを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の切断方法では、リング状素材Wに張力を付与した状態でせん断方式にてリングを切断する方式であるため、図15に示すようにせん断開始位置P1に近いせん断終了位置直前にはせん断力ではなく張力によるいわゆるちぎれ破断Qの発生に伴って「ばり」が発生し、特にリング状素材Wの直径に対してそのリング状素材Wが巻き付けられる駆動ロール51の直径が小さいことから、その巻き付け曲率が上記のちぎれ破断Qを一段と助長するかたちとなる。
【0006】
また、リング状素材Wは上記のように一対のロール51,52間に掛け渡されるかたちとなるため、両ロール51,52間の平行度のずれによりせん断の開始および終了位置となるつなぎ部分にずれが生じ、いわゆる「段差ばり」が発生する。
【0007】
そして、上記のちぎれ破断Qによる「ばり」および「段差ばり」は後工程での研磨加工によってある程度除去されることになるものの、大きさ次第では研磨加工後も残存する可能性があり、万が一残存した場合には金属疲労もしくは応力集中によるリング切れ等の引き金となりやすく、早期寿命を招きやすい。
【0008】
また、上記のせん断式のカッターに代えて砥石の切り込みによってリングを切断するようにすれば、上記の「ばり」等の不具合要素の発生を大幅に抑制することが可能であるが、砥石の特殊性として切断のための砥石幅分の研削代を予め考慮しておく必要があり、材料歩留まりが極端に悪くなり実用的でない。
【0009】
本発明は以上のような課題に着目してなされたものであり、とりわけ切断時における「ばり」や「段差ばり」等の不具合要素の発生を防止したリングの切断装置を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、幅広のリング状素材を切断してこれよりも幅狭のリングを得るための装置であって、リング状素材を支持するべくそのリング状素材に内挿される駆動ロールに設けられて、リング状素材のうち少なくともリングとして切断されるべき領域に対し直接圧接してその内側より拡径方向の張力を付与する弾性体と、上記駆動ロールに弾性体と隣接するように配置された切断刃と、
回転中心が上記駆動ロールの軸心と平行であって且つその回転中心方向での位置が弾性体の位置と同じとなるようにリング状素材の外側に切断刃と対をなして配置される回転刃とを備えている。そして、上記リング状素材と弾性体を一体的に回転駆動させながら切断刃と回転刃を噛み合わせることにより、その噛み合い開始位置からリング状素材が少なくとも1回転する間に、上記回転刃で押圧された弾性体の撓みに基づく切断刃と回転刃のせん断作用によってリングが切断されるようになっていることを特徴としている。
【0012】
ここで、上記のように、リング状素材に対しその内側より弾性体にて拡径方向の張力を付与した上でそのリング状素材を弾性体とともに一体的に回転駆動させることは、リング状素材をその周長を円周とする円形状に拘束し、且つその円の中心を回転中心として自転のごとき形態で回転させることにほかならない。その結果、従来のような従動ロールは不要になる。
【0013】
この場合に、請求項2に記載のように上記弾性体はリング状のものとして形成されているとともに、その弾性体を拡径および縮径させる手段が設けられていることがリング状素材の挿入性および切断後のリングの取り出し容易性の上で好ましい。
【0014】
また、請求項2の記載を前提として、請求項3に記載のように上記駆動ロールに設けられる切断刃の数をn個としたとき弾性体の数がn+1個となるように、その駆動ロールの軸心方向に沿って弾性体と切断刃とを交互に配置するとともに、上記切断刃と噛み合うことになる回転刃を各弾性体と対応する位置に配置することがいわゆる多数個取りの上で好ましいものとなる。
【0015】
さらに、請求項1〜3のいずれかの記載を前提として、請求項4に記載のように、上記駆動ロールと回転刃をそれぞれ速度の可変制御が可能なサーボモータ等の独立した回転駆動手段にて回転駆動させるようになっているが、切断刃と回転刃の切れ刃同士の周速を一致させる上で好ましい。
【0016】
したがっって、請求項1〜4に記載の発明では、リング状素材と弾性体を一体的に回転駆動させながら切断刃と回転刃を噛み合わせることにより、その噛み合い開始位置からリング状素材が少なくとも1回転すれば上記切断刃と回転刃のせん断作用によってリングが切断される。その結果として、切断開始位置と切断終了位置が正確に一致するようになって従来のような段差ばり等の発生がなくなる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項3の記載を前提として、切断時における上記駆動ロールとリング状ワークとの軸心方向での相対位置決めは、リング状素材の両側に位置する位置決めリングにてそのリング状素材を挟み込むことでなされるようになっていることを特徴としている。
【0018】
この場合において、一方の位置決めリングを例えばミクロン単位でその位置制御が可能なメジャーリングとして機能させるとともに、他方の位置決めリングをメジャーリングに対しリング状素材を押し付けるテールストックリングとして機能させ、なおかつ双方の位置決めリングを積極的に軸心方向で進退移動可能な構成として、切断後のリングやリング状素材の払い出し機構もしくは押し出し機構として機能させることができるようになっていることが望ましい。
【0019】
したがって、請求項5に記載の発明では、駆動ロール上でのリング状素材の位置決めが正確に行われ、しかも切断時におけるリングの動きも拘束し得る。その上、位置決めリングの進退移動を利用して、切断されたリングの払い出しや連続切断加工時におけるリング状素材の送り出しをも行うことができるようになる。
【0020】
この場合において、請求項6に記載のように、上記駆動ロールは、隣り合ういずれか一つの弾性体と切断刃との接合面に相当する位置で分割されていて、その分割された両者がロール軸心方向で互いに接近離間可能に構成されていることが上記のような切断後のリングの取り出し容易性を確保する上で好ましい。
【0021】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、切断すべきリング相当部全体に内側の弾性体にて均等に張力を付与しつつ円形状態に拘束した状態で切断するようにしたため、従来は必須とされた従動ロールが不要となるだけでなく、切断開始位置と切断終了位置が正確に一致するようになり、いわゆる段差ばりの発生を未然に防止して、リングの品質向上に寄与できる。その上、従動ロールがなくなることによって切断条件の制御が簡単になるほか、切断刃と回転刃の位置合わせや切断面の振れならびに平行度の調整が容易となって、リングの切断精度が一段と向上する。さらに、リング状素材を実質的にその周長を円周とする円形に拘束した状態で切断するため、切断に関与する部分の曲率を大きくすることができ、その結果としてせん断終了直前時におけるちぎれ破断の発生を抑制できる利点がある。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、リング状の弾性体を積極的に拡径および縮径させる手段が設けられていることから、請求項1に記載の発明と同様の効果に加えて、駆動ロールに対するリング状素材の挿入および切断後のリングの取り出しをきわめて容易に行えるほか、弾性体の拡径をもって瞬時にリング状素材を位置決めクランプできる利点がある。
【0023】
また請求項3に記載の発明によれば、切断刃の数をn個としたとき弾性体の数がn+1個となるように弾性体と切断刃とを交互に配置し、切断刃と噛み合うことになる回転刃を各弾性体と対応する位置に配置したことから、請求項3に記載の発明と同様の効果に加えて、複数の弾性体をもってリング状素材に均等に張力を付与することができることから加工精度が一段と向上するとともに、いわゆる多数個取りが可能となって生産性が向上する。特に多数個取りのなかでも偶数個取りとした場合には切断時に最も安定した状態となり、せん断の伴う側圧に対してもバランスをとりやすくリングの加工精度がなお一層向上する。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、駆動ロールと回転刃をそれぞれ独立した回転駆動手段にて回転駆動させるようにしたため、切断刃と回転刃の切れ刃同士の周速を一致させることが容易となり、両者間の滑りがなくなることによってリングの傷付き防止を図ることができるほか、切断刃および回転刃の長寿命化にも寄与できる利点がある。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、切断時における駆動ロールとリング状ワークとの軸心方向での相対位置決めを、リング状素材の両側に位置する位置決めリングにてそのリング状素材を挟み込むことで行うようにしたため、リング状素材の正確の位置決めと切断時におけるリングの動きを確実に阻止できる利点がある。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、駆動ロールを隣り合ういずれか一つの弾性体と切断刃との接合面に相当する位置で分割して、その分割された両者がロール軸心方向で互いに接近離間可能な構成としたため、その分割空間を利用して切断後のリングを払い出しをきわめて容易に行える利点がある。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1〜3は本発明の好ましい第1の実施の形態を示す図であり、この例では幅広且つ無端状のリング状素材Wから均一幅寸法のリングRをせん断方式にて連続的に切断する場合の例を示している。
【0028】
図1の(A)〜(C)に示すように、リング状素材Wは前工程において例えば0.3〜0.5mm程度のマルエージング鋼等のコイル材を母材としてこれを丸めた上で溶接接合することにより無端状に予備成形され、そのままの形態で切断工程に投入される。
【0029】
切断工程には、リング状素材Wに内挿されてそのリング状素材Wを支持することになる駆動ロール1のほか、その駆動ロール1と軸心が平行な回転刃2が設けられている。駆動ロール1には、外周面がその駆動ロール1と面一状態となるような円板状もしくはリング状の切断刃3と例えばウレタンゴム等からなるリング状のゴム系弾性体4とが隣接配置されていて、回転刃2と切断刃3とは対をなして後述する切断加工のためのせん断作用を司ることになる。なお、駆動ロール1の外径はリング状素材Wの内径よりもわずかに小さく形成されている。また、回転刃2のほか切断刃3および弾性体4は共にほぼ同一幅寸法に設定されている。
【0030】
弾性体4は、図2に示すようにその自由状態における外径寸法Aがリング状素材Wのそれと同一もしくはわずかに大きく設定されていて、図3に示すようにその外径Aをわずかに縮径化させながらリング状素材Wに挿入すると、それ自体の弾性復元力をもってリング状素材Wの内周面に密着して、リング状素材Wの全周に均等な張力Pを付与することになる。すなわち、自由状態における弾性体4の外径寸法Aはリング状素材Wの外径寸法と同一もしくはわずかに大きく設定されていることから、弾性体4は少なくともリング状素材Wの板厚寸法に相当する撓み代をもってリング状素材Wの内周面に圧接することになる。
【0031】
したがって、図1の(A)に示すように、切断刃3と弾性体4とが付帯している駆動ロール1にリング状素材Wを挿入すると、その弾性体4の撓み変形に伴う圧縮力をもって弾性体4がリング状素材Wの内周面に密着して、リング状素材Wのうち少なくともその密着部分についてその全周に均等に張力を付与した状態となる。それによって、リング状素材Wのうち弾性体4と接触する部分は張力付与状態で且つほぼ真円状態に保たれ、同時にその張力をもってリング状素材Wが駆動ロール1にクランプされたことになる。
【0032】
この状態で、切断刃3および弾性体4が付帯している駆動ロール1とリング状素材Wとを互いに一体のものとして回転駆動させる一方、同じく回転刃2を回転駆動しながらリング状素材Wに近付けて、同図(B),(C)に示すように切断刃3と回転刃2とのせん断作用をもってリング状素材Wから所定幅寸法のリングRを切断する。この時、弾性体4は回転刃2に対応する位置に設けられている故に回転刃2と切断刃3との噛み合い量分だけ撓み変形するかたちとなり、その回転刃2と切断刃3との噛み合い開始位置から少なくともリング状素材Wが1回転すればリングRがリング状素材Wから切断されて分離することになる。
【0033】
すなわち、リング状素材WのうちリングRとして切断されるべき領域は予め張力が付与された状態でほぼ真円状態に保たれており、その円の中心を回転中心として自転のごとき形態で1回転する間にリングRとして切断されることから、従来のような段差ばりは発生しにくいものとなる。しかも、従来のような従動ロールが不要であり、それとの平行度誤差等に起因するばりの発生も解消されるほか、切断条件の制御も簡単なものとなる。その上、先に述べたようにリング状素材Wを実質的にその周長を円周とする円形に拘束した状態で切断することから、切断に関与する部分の曲率を大きくすることができる故にせん断終了直前時におけるちぎれ破断の発生も抑制できるようになる。
【0034】
ここで、駆動ロール1と回転刃2とをそれぞれ独立したサーボモータ等の可変速制御が可能な回転駆動手段にて個別に回転駆動するようにすると、切断刃3と回転刃2の切れ刃同士の周速を電気的な制御で一致させることができるようになり、両者の滑りをなくして例えばリングRへの傷付き防止を図ることができるほか、摩耗や発熱を抑制できることでそれら切断刃3および回転刃2の長寿命化をも図れるようになる。
【0035】
図4〜8には上記弾性体4をもってリング状素材Wに張力を付与する機構の別の例を示す。すなわち、図1〜3ではリング状素材Wの内径よりも予めその外径を大きく設定した弾性体4それ自体の縮径に伴う弾性力をもって張力を付するようにしているのに対して、図4〜8ではリング状素材Wの内径よりも予めその外径を小さく設定した弾性体14を外力により拡径させ、それに伴う弾性力をもって張力を付するようにしたものである。
【0036】
図4の例では、リング状のゴム系弾性体14と先端がテーパ状に形成されたマンドレル5とを組み合わせたものを使用し、弾性体14に対しマンドレル5を挿入(圧入)することでその弾性体14を拡径させ、その拡径に伴う弾性体14の撓み変形をもってリング状素材Wに圧接して張力を付与する。なお、マンドレル5は弾性体14への圧入の際にその軸心周りに回転させると圧入動作が一段とスムーズに行われる。
【0037】
ここで、弾性体14の自由状態での外径をφB、内径をφCとすると、マンドレル5の最大直径はφC+βに設定され、弾性体14にマンドレル5を挿入したときの弾性体14の外径はφB+αに設定される。また、上記弾性体14によって張力が付与されるリング状素材Wの内径はφB+α−γに設定され、このγの値が弾性体14によりリング状素材Wに張力が付与される際の撓み代(クランプ代)となる。
【0038】
図5の例では、弾性体14の内周に傾斜カム面6aを有する複数のスライドカム6を放射状に配置して、直径方向にのみスライド変位可能に保持する一方、さらにそれら複数のスライドカム6,6…の内周にテーパ状のドライブカム面7aを有するドライブカム7を軸心方向に進退移動可能に配置してある。この例では、ドライブカム7の進退移動に応じて各スライドカム6,6…が直径方向に進退移動することから、それをもって弾性体14の拡径および縮径を行わせることができる。
【0039】
図6の例では、いわゆるワンウェイクラッチ機構の原理を応用したものであり、弾性体14の内周に複数のバックアッププレート8,8…を配置するとともにその内周側に回転可能なインナスリーブ9を配置し、さらに各バックアッププレート8,8…とインナスリーブ9との間にはスチールボールもしくはニードル(ころ)等の転動体10を介在させてある。インナスリーブ9の外周には山部9aと谷部9bを交互に且つ連続的に形成して全体として略鋸歯状のものとして形成してあることから、同図に示すように、インナスリーブ9の回転変位によりその山部9aとバックアッププレート8,8…の間に転動体10を介在させてある状態では、各バックアッププレート8,8…を外側に変位させて弾性体14を拡径させることができる。逆に、インナスリーブ9を同図の状態から時計回り方向に回転させて、その谷部9bとバックアッププレート8,8…との間に転動体10を介在させるようにすれば弾性体14を縮径させることができることになる。
【0040】
ここで、上記構造に代えて、例えば図7に示すように個々のバックアッププレート8,8…をそれらに個別に対応する油圧シリンダもしくはエアシリンダ等の直動型アクチュエータ11にて直接的に進退移動させてもよい。
【0041】
図8の例では、弾性体14の内周側を密閉空間として、その部分に弾性体14と同種もしくは異種の弾性体または液体からなる中間媒体12を封入するとともにプランジャ13を設けたもので、プランジャ13の前進後退移動により中間媒体12を加圧したりその加圧力を解除することで、弾性体14を拡径させたり縮径させたりすることができる。
【0042】
図9,10にはそれぞれ本発明の第2,3の実施の形態を示す。図9に示す実施の形態では、駆動ロール21側のリング状をなす切断刃23の両側にリング状のゴム系弾性体24を隣接配置する一方、これらの弾性体24に個別に対応するように一対の回転刃22を並設して、いわゆる2個取り形式にしたものである。また、図10に示す実施の形態では、同じ原理で4個取り形式にしたものである。
【0043】
これらの偶数個取り形式の場合には、切断刃23の数をn個とした場合には弾性体24の数がn+1個となって、それら切断刃22と弾性体24とがリング状素材Wの軸心方向で交互に並ぶことにとなり、同時に回転刃22としては各弾性体24に個別に対応する位置に設けられることになる。なお、これらの実施の形態においては、各弾性体24を拡径,縮径させる手段として図4〜7に記載のいずれかの方式のものを採用することができる。
【0044】
これらの複数個取り形式の場合にはその生産性に優れることはもちろんのこと、特に偶数個取り形式とした場合には、切断刃23の両側に位置する複数の弾性体24をもってリング状素材Wに均等に張力を付与することができ、しかも切断時に最も安定した状態となり、せん断の伴う側圧に対してもバランスをとりやすくリングRの加工精度が一段と向上する。また、連続切断加工を行う場合でもリング状素材Wの端末部まで確実に張力を付与して拘束することができるため、最後のリングRの切断後に端材もしくはスクラップとして残される領域を可及的に削減して材料歩留まりの向上にも寄与できるようになる。
【0045】
図11,12には本発明の第4の実施の形態を示す。この実施の形態では、図9に示した2個取り形式を基本として、駆動ロール31に対するリング状素材Wの位置決めを、そのリング状素材Wの両側に位置して一対の位置決めリングとして機能することになるメジャーリング15およびテールストックリング16にて行うようにしたものである。
【0046】
メジャーリング15およびテールストックリング16は、共に図示しないスライド駆動機構にて駆動されて駆動ロール31の軸心方向に進退移動可能となっている一方、特にメジャーリング15はミクロン単位でその位置の調整が可能となっている。つまり、位置出しが行われたメジャーリング15に対してリング状素材Wの端面を押し付けるべく、それらメジャーリング15とテールストックリング16とでリング状素材Wを挟み込むことで駆動ロール31に対する軸心方向でのリング状素材Wの位置決めがなされるようになっている。
【0047】
また、図12にも示すように、駆動ロール31について一方の弾性体24と切断刃23との接合面に相当する位置にて二つのロール分割片31a,31bに分割した構造とし、両者を互いに軸心方向で接近離間可能な構造としてある。
【0048】
したがって、この実施の形態では、切断刃23と回転刃22とのせん断作用に基づく切断時の挙動は図9に示したものと全く同じであるから、特に一つのリング状素材Wから多数のリングRを得るべく連続的に切断加工を行う場合に、そのリング状素材Wの位置決めが正確且つ確実に行われるようになり、リングRの切断品質が向上する。
【0049】
この場合に、先に述べたメジャーリング15およびテールストックリング16のスライド自由度を積極的に有効利用して、後述するようにメジャーリング15を切断済みのリングRの払い出し機構として、テールストックリング16をリング状素材Wの押し出し機構としてそれぞれ有効活用するものとする。
【0050】
そして、切断加工時には図11の加工形態とするも、切断加工後には図12に示すように双方のロール分割片31a,31bを所定距離だけ離間させて、先ずメジャーリング15を前進動作させて切断済みの二つのリングRをロール分割片31a,31b同士の対向間隙内に払い出す。これにより、切断済みのリングRは自重落下して製品として回収されることになる。
【0051】
切断済みのリングRの払い出しを終えたならば、メジャーリング15を図11と同じ位置まで後退動作させるとともに、双方のロール分割片31a,31bを再び接近させて突き合わせる。さらにテールストックリング16を前進動作させてリング状素材Wを押し出すことにより、そのリング状素材Wの切断面をメジャーリング15に押し当てる。その結果、直ちに次の切断動作に移行することができることになる。なお、上記リングRの切断加工を連続的に行う場合、一つのリング状素材Wから切断し得る最後のリングRの切断を終えた段階では、一方のロール分割片31a上に端材たるスクラップが残ることになるが、このスクラップは上記テールストックリング16を前進動作させることで、上記メジャーリング15による切断済みのリングRの払い出し動作と同じ要領で払い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す図で、(A)はリング切断前の要部断面説明図、(B)はリング切断直後の要部断面説明図、(C)は同図(B)の右側面説明図。
【図2】(A)は図1における弾性体の自由状態での説明図、(B)は同図(A)の断面説明図。
【図3】(A)は図1における弾性体の張力付与状態での説明図、(B)は同図(Aの)断面説明図。
【図4】弾性体を拡径させる手段の詳細を示す図で、(A)は拡径前の断面説明図、(B)は拡径後の断面説明図。
【図5】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図6】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図7】弾性体を拡径させる手段の他の例を示す要部断面説明図。
【図8】弾性体を拡径させる手段のさらに他の例を示す要部断面説明図。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図10】本発明の第3の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図11】本発明の第4の実施の形態を示す要部断面説明図。
【図12】図11の作動説明図。
【図13】従来のリング切断工程の概略説明図。
【図14】図13の右側面説明図。
【図15】図13の要部拡大説明図。
【符号の説明】
1…駆動ロール
2…回転刃
3…切断刃
4…弾性体
14…弾性体
15…メジャーリング(位置決めリング)
16…テールストックリング(位置決めリング)
21…駆動ロール
22…回転刃
23…切断刃
24…弾性体
31…駆動ロール
31a…ロール分割片
31b…ロール分割片
R…リング
W…リング状素材
Claims (6)
- 幅広のリング状素材を切断してこれよりも幅狭のリングを得るための装置であって、
リング状素材を支持するべくそのリング状素材に内挿される駆動ロールに設けられて、リング状素材のうち少なくともリングとして切断されるべき領域に対し直接圧接してその内側より拡径方向の張力を付与する弾性体と、
上記駆動ロールに弾性体と隣接するように配置された切断刃と、
回転中心が上記駆動ロールの軸心と平行であって且つその回転中心方向での位置が弾性体の位置と同じとなるようにリング状素材の外側に切断刃と対をなして配置される回転刃と、
を備えてなり、
上記リング状素材と弾性体を一体的に回転駆動させながら切断刃と回転刃を噛み合わせることにより、その噛み合い開始位置からリング状素材が少なくとも1回転する間に、上記回転刃で押圧された弾性体の撓みに基づく切断刃と回転刃のせん断作用によってリングが切断されるようになっていることを特徴とするリングの切断装置。 - 上記弾性体はリング状のものとして形成されているとともに、その弾性体を拡径および縮径させる手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリングの切断装置。
- 上記駆動ロールに設けられる切断刃の数をn個としたとき弾性体の数がn+1個となるように、その駆動ロールの軸心方向に沿って弾性体と切断刃とを交互に配置するとともに、
上記切断刃と噛み合うことになる回転刃を各弾性体と対応する位置に配置したことを特徴とする請求項2に記載のリングの切断装置。 - 上記駆動ロールと回転刃をそれぞれ速度の可変制御が可能な独立した回転駆動手段にて回転駆動させるようになっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリングの切断装置。
- 切断時における上記駆動ロールとリング状ワークとの軸心方向での相対位置決めは、リング状素材の両側に位置する位置決めリングにてそのリング状素材を挟み込むことでなされるようになっていることを特徴とする請求項3に記載のリングの切断装置。
- 上記駆動ロールは、隣り合ういずれか一つの弾性体と切断刃との接合面に相当する位置で分割されていて、その分割された両者がロール軸心方向で互いに接近離間可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のリングの切断装置。
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