JP3608502B2 - 回転装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジアルころ軸受にて回転軸を支持する回転装置に関するもので、特に軸受の耐久性向上に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転式ポンプ(例えばトロコイドポンプ)等に回転を伝える回転軸を軸受により支持する回転装置においては、ラジアルころ軸受が多用されている。(例えば、特開平11−303771号公報参照)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図8は本発明者らが耐久試験を行った回転装置の要部を示すものである。この回転装置では、内輪無しの2つのラジアルころ軸受50A、50B(以下単に軸受という)にて回転軸20を支持している。回転軸20により回転されるトロコイドポンプ(図示せず)は2つの軸受50A、50Bの間に配置されている。この軸受50A、50Bは、ころ51、保持器52、および外輪53より構成されている。外輪53にはころ51の転動面となる円筒部54の両端を折り曲げて2つの鍔部55、56が設けられている。
【0004】
そして、上記の回転装置の耐久試験を行ったところ、外輪53の円筒部54にフレーキングやピーリングが早期に発生するものがあった。そこで、その原因究明のために種々の調査、検討を行ったところ、▲1▼外輪53の円筒部54は第1鍔部55に近い側と第2鍔部56に近い側とで硬度が異なること、▲2▼フレーキングやピーリングが早期に発生したものは、外輪53の円筒部54の硬度の低い方を回転軸20においてラジアル荷重Fが作用する側(トロコイドポンプの設置側)に配置して組み付けられていることがわかった。
【0005】
上記の▲1▼について、図9により説明する。この図9は、第2鍔部56’が折り曲げられる前の外輪53の断面形状、および焼きなまし後の外輪53の硬度を示すものである。外輪53はSPCC(冷間圧延鋼板)よりなり、まずプレス成形により円筒部54の一端を折り曲げて第1鍔部55のみを形成し、次いで浸炭浸窒処理し、次に円筒部54の他端56’(後に折り曲げられて第2鍔部56となる部位)を焼きなましする。その後、ころ51および保持器52を外輪53に組み付けた後、円筒部54の他端を折り曲げて第2鍔部56を形成する。
【0006】
そして、上記の焼きなましにより、第2鍔部56のみでなく円筒部54において第2鍔部56に近い部位の硬度も低下し、円筒部54において第2鍔部56に近い部位の硬度は円筒部54において第1鍔部55に近い部位の硬度よりも、ビッカース硬さ(Hv)で50〜100ポイント低下する。
【0007】
次に上記の▲2▼について図8により説明する。トロコイドポンプの作動により回転軸20にラジアル荷重Fが作用して回転軸20が曲がると、その曲げ部分と軸受50A、50Bの中心軸との間に相対角度θが生じ、外輪53の円筒部54においてラジアル荷重Fが作用する側に高い面圧が発生する。そして、外輪53の円筒部54の硬度の低い方(第2鍔部56側)をラジアル荷重Fが作用する側に配置して組み付けた場合、硬度の低い部位に高い面圧が発生するため、硬度の低い部位にフレーキングやピーリングが早期に発生してしまう。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、一端側と他端側とで硬度が異なる外輪を用いたラジアルころ軸受により回転軸を支持する回転装置において、軸受の耐久性を向上させることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、一端側と他端側とで硬度が異なる外輪を用いたラジアルころ軸受(50A、50B)と、2つの前記ラジアルころ軸受(50A、50B)により支持された回転軸(20)と、2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間に配置されるとともに、回転軸(20)を介して駆動されてブレーキ液を高圧化するトロコイドポンプ(10A、10B)とを有し、トロコイドポンプ(10A、10B)の作動時の反力が、回転軸(20)における2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間にラジアル荷重(F)として作用し、ラジアル荷重(F)により回転軸(20)が曲がることにより、ラジアルころ軸受(50A、50B)の外輪(53)は、その軸方向のうちトロコイドポンプ(10A、10B)から遠い側に低い面圧を受けるとともに、トロコイドポンプ(10A、10B)に近い側に高い面圧を受ける回転装置において、外輪(53)は、ラジアルころ軸受(50A、50B)のころ(51)が接触する円筒部(54)と、円筒部(54)の両端から径内方側に延びる2つの鍔部(55、56)とを備え、外輪(53)の硬度が低い側と硬度が高い側とを識別可能なように、2つの鍔部(55、56)の内径寸法(φD1、φD2)が異ならせてあり、外輪(53)の硬度が低い側が低い面圧を受ける側に配置され、外輪(53)の硬度が高い側が高い面圧を受ける側に配置されていることを特徴とする。
【0020】
これによると、2つの鍔部の内径寸法差により硬度が高い側と硬度が低い側とを容易に識別することができ、軸受を所定の組み付け方向に容易かつ確実に組み付けることができる。また、外輪の硬度が高い部位で高い面圧を受けることになるため、フレーキングやピーリングが発生しにくくなり、軸受の転動寿命(耐久性)が向上する。
【0023】
請求項2に記載の発明では、硬度が低い側に位置する鍔部(56)の内径寸法(φD2)が、硬度が高い側に位置する鍔部(55)の内径寸法(φD1)よりも大きく構成されていることを特徴とする。
【0024】
これによると、高い面圧が加えられる硬度の高い方の鍔部の内径に比べて、低い面圧側の硬度の低い方の鍔部の内径が大きくされているので、軸受自体の強度への影響を小さくすることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明では、一端側と他端側とで硬度が異なる外輪を用いたラジアルころ軸受(50A、50B)と、2つのラジアルころ軸受(50A、50B)により支持された回転軸(20)と、2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間に配置されるとともに、回転軸(20)を介して駆動されてブレーキ液を高圧化するトロコイドポンプ(10A、10B)とを有し、トロコイドポンプ(10A、10B)の作動時の反力が、回転軸(20)における2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間にラジアル荷重(F)として作用し、ラジアル荷重(F)により回転軸(20)が曲がることにより、ラジアルころ軸受(50A、50B)の外輪(53)は、その軸方向のうちトロコイドポンプ(10A、10B)から遠い側に低い面圧を受けるとともに、トロコイドポンプ(10A、10B)に近い側に高い面圧を受ける回転装置において、外輪(53)は、ラジアルころ軸受(50A、50B)のころ(51)が接触する円筒部(54)と、円筒部(54)の両端から径内方側に延びる2つの鍔部(55、56)とを備え、外輪(53)の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別する識別マーク(57、58)が鍔部(55、56)に設けられ、外輪(53)の硬度が低い側が低い面圧を受ける側に配置され、外輪(53)の硬度が高い側が高い面圧を受ける側に配置されていることを特徴とする。
【0027】
これによると、外輪の硬度が高い部位で高い面圧を受けることになるため、フレーキングやピーリングが発生しにくくなり、軸受の転動寿命が向上する。
【0028】
また、識別マークによる識別により、軸受を所定の組み付け方向に容易かつ確実に組み付けることができる。
【0034】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明の回転装置を適用した第1実施形態を示すもので、図1はポンプ本体の全体構成を示す図、図2はポンプ部の構成を示す図1のA−A断面図、図3は軸受部の構成を示す図である。このポンプ本体は、例えば車両用ブレーキ装置のABSアクチュエータにおいて、吸入したブレーキ液を高圧化して吐出するポンプ装置として用いられる。
【0037】
図1において、ABSアクチュエータのハウジング(図示せず)に挿入して組付けられるポンプ本体1は、ブレーキ装置の第1配管系統用の第1ポンプ10Aと、第2配管系統用の第2ポンプ10Bとを備えている。
【0038】
回転軸20は図1の左側端部21にて電動モータ(図示せず)の軸と結合され、回転軸20がモータによって回転されて両ポンプ10A、10Bが駆動されるようになっている。そして、両ポンプ10A、10Bは回転軸20で駆動されることにより、ブレーキ液を吸入して第1配管系統と第2配管系統にそれぞれ吐出するようになっている。
【0039】
次に、図1および図2に基づいてポンプ10A、10Bの構成を説明する。両ポンプ10A、10Bは回転式ポンプであり、より詳細には、トロコイドポンプ(内接型ギアポンプ)である。なお、両ポンプ10A、10Bは同一構成であるため、以下第1ポンプ10Aについて説明し、第2ポンプ10Bについては第1ポンプ10Aと同一部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
ポンプ本体1の外形を構成する構成部品は、円筒状の第1〜第3サイドプレート30〜32と円筒状の第1、第2センタプレート33、34からなり、サイドプレート30〜32とセンタプレート33、34は交互に順に重ねられている。
【0041】
サイドプレート30〜32の内径はセンタプレート33、34の内径よりも小さく設定されており、従って、サイドプレート30〜32の側面とセンタプレート33、34の内周面とによって空間(ロータ室)が形成され、その空間に両ポンプ10A、10Bのアウターロータやインナーロータが配置されている。
【0042】
第1センタプレート33と第1、第2サイドプレート30、31によって形成されたロータ室内に配置された第1ポンプ10Aは、内周に内歯部が形成されたアウターロータ11と外周に外歯部が形成されたインナーロータ12とからなる回転部を備えており、アウターロータ11とインナーロータ12は、それぞれの中心軸が偏心した状態で組付けられている。
【0043】
アウターロータ11とインナーロータ12は内歯部と外歯部とが噛み合わさって回転し、内歯部と外歯部との間に形成された複数の空隙部13の容積が回転に伴って変化するようになっている。複数の空隙部13のうち吸入側の空隙部が吸入口60と連通し、吐出側の空隙部が吐出口61と連通するように構成されている。
【0044】
インナーロータ12の孔内には回転軸20が挿入されており、この回転軸20に形成された丸穴21内に円柱状のピン13の一端が挿入されるとともに、インナーロータ12に形成されたキー溝15内にピン14の他端が挿入されることにより、ピン14を介して回転軸20からインナーロータ12へのトルク伝達がなされる。そして、回転軸20の回転によってアウターロータ11およびインナーロータ12が回転し、それに伴って空隙部13の容積が変化してブレーキ液の吸入吐出が行えるようになっている。
【0045】
なお、上記したように両ポンプ10A、10Bは同一構成であるが、第2ポンプ10Bは回転軸20を中心として第1ポンプ10Aを180°回転させた配置となっている。また、第2ポンプ10Bは、複数の空隙部13のうち吸入側の空隙部が吸入口70と連通し、吐出側の空隙部が吐出口71と連通する。
【0046】
第1〜第3サイドプレート30〜32のうち最もモータ側に位置する第1サイドプレート30の内周部には、第1ポンプ10Aとモータ側との間をシールするシール部材40、および回転軸20を回転自在に支持する第1軸受50Aが配置されている。また、両ポンプ10A、10Bの間に位置する第2サイドプレート31の内周部には、第1ポンプ10Aと第2ポンプ10Bとの間をシールするシール部材41が配置され、モータから最も遠い側に位置する第3サイドプレート32の内周部には、回転軸20を回転自在に支持する第2軸受50Bが配置されている。
【0047】
2つの軸受50A、50Bは、両ポンプ10A、10Bを挟むように配置されている。換言すると、回転軸20の軸方向において、2つの軸受50A、50B間に両ポンプ10A、10Bが配置されている。従って、両ポンプ10A、10Bの作動により回転軸20に作用するラジアル荷重の着力点は、2つの軸受50A、50B間になる。
【0048】
第1サイドプレート30には、第1ポンプ10Aの吸入側と連通する吸入口60、および第1ポンプ10Aの吐出側と連通する吐出口61が備えられている。また、第3サイドプレート32には、第2ポンプ10Bの吸入側と連通する吸入口70、および第2ポンプ10Bの吐出側と連通する吐出口71が備えられている。
【0049】
次に、図1および図3に基づいて両軸受50A、50Bの構成を説明する。なお、両軸受50A、50Bは同一構成であるため、以下第1軸受50Aについて説明し、第2軸受50Bについては第1軸受50Aと同一部分に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
第1軸受50Aは、針状の多数のころ51と、ころ51の位置決めを行う保持器52と、ころ51および保持器52を収納する外輪53とからなるもので、内輪無しのラジアルころ軸受である。
【0051】
ころ51はSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)よりなり、焼き入れ焼きもどしの熱処理がなされている。例えばナイロン、あるいは軟窒化処理されたSPCC(冷間圧延鋼板)よりなる保持器52は、全体形状が薄肉円筒状で、ころ51と同数の切り欠きが形成され、その切り欠き内にころ51が遊嵌合されている。
【0052】
外輪53はSPCC(冷間圧延鋼板)よりなり、ころ51の外周面が接触してころ51の転動面となる薄肉円筒状の円筒部54と、円筒部54の両端から径内方側に延びる第1、第2鍔部55、56とを有する。
【0053】
外輪53は、まずプレス成形により円筒部54の一端を折り曲げて第1鍔部55のみが形成され、次いで外輪53全体を浸炭浸窒処理する。次に円筒部54の他端の後に折り曲げられて第2鍔部56となる部位に焼きなましをする。その後、ころ51および保持器52が外輪53に組み付けられた後、円筒部54の他端が折り曲げられて第2鍔部56が形成される。
【0054】
ところで、前述したように、外輪53の第2鍔部56側の焼きなましにより、円筒部54において第2鍔部56に近い部位の硬度が円筒部54において第1鍔部55に近い部位の硬度よりも相対的に低くなってしまい、この硬度差と軸受50A、50Bの組付け方向との関連で、円筒部54にフレーキングやピーリングが早期に発生することがあった。
【0055】
そこで、外輪53の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別可能にするために、両鍔部55、56の形状を異ならせている。すなわち、第1鍔部55の開口部の内径φD1と第2鍔部56の開口部の内径φD2とを、第1鍔部55の内径φD1を第2鍔部56の内径φD2よりも小さくして異ならせている。ここで、各内径φD1、φD2の各公差(min〜max)を含めても、φD1(max)<φD2(min)となるように、各数値が設定されている。具体的には寸法差(φD2(min)−φD1(max))は0.5mm以上に設定されるのが望ましい。
【0056】
そして、第1軸受50Aは、次のようにして第1サイドプレート30に組み付けられる。すなわち、両鍔部55、56の開口部の内径寸法差(形状差)を利用して、外輪53の硬度が高い側(第1鍔部55側)と外輪53の硬度が低い側(第2鍔部56側)とを識別する(識別工程)。次いで、外輪53の硬度が高い側が、回転軸20においてラジアル荷重Fが作用する側(両ポンプ10A、10Bが配置されている側、ラジアル荷重Fの着力点側)に位置するようにして、第1軸受50Aを第1サイドプレート30に組み付ける(軸受組み付け工程)。
【0057】
なお、上記したように両軸受50A、50Bは同一構成であるが、第3サイドプレート32の内周部に組み付けられる第2軸受50Bも、外輪53の硬度が高い側(第1鍔部55側)が、回転軸20においてラジアル荷重Fが作用する側(両ポンプ10A、10Bが配置されている側、ラジアル荷重Fの着力点側)に位置するようにして組み付けられる。
【0058】
次に、このように構成されたポンプ本体1の作動について説明する。車輪がロック傾向にあるABS制御時、若しくは大きな制動力を必要とする場合(例えばブレーキ踏力に対応した制動力が得られない場合やブレーキペダルの操作量が大きい場合)等において、ポンプ本体1を駆動することにより、リザーバ内のブレーキ液を吸入し、若しくはブレーキ主回路中のブレーキ液を吸入し、高圧化して吐出する。そして、この吐出されたブレーキ液によってホイールシリンダ内の圧力を増圧する。
【0059】
このとき、ポンプ本体1内では、両ポンプ10A、10Bが吸入口60、70を通じてブレーキ液を吸入し、吐出口61、71を通じてブレーキ液を吐出するという基本的なポンプ動作を行う。
【0060】
このポンプ動作の際に、ブレーキ液を高圧圧縮した反力がポンプ要素構成を介して回転軸20に作用することにより、回転軸20にラジアル荷重Fが作用して回転軸20と両軸受50A、50Bの中心軸との間に相対角度θが生じ、外輪53の円筒部54においてラジアル荷重Fが作用する側(両ポンプ10A、10Bが配置されている側)に高い面圧が発生する。
【0061】
そして、本実施形態では、外輪53の硬度が高い側をラジアル荷重Fが作用する側(ラジアル荷重Fの着力点側)に位置させて、外輪53の硬度が高い部位で高い面圧を受けるようにしているため、フレーキングやピーリングが発生しにくい。その結果、本発明者らが行った試験では、外輪53の硬度が低い側をラジアル荷重Fが作用する側に位置するようにした場合に比して、軸受50A、50Bの転動寿命が2〜5倍に向上することが確認された。
【0062】
また、2つの鍔部55、56の内径寸法差による識別により、軸受50A、50Bを所定の組み付け方向に容易かつ確実に組み付けることができる。
【0063】
この際、高い面圧が加えられる硬度の高い方の第1鍔部55の内径φD1に比べて、低い面圧側の硬度の低い方の第2鍔部56の内径φD2が大きくされているので、軸受50A、50B自体の強度への影響が小さくてすむ。
【0064】
また、ポンプ本体1をABSアクチュエータのポンプ装置として用いた場合、両ポンプ10A、10Bで昇圧されたブレーキ液にてホイールシリンダ内の圧力を増圧する必要があるため、両ポンプ10A、10Bの吐出圧は非常に高圧になる。従って、ラジアル荷重Fも大きくなり、外輪53の円筒部54に発生する面圧も非常に高くなって、フレーキングやピーリングが発生しやすい状況になる。
【0065】
このABSアクチュエータのような、外輪53の円筒部54に発生する面圧が非常に高くなる回転装置に、本発明は特に有効である。
【0066】
なお、本実施形態では、外輪53の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別可能にするために、φD1(max)<φD2(min)としたが、φD2(max)<φD1(min)としてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
次に、図4および図5に示す第2実施形態について説明する。図4および図5は軸受単体の構成を示すもので、図4は回転軸の軸方向から見た側面図、図5は図4のB−B線に沿う断面図である。
【0068】
上記第1実施形態では、外輪53の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別可能にするために、2つの鍔部55、56の開口部の内径φD1、φD2を異ならせたのに対し、本実施形態では、各軸受50A、50Bの2つの鍔部55、56のうちの一方のみに、識別マークとしての切り欠き部57を形成している。すなわち、第1鍔部55の内周側に1つの切り欠き部57を形成している。なお、その他の点は第1実施形態と同一である。
【0069】
そして、切り欠き部57の有無により、外輪53の硬度が高い側(第1鍔部55側)と外輪53の硬度が低い側(第2鍔部56側)とを識別し(識別工程)、次いで、外輪53の硬度が高い側が、回転軸20においてラジアル荷重Fが作用する側に位置するようにして、各軸受50A、50Bを第1サイドプレート30または第3サイドプレート32に組み付ける(軸受組み付け工程)。
【0070】
本実施形態によれば、外輪53の硬度が高い側をラジアル荷重Fが作用する側に位置させて、外輪53の硬度が高い部位で高い面圧を受けるようにしているため、フレーキングやピーリングが発生しにくい。
【0071】
また、切り欠き部57の有無による識別により、軸受50A、50Bを所定の組み付け方向に容易かつ確実に組み付けることができる。
【0072】
なお、切り欠き部57を第2鍔部56のみに形成してもよい。このように、切り欠き部57を硬度の低い側に設ける場合には、低い面圧しか元々加わらない方なので、切り欠き部57を形成したことによる軸受強度の低下の懸念が減少する。
【0073】
また、識別を容易にするために切り欠き部57を複数個形成してもよい。さらに、両方の鍔部55、56に切り欠き部57を形成してもよく、その際には、第1鍔部55と第2鍔部56とで、切り欠き部57の形状、大きさ、数等を異ならせる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、図6および図7に示す第3実施形態について説明する。図6および図7は軸受単体の構成を示すもので、図6は回転軸の軸方向から見た側面図、図7は図6のC−C線に沿う断面図である。
【0075】
上記第1実施形態では、外輪53の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別可能にするために、2つの鍔部55、56の開口部の内径φD1、φD2を異ならせたのに対し、本実施形態では、各軸受50A、50Bの2つの鍔部55、56のうちの一方のみに、識別マークとしての突起部58を形成している。すなわち、各軸受50A、50Bの軸方向外方に向かって延びる1つの突起部58を第1鍔部55に形成している。なお、その他の点は第1実施形態と同一である。
【0076】
そして、突起部58の有無により、外輪53の硬度が高い側(第1鍔部55側)と外輪53の硬度が低い側(第2鍔部56側)とを識別し(識別工程)、次いで、外輪53の硬度が高い側が、回転軸20においてラジアル荷重Fが作用する側に位置するようにして、各軸受50A、50Bを第1サイドプレート30または第3サイドプレート32に組み付ける(軸受組み付け工程)。
【0077】
本実施形態によれば、外輪53の硬度が高い側をラジアル荷重Fが作用する側に位置させて、外輪53の硬度が高い部位で高い面圧を受けるようにしているため、フレーキングやピーリングが発生しにくい。
【0078】
また、突起部58の有無による識別により、軸受50A、50Bを所定の組み付け方向に容易かつ確実に組み付けることができる。
【0079】
なお、識別を容易にするために突起部58を複数個形成してもよい。また、突起部58を第2鍔部56のみに形成してもよい。さらに、両方の鍔部55、56に突起部58を形成してもよく、その際には、第1鍔部55と第2鍔部56とで、突起部58の形状、大きさ、数等を異ならせる。
【0081】
また、外輪の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別する識別マークとして、切り欠き部57や突起部58を設ける例を示したが、凹凸部を設けたり、着色したりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態になる回転装置を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の軸受および回転軸を示す模式的な図である。
【図4】本発明の第2実施形態の要部を示す側面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の要部を示す側面図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】本発明者らが耐久試験を行った回転装置の要部を示す模式的な図である。
【図9】図8の軸受の要部およびその硬度を示す図である。
【符号の説明】
20…回転軸、50A、50B…ラジアルころ軸受、51…ころ、53…外輪、54…円筒部、55、56…鍔部。

Claims (3)

  1. 一端側と他端側とで硬度が異なる外輪を用いたラジアルころ軸受(50A、50B)と、2つの前記ラジアルころ軸受(50A、50B)により支持された回転軸(20)と、前記2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間に配置されるとともに、前記回転軸(20)を介して駆動されてブレーキ液を高圧化するトロコイドポンプ(10A、10B)とを有し、
    前記トロコイドポンプ(10A、10B)の作動時の反力が、前記回転軸(20)における前記2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間にラジアル荷重(F)として作用し、前記ラジアル荷重(F)により前記回転軸(20)が曲がることにより、前記ラジアルころ軸受(50A、50B)の外輪(53)は、その軸方向のうち前記トロコイドポンプ(10A、10B)から遠い側に低い面圧を受けるとともに、前記トロコイドポンプ(10A、10B)に近い側に高い面圧を受ける回転装置において、
    前記外輪(53)は、前記ラジアルころ軸受(50A、50B)のころ(51)が接触する円筒部(54)と、前記円筒部(54)の両端から径内方側に延びる2つの鍔部(55、56)とを備え、
    前記外輪(53)の硬度が低い側と硬度が高い側とを識別可能なように、前記2つの鍔部(55、56)の内径寸法(φD1、φD2)が異ならせてあり、
    前記外輪(53)の硬度が低い側が前記低い面圧を受ける側に配置され、前記外輪(53)の硬度が高い側が前記高い面圧を受ける側に配置されていることを特徴とする回転装置。
  2. 硬度が低い側に位置する前記鍔部(56)の内径寸法(φD2)が、硬度が高い側に位置する前記鍔部(55)の内径寸法(φD1)よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転装置。
  3. 一端側と他端側とで硬度が異なる外輪を用いたラジアルころ軸受(50A、50B)と、2つの前記ラジアルころ軸受(50A、50B)により支持された回転軸(20)と、前記2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間に配置されるとともに、前記回転軸(20)を介して駆動されてブレーキ液を高圧化するトロコイドポンプ(10A、10B)とを有し、
    前記トロコイドポンプ(10A、10B)の作動時の反力が、前記回転軸(20)における前記2つのラジアルころ軸受(50A、50B)間にラジアル荷重(F)として作用し、前記ラジアル荷重(F)により前記回転軸(20)が曲がることにより、前記ラジアルころ軸受(50A、50B)の外輪(53)は、その軸方向のうち前記トロコイドポンプ(10A、10B)から遠い側に低い面圧を受けるとともに、前記トロコイドポンプ(10A、10B)に近い側に高い面圧を受ける回転装置において、
    前記外輪(53)は、前記ラジアルころ軸受(50A、50B)のころ(51)が接触する円筒部(54)と、前記円筒部(54)の両端から径内方側に延びる2つの鍔部(55、56)とを備え、
    前記外輪(53)の硬度が高い側と硬度が低い側とを識別する識別マーク(57、58)が前記鍔部(55、56)に設けられ、
    前記外輪(53)の硬度が低い側が前記低い面圧を受ける側に配置され、前記外輪(53)の硬度が高い側が前記高い面圧を受ける側に配置されていることを特徴とする回転装置。
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