JP3608403B2 - 発電・電動機を備えたターボチャージャ - Google Patents

発電・電動機を備えたターボチャージャ Download PDF

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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
    • F16C27/00Elastic or yielding bearings or bearing supports, for exclusively rotary movement
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,吸気を過給すると共に,排ガスエネルギーを電気エネルギー変換してエネルギーを回収する発電・電動機を備えたターボチャージャに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に,ターボチャージャを備えたエンジンでは,排ガスエネルギーで駆動されるタービン,該タービンを取り付けたシャフト,及び該シャフトに取り付けたコンプレッサを有するターボチャージャを設けたものがある。また,エンジンに設けたターボチャージャには,排ガスエネルギーで駆動されるタービン,該タービンを取り付けたシャフト,該シャフトに取り付けたコンプレッサ及び前記シャフト上に設けた発電・電動機から成るエネルギー回収装置が提案されている。また,ターボチャージャを備えた断熱エンジンでは,排気系に発電・電動機を持つターボチャージャを配置すると共に,該ターボチャージャの後流に発電タービンを設けたエネルギー回収装置を配置したものが提案されている。
【0003】
図3は,従来の通常のターボチャージャを示す断面図である。ターボチャージャは,エンジンの高速回転時や高負荷運転時における出力の向上を目的として,エンジンの排気ガスで駆動されるターボチャージャで過給を行うものである。図3に示すターボチャージャ60において,ターボチャージャ60のボディは,タービン2を収容するタービンハウジング12,コンプレッサ3を収容するコンプレッサハウジング13,及びタービンハウジング12とコンプレッサハウジング13との間にあって両ハウジング12,13を連結するセンタハウジング61から構成されている。ボディを貫通するシャフト4は,センタハウジング61において軸受62,62によって回転自在に支持されている。シャフト4には,タービン2側の端部においてタービンブレード7が取り付けられ,コンプレッサ3側の端部においてコンプレッサブレード9が取り付けられている。
【0004】
エンジンの排気管を通じてタービンスクロール6に送られた排気ガスは,ターボチャージャ60のタービン2に供給してタービンブレード7を回転する。タービンブレード7の回転は,シャフト4を介してコンプレッサ3に伝達され,コンプレッサ3において,コンプレッサブレード9を回転して過給,即ち,空気を圧縮してエンジンに供給する。
【0005】
シャフト4は,10〜20万rpmもの速度で高速回転をするので,安定して回転するために軸の支持構造に工夫が施されている。図4は,図3に示すターボチャージャ60の軸受構造の一部を拡大して示す断面図である。センタハウジング61においてシャフト4を軸支する軸受62,62は,シャフト4に固定された内輪63,外輪64,及び内輪63と外輪64との間に介装されたボール65から構成されたアンギュラ型の玉軸受である。ボール65は,保持器66によって内輪63及び外輪64から脱落しないように保持されている。
【0006】
軸受62,62の外輪64は,センタハウジング61の貫通孔67に嵌入されているオイルフィルムダンパ68の貫通孔69の両端部内に圧入によって取り付けられている。オイルフィルムダンパ68は,タービン側とコンプレッサ側とで分割されていない一体型である。また,軸受62,62は,外輪64,64間においてばね受け71を介してコイルばね70が介装されており,コイルばね70の予め決められた力によって互いに離れる方向に付勢されている。
【0007】
シャフト4の高速回転を可能にするために,軸受62,62とオイルフィルムダンパ68とには潤滑油が供給される。潤滑油は,センタハウジング61に形成されている給油路72を通じてオイルフィルムダンパ68とセンタハウジング61の貫通孔67との間の隙間73に供給されて,隙間73を満たし,更に軸受62,62を潤滑・冷却した後,オイルフィルムダンパ68とセンタハウジング61とに連続して形成された排油路74を通じて排出される。オイルフィルムダンパ68は,隙間73に供給された潤滑油が作るオイルフィルムを介してセンターハウジング61に浮動状態に支持されている。かかるオイルフィルムの制振作用により,シャフト4の高速回転が可能となる。
【0008】
軸受62,62はアンギュラ型の玉軸受であるので,タービン2及びコンプレッサ3に働くスラスト力は,軸受62,62,オイルフィルムダンパ68を介してセンターハウジング61からタービンハウジング12及びコンプレッサハウジング13に伝達される。このようなオイルフィルムダンパによる軸受の支持構造の一例が,実開昭61−134536号公報に示されている。この公報に開示の軸受構造においては,スプリングの付勢力以上のスラスト力がシャフトに生じると,両軸受が互いに接近しないように,オイルフィルムダンパの内周面には軸受ストッパ用の段差が形成されている。
【0009】
車両のエンジンの排気ガスエネルギーによりタービンを駆動し,該タービンに接続した発電機によって電力を発電することで,排気ガスエネルギーを電気エネルギーとして回収するものとしてターボチャージャジェネレータがある。図5は,従来の発電・電動機を備えたターボチャージャを示す断面図である。図5に示す発電・電動機を備えたターボチャージャ80は,図3及び図4に示すターボチャージャ60において,シャフト4を延長し,センターハウジング61とコンプレッサハウジング13との間に発電機82を組み込んだものに相当する。図3に示すターボチャージャ60の各構成要素及び部位と同等のものには,同じ符号を付すことで,重複する詳細な説明を省略する。
【0010】
発電・電動機を備えたターボチャージャ80の発電機82は,タービン2及びコンプレッサ3の間において,センタハウジング61とコンプレッサハウジング13とに対して両端で取り付けられた発電機ハウジング81内に収容されている。発電機82は,排気エネルギーにより駆動されるシャフト4に取り付けられてシャフト4と共に回転する永久磁石から成る回転子83と,回転子83の周囲において発電機ハウジング81に取り付けられたコイルから成る固定子84とから成る。発電機82は,排気ガスにより駆動されるタービン2の出力の一部を電気エネルギーに変換し,この電力によりエンジンに直結したモータを駆動することで,排気ガスエネルギー回収を実現している。なお,シャフト4は,センタハウジング61に対して,フロート軸受85,85により回転自在に支持されており,コンプレッサ側のフロート軸受85から突出するシャフト4に回転子83が取り付けられている。
【0011】
タービンで得られた駆動力で発電機を駆動するターボチャージャの一例として特開平2−11815号公報に示されたものがある。排気ガス量が変化するとタービン効率が広範囲に変化するので,このターボチャージャは,回転軸の回転数に応じて,排気ガスを同軸上に配設した大タービン又は小タービンに供給することにより,タービン効率を高い状態に維持することを図ったものである。
【0012】
また,発電・電動機を備えたターボチャージャの別の例として,特開平2−298627号公報に開示されているものがある。この発電・電動機を備えたターボチャージャは,センタハウジングに軸支されるシャフトのタービンハウジングとは反対側に突出する部分に発電機部を配置した型式のものである。
【0013】
更に,発電・電動機を備えたターボチャージャの別の例として,シャフトの外周に同一中心軸上に且つシャフトとは独立して回転できる中空軸の外側シャフトを設け,この外側シャフトに発電機用タービンと発電機の回転子とを設けたものがある(特開平6−288242号公報)。この例では,コンプレッサを駆動するためのタービンと,発電機用タービンとは,排気ガス流れに沿って直列に配置されている。また,ケーシングに対する外側シャフト,及び外側シャフトに対するシャフトは,それぞれ軸受によって回転自在に支持されている。シャフトは,ナットによってシャフトに取り付けられているスラスト軸受を介してセンタハウジングに対してスラスト方向にも回転自在に支持されている。更に,外側シャフトは,センタハウジングにスラスト軸受を介してスラスト方向にも回転自在に支持されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このような発電・電動機を備えたターボチャージャを大型のエンジンで使用する場合,図5に示されているような軸受構造では,回転子83が一対のフロート軸受85よりもコンプレッサ3側に寄ると,フロート軸受85からコンプレッサ3側へ延びるオーバーハング量が大きくなり,発電機ハウジング81の軸方向長さが長くなる。また,回転子83は,磁性材料で構成されており,大きな重量を持つ部品である。そのため,シャフト4が回転すると,フロート軸受85からコンプレッサ3側へ延びる部分に設けられている回転子83は,コンプレッサ3と共に振れ回り等を起こし易いので,高速回転が不可能になる。
【0015】
したがって,回転子を取り付けたシャフトを,回転子を軸方向に挟む両側においてハウジングに支持して,シャフトと回転子とを安定して高速回転させることを可能にすると共に,シャフトに発生するラジアル力とスラスト力とを保持することを可能にする点で,解決すべき課題がある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,エンジンからの排気ガスが有するエネルギーを電気エネルギーに変換することで回収する発電・電動機を備えたターボチャージャにおいて,軸受をハウジングに支持するダンパリングによって,シャフトに発生するラジアル力は勿論のこと,スラスト力をも支持することを可能にする発電・電動機を備えたターボチャージャを提供することである。
【0017】
この発明は,ハウジング内に配設され且つ排ガスエネルギーで駆動されるタービン,前記ハウジング内に配設されたコンプレッサ,前記タービンと前記コンプレッサとを連結するシャフト,及び前記シャフト上に取り付けた発電・電動用の回転子と前記ハウジングに取り付けられた固定子とを有する発電機,及び前記シャフトを回転自在に支持するため前記回転子の軸方向両側の位置においてそれぞれ配置された軸受を具備し,前記各軸受は,前記ハウジングに対して前記各軸受に対応して個別に設けられ且つ前記ハウジングとの間に形成される径方向隙間に制振用オイルフィルムを形成するダンパリングを介して支持されており,前記ダンパリングは,前記ハウジングに設けられた規制部材によって軸方向移動が規制されていると共に前記ハウジングとの間に配設されたばね手段によって前記規制部材から離間する方向に付勢されており,前記ダンパリングには,潤滑油を前記軸受に供給するため前記径方向隙間から前記軸受に臨む開口に潤滑油を導く第1油路と,前記ダンパリングのリング端面と該リング端面に対向する前記規制部材の規制端面との間に形成される軸方向隙間に潤滑油を導く第2油路とが形成されていることから成る発電・電動機を備えたターボチャージャに関する。
【0018】
この発明による発電・電動機を備えたターボチャージャは,上記のように構成されており,次のように作用する。即ち,この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいては,タービンとコンプレッサとを連結するシャフトは,シャフトに取り付けられた回転子の軸方向両側の位置においてそれぞれ配置された軸受によってハウジングに回転自在に支持されている。即ち,重量が大きな回転子は軸受間に配置される。また,各軸受は,ハウジングに対して各軸受に対応して個別に設けられ且つハウジングとの間に形成される径方向隙間に制振用オイルフィルムを形成するダンパリングを介して支持されている。即ち,シャフトは,ダンパリングとハウジングとの間に形成される径方向隙間に形成される制振用オイルフィルムによって,ラジアル方向には安定して支持される。更に,ダンパリングは,ハウジングに設けられた規制部材によって軸方向移動が規制されていると共にハウジングとの間に配設されたばね手段によって規制部材から離間する方向に付勢されており,ダンパリングのリング端面とリング端面に対向する規制部材の規制端面との間に形成される軸方向隙間には第2油路を通じて潤滑油が導かれる。したがって,ばね手段によって開く方向に形成される軸方向隙間には潤滑油が供給され,供給された潤滑油によって,径方向隙間に形成される制振用オイルフィルムと同様,ダンパリングとハウジングとの間に制振用オイルフィルムが形成される。その結果,シャフトが軸方向に変位しようとするときには,いずれか一方の軸受に関して軸方向隙間が狭くなり,シャフトは,ハウジングに対してスラスト方向にも安定して支持され,高速回転が可能となる。
【0019】
また,この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいて,前記第2油路は前記第1油路から前記シャフトの軸方向と平行な方向に分岐すると共に前記リング端面に開口している。第1油路は,ダンパリングの径方向にドリル加工のように穿孔して形成される。第2油路は,リング端面からシャフトの軸方向と変更な方向に第1油路と交差する位置までドリル加工によって穿孔していくことにより形成され,その結果,ダンパリングにおける油路の形成が容易となる。
【0020】
また,この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいて,前記軸受は,前記シャフトに圧入された内輪,前記ダンパリングに圧入された外輪,及び前記内輪と前記外輪との間に配置されたボールを備えている。軸受の外輪の固定子側とは反対側の端面がダンパリングの圧入穴の底面に当接するまで,軸受をダンパリングに圧入すると,シャフトからのスラスト方向の力は,軸受を介してダンパリングに的確に伝えられる。
【0021】
この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいて,前記軸受はアンギュラ玉軸受である。アンギュラ玉軸受は,シャフトに作用するラジアル方向の力のみならずスラスト方向の力もボールを介してダンパリングに伝達する。ダンパリングがハウジングに対してラジアル方向及びスラスト方向に制振作用をもって支持されるので,結局,シャフトは,アンギュラ玉軸受とダンパリングとを直列に介して,ハウジングに対してラジアル方向及びスラスト方向に支持される。
【0022】
また,この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいて,前記回転子は永久磁石であり,前記固定子はステータコイルである。永久磁石から成る回転子は重量が大きくなるが,シャフトの両側の軸受で支持され,且つラジアル方向は勿論のことスラスト方向にも制振作用があるオイルフィルムを形成するダンパリングによってに支持されるので,シャフトは高速回転をすることが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による発電・電動機を備えたターボチャージャの一実施例を説明する。図1はこの発明による発電・電動機を備えたターボチャージャの一実施例を示す断面図であり,図2は図1に示す発電・電動機を備えたターボチャージャのシャフトを回転自在に軸支する軸受構造の一方を示す拡大断面図である。
【0024】
図1に示す発電・電動機を備えたターボチャージャ1(以下,実施例の説明において「ターボチャージャ1」と略す)は,エンジンの排気ガスエネルギーによって駆動されるタービン2,該タービン2を取り付けたシャフト4,及び該シャフト4に取り付けたコンプレッサ3を有している。また,ターボチャージャ1のハウジングは,タービンハウジング12,コンプレッサハウジング13,及びセンタハウジングから構成されている。センタハウジングは,タービン側センタハウジング14とコンプレッサ側センタハウジング15とから成る。タービンハウジング12はタービン側センタハウジング14に固定され,センタハウジング14内に発電機5が配置されている。タービン側センタハウジング14の他端部には,コンプレッサ側センタハウジング15が固定され,該コンプレッサ側センタハウジング15には,コンプレッサハウジング13が固定されている。
【0025】
中実軸であるシャフト4は,タービン側センタハウジング14とコンプレッサ側センタハウジング15とに対して,それぞれアンギュラ玉軸受10,11によって回転自在に支持されている。シャフト4には,永久磁石から成る発電機5の回転子16が取り付けられており,アンギュラ玉軸受10,11は,間に回転子16を配置させることができるように,互いに充分離間して配置されている。回転子16の外周に対応して,タービン側センタハウジング14にはステータコイルから成る固定子17が配置されている。固定子17は,コイルが巻き付けられており,シャフト4の回転に伴って回転子16である永久磁石の磁束変化に応じて起電力を発生する。回転子16の周囲に嵌着された補強部材としてのカーボン繊維強化プラスチック製のスリーブ18は,高速回転に伴って回転子16に生じる大きな遠心力によって永久磁石がバーストするのを防止している。回転子16と固定子17とによって,発電機が構成されている。ターボチャージャ1において,タービンハウジング12内に排気タービンスクロール6を通じて排ガス流が導入され,シャフト4の一端に固定されたタービンブレード7を回転する。
【0026】
アンギュラ玉軸受10,11によるシャフト4の軸支持の詳細を,図2に基づいて説明する。アンギュラ玉軸受10は,シャフト4に圧入された内輪20,ダンパリング30に圧入された外輪21,内輪20と外輪21との間に転動可能に組み込まれた転動体としてのボール22,及びボール22の軸受10からの脱落を防止する保持器23から構成されている。この実施例では,内輪20のみにカウンタボア24が形成されている。
【0027】
タービン側センタハウジング14には,内周面46と端面47とによって規定される穴内に,サイドプレート49が嵌入して取り付けられている。サイドプレート49とシャフト4との間には,シールリング53が配置されており,後述する潤滑油のタービン2側への漏れを防止するシール機能を有している。タービン側センタハウジング14の内周面44内に,サイドプレート49に当接するまでダンパリング30が嵌入されて取り付けられている。ダンパリング30は,固定子17側に向かう側において,筒状内面31と,筒状内面31に接続する環状の段差面32とが形成されている。軸受10の外輪21は,筒状内面31に段差面32に当接するまでダンパリング30に圧入されている。ダンパリング30は,アンギュラ玉軸受11側にも配設されているが,同様の構造のものであるので,詳細な説明を省略する。
【0028】
ダンパリング30の外周面34には環状溝33が形成されており,Oリング50が環状溝33内に配設されている。Oリング50は,タービン側センタハウジング14の内周面44に当接して,ダンパリング30の外周面34とタービン側センタハウジング14の内周面44との間をシールしている。
【0029】
ダンパリング30の外周面34には,環状溝33から離間した位置に浅いオイル入口35が形成されており,オイル入口35からダンパリング30を径方向に穿設して比較的大径のオイル通路36aが形成されている。オイル通路36aの底部からは斜め方向に軸受10の方向に延びる比較的小径の斜めオイル通路36bが形成されている。オイル通路36aと斜めオイル通路36bとは,この発明によるターボチャージャ1における第1油路36を構成している。タービン側センタハウジング14に形成されているオイル供給路45からの潤滑油は,ダンパリング30の外周面34とタービン側センタハウジング14の内周面44との間に形成される狭い径方向隙間51に供給される。径方向隙間51は,固定子17側に配設されているOリング50によってシールされているので,径方向隙間51内の潤滑油は直接に固定子17側に漏れることはない。
【0030】
オイル供給路45からの潤滑油は,また,第1油路36を通じて,斜めオイル通路36bの開口である噴出口38からアンギュラ玉軸受10に向かって噴出され,アンギュラ玉軸受10を潤滑する。タービン2は,排気ガスの流れによって駆動されるため,シャフト4は高温となり,シャフト4に装着した回転子16である永久磁石も高温となって減磁する場合がある。アンギュラ玉軸受10に向かって噴出される潤滑油は,シャフト4を冷却する働きもする。アンギュラ玉軸受10に向かって噴出される潤滑油は,サイドプレート49のシールリング53にも熱を伝達して,シャフト4の熱をセンタハウジング14に逃がしている。これらの冷却性能を向上させるため,タービン2の近傍のセンタハウジング14に形成されている冷却通路55に冷却水が導入されている。
【0031】
オイル通路36の途中からは,軸方向に延び且つダンパリング30のサイドプレート49側の端面40に形成されている開口41に至る第2油路39が分岐している。第2油路は,必ずしも第1油路から分岐することにより形成する必要はなく,径方向隙間51から直接に形成してもよい。ダンパリング30の端面40と,サイドプレート49の端面48との間に形成される軸方向隙間52には,端面保持用のオイルフィルムが形成される。サイドプレート49は,端面48において,ダンパリング30の反固定子17側への移動を規制する規制部材としての働きをしている。
【0032】
ダンパリング30のサイドプレート49側には,筒状内面42とそれに続く段部43が形成されており,サイドプレート49の端面48とダンパリング30の段部43との間には,ダンパリング30を固定子17側に向かって付勢するコイルばね54が配設されている。したがって,両アンギュラ玉軸受10,11においては,両側からコイルばね54,54によって,内方向に互いに付勢されることになり,シャフト4にスラスト力が作用しなければ,両軸受10,11のボール22,22と内輪20,20のカウンタボア24との位置で定まる中立位置に付勢されている。
【0033】
固定子17は,固定子17を横切る磁束変化と固定子17のコイルを流れる電流とによって発熱し,その結果,固定子17の発電性能が低下して充分な発電電力を取り出すことができない。そこで,固定子17が圧入によって取り付けられているセンタハウジング14に,タービン2付近に設けられる冷却通路55から連通路56を通じて固定子17の径方向外方に位置するまで冷却通路57を延長し,冷却通路57に冷却水を流すことにより,固定子17を冷却している。
【0034】
ターボチャージャ1は,上記のように構成されているので,次のように作動することができる。ターボチャージャ1では,エンジン(図示せず)からの排気ガスがタービンスクロール6からタービンハウジング12へ導入されることによって,排気ガスはタービンブレード7に作用し,タービン2を駆動する。タービン2が駆動することによってシャフト4を通じてコンプレッサ3を駆動し,コンプレッサ3のコップレッサブレード9が回転することによって吸入空気がエンジンに過給される。シャフト4に取り付けた回転子16としての永久磁石が回転し,発電機5で発電する状態になる。発電機5は,エンジンの運転状態に応じて,消費或いは蓄電するに見合った量だけ発電するが,その電力を使用しない場合には,回転子16は空転するだけである。
【0035】
ダンパリング30は,アンギュラ玉軸受10側とアンギュラ玉軸受11側とで,それぞれ別々に用意されて,センタハウジング14に取り付けられている。ダンパリング30の外周面34とセンタハウジング14の内周面44との間に形成される潤滑油の油膜(オイルフィルム)はフィルムダンパ作用を奏するので,シャフト4の高速回転中にシャフト4に作用するスラスト力が,コイルばね54による釣合い力を上回って,ダンパリング30をタービン側センタハウジング14又はタービン側センタハウジング14に取り付けられたサイドプレート49に衝突させようとしても,軸方向隙間52を満たしているオイルフィルムの緩衝・制振作用によって,スラスト力に安定して対抗することができる。したがって,シャフト4は,高速回転しているときでも,タービン側センタハウジング14に対して安定して支持される。なお,上記の実施例では,回転子16及び固定子17から成る交流機を発電機として説明したが,固定子17に電流を供給して交流機を電動機として用い,エンジンの排気ガスが充分利用できない場合等,コンプレッサの駆動による過給を電動機で行うようにしてもよい。
【0036】
【発明の効果】
この発明によるターボチャージャジェネレータは,上記のように構成されており,次のような効果を有する。即ち,この発明による発電・電動機を備えたターボチャージャは,上記のように構成されており,次のように作用する。即ち,この発電・電動機を備えたターボチャージャにおいては,重量が大きな回転子は軸受間に配置されており,シャフトは,ダンパリングとハウジングとの間に形成される径方向隙間に形成される制振用オイルフィルムによって,ラジアル方向に安定して支持される。更に,ばね手段によって開く方向に形成される軸方向隙間には潤滑油が供給され,供給された潤滑油によって,径方向隙間に形成される制振用オイルフィルムと同様,ダンパリングとハウジングとの間に制振用オイルフィルムが形成される。その結果,たとえ,回転子が永久磁石のような重量があるものであっても,シャフトは,ハウジングに対してスラスト方向にも安定して支持され,振れ回りを起こすことなく高速回転が可能となり,安定して発電機を駆動することができ,有効に排気ガスエネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による発電・電動機を備えたターボチャージャの一実施例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す発電・電動機を備えたターボチャージャの軸受構造を示す拡大断面図である。
【図3】従来のターボチャージャを示す断面図である。
【図4】図3に示すターボチャージャの軸受構造の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】従来の別のターボチャージャを示す断面図である。
【符号の説明】
1 発電・電動機を備えたターボチャージャ
2 タービン
3 コンプレッサ
4 シャフト
5 発電機
7 タービンブレード
10,11 アンギュラ玉軸受
12 タービンハウジング
13 コンプレッサハウジング
14 タービン側センタハウジング
15 コンプレッサ側センタハウジング
16 回転子
17 固定子
20 内輪
21 外輪
30 ダンパリング
34 外周面
36 第1油路
39 第2油路
44 内周面
45 オイル供給路
48 端面
49 サイドプレート
51 径方向隙間
52 軸方向隙間
54 コイルばね

Claims (5)

  1. ハウジング内に配設され且つ排ガスエネルギーで駆動されるタービン,前記ハウジング内に配設されたコンプレッサ,前記タービンと前記コンプレッサとを連結するシャフト,及び前記シャフト上に取り付けた発電・電動用の回転子と前記ハウジングに取り付けられた固定子とを有する発電機,及び前記シャフトを回転自在に支持するため前記回転子の軸方向両側の位置においてそれぞれ配置された軸受を具備し,前記各軸受は,前記ハウジングに対して前記各軸受に対応して個別に設けられ且つ前記ハウジングとの間に形成される径方向隙間に制振用オイルフィルムを形成するダンパリングを介して支持されており,前記ダンパリングは,前記ハウジングに設けられた規制部材によって軸方向移動が規制されていると共に前記ハウジングとの間に配設されたばね手段によって前記規制部材から離間する方向に付勢されており,前記ダンパリングには,潤滑油を前記軸受に供給するため前記径方向隙間から前記軸受に臨む開口に潤滑油を導く第1油路と,前記ダンパリングのリング端面と該リング端面に対向する前記規制部材の規制端面との間に形成される軸方向隙間に潤滑油を導く第2油路とが形成されていることから成る発電・電動機を備えたターボチャージャ。
  2. 前記第2油路は前記第1油路から前記シャフトの軸方向と平行な方向に分岐すると共に前記リング端面に開口していることから成る請求項1に記載の発電・電動機を備えたターボチャージャ。
  3. 前記軸受は,前記シャフトに圧入された内輪,前記ダンパリングに圧入された外輪,及び前記内輪と前記外輪との間に配置されたボールを備えていることから成る請求項1又は2に記載の発電・電動機を備えたターボチャージャ。
  4. 前記軸受はアンギュラ玉軸受であることから成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電・電動機を備えたターボチャージャ。
  5. 前記回転子は永久磁石であり,前記固定子はステータコイルであることから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電・電動機を備えたターボチャージャ。
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