JP3608019B2 - 車両のハンドル角速度検出装置及び姿勢制御装置 - Google Patents
車両のハンドル角速度検出装置及び姿勢制御装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のハンドル角速度を検出するハンドル角速度検出装置、及び同検出ハンドル角速度を用いてハンドルの回動操作に起因した車両の姿勢変化を抑制する車両の姿勢制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、この種のハンドル角速度検出装置としては、例えば特開平6−43177号公報に示されているように、ハンドルに連動する部分に組み付けられてハンドルの回動に応じてほぼ4分の1周期だけ位相のずれた第1及び第2のパルス列信号を出力する回転センサと、第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔を計測して、両計測した時間間隔に基づいてハンドル角速度を検出するようにしたものが知られている。また、この検出されたハンドル角速度に基づいて、同角速度が小さいときショックアブソーバの減衰力を小さく設定し、同角速度が大きいとき同減衰力を大きく設定して、ハンドルの回動操作に起因する車両の姿勢変化を抑制する車両の姿勢制御装置も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のハンドル角速度検出装置にあっては、第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔を計測しているために、ハンドル角速度の検出には少なくとも第1及び第2のパルス列信号のほぼ各半周期分のハンドルの回動を必要とし、ハンドルの回動開始時には、最大で第1及び第2のパルス列信号のほぼ4分の3周期分のハンドルの回動だけハンドル角速度の検出に遅れが生じるという問題がある。また、このハンドル角速度の検出遅れのために、同検出ハンドル角速度を用いた車両の姿勢制御装置にあっては、その制御に遅れが生じてハンドルの回動操作に起因した車両の姿勢変化を良好に抑制することができないという問題が生じる。
【0004】
【発明の概要】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、ハンドルの回動開始時にあっても、ハンドル角速度を短時間内に検出できる車両のハンドル角速度検出装置を提供するとともに、同短時間内に検出したハンドル角速度を用いてハンドルの回動操作に起因した車両の姿勢変化を良好に抑制できる車両の姿勢制御装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために本発明の第1の特徴(請求項1に対応)は、ハンドルに連動する部分に組み付けられてハンドルの回動に応じてほぼ4分の1周期だけ位相のずれた第1及び第2のパルス列信号を出力する回転センサと、第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔をそれぞれ計測する第1計測手段とを備え、第1計測手段により計測した時間間隔によりハンドル角速度を検出する車両のハンドル角速度検出装置において、第1のパルス列信号のエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号のエッジとの時間間隔を計測する第2計測手段を設け、ハンドルの回動開始時におけるハンドル角速度を第1計測手段により計測された時間間隔に代えて第2計測手段により計測された時間間隔に基づいて検出するようにしたことにある。
【0008】
これによれば、通常、ハンドル角速度は、第1計測手段によりそれぞれ計測された第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔により検出される。この計測された時間間隔は第1及び第2のパルス列信号のほぼ半周期分であるとともに、前記時間間隔の計測結果は第1及び第2のパルス列信号のほぼ4分の1周期毎に得られるので、ハンドルの連続的な回動中にあっては、ハンドル角速度が精度よく検出されるとともに、同検出されたハンドル角速度はハンドルの回動速度の変化にも良好に追従したものになる。そして、ハンドルの回動開始時には、第2計測手段により、第1のパルス列信号のエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号のエッジとの時間間隔によりハンドル角速度が検出されるので、ハンドルが、少なくとも第1及び第2のパルス列信号のほぼ4分の1周期、最大でも同各パルス列信号のほぼ半周期分だけ回動すれば、ハンドル角速度は必ず検出される。したがって、ハンドルの回動開始時におけるハンドル角速度の検出も遅滞なく行われる。
【0011】
また、本発明の第2の特徴(請求項2に対応)は、前記第1の特徴における第1計測手段により計測された時間間隔に基づいて車両の姿勢変化を抑制制御する姿勢変化抑制手段を備え、ハンドルの回動操作に起因した車両の姿勢変化を抑制するようにした車両の姿勢制御装置において、ハンドルの回動開始時には、姿勢変化抑制手段が前記第1の特徴における第2計測手段により計測された時間間隔を用いて車両の姿勢変化を抑制制御するようにしたことにある。
【0012】
これによれば、前記第1の特徴と同様な理由により、ハンドルの回動開始時における車両の姿勢変化が遅滞なく抑制される上に、第1計測手段による時間間隔は、前記第1の特徴のようにハンドルの連続回動中のハンドル角速度を精度よく表すので、同ハンドルの連続回動中における車両の姿勢変化も良好に抑制される。
【0013】
また、本発明の第3の特徴(請求項3に対応)は、前記姿勢変化抑制手段を、前記計測された時間間隔が所定値より長いときばね上部材のばね下部材に対する上下動に対して小さな減衰力を発生し、かつ前記計測された時間間隔が前記所定値より短いときばね上部材のばね下部材に対する上下動に対して大きな減衰力を発生する減衰力発生装置で構成したことにある。
【0014】
これによれば、前記車両の姿勢変化の抑制のうち、特に操舵ハンドルの回動に起因した車体のロールが抑制される。
【0015】
【実施の形態】
a.第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明すると、図1は、車両のハンドル角速度検出装置の概略図である。このハンドル角速度検出装置は、上端にてハンドル10に接続されて同ハンドル10の回動に応じて軸線回りに回動するステアリングシャフト11の中間部に組み付けられた回転センサ20を備えている。
【0016】
この回転センサ20は、ステアリングシャフト11に固定されて同シャフト11と一体的に回転する回転板21と、同回転板21の周縁部をそれぞれ挟む位置に設けた2組のフォトインタラプタ22,23とを備えている。回転板21の周縁部には、周方向に沿って等間隔で配置した同一形状のスリット21aが多数設けられており、同スリット21aの周方向幅と隣合うスリット21a,21aの両端部間距離とは等しく、それらの中心角は共にθ(例えば、4.5度)に設定されている。2組のフォトインタラプタ22,23は、各一つのスリット21aの周方向幅の半分の長さだけ回転板21の周方向に互いにずらして配置されており、ハンドル10の回動に応じてそれぞれほぼ4分の1周期(例えば、回転角に換算して2.25度)だけ位相のずれた矩形状の第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2を出力する。
【0017】
回転センサ20は、マイクロコンピュータ30の入力インターフェース31に接続されて、同インターフェース31に第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2を供給する。入力インターフェース31はバス32に接続され、同バス32には、前記入力インターフェース31と共にマイクロコンピュータ30を構成するCPU33、ROM34、RAM35及び出力インターフェース36が接続されている。CPU33は、内蔵のタイマによる短い所定時間(例えば、0.5ms)毎に図2,3のフローチャートに対応した角速度計算プログラムを繰り返し実行して、ハンドル10の角速度VSを検出して出力インターフェース36を介して出力する。ROM34は前記プログラムを記憶するものであり、RAM35は前記プログラムの実行に必要な変数を記憶するものである。出力インターフェース36は外部とのデータの授受を行うもので、ハンドル角速度VSを用いて車両の各種制御機器41,41・・・を制御するための各種電子制御回路42,42・・・に接続されている。
【0018】
次に、上記のように構成した第1実施形態の動作を説明する。イグニッションスイッチ(図示しない)の投入により、CPU33は図2,3の角速度計算プログラムを所定時間To毎に繰り返し実行し始める。このプログラムの実行は、ステップ100にて開始され、ステップ102にて前回の計測時間値Tに所定時間値To(例えば、0.5ms)を加算して、同加算結果を今回の計測時間値Tとして設定する。なお、この計測時間値Tは、図示しない初期設定処理によりイグニッションスイッチの投入直後には計測限界値Tmaxに設定されている。この計測限界値Tmaxは、ハンドル10がほぼ停止中であるために増加し続ける計測時間値Tの限界を示す大きな所定値であり、例えば1024msに設定されている。次に、ステップ104にて回転センサ20から第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2を入力して、各パルス列信号SS1,SS2の各信号レベルを第1及び第2のパルス信号レベルSS1N,SS2Nとしてそれぞれ設定する。この場合、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の各信号レベルがローレベルにあれば、各パルス信号レベルSS1N,SS2Nはそれぞれ”0”に設定される。また、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の各信号レベルがハイレベルにあれば、各パルス信号レベルSS1N,SS2Nは”1”にそれぞれ設定される。
【0019】
次に、ステップ106にて初期フラグIFが”1”であるか否かを判定する。この初期フラグIFも、図示しない初期設定処理によりイグニッションスイッチの投入直後には”1”に設定されている。したがって、最初、CPU33はステップ106にて「YES」と判定し、ステップ108にて初期フラグIFを”0”に変更し、ステップ110にてエッジ検出フラグSを”0”に設定し、ステップ128にて第1及び第2の前回パルス信号レベルSS1O,SS2Oを各パルス信号レベルSS1N,SS2Nにそれぞれ更新する。
【0020】
なお、初期フラグIFは”1”によりイグニッションスイッチの投入直後のプログラムの実行であることを表し、それ以降は前記ステップ106,108の処理により設定された”0”に保たれるものである。また、エッジ検出フラグSは、”1”により第1のパルス列信号SS1の立ち上がりエッジ(リーディングエッジ)又は立ち下がりエッジ(トレイリングエッジ)のいずれかが検出されたことを表し、”2”により第2のパルス列信号SS2の立ち上がり又は立ち下がりエッジのいずれかが検出されたことを表し、”0”により両パルス列信号SS1,SS2の立ち上がりエッジも立ち下がりエッジも検出されないことを表す。また、第1及び第2の前回パルス信号レベルSS1O,SS2Oは、このプログラムが前回実行されたときの第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のレベルを表している。
【0021】
前記ステップ128の処理後、プログラムを図3のステップ200に進める。ステップ200においては、前記”0”に設定されたエッジ検出フラグSに基づいて「YES」と判定し、プログラムをステップ202に進める。ステップ202においては、計測時間値Tが計測限界値Tmaxより大きいか否かを判定する。この場合、計測時間値Tは、前記のような初期設定及びステップ102の処理により、計測限界値Tmaxに所定時間値Toを加算した値に設定されているので、同ステップ202においては、「YES」と判定してプログラムをステップ204に進める。ステップ204においては、計測時間値Tを計測限界値Tmaxに設定し、前回エッジ検出フラグSS、前回エッジ種類フラグEE、初回演算フラグF、方向値Kをそれぞれ”0”に設定するとともに、ハンドル角速度VSを「0」に設定する。
【0022】
前回エッジ検出フラグSS及び前回エッジ種類フラグEEは、それぞれエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEの前回のプログラム実行時の値を表すものである。なお、エッジ種類フラグEは、”1”により第1及び第2のパルス列信号の立ち上がりエッジを表し、”2”により前記各パルス列信号の立ち下がりエッジを表す。初回演算フラグFは、”0”によりハンドル10の回動開始時のハンドル角速度VSの最初の演算時であることを表し、”1”によりハンドル角速度VSの2回目以降の演算時であることを表す。方向値Kは、”0”によりハンドル10の非回動状態を表し、”1”によりハンドル10の右方向の回動状態を表し、”−1”によりハンドル10の左方向の回動状態を表す。
【0023】
前記ステップ204の処理後、CPU33は、ステップ206にてハンドル角速度VS及び方向値Kを出力インターフェース回路36を介して、各種電子制御回路42,42・・・へ出力する。この場合、ハンドル角速度VSは「0」であり、方向値Kも”0”である。そして、ステップ264にてこのプログラムの実行を終了する。
【0024】
その後、所定時間値Toに対応した時間が経過すると、CPU33は角速度プログラムの実行を図2のステップ100にて再び開始し、前述したステップ102,104の処理後、ステップ106にて初期フラグIFが”1”であるか否かを判定する。初期フラグIFは前回のプログラムの実行時におけるステップ108の処理により”0”に設定されているので、同ステップ106においては「NO」と判定し、プログラムをステップ110〜126からなるエッジ検出ルーチンへ進める。このエッジ検出ルーチンは、ステップ104の処理により今回設定されたパルス信号レベルSS1N,SS2Nと、ステップ128の処理により設定された前回パルス信号レベルSS1O,SS2Oとをそれぞれ比較することにより、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の各エッジを検出するものである。
【0025】
すなわち、第1のパルス列信号SS1がローレベルからハイレベルに立ち上がったとき(図4の時刻t1,t5,t9,t12)には、ステップ112にて「YES」と判定して、ステップ114にてエッジ検出フラグSを”1”に設定するとともにエッジ種類フラグEを”1”に設定する。第1のパルス列信号SS1がハイレベルからローレベルに立ち下がったとき(図4の時刻t3,t7,t10,t14)には、ステップ116にて「YES」と判定して、ステップ118にてエッジ検出フラグSを”1”に設定するとともにエッジ種類フラグEを”2”に設定する。第2のパルス列信号SS2がローレベルからハイレベルに立ち上がったとき(図4の時刻t2,t6,t11,t15)には、ステップ120にて「YES」と判定して、ステップ122にてエッジ検出フラグSを”2”に設定するとともにエッジ種類フラグEを”1”に設定する。第2のパルス列信号SS2がハイレベルからローレベルに立ち下がったとき(図4の時刻t4,t8,t13)には、ステップ124にて「YES」と判定して、ステップ126にてエッジ検出フラグSを”2”に設定するとともにエッジ種類フラグEを”2”に設定する。第1及び第2のパルス信号列SS1,SS2の各エッジのいずれも検出されないとき(図4の各時刻t1〜t15の各間)には、ステップ112,116,120,124の全てにて「NO」と判定して、ステップ110にてエッジ検出フラグSを”0”に設定する。これらのステップ110〜126からなるエッジ検出ルーチンの処理後には、ステップ128にて、次回のエッジ検出のために第1及び第2の前回パルス信号レベルSS1O,SS2Oを第1及び第2のパルス信号レベルSS1N,SS2Nにそれぞれ更新して、プログラムを図3のステップ200以降に進める。
【0026】
前述のように、イグニッションスイッチの投入直後であって、ハンドル10が回動開始されない状態では、プログラムの実行毎に、前記エッジ検出ルーチンにてエッジ検出フラグSは”0”に設定されるとともに、時間計測値Tはステップ102,204の処理により計測限界値Tmaxに所定時間値Toを加算した値Tmax+Toに設定されるので、ステップ200,202にて共に「NO」と判定して、ステップ200〜206の処理を実行して、ステップ264にてプログラムの実行を終了する。
【0027】
一方、ハンドル10が回動開始されて、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のいずれかの立ち上がり又は立ち下がりエッジが初めて検出されると、エッジ検出フラグSは前記エッジ検出ルーチンの処理により”1”又は”2”に設定されるので、ステップ200にて「NO」と判定してプログラムをステップ208に進めて前回エッジ検出フラグSSが”0”であるか否かを判定する。この場合、前回エッジ検出フラグSSは前記ステップ204の処理により”0”に保たれているので、ステップ208にて「YES」と判定してプログラムをステップ210,212に進める。ステップ210においては前回エッジ検出フラグSS及び前回エッジ種類フラグEEを今回のエッジ検出ルーチンにて設定されたエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEの各値にそれぞれ更新し、ステップ212にて時間計測値Tを「0」にクリアして、ステップ264にてプログラムの実行を終了する。
【0028】
そして、前記エッジ検出後、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2がそれぞれハイレベル又はローレベルに保たれていてエッジ検出フラグSが前記エッジ検出ルーチンにて”0”に設定され続ければ、ステップ200にて「YES」と判定してプログラムをステップ202に進める。この場合、計測時間値Tは前記ステップ212の処理により「0」にクリアされたので、前記ステップ102の処理により時間計測値Tに所定時間値Toが加算されても、しばらくの間は時間計測値Tは計測限界値Tmax未満に保たれる。したがって、ステップ202にて「NO」と判定して、ステップ264にてプログラムの実行を終了する。そして、このような状態では、時間計測値Tは前記ステップ102の処理により所定時間値Toずつ増加する。
【0029】
この増加中、ハンドル10の回動が停止し、又は非常に遅くて、時間計測値Tが計測限界値Tmax以上になると、ステップ202にて「YES」と判定して、前述したステップ204,206の処理後、ステップ264にてプログラムの実行を終了する。したがって、この場合には、前記エッジ検出ルーチンにて第1又は第2のパルス列信号SS1,SS2の新たなエッジが検出されても、ステップ208の判定処理によりプログラムはステップ210,212にふたたび進められて、時間計測値Tはふたたび「0」にクリアされる。
【0030】
一方、前記時間計測値Tが「0」から増加中であって計測限界値Tmaxに達する前に、前記エッジ検出ルーチンにより第1又は第2のパルス列信号SS1,SS2の新たなエッジが検出されると、前記ステップ200,208にて共に「NO」と判定して、プログラムをステップ214以降に進める。ステップ214においては、エッジ検出フラグSが”1”であるか”2”であるか、すなわち今回検出されたエッジが第1のパルス列信号SS1のものであるか第2のパルス列信号SS2のものであるかを判定する。今回検出されたエッジが第1のパルス列信号SS1のものであれば、ステップ214にて「YES」と判定してプログラムをステップ216に進める。また、今回検出されたエッジが第2のパルス列信号SS2のものであれば、ステップ214にて「NO」と判定してプログラムをステップ218に進める。
【0031】
ステップ216,218においては、前回エッジ検出フラグSSが”2”であるか否か、及び前回エッジ検出フラグSSが”1”であるか否かをそれそれ判定する。ハンドル10が左又は右の一方向に回転していれば、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2に関するエッジは交互に現れる。したがって、ハンドル10が一方向に回動中であれば、前記ステップ216,218にてそれぞれ「YES」と判定して、プログラムをステップ220,234以降にそれぞれ進める。
【0032】
ここで、回転センサ20から出力される第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2とハンドル10の回動方向との関係を説明しておく。ハンドル10が右方向に回動された場合には、図4に示すように、第1のパルス列信号SS1の位相が第2パルス列信号の位相よりほぼ4分の1周期だけ進む。また、ハンドル10が左方向に回動された場合には、第1のパルス列信号SS1の位相が第2パルス列信号の位相よりほぼ4分の1周期だけ遅れる。
【0033】
最初に、ハンドル10が右方向に回動されている場合について説明する。いま、第1のパルス列信号SS1の立ち上がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t5,t9)、前回のエッジは第2のパルス列信号SS2の立ち下がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t4,t8)、今回のエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEは共に”1”であり、前回エッジ検出フラグSS及びエッジ種類フラグEEは共に”2”である。したがって、ステップ214,216における共に「YES」との判定のもとに、ステップ220にて「YES」、ステップ222にて「NO」と判定して、ステップ226にて方向値Kを右方向を表す”1”に設定する。
【0034】
また、第1のパルス列信号SS1の立ち下がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t3,t7)、前回のエッジは第2のパルス列信号SS2の立ち上がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t2,t6)、今回のエッジ検出フラグSは”1”であり、エッジ種類フラグEは”2”であり、前回エッジ検出フラグSSは”2”であり、前回エッジ種類フラグEEは”1”である。したがって、ステップ214及びステップ216における共に「YES」との判定のもとに、ステップ220にて「NO」、ステップ228にて「YES」と判定して、ステップ230にて方向値Kを右方向を表す”1”に設定する。
【0035】
また、第2のパルス列信号SS2の立ち上がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t2,t6)、前回のエッジは第1のパルス列信号SS1の立ち上がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t1,t5)、今回のエッジ検出フラグSは”2”であり、エッジ種類フラグEは”1”であり、前回エッジ検出フラグSS及び前回エッジ種類フラグEEは共に”1”である。したがって、ステップ214における「NO」及びステップ218における共に「YES」との判定のもとに、ステップ234にて「YES」、ステップ236にて「YES」と判定して、ステップ238にて方向値Kを右方向を表す”1”に設定する。
【0036】
また、第2のパルス列信号SS2の立ち下がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t4,t8)、前回のエッジは第1のパルス列信号SS1の立ち下がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t3,t7)、今回のエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEは共に”2”であり、前回エッジ検出フラグSSは”1”であり、前回エッジ種類フラグEEは”2”である。したがって、ステップ214における「NO」及びステップ218における「YES」との判定のもとに、ステップ234にて「NO」、ステップ242にて「NO」と判定して、ステップ246にて方向値Kを右方向を表す”1”に設定する。
【0037】
次に、ハンドル10が左方向に回動されている場合について説明する。いま、第1のパルス列信号SS1の立ち上がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t12)、前回のエッジは第2のパルス列信号SS2の立ち上がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t11)、今回のエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEは共に”1”であり、前回エッジ検出フラグSSは”2”であり、前回エッジ種類フラグEEは”1”である。したがって、ステップ214,216における共に「YES」との判定のもとに、ステップ220にて「YES」、ステップ222にて「YES」と判定して、ステップ224にて方向値Kを左方向を表す”−1”に設定する。
【0038】
また、第1のパルス列信号SS1の立ち下がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t14)、前回のエッジは第2のパルス列信号SS2の立ち下がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t13)、今回のエッジ検出フラグSは”1”であり、エッジ種類フラグEは”2”であり、前回エッジ検出フラグSS及び前回エッジ種類フラグEEはともに”2”である。したがって、ステップ214及びステップ216における共に「YES」との判定のもとに、ステップ220にて「NO」、ステップ228にて「NO」と判定して、ステップ232にて方向値Kを左方向を表す”−1”に設定する。
【0039】
また、第2のパルス列信号SS2の立ち上がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t11,t15)、前回のエッジは第1のパルス列信号SS1の立ち下がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t10,t14)、今回のエッジ検出フラグSは”2”であり、エッジ種類フラグEは”1”であり、前回エッジ検出フラグSSは”1”であり、前回エッジ種類フラグEEは”2”である。したがって、ステップ214における「NO」及びステップ218における「YES」との判定のもとに、ステップ234にて「YES」、ステップ236にて「NO」と判定して、ステップ240にて方向値Kを左方向を表す”−1”に設定する。
【0040】
また、第2のパルス列信号SS2の立ち下がりエッジが検出されたとすると(図4の時刻t13)、前回のエッジは第1のパルス列信号SS1の立ち上がりエッジであるはずであるから(図4の時刻t12)、今回のエッジ検出フラグS及びエッジ種類フラグEは共に”2”であり、前回エッジ検出フラグSS及び前回エッジ種類フラグEEは共に”1”である。したがって、ステップ214における「NO」及びステップ218における「YES」との判定のもとに、ステップ234にて「NO」、ステップ242にて「YES」と判定して、ステップ244にて方向値Kを左方向を表す”−1”に設定する。
【0041】
前記ステップ214〜246の処理後、ステップ248にて初回演算フラグFが”0”であるか否かを判定する。ハンドル10の回動開始直後にあっては、初回演算フラグFは前記ステップ204の処理により”0”に設定されているので、前記ステップ248における「YES」との判定のもとにプログラムをステップ250に進める。ステップ250においては、スリット21a及びスリット21a,21aの両端部間の中心角θの半分を計測時間値Tで除算することによりハンドル角速度VSを計算する。この場合、計測時間値Tは、ハンドル10の回動開始直後の第1のパルス列信号SS1の立ち上がり又は立ち下がりエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号SS2の立ち上がり又は立ち下がりエッジとの時間間隔(図4の時刻t1と時刻t2との時間間隔)を表しているので、ハンドル10の回動開始直後における第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期におけるハンドル角速度がVSとして検出されることになる。前記ステップ250の処理後、ステップ252にて初期演算フラグFを”1”に変更してプログラムをステップ258に進める。
【0042】
ステップ258においては、前記検出したハンドル角速度VS及び方向値Kを出力インターフェース36を介して各種電子制御回路42,42・・・に出力する。このステップ258の処理後、次の第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のエッジ検出及びハンドル角速度VSの検出のために、前回エッジ検出フラグSS、前回エッジ種類フラグEE及び第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のエッジ間の前回の計測時間値を表す前回計測時間値TTを、今回のエッジ検出フラグS、エッジ種類フラグE及び計測時間値Tに更新する。そして、ステップ262にて第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のエッジ間の次回の時間間隔の計測のために計測時間値Tを「0」にクリアして、ステップ264にてこのプログラムの実行を終了する。
【0043】
また、前述のようにハンドル10の回動開始直後の最初のハンドル角速度VSの検出後には、初回演算フラグFが前記ステップ252の処理により”1”に設定されているので、前記ステップ214〜246の方向検出処理後のステップ248にて「NO」と判定してプログラムをステップ254,256に進める。ステップ254においては、前回時間計測値TTに今回の時間計測値Tを加算して、同加算値T+TTを変数T2として設定する。ステップ256においては、前記中心角θを変数T2で除算する。そして、前記と同様なステップ258〜262の処理後、ステップ264にてこのプログラムの実行を終了する。これにより、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の立ち上がり及び立ち下がりエッジ毎に、第1のパルス列信号SS1の各隣合うエッジ間の時間間隔及び第2のパルス列信号SS2の各隣合うエッジ間の時間間隔が変数T2として計測され、すなわち両パルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期毎に両パルス列信号SS1,SS2のほぼ各半周期間の時間間隔が計測される。そして、これらの半周期間のハンドル角速度VSが前記ほぼ4分の1周期毎に検出されて出力されることになる。
【0044】
一方、このようなハンドル10の左右方向への回動が停止すれば、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のエッジが検出されないので、ステップ200における「NO」の判定のもとにプログラムの実行毎に計測時間値Tは徐々に大きくなり、計測限界値Tmaxに達する。このときには、ステップ202における「YES」との判定のもとに、前述したステップ204,206の処理によりハンドル10の回動が停止したものとして検出されて、「0」を表すハンドル角速度VSが出力される。そして、ハンドル10がふたたび回動され始めれば、前述した処理により、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のいずれか2つのエッジが検出された時点でハンドル角速度VSが検出される。
【0045】
また、ハンドル10の左右方向への回動が反転されると、回転センサ20は、第2のパルス列信号SS2(又は第1のパルス列信号SS1)がローレベル又はハイレベルに維持された状態で、ローレベルからハイレベルに又はハイレベルからローレベルに変化する第1のパルス列信号SS1(又は第2のパルス列信号SS2)を出力する(図4の時刻t9,t10)。すなわち、一方のパルス列信号のエッジが検出されない状態で、他方のパルス列信号の立ち上がり及び立ち下がりの両エッジが連続して検出されることになる。この場合、エッジ検出フラグS及び前回エッジ検出フラグが”1”又は”2”の同一値となるので、CPU33は、ステップ214の「YES」との判定後にステップ216にて「NO」と判定するか、ステップ214の「NO」との判定後にステップ218にて「NO」と判定してプログラムをステップ204,206に進める。したがって、このようにハンドル10が反転操作された場合にも、ハンドル10の回動停止の場合と同様に新たにハンドル角速度VSの検出が行われることになる。
【0046】
上記作動説明からも理解できるとおり、上記第1実施形態によれば、ハンドル角速度VS及びハンドル10の回動方向(方向値K)は、ハンドル10の回動中に、第1及び第2の両パルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期毎に、両パルス列信号SS1,SS2のほぼ各半周期間の時間間隔に基づいて検出されるので、ハンドル角速度が精度よく検出されるとともに、同検出されたハンドル角速度はハンドルの回動速度の変化にも良好に追従したものになる。また、ハンドル10の回動開始直後及びハンドル10の反転直後には、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の各エッジのうちの2つ時間間隔の計測に基づいてハンドル角速度VSが検出されるので、ハンドル10が、少なくとも第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期、最大でも同各パルス列信号SS1,SS2のほぼ半周期分だけ回動すれば、ハンドル角速度VSは必ず検出される。したがって、ハンドル10の回動開始時又は反転時におけるハンドル角速度VSの検出が遅滞なく行われる。
【0047】
b.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について図面を用いて説明する。図5は、第1実施形態にて検出されたハンドル角速度を用いて、ハンドル10の回動操作に起因した車両の姿勢変化を抑制制御するようにした本発明の第2実施形態に係る車両の姿勢制御装置を概略図により示している。本第2実施形態では、車両の姿勢を抑制制御する装置として車両のサスペンション装置50内に設けられたショックアブソーバを採用し、同ショックアブソーバを電気制御装置60により制御するようになっている。
【0048】
ショックアブソーバは、車体(ばね上部材)51と、内側端にて車体51に接続されて外側端にて車輪(ばね下部材)52を支持するロアアーム(ばね下部材)53との間に並列的に配置されたスプリング54及び減衰力発生装置としてのダンパ55を備えている。スプリング54は、車体51をロアアーム53に対して弾性的に支持するものである。ダンパ55は、その伸縮により車輪52及びロアアーム53に対する車体51の上下相対速度に比例した減衰力を発生して、車輪52及びロアアーム53に対する車体51の上下動を抑制するための減衰力を発生するものである。このダンパ55は開度を可変に構成したオリフィス55a及び同オリフィス55aの開度を変更するための電気アクチュエータ55bを内蔵しており、減衰力が前記開度に応じてソフト又はハードに変更可能に構成されている。なお、このショックアブソーバは車両の各車輪52毎に設けられている。
【0049】
電気制御装置60は、上記第1実施形態と同じ回転センサ20及びマイクロコンピュータ30を備えている。ただし、マイクロコンピュータ30は、内蔵のタイマの作動のもとに、図2,3の一部を変形した角速度計算プログラムを上記第実施形態と同じ所定の短時間毎に繰り返し実行するとともに、図7の減衰力制御プログラムを角速度計算プログラムよりも長い所定の短時間毎に繰り返し実行する。図6は、上記第1実施形態の角速度計算プログラムの変形部分であるステップ248〜262の部分を示すフローチャートであり、本第2実施形態に係る角速度計算プログラムの他の部分に関しては、図3のステップ204のハンドル角速度VSがVS1に変更される点、及び図3のステップ206の処理が削除されている点を除けば上記第1実施形態の場合と同じである。マイクロコンピュータ30には、電気アクチュエータ55bを制御するための駆動回路61が接続されている。
【0050】
次に、上記のように構成した第2実施形態の動作を説明する。イグニッションスイッチの投入に応答して、マイクロコンピュータ30が角速度計算プログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行する点に関しては上記第1実施形態と同じであり、同プログラムの実行によりハンドル角速度及びハンドルの回動方向が検出される。ただし、この検出動作においては、図6に示すように、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期の時間間隔Tに基づいて検出されるハンドル角速度は第1ハンドル角速度VS1として設定されるとともに、この第1ハンドル角速度VS1はハンドル10の回動開始直後の1回だけでなく(ステップ250a)、その後も検出される(ステップ270)。また、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のほぼ各2分の1周期の時間間隔T2に基づいて検出されるハンドル角速度は第2ハンドル角速度VS2として設定される(ステップ256a)。そして、これらの第1及び第2ハンドル角速度VS1,VS2はマイクロコンピュータ30から外部へ出力されない。
【0051】
また、マイクロコンピュータ30は、前記角速度計算プログラムに並行して、図7の減衰力制御プログラムも所定の短時間毎に繰り返し実行する。この減衰力制御プログラムは、図7のステップ300にて開始され、ステップ302にてタイマカウント値TMにこのプログラムの実行周期に等しい時間に対応した所定時間値TM0を加算してプログラムをステップ304,306に進める。なお、タイマカウント値TMは、イグニッションスイッチの投入時に図示しない初期設定処理により「0」に初期設定されている。
【0052】
ステップ304の処理は第2フラグF2が”1”であるか否かを判定するものであり、ステップ306の処理は第1フラグF1が”1”であるか否かを判定するものである。なお、第1フラグF1は、”1”により、検出された第1ハンドル角速度VS1に基づいてダンパ55の減衰力がハード側に設定されている状態を表し、かつ”0”によりそれ以外の状態を表すもので、前記初期設定処理により最初”0”に設定されている。第2フラグF2は、”1”により、検出された第2ハンドル角速度VS2に基づいてダンパ55の減衰力がハード側に設定されている状態を表し、”0”によりそれ以外の状態を表すもので、前記初期設定処理により最初”0”に設定されている。
【0053】
したがって、イグニッションスイッチの投入直後には、ステップ304,306にて共に「NO」と判定して、プログラムをステップ308に進める。ステップ308においては、第1ハンドル角速度VS1が予め決められた第1基準角速度V01以上であるか否かを判定する。ハンドル10がほぼ回動停止状態にあり、第1ハンドル角速度VS1が第1基準角速度V01未満であれば、ステップ308にて「NO」と判定して、ステップ338にてこの減衰力制御プログラムの実行を終了する。この場合、前記図示しない初期設定処理により、ダンパ55の減衰力はソフト状態に設定されている。
【0054】
一方、ハンドル10が回動されて車両が旋回を開始し始めて第1ハンドル角速度VS1が第1基準角速度V01以上になると、ステップ308にて「YES」と判定してプログラムをステップ310,312に進める。ステップ310においては、駆動回路61を介して電気アクチュエータ55bに制御信号を出力してオリフィス55aの開度を小さい側に切り換えて、ダンパ55をハード状態に設定する。前記ステップ310の処理後、ステップ312にて第1フラグF1を”1”に設定し、タイマカウント値TMを「0」に設定し、かつ保持時間値HTMを予め決められた所定値HTM0に設定して、ステップ338にてこの減衰力制御プログラムの実行を終了する。
【0055】
その後、マイクロコンピュータ30は減衰力プログラムを前記短時間毎に繰り返し実行し、ステップ302の処理によりタイマカウント値TMを所定時間値TM0ずつ増加させながら、304にて「NO」と判定するとともに、ステップ306にて「YES」と判定してプログラムをステップ314に進める。ステップ314においては、タイマカウント値TMが前記ステップ312の処理により設定した保持時間値HTM以上であるか否かを判定する。そして、タイマカウント値TMが保持時間値HTMに達するまで、ステップ300〜306,314,338の処理を実行し続ける。これにより、ダンパ55の減衰力は、少なくとも保持時間値HTMに対応した時間だけハード状態に維持される。
【0056】
タイマカウント値TMが保持時間値HTMに達すると、ステップ314にて「YES」と判定してプログラムをステップ316に進める。ステップ316においては、第1フラグF1を”0”に戻し、ステップ318にて第2ハンドル角速度VS2が予め決められた第2基準角速度V02以上であるか否かを判定する。なお、保持時間値HTMは第2ハンドル角速度VS2を検出するのに充分な時間に設定されているので、第2ハンドル角速度VS2は前述の角速度計算プログラムによって既に計算されている。
【0057】
いま、ハンドル10が小さく回動されただけで、図8の(A)(B)に示すように、第1ハンドル角速度VS1は第1基準角速度V01以上になったものの、前記保持時間値HTMを経過した後の第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02未満であれば、ステップ318にて「NO」と判定してプログラムをステップ320に進める。ステップ320においては、駆動回路61を介して電気アクチュエータ55bを制御し、ダンパ55をソフト状態に切り換える。その結果、この場合には、図8の(C)に示すように、ハンドル10の回動開始直後にダンパ55が所定値HTM0に対応した短時間だけハード状態に設定されて、同回動開始直後における車体51の車輪52及びロアアーム53に対する上下動を抑制する。
【0058】
一方、ハンドル10がある程度大きく回動されて、図9の(A)(B)に示すように、前記保持時間値HTMを経過した後の第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02以上であれは、ステップ318にて「YES」と判定して、ダンパ55をハード状態に維持したままプログラムをステップ322に進める。ステップ322においては、保持時間値HTMを第2ハンドル角速度VS2が大きくなるにしたがって大きな値に設定する。なお、この場合に設定される保持時間値HTMは、前記所定値HTM0より大きな値である。前記ステップ322の処理後、ステップ324にて第2フラグF2を”1”に設定するとともにタイマカウント値TMを「0」にクリアして、ステップ338にてこの減衰力制御プログラムの実行を終了する。したがって、この場合には、ダンパ55はひきつづきハード状態に設定され続ける。
【0059】
そして、次の減衰力制御プログラムの実行時には、ステップ302の処理後のステップ304にて「YES」と判定し、プログラムをステップ326に進める。ステップ326においては、前記ステップ318の判定処理と同様に、第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02以上であるか否かを判定する。そして、第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02以上である限り、ステップ326における「YES」との判定のもとに、前記ステップ322の処理と同様なステップ328の処理により、保持時間値HTMを第2ハンドル角速度VS2に応じた値に更新し続ける。そして、ステップ330にてタイマカウント値TMを「0」にクリアして、ステップ338にてこの減衰力制御プログラムの実行を終了する。
【0060】
そして、第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02未満になった時点で、ステップ326における「NO」と判定してプログラムをステップ332に進める。ステップ332においては、タイマカウント値TMが前記ステップ328の処理により最後に更新した保持時間値HTM以上であるか否かを判定する。そして、タイマカウント値TMが保持時間値HTMに達するまで、ステップ300〜304,326,332,338の処理を実行し続ける。これにより、ダンパ55の減衰力は、第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度VO2未満になってても、タイマカウント値TMが前記ステップ328の処理により最後に更新した保持時間値HTMに達するまで、ダンパ55はハード状態に維持され続ける。
【0061】
そして、タイマカウント値TMが保持時間値HTMに達すると、ステップ332にて「YES」と判定してプログラムをステップ334に進める。ステップ334においては、駆動回路61を介して電気アクチュエータ55bを制御し、ダンパ55をソフト状態に切り換える。その結果、この場合には、図9の(C)に示すように、第2ハンドル角速度VS2が第2基準角速度V02未満になった後、前記ステップ328の処理により最後に更新された保持時間値HTMに対応した時間だけハード状態に設定され続けて、ハンドル10の大きな回動時における車体51の車輪52及びロアアーム53に対する上下動を抑制する。
【0062】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、ハンドル10の回動開始直後には、回転センサ30からの第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2の各エッジのうちの隣合う2つのエッジの時間間隔の計測に基づいて検出された第1ハンドル角速度VS1に応じてダンパ55の減衰力が制御されるので、ハンドル10が、少なくとも第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期、最大でも同各パルス列信号SS1,SS2のほぼ半周期分だけ回動すれば、ハンドル10の角速度に応じてダンパ55の減衰力が制御されるようになる。したがって、ハンドル10の回動操作に起因した車両の姿勢変化が、同ハンドル10の回動開始直後から抑制制御され、同車両の姿勢変化、特に車両旋回初期の車体のロールがハンドル10の回動操作に対して高い応答性で制御されるようになる。
【0063】
また、前記第1ハンドル角速度VS1によるダンパ55の減衰力の制御後には、第2ハンドル角速度VS2に応じてダンパ55の減衰力が制御される。この第2ハンドル角速度VS2は、第1及び第2の両パルス列信号SS1,SS2のほぼ4分の1周期毎に、両パルス列信号SS1,SS2のほぼ各半周期間の時間間隔に基づいて検出されるものであって、ハンドル10の角速度を高精度で表すものである。したがって、ハンドル10が連続的に回動される大操舵時には、ダンパ55の減衰力が高精度で制御されて、車両の姿勢変化、特に車両旋回時の車体のロールが良好に抑制される。
【0064】
c.変形例
上記第1及び第2実施形態においては、回転センサ20の回転板21をステアリングシャフト11側に設けるようにしたが、フォトインタラプタ22,23をステアリングシャフト11側に設けるとともに、回転板21を環状に形成して同シャフト11の外周上に設けてフォトインタラプタ22,23からハンドル10の回動に伴う第1及び第2パルス列信号SS1,SS2を出力させるようにしてもよい。また、フォトインタラプト22,23に代えて、回転板21の回転を磁気的に検出するようにした回転センサを用いてもよい。
【0065】
また、上記第1及び第2実施形態においては、第1及び第2のパルス列信号SS1,SS2のエッジの時間間隔を時間計測値T,T2として計測した後に、ハンドル角速度VS,VS1,VS2を計算して出力し又は同計算した値を利用するようにした。しかし、回転板21に設けたスリット21aの間隔は固定されていて、ハンドル角速度VS,VS1,VS2は時間計測値T,T2により一義的に定まるものであるので、この時間計測値T,T2自体をハンドル10の角速度を表す値として利用できる。ただし、このようにした場合には、ハンドル10の角速度は時間計測値T,T2に反比例するので、第2実施形態の図7の減衰力制御プログラムにおいては、ステップ308,318,326の処理を時間計測値T,T2が各所定値未満になったことを判定する処理とし、同各時間計測値T,T2がそれぞれ各所定値未満になったときダンパ55の減衰力をハードに切り換えるようにする必要がある。
【0066】
また、上記第1実施形態において、プログラムの簡単化のためにハンドル10の回動開始直後とその後のハンドル角速度の計測の切り換えをやめて、第1のパルス列信号SS1のエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号SS2のエッジとの時間間隔の計測を、ハンドル10の回動開始直後だけでなく常に行うようにしてもよい。また、上記第2実施形態においても、前記計測した時間間隔に基づいてダンパ55の減衰力を常に制御するようにしてもよい。
【0067】
上記第2実施形態においては、ハンドル10の回動操作に起因した車両の姿勢変化を抑制するために、ダンパ55の減衰力を切り換え制御するようにしたが、この車両の姿勢変化を抑制するためには、後輪をハンドル10の角速度に応じて操舵制御したり、各輪の接地加重をハンドル10の角速度に応じて変更制御したりするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両のハンドル角速度検出装置の概略図である。
【図2】図1のマイクロコンピュータにより実行される角速度計算プログラムの前半部分のフローチャートである。
【図3】同プログラムの後半部分のフローチャートである。
【図4】回転センサから出力される第1及び第2パルス列信号のタイムチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両の姿勢制御装置の概略図である。
【図6】図5のマイクロコンピュータにより実行される角速度計算プログラムの一部を示すフローチャートである。
【図7】図5のマイクロコンピュータにより実行される減衰力制御プログラムの一部を示すフローチャートである。
【図8】小操舵時のハンドル角速度と減衰力の関係を示すタイムチャートである。
【図9】大操舵時のハンドル角速度と減衰力の関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10…ハンドル、20…回転センサ、30…マイクロコンピュータ、50…サスペンション装置、51…車体、52…車輪、53…ロアアーム、54…スプリング、55…ダンパ、55a…オリフィス、55b…電気アクチュエータ。
Claims (3)
- ハンドルに連動する部分に組み付けられてハンドルの回動に応じてほぼ4分の1周期だけ位相のずれた第1及び第2のパルス列信号を出力する回転センサと、
前記第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔をそれぞれ計測する第1計測手段とを備え、
前記第1計測手段により計測された時間間隔によりハンドル角速度を検出するようにした車両のハンドル角速度検出装置において、
前記第1のパルス列信号のエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号のエッジとの時間間隔を計測する第2計測手段を設け、
ハンドルの回動開始時におけるハンドル角速度を前記第1計測手段により計測された時間間隔に代えて前記第2計測手段により計測された時間間隔により検出するようにしたことを特徴とする車両のハンドル角速度検出装置。 - ハンドルに連動する部分に組み付けられてハンドルの回動に応じてほぼ4分の1周期だけ位相のずれた第1及び第2のパルス列信号を出力する回転センサと、
前記第1のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔及び第2のパルス列信号の各隣合うエッジの時間間隔をそれぞれ計測する第1計測手段と、
前記第1計測手段により計測された時間間隔に基づいて車両の姿勢変化を抑制制御する姿勢変化抑制手段とを備え、
ハンドルの回動操作に起因した車両の姿勢変化を抑制するようにした車両の姿勢制御装置において、
前記第1のパルス列信号のエッジと、同エッジと隣合う第2のパルス列信号のエッジとの時間間隔を計測する第2計測手段を設け、
前記姿勢変化抑制手段はハンドルの回動開始時に前記第1計測手段により計測された時間間隔に代えて前記第2計測手段により計測された時間間隔を用いて前記車両の姿勢変化を抑制制御するようにしたことを特徴とする車両の姿勢制御装置。 - 前記請求項2に記載の姿勢変化抑制手段を、
前記計測された時間間隔が所定値より長いときばね上部材のばね下部材に対する上下動に対して小さな減衰力を発生し、かつ前記計測された時間間隔が前記所定値より短いときばね上部材のばね下部材に対する上下動に対して大きな減衰力を発生する減衰力発生装置で構成したことを特徴とする車両の姿勢制御装置。
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