JP3607327B2 - 単一微生物細胞の迅速検出法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は食品、製薬、化粧品、電子工業等の分野で使用する水、原料、中間体あるいは製品等の中に存在する生菌数およびその種類を主として濾過膜上で迅速、簡便かつ精度高く測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品、製薬、化粧品、電子工業等の分野では使用する水、原料、中間体あるいは製品中の微生物管理は極めて重要である。これらの工業分野において極めて少量の微生物で汚染されている検体から微生物を検出するためには、濾過膜(以下、MFと略す)等を用いて微生物を濾過濃縮し、それを栄養寒天培地に置いて培養し、生成するコロニーを測定する方法が一般的に用いられている。しかしこの方法では培養が必要なため、検出に長時間を要する欠点がある。これを補うべく種々の迅速検出法が考案されており例えば「食品微生物検査の簡易化、自動化、迅速化」(春田三佐夫他、サイエンスフォーラム(1985))に詳細が記載されている。しかしながら、それらの方法にしても、極めて微量の微生物の計数や、種別ができないという問題が残されていた。
また、Hauber等は1988年に細菌から抽出したDNAとそれに相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによってその細菌を検出する方法を報告し、一方Delong等は1989年に細菌をガラス板上に固定し、DNAを露出させ、相補的プローブDNAとのハイブリダイゼーションによって菌を検出する方法を報告している。しかしながらこれらの方法においても、菌体あたりの遺伝子数が少ないので検出感度が低いとか死菌も検出されるなどの欠点が存在することは否めない。
近年、ELISA法(特願平2−51063)やDNAプローブ法(J.Clin.Chem.Clin.Biochem.27,361(1989))による微量細菌の特異的検出法が考案されているが、これらの方法も特定菌群のみの検出しかできないことや、簡便迅速な検出ができないという問題がある。
さらに、検出感度を高めるため、細菌ゲノムのr−RNA遺伝子をたとえばPCR法によって増幅し、増幅したr−RNA対応のDNAを検出する方法、またはそれに相補的なプローブDNAとハイブリダイズすることによってその細菌を検出する方法も開発された。しかしこの方法はPCR法を用いるため、r−RNA直接検出法より手間と時間がかかる。また同法は、細菌の死後も変性しにくいDNAのPCRを行うため死菌も検出してしまう。さらにPCR法により非特異的に増幅されたDNAを検出すべき細菌由来のそれと誤認するだけでなくかかる一連の操作をメンブレンフィルター上で遂行することが困難で、自動化に適しない欠点を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような種々な技術展開を踏まえて以下のように課題を捉えた。即ち、検体中の全種類の菌検出が可能とされるDNAプローブ法は、従来の迅速検出法が不可能であった菌の種別を可能とした点では魅力的な方法であるが、簡便迅速性および精度において問題がある上、高価な試薬を必要とし、更に検出操作が複雑なために、その取扱に高度の技術と熟練を要する欠点があったことに変わりはなかった。そこで、煩雑な一連の検出操作の簡便化と測定に伴う試料のロスを極力低減し測定精度を高めかつ測定を迅速化する方法を考案することを課題とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行なったところ、MFを装着した濾過器で検体液を濾過して生菌をMFに濃縮捕捉した後、菌を固定し細胞を溶解剤で破壊してリボソームRNA(以下r−RNAと略す)を露出、変性する。以下、バイヤル中で行なう常法に準じて例えば生菌の群・種に特有なr−RNAの塩基配列に対して、相補的な塩基配列を持つDNAに例えばジゴキシゲニンのような抗原基をラベルしたプローブDNAをハイブリダイズし、次いでこの抗原を有するプローブもしくはハイブリッドに対して例えば酵素アルカリホスファターゼを持つ抗体を結合させる。かかる処理を行なった後、例えば発光基質3−(2−アダマンチル)−4−メトキシ−4−(3−ホスホリロキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン(商品名LumigenPPD、日本ミリポア社製)を含む反応液を噴霧して酵素アルカリホスファターゼによる発光基質の脱リン酸反応を行なわせ発光させる。続いて生じた発光を生物発光、化学発光画像解析装置(以下RMDSと略す)で測定し、生菌をTVモニター上に輝点として捉えて測定する。特にかかる微量の光を検知するためには優れた画像処理装置例えばRMDS(商品名、日本ミリポア社製)が好ましい。
【0005】
ここで使用される濾過膜はRMDSによる測定中ノイズとなる発光の無いもしくは少ない濾過膜例えばナイロン製が望ましい。又、使用する試薬もノイズとなる発光原因をもたらさない純度の高いものが好ましく、固体が分散しているような場合は濾過してノイズ原因を減少させることが望ましい。
【0006】
r−RNAには、細菌間で相同性の高い塩基配列が存在するので、細菌の属又は族間に共通のr−RNAの塩基配列、又は全ての細菌に共通なr−RNAの塩基配列に相補的なプローブDNAを用意してハイブリダイズすることにより前者においては特定の属又は族の細菌のみを検出したり、後者においては全ての細菌を検出することができる等広範囲の細菌の検出に利用できる。即ち、種特異的DNA配列を指標とする方法よりも応用範囲が広く、又PCR法のように種特異的なDNA(又はRNA)の配列を検出するのではなく、RNA−DNAの直接的ハイブリダイゼーションによってr−RNAの特異的塩基配列を検出するので、PCR法よりも簡便で検出時間は短縮される等の利点のあることを明らかにして本発明を完成した。ここに、本発明と従来の検出法を比較して表1に総括した。
【0007】
【表1】
Figure 0003607327
a:MF上の菌を寒天平板等で培養し、菌数を計測する方法。
b:特定の菌にたいする抗体を作成し、ELISA、蛍光抗体法等により検出する方法。
c:菌体よりDNAを抽出し、プローブDNAとのハイブリダイゼーションにより検出する方法(Hauber et al.1988)。
d:ガラス板等に固定した菌体よりDNAを漏出させ、プローブDNAとのハイブリダイゼーションにより個々の菌を検出する方法(Delonget al.1989)。感度が低くイメージアナライザーは使用できない。
e:PCRによって増幅した細菌DNAをプローブDNAとのハイブリダイゼーションにより検出する方法。
f:MF上の菌によりr−RNAを露出させ、プローブDNAとのハイブリイダイゼーションにより検出する方法。
【0008】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。
大腸菌(E.coli K12W 3630)をSCD寒天培地で一夜培養して、1/50Mトリス−HCl緩衝液(pH8.0)に約100cfu/mlになるように懸濁して供試菌液とした。この供試菌液の0.2mlをMFであるイモビロンS(0.45μm、25mmφ、商品名、日本ミリポア社製)を装着した濾過器で吸引濾過し、風乾した後ホルムアルデヒド−メタノールで固定する。水洗し、トリエタノールアミン−HCl(pH8.0)で処理して細胞膜を破壊してr−RNAを露出させる。無水酢酸で固定後、NaOH−NaCl溶液で変性する。トリス−HCl(pH7.5)及びNaCl−クエン酸ナトリウム水溶液で洗浄し、80℃で乾燥した後UV照射して固定する。ハイブリダイゼーション用緩衝液を加えて、r−RNAに相補的塩基配列を有するジゴキシゲニンを抗原基として標識したプローブDNAを加えて42℃で反応させ、ハイブリダイズする。クエン酸ナトリウム−ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、これにアルカリホスファターゼを標識した抗ジゴキシゲニン抗体を含むブロッキング液を加え室温で反応させる。トリス−HCl−NaCl−MgCl 溶液で洗浄後、発光基質3−(2−アダマンチル)−4−メトキシ−4−(3−ホスホリロキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンを含む試案(商品名LumigenPPD、日本ミリポア社製)を加えて発光させる。生じた発光を直ちにRMDSで10分間フォトンカウンティングしTVモニター上に撮像された輝点を測定する。以上の方法によって得られた結果と比較のための通常のメンブレン法により37℃、48時間培養して生成するコロニー数を測定した結果を表2に示したが両者の差異は認め難い。
【0009】
【表2】
Figure 0003607327
【0010】
【発明の効果】
本発明によれば、検体液を濾過した後は一連の操作をMF上で行なうことで、従来の方法では更にバイヤルその他に移しかえるという測定に伴う試料のロスも時間のロスもなく、正確に、迅速に試料を取り扱える。その上、プローブDNAの選択により特定の菌群の正確迅速な検出を可能にするだけでなく、あらゆる種類の細菌検出も正確迅速になし得、特に発光をRMDSで検出するため感度の高い簡単な検出が可能となる効果が認め得る。さらに換言するなら、本願発明方法によれば、生菌内に多量に存在するr−RNAをプローブとのハイブリダイゼーションによって直接検出するので、PCR増幅法に比して短時間で菌の検出ができ、r−RNAは細菌の死滅後短時間で分解されるので死菌を検出することがなく、非特異的なDNAを細菌のものとして誤認することがないという長所、効果を有することが明らかである。

Claims (3)

  1. 生菌から露出し変性し、リボソームRNAに対して相補的な塩基配列を有し且つ抗原をラベルしたプローブDNAをハイブリダイズし、酵素を結合した抗体を該抗原と結合せしめ、該酵素の作用で発光をもたらす基質含有溶液を噴霧し発光させ検知する該生菌検出方法に於て、多孔質膜上に生菌を捕捉してなす生菌検出方法。
  2. 多孔質膜がポリアミドからなる請求項1記載の生菌検出方法。
  3. 前記酵素はアルカリホスファターゼであり、該酵素の作用で発光をもたらす基質は3−(2−アダマンチル)−4−メトキシ−4−(3−ホスホリロキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンである請求項1又は2記載の生菌検出方法。
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