JP3607214B2 - 低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置 - Google Patents

低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような分野の技術としては、器具を眼に取り付けて前眼房水の透過光の旋光性を測定する方法が提案されている(文献1:DIABETES CARE,VOL.5,NO.3 MAY−JUNE 1982 P.259〜265,Fig.8および9参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
現在、糖尿病患者をはじめ、血糖に関する病の多くの患者から体内血糖の無侵襲測定装置の開発が求められている。これに対して、光波を用いる方法は、無侵襲性であることから有望視されており、既に吸収スペクトルを用いる方法などが報告されている〔文献2:病態生理 Vol.12,No.4(1993:4),P.293〜300〕。
【0004】
また、眼球前部の前眼房水には、糖濃度測定の妨げとなる物質が比較的少ないこと、前眼房水の糖濃度は血中濃度の約61%であるが追従性が比較的いいことなどから、早くから測定への応用が注目されている。例えば、1979年から1982年には、in vitro系の実験で近赤外光を用いて旋光分析により、前眼房水で、ブドウ糖濃度20〜1000mg/100mlの計測が可能であることが実験的に示されている(上記した文献1および2)。
【0005】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、近年眼科臨床で実用されている光波断層画像測定法(OCT;Optical Coherence Tomography)の基盤技術である低コヒーレンス干渉計と旋光分析技術とを融合させた、患者の負担が少なく、測定時間が速い低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〕低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置において、偏波面選択性のある光波断層画像測定装置(Polarization Sensitive Optical Coherence Tomography,PSOCT)に、複数の参照光ミラー(7,8)を設けて、それぞれ個別の周波数で振動させることにより、生体内の異なった位置からの後方散乱光を検出し、その後方散乱光の偏光状態を測定する手段と、2つの位置間での偏光状態の変化から糖などの光学活性物質の濃度を求める手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0008】
まず、ブドウ糖は、光学活性であり、それにより旋光性を有する。旋光性とはブドウ糖などの光学活性物質中を左・右円偏光が伝搬したとき、左・右円偏光、それぞれに対する屈折率が違うために出射時の偏光状態が入射偏光状態と異なる現象をいう。これにより、直線偏光は左・右円偏光の和であるために、直線偏光入射時に出射光の偏波面が、物質の旋光能・濃度に応じて変化する〔先行技術文献3:小川智哉著、「結晶物理工学」、裳華房 p.206−207、6−3図、式(6.25)〕。
【0009】
よって、この偏波面の旋光度を測定すれば、物質の旋光能が既知の場合、濃度が測定される。ブドウ糖濃度と旋光度との関係は実験的に測定され、報告されている(上記した文献1参照)。簡易な旋光分析装置では0.0013度で20mg/100mlの感度が得られており、血糖測定に利用できる感度である。
【0010】
既に、OCTの分野では、生体組織の偏光変化に着目した研究がなされており、PSOCTの基本構成や測定データが報告されている〔文献4:IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,VoL.5,NO.4,JULY/AUGUST 1999.P.1159〜1167参照〕。
【0011】
これを踏まえて、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例を示す低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置の構成図である。
【0013】
この図において、1は低コヒーレンス光源(LCLS)、2はビームスプリッター(BS)、3はビーム走査装置(BSS)、4は対物レンズ(OL)、5は眼前部(EYE)、5Aは前眼房水(S)、6は波長板(WP)、7はピエゾ付き振動ハーフミラー(HM)、8はピエゾ付き振動ミラー(M)、9は偏光ビームスプリッター(PBS)、10,11は光検出器(D1 、D2 )、12はアナログ加算器(AD)、13,14,15は周波数f1 、f2 を分離しそれぞれの振幅信号を出力するDEMOV(Demodulator for Vertical signal)、DEMOA(Demodulator for Added signal)、DEMOH(Demodulator for Horizontal signal)である。
【0014】
この図において、LCLS1からの水平直線偏光は、BS2、BSS3、OL4を通って、EYE5に照射される。EYE5からの後方散乱光である信号光は、再度、OL4、BSS3、BS2を通ってPBS9で水平・垂直偏光に分離されて、D1 10、D2 11へ入射する。
【0015】
一方、参照光は、WP6を介してHM7、M8によって反射され、それぞれの反射光はBS2へ向かう。この際、偏光状態は水平に対して45度傾くようにWP6で調整する。PBS9で水平・垂直偏波成分は等分配されてD1 10、D2 11に入射する。HM7、M8はそれぞれ独立にステージで光軸方向に移動可能であり、参照光路(RA)と信号光路(SA)との光路差が調整可能である。
【0016】
また、M8,HM7はそれぞれピエゾ振動子で周波数f1 、f2 で振動しており、それぞれの参照光に対するヘテロダインビート信号の検出が可能である。
【0017】
OCTの原理(文献5:計測と制御 第39巻 第4号 2000年4月号,P.259〜266参照)によれば、参照光路(RA)と信号光路(SA)との光路差が光源のコヒーレント長以内のときに干渉信号が発生する。EYE5からのある後方散乱光に対して、HM7,M8を光軸方向に走査して干渉が生じた場合、D1 10,D2 11からのヘテロダインビート信号のRFスペクトルは、図2に示すようになり、それぞれf1 ,f2 周波数成分が抽出可能である。よって、DEMOV13、DEMOA14、DEMOH15により、各信号の振幅信号が容易に得られる。
【0018】
次に、周波数f1 のビート信号に着目して、M8を光軸方向に走査すると、図3(a)に示すように、移動座標に対する信号強度プロファイルが得られる。
【0019】
このプロファイルは、図3に示すように眼の断層構造と関係があることが知られている(上記した文献4、Fig.4参照)。よって、M8を地点Aに固定することにより、水晶体前面からの後方散乱信号のみを引き出すことができる。
【0020】
次に、周波数f2 のビート信号に着目して、HM7を光軸方向に走査すると、図3(b)に示すように、移動座標に対する信号強度プロファイルが得られる。よって、同様にHM7を地点Bに固定することにより、前眼房水S5A前面からの後方散乱信号のみを引き出すことができる。これより、周波数f1 ,f2 それぞれのヘテロダインビート信号が、水晶体前面、前眼房水S5A前面からの信号に対応することとなる。
【0021】
図4(a)は入射光波が水平直線偏光であることを示し、図4(b)は、出射光波が旋光して偏波面がθ回転した様子を示す。この時、PBS9により水平・垂直偏波成分がD1 10、D2 11で検出され、それぞれの信号はSH (fi )、SV (fi )(i=1,2)で示される。
【0022】
ここで、
H (fi )∝〔2Er/(√2)〕Es・cosθ・cos(2πfi ・t)
(i=1,2)
V (fi )∝〔2Er/(√2)〕Es・sinθ・cos(2πfi ・t)
(i=1,2)
故に θi =tan-1〔SV (fi )/SH (fi )〕
よって、入射偏波に対する水晶体前面と前眼房水前面からの後方散乱光のそれぞれの旋光度がθ1 ,θ2 と求まり、その旋光度の差から前眼房水に含まれる糖濃度が求まり、血中糖濃度が測定される。
【0023】
OCTにおいて、複数の参照光ミラーで同時に複数の鉛直断面画像を測定する試みは既に報告されている(文献6:July 1,1997/Vol.22,No.13/OPTICS LETTERS,P.1039〜1041参照)。
【0024】
また、光学活性物質を通過する光波をミラーで反射させた場合、旋光性が相殺されるとの報告(文献7:Rev.Sci.Instrum.64(10),Oct 1993,P.2801〜2807参照)があるが、ここでは生体内での散乱現象により後方散乱光が生じるので偏光情報を有する光波のみが選択的に検出される。
【0025】
一方、図5に示すように、サンプルアーム(図1に示すSA)を光ファイバーで延長したり、光ファイバー23とレンズ24で構成される簡易な複数の先端部を光スイッチ(OS)22で高速に切り替えることにより、遠隔地や病院などで複数の患者の測定にも対応することができる。ここで、LCI(Low Coherence Interferometer)21は、図1において点線より矢印側の低コヒーレンス干渉系および信号処理系である。
【0026】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0027】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、患者の眼に全く非接触で、実時間で眼前部の構造を観察しながら前眼房水による旋光性から糖濃度の測定を行うようにしたので、患者の負担が少なく、測定時間が早い。
【0028】
また、光ネットワークを用いたシステム化にも対応できるために、多くの遠隔地での患者にもサービスが可能である。
【0029】
更に、光ファイバーで先端部を延長・分岐すれば、病院などで複数の患者ごとに測定が可能になる。
【0030】
したがって、多くの糖尿病患者に対して、負担の少ない血糖測定が可能になるので、医学分野での貢献や、半導体や他の産業分野への波及効果は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置の構成図である。
【図2】ヘテロダインビート信号のRFスペクトルを示す図である。
【図3】移動座標に対する信号強度プロファイルを示す図である。
【図4】ミラーの位置と偏光の関係を示す図である。
【図5】遠隔地や病院などで複数の患者の測定の説明図である。
【符号の説明】
1 低コヒーレンス光源(LCLS)
2 ビームスプリッター(BS)
3 ビーム走査装置(BSS)
4 対物レンズ(OL)
5 眼前部(EYE)
5A 前眼房水(S)
6 波長板(WP)
7 ピエゾ付き振動ハーフミラー(HM)
8 ピエゾ付き振動ミラー(M)
9 偏光ビームスプリッター(PBS)
10,11 光検出器(D1 ,D2
12 アナログ加算器(AD)
13 DEMOV(Demodulator for Vertical signal)
14 DEMOA(Demodulator for Added signal)
15 DEMOH(Demodulator for Horizontal signal)
21 LCI(低コヒーレンス干渉計:Low Coherence Interferometer)
22 光スイッチ(OS)
23 光ファイバー
24 レンズ

Claims (1)

  1. (a)偏波面選択性のある光波断層画像測定装置に、複数の参照光ミラーを設けてそれぞれ個別の周波数で振動させることにより、生体内の異なった位置からの後方散乱光を検出し、該後方散乱光の偏光状態を測定する手段と、
    (b)2つの位置間での偏光状態の変化から糖などの光学活性物質の濃度を求める手段とを具備することを特徴とする低コヒーレンス光干渉計を用いた血糖測定装置。
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